(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050052
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】燃焼制御方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20230403BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20230403BHJP
F23L 7/00 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
F23G5/50 G
F23G5/50 C ZAB
F23G5/50 L
F23N5/00 H
F23L7/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021175047
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】520423297
【氏名又は名称】下川 達之
(72)【発明者】
【氏名】下川 達之
【テーマコード(参考)】
3K003
3K023
3K062
【Fターム(参考)】
3K003EA10
3K003FA02
3K003FB08
3K003GA05
3K023JA02
3K023JB01
3K023JC01
3K062AA02
3K062AB01
3K062AC01
3K062BA02
3K062CA08
3K062CB05
3K062DA07
3K062DB28
(57)【要約】
【課題】 火炎燃焼開始位置を的確に維持することができる制御方法を提供する。
【解決手段】 乾燥段部の画像から取得された火炎燃焼開始位置の変化情報をふまえ、乾燥段風箱に供給される一次燃焼用気体に追加混入させる水蒸気量を増減させることで、乾燥段部での「乾燥効果」を調整し、火炎燃焼開始位置が一定の位置に保持できる機能を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥部と燃焼部と後燃焼部とに区分された火格子から構成されており、廃棄物が堆積した状態で間欠的に動作することで当該廃棄物を搬送するとともに当該火格子を介して一次燃焼用気体を供給する前記廃棄物焼却炉にて、上記乾燥部の炉幅方向の端部に形成されている側壁に設けられた窓部から、撮像装置を用いて取得した前記乾燥部に堆積した前記廃棄物等の外観を含む連続映像に各種画像解析を行って火炎燃焼開始位置を特定することで、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかを判定し、当該判定結果に基づいて、前記乾燥部の前記火格子による前記廃棄物の搬送速度を加減速させる前記廃棄物焼却炉の燃焼制御方法において、
前記乾燥段に設けられた当該火格子を介して一次燃焼用気体を供給する風箱である乾燥段風箱に、供給される一次燃焼用気体に追加混入させる水蒸気量を増減させることで、前記乾燥段上の火炎燃焼開始位置を所定の位置に維持する燃焼制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、火格子により廃棄物を搬送しながら焼却する火格子式の廃棄物焼却炉において、安定な燃焼を適切に維持するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、廃棄物焼却炉には、多種多様な廃棄物が投入されるため、投入された廃棄物の性状が変化した場合であっても、安定な燃焼を適切に維持できることが重要となる。また、火格子式の廃棄物焼却炉では、廃棄物を乾燥させる乾燥部と、廃棄物を火炎燃焼させる燃焼部と、廃棄物を後燃焼(オキ燃焼)させる後燃焼部と、に区分されている。安定な燃焼を適切に維持する燃焼制御を行うためには、このような火炎燃焼の終了位置である燃え切り点の位置を適切な範囲に収めることが重要となる。
【0003】
