(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050152
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】多層デバイス
(51)【国際特許分類】
H01P 1/205 20060101AFI20230403BHJP
【FI】
H01P1/205 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151957
(22)【出願日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021159267
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】神山 智英
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 義行
【テーマコード(参考)】
5J006
【Fターム(参考)】
5J006HA01
5J006HA02
5J006JA02
5J006JA09
5J006LA05
5J006LA24
(57)【要約】
【課題】信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる多層デバイスを提供する。
【解決手段】多層デバイス1Aは、信号を伝送する信号線路20と、グランド電位に設定されるグランド電極30と、グランド電極30に平行で、かつ、第1方向d1に沿って配置された複数の平面電極40と、信号線路20、複数の平面電極40およびグランド電極30のそれぞれの間に設けられた誘電体10と、複数の平面電極40およびグランド電極30の間に位置し、複数の平面電極40およびグランド電極30を接続する複数の接続電極50と、を備える。複数の平面電極40および複数の接続電極50の少なくとも一方の電極は、異なる2種以上の電極構造を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体と、
一部が前記誘電体の外面に露出するように、前記誘電体の内部に設けられた信号線路と、
少なくとも一部が前記誘電体の外面に露出するように、前記誘電体の内部または外面に設けられたグランド電極と、
前記誘電体の内部に設けられ、前記グランド電極に平行で、かつ、第1方向に沿って配置された複数の平面電極と、
前記誘電体の内部に設けられ、前記複数の平面電極および前記グランド電極を接続する複数の接続電極と、
前記誘電体の外面に設けられ、前記信号線路に接続される複数の信号端子と、
前記誘電体の外面に設けられ、前記グランド電極に接続される複数のグランド端子と、
を備える多層デバイス。
【請求項2】
前記複数の平面電極および前記複数の接続電極の少なくとも一方の電極は、異なる2種以上の電極構造を有する
請求項1に記載の多層デバイス。
【請求項3】
前記接続電極は、ビア導体であり、前記平面電極に垂直な方向から見た場合に、前記平面電極の外周端部に重なっている
請求項1に記載の多層デバイス。
【請求項4】
前記平面電極に垂直な方向から見た場合に、前記信号線路の幅は、前記平面電極の前記第1方向に垂直な第2方向の長さと同じである
請求項1に記載の多層デバイス。
【請求項5】
信号を伝送する信号線路と、
グランド電位に設定されるグランド電極と、
前記グランド電極に平行で、かつ、第1方向に沿って配置された複数の平面電極と、
前記信号線路、前記複数の平面電極および前記グランド電極のそれぞれの間に設けられた誘電体と、
前記複数の平面電極および前記グランド電極の間に位置し、前記複数の平面電極および前記グランド電極を接続する複数の接続電極と、
を備え、
前記複数の平面電極および前記複数の接続電極の少なくとも一方の電極は、異なる2種以上の電極構造を有する
多層デバイス。
【請求項6】
前記複数の平面電極は、前記信号線路と前記平面電極との対向面積、および、前記第1方向に沿って配置された前記複数の平面電極の配列ピッチの少なくとも1つについて、異なる2種以上の構造を有する
請求項5に記載の多層デバイス。
【請求項7】
前記複数の接続電極は、前記複数の接続電極の断面積、および、前記複数の接続電極の長さの少なくとも1つについて、異なる2種以上の構造を有する
請求項5に記載の多層デバイス。
【請求項8】
前記異なる2種以上の構造を複数組備える
請求項6に記載の多層デバイス。
【請求項9】
前記信号線路、前記グランド電極、前記複数の平面電極および前記複数の接続電極を1組とする積層体が複数積層された多層構造を有する
請求項1~8のいずれか1項に記載の多層デバイス。
【請求項10】
前記信号線路は、前記誘電体に設けられた2つの平行な線路によって構成されている
請求項1~8のいずれか1項に記載の多層デバイス。
【請求項11】
前記2つの平行な線路は、差動信号が伝送される差動線路である
請求項10に記載の多層デバイス。
【請求項12】
前記複数の平面電極のうちの少なくとも1つの平面電極は、前記1つの平面電極と異なる他の平面電極とは、前記信号線路と前記平面電極との対向面積が異なる
請求項1~8のいずれか1項に記載の多層デバイス。
【請求項13】
前記第1方向に沿って隣り合う1組の平面電極の中心間距離は、前記1組とは異なる組み合わせである他の1組の平面電極の中心間距離と異なる
請求項1~8のいずれか1項に記載の多層デバイス。
【請求項14】
前記複数の接続電極のうちの少なくとも1つの接続電極は、前記1つの接続電極と異なる他の接続電極とは、前記接続電極の断面積が異なる
請求項1~8のいずれか1項に記載の多層デバイス。
【請求項15】
前記複数の接続電極のうちの少なくとも1つの接続電極は、前記1つの接続電極と異なる他の接続電極とは、前記接続電極の長さが異なる
請求項1~8のいずれか1項に記載の多層デバイス。
【請求項16】
前記複数の平面電極は、前記信号線路と前記グランド電極との間に配置されている
請求項1~8のいずれか1項に記載の多層デバイス。
【請求項17】
前記複数の平面電極は、前記信号線路から見て前記グランド電極の反対側に配置されている
請求項1~8のいずれか1項に記載の多層デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多層デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速デジタル信号および高周波信号(以下、高速・高周波信号と呼ぶ)の通過特性を制御する機能基板が知られている。この種の機能基板の一例として、特許文献1には、導体エレメント(平面電極)および貫通ビア(接続電極)によって構成されるマッシュルーム構造体と、グランドとして機能する導体(グランド電極)と、を備える機能基板が開示されている。この機能基板は、マッシュルーム構造体が周期的に配置された構造を有しており、高速・高周波信号のうち特定の周波数の信号の通過を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の機能基板では、高速・高周波信号のうち特定の周波数の信号の通過を阻止できるが、阻止できる周波数帯域が狭いという問題がある。
【0005】
また、従来の機能基板に上記のマッシュルーム構造体を形成すると、機能基板の層数が増えてコストアップになるという問題がある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みて、信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる多層デバイスを提供することを目的とする。
【0007】
また、本開示は、従来の機能基板がコストアップすることを抑制できる多層デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る多層デバイスは、誘電体と、一部が前記誘電体の外面に露出するように、前記誘電体の内部に設けられた信号線路と、少なくとも一部が前記誘電体の外面に露出するように、前記誘電体の内部または外面に設けられたグランド電極と、前記誘電体の内部に設けられ、前記グランド電極に平行で、かつ、第1方向に沿って配置された複数の平面電極と、前記誘電体の内部に設けられ、前記複数の平面電極および前記グランド電極を接続する複数の接続電極と、前記誘電体の外面に設けられ、前記信号線路に接続される複数の信号端子と、前記誘電体の外面に設けられ、前記グランド電極に接続される複数のグランド端子と、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る多層デバイスは、信号を伝送する信号線路と、グランド電位に設定されるグランド電極と、前記グランド電極に平行で、かつ、第1方向に沿って配置された複数の平面電極と、前記信号線路、前記複数の平面電極および前記グランド電極のそれぞれの間に設けられた誘電体と、前記複数の平面電極および前記グランド電極の間に位置し、前記複数の平面電極および前記グランド電極を接続する複数の接続電極と、を備え、前記複数の平面電極および前記複数の接続電極の少なくとも一方の電極は、異なる2種以上の電極構造を有する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の多層デバイスによれば、信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる。また、本開示の多層デバイスによれば、多層デバイスが実装されるプリント回路基板がコストアップすることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1に示す多層デバイスの等価回路の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る多層デバイスを模式的に示す斜視図である。
【
図4A】実施の形態1に係る多層デバイスの天面図である。
【
図4B】実施の形態1に係る多層デバイスを
図4Aに示すIVB-IVB線から見た断面図である。
【
図4C】実施の形態1に係る多層デバイスの底面図である。
【
図5】実施の形態1に係る多層デバイスの他の一例を示す断面図である。
【
図6】実施の形態1に係る多層デバイスの他の一例を示す断面図である。
【
図7A】実施の形態1の変形例1に係る多層デバイスの天面図である。
【
図7B】実施の形態1の変形例1に係る多層デバイスを
図7Aに示すVIIB-VIIB線から見た断面図である。
【
図9】参考例の多層デバイスの通過特性を示す図である。
【
図10】実施の形態1の変形例2に係る多層デバイスを示す図である。
【
図11】実施の形態1の変形例2に係る多層デバイスの通過特性を示す図である。
【
図12】実施の形態1の変形例3に係る多層デバイスを示す図である。
【
図13】実施の形態1の変形例3に係る多層デバイスの通過特性を示す図である。
【
図14】実施の形態1の変形例4に係る多層デバイスを示す図である。
【
図15】実施の形態1の変形例4に係る多層デバイスの通過特性を示す図である。
【
図16】実施の形態2に係る多層デバイスを示す断面図である。
【
図17】実施の形態3に係る多層デバイスを模式的に示す斜視図である。
【
図18】実施の形態3の変形例1に係る多層デバイスを模式的に示す斜視図である。
【
図19】実施の形態3に係る多層デバイスの信号線路、平面電極およびグランド電極を示す図である。
【
図20A】実施の形態3の多層デバイスにおけるディファレンシャルモード信号の通過特性を示す図である。
【
