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特開2023-50175研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法
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  • 特開-研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050175
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20230403BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154973
(22)【出願日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2021159476
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】川村 佳秀
(72)【発明者】
【氏名】立野 哲平
(72)【発明者】
【氏名】栗原 浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見沢 大和
(72)【発明者】
【氏名】越智 恵介
(72)【発明者】
【氏名】川崎 哲明
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158DA12
3C158DA17
3C158EB19
3C158EB28
3C158EB29
3C158ED00
5F057AA09
5F057BA18
5F057BB16
5F057BB22
5F057DA03
5F057EA06
5F057EA26
(57)【要約】      (修正有)
【課題】段差解消性能に優れディッシングを抑制でき、かつディフェクトを抑制できる研磨パッド、当該研磨パッドの製造方法、及び当該研磨パッドを使用した光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法、を提供することを目的とする。
【解決手段】ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドであって、前記ポリウレタン樹脂が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物であり、前記硬化剤は、アミン系硬化剤及び下記式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤を含む、前記研磨パッド:

(上記式(I)中、Rは炭素数2~10の二価の炭化水素基であり、複数のRは同一であってもよく、又は異なるものであってもよく、nは2~30であり、mは0.1~20である。)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドであって、
前記ポリウレタン樹脂が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物であり、
前記硬化剤は、アミン系硬化剤及び下記式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤を含む、前記研磨パッド:
【化1】
(上記式(I)中、
は炭素数2~10の二価の炭化水素基であり、複数のRは同一であってもよく、又は異なるものであってもよく、
nは2~30であり、
mは0.1~20である。)。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤がポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位を含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記アミン系硬化剤と前記ポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤との重量比が8:2~2:8である、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記アミン系硬化剤と前記ポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤とのモル比が9:1~5:5である、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記式(I)におけるRが、エチレン、イソプロピレン、及びn-ブチレンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記ポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤の数平均分子量が500~2500である、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記アミン系硬化剤が3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを含む、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項8】
前記ポリイソシアネート成分がトリレンジイソシアネートを含む、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項9】
前記硬化性樹脂組成物が微小中空球体をさらに含む、請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の研磨パッドの製造方法であって、前記研磨層を成形する工程を含む、前記方法。
【請求項11】
光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、請求項1又は2に記載の研磨パッドを使用して光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド、研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法に関する。本発明の研磨パッドは、光学材料、半導体ウエハ、半導体デバイス、ハードディスク用基板等の研磨に用いられ、特に半導体ウエハの上に酸化物層、金属層等が形成されたデバイスを研磨するのに好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
