(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050111
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 5/32 20060101AFI20230403BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20230403BHJP
E04F 15/22 20060101ALI20230403BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20230403BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B32B5/32
B32B7/022
E04F15/22
E04F15/16 A
A47G27/02 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138040
(22)【出願日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021159021
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石黒 正
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 詩織
【テーマコード(参考)】
2E220
3B120
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA16
2E220AA23
2E220AA27
2E220AA51
2E220FA01
2E220FA03
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2E220GB37X
3B120AB15
3B120BA02
3B120BA38
3B120CA01
3B120CA08
3B120EB11
3B120EB30
4F100AK51A
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4F100JK12A
4F100JL03
4F100JL08A
(57)【要約】 (修正有)
【課題】軽量性に優れ、持ち運びが容易な積層体、反発性が必要な用途に適用できる積層体、さらに、床用マット等に用いた際に脚部が沈み込み難く、疲労し難い積層体を提供する。
【解決手段】表層1および基材層2を備える積層体において、前記表層および前記基材層はいずれもポリウレタンフォームからなり、前記表層は密度が0.47g/cm
3以上0.80g/cm
3以下であると共に、反発弾性率が75%以上85%以下、積層体全体に対する前記表層の厚み割合が12.5%以上30.4%以下であり、前記基材層は密度が0.12g/cm
3以上0.22g/cm
3以下であると共に、反発弾性率が60%以上80%以下、積層体全体に対する前記基材層の厚み割合が69.6%以上87.5%以下であり、前記積層体全体の密度が0.25g/cm
3以上0.30g/cm
3以下であると共に、反発弾性率が75%以上85%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層および基材層を備える積層体において、
前記表層および前記基材層はいずれもポリウレタンフォームからなり、
前記表層は密度が0.47g/cm3以上0.80g/cm3以下であると共に、反発弾性率が75%以上85%以下、積層体全体に対する前記表層の厚み割合が12.5%以上30.4%以下であり、
前記基材層は密度が0.12g/cm3以上0.22g/cm3以下であると共に、反発弾性率が60%以上80%以下、積層体全体に対する前記基材層の厚み割合が69.6%以上87.5%以下であり、
前記積層体全体の密度が0.25g/cm3以上0.30g/cm3以下であると共に、反発弾性率が75%以上85%以下であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記表層を構成するポリウレタンフォームは、JIS K 6264:2005に準拠して測定した摩耗体積が0.71cm3以下であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