なお、(1)燃え切り点の位置が適切な範囲から外れる主たる原因が、廃棄物の性状の違いに起因して、想定乾燥時間と実乾燥時間とに差異が生じることにあること、(2)そのため想定乾燥時間と実乾燥時間との差異が発生してからかなりの時間遅れの後に状態変化が発現する燃焼位置や燃え切り点の変化情報に基づいて燃え切り点の位置の制御を行うことは、現実的には困難であること、(3)火炎燃焼開始位置の移動方向は、想定乾燥時間と実乾燥時間との差異の傾向(即ち、廃棄物の乾燥及び燃焼の進行状況の適正性)に相当するため、燃え切り点を適切な範囲に収めるために必要な情報として扱うことができること、等を踏まえれば、乾燥部の火格子に堆積されている廃棄物における乾燥の進行状況の各種の情報は、燃え切り点の位置を適切な範囲に収めるための情報として扱うことができる。
【0004】
特許文献1、2には、いずれも乾燥部の側壁部に撮像装置を配置して、火炎燃焼開始位置を特定し、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかを判断し、乾燥部の搬送速度を増減して、火炎燃焼開始位置を適切な位置に保持する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6543389号公報
【特許文献2】特許第6671326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2での火炎燃焼開始位置を適切な位置に保持するために乾燥部の搬送速度を増減する方法では、速度変更可能な範囲に物理的な限界があり、火炎燃焼開始位置の移動が大きい場合に、火炎燃焼開始位置を適切な位置に保持できなくなる問題がある。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、撮像装置にて得られた火炎燃焼開始位置情報に対し、広範な領域での火炎燃焼開始位置を適切な位置に保持する制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下の燃焼制御方法が提供される。即ち、この燃焼制御方法は、乾燥部と燃焼部と後燃焼部とに区分された火格子から構成されており、廃棄物が堆積した状態、で間欠的に動作することで当該廃棄物を搬送するとともに火格子を介して一次燃焼用気体を供給する搬送部と、乾燥部の炉幅方向の端部に形成されている側壁に設けられた窓部から乾燥部に堆積した廃棄物等を含む映像を連続して取得する撮像装置と、その取得画像をもとに火炎燃焼開始位置を特定し、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかを算出する制御装置を備えた焼却炉に対して行われる。
【0010】
この燃焼制御法は、制御装置で得られた火炎燃焼開始位置情報をもとに、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動していることが特定された場合は、一次燃焼用気体を供給する風箱である乾燥段風箱に、供給される一次燃焼用気体に追加混入させる水蒸気量を増量させる制御を行う。
【0011】
これにより、乾燥火格子上にある廃棄物を通過する乾燥用一次燃焼用気体の廃棄物「乾燥効果」が調整可能となることで、当該廃棄物の乾燥の進行が調節可能となり、廃棄物の乾燥及び燃焼の進行状況をより適正にすることができる。その結果、火炎燃焼開始位置を適切な範囲に収め、その結果として燃え切り点を適切な範囲に収めることができるので、安定な燃焼を維持することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、火炎燃焼開始位置を的確に一定の位置に保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の焼却炉を含む廃棄物焼却設備の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<廃棄物焼却施設の全体構成>初めに、
図1を参照して、本実施形態の焼却炉(廃棄物焼却炉)10を含む廃棄物焼却設備100について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の焼却炉10を含む廃棄物焼却設備100の概略構成図である。なお、以下の説明では、単に上流、下流と記載したときは、廃棄物、燃焼ガス、排ガス、一次空気、二次空気、循環排ガス等が流れる方向の上流及び下流を意味するものとする。
【0015】
図1に示すように、廃棄物焼却設備100は、焼却炉10と、ボイラ30と、蒸気タービン発電設備35と、を備える。焼却炉10は、供給された廃棄物を焼却する。なお、焼却炉10の詳細な構成は後述する。
【0016】
