(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050083
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】ロウアーベーンキャリア分解組立装置およびこれを用いたロウアーベーンキャリアの分解組立方法
(51)【国際特許分類】
F01D 25/28 20060101AFI20230403BHJP
F01D 9/04 20060101ALI20230403BHJP
F01D 25/00 20060101ALN20230403BHJP
【FI】
F01D25/28 E
F01D9/04
F01D25/00 X
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022087338
(22)【出願日】2022-05-30
(31)【優先権主張番号】10-2021-0128696
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】507002918
【氏名又は名称】ドゥサン エナービリティー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュ、エウイ ジュン
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202GA03
3G202GA11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロウアータービンケーシングに設けられているロウアーベーンキャリアをロウアータービンケーシングから分解し、分解されたロウアーベーンキャリアを再度ロウアータービンケーシングに組立てる装置および方法を提供する。
【解決手段】ロウアーベーンキャリア分解組立装置100は、ロウアータービンケーシングの内部に設けられたロウアーベーンキャリア31に設けられるローリング治具110と、ローリング治具110とロウアーベーンキャリア31との接触部位に貫通するボルト部材120と、ボルト部材120に隣接して設けられ、ボルト部材120の離脱を防止するブロック部材130とを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロウアータービンケーシングの内部に設けられたロウアーベーンキャリアに設けられるローリング治具と、
前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとの接触部位に貫通するボルト部材と、
前記ボルト部材に隣接して設けられ、前記ボルト部材の離脱を防止するブロック部材とを含むロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項2】
前記ボルト部材は、
前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具に貫通するステム部と、
前記ステム部の一端に連結され、前記ステム部より直径が大きいヘッド部とを含み、
前記ブロック部材は、前記ボルト部材のヘッド部側に配置される、請求項1に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項3】
前記ヘッド部は、前記ローリング治具側に配置され、
前記ステム部は、前記ローリング治具側から前記ロウアーベーンキャリア側に貫通する、請求項2に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項4】
前記ステム部は、
一端に前記ヘッド部が連結され、外周面にスレッド(thread)が形成された第1ステム部と、
前記第1ステム部の他端に連結される第2ステム部とを含み、
前記ロウアーベーンキャリアは、前記ステム部が挿入される部位に前記第1ステム部のスレッドと締結されるスレッドが形成された、請求項2に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項5】
前記第2ステム部は、前記第1ステム部より直径が小さい、請求項4に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項6】
前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具との間の中心を貫通する仮想の軸方向を基準として、
前記ブロック部材は、
前記ヘッド部に対して前記軸方向に沿って離隔配置される一対の側面ブロック部と、
前記一対の側面ブロック部の間で前記一対の側面ブロック部を連結する連結ブロック部とを含む、請求項2に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項7】
前記一対の側面ブロック部は、前記ヘッド部より上下の長さがより長く、
前記連結ブロック部は、前記ヘッド部から離隔配置される、請求項6に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項8】
前記ボルト部材は、
前記ステム部の他端に連結され、角柱の形状に形成され、前記ボルト部材の回転のためのレンチ(Wrench)が設けられる突出部をさらに含む、請求項2に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項9】
前記突出部は、中空の形状に形成され、前記ボルト部材を前記ロウアーベーンキャリア側に引き寄せるためのアイボルト(Eye bolt)が内部に挿入されて締結されるように、内部にスレッドが形成された、請求項8に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項10】
前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具との間の中心を貫通する仮想の軸方向を基準として、
前記ロウアーベーンキャリアは、
前記軸方向に沿って互いに離隔配置される第1キャリア部材および第2キャリア部材と、
前記第1キャリア部材と第2キャリア部材との間を連結するキャリア本体とを含み、
前記ローリング治具は、
前記第1キャリア部材と接する第1治具部材と、
前記軸方向に沿って前記第1治具部材から離隔配置され、前記第2キャリア部材と接する第2治具部材と、
前記第1治具部材と第2治具部材との間で前記第1治具部材と第2治具部材とを連結し、前記第1治具部材の円周方向に沿って離隔配置される複数の治具連結部とを含む、請求項1に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項11】
前記ロウアータービンケーシングは、内周面に挿入溝が形成され、
前記第1キャリア部材は、前記キャリア本体より直径が大きく、前記挿入溝に挿入され、
前記第1キャリア部材が前記挿入溝に挿入された状態で、前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとが全体として共に前記軸方向を中心軸として回転する時、前記第1キャリア部材は、前記挿入溝から離脱し、前記第1治具部材は、前記挿入溝に挿入される、請求項10に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項12】
