(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050084
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】導電性樹脂組成物、及び発熱抵抗体を形成した回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/09 20060101AFI20230403BHJP
G03F 7/033 20060101ALI20230403BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230403BHJP
G03F 7/09 20060101ALI20230403BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20230403BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20230403BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
H05K1/09 A
G03F7/033
G03F7/004 501
G03F7/09 501
G03F7/40 501
H05K1/03 610D
H05K1/03 610R
H05K1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091253
(22)【出願日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2021158575
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】三並 淳一郎
(72)【発明者】
【氏名】馬越 英明
【テーマコード(参考)】
2H196
2H225
4E351
【Fターム(参考)】
2H196AA25
2H196AA26
2H196BA01
2H196BA05
2H196HA01
2H225AC21
2H225AC35
2H225AD06
2H225AM13P
2H225AM23P
2H225AM32P
2H225AN02P
2H225AN34P
2H225AP05P
2H225AP06P
2H225BA37P
2H225CA11
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
2H225DA13
4E351AA07
4E351BB05
4E351BB31
4E351CC11
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD06
4E351DD10
4E351DD19
4E351DD20
4E351EE01
4E351EE13
4E351EE14
4E351EE21
4E351GG01
4E351GG20
(57)【要約】
【課題】本発明は、基板密着性と解像性に優れる導電性樹脂組成物、及び発熱抵抗体を形成した回路基板の製造方法に関する。
【解決手段】導電性を有する微粒子(A)と感光性樹脂組成物(B)を含有する導電性樹脂組成物であって、導電性を有する微粒子( A)の疎水化度が30~50%であることを特徴とする導電性樹脂組成物を提供するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する微粒子(A)と、感光性樹脂組成物(B)とを含有する導電性樹脂組成物であって、
前記導電性を有する微粒子(A)の疎水化度が30~50%であることを特徴とする導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記感光性樹脂組成物(B)が、バインダーポリマー(b-1)と、重合性化合物(b-2)と、開始剤(b-3)を含み、
前記バインダーポリマー(b-1)が、酸価20~60mgKOH/gであることを特徴とする請求項1に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記導電性を有する微粒子(A)の90%粒子径が5μm以下である請求項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項4】
前記導電性を有する微粒子(A)が、銀又はそれを含む合金である請求項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の導電性樹脂組成物を基板上に塗布し、露光し、現像した後、500℃以上の温度で焼成して、発熱抵抗体を形成した回路基板の製造方法。
【請求項6】
前記基板が、セラミックである請求項5に記載の導電回路形成基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板密着性と解像性に優れる導電性樹脂組成物、及び発熱抵抗体を形成した回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器においては小型化・高密度化・高精細化・高信頼性の要求が高まる一方であり、これを満足する配線パターン加工技術の向上が望まれている。特に、発熱抵抗体(電気導体)の微細化は、小型化、及び高密度化には不可欠な要求であるため、さまざまな方法が提案されている。
【0003】
電気・電子機器の中でも、サーマルプリントヘッドは、絶縁基板上に形成した金属膜からなる共通電極と個別電極とからなる一対の電極間に発熱体としての抵抗体を電気的に接続して構成し、両電極間に必要とする電圧を印加制御して発熱させ、その熱を感熱記録紙に与えて抵抗体の発熱量に応じて感熱記録を行うものであり、抵抗体に通電する電気回路の形成には、金ペーストを用いて印刷、焼成の繰り返しにより、所望の金による膜を形成し、これをフォトリソ処理することにより配線パターンを形成することが通常行われている。
【0004】