5.1kgの錘を50mmの高さから衝突させた際の最大衝撃荷重(kN)が、1.50kN以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記表層を構成するポリウレタンフォームのアスカーC硬度が40以上80以下であることを特徴とする請求項1~3に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関し、特に、軽量性に優れながら、高い反発性を有し、床用マットの材料に好適な積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームなどの発泡体は、軽量性に優れるものとして知られている。例えば、低密度のポリウレタンフォームは、寝具のマットレスやクッションなど様々な分野に使用されている。
【0003】
一方、床用マット等に用いるポリウレタンフォームは、足にかかる衝撃の吸収・緩和のための沈み込み率が少なく、蹴り出しを補助するための高い反発弾性率が必要とされている。
【0004】
床用マットとしては、例えば反発弾性率が40%以上80%以下の高い反発弾性率を有するものが知られている(特許文献1)。
【0005】
また、近年は高い反発弾性率の発泡体(たとえばランニングシューズやバットなど高い反発弾性率が求められるスポーツ用)が市場では求められており、反発弾性率が80%以上の発泡体も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020―124384号公報
【特許文献2】特開2020- 12036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、発泡体の反発弾性率が高くなると重量が増す(すなわち、密度が大きくなる)傾向があり、持ち運んで使用する場合など軽量性が必要な用途には、適用しにくいものであった(特許文献1、2)。
一方で、軽量性を高めるためには密度を下げる必要があり、密度を下げると反発弾性率が低下することから、反発性が必要な用途には適用しにくいものであった。加えて、密度を下げると沈み込みが多くなることから、床用マット等に用いた際に脚部が沈み込み、結果として疲労しやすいものであった。
したがって、従来のマットや発泡体は、持ち運んで使用する場合など軽量性が必要な用途や、反発性や沈み込み難さが必要な用途には適用しにくいものであった。
【0008】
これらのことから、ポリウレタンフォームなどの発泡体において、高い反発弾性率を有し、且つ、軽量性にも優れる(すなわち、密度が低い)といった、相反する性質を兼ね備えることは困難であった。
【0009】
尚、特許文献2の発泡体によれば、密度0.30g/cm3で反発弾性率83%のポリウレタン発泡体を用いることで反発弾性率の高い発泡体のものが記載されているものの、発泡体の密度が小さいため耐摩耗性に劣り、耐摩耗性が必要な用途には適用しにくいものであった。
【0010】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は軽量性に優れ、持ち運びが容易な積層体を提供することにある。
また、反発性が必要な用途に適用できる積層体を提供することにある。
さらに、床用マット等に用いた際に脚部が沈み込み難く、結果として疲労し難い積層体を提供するところにある。
加えて、耐摩耗性に優れる積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の積層体は表層および基材層を備え、前記表層および基材層はいずれもポリウレタンフォームからなり、前記表層は密度が0.47g/cm3以上0.80g/cm3以下であると共に、反発弾性率が75%以上85%以下、積層体全体に対する前記表層の厚み割合が12.5%以上30.4%以下であり、前記基材層は密度が0.12g/cm3以上0.22g/cm3以下であると共に、反発弾性率が60%以上80%以下、積層体全体に対する前記表層の厚み割合が69.6%以上87.5%以下であり、前記積層体全体の密度が0.25g/cm3以上0.30g/cm3以下であると共に、反発弾性率が75%以上85%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記構成を有する本発明の積層体は、軽量性に優れ、持ち運びが容易な積層体を提供できる。
また、本発明の積層体は、反発性が必要な用途に適用できる積層体を提供できる。
さらに、床用マット等に用いた際に脚部が沈み込み難く、結果として疲労し難い積層体を提供できる。
加えて、耐摩耗性に優れる積層体を提供できる。
したがって、本発明の積層体は、軽量性、反発性、耐摩耗性に優れ、沈み込み難いため、床用マットや靴底部材(例えば、ミッドソールやインソールなど)の材料に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の表層1および基材層2を接着剤などを用いて貼り合わせた、積層体の断面図である。