光学材料、半導体ウエハ、ハードディスク基板、液晶用ガラス基板、半導体デバイスは非常に精密な平坦性が要求される。このような各種材料の表面、特に半導体デバイスの表面を平坦に研磨するために、硬質研磨パッドが一般的に用いられている。
現在、多くの硬質研磨パッドにおける研磨層には、トリレンジイソシアネート(TDI)などのイソシアネート成分とポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)などの高分子量ポリオールを含むポリオール成分との反応生成物であるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどの硬化剤により硬化させて得られた硬質ポリウレタン材料を使用することが一般的である。イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを形成する高分子量ポリオールは、ポリウレタンのソフトセグメントを形成するものであり、取り扱いやすさや適度なゴム弾性といった観点から、PTMGが高分子量ポリオールとして従来よく用いられていた。
【0003】
半導体デバイスの研磨においては、近年の集積回路の微細化・高密度化に伴い、被研磨物表面における段差解消性能の向上及びスクラッチ(傷)等のディフェクト(欠陥)の抑制について、より厳密なレベルが要求されるようになってきている。被研磨物表面における段差解消性能が不足すると、ディッシングと呼ばれる主に幅広配線パターンで配線断面が皿状にくぼむ現象が発生しやすくなり、被研磨物面の局所的な平坦性が悪化する。
【0004】
PTMGを高分子量ポリオールとして使用した従来の研磨パッドでは、段差解消性能やディフェクトの抑制の点で不十分であることがあり、高分子量ポリオールとしてPTMG以外のポリオールを用いる検討がなされている。
【0005】
特許文献1には、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーの高分子量ポリオールとして、ポリプロピレングリコール(PPG)を用いて形成した研磨パッドが、段差解消性能に優れ、ディフェクトの発生が少ないことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-157415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の研磨パッドのように、高分子量ポリオールの全量をPPGとした場合、研磨層の耐摩耗性が悪く、研磨パッドのライフが短くなってしまうことがある。また、特許文献1に記載の研磨パッドのように、高分子量ポリオールの全量をPPGとした場合、得られるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーが軟質化してしまう傾向があるので、それを防ぐためにイソシアネート末端ウレタンプレポリマーの製造に際してポリオール成分とポリイソシアネート成分との当量調整が新たに必要となってしまう。
【0008】
以上のように、段差解消性能に優れディッシングを抑制でき、かつディフェクトを抑制できる研磨パッドが望まれている。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、段差解消性能に優れディッシングを抑制でき、かつディフェクトを抑制できる研磨パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究した結果、硬化剤として、アミン系硬化剤と特定の構造式で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤との組み合わせを使用することにより、上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。本発明の具体的態様は以下のとおりである。
【0011】
[1] ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する研磨パッドであって、
前記ポリウレタン樹脂が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物であり、
前記硬化剤は、アミン系硬化剤及び下記式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤を含む、前記研磨パッド:
【化1】
(上記式(I)中、
は炭素数2~10の二価の炭化水素基であり、複数のRは同一であってもよく、又は異なるものであってもよく、
nは2~30であり、
mは0.1~20である。)。
[2] 前記ポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤がポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位を含む、[1]に記載の研磨パッド。
[3] 前記アミン系硬化剤と前記ポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤との重量比が8:2~2:8である、[1]又は[2]に記載の研磨パッド。
[4] 前記アミン系硬化剤と前記ポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤とのモル比が9:1~5:5である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[5] 前記式(I)におけるRが、エチレン、イソプロピレン、及びn-ブチレンからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[6] 前記ポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤の数平均分子量が500~2500である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[7] 前記アミン系硬化剤が3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタンを含む、[1]~[6]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[8] 前記ポリイソシアネート成分がトリレンジイソシアネートを含む、[1]~[7]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[9] 前記硬化性樹脂組成物が微小中空球体をさらに含む、[1]~[8]のいずれか1つに記載の研磨パッド。