図20B】実施の形態3の多層デバイスにおけるコモンモード信号の通過特性を示す図である。
【
図20C】実施の形態3の多層デバイスのコモン-ディファレンシャル変換信号およびディファレンシャル-コモン変換信号の通過特性を示す図である。
【
図21A】実施の形態4に係る多層デバイスの天面図である。
【
図21B】実施の形態4に係る多層デバイスを
図21Aに示すXXIB-XXIB線から見た断面図である。
【
図22】実施の形態4に係る多層デバイスの通過特性を示す図である。
【
図23A】実施の形態5に係る多層デバイスの天面図である。
【
図23B】実施の形態5に係る多層デバイスを
図23Aに示すXXIIIB-XXIIIB線から見た断面図である。
【
図24】実施の形態5に係る多層デバイスの通過特性を示す図である。
【
図25】実施の形態6に係る多層デバイスの外観図である。
【
図26】実施の形態6に係る多層デバイスの信号線路、平面電極、グランド電極および接続電極を示す図である。
【
図27A】実施の形態6に係る多層デバイスの信号線路等を上から見た平面図である。
【
図27B】実施の形態6に係る多層デバイスを
図27Aに示すXXVIIB-XXVIIB線から見た断面図である。
【
図27C】実施の形態6に係る多層デバイスの底面図である。
【
図28】実施の形態7に係る多層デバイスの信号線路、平面電極、グランド電極および接続電極を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示に至る経緯)
本開示に至る経緯について、
図1および
図2を参照しながら説明する。
【0013】
【0014】
図1に示すように多層デバイス1は、高速・高周波信号を伝送する信号線路20と、グランド電位に設定されるグランド電極30と、信号線路20に沿って配置された複数の平面電極40と、グランド電極30および複数の平面電極40を接続する複数の接続電極50と、を備える。信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50は、誘電体(図示省略)の内部または表面に設けられる。
【0015】
この多層デバイス1は、平面電極40および接続電極50からなるマッシュルーム構造体が電磁波の波長に対して十分に小さな間隔で複数配置された構造を有している。このように複数のマッシュルーム構造体が電磁波の波長に対して十分に小さな間隔で配置された構造は、EBG(Electromagnetic Band Gap)構造とも呼ばれる。EBG構造を有する多層デバイス1では、媒質中の実効的な誘電率および透磁率を負の値にすることが可能である。
【0016】
図2は、
図1に示す多層デバイス1の等価回路の一例を示す図である。
【0017】
図2に示す等価回路は、信号線路20の誘導性成分L20と、信号線路20およびグランド電極30を結ぶ経路の間に設けられた並列回路(並列共振回路)とによって構成される。並列回路は、信号線路20および平面電極40に基づく容量性成分C40と、接続電極50による誘導性成分L50と、信号線路20およびグランド電極30に基づく容量性成分C20とによって構成される。
【0018】
多層デバイス1では、
図1に示すマッシュルーム構造体を複数配置することで、
図2に示す並列回路のアドミタンスを制御し、誘電率を負の値にすることができる。誘電率が負となる帯域では、高速・高周波信号が信号線路上を伝搬できなくなり、多層デバイス1は帯域阻止フィルタとして機能する。
【0019】
しかしながら、
図2に示すように、複数のマッシュルーム構造体が同じ大きさかつ同じ配列ピッチで配置されると、高速・高周波信号の通過を阻止する阻止帯域の広さが不十分となることがある。それに対し、本実施の形態の多層デバイスでは、高速・高周波信号の通過を阻止する阻止帯域を広げるために、以下に示す構成を有している。
【0020】
以下、実施の形態について、図面を参照しながらより具体的に説明する。
【0021】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置、接続形態、ステップ及びステップの順序等は一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0022】
また、本明細書において、平行などの要素間の関係性を示す用語、及び、直方体などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0023】
また、各図は、本開示を示すために適宜強調、省略、又は比率の調整を行った模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではなく、実際の形状、位置関係及び比率とは異なる場合がある。各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡素化される場合がある。
【0024】
また、本明細書において、多層デバイスの構成における「天面」及び「底面」という用語は、絶対的な空間認識における天面(鉛直上方側の面)及び底面(鉛直下方側の面)を指すものではなく、多層デバイスの構成要素の相対的な位置関係により規定される用語として用いる。
【0025】
(実施の形態1)
[多層デバイスの構成]
実施の形態1に係る多層デバイス1Aの構成について
図3~
図6を参照しながら説明する。
【0026】
図3は、実施の形態1に係る多層デバイス1Aを模式的に示す斜視図である。
図4Aは、多層デバイス1Aの天面図である。
図4Bは、多層デバイス1Aを
図4Aに示すIVB-IVB線から見た断面図である。
図4Cは、多層デバイス1Aの底面図である。なお、
図3は、多層デバイス1Aの外形を破線で示し、また、信号線路20、平面電極41、42、43およびグランド電極30の厚みの図示を省略している。
図4Aおよび
図4Bでは、信号線路20、平面電極41、42、43およびグランド電極30を、
図3よりも大きなサイズで示している。
【0027】
図3および
図4A~
図4Cに示すように、多層デバイス1Aは、誘電体10と、信号線路20と、グランド電極30と、複数の平面電極41、42および43と、複数の接続電極51、52および53と、を備えている。また、多層デバイス1Aは、複数の信号端子61および62と、複数のグランド端子71、72、73および74と、を備えている。
【0028】
以下において、複数の平面電極41~43の一部または全部を指して平面電極40と呼び、複数の接続電極51~53の一部または全部を指して接続電極50と呼ぶ場合がある。また、複数の信号端子61、62の一部または全部を指して信号端子60と呼び、複数のグランド端子71~74の一部または全部を指してグランド端子70と呼ぶ場合がある。
【0029】
例えば、信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50は、銀または銅などの金属材料によって形成される。なお、信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50は、同じ材料または同じ組成比によって形成されていてもよいし、異なる材料または異なる組成比によって形成されていてもよい。
【0030】
誘電体10は、例えば、複数の誘電体層が積層されることで形成される。誘電体10は、例えば、低温同時焼成セラミックス(Low Temperature Co-fired Ceramics:LTCC)などの誘電体材料によって形成されている。誘電体10の比誘電率は、例えば7であり、ガラスエポキシ基板の比誘電率よりも高い。多層デバイス1Aを小型化するためには、誘電体10として比誘電率が高い材料を使うことが望ましい。誘電体10は、信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50のそれぞれの間に設けられている。誘電体10は、信号線路20の両端面を除く外周面、ならびに、平面電極40および接続電極50からなる電極構造体を覆うように形成されている。また、誘電体10は、グランド電極30の底面および両端面の両方を除く上面を覆うように形成されている。
【0031】
誘電体10は、直方体状の形状を有しており、底面16と、底面16に背向する天面17と、底面16と天面17とを繋ぐ複数の側面11、12、13および14とを有している。複数の側面11~14は、互いに背向する側面11および12と、側面11および側面12の両方の面に直交する側面13および14とを有している。底面16および天面17は互いに平行であり、側面11および12は互いに平行であり、側面13および14は互いに平行である。誘電体10の各面が交わるコーナ部分(稜線部分)は、丸みを有していてもよい。
【0032】
ここで、側面11と側面12とが背向する方向を第1方向d1と呼び、側面13と側面14とが背向する方向を第2方向d2と呼び、底面16と天面17とが背向する方向を第3方向d3と呼ぶ。また以下において、第1方向d1のマイナス側を一方と呼び、マイナス側の反対であるプラス側を他方と呼ぶことがある。
【0033】
信号線路20は、直線状であり、誘電体10の端面から反対の端面へ向かう方向である第1方向d1に沿って設けられている。なお、第1方向d1は、前述したように側面11と側面12とが背向する方向であり、信号線路20の両端を繋ぐ直線に沿う方向と同じ方向になっている。信号線路20は、信号線路20の一部である両端が誘電体10の外面(側面11、12)に露出するように、誘電体10の内部に設けられている。また、信号線路20は、帯状であり、後述するグランド電極30に対して平行に配置されている。多層デバイス1Aが電子機器に実装された状態において、信号線路20には、信号端子60を介して高速・高周波信号が入出力される。
【0034】
信号端子60は、誘電体10の外面である側面11、12に設けられている。2つの信号端子61、62のうち一方の信号端子61は側面11に設けられ、他方の信号端子62は側面12に設けられている。一方の信号端子61には信号線路20の一方端が接続され、他方の信号端子62には、信号線路20の他方端が接続されている。
【0035】
グランド電極30は、誘電体10の底面16に設けられ、側面11、12に到達するまで形成されている。グランド電極30は、信号端子60に接触しないように、信号端子60に対して所定の間隔を空けて底面16に設けられている。なお、グランド電極30は、底面16ではなく誘電体10の内部に設けられ、グランド電極30の一部が、誘電体10の側面11、12に露出していてもよい。多層デバイス1Aが電子機器に実装された状態において、グランド電極30は、グランド端子70を介してグランド電位に設定される。また、グランド電極30はベタパターンではなく、開口パターンを有する構造、例えばメッシュ構造としてもよい。グランド電極30をメッシュ構造とすることで誘電体10同士を接合させて接合強度を強くすることが出来る。
【0036】
グランド端子70は、誘電体10の外面である側面11、12に設けられている。4つのグランド端子71~74のうち一方のグランド端子71、73は側面11に設けられ、他方のグランド端子72、74は側面12に設けられている。一方のグランド端子71、73にはグランド電極30の一方端が接続され、他方のグランド端子72、74には、グランド電極30の他方端が接続される。一方のグランド端子71、73は、第2方向d2において、一方の信号端子61の両隣に配置されている。また、他方のグランド端子72、74は、第2方向d2において、他方の信号端子62の両隣に配置されている。言い換えると、一方の信号端子61は、2つのグランド端子71、73の間に配置され、他方の信号端子62は、2つのグランド端子72、74の間に配置されている。