前記ロウアーベーンキャリアは、
前記第1キャリア部材と第2キャリア部材との間に配置され、前記キャリア本体の半径方向外側に配置され、前記ローリング治具側に配置され、前記ボルト部材が貫通するキャリアフランジをさらに含み、
前記ローリング治具は、
前記第1治具部材と第2治具部材との間に配置され、前記キャリアフランジと接するように配置され、前記ブロック部材が設けられる治具フランジをさらに含む、請求項10に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項13】
前記複数の治具連結部は、
前記第1治具部材と第2治具部材との間に配置される連結本体と、
前記連結本体から前記第1治具部材の円周方向に沿って突出し、前記ローリング治具の回転のためのロープが巻かれるワインディング突起とを含む、請求項10に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項14】
前記連結本体は、前記ローリング治具の半径方向を基準として外側の面に、前記ロープの通過するアイボルトが締結される治具貫通ホールが形成された、請求項13に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項15】
前記ロウアータービンケーシングは、内周面から半径方向内側に突出段が突出形成され、
前記第2キャリア部材は、前記第1キャリア部材より直径が小さく、前記突出段に対向するように配置され、
前記第2治具部材は、前記第1治具部材より直径が小さく、
前記第2キャリア部材が前記突出段に対向配置された状態で、前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとが全体として共に前記軸方向を中心軸として回転する時、前記第2キャリア部材は、前記突出段から離脱し、前記第2治具部材は、前記突出段に対向配置される、請求項10に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項16】
前記ロウアータービンケーシングは、内周面に挿入溝が形成され、前記挿入溝から前記軸方向に沿って離隔配置された位置で突出段が突出形成され、
前記キャリアフランジは、前記第2キャリア部材より半径方向外側により突出し、前記挿入溝と突出段との間に配置され、
前記治具フランジは、前記第2治具部材より半径方向外側により突出し、
前記キャリアフランジが前記突出段と前記挿入溝との間に配置された状態で、前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとが全体として共に前記軸方向を中心軸として回転する時、前記キャリアフランジは、前記ロウアーベーンキャリアから離脱し、前記治具フランジは、前記突出段と挿入溝との間に配置される、請求項12に記載のロウアーベーンキャリア分解組立装置。
【請求項17】
(A)ロウアータービンケーシングの内部に設けられたロウアーベーンキャリアに設けられるローリング治具と、前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとの接触部位に貫通するボルト部材と、前記ボルト部材に隣接して設けられ、前記ボルト部材の離脱を防止するブロック部材とを含むロウアーベーンキャリア分解組立装置を用意するステップと、
(B)アッパータービンケーシングをロウアータービンケーシングから分解させ、アッパーベーンキャリアおよびこれに設けられたアッパータービンベーンをロウアーベーンキャリアから分解させた後、ロウアーベーンキャリアに前記ローリング治具を装着するステップと、
(C)前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとの接触部位に前記ボルト部材を貫通するステップと、
(D)前記ブロック部材を前記ボルト部材と隣接して設けるステップと、
(E)前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具との間の中心を貫通する仮想の軸方向を基準として、前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具とを全体として共に回転させて、前記ロウアーベーンキャリアを前記ロウアータービンケーシングから離脱させながら同時に前記ローリング治具を前記ロウアータービンケーシングに位置させるステップと、
(F)前記(E)ステップにより、前記ローリング治具の上側に配置された前記ロウアーベーンキャリアを前記ローリング治具から分解させるステップとを含むロウアーベーンキャリア分解方法。
【請求項18】
前記ボルト部材は、
前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具に貫通するステム部と、前記ステム部の一端に連結され、前記ステム部より直径が大きいヘッド部とを含み、
前記ブロック部材は、前記ボルト部材のヘッド部側に配置され、
前記ステム部は、
一端に前記ヘッド部が連結され、外周面にスレッド(thread)が形成された第1ステム部と、前記第1ステム部の他端に連結される第2ステム部とを含み、
前記ロウアーベーンキャリアは、前記ステム部が挿入される部位に前記第1ステム部のスレッドと締結されるスレッドが形成され、
前記(F)ステップは、前記ボルト部材を回転させて下側に移動させながら前記ボルト部材のスレッドを前記ロウアーベーンキャリアのスレッドから離脱させた後、前記ロウアーベーンキャリアを上側に引き上げて前記ローリング治具から分解させる、請求項17に記載のロウアーベーンキャリア分解方法。
【請求項19】
(A)ロウアータービンケーシングの内部に設けられたロウアーベーンキャリアに設けられるローリング治具と、前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとの接触部位に貫通するボルト部材と、前記ボルト部材に隣接して設けられ、前記ボルト部材の離脱を防止するブロック部材とを含むロウアーベーンキャリア分解組立装置を用意するステップと、
(B)ロウアータービンケーシングに前記ローリング治具が位置し、前記ローリング治具に前記ボルト部材およびブロック部材が設けられた状態で、ロウアーベーンキャリアを前記ローリング治具の上側で前記ローリング治具に載置させながら同時に前記ボルト部材を前記ロウアーベーンキャリアに貫通させるステップと、
(C)前記ボルト部材を上側に引き上げた後に回転させて、前記ボルト部材のスレッドが前記ロウアーベーンキャリアのスレッドに締結されるようにするステップと、
(D)前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具との間の中心を貫通する仮想の軸方向を基準として、前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具とを全体として共に回転させて、前記ローリング治具を前記ロウアータービンケーシングから離脱させ、前記ロウアーベーンキャリアを前記ロウアータービンケーシングに設けるステップと、
(E)前記ブロック部材およびボルト部材を前記ローリング治具およびロウアーベーンキャリアから分解させた後、前記ローリング治具を前記ロウアーベーンキャリアから分解させるステップとを含むロウアーベーンキャリア組立方法。