【
図2】本発明のインサート成型にて表層1と基材層2を積層させた、積層体の断面図である。
【
図3】最大衝撃荷重の試験方法を説明するための説明図である。
【
図4】沈み込み率の試験方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の積層体100について
図1を用いて説明する。
図1は、積層体100を厚み方向に切断してなる断面を模式的に示す断面図である。
図1に示すとおり、積層体100は、表層1および基材層2を備えており、前記表層1および基材層2はいずれもポリウレタンフォームからなる。上記ポリウレタンフォームは、所定範囲の反発弾性率および密度を備える。
【0015】
(A)積層体
積層体100は、表層1および基材層2を備えており、表層1および基材層2はいずれもポリウレタンフォームからなる。積層体100は、反発弾性率が高く、耐摩耗性に優れる表層1と、軽量性に優れる基材層2を積層させることで、積層体100全体の反発弾性率および耐摩耗性を維持しつつ、軽量性に優れ、床用マット等に用いた際に脚部が沈み込み難い積層体100を提供するものである。
尚、使用や測定の際は、積層体100の対象側を表層、設置する側を基材層とする。対象とは、例えば本発明の積層体上で作業する人に限らず、フォークリフトや台車、ロボット等の駆動手段を備える物も含まれる。
【0016】
<密度>
積層体100全体の密度は、0.25g/cm3以上0.30g/cm3以下である。かかる密度を実現することで、当該積層体100が軽量性に優れるものとなる。密度が前記範囲にあると、積層体100の軽量性と反発弾性率とを良好なバランスで両立しやすい。
上記積層体100全体の密度が0.25g/cm3未満であると、当該積層体100全体の反発弾性率が低くなり過ぎる。一方、上記積層体100全体の密度が0.30g/cm3を超える場合、当該積層体100全体の重量が重くなりすぎて、運搬性に欠ける虞がある。
【0017】
上記積層体100の密度は、JIS K 7222:2005に準拠して測定される。
【0018】
<反発弾性率>
積層体100全体の反発弾性率(%)は、75%以上85%以下である。
上記積層体100全体の反発弾性率を75%以上85%以下とすることで、積層体100は、対象を押し返す力Fを充分に発揮するに至り、これによって当該対象の動作を行い易くさせる。
対象が人の場合、当該積層体100上における歩行時に、足裏に対して押し返す力Fが働き、次の動作(足を上げて次の一歩に移る際の動作)が容易になる。そのため、長時間の作業においても疲労が蓄積し難い。対象が駆動手段を備える物である場合、当該積層体100上の通過時に、物を押し返す力Fが働き、次の動作(キャスター等の駆動手段を備える物が移動する動作)が容易になる。そのため、物の移動効率が低下し難い。
上記積層体100全体の反発弾性率が75%未満である場合、対象を押し返す力Fを充分に発揮できず、対象を次への動作を行い難くする虞がある。85%を超える場合、所定範囲の密度を満たすことが出来ず、積層体100全体の軽量性と反発弾性率とを良好なバランスを両立することができない虞がある。
【0019】
上記積層体100全体の反発弾性率(%)は、JIS K 6255:2013に準拠して測定される。
【0020】
<厚み>
積層体100全体の厚みは、特に限定されないが、3mm以上50mm以下であることが好ましい。特に、床用マットや靴底に用いる際は、生産性や軽量性の観点から、10mm以上35mm以下であることがより好ましい。
【0021】
積層体100は、後述の表層1と基材層2を積層させてなる。積層体100を製造する方法としては、特に限定されないが、例えば、表層1および基材層2との間に接着剤などを用いて貼り合わせる方法、インサート成型にて表層1と基材層2を積層させる方法、表層1を構成する材料及び基材層2を構成する材料を多層インジェクション成形にて製造する方法が挙げられる。表層1および基材層2との間に接着剤などを用いて貼り合わせる方法では、
図1に示すような積層体が得られ易く、インサート成型にて表層1と基材層2を積層させる方法では、
図2に示すような積層体が得られ易い。
インサート成型にて表層1と基材層2を積層させる方法としては、まず表層用のポリウレタン原料組成物を、スクリューにて攪拌しながらモールドへ注入し、モールド内にてポリウレタン原料組成物を反応させた後、得られたポリウレタンフォームを所定の厚みにスライスすることで表層1を得る。次いで、得られた表層1をモールド内にインサートし、基材層用のポリウレタン原料組成物をスクリューにて攪拌しながら表層1上にインサート成型にて積層して、所定の厚み割合となるように表層1と基材層2からなる積層体を得る方法である。尚、予め成形した基材層2をインサートし、表層1をインサート成型にて積層してもよい。
