(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050055
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】プロジェクションナットの供給ロッド装置
(51)【国際特許分類】
B23K 11/14 20060101AFI20230403BHJP
B23P 19/06 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B23K11/14 310
B23P19/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021175051
(22)【出願日】2021-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】512035918
【氏名又は名称】青山 省司
(72)【発明者】
【氏名】青山 好高
(72)【発明者】
【氏名】青山 省司
(57)【要約】
【課題】プロジェクションナットの供給ロッド装置の内部を、不純物が侵入することのない良好な状態に維持し、供給ロッドの作動状態の変更を簡単に行うこと。
【解決手段】 プロジェクションナット1に、供給ロッド5を串刺し状に貫通して、ナット1を溶接電極へ供給するものにおいて、供給ロッド5は、摺動孔8が形成された大径ロッド6と、摺動孔8に進退可能な状態で挿入された小径ガイドロッド7からなり、供給ロッド5の所定進出位置を検知するセンサー40が蓋部材41に取り付けられ、センサーの取り付け箇所に、取り付け位置を変更できる構造が採用されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定位置に停止させたプロジェクションナットのねじ孔に、供給ロッドを串刺し状に貫通して、このプロジェクションナットを電気抵抗溶接の電極へ供給する形式のものにおいて、
前記供給ロッドは、摺動孔が形成された管状の大径ロッドと、前記摺動孔に進退可能な状態で挿入された小径ガイドロッドからなり、
前記供給ロッドは、進退できる状態で外筒内に収容され、
装置の中心軸線方向に沿って前記大径ロッドに第1長孔が形成されているとともに、前記小径ガイドロッドに固定した被検知部が、前記第1長孔内に進入しており、
前記摺動孔内における前記小径ガイドロッドの端部と、前記摺動孔の内端面との間に、ばね室が形成され、
前記ばね室に、前記小径ガイドロッドに押出し方向の張力を付与する圧縮コイルスプリングが配置され、
前記圧縮コイルスプリングの張力によって、前記被検知部が前記第1長孔の端部に押し付けられて、前記大径ロッドに対する前記小径ガイドロッドの最大突出長さが設定されるように構成し、
前記外筒に、前記第1長孔の幅寸法と長さ寸法とほぼ同じ寸法とされた幅寸法と長さ寸法の第2長孔が、装置の中心軸線方向に沿って設けられ、
前記第1長孔と前記第2長孔は、ほぼ全域にわたって連通した位置関係とされ、
前記第2長孔を封鎖する板状の蓋部材が前記外筒に固定され、
前記蓋部材に、取り付け位置が変更できる状態で、センサーが取り付けられ、
前記センサーの前記蓋部材に対する取り付け位置は、前記供給ロッドの進出によって、前記被検知部が所定の位置に停止したことを検出できるように設定され、
前記供給ロッドの進出長さの変更にともなう前記被検知部の停止位置の変更に対応するために、前記取り付け位置を変更できる構造が前記センサーの取り付け箇所に採用されていることを特徴とするプロジェクションナットの供給ロッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定位置に停止させたプロジェクションナットに、供給ロッドを串刺し状に貫通し、このプロジェクションナットを電気抵抗溶接の電極へ供給するプロジェクションナットの供給ロッド装置に関している。
【背景技術】
【0002】