ボイラ30は、廃棄物の燃焼によって発生した熱を利用して蒸気を生成する。ボイラ30は、流路壁に設けられた多数の水管31及び過熱器管32で、炉内で発生した高温の燃焼ガスと水との熱交換を行うことにより蒸気(過熱蒸気)を生成する。水管31及び過熱器管32で生成された蒸気は、蒸気タービン発電設備35へ供給される。
【0017】
蒸気タービン発電設備35は、図略のタービン及び発電装置を含んで構成されている。タービンは、水管31及び過熱器管32から供給された蒸気によって回転駆動される。発電装置は、タービンの回転駆動力を用いて発電を行う。
【0018】
ここで、安定した発電を行うには、ボイラ30での蒸気(過熱蒸気)の生成量を安定化させることが必要である。ボイラ30での蒸気(過熱蒸気)の生成量を安定化させるためには、ボイラ30への入熱を安定させる必要がある。つまり、発電量を一定に保つには、焼却炉10からボイラ30へ供給される燃焼ガスの保有熱量を安定させて、ボイラ30への入熱を安定に保つ必要がある。
【0019】
<焼却炉10の構成>焼却炉10は、廃棄物を炉内に供給するための給じん装置40を備える。給じん装置40は、廃棄物投入ホッパ41と、給じん装置本体42と、を備える。廃棄物投入ホッパ41は、炉外から廃棄物が投入される部分である。給じん装置本体42は、廃棄物投入ホッパ41の底部分に位置し、水平方向に移動可能に構成されている。給じん装置本体42は、廃棄物投入ホッパ41に投入された廃棄物を下流側に供給する。この給じん装置本体42の移動速度、単位時間あたりの移動回数、移動量(ストローク)、及びストローク端の位置(移動範囲)は、制御装置90によって制御されている。なお、給じん装置は水平方向に対し多少の角度をもって移動する型式でもよい。
【0020】
給じん装置40によって炉内に供給された廃棄物は、搬送部20によって、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13の順に供給されていく。搬送部20は、乾燥部11に設けられた乾燥火格子21と、燃焼部12に設けられた燃焼火格子22と、後燃焼部13に設けられた後燃焼火格子23と、で構成されている。従って、搬送部20は複数段の火格子から構成されている。それぞれの火格子は、各部の底面に設けられており、廃棄物が載置される。
【0021】
火格子は、廃棄物搬送方向に並べて配置された可動火格子と固定火格子とから構成されており、可動火格子が前進、停止、後進、停止等の順で動作することで、廃棄物を下流側へ搬送するとともに、廃棄物を攪拌することができる。可動火格子の動作速度を増速(減速)させることで、廃棄物の搬送速度を増速(減速)させることができる。また、可動火格子の停止時間を短く(長く)することで、廃棄物の搬送速度を増速(減速)させることができる。また、火格子は、気体が通過可能な大きさの隙間を空けて並べて配置されている。
【0022】
乾燥部11は、焼却炉10に供給された廃棄物を乾燥させる部分である。乾燥部11の廃棄物は、乾燥火格子21の下から供給され廃棄物内部を通過する一次空気との接触及び隣接する燃焼部12における燃焼の輻射熱によって乾燥する。その際、熱分解によって乾燥部11の廃棄物から熱分解ガスが発生する。また、乾燥部11の廃棄物は、乾燥火格子21によって燃焼部12に向かって搬送される。
【0023】
燃焼部12は、乾燥部11で乾燥した廃棄物を主に燃焼させる部分である。燃焼部12では、廃棄物が主に火炎燃焼を起こし火炎が発生する。燃焼部12における廃棄物及び燃焼により発生した灰及び燃焼しきれなかった未燃物は、燃焼火格子22によって後燃焼部13に向かって搬送される。また、燃焼部12で発生した燃焼ガス及び火炎は、絞り部17を通過して後燃焼部13に向かって流れる。なお、燃焼火格子22は、乾燥火格子21と同じ高さに設けられているが、乾燥火格子21よりも低い位置に設けられていてもよい。
【0024】
後燃焼部13は、燃焼部12で燃焼しきれなかった廃棄物(未燃物)を燃焼させる部分である。後燃焼部13では、燃焼ガスの輻射熱と一次空気によって、燃焼部12で燃焼しきれなかった未燃物の燃焼が促進される。その結果、未燃物の殆どが灰となって、未燃物は減少する。なお、後燃焼部13で発生した灰は、後燃焼部13の底面に設けられた後燃焼火格子23によってシュート24に向かって搬送される。シュート24に搬送された灰は、廃棄物焼却設備100の外部に排出される。なお、本実施形態の後燃焼火格子23は、燃焼火格子22よりも低い位置に設けられているが、燃焼火格子22と同じ高さに設けられていてもよい。