一方、多層インジェクション成形(製法)では、例えば、2台以上の射出機を備えた成形機及び射出用金型を用いて、表層1を構成する材料及び基材層2を構成する材料をそれぞれの射出シリンダーから金型ホットランを通して、キャビティー内に射出して、射出用金型の形状に対応した多層インジェクション成形体を製造することができる。
積層体100の密着性や製造性の観点からは、インサート成型にて表層1と基材層2を積層させる方法が好ましい。インサート成型にて表層1と基材層2を積層させる方法では、
図2に示すように基材層2が表層1の表面にある凹凸に浸入硬化し、釘又はくさびのような働きをする投錨効果が得られるため、表層1と基材層2の密着性に優れる。
尚、本発明における表層1表面の凹凸とは、ポリウレタンフォーム形成の際に生じたセル(気泡)断面のことである。
【0022】
<最大衝撃荷重>
積層体100全体の最大衝撃荷重は、1.50kN以下が好ましい。かかる最大衝撃荷重を実現することで、当該積層体100全体が衝撃吸収性に優れるものとなる。
上記積層体100全体の最大衝撃荷重が1.50kNを超える場合、当該積層体100全体の衝撃吸収性が損なわれる虞がある。
【0023】
積層体100の最大衝撃荷重は、落下衝撃試験により最大衝撃荷重を測定される。落下衝撃試験は、「dynatup GRC8200(Instron社製)」を用いて、
図3に示すような砲弾状の錘W1(鉄製、5.1kg)を50mmの高さから衝撃荷重測定用試験片に落下させ積層体に対し衝突させた際の最大衝撃荷重(kN)を測定することで実施した。
【0024】
<沈み込み率>
積層体100全体の沈み込み率は、50%未満であることが好ましい。沈み込み率が50%未満であることで、対象の安定性が増し、対象が人である場合は、長時間の作業においても疲労が蓄積し難い。対象が駆動手段を備える物である場合は、物の移動効率が低下し難い。
上記積層体100の沈み込み率が50%以上であると、対象が積層体100に沈み込み、対象が人である場合は疲労しやすくなる虞がある。また対象が駆動手段を備える物である場合は、物の移動効率が低下する虞がある。
【0025】
積層体100の沈み込み率は、
図4に示すような水性インクの付いた試験球W2(鉄製、63.0g、直径25.0mm)を高さ56cmから落下させ、積層体100に対して衝突させ測定される。
【0026】
(B)表層
<密度>
表層1を構成するポリウレタンフォームの密度は、0.47g/cm3以上0.80g/cm3以下である。かかる密度を実現することで、積層体100の軽量性と反発弾性率とを良好なバランスで両立しやすい。
【0027】
表層1を構成するポリウレタンフォームの密度の測定方法は、JIS K 7222:2005に準拠して測定される。
【0028】
<反発弾性率>
表層1を構成するポリウレタンフォームの反発弾性率は、75%以上85%以下、好ましくは78%以上83%以下である。
反発弾性率が前記範囲にあると、積層体100の軽量性と反発弾性率とを良好なバランスで両立しやすい。
前記表層1の反発弾性率を75%以上とすることで、対象を押し返す力Fを充分に発揮するに至り、これによって対象を次への動作を行い易くさせる。
対象とは、例えば本発明の表層1上で作業する人に限らず、フォークリフトや台車、ロボット等の駆動手段を備える物も含まれる。
尚、対象が人の場合、当該積層体100上における歩行時に、足裏に対して押し返す力Fが働き、次の動作(足を上げて次の一歩に移る際の動作)が容易になる。そのため、長時間の作業においても疲労が蓄積し難い。対象が駆動手段を備える物である場合、当該積層体100上の通過時に、物を押し返す力Fが働き、次の動作(キャスター等の駆動手段を備える物が移動する動作)が容易になる。そのため、物の移動効率が低下し難い。
上記表層1の反発弾性率が75%未満である場合、対象を押し返す力Fを充分に発揮できず、対象を次への動作へ行い難くする虞がある。また、反発弾性率が85%を超える場合、積層体100の軽量性と反発弾性率とを良好なバランスを両立することができない。
【0029】
上記表層1を構成するポリウレタンフォームの反発弾性率の測定方法は、表層1を構成するポリウレタンフォームを直径29mm、厚み12.5mmの円柱状の試験片を切り出したものを反発弾性率測定用試験片とし、JIS K 6255:2013に準拠して測定される。
【0030】
<厚み>