特開2002-172470号公報には、所定位置に停止させたプロジェクションナットに、供給ロッドを串刺し状に貫通し、このプロジェクションナットを電気抵抗溶接の電極へ供給することは記載されている。しかし、供給ロッドの長孔を経て鉄屑のような不純物が内部に侵入すると、摺動部分に動作不良が発生したりするが、これについての対応策は何も記載されていない。また。供給ロッドの進出長さを変更したりする場合の、調整作業に関しても、何も記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された構造であると、鉄屑や溶接スパッタなどの不純物が、外筒に設けた長孔や供給ロッドに設けた長孔を経て、供給ロッドの摺動部分に侵入し、円滑な摺動動作に支障を来す。また、供給ロッドの進出長さを変更したときのセンサーの位置変更が、非常に行いにくい構造となっている。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するために提供されたもので、プロジェクションナットの供給ロッド装置の内部を、不純物が侵入することのない良好な状態に維持し、供給ロッドの作動状態の変更を簡単に行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、
所定位置に停止させたプロジェクションナットのねじ孔に、供給ロッドを串刺し状に貫通して、このプロジェクションナットを電気抵抗溶接の電極へ供給する形式のものにおいて、
前記供給ロッドは、摺動孔が形成された管状の大径ロッドと、前記摺動孔に進退可能な状態で挿入された小径ガイドロッドからなり、
前記供給ロッドは、進退できる状態で外筒内に収容され、
装置の中心軸線方向に沿って前記大径ロッドに第1長孔が形成されているとともに、前記小径ガイドロッドに固定した被検知部が、前記第1長孔内に進入しており、
前記摺動孔内における前記小径ガイドロッドの端部と、前記摺動孔の内端面との間に、ばね室が形成され、
前記ばね室に、前記小径ガイドロッドに押出し方向の張力を付与する圧縮コイルスプリングが配置され、
前記圧縮コイルスプリングの張力によって、前記被検知部が前記第1長孔の端部に押し付けられて、前記大径ロッドに対する前記小径ガイドロッドの最大突出長さが設定されるように構成し、
前記外筒に、前記第1長孔の幅寸法と長さ寸法とほぼ同じ寸法とされた幅寸法と長さ寸法の第2長孔が、装置の中心軸線方向に沿って設けられ、
前記第1長孔と前記第2長孔は、ほぼ全域にわたって連通した位置関係とされ、
前記第2長孔を封鎖する板状の蓋部材が前記外筒に固定され、
前記蓋部材に、取り付け位置が変更できる状態で、センサーが取り付けられ、
前記センサーの前記蓋部材に対する取り付け位置は、前記供給ロッドの進出によって、前記被検知部が所定の位置に停止したことを検出できるように設定され、
前記供給ロッドの進出長さの変更にともなう前記被検知部の停止位置の変更に対応するために、前記取り付け位置を変更できる構造が前記センサーの取り付け箇所に採用されていることを特徴とするプロジェクションナットの供給ロッド装置である。
【発明の効果】
【0007】
電気抵抗溶接装置の配置事情や、供給ロッド装置の配置スペースによって、供給ロッドの進出長さを長くしたり短くしたりすることがある。このような場合、第1長孔の端部に押し付けられて停止している被検知部の停止位置も変更されるので、蓋部材に取り付けられたセンサーの位置も変更しなければならない。本発明においては、センサーが蓋部材に取り付けられているので、その取り付け位置を変更するときには、簡単な付け替え作業で済ませることができ、センサーの位置調整機構の簡素化や調整作業の単純化が達成できる。
【0008】
蓋部材の取り付けによって、鉄屑や溶接スパッタなどの不純物が内部に侵入することが防止でき、摺動部分の動作が円滑になされる。蓋部材にセンサーが取り付けてあるので、センサーの取り付け位置調整と、不純物の侵入遮断が同時に実現し、構造簡素化と多機能化が同時に達成できる。
【0009】
蓋部材を板状の部材で構成した場合には、センサーを第1、第2両長孔の長手方向に沿って移動させて、センサーの取り付け箇所を変えることとなり、センサーの位置変更が行いやすくなる。
【0010】