[10] [1]~[9]のいずれか1つに記載の研磨パッドの製造方法であって、前記研磨層を成形する工程を含む、前記方法。
[11] 光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法であって、[1]~[9]のいずれか1つに記載の研磨パッドを使用して光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程を含む、前記方法。
【0012】
(定義)
本願において、「X~Y」を用いて数値範囲を表す際は、その範囲は両端の数値であるX及びYを含むものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の研磨パッドは、段差解消性能に優れディッシングを抑制でき、かつディフェクトを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1の(a)~(c)は、研磨により段差が解消されていく状態を示す模式図である。
図2図2は、研磨量と段差との関係を示すグラフである。
図3図3の(a)及び(b)は、実施例1、7及び11並びに比較例1~3の研磨パッドの段差解消性能の評価結果を示すグラフである。
図4図4の(c)及び(d)は、実施例1、7及び11並びに比較例1~3の研磨パッドの段差解消性能の評価結果を示すグラフである。
図5図5は、実施例1、7及び11並びに比較例1~3の研磨パッドのディフェクトの評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(作用)
本発明者らは、研磨層を形成するための硬化剤と段差解消性能及びディフェクトとの関係について鋭意研究した結果、予想外にも、硬化剤として、アミン系硬化剤と特定の構造式で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤との組み合わせを使用することにより、段差解消性能に優れディッシングを抑制でき、かつディフェクトを抑制できる研磨パッドが得られることを見出した。このような特性が得られる理由の詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
【0016】
ポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤は、カーボネート基を有するため、PTMG等に比べて結晶性が低いと考えられ、従来のアミン系硬化剤に加えてポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤も使用した場合、形成される硬化物である研磨層の結晶性も低くなると考えられる。研磨層の結晶性が低くなると、研磨した際に発生する研磨層の屑などが凝集しにくくなって大きな塊を形成しにくくなると考えられ、結果として被研磨物において、段差解消性能が向上しディッシングを抑制でき、かつディフェクトが抑制できるものと推察される。
【0017】
(段差解消性能)
半導体製造プロセスにおいて金属(Cu)配線を製造する方法として、ダマシンプロセスがある。このダマシンプロセスは、シリコンウエハ上に設けた絶縁膜に溝を掘り、この溝にスパッタリングなどにより金属を埋め込み、余分な金属を化学機械研磨(CMP)によって除去することによって金属配線を形成する。絶縁膜と金属との間に生じる物理的または化学的なストレスを解消するために、通常、絶縁膜をバリアメタルで被覆してから金属を埋め込む。
【0018】
段差解消性能を評価する実験の模式図を図1の(a)~(c)に示す。図1の(a)は研磨を開始する前の状態を示す。図1の(a)に示すように、絶縁膜(酸化膜)10の溝に金属膜(Cu膜)20を埋め込むと、金属膜20の下に存在する溝の幅に応じて、溝が存在する部分と溝が存在しない部分の間に溝の幅と深さに応じた段差(溝が存在しない部分と溝が存在する部分との間の厚みの差)40が生じる。図1の(a)において、溝が存在しない部分の金属膜20の厚み30は8000Åであり、段差40は3500Åである。図1の(b)は研磨量が2000Åの状態を示し、段差41は2000Åである。図1の(c)は研磨量が6000Åの状態を示し、段差42はほぼ0である。
【0019】
本願において、「段差解消性能」とは、研磨を行った際に、上述のような段差(凹凸)を有するパターンウエハの段差を小さくする性能のことを言う。
図2に、図1の(a)の状態の被研磨物に対して、段差解消性能が高い研磨パッドA(点線)と、相対的に段差解消性能が低い研磨パッドB(実線)を用いた場合の研磨量(Å)と段差(Å)との関係を表すグラフを示す。図2の研磨パッドAに関する(a)~(c)で示した箇所は、図1の(a)~(c)の状態にそれぞれ対応している。図2において、研磨開始前((a)の箇所)の時点では点線と実線との間に段差の違いがないものの、研磨が進み、研磨量が2000Åの時に、研磨パッドA(点線)は、研磨パッドB(実線)に比べて、段差が小さいことが示されている((b)の箇所)。そして、図2からわかるように、研磨パッドA(点線)は、研磨パッドB(実線)に比べて、早く段差が解消する((c)の箇所)。図2の結果より、点線で示す研磨パッドAは、実線の研磨パッドBよりも相対的に段差解消性能が高いと言える。
【0020】
(ディフェクト)
また、本願において「ディフェクト」とは、被研磨物の表面に付着した細かい粒子が残留したものを示す「パーティクル」、被研磨物の表面に付着した研磨層の屑を示す「パッド屑」、被研磨物の表面についた傷を示す「スクラッチ」等を含めた欠陥の総称を意味し、ディフェクト性能とはこの「ディフェクト」を少なくする性能のことを言う。
【0021】
以下、本願の研磨パッド、及び研磨パッドの製造方法、及び光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法について、説明する。
【0022】
1.研磨パッド、研磨パッドの製造方法