【0025】
上述したように、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13では、生じる反応が異なるため、それぞれの壁面等は、生じる反応に応じた構成となっている。例えば、燃焼部12では火炎燃焼が生じるため、乾燥部11よりも耐火レベルが高い構造が採用されている。
【0026】
再燃焼部14は、燃焼ガスに含まれる未燃ガスを燃焼させる部分である。再燃焼部14は、乾燥部11、燃焼部12、及び後燃焼部13から上方に向かって延び、その途中に二次空気が供給される。これにより、燃焼ガスは二次空気と混合及び撹拌され、燃焼ガスに含まれる未燃ガスが再燃焼部14で燃焼される。なお、燃焼部12及び後燃焼部13で生じる燃焼を一次燃焼と称し、再燃焼部14で生じる燃焼(つまり、一次燃焼で残存した未燃ガスの燃焼)を二次燃焼と称する。
【0027】
気体供給装置50は、炉内に気体を供給する装置である。本実施形態の気体供給装置50は、一次空気供給部51と、二次空気供給部52と、排ガス供給部53と、を有している。それぞれの供給部は、気体を誘引又は送出するための送風機によって構成されている。
【0028】
本明細書では、一次燃焼のために供給する気体を一次燃焼用気体と称する。一次燃焼用気体としては、一次空気、循環排ガス、それらの混合ガスが含まれる。一次空気とは、外部から取り込んだ空気であって、燃焼等に用いられていない(即ち、循環排ガスを除く)気体である。従って、一次空気には、外部から取り込んだ空気を加熱等した気体も含まれる。同様に、本明細書では、二次燃焼のために供給する気体を二次燃焼用気体と称する。二次燃焼用気体としては、二次空気、循環排ガス、それらの混合ガスが含まれる。二次空気の定義は一次空気と同様である。
【0029】
一次空気供給部51は、一次空気供給経路71を介して炉内に一次空気を供給する。一次空気供給経路71は、第1供給経路71aと、第2供給経路71bと、第3供給経路71cと、に分岐されている。なお、一次空気供給経路71にヒータを設け、各部に供給する一次空気の温度を調整できるようにしてもよい。
【0030】
第1供給経路71aは、乾燥火格子21の下方に設けられた乾燥段風箱25に一次空気を供給するための経路である。第1供給経路71aには第1ダンパ81が設けられており、乾燥段風箱25に供給する一次空気の供給量を調整することができる。また、第1ダンパ81は制御装置90によって制御されている。
【0031】
第2供給経路71bは、燃焼火格子22の下方に設けられた燃焼段風箱26に一次空気を供給するための経路である。第2供給経路71bには第2ダンパ82が設けられており、燃焼段風箱26に供給する一次空気の供給量を調整することができる。また、第2ダンパ82は制御装置90によって制御されている。
【0032】
第3供給経路71cは、後燃焼火格子23の下方に設けられた後燃焼段風箱27に一次空気を供給するための経路である。第3供給経路71cには第3ダンパ83が設けられており、後燃焼段風箱27に供給する一次空気の供給量を調整することができる。また、第3ダンパ83は制御装置90によって制御されている。
【0033】
二次空気供給部52は、二次空気供給経路72を介して、焼却炉10の空気ガス保有空間16にその上部(天井部)から二次空気を供給するとともに、絞り部17によって燃焼ガスが方向を転換する部分(絞り部17の近傍)に二次空気を供給する。また、二次空気供給経路72には、制御装置90によって制御される第4ダンパ84が設けられており、各部への二次空気の供給量を調整することができる。
【0034】
排ガス供給部53は、循環排ガス供給経路73を介して、廃棄物焼却設備100から排出された排ガスを炉内に供給する(再循環させる)。廃棄物焼却設備100から排出された排ガスはろ過式の集じん器60で浄化され、その一部が排ガス供給部53によって燃焼部12の両側面(紙面手前側及び紙面奥側の面)から焼却炉10へ供給される。なお、排ガスが供給される位置は、特に限定されない。例えば、排ガスは焼却炉10の上方(天井部)から供給されてもよく、一方の側面のみから供給されていてもよい。排ガスを焼却炉10に供給することで、焼却炉10内の酸素濃度が低下し、燃焼温度の局所的な過上昇を抑えることができる。その結果、NOxの発生を抑えることができる。循環排ガス供給経路73には、制御装置90によって制御される第5ダンパ85が設けられており、循環排ガスの供給量を調整することができる。