第1長孔と第2長孔は、ほぼ全域にわたって連通した位置関係とされているので、被検知部がセンサーに正しく対応すると、被検知部の存在が確実に検出され、装置としての検知信頼性や動作信頼性が向上する。また、被検知部の先端部分を第2長孔に進入するまで伸ばすことにより、被検知部とセンサーを接近した位置関係とすることができ、センサーの検知精度が向上する。
【0011】
供給ロッドの進出長さの変更にともなう被検知部の位置変更を見込んで、第1長孔と第2長孔の長さを、予め長尺化したり短尺化したりすることができるので、供給ロッドの種々な進出長さの変更に対応することが行いやすくなる。
【0012】
本発明は、プロジェクションナットの供給ロッド装置であるが、センサーの取り付け位置変更に注目した供給ロッドの動作調整方法として存在させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】ガイドロッドの変位状態を示す断面図である。
【
図3】
図1(C)図の矢線(3)方向から見た側面図である。
【
図4】供給ロッドのストッパ構造を示す断面図である。
【
図5】センサーの取り付け構造を示す平面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のプロジェクションナットの供給ロッド装置を実施するための形態を説明する。
【実施例0015】
【0016】
最初に、プロジェクションナットについて説明する。
【0017】
なお、以下の説明において、プロジェクションナットを単にナットと表現する場合もある。
【0018】
鉄製のプロジェクションナット1は、
図2(A)などに示すように、四角いナット本体2の中央部にねじ孔3が開けられているとともに、片側の四隅に溶着用突起4が設けられたものである。本実施例におけるナット1の各部寸法は、ナット本体2の一辺が13mm、ねじ孔3の内径が6mm、ナット本体2の厚さが6mmである。
【0019】
つぎに、供給ロッドについて説明する。
【0020】
図1(B)は、供給ロッド5を単体で示している。符号O-Oは、供給ロッド5の中心軸線を示しており、それが傾斜するように装置全体が傾斜させてある。供給ロッド5は、主として大径ロッド6と断面円形の小径ガイドロッド7で構成されている。大径ロッド6は、中心部に断面円形の摺動孔8が形成された管状の部材で構成され、
図1(E)に示すように、四角い断面形状とされている。このように四角い断面形状とすることにより、大径ロッド6が回転しないようにしている。
【0021】
小径ガイドロッド7は、断面円形の中実とされた棒状部材で構成され、摺動孔8に進退可能な状態で挿入されている。ここでの挿入は、摺動孔8の内面と小径ガイドロッド7の外周面との間に隙間がなく、小径ガイドロッド7を直径方向に動かしたときに隙間によるがたつき感のないものとされている。
図1(B)においては、小径ガイドロッド7が挿入されている領域全体が隙間なく摺動可能になっているが、このような摺動可能域を部分的に複数配置してもよい。つまり、摺動孔8の内径を部分的に大きくしている場合である。
【0022】
図1(B)および(C)の作動状態は、供給ロッド5が進出して、小径ガイドロッド7の先端部が固定電極9の電極ガイドピン10の直前で停止している正常な状態である。そして、大径ロッド6に対する小径ガイドロッド7の相対位置は、小径ガイドロッド7が大径ロッド6に対して最も突き出た位置関係となっている。固定電極9には鋼板部品11が載置され、電極ガイドピン10は、鋼板部品11の下孔12を貫通して、突き出ている。
【0023】
上記の固定電極9は、電気抵抗溶接用電極であり、相手方の可動電極15は、
図1(A)や
図2(A)に図示してある。そして、ナット1は、可動電極の進出と溶接電流の通電によって、鋼板部品11に溶接される。
【0024】
つぎに、ばね室について説明する。
【0025】
摺動孔8内における小径ガイドロッド7の端面13と、摺動孔8の内端面14との間に、ばね室16が形成されている。ばね室16内に、圧縮コイルスプリング17が配置され、その張力は、小径ガイドロッド7を押出す方向に作用している。