【0037】
なお、グランド端子70の数は4つに限られず、2つであってもよい。グランド端子70は、誘電体10の側面11、12、もしくは、側面13、14に1つずつ設けられていてもよい。例えば、グランド端子70は、側面11、12に1つずつ設けられていてもよい。その場合、実装向きを考慮する必要がないように、グランド端子70を対角線上に配置することが望ましい。また、グランド端子70は、側面11、12だけではなく、側面13、14にも設けられていてもよい。また、グランド端子70は、側面13、14のみに設けられていてもよい。
【0038】
平面電極40は、第3方向d3において、信号線路20とグランド電極30との間に位置するように、誘電体10の内部に設けられている。平面電極40は、信号線路20およびグランド電極30に対して平行に配置されている。平面電極40と信号線路20との間のギャップは、グランド電極30と信号線路20との間のギャップよりも小さい。本実施の形態における平面電極40と信号線路20との間のギャップは、例えば、グランド電極30と信号線路20との間のギャップの0.1倍以上0.5倍以下であるが、このギャップの大きさは、多層デバイス1Aに必要とされる阻止帯域等に応じて適宜設定される。複数の平面電極40は、正方形形状を有する平面状の電極である。なお、平面電極40の形状は、正方形に限られず、長方形、多角形、円形または楕円形であってもよい。
【0039】
複数の平面電極41、42、43は、第1方向d1に沿って、すなわち信号線路20に沿ってこの順で配置されている。各平面電極41~43は、信号線路20の中心線cLに各平面電極41~43の中心が重なるように配置されている。各平面電極41~43の幅(第2方向d2の長さ)は、信号線路20の幅よりも大きい。
【0040】
接続電極50は、複数の平面電極40およびグランド電極30を接続するビア導体であり、誘電体10の内部に設けられている。接続電極50は、複数の平面電極40およびグランド電極30の間に位置する誘電体10を貫通するように形成される。接続電極50は柱状であり、接続電極50の径は、平面電極40の厚みよりも大きい。接続電極50の長さは、グランド電極30と信号線路20との間のギャップよりも小さい。なお、この多層デバイス1Aでは、接続電極50の長さを変えると、平面電極40と信号線路20との間のギャップも変わる。
【0041】
各接続電極51~53は、各平面電極41~43に一対一で対応するように、第1方向d1に沿って設けられている。具体的には、接続電極51は平面電極41およびグランド電極30を接続するように、接続電極52は平面電極42およびグランド電極30を接続するように、接続電極53は平面電極43およびグランド電極30を接続するように設けられている。また、各接続電極51~53は、各平面電極41~43の中心に接続されている。なお、各接続電極51~53は、必ずしも各平面電極41~43の中心に接続されている必要はなく、各平面電極41~43の外周端部に接続されていてもよい。
【0042】
本実施の形態の多層デバイス1Aは、高速・高周波信号の通過を阻止する阻止帯域を広げるために、複数の平面電極40および複数の接続電極50の少なくとも一方の電極は、異なる2種以上の電極構造を有している。電極構造の種類が異なるとは、例えば、複数の電極の形状、大きさおよび配置位置の少なくとも1つが異なることを意味する。
【0043】
まず、複数の平面電極40の電極構造について説明する。複数の平面電極40は、信号線路20と平面電極40との対向面積、および、第1方向d1に沿って配置された複数の平面電極40の配列ピッチの少なくとも1つについて、異なる2種以上の電極構造を有している。
【0044】
図3および
図4Aに示すように、複数の平面電極41~43は、異なる大きさの電極で形成されている。例えば、信号線路20と平面電極42との対向面積は、信号線路20と平面電極41との対向面積よりも大きく、信号線路20と平面電極41との対向面積の1.1倍以上である。信号線路20と平面電極43との対向面積は、信号線路20と平面電極42との対向面積よりも大きく、信号線路20と平面電極42との対向面積の1.1倍以上である。
【0045】
このように本実施の形態では、複数の平面電極40のうちの少なくとも1つの平面電極(例えば41)は、1つの平面電極と異なる他の平面電極(例えば42)とは、信号線路と平面電極との対向面積が異なっている。この多層デバイス1Aは、複数の平面電極40の面積について、異なる3種の電極構造を有している。そのため、信号線路20および平面電極40に基づく複数種類の容量性成分C40(
図2参照)を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。
【0046】
また、
図4Aおよび
図4Bに示すように、第1方向d1に沿って隣り合う1組の平面電極40の配列ピッチは、異なる配列ピッチで形成されている。複数の平面電極40の配列ピッチとは、第1方向d1に沿って隣り合う2つの平面電極40の中心間距離である。平面電極42および43の配列ピッチp2は、平面電極41および42の配列ピッチp1よりも大きく、例えば、配列ピッチp2は配列ピッチp1の1.1倍以上である。
【0047】
このように本実施の形態では、第1方向d1に沿って隣り合う1組の平面電極(例えば41、42)の中心間距離は、上記の1組とは異なる組み合わせである他の1組の平面電極(例えば42、43)の中心間距離と異なっている。この多層デバイス1Aは、複数の平面電極40の配列ピッチについて、異なる2種の電極構造を有している。そのため、1組の平面電極40および接続電極50に対応する信号線路20の長さがそれぞれ異なることとなり、信号線路20およびグランド電極30に基づく複数種類の容量性成分C20(
図2参照)を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。
【0048】
次に、複数の接続電極50の電極構造について、
図5および
図6を参照しながら説明する。複数の接続電極50は、複数の接続電極50の断面積、および、複数の接続電極50の長さの少なくとも1つについて、異なる2種以上の電極構造を有していてもよい。なお、接続電極50の断面積とは、グランド電極30と平面電極40とを繋ぐ導通経路に対して垂直な断面の面積である。接続電極50の長さとは、グランド電極30と平面電極40とを繋ぐ導通経路の長さである。
【0049】
図5は、多層デバイス1Aの他の一例を示す断面図である。
【0050】
図5に示すように、複数の接続電極51~53のそれぞれは、ビア導体であり、異なるビア径で形成されている。例えば、接続電極52の断面積は、接続電極51の断面積よりも大きく、接続電極51の断面積の1.1倍以上である。接続電極53の断面積は、接続電極52の断面積よりも大きく、接続電極52の面積の1.1倍以上である。なお、阻止帯域を広げるとともに阻止帯域における減衰量を均一化するため、接続電極52の断面積を接続電極51の断面積の1.96倍以下とし、また、接続電極53の断面積を接続電極52の断面積の1.65倍以下としてもよい。
【0051】
このように、複数の接続電極50のうちの少なくとも1つの接続電極(例えば51)は、1つの接続電極と異なる他の接続電極(例えば52)とは、接続電極の断面積が異なっている。
図5に示す多層デバイス1Aは、複数の接続電極50の断面積について、異なる3種の電極構造を有している。そのため、接続電極50による複数種類の誘導性成分L50(
図2参照)を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。
【0052】
図6は、多層デバイス1Aの他の一例を示す断面図である。
【0053】
図6に示すように、複数の接続電極51~53は、異なる長さで形成されている。例えば、接続電極52の長さは、接続電極51の長さよりも長く、接続電極51の長さの1.1倍以上である。接続電極53の長さは、接続電極52の長さよりも長く、接続電極52の長さの1.1倍以上である。
【0054】
このように、複数の接続電極50のうちの少なくとも1つの接続電極(例えば51)は、1つの接続電極と異なる他の接続電極(例えば52)とは、接続電極の長さが異なっている。
図6に示す多層デバイス1Aは、複数の接続電極50の長さについて、異なる3種の電極構造を有している。そのため、接続電極50による複数種類の誘導性成分L50を生成することができる。また、接続電極50の長さを変えることで、信号線路20と平面電極40とのギャップが変わるので、信号線路20および平面電極40に基づく複数種類の容量性成分C40を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。
【0055】
このように本実施の形態の多層デバイス1Aは、複数の平面電極40および複数の接続電極50の少なくとも一方の電極が、異なる2種以上の電極構造を有している。そのため、多層デバイス1Aにおいて、複数種類の容量性成分C40、誘導性成分L50および容量性成分C20を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、高速・高周波信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる。
【0056】
[多層デバイスの製造方法]
多層デバイス1Aの製造方法の一例について説明する。まず、誘電体材料を含むグリーンシートに複数のビア穴を形成した後、スクリーン印刷等によってビア穴に電極材料を埋め込み、複数の接続電極パターンを形成する。また、別の複数のグリーンシートに、スクリーン印刷等によって異なる複数の種類の平面電極パターン、グランド電極パターンまたは信号線路パターンを形成する。このように作製した複数の電極パターン付きのグリーンシートを積層およびプレスし、マザー積層体を形成する。次に、マザー積層体を切断して個片化し、個片化後の積層体を焼成する。そして、焼成後の積層体の側面に信号端子およびグランド端子を形成する。これにより、上記の多層デバイス1Aを作製する。
【0057】
[実施の形態1の変形例1]
実施の形態1の変形例1に係る多層デバイス1Bについて、
図7Aおよび
図7Bを参照しながら説明する。変形例1では、平面電極40が、信号線路20よりも天面17側に設けられている例について説明する。
【0058】
図7Aは、実施の形態1の変形例1に係る多層デバイス1Bの天面図である。
図7Bは、多層デバイス1Bを
図7Aに示すVIIB-VIIB線から見た断面図である。
【0059】
図7Aおよび
図7Bに示すように、多層デバイス1Bは、誘電体10と、信号線路20と、グランド電極30と、複数の平面電極41、42および43と、複数の接続電極51、52および53と、を備えている。また、多層デバイス1Bは、複数の信号端子61および62と、複数のグランド端子71、72、73および74と、を備えている。
【0060】
誘電体10、グランド電極30、信号線路20、信号端子61、62およびグランド端子71~74の構成は、実施の形態1と同様である。
【0061】
変形例1の複数の平面電極40は、第3方向d3において、信号線路20よりも天面17側に設けられている。言い換えると、複数の平面電極40は、信号線路20から見てグランド電極30の反対側に配置されている。信号線路20は、複数の平面電極40とグランド電極30との間に配置されている。