【0035】
焼却炉10には、
図1に示すように、燃焼状態等を把握するための複数のセンサが設けられている。具体的には、焼却炉内ガス温度センサ91と、焼却炉出口ガス温度センサ92と、COガス濃度センサ93と、NOxガス濃度センサ94と、撮像装置95と、が設けられている。
【0036】
焼却炉内ガス温度センサ91は、焼却炉10内(例えば空気ガス保有空間16よりも下流かつ後燃焼部13よりも上流)に配置されており、焼却炉内ガス温度を検出して制御装置90へ出力する。焼却炉出口ガス温度センサ92は、焼却炉10出口近傍(例えば再燃焼部14よりも下流かつボイラ30よりも上流)に配置されており、焼却炉出口ガス温度を検出して制御装置90へ出力する。COガス濃度センサ93は、集じん器60の下流に配置されており、排ガスに含まれるCOガス濃度(焼却炉排出COガス濃度)を検出して制御装置90へ出力する。NOxガス濃度センサ94は、集じん器60の下流に配置されており、排ガスに含まれるNOxガス濃度(焼却炉排出NOxガス濃度)を検出して制御装置90へ出力する。
【0037】
本実施形態では、火炎燃焼開始位置の映像、及び、主に乾燥火格子21を搬送される廃棄物の映像を取得することを目的として撮像装置95が設けられている。また、撮像装置95は、火炎燃焼開始位置の移動情報を各種解析を行って把握できるものであれば、光学カメラでも温度等を検出するための赤外線カメラでもよい。なお、視点とは、計測器である撮像装置95が配置されている位置を示す。焼却炉10では、乾燥部11の下流側の端部で乾燥が完了し、燃焼部12の上流側の端部で火炎燃焼が開始されることが想定されている。しかし、供給される鹿棄物の性状(例えば廃棄物に含まれる水分量、及び、廃棄物の燃え易さ)によっては、乾燥部11の中途部で乾燥が完了して火炎燃焼が開始されたり燃焼部12の中途部でも乾燥が完了されておらず火炎燃焼が開始していないことがある。
【0038】
そのため、火炎燃焼開始位置を撮像するために、撮像装置95の撮像範囲には、乾燥部11と燃焼部12の境界及びその近傍の映像が含まれる。また、本実施形態では、乾燥部11の廃棄物を撮像するために、撮像装置95の撮像範囲には、乾燥部11の廃棄物の表面も含まれている。より具体的には、本実施形態の撮像装置95の撮像範囲には、廃棄物の搬送方向において、乾燥部11の上流端から燃焼部12の中央までが含まれている。なお、撮像装置95の撮像範囲は、本実施形態よりも狭くても広くてもよい。また、撮像装置95は、映像の撮像範囲を変更可能な構成であってもよい。この場合、この撮像装置95は、焼却炉10を停止させること無しに、撮像範囲を変更可能であってもよい。撮像装置95は、廃棄物の堆積量が多くなった場合でも適切に映像を取得する等の目的で、廃棄物よりも高い位置に配置されている。従って、撮像装置95は、下側に向けて傾斜して配置されている。なお、撮像装置95を傾斜させずに配置しでもよい。
【0039】
<制御装置が行う処理>制御装置90は、CPU、RAM、ROM等によって構成されており、種々の演算を行うとともに、廃棄物焼却設備100全体を制御する。
【0040】
画像処理装置96も同様に、CPU、RAM、ROM等によって構成されており、撮像装置95が取得した映像を解析し火炎燃焼開始位置の移動情報を算出する。火炎燃焼開始位置とは、火炎燃焼が開始され始める搬送方向における位置である。
【0041】
次に、制御装置90は、火炎燃焼開始位置の時間変化に基づいて、火炎燃焼開始位置が上流側に移動しているか否かを特定する。例えば、焼却炉10に供給される廃棄物に含まれる水分量が少なくなったり、燃え易い廃棄物が供給されるようになった場合、乾燥部11で廃棄物を乾燥(及び乾燥に伴う熱分解を含む、以下同じ)させるために実際に必要な時間(実乾燥時間)が短くなる。従って、実乾燥時間が、予め想定されている廃棄物の想定乾燥時間よりも短くなる(差異が生じる)。この場合、乾燥部11の中途部で乾燥が完了するため、乾燥部11の中途部で火炎燃焼が発生する(火炎燃焼開始位置が上流側に移動する)こととなる。
【0042】