このような厚膜印刷は金属膜の密着性は比較的小さいものの、金属ペーストを基板上に塗布・焼成するだけで製造できるという特徴がある。すなわち、大規模な設備を必要とすることなく、簡便な工程と装置で連続的に成膜できるので、生産性が高く安価であるというメリットがあり、広く活用されている。厚膜印刷は、各種の金属を微粒子にして溶媒に分散させた不均一な粘性液体であるペーストを使用している。このため、基板に塗布して焼成するだけでは、金属粒子が基板に接触した状態の金属膜となり、均一な膜が形成され難いという問題があった。
【0005】
また、金を使用したペーストは高価であるため金使用量を低減する技術、あるいは金以外の金属を主体としたペーストが提案されてきた。安価で電気伝導性の良好な金属として銀が採用された技術が数多く提案されている。
【0006】
例えば、導体層間の界面抵抗値を低減するとともに、焼結によって抵抗値が上昇することがなく、しかも微細配線パターン形成の可能な導体形成用ペーストにあって、銀の有機化合物とニッケルの有機化合物とを含みこれらを樹脂で混合してペースト状としたレジネートペーストであって、金属元素成分中、銀を95ないし99重量%、ニッケルを1ないし5重量%とした合金が使用されている(特許文献1)。
【0007】
また、特許文献2には、厚膜の導電パターンを形成することが可能な、感光性導電ペースト及びそれを用いた導電パターンの製造方法であるが、基材密着に関する十分な情報は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5-89716号公報
【特許文献2】特許第3218767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
サーマルプリントヘッドなどに使用される発熱抵抗体(配線パターン)を形成するには、従来、金を主体としたペーストが使用されてきた。しかしながら、金ペーストが非常に高価であり、製造コストを押し上げている最大の要因となっている。また、金ペーストに代替する材料として特性が近い銀を使用した銀ペーストが試験され種々の提案がなされてきたものの、基材との密着性が不十分であったり、発熱抵抗体(配線パターン)における解像度が不十分であったりした。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために研究を重ね、導電性を有する微粒子(A)と、感光性樹脂組成物(B)とを含有する導電性樹脂組成物であって、前記導電性を有する微粒子(A)の疎水化度が30~50%であることを特徴とする導電性樹脂組成物において、導電性を有する微粒子(A)の疎水化度を特定の範囲内のものを用いることにより、基板に形成した熱体抗体の基板との密着性、基板上に配線パターンを形成し、現像した際の解像度に優れることを見出したことによって完成したものである。
【0011】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、導電性樹脂組成物、及びこの導電性樹脂組成物を用いて基板に形成された発熱抵抗体を提供する。
【0012】
即ち、本発明は以下のように記載することができる。
項1. 導電性を有する微粒子(A)と、感光性樹脂組成物(B)とを含有する導電性樹脂組成物であって、
前記導電性を有する微粒子(A)の疎水化度が30~50%であることを特徴とする導電性樹脂組成物。
項2. 前記感光性樹脂組成物(B)が、バインダーポリマー(b-1)と、重合性化合物(b-2)と、開始剤(b-3)を含み、
前記バインダーポリマー(b-1)が、酸価20~60mgKOH/gであることを特徴とする項1に記載の導電性樹脂組成物。
項3. 前記導電性を有する微粒子(A)の90%粒子径が5μm以下である項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
項4. 前記導電性を有する微粒子(A)が、銀又はそれを含む合金である項1または2に記載の導電性樹脂組成物。
項5. 項4に記載の導電性樹脂組成物を基板上に塗布し、露光し、現像した後、500℃以上の温度で焼成して、発熱抵抗体を形成した回路基板の製造方法。
項6. 前記基板が、セラミックである項5に記載の導電回路形成基板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性樹脂組成物を用いることにより、塗布・硬化・焼成を経た発熱抵抗体(配線パターン)は基材への十分な密着性と、基板に発熱抵抗体(配線パターン)を形成し、現像した際に高い解像性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に導電性樹脂組成物について、詳細に説明する。
【0015】
導電性樹脂組成物
本発明の導電性樹脂組成物は、導電性を有する微粒子(A)と感光性樹脂組成物(B)を含有する導電性樹脂組成物であり、当該組成物中の導電性を有する微粒子( A)の疎水化度が30~50%であることを特徴とするものである。
【0016】
導電性を有する微粒子(A)
本発明の導電性を有する微粒子(A)は、例えば、金、銀、銅、白金族金属などの貴金属、もしくはニッケル、アルミニウムなど導電性の高い金属などの単体の金属、又はこれらの単体金属を含む合金の微粒子などを例示することができる。また、単体の金属微粒子、又はこれらの合金の金属微粒子を2種類以上組合せて用いてもよい。中でも導電性が良好になるで、金、銀、銅、又はそれらを含む合金の金属微粒子が好ましく、銀、又はそれを含む合金の金属微粒子を主とすることがより好ましい。単独または複数組み合わせて用いてもよい。
【0017】
導電性を有する金属微粒子(A)の形状としては、目的とする導電性が得られるものであれば特に限定されないが、例えば、球状、フレーク状、不規則状等を例示することができ、解像度の点で球状、フレーク状、または球状とフレックス状の混合したものが好ましい。なお、球状とフレックス状の混合比は任意の比率であればよい、