【0062】
複数の平面電極41、42、43は、第1方向d1に沿って、すなわち信号線路20に沿ってこの順で配置されている。各平面電極41~43は、信号線路20の中心線cLに各平面電極41~43の中心が重なるように配置されている。各平面電極41~43の幅(第2方向d2の長さ)は、信号線路20の幅よりも大きい。
【0063】
複数の接続電極50は、複数の平面電極40およびグランド電極30を接続する導体である。各接続電極50は、複数の平面電極40およびグランド電極30の間に位置する誘電体10を貫通するように形成される。接続電極50は柱状である。接続電極50が信号線路20に接触しないように、接続電極50の径は、(平面電極40の幅-信号線路20の幅)/2よりも小さい。接続電極50の長さは、グランド電極30と信号線路20との間のギャップよりも大きい。この多層デバイス1Bでも、接続電極50の長さを変えると、平面電極40と信号線路20との間のギャップも変わる。
【0064】
各接続電極51~53は、各平面電極41~43に一対一で対応するように、第1方向d1に沿って設けられている。各接続電極51~53は、信号線路20に接触しないように、各平面電極41~43の外周端部に接続されている。具体的には、接続電極51は、信号線路20の中心線cLから見て側面14側の平面電極41の外周端部に接続され、接続電極52は、信号線路20の中心線cLから見て側面13側の平面電極42の外周端部に接続され、接続電極53は、信号線路20の中心線cLから見て側面14側の平面電極43の外周端部に接続されている。なお、接続電極50は同一の側面13あるいは14に統一して配置されていてもよい。
【0065】
変形例1の多層デバイス1Bも、複数の平面電極40および複数の接続電極50の少なくとも一方の電極が、異なる2種以上の電極構造を有している。そのため、多層デバイス1Bにおいて、複数種類の容量性成分C40、誘導性成分L50および容量性成分C20を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、高速・高周波信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる。
【0066】
[効果等]
上記構成を有する多層デバイス1Bの効果について、参考例の多層デバイス101a、101bおよび101cと対比しながら説明する。
【0067】
図8は、参考例の多層デバイス101a~101cを示す図である。
【0068】
図8の(a)、(b)、(c)のそれぞれには、信号線路20、グランド電極30、複数の平面電極40および複数の接続電極(図示省略)を有する多層デバイス101a、101b、101cが示されている。信号線路20は、変形例1の多層デバイス1Bと同様に、複数の平面電極40とグランド電極30との間に設けられている。接続電極は、信号線路20を避けるように複数の平面電極40とグランド電極30とを接続している。信号線路20の幅は、0.15mmである。
【0069】
参考例の多層デバイス101aは、7つの平面電極40を有している。信号線路20と各平面電極40との対向面積は0.75mm2(=0.15mm×5mm)である。隣り合う2つの平面電極40は2mmの間隔を空けて配列されており、平面電極40の配列ピッチは7mmである。
【0070】
参考例の多層デバイス101bは、7つの平面電極40を有している。信号線路20と各平面電極40との対向面積は1.35mm2(=0.15mm×9mm)である。隣り合う2つの平面電極40は2mmの間隔を空けて配列されており、平面電極40の配列ピッチは11mmである。
【0071】
参考例の多層デバイス101cは、7つの平面電極40を有している。信号線路20と各平面電極40との対向面積は0.75mm2(=0.15mm×5mm)である。隣り合う2つの平面電極40は6mmの間隔を空けて配列されており、平面電極40の配列ピッチは11mmである。
【0072】
なお、多層デバイスの基板材料の比誘電率は、4.3であり、基板の層数は6層である。導体厚みは32μm(銅箔12μm、めっき20μm)である。コア、プリプレグ厚みは200μmである。多層デバイスの全体の厚みは約1.2mmである((導体:6×32μm)+(誘電体:200μm×5))。
【0073】
図9は、参考例の多層デバイス101a~101cの通過特性を示す図である。
【0074】
図9に示すように、
図8の(a)の多層デバイス101aは、周波数5.56GHzに減衰極を有し、この減衰極において挿入損失が最も大きくなっている。多層デバイス101aは、周波数5.56GHzの信号の通過を阻止することが可能となっている。
図8の(b)の多層デバイス101bは、周波数2.80GHzに減衰極を有し、この減衰極において挿入損失が最も大きくなっている。多層デバイス101bは、周波数2.80GHzの信号の通過を阻止することが可能となっている。
図8の(c)の多層デバイス101cは、周波数5.44GHzに減衰極を有し、この減衰極において挿入損失が最も大きくなっている。多層デバイス101cは、周波数5.44GHzの信号の通過を阻止することが可能となっている。
【0075】
このように、
図8の(a)~(c)の多層デバイス101a~101cのそれぞれは、減衰極に対応する所定周波数の信号の通過を阻止できる。
【0076】
[実施の形態1の変形例2]
図10は、実施の形態1の変形例2に係る多層デバイス1Cを示す図である。変形例2に係る多層デバイス1Cは、
図8に示す3つの多層デバイス101a~101cを直列接続することによって構成されている。
【0077】
変形例2の多層デバイス1Cは、多層デバイス101aの出力ポートと多層デバイス101bの入力ポートとを同軸ケーブルで接続し、多層デバイス101bの出力ポートと多層デバイス101cの入力ポートとを別の同軸ケーブルで接続することで構成されている。変形例2に係る多層デバイス1Cは、信号線路20と平面電極40との対向面積および平面電極40の配列ピッチが異なる複数種の電極構造を有している。具体的には、多層デバイス1Cは、信号線路20と平面電極40との対向面積が異なる2種以上の構造を複数組備え、また、平面電極40の配列ピッチが異なる2種以上の構造を複数組備えている。
【0078】
図11は、変形例2に係る多層デバイス1Cの通過特性を示す図である。同図の縦軸には、Sパラメータ(S21)が示されている。
【0079】
図11に示すように、変形例2の多層デバイス1Cは、周波数5.44GHz~5.56GHzの範囲に2つの減衰極を有し、この範囲において挿入損失が大きくなっている。変形例2の多層デバイス1Cは、周波数5.44GHz~5.56GHz付近の信号の通過を阻止することが可能となっており、参考例の多層デバイス101a~101cに比べて阻止帯域の帯域幅が広くなっている。
【0080】
[実施の形態1の変形例3]
次に、実施の形態1の変形例3に係る多層デバイス1Dについて説明する。
【0081】
図12は、変形例3に係る多層デバイス1Dを示す図である。
【0082】
変形例3に係る多層デバイス1Dは、信号線路20と平面電極40との対向面積および平面電極の配列ピッチが異なる複数の平面電極41~43によって構成されている。信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50に関するその他の構成は、変形例1と同様である。なお、信号線路20の幅は、0.15mmである。
【0083】
変形例3の多層デバイス1Dは、6つの平面電極41~43を有している。信号線路20と平面電極41との対向面積は0.75mm2(=0.15mm×5mm)であり、信号線路20と平面電極42との対向面積は1.05mm2(=0.15mm×7mm)であり、信号線路20と平面電極43との対向面積は1.35mm2(=0.15mm×9mm)である。複数の平面電極41、42、43は、この順で繰り返し配列されており、平面電極40の配列ピッチは、順に8mm、10mm、9mm、8mm、10mmである。隣り合う2つの平面電極40は、2mmの間隔を空けて配列されている。多層デバイス1Dは、信号線路20と平面電極40との対向面積が異なる2種以上の構造を複数組備え、また、平面電極40の配列ピッチが異なる2種以上の構造を複数組備えている。
【0084】
図13は、変形例3に係る多層デバイス1Dの通過特性を示す図である。同図の縦軸にはSパラメータ(S21)が示されている。
【0085】
図13に示すように、変形例3の多層デバイス1Dは、3つの減衰極を有し、この3つの減衰極のそれぞれにおいて挿入損失が大きくなっている。変形例3の多層デバイス1Dは、複数のマッシュルーム構造体を備えることで、各構造に応じた複数の減衰極によって複数の所定周波数の信号の通過を阻止することが可能となっている。それぞれの減衰極を所望の特性に応じて配置することで、例えば広帯域な阻止帯域を有する多層デバイス1Dを実現することが出来る。
【0086】
[実施の形態1の変形例4]
次に、実施の形態1の変形例4に係る多層デバイス1Eについて説明する。
【0087】
図14は、変形例4に係る多層デバイス1Eを示す図である。
【0088】
変形例4に係る多層デバイス1Eは、信号線路20と平面電極40との対向面積および平面電極40の配列ピッチが異なる複数の平面電極41~43によって構成されている。信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50に関するその他の構成は、変形例1と同様である。
【0089】
変形例4の多層デバイス1Eは、15の平面電極41~43を有している。平面電極41の対向面積は0.75mm2であり、平面電極42の対向面積は1.05mm2であり、平面電極43の対向面積は1.35mm2である。複数の平面電極41、42、43は、この順で繰り返し配列されており、平面電極40の配列ピッチは、順に8mm、10mm、9mm、8mm、10mm、9mm(以下同様)である。隣り合う2つの平面電極40は、2mmの間隔を空けて配列されている。多層デバイス1Eは、信号線路20と平面電極40との対向面積が異なる2種以上の構造を複数組備え、また、平面電極40の配列ピッチが異なる2種以上の構造を複数組備えている。
【0090】
図15は、変形例4に係る多層デバイス1Eの通過特性を示す図である。同図の縦軸には、Sパラメータ(S21)が示されている。
【0091】
図15に示すように、変形例4の多層デバイス1Eは、複数の減衰極を有し、この複数の減衰極のそれぞれにおいて挿入損失が大きくなっている。変形例4の多層デバイス1Eは、複数の減衰極によって複数の所定周波数の信号の通過を阻止することが可能となっている。さらに、マッシュルーム構造体を多数配置することで、変形例3の多層デバイス1Dと比較して、より大きな減衰量を確保し、高性能化を実現することが出来る。
【0092】
(実施の形態2)
[多層デバイスの構成]
実施の形態2に係る多層デバイス1Fの構成について、
図16を参照しながら説明する。実施の形態2では、多層デバイス1Fが多層構造を有する例について説明する。
【0093】
図16は、実施の形態2に係る多層デバイス1Fを示す断面図である。
【0094】
図16に示すように、多層デバイス1Fは、誘電体10と、信号線路20と、複数のグランド電極30と、複数の平面電極41、42および43と、複数の接続電極51、52および53と、を備えている。また、多層デバイス1Fは、複数の信号端子61および62と、複数のグランド端子71、72、73および74と、を備えている。