この状態を放置していると、乾燥部11で火炎燃焼が進行してしまうために、燃焼部12における火炎燃焼に必要な滞留時間が短くなることとなり、燃焼部12の途中で火炎燃焼の次の段階である後燃焼が徐々に開始する。その結果、火格子上の乾燥、燃焼、後燃焼のそれぞれの位置が全体的に、上流側へ徐々に移動していくこととなり、燃え切り点(火炎燃焼の終了位置)が適切な範囲から外れてしまい、安定な燃焼を維持できなくなる。
【0043】
これを防止するため、制御装置90は、基本的には火炎燃焼開始位置が上流側に移動していると特定した場合、乾燥火格子21の廃棄物の搬送速度(以下、単に搬送速度)を増速させる。上述のように、搬送速度を増速させるためには、乾燥火格子21の可動火格子の動作速度を増速させるか、それに代えて又は加えて、乾燥火格子21の可動火格子の停止時間を短くする。可動火格子の動作速度又は停止時間は、搬送速度の制御における制御値の一例である。これにより、火格子上の各部の燃焼位置が上流側に移動する事態を防止することができる。
【0044】
本発明では、上記に加えて、制御装置90は、火炎燃焼開始位置が上流側に移動していると特定した場合、一次燃焼用気体を供給する風箱である乾燥段風箱に、供給される一次燃焼用気体に追加混入させる水蒸気量を増量させる。これにより、乾燥火格子上の廃棄物と通過接触する一次燃焼用気体の水分含有割合を増加させることで、一次燃焼用気体の廃棄物通過による乾燥効果を低減させることにになり、乾燥火格子上の乾燥の進行を遅くすることができ、火炎燃焼開始位置が上流側に移動する事態を防止することができる。また、火炎燃焼開始位置が下流側に移動していると特定した場合、一次燃焼用気体を供給する風箱である乾燥段風箱に、供給される一次燃焼用気体に追加混入させる水蒸気量を減量させる。これにより、乾燥火格子上の乾燥の進行を速くすることができ、火炎燃焼開始位置が下流側に移動する事態を防止することができる。
【0045】
これらの操作により、火炎燃焼開始位置を適切な範囲に収め、その結果として燃え切り点を適切な範囲に収めることができるので、安定な燃焼を維持することができる。
【0046】
以上に説明したように、本実施形態の方法は、乾燥部11と燃焼部12と後燃焼部13とに区分された火格子から構成されており、廃棄物が堆積した状態、で間欠的に動作することで当該廃棄物を搬送するとともに火格子を介して一次燃焼用気体を供給する搬送部20と、乾燥部11の炉幅方向の端部に形成されている側壁に設けられた窓部から、乾部11に堆積した廃棄物等を含む映像を連続して取得する撮像装置95と、その取得画像をもとに火炎燃焼開始位置を特定し、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動しているか搬送方向下流側に移動しているかを算出する制御装置90を備えた焼却炉10に対して行われる。
【0047】
この燃焼制御法は、制御装置90で得られた火炎燃焼開始位置情報をもとに、火炎燃焼開始位置が搬送方向上流側に移動していることが特定された場合は、一次燃焼用気体を供給する風箱である乾燥段風箱に、供給される一次燃焼用気体に追加混入させる水蒸気量を増量させる制御を行う。
【0048】
乾燥部11の乾燥火格子21による廃棄物の搬送速度を増速させる制御を行う。火炎燃焼開始位置が搬送方向下流側に移動していることが特定された場合は、一次燃焼用気体を供給する風箱である乾燥段風箱に、供給される一次燃焼用気体に追加混入させる水蒸気量を減量速させる制御を行う。
【0049】
これにより、乾燥火格子上の乾燥の進行を調節できるので、廃棄物の乾燥及び燃焼の進行状況をより適正にすることができる。その結果、火炎燃焼開始位置を適切な範囲に収め、その結果として燃え切り点を適切な範囲に収めることができるので、安定な燃焼を維持することができる。
【0050】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0051】
一次燃焼用気体を供給する風箱である乾燥段風箱に、供給される一次燃焼用気体に追加混入させる水蒸気については、いわゆる100℃以上の水蒸気に代えて、超音波霧化等による非加熱で生成させた霧状の水としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 焼却炉(廃棄物焼却炉)
11 乾燥部
11 a 側壁
12 燃焼部
13 後燃焼部
13a 奥壁
20 搬送部
21 乾燥火格子
22 燃焼火格子
23 後燃焼火格子
90 制御装置
95 撮像装置
96 画像処理装置