【0026】
つぎに、仮止室について説明する。
【0027】
供給ロッド5は、進退できる状態で外筒18内に収容され、外筒18の内部の一部に大径ロッド6が摺動状態で貫通する角孔19が設けてある。パーツフィーダ(図示していない)から伸びてきているナット供給管20は、四角いナット1を通過させるために、断面が矩形になっている。外筒18の端部に、ナット供給管20が溶接されている。図中、溶接箇所は、黒く塗り潰して示してある。
図1(D)から明らかなように、外筒18とナット供給管20が交差した箇所に仮止室21が構成されている。符号22は、供給ロッド5やナット1の出口開口である。
【0028】
外筒18の肉厚は、外筒18自体の強度剛性を高めて装置の取り付け安定性を向上するために、厚い寸法に設定してある。この外筒18が、本装置が取り付けられる機枠などの静止部材29に固定されている。
【0029】
ナット供給管20の長手方向にナット1が進行してきて、仮止室21に入ると、停止ガイド板23で受け止められて、ナット1の位置決めがなされる。つまり、
図1(D)に示すように、ナット1のねじ孔3と小径ガイドロッド7が同軸状態になっている。外筒18の下端近傍に平面部24が形成され、そこに停止ガイド板23が押し付けられている。外筒18に固定した支持片25にねじ込んだ固定ボルト26によって、停止ガイド板23が平面部24に押し付けられて固定がなされている。停止ガイド板23に永久磁石27が埋め込んであり、この吸引磁力でナット1が仮止室21内へ引き込まれるようになっている。
【0030】
なお、ナット供給管20の先端部が二股形状とされ、二股部分の先端に停止ガイド板23が衝合されて仮止室21の空間が形成されている。ナット供給管20の天井側の部分に通孔28が形成され、ここを大径ロッド6が通過するようになっている。
【0031】
つぎに、供給ロッドの進退手段について説明する。
【0032】
供給ロッド5を進退させる手段としては、エアシリンダ、進退出力式電動モータ、ラックピニオン機構など、種々なものが採用できる。ここではエアシリンダが採用されている。
【0033】
外筒18にエアシリンダ30が結合され、エアシリンダ30のピストンロッド31が大径ロッド6に結合してある。エアシリンダ30が最も後退すると、
図1(D)に示すように、小径ガイドロッド7の先端が仮止室21から少し後退した位置となるように、各部の寸法が選定されている。
【0034】
つぎに、小径ガイドロッドの進出長さの規制構造を説明する。
【0035】
大径ロッド6に、中心軸線O-O方向の第1長孔32が開けられている。小径ガイドロッド7にボルトなどで固定した被検知用の突起33が第1長孔32に進入している。ここでは、第1長孔32から外部に突き出ている。突起33は、固定部34と被検知部35がL字型の状態で形成され、固定部34がボルト付けで小径ガイドロッド7に固定され、被検知部35が上記のように第1長孔32に進入している。ここでは、被検知部35は、第1長孔32から突き出ている。
【0036】
外筒18に、中心軸線O-O方向の第2長孔37が開けられている。第2長孔37は、
図3に示すように、大径ロッド6に開けた第1長孔32とほぼ同じ形状と寸法に設定してある。被検知部35は、
図1(C)に見られるように、第2長孔37から外部へ突き出ることとなく第2長孔37内に配置され、第2長孔37内を中心軸線O-O方向に進退できるようになっている。
【0037】
圧縮コイルスプリング17の張力が小径ガイドロッド7に作用しているので、小径ガイドロッド7に固定された突起33が長孔32の下端面38(
図3参照)に押し付けられて、大径ロッド6に対する小径ガイドロッド7の最長突出長さが設定される。このときのばね室16の中心軸線O-O方向の距離が、最大距離となっている。なお、大径ロッド6の下端面36が、仮止室21に待機しているナット1の押出し面とされている。
【0038】
つぎに、センサーについて説明する。
【0039】
符号40で示されたセンサーは、