【0018】
また、導電性を有する金属微粒子(A)の粒子径は特に限定されないが、90%粒子径が5μm以下のものが好ましく、90%粒子径が1.2~5.0μmの範囲のものがより好ましく、90%粒子径が1.5~3.7μmの範囲のものがさらに好ましい。上記の平均粒経の導電性を有する金属微粒子(A)を用いると、本発明の効果を充分に得ることができる。本発明における導電性を有する金属微粒子(A)の90%粒子径は、レーザー回折粒度分布計により測定した値をいう。
【0019】
本発明に用いる導電性を有する微粒子(A)は、表面保護分子の種類に由来する疎水化度によって導電性樹脂組成物への分散性が大きく変化する。導電性を有する微粒子(A)の疎水化度は、導電性を有する微粒子(A)のメタノール濡れ性の大小を評価するウェッタビリティーにより規定することができる。導電性を有する微粒子(A)の疎水化度は30~50%であることが好ましく、35~45%がより好ましい。なお、疎水化度の数値が小さいと導電性を有する微粒子(A)の親水性が高いことを意味し、導電性を有する微粒子(A)の疎水化度が30%未満となると導電性樹脂組成物に均一に分散することができない。一方、導電性を有する微粒子(A)の疎水化度の数値が大きいと導電性を有する微粒子(A)の疎水性が高いことを意味し、導電性を有する微粒子(A)の疎水化度が50%をこえると導電性樹脂組成物とは親和性が高すぎるため、基板に発熱抵抗体(配線パターン)を形成し、現像した際の発熱抵抗体(配線パターン)の解像度が悪くなる。
【0020】
導電性を有する微粒子(A)の疎水化度は、以下に示すようなメタノールウェッタビリティーにて算出することができる。具体的には、200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、導電性を有する微粒子(A)を0.2g添加する。メタノールを先端が液体中に浸漬しているビュレットから、撹拌した状態でゆっくりと滴下し、導電性を有する微粒子(A)の全体が濡れるまで(全部が沈降するまで)続ける。全導電性を有する微粒子(A)の沈降に要したメタノールの量をa(ml)とした場合、下式により疎水化度が算出される。液温は通常25℃である。
疎水化度[%]=(a/(a+50))×100
【0021】
上述した導電性を有する微粒子(A)を複数組み合わせて用いる場合、導電性を有する微粒子(A)の焼結性を向上させるために金属助剤を用いてもよい。ここで、金属助剤とは、導電性樹脂組成物に添加することにより金属の焼結速度を変化させることが可能なものであり、例えば、ロジウムやニッケル、パラジウムなどを例示することができる。
【0022】
導電性を有する微粒子(A)の表面の保護分子の付着量を表す指標として、Ig-lossという値があり、一般には数%以下であるが、本発明の導電性を有する微粒子(A)においては、このIg-lossの値は本発明の効果には関係しない。
【0023】
導電性を有する微粒子(A)は、導電性樹脂組成物中での凝集防止のためにその表面に脂肪酸、またはパラフィン等の炭化水素化合物などの保護分子を付着させたものとして用いてもよい。
【0024】
導電性を有する微粒子(A)の表面の保護分子の脂肪酸としては、例えば、高級脂肪酸が挙げられ、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸が挙げられる。
また、炭化水素化合物としては、ノルマルパラフィンと枝分かれしたイソパラフィンが挙げられる。中でも、ステアリン酸、オレイン酸、ノルマルパラフィンが好ましい。
【0025】
また、導電性を有する微粒子(A)の表面の保護分子の脂肪酸、またはパラフィン等の炭化水素化合物は、後述するように、導電性を有する微粒子(A)の疎水化度の制御するために、他の脂肪酸、または炭化水素化合物への置換処理を行ってもよい。例えば、導電性を有する微粒子(A)の保護分子を長鎖脂肪酸から短鎖脂肪酸(例えば、グリコール酸)に置換すると、焼成時に低温(約200℃)で容易に導電性を有する微粒子(A)の表面から、保護分子の脱離が起きるので、低温焼成が可能な導電性を有する微粒子(A)とすることができる。また、導電性を有する微粒子(A)の表面の保護分子をカルボキシル基を有する脂肪酸に置換すると、カルボキシル基が導電性を有する微粒子(A)の表面に配位することになり、導電性を有する微粒子(A)間の水素結合によって、導電性を有する微粒子(A)凝集が強く抑制され、高解像の発熱抵抗体(配線パターン)を得ることができる。
【0026】
導電性樹脂組成物中における導電性を有する微粒子の含有量(A)は、導電性樹脂組成物に対して、35~90重量%であればよく、40~85%重量部がより好ましい。この範囲よりも含有量が多い場合、導電性を有する微粒子が多すぎて導電性樹脂組成物の塗布性(印刷性)が悪くなる。
【0027】
感光性樹脂組成物(B)
本発明に用いる感光性樹脂組成物(B)は、電子線、紫外線、可視光線などの活性エネルギー線を照射することにより光硬化性を示すものであれば、特に制限無く使用することができる。
【0028】
本発明における感光性樹脂組成物(B)とは、光照射によって、架橋反応、重合反応、分解反応により、耐食性画像を形成するものをいう。さらには、感光性樹脂組成物(B)には、光によって硬化して硬化物が得られるものも含まれる
【0029】
感光性樹脂組成物(B)としては、活性エネルギー線を吸収した化合物(例えば、後述するバインダーポリマー(b-1)、又は重合性化合物(b-2))が単体で反応を起こして重合、架橋、硬化等するものであることが好ましい。また、活性エネルギー線を吸収した化合物自身は重合、架橋、硬化等しないが、感光性樹脂組成物(B)中に含まれるその他の化合物(例えば、後述する開始剤(b-3))が、活性エネルギー線を吸収した化合物と作用して重合、架橋、硬化等するものであることが好ましい。また、その際に関与する化合物の種類は2種類以上であっても良い。例えば、重合性化合物(b-2)と開始剤(b-3)を含むような組成物を例示することができる。