【請求項20】
前記ボルト部材は、
前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具に貫通するステム部と、前記ステム部の一端に連結され、前記ステム部より直径が大きいヘッド部とを含み、
前記ブロック部材は、前記ボルト部材のヘッド部側に配置され、
前記ステム部は、
一端に前記ヘッド部が連結され、外周面にスレッド(thread)が形成された第1ステム部と、前記第1ステム部の他端に連結される第2ステム部とを含み、
前記ロウアーベーンキャリアは、前記ステム部が挿入される部位に前記第1ステム部のスレッドと締結されるスレッドが形成され、
前記ボルト部材は、
前記ステム部の他端に連結され、角柱の形状に形成され、前記ボルト部材の回転のためのレンチ(Wrench)が設けられる突出部をさらに含み、
前記突出部は、中空の形状に形成され、前記ボルト部材を前記ロウアーベーンキャリア側に引き寄せるためのアイボルト(Eye bolt)が内部に挿入されて締結されるように、内部にスレッドが形成され、
前記(C)ステップは、アイボルトを前記突出部の内部のスレッドに締結させた状態で、前記アイボルトを上側に引っ張って前記ボルト部材を引き上げた後、レンチを前記突出部の外周面に設けて回転させて、前記第1ステム部のスレッドを前記ロウアーベーンキャリアのスレッドと締結させる、請求項19に記載のロウアーベーンキャリア組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロウアータービンケーシングに設けられているロウアーベーンキャリアをロウアータービンケーシングから分解し、分解されたロウアーベーンキャリアを再度ロウアータービンケーシングに組立てる装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボマシンとは、ターボマシンを通過する流体(特に、気体)により、電力生成のための動力を発生させる装置を意味する。したがって、ターボマシンは、通常、発電機と共に設けられて用いられる。このようなターボマシンには、ガスタービン(Gas turbine)、スチームタービン(Steam turbine)、風力タービン(Wind power turbine)などが該当する。ガスタービンは、圧縮空気と天然ガスとを混合して燃焼させて燃焼ガスを生成し、このように生成された燃焼ガスを用いて発電のための動力を生成する装置である。スチームタービンは、水を加熱して生成される蒸気を利用して発電のための動力を生成する装置である。風力タービンは、風力を発電用動力に変換させる装置である。
【0003】
ターボマシンのうちガスタービンについて説明すれば、ガスタービンは、圧縮機と、燃焼器と、タービンとを含む。圧縮機は、圧縮機ケーシング内に複数の圧縮機ベーンと圧縮機ブレードとが交互に配置される。そして、圧縮機は、圧縮機入口スクロールストラット(Compressor inlet scroll strut)を介して外部の空気を吸入する。このように吸入された空気は、圧縮機の内部を通過しながら前記圧縮機ベーンと圧縮機ブレードによって圧縮される。燃焼器は、前記圧縮機で圧縮された圧縮空気を受けて燃料と混合させる。また、燃焼器は、圧縮空気と混合された燃料を点火器で点火して高温高圧の燃焼ガスを生成する。このように生成された燃焼ガスは、タービンに供給される。タービンは、タービンケーシング内に複数のタービンベーンとタービンブレードとが交互に配置される。そして、タービンは、燃焼器で生成された燃焼ガスを受けて内部に通過させる。タービンの内部を通過する燃焼ガスは、タービンブレードを回転させ、タービンの内部を完全に通過した燃焼ガスは、タービンディフューザを介して外部に吐出される。
【0004】
ターボマシンのうち蒸気タービンについて説明すれば、蒸気タービンは、蒸発器と、タービンとを含む。前記蒸発器は、外部から供給された水を加熱して蒸気を生成する。前記タービンは、ガスタービンにおけるタービンと同じく、タービンケーシング内に複数のタービンベーンとタービンブレードとが交互に配置される。ただし、蒸気タービンにおけるタービンは、燃焼ガスではない、前記蒸発器で生成された蒸気を内部に通過させて、タービンブレードを回転させる。
【0005】
ガスタービンや蒸気タービンは、いずれもタービンを共通して備える。前記タービンは、タービンロータと、タービンステータとを含み、前記タービンステータは、タービンケーシングと、タービンケーシングの内周面に設けられるベーンキャリアと、前記ベーンキャリアの内周面に設けられ、前記ベーンキャリアの円周方向に沿って配置される複数のタービンベーンとを含む。前記ベーンキャリアとこれに結合された複数のタービンベーンは、前記タービンケーシングの軸方向に沿って多段(Multi-stage)に配置される。そして、前記タービンケーシングは、中心を貫通する水平面を基準として上下に区分されるアッパー(Upper)タービンケーシングおよびロウアー(Lower)タービンケーシングを含み、前記ベーンキャリアは、前記アッパータービンケーシングおよびロウアータービンケーシングにそれぞれ設けられるアッパーベーンキャリアおよびロウアーベーンキャリアを含む。もちろん、前記複数のタービンベーンも、前記アッパーベーンキャリアに設けられる複数のアッパータービンベーンと、前記ロウアーベーンキャリアに設けられる複数のロウアータービンベーンとを含む。
【0006】
前記特定段(Stage)のベーンキャリアが損傷するなどの理由によって当該ベーンキャリアを保守または取替を行う必要がある場合、当該特定段のベーンキャリアは、前記タービンケーシングから分解されなければならない。アッパーベーンキャリアの場合、アッパータービンケーシングのみを除去すれば作業者が直ちに接近可能であるが、ロウアーベーンキャリアの場合、アッパータービンケーシングを除去した後、当該段のアッパーベーンキャリアを除去しても、隣接する他の段のアッパーベーンキャリアのため、当該段のロウアーベーンキャリアに接近することがやや難しい問題がある。
【0007】
ロウアーベーンキャリアをロウアータービンケーシングから分解するために、目的とする段のロウアーベーンキャリアにローリング治具を設け、ローリング治具とロウアーベーンキャリアとを全体として共に回転させて、ローリング治具はロウアータービンケーシングに設け、ロウアーベーンキャリアはロウアータービンケーシングの上側に取り出す装置および方法が用いられる。しかし、このような従来のロウアーベーンキャリア分解組立装置は、過度に多い部品数と追加加工が適用されることはもちろん、ローリング治具とロウアーベーンキャリアとを全体として共に回転させる時に、前記分解組立装置に存在する各種部品が落下する問題がある。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]米国公開特許第2016/0222829号(発明の名称:Rotating device for a gas turbine and method for rotating a component)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するために開発されたものであって、少ない部品数と追加加工でもロウアーベーンキャリアをロウアータービンケーシングから分解させ、ロウアータービンケーシングの分解時の部品の落下離脱などの問題を防止できるロウアーベーンキャリア分解組立装置およびこれを用いたロウアーベーンキャリアの分解組立方法を提供することを目的とある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ロウアータービンケーシングの内部に設けられたロウアーベーンキャリアに設けられるローリング治具と、前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとの接触部位に貫通するボルト部材と、前記ボルト部材に隣接して設けられ、前記ボルト部材の離脱を防止するブロック部材とを含むロウアーベーンキャリア分解組立装置を提供する。