表層1を構成するポリウレタンフォームの厚みは、積層体100全体に対する厚み割合が12.5%以上30.4%以下である。上記表層1の厚みを、積層体100全体に対する厚み割合が12.5%以上30.4%以下とすることで、所定範囲の反発弾性率、密度、耐摩耗性、沈み込み率の調節が容易となる。
【0031】
<耐摩耗性>
表層1を構成するポリウレタンフォームは、摩耗体積が0.71cm3以下であることが好ましい。かかる耐摩耗性を実現することで、当該積層体100が耐久性に優れるものとなる。
上記表層1の摩耗体積が0.71cm3を超える場合、当該表層1の密度が小さくなり、積層体100全体の軽量性と反発弾性率とを良好なバランスを両立することができない虞がある。
【0032】
表層1を構成するポリウレタンフォームの摩耗体積は、幅11.0 mm、厚さ12.5mmで、短冊状の試験片を切り出し、円盤状アルミコアの円周上に接着剤で張り付けたものを摩耗体積測定用試験片とし、当該摩耗体積測定用試験片を用いて、駆動装置を毎分75回の速度で回転させ300回転なじみ運転し、傾角支持部の傾角10度、圧着装置の研磨輪を27.0Nの条件下で、JIS K 6264:2005に準拠して、摩耗体積(cm3)が測定される。
【0033】
<アスカーC硬度>
表層1を構成するポリウレタンフォームのアスカーC硬度は、40以上80以下が好ましい。上記表層1のポリウレタンフォームのC硬度が40未満であると、耐摩耗性に劣り、表面が削れる虞がある。耐摩耗性に優れ、表面の削れを抑制する点からは、上記アスカーC硬度は、40以上であることが好ましく、55以上であることがより好ましい。一方、上記ポリウレタンフォームのアスカーC硬度が80を超える場合、積層体100全体の柔軟性が不足し、使用感が損なわれる虞がある。したがって積層体の柔軟性の点からは、上記C硬度は、80以下であることが好ましく、75以下であることがより好ましい。
【0034】
上記表層1を構成するポリウレタンフォームのアスカーC硬度は、JIS K 7312:1996に準拠し、アスカーゴム硬度計C型を用いて測定される。より具体的には、上記アスカーC硬度は、表層1から縦120mm、横60mm、厚み12.5mmの四方形の試験片を切り出して硬度測定用試験片とし、当該硬度測定用試験片を用い、JIS K 7312:1996に準拠しアスカーゴム硬度計C型を用いて硬度を測定する。
【0035】
(C)基材層
<密度>
基材層2を構成するポリウレタンフォームの密度は、0.12g/cm3以上0.22g/cm3以下である。かかる密度を実現することで、積層体100全体が軽量なものとなる。
密度が前記範囲にあると、積層体100全体の軽量性と反発弾性率とを良好なバランスで両立しやすい。密度が0.12g/cm3未満であると、発泡倍率が高くなり、基材層2を成形できない虞がある。0.22g/cm3を超えると、積層体100全体が軽量でなくなる虞がある。
【0036】
基材層2を構成するポリウレタンフォームの密度は、基材層2から縦120mm、横60mm、厚み12.5mmの四方形の試験片を切り出して密度測定用試験片とし、当該密度測定用試験片を用いてJIS K 7222:2005に準拠して測定する。
【0037】
<反発弾性率>
基材層2を構成するポリウレタンフォームの反発弾性率は、60%以上80%以下、好ましくは65%以上75%以下である。
反発弾性率が前記範囲にあると、積層体100全体の軽量性と反発弾性率とを良好なバランスで両立しやすい。
【0038】
上記基材層2を構成するポリウレタンフォームの反発弾性率は、基材層2を構成するポリウレタンフォームを直径29mm、厚み12.5mmの円柱状の試験片を切り出し反発弾性率測定用試験片とし、JIS K 6255:2013に準拠して測定される。
【0039】
<厚み>
基材層2を構成するポリウレタンフォームの厚みは、積層体100全体に対する厚み割合が69.6%以上87.5%以下である。上記表層2の厚みを、積層体100全体に対する厚み割合が69.6%以上87.5%以下とすることで、所定範囲の反発弾性率、密度、耐摩耗性、沈み込み率の調節が容易となる。
【0040】
(D)ポリウレタンフォームの組成
表層1と基材層2を積層させてなる積層体100を構成するポリウレタンフォームは、ポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤および整泡剤等を含むポリウレタン原料組成物を反応させることで形成される。上記積層体100を構成するポリウレタンフォームは、公知のポリウレタンフォームの製造方法にて製造することができる。
【実施例0041】
<表層の物性>