【0030】
感光性樹脂組成物(B)は、好ましくは、バインダーポリマー(b-1)、重合性化合物(b-2)、及び開始剤(b-3)を含有するものであればよい。さらに、感光性樹脂組成物(B)には、必要に応じて、溶媒や開始剤以外の光硬化性樹脂用の添加剤を配合してもよい。
【0031】
導電性樹脂組成物中における感光性樹脂組成物(B)の含有量は、導電性樹脂組成物に対して10~65重量%あれば良く、15~60重量%がより好ましい。また、導電性樹脂組成物中に導電性を有する微粒子(A)と感光性樹脂組成物(B)以外の成分を添加する場合の、感光性樹脂組成物(B)の含有量は、導電性樹脂組成物に対して10~60重量%あれば良く、15~45重量%がより好ましい。
【0032】
バインダーポリマー(b-1)
バインダーポリマー(b-1)としては、感光性樹脂組成物中(B)の他の成分と混合しても分離、沈降、析出などを起こさずに、光硬化するのであれば、特に制限なく用いることができる。具体的には、(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン、酢酸ビニルポリマー、ポリアミド、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、セルロースジアセテート、ポリクロロエチレン、ニトロセルロース、及びテトロン等の構造を有するポリマー等を例示することができる。中でもラジカル重合性を有する(メタ)アクリレート樹脂、ポリスチレンが好ましい。
【0033】
バインダーポリマー(b-1)の酸価は20~60mgKOH/gが好ましく、10~50mgKOH/gがより好ましい。バインダーポリマー(b-1)の酸価が小さいと解像できなくなったり、バインダーポリマー(b-1)の酸価が大きいと発熱抵抗体(配線パターン)を現像した際に、オーバーエッチングされたりして、設計した発熱抵抗体(配線パターン)が得られないことがある。
【0034】
バインダーポリマー(b-1)は、市販品を用いてもよく、重合反応によって合成してもよい。バインダーポリマー(b-1)は、単重合体、共重合体、溶媒に溶解させた溶液のいずれを用いてもよい。
【0035】
バインダーポリマー(b-1)として、共重合体を用いる場合、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、アリルベンゼン、アリルグリシジルエーテル、アリルアルコール、メタリルアルコール、ジアリルフタレート、ジアリルプロピルイソシアヌレート、ジアリルシクロヘキサンジカルボキシレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸のから選択される1以上の化合物を共重合したものを用いてもよい。中でも、メチルメタクリレートとスチレンとアクリル酸の共重合体が好ましい。
【0036】
バインダーポリマー(b-1)として、共重合体を用いる場合の各成分の比率は適宜選択すればよいが、本発明におけるバインダーポリマー(b-1)が共重合体である場合、アクリル酸を成分として含んでいることが好ましく、共重合体中にアクリル酸とその他の成分(いわゆる2種からなる共重合体)を含む際、共重合体中に含まれる、アクリル酸の重量比を1として、(アクリル酸:その他成分)=1:2~1:6であればよい。また、共重合体中にアクリル酸とその他の2成分以上(例えば、3種からなる共重合体)を含む際、共重合体中に含まれる、アクリル酸の重量比を1として、(アクリル酸:その他成分1:その他成分2)=1:1:2~1:3:5であればよい。その他成分1として、例えばメタクリル酸 、その他成分2として、例えばスチレン等が挙げられる。
【0037】
バインダーポリマー(b-1)を重合して得るための反応は、後述する重合性化合物を原料に用いて公知の方法で重合することができる。重合条件は、使用する原料やその量に応じて適宜設定すればよい。重合反応には、必要に応じて触媒を使用することができる。触媒の例としては、AIBN等の公知の触媒を例示することができる。これらは、単独または複数を組み合わせて用いることができる。重合反応温度は、最適な反応速度と収率を得るために50~180℃の範囲であるのが好ましく、70~150℃の範囲であるのがより好ましい。
【0038】
重合反応雰囲気は、窒素やアルゴンのような不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、重合反応時の圧力は大気圧下、加圧下いずれでもよいが、作業の簡便性を鑑みて大気圧下で行うことが好ましい。反応は攪拌羽根を備えた反応装置に原料を一度、または分割して仕込んだうえで上記の所定温度にて反応させることにより行なうことができる。
【0039】
バインダーポリマー(b-1)は固形分100%で用いても良く、溶媒に溶解させた溶液として用いてもよい。なお、ハンドリング性の問題で溶媒に溶解させた溶液として、流動性を有している方が好ましい。バインダーポリマー(b-1)を溶媒に溶解させて用いる場合の固形分量は、固形分20%以上であればよく、固形分50%以上が好ましい。
【0040】