【0010】
前記ボルト部材は、前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具に貫通するステム部と、前記ステム部の一端に連結され、前記ステム部より直径が大きいヘッド部とを含み、前記ブロック部材は、前記ボルト部材のヘッド部側に配置される。
【0011】
前記ヘッド部は、前記ローリング治具側に配置され、前記ステム部は、前記ローリング治具側から前記ロウアーベーンキャリア側に貫通することができる。
【0012】
前記ステム部は、一端に前記ヘッド部が連結され、外周面にスレッド(thread)が形成された第1ステム部と、前記第1ステム部の他端に連結される第2ステム部とを含み、前記ロウアーベーンキャリアは、前記ステム部が挿入される部位に前記第1ステム部のスレッドと締結されるスレッドが形成される。
【0013】
前記第2ステム部は、前記第1ステム部より直径が小さく形成される。
【0014】
前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具との間の中心を貫通する仮想の軸方向を基準として、前記ブロック部材は、前記ヘッド部に対して前記軸方向に沿って離隔配置される一対の側面ブロック部と、前記一対の側面ブロック部の間で前記一対の側面ブロック部を連結する連結ブロック部とを含むことができる。
【0015】
前記一対の側面ブロック部は、前記ヘッド部より上下の長さがより長く、前記連結ブロック部は、前記ヘッド部から離隔配置される。
【0016】
前記ボルト部材は、前記ステム部の他端に連結され、角柱の形状に形成され、前記ボルト部材の回転のためのレンチ(Wrench)が設けられる突出部をさらに含むことができる。
【0017】
前記突出部は、中空の形状に形成され、前記ボルト部材を前記ロウアーベーンキャリア側に引き寄せるためのアイボルト(Eye bolt)が内部に挿入されて締結されるように、内部にスレッドが形成される。
【0018】
前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具との間の中心を貫通する仮想の軸方向を基準として、前記ロウアーベーンキャリアは、前記軸方向に沿って互いに離隔配置される第1キャリア部材および第2キャリア部材と、前記第1キャリア部材と第2キャリア部材との間を連結するキャリア本体とを含み、前記ローリング治具は、前記第1キャリア部材と接する第1治具部材と、前記軸方向に沿って前記第1治具部材から離隔配置され、前記第2キャリア部材と接する第2治具部材と、前記第1治具部材と第2治具部材との間で前記第1治具部材と第2治具部材とを連結し、前記第1治具部材の円周方向に沿って離隔配置される複数の治具連結部とを含むことができる。
【0019】
前記ロウアータービンケーシングは、内周面に挿入溝が形成され、前記第1キャリア部材は、前記キャリア本体より直径が大きく、前記挿入溝に挿入され、前記第1キャリア部材が前記挿入溝に挿入された状態で、前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとが全体として共に前記軸方向を中心軸として回転する時、前記第1キャリア部材は、前記挿入溝から離脱し、前記第1治具部材は、前記挿入溝に挿入される。
【0020】
前記ロウアーベーンキャリアは、前記第1キャリア部材と第2キャリア部材との間に配置され、前記キャリア本体の半径方向外側に配置され、前記ローリング治具側に配置され、前記ボルト部材が貫通するキャリアフランジをさらに含み、前記ローリング治具は、前記第1治具部材と第2治具部材との間に配置され、前記キャリアフランジと接するように配置され、前記ブロック部材が設けられる治具フランジをさらに含むことができる。
【0021】
前記治具連結部は、前記第1治具部材と第2治具部材との間に配置される連結本体と、前記連結本体から前記第1治具部材の円周方向に沿って突出し、前記ローリング治具の回転のためのロープが巻かれるワインディング突起とを含むことができる。
【0022】
前記連結本体は、前記ローリング治具の半径方向を基準として外側の面に、前記ロープの通過するアイボルトが締結される治具貫通ホールが形成される。
【0023】
前記ロウアータービンケーシングは、内周面から半径方向内側に突出段が突出形成され、前記第2キャリア部材は、前記第1キャリア部材より直径が小さく、前記突出段に対向するように配置され、前記第2治具部材は、前記第1治具部材より直径が小さく、前記第2キャリア部材が前記突出段に対向配置された状態で、前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとが全体として共に前記軸方向を中心軸として回転する時、前記第2キャリア部材は、前記突出段から離脱し、前記第2治具部材は、前記突出段に対向配置される。
【0024】
前記ロウアータービンケーシングは、内周面に挿入溝が形成され、前記挿入溝から前記軸方向に沿って離隔配置された位置で突出段が突出形成され、前記キャリアフランジは、前記第2キャリア部材より半径方向外側により突出し、前記挿入溝と突出段との間に配置され、前記治具フランジは、前記第2治具部材より半径方向外側により突出し、前記キャリアフランジが前記突出段と前記挿入溝との間に配置された状態で、前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとが全体として共に前記軸方向を中心軸として回転する時、前記キャリアフランジは、前記ロウアーベーンキャリアから離脱し、前記治具フランジは、前記突出段と挿入溝との間に配置される。
【0025】
本発明は、(A)ロウアータービンケーシングの内部に設けられたロウアーベーンキャリアに設けられるローリング治具と、前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとの接触部位に貫通するボルト部材と、前記ボルト部材に隣接して設けられ、前記ボルト部材の離脱を防止するブロック部材とを含むロウアーベーンキャリア分解組立装置を用意するステップと、(B)アッパータービンケーシングをロウアータービンケーシングから分解させ、アッパーベーンキャリアおよびこれに設けられたアッパータービンベーンをロウアーベーンキャリアから分解させた後、ロウアーベーンキャリアに前記ローリング治具を装着するステップと、(C)前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとの接触部位に前記ボルト部材を貫通するステップと、(D)前記ブロック部材を前記ボルト部材と隣接して設けるステップと、(E)前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具との間の中心を貫通する仮想の軸方向を基準として、前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具とを全体として共に回転させて、前記ロウアーベーンキャリアを前記ロウアータービンケーシングから離脱させながら同時に前記ローリング治具を前記ロウアータービンケーシングに位置させるステップと、(F)前記Eステップにより、前記ローリング治具の上側に配置された前記ロウアーベーンキャリアを前記ローリング治具から分解させるステップとを含むロウアーベーンキャリア分解方法を提供する。