【0095】
多層デバイス1Fは、信号線路20、グランド電極30、複数の平面電極40および複数の接続電極50を1組とする積層体が複数積層された多層構造を有している。
【0096】
誘電体10は、例えば、複数の誘電体層が積層されることで形成される。誘電体10は、信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50のそれぞれの間に設けられている。
【0097】
信号線路20は、複数層の信号線路を有している。信号線路20は、1層目、2層目および3層目の信号線路、ならびに、1層目および2層目の信号線路を繋ぐビア導体、2層目および3層目の信号線路を繋ぐビア導体によって構成されている。一層目の信号線路の他方端は、他方の信号端子62に接続され、3層目の信号線路の一方端は、一方の信号端子61に接続されている。
【0098】
複数のグランド電極30は、誘電体10の底面16または内部に設けられている。具体的には、複数のグランド電極30のうち、1層目のグランド電極30は誘電体10の底面16に設けられ、2層目および3層のグランド電極30は、誘電体10の内部に設けられている。2層目および3層目のグランド電極30には、信号線路20のビア導体と接触しないよう、信号線路20のビア導体を通すための貫通穴が設けられている。各グランド電極30の一方端は、一方のグランド端子71、73に接続され、各グランド電極30の他方端は、他方のグランド端子72、74に接続されている(図示省略)。
【0099】
複数の平面電極40は、1層目の平面電極41~43、2層目の平面電極41~43、および、3層目の平面電極41~43で構成されている。複数の平面電極40は、3層からなる信号線路20のそれぞれに対して、平面電極41、42、43の順で配置されている。
【0100】
複数の接続電極50は、1層目の接続電極51~53、2層目の接続電極51~53、および、3層目の接続電極51~53で構成されている。複数の接続電極50は、各層の平面電極41~43に一対一で対応するように、接続電極51、52、53の順で配置されている。
【0101】
実施の形態2の多層デバイス1Fも、複数の平面電極40および複数の接続電極50の少なくとも一方の電極が、異なる2種以上の電極構造を有している。そのため、多層デバイス1Fにおいて、複数種類の容量性成分C40、誘導性成分L50および容量性成分C20を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、高速・高周波信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる。
【0102】
(実施の形態3)
[多層デバイスの構成]
実施の形態3に係る多層デバイス1Gの構成について、
図17を参照しながら説明する。実施の形態3では、多層デバイス1Gがコモンモードフィルタである例について説明する。
【0103】
図17は、実施の形態3に係る多層デバイス1Gを模式的に示す斜視図である。
【0104】
図17に示すように、多層デバイス1Gは、誘電体10と、信号線路20と、グランド電極30と、複数の平面電極41、42および43と、複数の接続電極51、52および53と、を備えている。また、多層デバイス1Gは、複数の信号端子61、62、63および64と、複数のグランド端子71、72、73および74と、を備えている。
【0105】
誘電体10、グランド電極30およびグランド端子71~74の構成は、実施の形態1と同様である。
【0106】
信号線路20は、誘電体10に設けられた2つの平行な信号線路20aおよび20bによって構成される差動線路である。各信号線路20a、20bは、直線状であり、第1方向d1に沿って誘電体10の内部に設けられている。また、各信号線路20a、20bは、帯状であり、グランド電極30に対して平行に配置されている。多層デバイス1Gが電子機器に実装された状態において、2つの信号線路20a、20bには、差動信号が伝送される。
【0107】
複数の信号端子61~64は、誘電体10の側面11、12に設けられている。4つの信号端子61~64のうち一方の信号端子61、63は側面11に設けられ、他方の信号端子62、64は側面12に設けられている。一方の信号端子61には信号線路20aの一方端が接続され、一方の信号端子63には信号線路20bの一方端が接続されている。他方の信号端子62には信号線路20aの他方端が接続され、他方の信号端子64には信号線路20bの他方端が接続されている。一方の信号端子61、63は、2つのグランド端子71、73の間に配置され、他方の信号端子62、64は、2つのグランド端子72、74の間に配置されている。
【0108】
複数の平面電極40は、平面電極41、平面電極42および平面電極43によって構成されている。複数の平面電極41、42、43は、第1方向d1に沿って、すなわち各信号線路20a、20bに沿ってこの順で配置されている。
【0109】
複数の接続電極50は、接続電極51、接続電極52および接続電極53によって構成されている。複数の接続電極51、52、53は、複数の平面電極41~43に一対一で対応するように、第1方向d1に沿って設けられている。
【0110】
実施の形態3の多層デバイス1Gも、複数の平面電極40および複数の接続電極50の少なくとも一方の電極が、異なる2種以上の電極構造を有している。そのため、多層デバイス1Gにおいて、複数種類の容量性成分C40、誘導性成分L50および容量性成分C20を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、高速・高周波信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる。
【0111】
[実施の形態3の変形例1]
実施の形態3の変形例1に係る多層デバイス1Hの構成について、
図18を参照しながら説明する。実施の形態3の変形例1でも、多層デバイス1Hがコモンモードフィルタである例について説明する。
【0112】
図18は、実施の形態3の変形例1に係る多層デバイス1Hを模式的に示す斜視図である。
【0113】
図18に示すように、多層デバイス1Hは、誘電体10と、信号線路20と、グランド電極30と、複数の平面電極41、42および43と、複数の接続電極51、52および53と、を備えている。また、多層デバイス1Hは、複数の信号端子61、62、63および64と、複数のグランド端子71、72、73および74と、を備えている。
【0114】
誘電体10、グランド電極30およびグランド端子71~74の構成は、実施の形態3と同様である。
【0115】
複数の平面電極40は、第2方向d2に隣り合う2つの平面電極41、第2方向d2に隣り合う2つの平面電極42、および、第2方向d2に隣り合う2つの平面電極43によって構成されている。複数の平面電極41、42、43は、第1方向d1に沿って、すなわち各信号線路20a、20bに沿ってこの順で配置されている。
【0116】
複数の接続電極50は、第2方向d2に隣り合う2つの接続電極51、第2方向d2に隣り合う2つの接続電極52、および、第2方向d2に隣り合う2つの接続電極53によって構成されている。複数の接続電極51、52、53は、複数の平面電極41~43に一対一で対応するように、第1方向d1に沿って設けられている。
【0117】
実施の形態3の変形例1の多層デバイス1Hも、複数の平面電極40および複数の接続電極50の少なくとも一方の電極が、異なる2種以上の電極構造を有している。そのため、多層デバイス1Hにおいて、複数種類の容量性成分C40、誘導性成分L50および容量性成分C20を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、高速・高周波信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる。
【0118】
[効果等]
上記構成を有する多層デバイス1Gの効果について、
図19および
図20A~
図20Cを参照しながら説明する。なお、ここでは信号線路20と平面電極40との対向面積が同じである例を示すが、以下に示す結果は、信号線路20と平面電極40との対向面積が異なる多層デバイス1Gにおいても同様である。
【0119】
図19は、多層デバイス1Gの信号線路20、平面電極40およびグランド電極30を示す図である。この多層デバイス1Gでは、ポート1に入力された高速・高周波信号が、信号線路20aを伝送してポート2から出力される。また、ポート3に入力された高速・高周波信号が、信号線路20bを伝送してポート4から出力される。
【0120】
図20Aは、多層デバイス1Gにおけるディファレンシャルモード信号の通過特性を示す図である。同図の縦軸にはSパラメータ(Sdd21)が示されている。
図19に示すポート1および3のそれぞれには、ディファレンシャルモード信号が入力される。
図20Aに示すように、多層デバイス1Gでは、後述する3GHz~5GHzにおいてディファレンシャルモード信号を通過させることができる。
【0121】
図20Bは、多層デバイス1Gにおけるコモンモード信号の通過特性を示す図である。同図の縦軸にはSパラメータ(Scc21)が示されている。
図20Bには、ポート1およびポート3に同相の高速・高周波信号が入力されたときの特性が示されている。
図20Bに示すように、多層デバイス1Gでは、3GHz~5GHzの信号の通過を阻止することができる。すなわち、多層デバイス1Gでは、コモンモード信号の通過を阻止することが可能となっている。
【0122】
図20Cは、多層デバイス1Gのコモン-ディファレンシャル変換信号の通過特性およびディファレンシャル-コモン変換信号の通過特性を示す図である。同図の縦軸には、Sパラメータ(Scd21またはSdc21)が示されている。
図20Cに示すように、コモン-ディファレンシャル変換信号およびディファレンシャル-コモン変換信号のそれぞれの挿入損失は20dBよりも大きくなっている。しがたって、多層デバイス1Gでは、コモン-ディファレンシャル変換信号およびディファレンシャル-コモン変換信号のそれぞれの信号が通過することを抑制できている。
【0123】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る多層デバイス1iについて、
図21A~
図22を参照しながら説明する。実施の形態4では、多層デバイス1iが、プリント回路基板でなく、プリント回路基板に実装される電子部品である例について説明する。
【0124】
図21Aは、実施の形態4に係る多層デバイス1iの天面図である。
図21Bは、実施の形態4に係る多層デバイス1iを
図21Aに示すXXIB-XXIB線から見た断面図である。
【0125】
図21Aおよび
図21Bに示すように、多層デバイス1iは、誘電体10と、信号線路20と、グランド電極30と、複数の平面電極41、42および43と、複数の接続電極51、52および53と、を備えている。なお、これらの図では、複数の信号端子61、62、および、複数のグランド端子71~74の図示を省略している。
【0126】
実施の形態4の多層デバイス1iは、プリント回路基板に実装される表面実装型の電子部品である。同図に示す多層デバイス1iのサイズは、例えば長さ3.2mm×幅1.6mm×高さ1.0mmである。なお、上記において、長さは第1方向d1の寸法であり、幅は第2方向d2の寸法であり、高さは第3方向d3の寸法である。
【0127】