表1に示すように、各材料を混合した表層用のポリウレタン原料組成物を、スクリュー回転数3050rpmにて攪拌しながら、内室が120mm×120mm×12.5mmのモールドに注入して、モールド温度43℃の条件下でポリウレタン原料組成物を反応後、表層用のポリウレタンフォームを得た。
尚、ポリウレタン原料組成物を注入する際は、表1の密度になるよう、注入量を適宜調整した。
【0042】
表1中におけるポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤、および整泡剤については、以下に示すとおりである。尚、表1中の材料の配合を示す数値の単位は、質量部である。
・ポリオール1:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量2000、平均水酸基価57.2mgKOH/g、平均官能基数2)
・アミン触媒1:トリエチレンジアミン(商品名;TEDA、東ソー株式会社製)
・アミン触媒2:トリエチレンジアミン(商品名;TEDA-L33、東ソー株式会社製)
・ビスマス系触媒:ビスマス触媒(商品名;プキャット25、日本化学産業株式会社製)・UV吸収剤:TINUVIN571、BASFジャパン株式会社製
・光安定剤:HSエステル765、富国製油株式会社
・整泡剤1:シリコン系化合物(商品名;SZ3601、東レダウコーニング株式会社製)
・発泡剤:イオン交換水
・イソシアネート1:PTMGと4,4′-MDIを反応させたプレポリマー、数平均分子量;1000、平均官能基数2、イソシアネート基含有率7.8%
・イソシアネート2:PTMGと4,4′-MDIを反応させたプレポリマー、数平均分子量;2000、平均官能基数2、イソシアネート基含有率7.8%
・変性MDI:カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(変性MDI)、イソシアネート基含有率28.2質量%
【0043】
上述のとおり製造した表層用のポリウレタンフォームの物性を以下のとおり評価した。評価結果は、表1に示す。尚、評価は、いずれも室温(23±2℃)で実施した。
【0044】
(密度)
表層用のポリウレタンフォームから、縦120mm、横60mm、厚み12.5mmの四方形の試験片を切り出して密度測定用試験片とした。上記密度測定用試験片を用いてJIS K 7222:2005に準拠して密度を測定した。
【0045】
(アスカーC硬度)
表層用のポリウレタンフォームから、縦120mm、横60mm、厚み12.5mmの四方形の試験片を切り出して硬度測定用試験片とした。上記硬度測定用試験片を用い、JIS K 7312:1996に準拠しアスカーゴム硬度計C型を用いて硬度を測定した。
【0046】
(反発弾性率)
表層用のポリウレタンフォームから、直径29mm、厚み12.5mmの円柱状の試験を切り出し反発弾性率測定用試験片とした。上記反発弾性率測定試験片を用いてJIS K 6255:2013に準拠して反発弾性率(%)を測定した。
【0047】
(摩耗体積)
各実施例および各比較例の表層用のポリウレタンフォームから、幅11.0 mm,厚さ12.5mmで、短冊状の試験片を切り出したものを、円盤状アルミコアの円周上に接着剤で張り付けたものを摩耗体積測定用試験片とした。上記摩耗体積測定用試験片を用いて、駆動装置を毎分75回の速度で回転させ300回転なじみ運転し、傾角支持部の傾角10度、圧着装置の研磨輪を27.0Nの条件下で、JIS K 6264:2005に準拠して、摩耗体積(cm3)を測定した。
【0048】
<基材層の物性>
表2に示すように、各材料を混合した基材層用のポリウレタン原料組成物を、スクリュー回転数3050rpmにて攪拌しながら、内室が120mm×120mm×12.5mmのモールドにて、モールド温度43℃の条件下で基材層用のポリウレタンフォームを得た。
尚、ポリウレタン原料組成物を注入する際は、表2の密度になるよう、注入量を適宜調整した。
【0049】
表2中におけるポリオール成分、イソシアネート成分、触媒、発泡剤、および整泡剤については、以下に示すとおりである。尚、表2中の材料の配合を示す数値の単位は、質量部である。
・ポリオール1:ポリテトラメチレンエーテルグリコール(数平均分子量2000、平均水酸基価57.2mgKOH/g、平均官能基数2)
・ポリオール2:ポリプロピレングリコール(商品名;KC737、数平均分子量7000、平均水酸基価24.0mgKOH/g、三洋化学工業株式会社製)
・アミン触媒1:トリエチレンジアミン(商品名;TEDA、東ソー株式会社製)
・アミン触媒2:トリエチレンジアミン(商品名;TEDA-L33、東ソー株式会社製)
・ビスマス系触媒:ビスマス触媒(商品名;プキャット25、日本化学産業株式会社製)