本願のいくつかの実施形態において、研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有し、前記ポリウレタン樹脂が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物の硬化物であり、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーが、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物であり、
前記硬化剤は、アミン系硬化剤及び下記式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤を含む:
【化2】
(上記式(I)中、
は炭素数2~10の二価の炭化水素基であり、複数のRは同一であってもよく、又は異なるものであってもよく、
nは2~30であり、
mは0.1~20である。)。
硬化剤として、アミン系硬化剤と特定の構造式で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤との組み合わせを使用することにより、得られる研磨パッドは、段差解消性能に優れディッシングを抑制でき、かつディフェクトを抑制できる。
【0023】
(研磨パッド)
本願の研磨パッドは、ポリウレタン樹脂を含む研磨層を有する。研磨層は被研磨材料に直接接する位置に配置され、研磨パッドのその他の部分は、研磨パッドを支持するための材料、例えば、ゴムなどの弾性に富む材料で構成されてもよい。研磨パッドの剛性によっては、研磨層を研磨パッドとすることができる。
【0024】
本願の研磨パッドは、被研磨物におけるディッシング及びディフェクトを抑制できることを除けば、一般的な研磨パッドと形状に大きな差異は無く、一般的な研磨パッドと同様に使用することができ、例えば、研磨パッドを回転させながら研磨層を被研磨材料に押し当てて研磨することもできるし、被研磨材料を回転させながら研磨層に押し当てて研磨することもできる。
【0025】
本願の研磨パッドは、一般に知られたモールド成形、スラブ成形等の製造法より作成できる。まずは、それら製造法によりポリウレタンのブロックを形成し、ブロックをスライス等によりシート状とし、ポリウレタン樹脂から形成される研磨層を成形し、支持体などに貼り合わせることによって製造される。あるいは支持体上に直接研磨層を成形することもできる。
【0026】
より具体的には、研磨層は、研磨層の研磨面とは反対の面側に両面テープが貼り付けられ、所定形状にカットされて、研磨パッドとなる。両面テープに特に制限はなく、当技術分野において公知の両面テープの中から任意に選択して使用することが出来る。また、研磨パッドは、研磨層のみからなる単層構造であってもよく、研磨層の研磨面とは反対の面側に他の層(下層、支持層)を貼り合わせた複層からなっていてもよい。
【0027】
研磨層は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含む硬化性樹脂組成物を調製し、当該硬化性樹脂組成物を硬化させることによって成形される。
研磨層は発泡ポリウレタン樹脂から構成することができるが、発泡は微小中空球体を含む発泡剤をポリウレタン樹脂中に分散させて行うことができる。この場合、イソシアネート末端ウレタンプレポリマー、硬化剤、及び発泡剤を含む硬化性樹脂組成物を調製し、当該硬化性樹脂組成物を発泡硬化させることによって成形することができる。
硬化性樹脂組成物は、例えば、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを含むA液と、硬化剤成分を含むB液とを混合して調製する2液型の組成物とすることもできる。それ以外の成分はA液に入れても、B液に入れてもよいが、不具合が生じる場合はさらに複数の液に分割して3液以上の液を混合して構成される組成物とすることができる。
【0028】
(硬化剤)
いくつかの実施形態において、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化剤は、アミン系硬化剤及び上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤を含む。
【0029】
上記ポリエーテルポリカーボネートジオールを表す上記式(I)中、Rは、炭素数2~10の二価の炭化水素基であり、Rの例としては、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、イソブチレン、1,1-ジメチルエチレン、n-ペンチレン、2,2-ジメチルプロピレン、2-メチルブチレン、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせなどが挙げられ、特に、エチレン、イソプロピレン、及びn-ブチレンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記式(I)中、複数のRは同一であってもよく、又は異なるものであってもよいが、同一であることが好ましい。
【0030】
上記式(I)中、nは、2~30であり、3~20であることが好ましく、3~15であることがより好ましい。
上記式(I)中、mは、0.1~20であり、0.5~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。
【0031】
いくつかの実施形態において、上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤は、ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位を含むことが好ましい。上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤が、ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位を含むことにより、得られる研磨パッドが低温での柔軟性に優れる。
また、当該ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位の数平均分子量は、特に限定されないが、100~1500であることが好ましく、150~1000であることがより好ましく、200~850であることが最も好ましい。
【0032】