図1(C)に示すように、被検知部35が正常位置に停止したときに検知信号を発信する。第2長孔37や第1長孔32が開口状態で露出していると、鉄屑や何等かのゴミ屑が各長孔内に進入して、摺動作用に支障をきたす恐れがある。このような問題を解消するために、第2長孔37を封鎖する板状の蓋部材41がボルト付けなどで取り付けられている。なお、センサー40の種類としては、いろいろなものが採用できるが、例えば、静電容量型近接センサーが適当である。なお、
図3においては、理解しやすくするために、蓋部材41、第2長孔37、外筒18などは、2点鎖線で示されている。
【0040】
正常位置に停止した被検知部35を正確に検知するために、センサー40と被検知部35の相対位置が正しく設定されている。こうするためには、蓋部材41を所定の位置に取り付けた時に、センサー40が正しい位置となるようにしてある。ここでは、
図1(E)に拡大して示したように、蓋部材41に窪み42を形成して、そこにセンサー40を嵌め込んで取り付けてある。符号43は、センサー40の信号線である。
【0041】
図1(C)に示すように、センサー40と被検知部35の相対位置が正しく設定されると、センサー40からの信号によって、可動電極15が所定の時期に進出する。このような動作は、一般的な制御システムで実施することができる。
【0042】
この実施例をもとにして上記制御システムを説明すると、例えば、簡単なコンピュータ装置やシーケンス回路で構成された制御装置に作業者が起動信号を入力すると、制御装置からの指令信号で空気切換弁が動作して、エアシリンダ30の所定ストローク分だけ供給ロッド5が進出する。この進出によって、小径ガイドロッド7が貫通しているナット1が小径ガイドロッド7を滑降して、電極ガイドピン10に正しく供給されると、供給ロッド5の進出が停止し(この進出停止位置の設定は後述する)、センサー40と被検知部35が向かい合った位置関係で、両者の相対位置が正しく設定される。このときにセンサー40から発信される信号で、制御装置から可動電極15の進出許可信号が発信されて、鋼板部品11へのナット溶接が完了する。上述のような制御装置を中心にした装置作動は、前記特許文献1にも記載されている。
【0043】
つぎに、ばね室の中心軸線方向距離について説明する。
【0044】
図1(B)や(C)および
図2(B)に示すように、供給ロッド5が正常な進出をしている時には、ばね室16の中心軸線方向距離は最大長さL1とされている。作業者の不注意で
図2(A)に示すように、作業者の手が、小径ガイドロッド7と電極ガイドピン10の間に挟み付けられることがあり、通常は指が挟まれる場合が多い。このような事態になると、停止した小径ガイドロッド7は、大径ロッド6の進出によって中心軸線O-O方向の後退方向に相対的に押し込まれる。このときに、小径ガイドロッド7は圧縮コイルスプリング17を押し縮めながら、ばね室16内に進入してゆく。この押し込まれる長さは、指が挟まれた時の小径ガイドロッド7の先端部と電極ガイドピン10の間の距離、すなわち指の太さに相当する、挟まれ危険距離L2である。
【0045】
小径ガイドロッド7と電極ガイドピン10の間の距離、すなわち指の太さに相当する、挟まれ危険距離L2は、前述のように、男性作業者で16~19mm位、女性作業者で13~16mm位と認識するのが妥当である。つまり、挟まれ危険距離L2は、ここに掲げた寸法を前提にして決定される。ここでは、L2は弾性作業者の太い指の19mmとされている。
【0046】
ばね室16の中心軸線O-O方向の距離L1は、作業者の手が小径ガイドロッド7と電極ガイドピン10の間に挟まれたときの、挟まれ危険距離L2の3倍以上に設定されている。ここでの挟まれ危険距離L2は、3.5倍に相当する66.5mmである。
【0047】
このような3倍以上の設定をすることによって、距離L2が短い段階、すなわち圧縮コイルスプリング17の圧縮長さが短くて、ばね反力が小さい段階でばね反力が大きくならない状態になるので、軽度の痛み、あるいは軽症で済むことなり、作業者保護の面で好適である。
【0048】