誘電体10は、例えば、複数の誘電体層が積層されることで形成される。誘電体10は、例えば、低温同時焼成セラミックスなどの誘電体材料によって形成されている。例えば、誘電体10の比誘電率は8.1であり、誘電正接は0.02である。複数の誘電体層の層数は7層であり、誘電体層の1層の厚みは0.1mmである。
【0128】
信号線路20は、信号線路20の一部である両端が誘電体10の外面に露出するように、誘電体10の内部に設けられている。例えば、信号線路20の幅は、0.1mmであり、厚みは0.01mmである。信号線路20と誘電体10の天面17との間隔は、0.5mmである。
【0129】
グランド電極30は、一部が誘電体10の外面に露出するように、誘電体10の内部に設けられている。また、グランド電極30は、平面電極40よりも底面16側に設けられている。例えば、グランド電極の厚みは、0.01mmである。
【0130】
平面電極40は、信号線路20とグランド電極30との間に位置するように、誘電体10の内部に設けられている。例えば、平面電極40と信号線路20との間のギャップは、0.05mmであり、平面電極40とグランド電極30との間隔は、0.43mmである。
【0131】
この例では4つの平面電極41、42、43、41が、第1方向d1に沿って、すなわち信号線路20に沿ってこの順で配置されている。各平面電極41~43は、信号線路20の中心線cLに各平面電極41~43の中心が重なるように配置されている。
【0132】
平面電極41~43の形状は、長方形状である。例えば、平面電極41のサイズは0.6mm×1.2mmであり、平面電極42のサイズは0.5mm×1.0mmであり、平面電極43のサイズは0.4mm×0.8mmである。したがって、信号線路20に対する平面電極41~43のそれぞれの対向面積は異なっている。また、平面電極41と42との間隔は0.25mmであり、平面電極42と43との間隔は0.35mmであり、平面電極43と41との間隔は0.3mmである。したがって、平面電極41、42、43、41の配列ピッチは異なっている。
【0133】
接続電極50は、複数の平面電極40およびグランド電極30を接続するビア導体であり、誘電体10の内部に設けられている。複数の接続電極51、52、53は、複数の平面電極41~43に一対一で対応するように設けられている。接続電極51~53は、複数の平面電極40およびグランド電極30の間に位置する各誘電体層を貫通するように形成される。例えば、接続電極50の径は0.1mmである。接続電極50は、長方形状の平面電極40の角部に接続されている。複数の誘電体層の境界面には、各誘電体層に設けられた接続電極50を接続するためのランド電極81が設けられている。例えば、ランド電極81の径は0.3mmである。
【0134】
図22は、実施の形態4に係る多層デバイス1iの通過特性を示す図である。同図の縦軸にはSパラメータ(S21)が示されている。なお、
図22では、信号端子およびグランド端子を省略してシミュレーションを行った。
【0135】
図22に示すように、実施の形態4の多層デバイス1iは、複数の減衰極を有し、例えば、平面電極41を含む電極構造によって12.72GHzに減衰極が形成され、平面電極42を含む電極構造によって15.04GHzに減衰極が形成され、平面電極43を含む電極構造によって19.35GHzに減衰極が形成され、この複数の減衰極のそれぞれにおいて挿入損失が大きくなっている。
【0136】
このように、実施の形態4の多層デバイス1iは、複数のマッシュルーム構造体を備えることで、各構造に応じた複数の減衰極によって複数の所定周波数の信号の通過を阻止することが可能となっている。それぞれの減衰極を所望の特性に応じて配置することで、例えば広帯域な阻止帯域を有する多層デバイス1iを実現することが出来る。
【0137】
(実施の形態5)
実施の形態5に係る多層デバイス1Jについて、
図23A~
図24を参照しながら説明する。実施の形態5でも、多層デバイス1Jが、プリント回路基板でなく、プリント回路基板に実装される電子部品である例について説明する。
【0138】
図23Aは、実施の形態5に係る多層デバイス1Jの天面図である。
図23Bは、実施の形態5に係る多層デバイス1Jを
図23Aに示すXXIIIB-XXIIIB線から見た断面図である。
【0139】
図23Aおよび
図23Bに示すように、多層デバイス1Jは、誘電体10と、信号線路20と、グランド電極30と、複数の平面電極40と、複数の接続電極50と、を備えている。なお、これらの図では、複数の信号端子61、62、および、複数のグランド端子71~74の図示を省略している。
【0140】
実施の形態5の多層デバイス1Jは、プリント回路基板に実装される表面実装型の電子部品である。同図に示す多層デバイス1Jのサイズは、例えば長さ3.2mm×幅1.6mm×高さ1.0mmである。
【0141】
誘電体10は、例えば、複数の誘電体層が積層されることで形成される。誘電体10は、例えば、低温同時焼成セラミックスなどの誘電体材料によって形成されている。例えば、誘電体10の比誘電率は8.1であり、誘電正接は0.02である。複数の誘電体層の層数は6層であり、誘電体層の1層の厚みは0.1mmである。
【0142】
信号線路20は、信号線路20の一部である両端が誘電体10の外面に露出するように、誘電体10の内部に設けられている。例えば、信号線路20の幅は、0.1mmであり、厚みは0.01mmである。信号線路20と誘電体10の天面17との間隔は、0.5mmである。
【0143】
グランド電極30は、一部が誘電体10の外面に露出するように、誘電体10の内部に設けられている。この例のグランド電極30は、平面電極40よりも底面16側に設けられている。例えば、グランド電極の厚みは、0.01mmである。
【0144】
平面電極40は、信号線路20とグランド電極30との間に位置するように、誘電体10の内部に設けられている。例えば、平面電極40と信号線路20との間のギャップは、0.05mmであり、平面電極40とグランド電極30との間隔は、0.43mmである。
【0145】
この例では4つの平面電極40が、第1方向d1に沿って、すなわち信号線路20に沿って配置されている。各平面電極40は、信号線路20の中心線cLに各平面電極40の中心が重なるように配置されている。
【0146】
平面電極40の形状は、長方形状である。例えば、各平面電極40のサイズは0.6mm×1.2mmである。また、第1方向d1に隣り合う平面電極40の間隔は0.2mmである。
【0147】
接続電極50は、複数の平面電極40およびグランド電極30を接続するビア導体であり、誘電体10の内部に設けられている。複数の接続電極50は、複数の平面電極40に一対一で対応するように、第1方向d1に沿って設けられている。接続電極50は、複数の平面電極40およびグランド電極30の間に位置する各誘電体層を貫通するように形成される。例えば、接続電極50の径は0.1mmである。接続電極50は、平面電極40の角部に接続されている。複数の誘電体層の境界面には、各誘電体層に設けられた接続電極50を接続するためのランド電極が設けられている。例えば、ランド電極の径は0.3mmである。
【0148】
図24は、実施の形態5に係る多層デバイス1Jの通過特性を示す図である。同図の縦軸にはSパラメータ(S21)が示されている。なお、
図24では、信号端子およびグランド端子を省略してシミュレーションを行った。
【0149】
図24に示すように、実施の形態5の多層デバイス1Jでは、16.3GHz付近に減衰帯域を形成できている。このように、多層デバイス1Jを表面実装型の電子部品のサイズとして形成した場合であっても、減衰帯域を形成することができる。
【0150】
例えば、信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50からなる電極構造をプリント回路基板の内部に形成する場合、プリント回路基板を多層構造化する必要がある。それに対し、電極構造をプリント回路基板の内部に形成するのでなく、実施の形態5のように電極構造を含む多層デバイス1Jを、プリント回路基板に実装される電子部品とすることで、多層デバイス1Jが実装されるプリント回路基板の層数を減らすことができる。これにより、プリント回路基板がコストアップすることを抑制できる。
【0151】
(実施の形態6)
[多層デバイスの構成]
実施の形態6に係る多層デバイス1Kの構成について図を参照しながら説明する。
【0152】
図25は、実施の形態6に係る多層デバイス1Kの外観図である。
図26は、多層デバイス1Kの信号線路20、平面電極41、42、43、グランド電極30および接続電極51、52、53を示す図である。
図27Aは、多層デバイス1Kの信号線路20等を上から見た平面図である。
図27Bは、多層デバイス1Kを
図27Aに示すXXVIIB-XXVIIB線から見た断面図である。
図27Cは、多層デバイス1Kの底面図である。
【0153】
図26は、多層デバイス1Kから信号端子61、62、グランド端子71、72、73、74および誘電体10を除いた状態を示している。
図27Cでは、信号線路、平面電極、接続電極の図示を省略している。
【0154】
図25、
図26および
図27A~
図27Cに示す多層デバイス1Kは、誘電体10と、信号線路20と、グランド電極30と、複数の平面電極41、42および43と、複数の接続電極51、52および53と、を備えている。また、多層デバイス1Kは、複数の信号端子61および62と、複数のグランド端子71、72、73および74と、を備えている。
【0155】
以下において、複数の平面電極41~43の一部または全部を指して平面電極40と呼び、複数の接続電極51~53の一部または全部を指して接続電極50と呼ぶ場合がある。また、複数の信号端子61、62の一部または全部を指して信号端子60と呼び、複数のグランド端子71~74の一部または全部を指してグランド端子70と呼ぶ場合がある。
【0156】
例えば、信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50は、銀または銅などの金属材料によって形成される。なお、信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50は、同じ材料または同じ組成比によって形成されていてもよいし、異なる材料または異なる組成比によって形成されていてもよい。
【0157】
誘電体10は、例えば、複数の誘電体層が積層されることで形成される。誘電体10は、例えば、低温同時焼成セラミックスなどの誘電体材料によって形成されている。多層デバイス1Kを小型化するためには、誘電体10として比誘電率が高い材料を使うことが望ましい。誘電体10は、信号線路20、グランド電極30および平面電極40のそれぞれの間に設けられている。また、誘電体10は、信号線路20の両端面を除く外周面、グランド電極30の両端面を除く外周面、ならびに、平面電極40および接続電極50からなる電極構造体を覆うように形成されている。
【0158】
誘電体10は、直方体状の形状を有しており、底面16と、底面16に背向する天面17と、底面16と天面17とを繋ぐ複数の側面11、12、13および14を有している。複数の側面11~14は、互いに背向する側面11および12と、側面11および側面12の両方の面に直交する側面13および14を有している。底面16および天面17は互いに平行であり、側面11および12は互いに平行であり、側面13および14は互いに平行である。誘電体10の各面が交わるコーナ部分(稜線部分)は、丸みを有していてもよい。