・UV吸収剤:TINUVIN571、BASFジャパン株式会社製
・光安定剤:HSエステル765、富国製油株式会社
・整泡剤1:シリコン系化合物(商品名;SZ3601、東レダウコーニング株式会社製)
・整泡剤2:シリコン系化合物(商品名;L-5639、モメンティブ株式会社製、)
・発泡剤:イオン交換水
・変性MDI:カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(変性MDI)、イソシアネート基含有率28.2質量%
【0050】
上述のとおり製造した基材層のポリウレタンフォームの物性を以下のとおり評価した。評価結果は、表2に示す。尚、評価は、いずれも室温(23±2℃)で実施した。
【0051】
(密度)
基材層用のポリウレタンフォームから、縦120mm、横60mm、厚み12.5mmの四方形の試験片を切り出して密度測定用試験片とした。上記密度測定用試験片を用いてJIS K 7222:2005に準拠して密度を測定した。
【0052】
(アスカーC硬度)
基材層用のポリウレタンフォームから、縦120mm、横60mm、厚み12.5mmの四方形の試験片を切り出して硬度測定用試験片とした。上記硬度測定用試験片を用い、JIS K 7312:1996に準拠しアスカーゴム硬度計C型を用いて硬度を測定した。
【0053】
(反発弾性率)
基材層用のポリウレタンフォームから、直径29mm、厚み12.5mmの円柱状の試験片を切り出し反発弾性率測定用試験片とした。上記反発弾性率測定試験片を用いてJIS K 6255:2013に準拠して反発弾性率(%)を測定した。
【0054】
<積層体>
実施例1~5、比較例1~6
表1に示すように各材料を混合した、表層用のポリウレタン原料組成物を、スクリュー回転数3050rpmにて攪拌しながら、内室が120mm×120mm×12.5mmのモールドに注入して、モールド温度43℃の条件下でポリウレタン原料組成物を反応後、得られたポリウレタンフォームを表3に示す所定の厚みにスライスすることで表層を得た。
次いで、得られた表層を内室が120mm×120mm×12.5mmのモールド内にインサートした。
その後、表2に示すように各材料を混合した基材層用のポリウレタン原料組成物を、スクリュー回転数3050rpmにて攪拌しながら、表層上に密度に応じ注入量を適宜調整しながらインサート成型にて積層する方法で、表3に示す厚み割合となるように表層と基材層からなる積層体を得た。
【0055】
表3の表層と基材層からなる積層体のポリウレタン原料組成物については、上記表1~2に示すとおりである。
【0056】
上述のとおり製造した実施例および比較例の積層体の物性を以下のとおり評価した。評価結果は、表3に示す。尚、評価は、いずれも室温(23±2℃)で実施した。また、積層体の物性測定の際は、表層を上面、基材層を下面とした。
【0057】
(密度)
各実施例および各比較例の積層体についてJIS K 7222:2005に準拠して密度(g/cm3)を測定した。
【0058】
(アスカーC硬度)
各実施例および各比較例の積層体についてJIS K 7312:1996に準拠しアスカーゴム硬度計C型を用いて硬度を測定した。
【0059】
(反発弾性率)
各実施例および各比較例の積層体についてJIS K 6255:2013に準拠して反発弾性率(%)を測定した。
【0060】
(最大衝撃荷重)
各実施例および各比較例の積層体について、落下衝撃試験により最大衝撃荷重を測定した。落下衝撃試験は、「dynatup GRC8200(Instron社製)」を用
いて、
図3に示すような砲弾状の錘W1(鉄製、5.1kg)を50mmの高さから衝撃荷重測定用試験片に落下させ積層体に対し衝突させた際の最大衝撃荷重(kN)を測定することで実施した。
【0061】
(沈み込み率の評価)
各実施例および各比較例の積層体を、沈み込み率測定用の固定台に設置し、水性インクの付いた試験球W2(鉄製、63.0g、直径25.0mm)を高さ56cmから落下させ、積層体に対して衝突させた。衝突後、積層体に付着した試験球のインク痕半径Xを測定し、下記の式より沈み込み率を算出した。
【数1】
【0062】
上記沈み込み率の評価によって測定された測定値から、各実施例および各比較例の沈み込み率を以下のとおり評価した。
〇・・・沈み込み率が50%未満
×・・・沈み込み率が50%以上
【0063】
【0064】
【0065】
本発明の積層体は、反発弾性率、軽量性、耐摩耗性に優れ、沈み込みが少ないため、床用マットや靴底部材(例えば、ミッドソールやインソールなど)の材料に好適である。また、他にも、プロテクター、ヘルメット内部、車両用の緩衝材料等にも好適である。