バインダーポリマー(b-1)を溶解させる際に用いる溶媒としては、特に限定させず、公知のものを用いることができる。例えば、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピル アルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-ブチルアルコール、ヘキサ ノール、エチレングリコールなどの直鎖、分岐、2級あるいは多価のアルコール類、メチ ルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン類、トルエン、キシレンな どの芳香族炭化水素類、スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ (エクソン・ケミカル社製)などの石油系芳香族系混合溶剤、セロソルブ、ブチルセロソ ルブなどのセロソルブ類、カルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなど のカルビトール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジ メチルエーテルなどのプロピレングリコールアルキルエーテル類、ジプロピレングリコー ルモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテルなどのポリプロピレン グリコールアルキルエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチ ルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメ チルエーテルアセテートなどの酢酸エステル類、N-メチルピロリドン、及びジアルキ ルグリコールエーテル類などを例示することができる。 溶媒は、単独で、または2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
【0041】
感光性樹脂組成物(B)に用いるバインダーポリマー(b-1)は、現像性、及び形成される発熱抵抗体(配線パターン)と基材との密着性等の性能のバランスを良くするために、ポリスチレン換算の重量平均分子量が、10,000~1,000,000の範囲のものが好ましく、特に20,000~100,000の範囲のものが好ましい。
【0042】
感光性樹脂組成物(B)におけるバインダーポリマー(b-1)の使用量は、感光性樹脂組成物(B)の全量に対して、バインダーポリマー(b-1)固形分換算で20~55重量%の範囲であることが好ましく、25~50重量%であることが好ましい。
【0043】
なお、バインダーポリマー(b-1)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の値である。例えば、機種:ショウデックス(昭和電工(株)製)、カラム:KF-805L、KF-803L、及びKF-802(昭和電工(株)製)にて、溶離液としてTHF等を用いて、標準試料としてポリスチレンを用いて行ったものである。バインダーポリマー(b-1)の重量平均分子量の測定条件は、ポリマーの物性に応じて適宜選択すればよい。
【0044】
重合性化合物(b-2)
重合性化合物(b-2)としては、ラジカル重合性化合物を例示することができ、中でも反応性が高く、樹脂組成物の光に対する感度を高くすることができる点で、多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。具体的には、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2~14のもの)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロ パンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリ レート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロール プロパンエチレングリコール付加物トリアクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリプロピレ ングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2~14のもの)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレ ート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘ キサ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートなどを例示することができ、中でも、ポリエチレングリコール ジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2~14のもの)、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレングリコール付加物トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレートが好ましい。単独で、または2種以上を適宜組み合わせて使用することができる
【0045】
感光性樹脂組成物(B)における重合性化合物(b-2)は、1種類を単独で用いても億、複数種類を組み合わせて使用して良く、その使用量は、感光性樹脂組成物(B)に含まれるバインダーポリマー(b-1)固形分換算100重量部に対して、20~70重量部の範囲であればよく、30~65重量部の範囲が好ましい。
【0046】
開始剤(b-3)
開始剤(b-3)は、活性エネルギー線の波長に吸収帯を有し、重合反応、架橋反応、硬化反応等を生成させるものであれば特に制限なく用いることができる。一般に、反応に用いられる活性エネルギー線としては、コストの面から紫外線が好適に用いられる。そのため、開始剤(b-3)としては、種類が豊富であり、単量体との反応性に優れる光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0047】