【0159】
ここで、側面11と側面12とが背向する方向を第1方向d1と呼び、側面13と側面14とが背向する方向を第2方向d2と呼び、底面16と天面17とが背向する方向を第3方向d3と呼ぶ。また以下において、第1方向d1のマイナス側を一方と呼び、マイナス側の反対であるプラス側を他方と呼ぶことがある。
【0160】
信号線路20は、直線状であり、第1方向d1に沿って設けられている。信号線路20は、信号線路20の一部である両端が誘電体10の外面(側面11、12)に露出するように、誘電体10の内部に設けられている。信号線路20は、帯状であり、平面電極40およびグランド電極30に対して平行に配置されている。多層デバイス1Kが電子機器に実装された状態において、信号線路20には、信号端子60を介して高速・高周波信号が入出力される。
【0161】
信号端子60は、誘電体10の外面である側面11、12に設けられている。2つの信号端子61、62のうち一方の信号端子61は側面11に設けられ、他方の信号端子62は側面12に設けられている。一方の信号端子61には信号線路20の一方端が接続され、他方の信号端子62には、信号線路20の他方端が接続されている。
【0162】
グランド電極30は、誘電体10の側面11、12にグランド電極30の一部が露出するように、誘電体10の内部に設けられている。グランド電極30は、信号端子60に接触しないように、第1方向d1の両端に長方形状の切り欠き31を有し、信号端子60に対して所定の間隔を空けて配置されている。また、グランド電極30は、側面13、14に露出しないように、側面13、14に対して所定の間隔を空けて配置されている。なお、グランド電極30は、誘電体10の内部でなく誘電体10の底面16に設けられていてもよい。
【0163】
またグランド電極30はベタパターンではなく、開口パターンを有する構造、例えばメッシュ構造としてもよい。グランド電極30をメッシュ構造とすることで誘電体10同士を接合させて接合強度を強くすることが出来る。
【0164】
多層デバイス1Kが電子機器に実装された状態において、グランド電極30は、グランド端子70を介してグランド電位に設定される。
【0165】
グランド端子70は、誘電体10の外面である側面11、12に設けられている。4つのグランド端子71~74のうち一方のグランド端子71、73は側面11に設けられ、他方のグランド端子72、74は側面12に設けられている。一方のグランド端子71、73にはグランド電極30の一方端が接続され、他方のグランド端子72、74には、グランド電極30の他方端が接続される。一方のグランド端子71、73は、第2方向d2において、一方の信号端子61の両隣に配置されている。また、他方のグランド端子72、74は、第2方向d2において、他方の信号端子62の両隣に配置されている。言い換えると、一方の信号端子61は、2つのグランド端子71、73の間に配置され、他方の信号端子62は、2つのグランド端子72、74の間に配置されている。
【0166】
なお、グランド端子70の数は4つに限られず、2つであってもよい。グランド端子70は、誘電体10の側面11、12、もしくは、側面13、14に1つずつ設けられていてもよい。例えば、グランド端子70は、側面11、12に1つずつ設けられていてもよい。その場合、実装向きを考慮する必要がないように、グランド端子70を対角線上に配置することが望ましい。また、グランド端子70は、側面11、12だけではなく、側面13、14にも設けられていてもよい。また、グランド端子70は、側面13、14のみに設けられていてもよい。
【0167】
平面電極40は、第3方向d3において、信号線路20とグランド電極30との間に位置するように、誘電体10の内部に設けられている。平面電極40は、信号線路20およびグランド電極30に対して平行に配置されている。平面電極40と信号線路20との間のギャップは、グランド電極30と信号線路20との間のギャップよりも小さい。本実施の形態における平面電極40と信号線路20との間のギャップは、例えば、グランド電極30と信号線路20との間のギャップの0.1倍以上0.5倍以下であるが、このギャップの大きさは、多層デバイス1Kに必要とされる阻止帯域等に応じて適宜設定される。複数の平面電極40は、長方形形状を有する平面状の電極である。なお、平面電極40の形状は、長方形に限られず、正方形、多角形、円形または楕円形であってもよい。複数の平面電極41、42、43は、第1方向d1に沿って、この順で等間隔に配置されている。各平面電極41、42、43は、同じ形状、同じ大きさである。
【0168】
接続電極50は、複数の平面電極40およびグランド電極30を接続するビア導体であり、誘電体10の内部に設けられている。接続電極50は、複数の平面電極40およびグランド電極30の間に位置する誘電体10を貫通するように形成される。接続電極50は柱状であり、接続電極50の径は、平面電極40の厚みよりも大きい。接続電極50の長さは、グランド電極30と信号線路20との間のギャップよりも小さい。なお、この多層デバイス1Kでは、接続電極50の長さを変えると、平面電極40と信号線路20との間のギャップも変わる。
【0169】
複数の接続電極51、52、53は、第1方向d1に沿って、この順で等間隔に配置されている。各接続電極51、52、53は、同じ形状、同じ大きさである。各接続電極51~53は、各平面電極41~43に一対一で対応するように、第1方向d1に沿って設けられている。具体的には、接続電極51は平面電極41およびグランド電極30を接続するように、接続電極52は平面電極42およびグランド電極30を接続するように、接続電極53は平面電極43およびグランド電極30を接続するように設けられている。
【0170】
接続電極51、52、53は、平面電極40に垂直な方向から見た場合に、信号線路20に重なっておらず、平面電極40の外周端部およびグランド電極30に重なっている。各接続電極51~53は、各平面電極41~43の外周端部の角に接続されている。
【0171】
例えば、信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50からなる電極構造をプリント回路基板の内部に形成する場合、プリント回路基板を多層構造化する必要がある。
【0172】
それに対し実施の形態6では、電極構造を含む多層デバイス1Kを、プリント回路基板に実装される電子部品とすることで、多層デバイス1Kが実装されるプリント回路基板の層数を減らすことができる。これにより、プリント回路基板がコストアップすることを抑制できる。
【0173】
また、従来の機能基板では、高速・高周波信号のうち特定の周波数の信号の通過を阻止できるが、多層デバイスに求められる要求仕様に応じて、高速・高周波信号の通過を阻止する阻止帯域を形成することが困難である。
【0174】
それに対し、実施の形態6の多層デバイス1Kの接続電極50は、平面電極40に垂直な方向から見た場合に、信号線路20に重なっておらず、平面電極40およびグランド電極30に重なっている。これによれば、接続電極50が平面電極40の端部に配置されることとなる。そのため、接続電極50および平面電極40からなる電極構造体の全長を長くすることができ、電極構造体のインダクタンス値を変えることができる。インダクタンス値を変えることによって誘導性成分L50の値を変えることができるので、多層デバイス1Kの阻止帯域の周波数を変えることができる。これにより、多層デバイス1Kに求められる要求仕様に応じて阻止帯域を形成することが可能となる。
【0175】
(実施の形態7)
実施の形態7に係る多層デバイス1Lについて説明する。
【0176】
図28は、実施の形態7に係る多層デバイス1Lの信号線路20、平面電極40、グランド電極30および接続電極50を示す図である。
図28は、多層デバイス1Lから信号端子61、62、グランド端子71、72、73、74および誘電体10を除いた状態を示している。
【0177】
図28に示す多層デバイス1Lは、誘電体10と、信号線路20と、グランド電極30と、複数の平面電極41、42および43と、複数の接続電極51、52および53と、を備えている。また、多層デバイス1Lは、複数の信号端子61および62と、複数のグランド端子71、72、73および74と、を備えている。
【0178】
実施の形態7の誘電体10、グランド電極30、平面電極41、42および43、接続電極51、52および53は、実施の形態6と同様である。また、実施の形態7の信号端子61および62、グランド端子71、72、73および74も、実施の形態6と同様である。
【0179】
信号線路20は、直線状であり、第1方向d1に沿って設けられている。実施の形態7の信号線路20は、平面電極40に垂直な方向すなわち第3方向d3から見た場合に、平面電極40の第2方向d2の長さと同じである。なお、信号線路20の幅が平面電極40の第2方向d2の長さと同じであるとは、平面電極40の第2方向d2の長さを基準としたときの信号線路20の幅が、0.9倍以上1.1倍未満であることをいう。
【0180】
信号線路20は、信号線路20の一部である両端が誘電体10の外面(側面11、12)に露出するように、誘電体10の内部に設けられている。信号線路20は、グランド端子70に接触しないように、第1方向d1の両端の角に切り欠きを有し、グランド端子70に対して所定の間隔を空けて配置されている。信号線路20は、端部を除く中央部が帯状であり、平面電極40およびグランド電極30に対して平行に配置されている。
【0181】
従来の機能基板では、高速・高周波信号のうち特定の周波数の信号の通過を阻止できるが、多層デバイスに求められる要求仕様に応じて、高速・高周波信号の通過を阻止する阻止帯域を形成することが困難である。
【0182】
それに対し、実施の形態7に係る多層デバイス1Lの信号線路20は、平面電極40に垂直な方向すなわち第3方向d3から見た場合に、平面電極40の第2方向d2の長さと同じである。これによれば、信号線路20と平面電極40との対向面積を増やすことができる。対向面積を変えることによって容量性成分C40の値を変えることができるので、多層デバイス1Lの阻止帯域の周波数を変えることができる。これにより、多層デバイス1Lに求められる要求仕様に応じて阻止帯域を形成することが可能となる。
【0183】
(まとめ)
本実施の形態に係る多層デバイス1A(または1K、1L)は、誘電体10と、一部が誘電体10の外面に露出するように、誘電体10の内部に設けられた信号線路20と、少なくとも一部が誘電体10の外面に露出するように、誘電体10の内部または外面に設けられたグランド電極30と、誘電体10の内部に設けられ、グランド電極30に平行で、かつ、第1方向d1に沿って配置された複数の平面電極40と、誘電体10の内部に設けられ、複数の平面電極40およびグランド電極30を接続する複数の接続電極50と、誘電体10の外面に設けられ、信号線路20に接続される複数の信号端子60と、誘電体10の外面に設けられ、グランド電極30に接続される複数のグランド端子70と、を備える。
【0184】
例えば、信号線路20、グランド電極30、平面電極40および接続電極50からなる電極構造をプリント回路基板の内部に形成する場合、プリント回路基板を多層構造化する必要がある。それに対し、電極構造を含む多層デバイス1A(または1K、1L)を、プリント回路基板に実装される電子部品とすることで、多層デバイス1A(または1K、1L)が実装されるプリント回路基板の層数を減らすことができる。これにより、プリント回路基板がコストアップすることを抑制できる。