【0026】
前記(F)ステップは、前記ボルト部材を回転させて下側に移動させながら前記ボルト部材のスレッドを前記ロウアーベーンキャリアのスレッドから離脱させた後、前記ロウアーベーンキャリアを上側に引き上げて前記ローリング治具から分解させることができる。
【0027】
本発明は、(A)ロウアータービンケーシングの内部に設けられたロウアーベーンキャリアに設けられるローリング治具と、前記ローリング治具とロウアーベーンキャリアとの接触部位に貫通するボルト部材と、前記ボルト部材に隣接して設けられ、前記ボルト部材の離脱を防止するブロック部材とを含むロウアーベーンキャリア分解組立装置を用意するステップと、(B)ロウアータービンケーシングに前記ローリング治具が位置し、前記ローリング治具に前記ボルト部材およびブロック部材が設けられた状態で、ロウアーベーンキャリアを前記ローリング治具の上側で前記ローリング治具に載置させながら同時に前記ボルト部材を前記ロウアーベーンキャリアに貫通させるステップと、(C)前記ボルト部材を上側に引き上げた後に回転させて、前記ボルト部材のスレッドが前記ロウアーベーンキャリアのスレッドに締結されるようにするステップと、(D)前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具との間の中心を貫通する仮想の軸方向を基準として、前記ロウアーベーンキャリアとローリング治具とを全体として共に回転させて、前記ローリング治具を前記ロウアータービンケーシングから離脱させ、前記ロウアーベーンキャリアを前記ロウアータービンケーシングに設けるステップと、(E)前記ブロック部材およびボルト部材を前記ローリング治具およびロウアーベーンキャリアから分解させた後、前記ローリング治具を前記ロウアーベーンキャリアから分解させるステップとを含むロウアーベーンキャリア組立方法を提供する。
【0028】
前記(C)ステップは、アイボルトを前記突出部の内部のスレッドに締結させた状態で、前記アイボルトを上側に引っ張って前記ボルト部材を引き上げた後、レンチを前記突出部の外周面に設けて回転させて、前記第1ステム部のスレッドを前記ロウアーベーンキャリアのスレッドと締結させることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によるロウアーベーンキャリア分解組立装置およびこれを用いたロウアーベーンキャリアの分解組立方法によれば、ローリング治具とロウアーベーンキャリアとの接触部位にボルト部材が貫通し、ブロック部材が前記ボルト部材に隣接して設けられて前記ボルト部材を取り囲むように配置されることにより、ローリング治具とロウアーベーンキャリアを回転させた後、前記ロウアーベーンキャリアをローリング治具から分解する時に、前記ボルト部材が落下してロウアータービンケーシングに落ちるのを防止することができる。
【0030】
また、本発明によれば、ロウアーベーンキャリア分解組立装置がローリング治具と、ボルト部材と、ブロック部材とを含む構造に設計されることにより、従来に比べて部品数を減少させることができることはもちろん、別の追加加工なくてもロウアーベーンキャリアをロウアータービンケーシングに対して分解または組立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】ロウアータービンケーシングにロウアーベーンキャリアが設けられた状態で、ロウアーベーンキャリア分解組立装置が前記ロウアーベーンキャリアに装着された様子を示す斜視図である。
【
図4】
図2に示したロウアーベーンキャリア分解組立装置およびロウアーベーンキャリアの斜視図である。
【
図8】
図4におけるローリング治具の上部に対する拡大図である。
【
図9】ローリング治具とロウアーベーンキャリアが中心軸を基準として回転するに伴い、ローリング治具とロウアーベーンキャリアの上下が反転した様子を示す図である。
【
図10】
図9におけるボルト部材のスレッドがロウアーベーンキャリアのスレッドから分解された後、下側に移動した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は図面に示された実施例を参照して説明されたが、これは例示に過ぎず、本技術分野における通常の知識を有する者であれば、これから多様な変形および均等な他の実施例が可能であるという点を理解するであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は添付した特許請求の範囲の技術的思想によって定められなければならない。
【0033】
以下、本発明について図面を参照して説明する。この時、本発明に係るロウアーベーンキャリア分解組立装置および方法が適用されるターボマシンは、ガスタービンであると仮定して説明するが、これは一例に過ぎず、本発明に係るロウアーベーンキャリア分解組立装置および方法が適用されるターボマシンは、ガスタービンではない、蒸気タービンに該当してもよいことはもちろんであろう。
【0034】
図1を参照すれば、ガスタービン10は、圧縮機11と、燃焼器12と、タービン13とを含む。気体(圧縮空気または燃焼ガス)の流動方向を基準とした時、ガスタービン10の上流側には圧縮機11が配置され、下流側にはタービン13が配置される。そして、圧縮機11とタービン13との間には燃焼器12が配置される。
【0035】
圧縮機11は、圧縮機ケーシングの内部に圧縮機ベーンと圧縮機ロータとを収容し、タービン13は、タービンケーシング20、21の内部にタービンベーン40、41とタービンロータ14とを収容する。このような圧縮機ベーンと圧縮機ロータは、圧縮空気の流動方向に沿って多段(Multi-stage)に配置され、タービンベーン40、41とタービンロータ14も、燃焼ガスの流動方向に沿って多段に配置される。この時、圧縮機11は、吸入された空気が圧縮できるように、前段(Front-stage)から後段(Rear-stage)側へいくほど内部空間が減少し、逆に、タービン13は、燃焼器から供給された燃焼ガスが膨張できるように、前段から後段側へいくほど内部空間が大きくなる構造に設計される。
【0036】
一方、圧縮機11の最後段部側に位置した圧縮機ロータと、タービン13の最前段部側に位置したタービンロータ14との間には、タービン13で発生した回転トルクを前記圧縮機11に伝達するトルク伝達部材としてのトルクチューブが配置される。前記トルクチューブは、