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、アセトフェノン、2-メチルア ントラキノン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2 -イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロ ピルチオキサントン、ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフ ィド、2,4-ジイソプロピルキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル -プロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1 -ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1- フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2 -ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-[4- (2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル]-2-メチル-プ ロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプ ロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニ ル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]- 1-[4-(4-モルホニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾ イル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチ オ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン) などを例示することができる。中でも光に対する感度が良い点で、2,4,6-トリメチ ルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベン ゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フ ェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン)が好ましく、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-( O-ベンゾイルオキシム)、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン)がより好ましい 。
【0048】
感光性型樹脂組成物(B)における光重合開始剤(b-3)の使用量は、バインダーポリマー(b-1)固形分換算で100重量部に対して、2~20重量部の範囲であればよく、3~15重量部の範囲がより好ましい。
【0049】
その他の添加剤
本発明の感光性樹脂組成物(B)には、必要に応じて、本発明の効果に影響を与えない範囲で、各種添加剤、例えば表面調整剤や分散剤を添加してもよい。いずれもハジキやピンホールなどのトラブルを防止する目的で組成物を均一にしたり、基材濡れ性を改善させたりする効果を狙って使用する。添加剤の配合量は、導電性を有する微粒子(A)と感光性樹脂組成物(B)を含有する導電性樹脂組成物の総重量100重量部に対して0.1~10重量部含有することが好ましく、0.2~5重量部含有することがより好ましく、0.3~3重量部含有することが特に好ましい。
【0050】
表面調整剤の例としては、ビニル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、フッ素系ポリマー粉末ワックス類などがあり、ビニル系ポリマーとはポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルビニルエーテル、ポリブタジエンなどがある。シリコーン系ポリマーとはポリジメチルシロキサン、ポリフェニルシロキサン、有機変性ポリシロキサンなどがある。フッ素系ポリマーとはフッ化シリコーンなどがある。粉末ワックス類とはポリエチレンワックスなどがある。単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。常温で粉体であることが望ましい。
【0051】
分散剤の例としては、無機物に有機ポリマーを吸着させたものなどが挙げられ、例えばシリカ吸着ポリアクリレート、シリカ吸着ポリメタクリレートなどがある。単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
本発明では特に限定しないが、塗膜を着色させたい場合は各種顔料を添加してもよい。
【0053】
このほか無機フィラー、有機フィラー、重合禁止剤、可塑剤、焼結遅延剤、難燃剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲内で含んでいてもよい。
【0054】
導電性樹脂組成物の調整方法
本発明の導電性樹脂組成物は、導電性を有する微粒子(A)、感光性樹脂組成物(B)と必要に応じて添加されるその他の成分とを混合又は混錬することにより調整することができる。
【0055】
これらの成分の混合又は混練方法は、各成分が導電性樹脂組成物中で均一に分散ないしは混合できる方法で行えばよく、特に限定されない。このような方法として、例えば、メカニカルスターラー、マグネティックスターラー、超音波分散機、遊星ミル、ボールミル、プラネタリミキサー又は三本ロール等を用いる方法を例示することができる。取扱いが容易である点で、遊星ミルを用いる方法が好ましく、均一に分散できる点では三本ロールを用いる方法が好ましく、2つ以上の方法を組み合わせてもよい。
【0056】
発熱抵抗体を形成した回路基板の製造方法