距離L1が距離L2の3倍未満であると、距離L1が短すぎることとなり、指に作用する圧縮コイルスプリング17の弾性反力が大きくなり、作業者保護の面で不十分なものとなる。距離L1が距離L2の5倍以上になると、指に対するばね反力軽減の面では良好であるが、圧縮コイルスプリング17による小径ガイドロッド7の押出し力に不足を来す恐れがあり、また、供給ロッド5や装置全体のコンパクト化の面で好ましくない。
【0049】
図1(E)は、同図(C)のE-E断面図であるが、同図(A)のE-E断面図でもある。
【0050】
つぎに、供給ロッドの進出長さの加減構造を説明する。
【0051】
上述の動作において、
図1(C)に示すように、小径ガイドロッド7の先端を電極ガイドピン10の直前で正しく停止させる必要がある。
【0052】
つまり、供給ロッド5の進出長さを所定長さにすることである。このための構造は種々なものが採用できるが、その一事例が
図4(A)に示した構造である。ここでは、大径ロッド6の端部に固定した円形のフランジ44を、外筒18の内側に形成したストッパ面45に突き当てて停止する構造とされている。フランジ44は、大径ロッド6とピストンロッド31の間に固定されている。したがって、エアシリンダ30によって供給ロッド5が進出すると、フランジ44がストッパ面45で受け止められて、小径ガイドロッド7の先端部は正しい位置で停止する。つまり、供給ロッド5の進出位置が決まる。
【0053】
固定電極9の配置箇所、すなわち電気抵抗溶接装置の配置箇所が変更されると、供給ロッド5の最大進出長さを変更して対応する必要がある。その対応方法には色々な構造が採用できる。ここでは簡単な事例として、ストッパ面45の位置を変更することで対応している。
図4(B)に示した事例は、外筒18内に円筒型の調整部材47を圧入して、ストッパ面45の位置を変更したもので、新たな環状のストッパ面は符号45aで示されている。この場合は、供給ロッド5の最大進出距離が、調整部材47の長さL3分だけ短くなっている。逆に、切削加工でストッパ面45を供給ロッド5の先端側に移動すれば、供給ロッド5の最大進出距離は長くなる。
【0054】
また、上記のような方式に換えて、エアシリンダ30のストロークを変化させるような制御を採用することも可能である。すなわち、図示していないが、エアシリンダ30の外周面にピストン位置の検知スイッチを取り付けて、ピストン移動量が所定量に達したところで発信される信号でエアシリンダ30の進出動作を中止する。
【0055】
つぎに、センサーの位置変更について説明する。
【0056】
センサー40の位置変更は、蓋部材41へのセンサー40の取り付け位置の変更によって行われる。この変更の仕方には、種々なものが採用できる。
図4にしたがって説明したような、供給ロッド5の進出長さに変更があると、被検知部35の停止位置が変わるので、センサー位置の変更が必要となる。
【0057】
図5(A)は、外筒18から外した蓋部材41を裏返して示したもので、同図(B)にも示すように、溝状の前記窪み42にセンサー40を嵌め込んで、ボルト48で蓋部材41に固定したものである。
【0058】
窪み42は、複数個設けてあり、被検知部35の停止位置変更箇所を見込んで予め設けてある。ここでは、窪み42は4個設けてある。例えば、複数個の窪み42を一定間隔で設けたり、間隔を不規則に変えて設けたりすることも可能である。
【0059】
図5(C)に示した事例は、上記のような複数個の窪み42を止めて、蓋部材41の裏面49を平坦面にし、ボルト48のねじ孔位置を自由に設けて、位置変更に対応している。2点鎖線で示すように、必要な箇所へ滑らせるようにして自由に移動することができる。
【0060】
つぎに、装置の動作について説明する。
【0061】
装置の動作開始前の状態は、圧縮コイルスプリング17の弾力で突起33が第1長孔32の下端面38に押し付けられ、エアシリンダ30が最後退をしていることによって、
図1(D)に示すように、小径ガイドロッド7の先端が仮止室21から後退した位置におかれている。
【0062】