図1に示されるように、計3つの段からなる複数のトルクチューブディスクで構成されるが、これは、本発明の様々な実施例の1つに過ぎず、前記トルクチューブは、4つ以上の段、または2つ以下の段からなる複数のトルクチューブディスクで構成されてもよい。
【0037】
前記圧縮機ロータは、圧縮機ディスクと、圧縮機ブレードとを含む。前記圧縮機ケーシングの内部には、複数(例えば、14枚)の圧縮機ディスクが備えられ、前記それぞれの圧縮機ディスクは、タイロッドによって軸方向に離隔しないように締結される。さらに詳しくは、前記それぞれの圧縮機ディスクは、中心部が前記タイロッドによって貫通した状態で、互いに軸方向に沿って整列される。そして、隣接するそれぞれの圧縮機ディスクは、対向する面が前記タイロッドによって圧着されて、互いに相対的な回転ができないように配置される。
【0038】
前記圧縮機ディスクの外周面には、複数の圧縮機ブレードが放射状に結合される。また、前記圧縮機ブレードの間には、同じ段(Stage)を基準とした時、前記圧縮機ケーシングの内周面に環状に設けられる複数の圧縮機ベーンがそれぞれ配置される。前記圧縮機ベーンは、前記圧縮機ディスクとは異なり、回転しないように固定された状態を維持し、圧縮機ブレードを通過した圧縮空気の流れを整列して、下流側に位置する圧縮機ブレードに圧縮空気を案内する役割を果たす。この時、前記圧縮機ケーシングと圧縮機ベーンは、前記圧縮機ロータと区分するために、圧縮機ステータという包括的な名称で定義される。
【0039】
前記タイロッドは、前記複数の圧縮機ディスクと、後述するタービンディスクの中心部を貫通するように配置され、一側端部は、圧縮機の最前段部側に位置した圧縮機ディスク内に締結され、他側端部は、固定ナットによって締結される。
【0040】
前記タイロッドの形態は、ガスタービンによって多様な構造からなるので、必ずしも
図1に提示された形態に限定されるものではない。すなわち、図示のように、1つのタイロッドが圧縮機ディスクとタービンディスクの中央部を貫通する形態を有してもよく、複数のタイロッドが円柱状に配置される形態を有してもよいし、これらの混用も可能である。
【0041】
図示しないが、ガスタービンの圧縮機には、流体の圧力を高めた後、燃焼器の入口に入る流体の流動角を設計流動角に合わせるために、案内翼の役割を果たすデスワーラ(Deswirler)が設けられる。
【0042】
前記燃焼器12では、流入した圧縮空気を燃料と混合、燃焼させて高いエネルギーの高温、高圧の燃焼ガスを作り、等圧燃焼過程で燃焼器およびタービン部品が耐えられる耐熱限度まで燃焼ガスの温度を高める。
【0043】
ガスタービン10の燃焼システムを構成する燃焼器は、セル(Cell)状に形成される燃焼器ケーシング内に複数配列され、燃料を噴射するノズルと、燃焼室を形成するライナ(Liner)と、燃焼器とタービンとの連結部になるトランジションピース(Transition piece)とを含む。
【0044】
具体的には、前記ライナは、燃料ノズルによって噴射される燃料が圧縮機の圧縮空気と混合されて燃焼される燃焼空間を提供する。このようなライナは、空気と混合された燃料が燃焼される燃焼空間を提供する燃焼チャンバと、前記燃焼チャンバを取り囲みながら環状空間をなすライナ環状流路とが形成される。また、ライナの前端には燃料を噴射するノズルが結合され、側壁には点火器が結合される。
【0045】
前記ライナ環状流路には、ライナの外壁に設けられる複数のホール(Hole)を通して流入した圧縮空気が流動し、後述するトランジションピースを冷却させた圧縮空気もこれを通して流動する。このように圧縮空気がライナの外壁部に沿って流動することにより、前記燃焼チャンバで燃料の燃焼によって発生する熱によってライナが熱損傷を被るのを防止することができる。
【0046】
ライナの後端には、点火プラグによって燃焼される燃焼ガスをタービン側に送ることができるようにトランジションピースが連結される。前記ライナと同じく、前記トランジションピースは、前記トランジションピースの内部空間を取り囲むトランジションピース環状流路が形成され、燃焼ガスの高い温度による破損が防止されるように、前記トランジションピース環状流路に沿って流れる圧縮空気によって外壁部が冷却される。
【0047】
一方、前記燃焼器12から出た高温、高圧の燃焼ガスは、上述したタービン13に供給される。タービン13に供給された高温高圧の燃焼ガスは、タービン13の内部を通過しながら膨張し、それによって、後述するタービンブレードに衝動および反動力を加えて回転トルクが発生する。このように得られた回転トルクは、上述したトルクチューブを経て圧縮機に伝達され、圧縮機の駆動に必要な動力を超える部分は発電機などを駆動するのに用いられる。
【0048】
前記タービン13は、基本的には圧縮機11の構造と類似している。すなわち、前記タービン13にも、圧縮機11の圧縮機ロータと類似の複数のタービンロータ14が備えられる。したがって、前記タービンロータ14も、タービンディスクと、これから放射状に配置される複数のタービンブレードとを含む。前記タービンブレードの間にも、同じ段を基準とした時、前記タービンケーシング20、21に環状に設けられる複数のタービンベーン40、41が備えられ、前記タービンベーン40、41は、タービンブレードを通過した燃焼ガスの流動方向をガイドする。この時、前記タービンケーシング20、21とタービンベーン40、41も、前記タービンロータ14と区分するために、タービンステータ15という包括的な名称で定義される。
【0049】
前記タービンステータ15は、タービンケーシング20、21と、タービンケーシング20、21の内周面に設けられるベーンキャリア30、31と、前記ベーンキャリア30、31の内周面に設けられ、前記ベーンキャリア30、31の円周方向に沿って配置される複数のタービンベーン40、41とを含む。前記ベーンキャリア30、31とこれに結合された複数のタービンベーン40、41は、前記タービンケーシング20、21の軸方向に沿って多段(Multi-stage)に配置される。そして、前記タービンケーシング20、21は、中心を貫通する水平面を基準として上下に区分されるアッパー(Upper)タービンケーシング20およびロウアー(Lower)タービンケーシング21を含み、前記ベーンキャリア30、31は、前記アッパータービンケーシング20およびロウアータービンケーシング21にそれぞれ設けられるアッパーベーンキャリア30およびロウアーベーンキャリア31を含む。もちろん、前記複数のタービンベーン40、41も、前記アッパーベーンキャリア30に設けられる複数のアッパータービンベーン40と、前記ロウアーベーンキャリア31に設けられる複数のロウアータービンベーン41とを含む。
【0050】
図2~
図10を参照すれば、本発明に係るロウアーベーンキャリア分解組立装置(100;以下、「分解組立装置」という)は、ローリング治具110と、ボルト部材120と、ブロック部材130とを含む。前記ローリング治具110は、前記ロウアーベーンキャリア31に設けられる。前記ボルト部材120は、前記ローリング治具110とロウアーベーンキャリア31との接触部位に貫通する。前記ブロック部材130は、前記ボルト部材120に隣接して設けられ、前記ボルト部材120の離脱を防止する。
【0051】