本発明の発熱抵抗体を形成した回路基板の製造する方法としては、上記説明した本発明の導電性樹脂組成物を調製する工程(調製工程)と、金属、ガラス、セラミックス、耐熱プラスチックなどの基板上に導電性樹脂組成物を塗布する工程(塗布工程)と、形成すべき発熱抵抗体(配線パターン)に対応するフィルムやネガマスクを介して、導電性樹脂組成物の塗膜に対して活性エネルギー線を照射し、塗膜を硬化等させる工程(露光工程)、上記基板上の未露光部分を現像液によって溶解、除去、乾燥する工程(現像工程)を含む方法を例示することができる。
【0057】
塗布工程においては、上記調製工程で調製した本発明の導電性樹脂組成物を、スクリーン印刷法、バーコーター、又はブレードコーター等の塗布方法で、金属、ガラス、セラミックス、耐熱プラスチックなど(好ましくは、絶縁性が高いガラス、セラミックス)の基板上に塗布し乾燥させる。塗布工程における乾燥温度は60~120℃とすることが好ましく、乾燥時間は5~60分とすることが好ましい。また、金属、ガラス、セラミックス、耐熱プラスチックなどの基板上の塗膜の厚みは特に制限されないが、5μmを超えて、50μm未満であることが好ましく、10μmを超えて、40μm未満であることがより好ましい。
【0058】
露光工程においては、形成すべき発熱抵抗体(配線パターン)に対応するフィルムやネガマスクを介して、金属、ガラス、セラミックス、耐熱プラスチックなどの基板上に塗布した塗膜に対して活性エネルギー線を照射し照射部を重合、架橋、硬化等させる。照射される活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、及びX線等を例示することができ、中でも紫外線が好ましい。光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、及びブラックライト等を用いることができる。また、露光方式としては、マスクとの密着露光、プロキシミティ露光、及び投影露光等を例示することができる。
【0059】
活性エネルギー線照射機における露光量は100~1000mJ/cm2が好ましく、200~900mJ/cm2がより好ましい。
【0060】
現像工程においては、現像液を用いて、硬化されていない未露光部分を溶解、除去することで、目的とする発熱抵抗体(配線パターン)を得ることができる。
【0061】
現像液としては、本発明の導電性樹脂組成物の未露光部分を、可溶化させることができるものであれば、特に制限なく用いることができる。用いる現像液は、水性、油性いずれでもよく、液のpHは問わない。例えば、感光性樹脂組成物(B)中に酸性基を持つ化合物が存在する場合、水酸化ナトリウム、及び炭酸ナトリウム等の金属アルカリ水溶液の他、モノエタノールアミン、及びジエタノールアミン等の有機アルカリ水溶液等を用いることができる。具体的には、弱アルカリ性水溶液が好ましく、たとえば5~10wt%炭酸カルシウム水溶液が好ましい。
【0062】
現像工程での現像方式としては、フォトリソグラフィーに通常用いられる現像方式であれば、特に制限無く用いることができる。具体的には、硬化した塗膜が形成された基板(例えば、セラミックなど)を現像液に浸すディップ方式、この基板全面に現像液を噴霧するスプレー方式、容器内に現像液とこの基板を入れて処理するバレル方式等を例示することができる。現像方式は、使用する導電性樹脂組成物の性質に応じて適宜決定すればよい。また、発熱抵抗体(配線パターン)を形成する対象となる、金属、ガラス、セラミックス、耐熱プラスチックなどの基板の形状等により現像方式は異なるが、金属、ガラス、セラミックス、耐熱プラスチックなどの基板上の不要な塗膜(未露光部分)を除去する場合、スプレー方式により塗膜付着面を均一な圧力で洗い流す方法が、解像度を向上できる点で好ましい。
【0063】
不要な現像液の除去のため水洗や酸中和を行った後、発熱抵抗体(配線パターン)を焼結する。焼結温度は500~900℃とすることが好ましく、焼結時間は30~300分間とすることが好ましい。上記焼結温度、焼成時間でセラミック基板上に形成した発熱抵抗体(配線パターン)を焼結することで、導電性樹脂組成物中に含まれる感光性樹脂組成物(B)は基板上から蒸発し、基板上には導電性を有する微粒子のみが残存することとなる。
【0064】
上記工程を経ることで、本発明の導電性樹脂組成物を用いて、金属、ガラス、セラミックス、耐熱プラスチックなどの基板上に発熱抵抗体(配線パターン)を形成することができる。
【0065】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0066】
後述の実施例及び比較例で用いた材料を以下に説明する。
【0067】
導電性を有する微粒子(A)
粒子A1:三井金属製SL02(粒子形状:球状、90%粒子径3.5μm、保護分子:ステアリン酸)
粒子A2:DOWAエレクトロニクス製Ag2.5-11F(粒子形状:球状、90%粒子径1.8μm、保護分子:オレイン酸)
粒子A3:徳力製TC-905(粒子形状:球状、90%粒子径2.6μm、保護分子:パラフィン)
粒子A4:DOWAエレクトロニクス製G35(粒子形状:球状とフレーク状の混合体、90%粒子径5.2μm、保護分子:パラフィン)
粒子A5:A4の表面保護分子をグリコール酸で置換したもの(粒子形状:球状とフレーク状の混合体、90%粒子径3.5μm、保護分子:グリコール酸)
粒子A6:三井金属製TRIAL3(粒子形状:球状、90%粒子径2.5μm、保護分子:ステアリン酸)
【0068】
導電性を有する微粒子(A)の表面保護分子の置換方法
導電性を有する微粒子(A)の表面の保護分子を置換するために、粒子A4(DOWAエレクトロニクス製G35)の表面保護分子はパラフィンであるが、これをグリコール酸に置換した。具体的には、粒子A4(G35微粒子)100gに対して、グリコール酸を1g添加し、粒子A4と同量のアセトンで希釈し、その後、遊星撹拌機にて自転1000rpmで5分撹拌した。撹拌後、バット上に広げて風乾させ、表面の保護分子をグリコール酸に置換した、粒子A5を得た。
【0069】
導電性を有する微粒子(A)の疎水化度の測定方法