【0185】
また、複数の平面電極40および複数の接続電極50の少なくとも一方の電極は、異なる2種以上の電極構造を有していてもよい。
【0186】
このように、多層デバイス1Aが異なる2種以上の電極構造を有することで、多層デバイス1Aにおいて、複数種類の容量性成分C40、誘導性成分L50および容量性成分C20を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる。また、多層デバイス1Aの阻止帯域の周波数を変えることができるので、多層デバイス1Aに求められる要求仕様に応じて阻止帯域を形成することが可能となる。
【0187】
また、接続電極50は、ビア導体であり、平面電極40に垂直な方向から見た場合に、平面電極40の外周端部に重なっていてもよい。
【0188】
これによれば、接続電極50が平面電極40の外周端部に配置されることとなる。そのため、接続電極50および平面電極40からなる電極構造体の全長を長くすることができ、電極構造体のインダクタンス値を変えることができる。インダクタンス値を変えることによって誘導性成分L50の値を変えることができるので、多層デバイス1Kの阻止帯域の周波数を変えることができる。これにより、多層デバイス1Kに求められる要求仕様に応じて阻止帯域を形成することが可能となる。
【0189】
また、平面電極40に垂直な方向から見た場合に、信号線路20の幅は、平面電極40の第1方向d1に垂直な第2方向d2の長さと同じであってもよい。
【0190】
これによれば、信号線路20と平面電極40との対向面積を増やすことができる。対向面積を変えることによって容量性成分C40の値を変えることができるので、多層デバイス1Lの阻止帯域の周波数を変えることができる。これにより、多層デバイス1Lに求められる要求仕様に応じて阻止帯域を形成することが可能となる。
【0191】
本実施の形態に係る多層デバイス1Aは、信号を伝送する信号線路20と、グランド電位に設定されるグランド電極30と、グランド電極30に平行で、かつ、第1方向d1に沿って配置された複数の平面電極40と、信号線路20、複数の平面電極40およびグランド電極30のそれぞれの間に設けられた誘電体10と、複数の平面電極40およびグランド電極30の間に位置し、複数の平面電極40およびグランド電極30を接続する複数の接続電極50と、を備える。複数の平面電極40および複数の接続電極50の少なくとも一方の電極は、異なる2種以上の電極構造を有する。
【0192】
このように、多層デバイス1Aが異なる2種以上の電極構造を有することで、多層デバイス1Aにおいて、複数種類の容量性成分C40、誘導性成分L50および容量性成分C20を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる。
【0193】
また、複数の平面電極40は、信号線路20と平面電極40との対向面積、および、第1方向d1に沿って配置された複数の平面電極40の配列ピッチの少なくとも1つについて、異なる2種以上の構造を有していてもよい。
【0194】
例えば、信号線路20と平面電極40との対向面積について異なる2種以上の構造を有することで、信号線路20および平面電極40に基づく2種以上の容量性成分C40を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。また、平面電極40の配列ピッチについて異なる2種以上の構造を有することで、信号線路20およびグランド電極30に基づく2種以上の容量性成分C20を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。
【0195】
また、複数の接続電極50は、複数の接続電極50の断面積、および、複数の接続電極50の長さの少なくとも1つについて、異なる2種以上の構造を有していてもよい。
【0196】
例えば、複数の接続電極50の断面積について異なる2種以上の構造を有することで、接続電極50による2種以上の誘導性成分L50を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。また、複数の接続電極50の長さについて異なる2種以上の構造を有することで、接続電極50による2種以上の誘導性成分L50を生成することができる。また、接続電極50の長さを変えることで、信号線路20と平面電極40とのギャップが変わるので、信号線路20および平面電極40に基づく2種以上の容量性成分C40を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。
【0197】
また、多層デバイス1C、1D、1Eまたは1Fは、2種以上の構造を複数組備えていてもよい。
【0198】
これによれば、多層デバイス1C、1D、1Eまたは1Fの共振点の数をさらに増やすことができる。これにより、信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる。
【0199】
また、多層デバイス1Fは、信号線路20、グランド電極30、複数の平面電極40および複数の接続電極50を1組とする積層体が複数積層された多層構造を有していてもよい。
【0200】
このように上記の積層体を複数積層することで、多層デバイス1Fの共振点の数をさらに増やすことができる。これにより、信号の通過を阻止する阻止帯域を広げることができる。また、多層デバイス1Fを多層構造とすることで多層デバイス1Fの面積を小さくすることができる。
【0201】
また、信号線路20は、誘電体10に設けられた2つの平行な線路によって構成されていてもよい。
【0202】
これによれば、多層デバイス1G、1Hをコモンモードフィルタとして使用することが可能となる。
【0203】
また、2つの平行な線路は、差動信号が伝送される差動線路であってもよい。
【0204】
これによれば、コモンモードフィルタの機能を有する多層デバイス1G、1Hを提供することができる。
【0205】
また、複数の平面電極40のうちの少なくとも1つの平面電極(例えば41)は、1つの平面電極と異なる他の平面電極(例えば42)とは、信号線路20と平面電極40との対向面積が異なっていてもよい。
【0206】
これによれば、信号線路20と平面電極40との対向面積に基づく2種以上の容量性成分C40を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。
【0207】
また、第1方向d1に沿って隣り合う1組の平面電極(例えば41、42)の中心間距離は、1組とは異なる組み合わせである他の1組の平面電極(例えば42、43)の中心間距離と異なっていてもよい。
【0208】
これによれば、1組の平面電極40および接続電極50に対応する信号線路20の長さがそれぞれ異なることとなり、信号線路20およびグランド電極30に基づく2種以上の容量性成分C20を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。
【0209】
また、複数の接続電極50のうちの少なくとも1つの接続電極(例えば51)は、1つの接続電極と異なる他の接続電極(例えば52)とは、接続電極50の断面積が異なっていてもよい。
【0210】
これによれば、接続電極50による2種以上の誘導性成分L50を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。
【0211】
また、複数の接続電極50のうちの少なくとも1つの接続電極(例えば51)は、1つの接続電極と異なる他の接続電極(例えば52)とは、接続電極50の長さが異なっていてもよい。
【0212】
これによれば、接続電極50による2種以上の誘導性成分L50を生成することができる。また、接続電極50の長さを変えることで、信号線路20と平面電極40とのギャップが変わるので、信号線路20および平面電極40に基づく2種以上の容量性成分C40を生成することができる。これにより、複数の共振点を含む阻止帯域を生成することが可能となり、阻止帯域の帯域幅を広げることができる。
【0213】
また、複数の平面電極40は、信号線路20とグランド電極30との間に配置されていてもよい。
【0214】
これによれば、平面電極40を信号線路20から見てグランド電極30の反対側に配置した場合に比べて、接続電極50の長さを短くすることができる。そのため、接続電極50の誘導性成分L50を小さくすることができる。これにより、多層デバイス1Aの共振点の位置を調整し、阻止帯域を広げることが可能となる。
【0215】
また、平面電極40は、信号線路20から見てグランド電極30の反対側に配置されていてもよい。
【0216】
これによれば、平面電極40を信号線路20とグランド電極30との間に配置した場合に比べて、接続電極50の長さを長くすることができる。そのため、接続電極50の誘導性成分L50を大きくすることができる。これにより、多層デバイス1Bの共振点の位置を調整し、阻止帯域を広げることが可能となる。
【0217】
(その他の実施の形態等)
以上、本開示の実施の形態及び各変形例に係る多層デバイス等について説明したが、本開示は、上記実施の形態及び各変形例に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態及び各変形例に施したもの、並びに、実施の形態及び各変形例における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲に含まれる。
【0218】
例えば、実施の形態1では、複数の平面電極41、42、43がこの順で第1方向d1に沿って配置されている例を示したが、それに限られない。複数の平面電極41~43は、平面電極41、43、42の順で配置されていてもよい。つまり、複数の平面電極41、42、43は、順不同であり、例えば6通りの順列から選ばれた順で配置されていてもよい。
【0219】
例えば、実施の形態1のその他の一例では、複数の接続電極51、52、53がこの順で第1方向d1に沿って配置されている例を示したが、それに限られない。複数の接続電極51~53は、接続電極51、53、52の順で配置されていてもよい。つまり、複数の接続電極51、52、53は、順不同であり、例えば6通りの順列から選ばれた順で配置されていてもよい。
【0220】
例えば、実施の形態1では、3つの平面電極41~43および3つの接続電極51~53が第1方向d1に沿って配置されている例を示したが、それに限られない。平面電極および接続電極で構成される電極構造の数は、2つであってもよいし、4以上であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0221】
本開示に係る多層デバイスは、各種の電子機器および通信システムに用いられる多層デバイスとして有用である。
【符号の説明】
【0222】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H、1i、1J、1K、1L 多層デバイス
10 誘電体
11、12、13、14 側面
16 底面
17 天面
20、20a、20b 信号線路
30 グランド電極
40、41、42、43 平面電極
50、51、52、53 接続電極
60、61、62、63、64 信号端子
70、71、72、73、74 グランド端子
81 ランド電極
cL 中心線
d1 第1方向
d2 第2方向
d3 第3方向
p1、p2 配列ピッチ