以下から登場する軸方向は、ガスタービン10の中心を貫通するものと定義する。前記軸方向は、前記ロウアーベーンキャリア31と前記ローリング治具110の中心を貫通し、前記タイロッドの長手方向でもある。この時、前記タービン13の内部で流動する燃焼ガスの流動方向は、前記軸方向の一部といえるが、以下からは、軸方向のうち燃焼ガスの流動方向基準の上流側を前方とし、軸方向のうち燃焼ガスの流動方向基準の下流側を後方と定義する。一方、以下から登場する円周方向と半径方向は、前記タービンケーシング20、21の円周方向と半径方向と定義する。ただし、前記円周方向や半径方向は、前記ベーンキャリア30、31やローリング治具110の円周方向および半径方向でもある。
【0052】
図3を参照すれば、前記ロウアータービンケーシング21は、内周面に挿入溝22と、突出段23とが形成される。前記挿入溝22は、円周方向に沿って延びた環状に形成される。前記突出段23は、前記挿入溝22から前方に離隔した位置で前記ロウアータービンケーシング21の内周面から半径方向内側に突出形成される。
【0053】
図2~
図5を参照すれば、前記ロウアーベーンキャリア31は、第1キャリア部材32と、第2キャリア部材33と、キャリア本体34と、キャリアフランジ35とを含む。前記第1キャリア部材32は、半円の環形状に形成される。前記第2キャリア部材33は、半円の環形状に形成され、前記第1キャリア部材32から前方に離隔配置され、前記第1キャリア部材32より直径(さらに詳しくは、外径)が小さく形成される。前記キャリア本体34は、半円の環形状に形成され、前記第1キャリア部材32と第2キャリア部材33との間を連結する。前記キャリアフランジ35は、前記第1キャリア部材32と第2キャリア部材33との間に配置され、前記キャリア本体34の半径方向外側に配置され、前記ローリング治具110側に配置され、前記ボルト部材120が貫通する。
【0054】
図2~
図5を参照すれば、前記ローリング治具110は、第1治具部材111と、第2治具部材112と、治具連結部113と、治具フランジ117とを含む。前記第1治具部材111は、半円の環形状に形成され、前記第1キャリア部材32と接する。前記第2治具部材112は、半円の環形状に形成され、前記第1治具部材111から前方に離隔配置され、前記第2キャリア部材33と接する。前記第2治具部材112は、前記第1治具部材111より直径(さらに詳しくは、外径)がより小さく形成される。前記治具連結部113は、前記第1治具部材111と第2治具部材112との間で前記第1治具部材111と第2治具部材112とを連結し、円周方向に沿って離隔配置される複数個で備えられる。前記治具フランジ117は、前記第1治具部材111と第2治具部材112との間に配置され、前記ロウアーベーンキャリア31側に配置され、前記キャリアフランジ35と接するように配置され、前記ブロック部材130が設けられる。
【0055】
図8を参照すれば、前記治具連結部113は、連結本体114と、ワインディング突起116とを含む。前記連結本体114は、前記第1治具部材111と第2治具部材112との間に配置され、軸方向に沿って整列され、前記第1治具部材111と第2治具部材112とを連結する。前記ワインディング突起116は、前記連結本体114から円周方向に沿って突出し、前記ローリング治具110の回転のためのロープが巻かれる。前記連結本体114は、半径方向外側の面に、前記ロープの通過するアイボルト(図示せず)が締結される治具貫通ホール115が形成される。分解組立装置100が前記ロウアーベーンキャリア31にすべて装着完了した状態で、前記治具貫通ホール115にアイボルトが挿入され、前記アイボルトを通過したロープが前記ワインディング突起116に巻かれる。そして、外部の力によって前記ワインディング突起116が前記ローリング治具110を円周方向に沿って引き寄せて回転させることにより、前記ローリング治具110とロウアーベーンキャリア31とは全体として共に前記軸方向を中心軸として回転する。
【0056】
図5~
図7を参照すれば、前記ボルト部材120は、ステム部121と、ヘッド部125と、突出部126とを含む。前記ステム部121は、前記ロウアーベーンキャリア31とローリング治具110に貫通する。前記ヘッド部125は、前記ステム部121の一端に連結され、前記ステム部121より直径が大きく形成される。前記突出部126は、前記ステム部121の他端に連結され、角柱の形状に形成され、前記ボルト部材120の回転のためのレンチ(Wrench;図示せず)が設けられる。
【0057】
図6を参照すれば、前記ヘッド部125は、前記ローリング治具110側に配置され、前記ステム部121は、前記ローリング治具110側から前記ロウアーベーンキャリア31側に貫通する。そして、前記ブロック部材130は、前記ボルト部材120のヘッド部125側に配置される。前記ステム部121は、第1ステム部122と、第2ステム部124とを含む。前記第1ステム部122は、一端に前記ヘッド部125が連結され、外周面にスレッド(thread)123が形成される。前記第2ステム部124は、前記第1ステム部122の他端に連結される。前記キャリアフランジ35には、前記ステム部121の挿入される貫通ホール(図示せず)が形成され、前記貫通ホールの内壁には、前記第1ステム部121のスレッド123と締結されるスレッド(図示せず)が形成される。前記第2ステム部124は、前記第1ステム部122より直径が小さく形成される。前記ステム部121が前記キャリアフランジの貫通ホールに挿入される時に、前記第2ステム部124が先に前記貫通ホールに挿入された後、前記第1ステム部122が前記貫通ホールに挿入されるが、前記第2ステム部124が前記貫通ホールのスレッドに締結されたり、係止されないように、前記第2ステム部124は、前記第1ステム部122より直径が小さく形成されるのである。前記ステム部121が前記キャリアフランジ35に完全に挿入された後、前記ヘッド部125は、前記治具フランジ117に載置される。
【0058】
図7を参照すれば、前記突出部126は、中空の形状に形成され、前記ボルト部材120を前記ロウアーベーンキャリア31側に引き寄せるためのアイボルト(図示せず)が内部に挿入されて締結されるように、内部にスレッド127が形成される。
図2および
図5のように、分解組立装置100が前記ロウアーベーンキャリア31に装着完了し、
図9のように、前記ローリング治具110とロウアーベーンキャリア31とが全体として共に回転した後、前記ロウアーベーンキャリア31は、上側に引き上げられて前記ローリング治具110から分解される。その後、再度ロウアーベーンキャリア31を前記ローリング治具110に組立てようとする場合、前記ロウアーベーンキャリア31を前記ローリング治具110に載置させながら同時に前記ステム部121が前記キャリアフランジ35を貫通するようにする。この状況で、作業者は、アイボルトを前記突出部126のスレッド127に装着して前記ボルト部材120を上側に引っ張った後、前記アイボルトを前記突出部126から分解し、レンチを前記突出部126の外周面に締結した状態で、レンチを用いて前記突出部126を回転させる。この場合、前記ボルト部材120が回転しながら、前記第1ステム部122のスレッド123が前記キャリアフランジ35のスレッドに締結される。その後、再度ロウアーベーンキャリア31とローリング治具110を回転させると、前記ロウアーベーンキャリア31は、ロウアータービンケーシング21に設けられ、ローリング治具110は、再度ロウアータービンケーシング21の上側に位置する。