ここでエアシリンダ30の進出動作で供給ロッド5が進出すると、仮止室21に待機しているナット1のねじ孔3に小径ガイドロッド7が進入して串刺し状となり、さらに進出して押出し面36がナット1の上面を押すことによって、ナット1は停止ガイド板23を擦りながら送りだされ、ナット1は小径ガイドロッド7を滑降する。供給ロッド5の進出が電極ガイドピン10の直前で停止すると、ナット1は慣性力で鋼板部品11上に移載される。このときに電極ガイドピン10が相対的にねじ孔3に進入して、ナット1の位置決めが完了する。
【0063】
上記のようにナット供給が完了した時点では、突起33が第1長孔32の下端面38に押し付けられているので、被検知部35はセンサー40と正しく向かい合うので、このときに発信されたセンサー40の信号によって、可動電極15の進出がなされる。この可動電極15の進出前には、前もって供給ロッド5が後退しており、可動電極15が進出してナット1を加圧するこができるようになっている。その後、溶接電流が通電されて電気抵抗溶接が完了する。
【0064】
図2(A)に示すように、作業者の指が小径ガイドロッド7と電極ガイドピン10の間に挟まれると、小径ガイドロッド7は相対的に圧縮コイルスプリング17を縮めながらばね室16内へ押し戻される。このような押し戻し変位によって、被検知部35はセンサー40からずれた位置に停止するので、センサー40からの電極進出許可信号が発信されない。よって、可動電極15の進出は行われることなく、電極間に指が挟み付けられるような大事にはいたらない。
【0065】
上述の実施例は、作業者の安全性を主眼としたものであるが、小径ガイドロッド7が大径ロッド6内に押し込まれる現象は、例えば、スパナのような工具や角形断面の鋼板部品などが、何等かの原因で小径ガイドロッド7と電極ガイドピン10の間に挟まれるような場合にも発生する。
【0066】
以上に説明した実施例の作用効果は、つぎのとおりである。
【0067】
電気抵抗溶接装置の配置事情や、供給ロッド装置の配置スペースによって、供給ロッド5の進出長さを長くしたり短くしたりすることがある。このような場合、第1長孔32の端部38に押し付けられて停止している被検知部35の停止位置も変更されるので、蓋部材41に取り付けられたセンサー40の位置も変更しなければならない。本発明においては、センサー40が蓋部材41に取り付けられているので、その取り付け位置を変更するときには、簡単な付け替え作業で済ませることができ、センサー40の位置調整機構の簡素化や調整作業の単純化が達成できる。
【0068】
蓋部材41の取り付けによって、鉄屑や溶接スパッタなどの不純物が内部に侵入することが防止でき、摺動部分の動作が円滑になされる。蓋部材41にセンサー40が取り付けてあるので、センサー40の取り付け位置調整と、不純物の侵入遮断が同時に実現し、構造簡素化と多機能化が同時に達成できる。
【0069】
蓋部材41を板状の部材で構成した場合には、センサー40を第1、第2の両長孔32、37の長手方向に沿って移動させて、センサー40の取り付け箇所を変えることとなり、センサー40の位置変更が行いやすくなる。
【0070】
第1長孔32と第2長孔37は、ほぼ全域にわたって連通した位置関係とされているので、被検知部35がセンサー40に正しく対応すると、被検知部35の存在が確実に検出され、装置としての検知信頼性や動作信頼性が向上する。また、被検知部35の先端部分を第2長孔37に進入するまで伸ばすことにより、被検知部35とセンサー40を接近した位置関係とすることができ、センサー40の検知精度が向上する。
【0071】
供給ロッド5の進出長さの変更にともなう被検知部35の位置変更を見込んで、第1長孔32と第2長孔37の長さを、予め長尺化したり短尺化したりすることができるので、供給ロッド5の種々な進出長さの変更に対応することが行いやすくなる。
上述のように、本発明の装置によれば、プロジェクションナットの供給ロッド装置の内部を、不純物が侵入することのない良好な状態に維持し、供給ロッドの作動状態の変更を簡単に行うことができる。したがって、自動車の車体溶接工程や、家庭電化製品の板金溶接工程などの広い産業分野で利用できる。