各導電性を有する微粒子(A)の疎水化度は、以下に示すようなメタノールウェッタビリティーにて評価される。200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、導電性を有する微粒子を0.2g添加し、メタノールを先端が液体中に浸漬しているビュレットから、撹拌した状態でゆっくりと滴下し、これを微粒子の全体が濡れるまで(全部が沈降するまで)続けた。全微粒子の沈降に要したメタノールの量をa(ml)とした場合、下式により疎水化度を算出した。液温は25℃で行った。測定結果は表1に示す。
疎水化度[%]=(a/(a+50))×100
【0070】
導電性を有する微粒子(A)の90%粒子径はレーザー回折粒度分布計にて評価される。90%とは計測粒子100個を小さいほうからカウントして90番目の意味でD90と表記する。測定は、堀場製作所製LA-950V2により行った。測定結果を表1に示す。
【0071】
バインダーポリマー(b-1)
2,000ml円柱丸底フラスコにメチルメタクリレートとスチレンとアクリル酸をそれぞれ110g、223g、75g投入し、ここにジプロピレングリコールモノメチルエーテルを705g、AIBNを30g添加して、窒素雰囲気下、80℃で4時間の加熱撹拌後、減圧蒸留して所定量の溶剤を除去し、固形分50%のバインダーポリマー(b-1)溶液800g(重量平均分子量:70,000、溶媒:ジプロピレングリコールモノメチルエーテル)を得た。
【0072】
バインダーポリマー(b-1)の酸価は,以下の方法にて測定し、37mgKOH/gと確認した。固形分率50%のバインダーポリマー(b-1)を50℃において12時間大気下で乾燥させて溶媒を除去したのち三角フラスコに3g秤量し、溶剤(トルエン/メタノール=7/3(体積比))約10mlを加えて溶解した。次に指示薬(1%フェノールフタレイン・エチルアルコール溶液)3滴を加えて0.1N水酸化カリウム水溶液で滴定し、液色が白から桃に変化した時を終点として、次式により算出した。結果を表1に示す。
酸価(mgKOH/g)=A×F/S
F:0.1N水酸化カリウム水溶液の係数(f×5.61)、f=1
V:0.1N水酸化カリウム水溶液の滴定量(ml)
W:サンプル重量(g)
【0073】
バインダーモノマー(b-2)
B1:ペンタエリスリトールトリアクリレート(富士フィルム和光純薬製)
B2:テトラヒドロフルフリルアクリレート(富士フィルム和光純薬製)
【0074】
開始剤(b-3)
オキシムエステル系光重合開始剤:BASF製OXE-02(1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン)
【0075】
感光性樹脂組成物(B)
表1に示す各成分の添加量で混合して感光性樹脂組成物(B)とした。
【0076】
基材としてアスザック製グレーズ板を用意し、マイクロ-テック製MT-300スクリーン印刷機にて20±5μmで印刷塗布し、80℃、10分間の乾燥で溶剤を除去した。続いてライン/スペース=20μm/20μmの直線配線及び配線末端部にφ50μmの電極パッドを模したパターン図面を持つフォトマスクを用いて、UV照射機にて300J/cm2の露光、5%炭酸カルシウム水溶液下で20秒間の現像とその後の水洗を経て厚さ10±2μmの発熱抵抗体(配線パターン)が得られるかを確認した。さらにオーブン内にて800℃、4時間の焼成をおこない、樹脂組成物を除去して発熱抵抗体(配線パターン)を完成させた。得られた発熱抵抗体(配線パターン)を後述する試験に付した。
【0077】
解像度の確認
上記プロセスに発熱抵抗体(配線パターン)を光学顕微鏡にて目視で確認し、発熱抵抗体(配線パターン)における直線配線の直線性、及び電極パッドの正円性を〇×で判断した。結果を表1に示す。なお、×の典型例としては断線していること、短絡していること、直線性がなくギザギザしていること、円が欠けていること、が挙げられる。
【0078】
テープ剥離試験
塗膜にニチバン製セロハンテープを当てて指で強くこすり、剥がしたときの状態を以下の5段階で評価した。評価結果を表1に示す。
5:すばやく剥がして剥離なし
4:すばやく剥がして50%剥離テープにもっていかれないが基材剥離あり
3:すばやく剥がして完全に剥離も、ゆっくり剥がすと剥離なし
2:ゆっくり剥がして50%剥離
1:ゆっくり剥がして完全剥離
【0079】
【0080】
実施例1~3で示される、所定の疎水化度と90%粒子径を持つ導電性を有する微粒子(A)を使用した導電性樹脂組成物は、解像性・テープ剥離試験ともに良好であった。
比較例1は導電性を有する微粒子(A)の90%粒子径が比較的大きいことが原因で、解像パターンの直線性が悪く、テープ剥離試験でも剥がれが生じた。
実施例4は、比較例1で用いた導電性を有する微粒子(A)表面保護分子を別の分子で置換したものである。置換処理中の撹拌プロセスにて粒子の一部が物理的に粉砕され、90%粒子径が当初より小さくなったこと、疎水化度が感光性樹脂組成物(B)と親和性の高いレベルに至ったことで、パターン解像性が良くなり、テープ剥離試験でも十分な密着となった。
比較例2は、導電性を有する微粒子(A)の疎水化度が感光性樹脂組成物(B)と親和性の低いレベルになり、パターン解像性に一部断線が起きたほか、テープ剥離試験でも剥がれが生じた。
実施例5~6は、実施例1で用いた導電性を有する微粒子(A)を用い、導電性を有する微粒子(A)と感光性樹脂組成物(B)の配合量を変更したものである。実施例7~8は実施例2で用いた導電性を有する微粒子(A)を用い、導電性を有する微粒子(A)と感光性樹脂組成物(B)の配合量を変更したものである。
実施例5~8においても、解像性・テープ剥離試験ともに良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明により作製される電気電子機器はディスプレイなどの表示装置、電話などの通信機器、プリンタなどの印刷機器、全固体電池や蓄電池などの電池に使用することができる。