【0059】
図3、
図5を参照すれば、前記ブロック部材130は、一対の側面ブロック部131と、連結ブロック部132とを含む。前記一対の側面ブロック部131は、前記ヘッド部125に対して前記軸方向に沿って離隔配置される。前記連結ブロック部132は、前記一対の側面ブロック部131の間で前記一対の側面ブロック部131を連結する。前記一対の側面ブロック部131は、前記ヘッド部125より上下の長さがより長く形成される。そして、前記連結ブロック部132は、前記ヘッド部125から離隔配置される。
【0060】
図5に示されるように、前記ローリング治具110を前記ロウアーベーンキャリア31に装着し、
図9に示されるように、前記ローリング治具110とロウアーベーンキャリア31を回転した後、前記ロウアーベーンキャリア31を前記ローリング治具110から上側に引き上げようとする時、作業者は、
図10に示されるように、前記ボルト部材120を解除して前記キャリアフランジ35から分解されるようにする。この時、前記ボルト部材120は、前記ブロック部材130に載置されることにより、下側に落下せずに前記ブロック部材130に係止された状態を維持する。
【0061】
一方、前記第1キャリア部材32は、前記キャリア本体34より直径(さらに詳しくは、外径)が大きく、前記挿入溝に挿入される。そして、前記第1キャリア部材32が前記挿入溝22に挿入された状態で、前記ローリング治具110とロウアーベーンキャリア31とが全体として共に前記軸方向を中心軸として回転する時、前記第1キャリア部材32は、前記挿入溝22から離脱し、前記第1治具部材111は、前記挿入溝22に挿入される。
【0062】
前記第2キャリア部材33は、前記突出段23に対向するように配置される。そして、前記第2キャリア部材33が前記突出段23に対向配置された状態で、前記ローリング治具110とロウアーベーンキャリア31とが全体として共に前記軸方向を中心軸として回転する時、前記第2キャリア部材33は、前記突出段23から離脱し、前記第2治具部材112は、前記突出段23に対向配置される。
【0063】
前記キャリアフランジ35は、前記第2キャリア部材33より半径方向外側により突出し、前記挿入溝22と突出段23との間に配置される。そして、前記キャリアフランジ35が前記突出段23と前記挿入溝22との間に配置された状態で、前記ローリング治具110とロウアーベーンキャリア31とが全体として共に前記軸方向を中心軸として回転する時、前記キャリアフランジ35は、前記ロウアーベーンキャリア31から離脱し、前記治具フランジ117は、前記突出段23と挿入溝22との間に配置される。
【0064】
以下からは、分解組立装置100を用いてロウアーベーンキャリア31をロウアータービンケーシング21から分解する過程と分解後再度組立てる過程について説明する。
【0065】
まず、分解組立装置100を用いてロウアーベーンキャリア31をロウアータービンケーシング21から分解する過程について説明する。
【0066】
作業者は、上述した分解組立装置100を用意する。そして、作業者は、アッパータービンケーシング20をロウアータービンケーシング21から分解させ、アッパーベーンキャリア30およびこれに設けられたアッパータービンベーン40をロウアーベーンキャリア31から分解させた後、ロウアーベーンキャリア31に前記ローリング治具110を装着させる。
【0067】
そして、作業者は、前記ローリング治具110とロウアーベーンキャリア31との接触部位、すなわち治具フランジ117とキャリアフランジ35に前記ボルト部材120のステム部121を貫通させる。この時、作業者は、前記ボルト部材120を回転させて、前記第1ステム部122のスレッド123が前記キャリアフランジ35のスレッドと締結されるようにする。
【0068】
その後、作業者は、前記ブロック部材130を前記ボルト部材120のヘッド部125を取り囲むように設ける。そして、作業者は、前記ロウアーベーンキャリア31とローリング治具110とを全体として共に回転させて、前記ロウアーベーンキャリア31を前記ロウアータービンケーシング21から離脱させながら同時に前記ローリング治具110を前記ロウアータービンケーシング21に位置させる。前記ロウアーベーンキャリア31とローリング治具110は、アイボルトを前記治具貫通ホール115に装着し、ロープを前記アイボルトを通過させた後、前記ワインディング突起116を取り囲むようにした状態で、前記ロープを円周方向に沿って引き寄せることにより回転する。
【0069】
最後に、作業者は、前述した過程を経て、前記ローリング治具110の上側に配置された前記ロウアーベーンキャリア31を前記ローリング治具110から分解させる。具体的には、作業者は、前記ボルト部材120を回転させて下側に移動させながら前記第1ステム部122のスレッド123を前記キャリアフランジ35のスレッドから離脱させた後、前記ロウアーベーンキャリア31を上側に引き上げて前記ローリング治具110から分解させる。
【0070】
次に、分解組立装置100を用いてロウアーベーンキャリア31をロウアータービンケーシング21に再度組立てる過程について説明する。
【0071】
前述した分解過程によって、前記ローリング治具110は、前記ロウアータービンケーシング21に位置した状態であり、前記ローリング治具110に前記ボルト部材120およびブロック部材130が設けられた状態であり、前記ロウアーベーンキャリア31は、前記ローリング治具110から分解された状態である。この状況で、作業者は、ロウアーベーンキャリア31を前記ローリング治具110の上側で前記ローリング治具110に載置させながら同時に前記ボルト部材120を前記ロウアーベーンキャリア31に貫通させる。
【0072】
そして、作業者は、前記ボルト部材120を上側に引き上げた後に回転させて、前記第1ステム部121のスレッド123が前記キャリアフランジ35のスレッドに締結されるようにする。具体的には、作業者は、アイボルトを前記突出部126の内部のスレッド127に締結させた状態で、前記アイボルトを上側に引っ張って前記ボルト部材120を引き上げた後、レンチを前記突出部126の外周面に設けて回転させて、前記第1ステム部122のスレッド123を前記キャリアフランジ35のスレッドと締結させる。
【0073】
その後、作業者は、前記軸方向を基準として、前記ロウアーベーンキャリア31とローリング治具110とを全体として共に回転させて、前記ローリング治具110を前記ロウアータービンケーシングから離脱させ、前記ロウアーベーンキャリア31を前記ロウアータービンケーシング21に位置させる。すなわち、作業者は、前記ロウアーベーンキャリア31を元の位置に戻す。
【0074】
最後に、作業者は、前記ブロック部材130およびボルト部材120を前記ローリング治具110およびロウアーベーンキャリア31から分解させた後、前記ローリング治具110を前記ロウアーベーンキャリア31から分解させる。そして、作業者は、分解していた前記アッパーベーンキャリア30およびアッパータービンベーン40を前記ロウアーベーンキャリア31に組立て、前記アッパータービンケーシング20を前記アッパーベーンキャリア30に組立てることにより、タービンステータ15に対する修理/保守作業を完了する。