上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤が、ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位を含む場合、当該ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位は上記式(I)中の-(R-O)-で表される部分であることが好ましい。
【0033】
上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤の数平均分子量は、500~2500であることが好ましく、800~2500であることがより好ましく、1000~2000であることが最も好ましい。
【0034】
上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤及び上記ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位の数平均分子量は、以下の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に基づいてポリエチレングリコール/ポリエチレンオキシド(PEG/PEO)換算の分子量として測定することができる。
<測定条件>
カラム:Ohpak SB-802.5HQ(排除限界10000) +SB-803HQ(排除限界 100000)
移動相:5mM LiBr/DMF
流速:0.3ml/min(26kg/cm2)
オーブン:60℃
検出器:RI 40℃
試料量:20μl
【0035】
硬化剤であるアミン系硬化剤は、以下に説明するアミン系硬化剤が挙げられる。
アミン系硬化剤を構成するポリアミンとしては、例えば、ジアミンが挙げられ、これには、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルキレンジアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミンなどの脂肪族環を有するジアミン;3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス-o-クロロアニリン)(以下、MOCAと略記する。)などの芳香族環を有するジアミン;2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するジアミン、特にヒドロキシアルキルアルキレンジアミン;又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられる。また、3官能のトリアミン化合物、4官能以上のポリアミン化合物も使用可能である。
【0036】
特に好ましいアミン系硬化剤は、上述したMOCAであり、このMOCAの化学構造は、以下のとおりである。
【0037】
【化3】
【0038】
硬化剤全体の量は、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーのNCOのモル数に対する、アミン系硬化剤のNHのモル数と上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤のOHのモル数との合計の比率((NHのモル数+OHのモル数)/NCOのモル数)が、好ましくは0.7~1.1、より好ましくは0.75~1.0、最も好ましくは0.8~0.95となる量を用いる。
【0039】
硬化剤に含まれる、アミン系硬化剤と上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤との重量比は、特に限定されないが、8:2~2:8が好ましく、8:2~5:5がより好ましく、7:3~6:4が最も好ましい。また、硬化剤に含まれる、アミン系硬化剤と上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤とのモル比は、特に限定されないが、9:1~5:5が好ましく、8:2~6:4が最も好ましい。これらの硬化剤の重量比又はモル比が、上記数値範囲内であることにより、得られる研磨パッドが、段差解消性能に優れディッシングを抑制でき、かつディフェクトを抑制できる。
【0040】
(イソシアネート末端ウレタンプレポリマー)
いくつかの実施形態において、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させることにより得られる生成物である。
【0041】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーのNCO当量(g/eq)としては、600未満が好ましく、350~550がより好ましく、400~500が最も好ましい。NCO当量(g/eq)が上記数値範囲内であることにより、適度な研磨性能の研磨パッドが得られる。
【0042】
(ポリオール成分)
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーに含まれる、ポリオール成分としては、低分子量ポリオール、高分子量ポリオール、又はそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態において、低分子量ポリオールとは数平均分子量が30~300であるポリオールであり、高分子量ポリオールとは数平均分子量が300を超えるポリオールである。上記低分子量ポリオール及び上記高分子量ポリオールの数平均分子量は、上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤及び上記ポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位の数平均分子量において示したものと同様の方法により、測定することができる。
【0043】
上記低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせが挙げられ、この中でもジエチレングリコールが好ましい。
【0044】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー全体に対する、低分子量ポリオールの含有量は、0~20重量%、2~15重量%、又は3~10重量%とすることができる。または、上記低分子量ポリオールの含有量を0重量%(低分子量ポリオールを含まない)とすることもできる。本願において、「含まない」とは、ある成分を意図的に添加しないことを意味し、不純物として含まれることを排除するものではない。
【0045】
上記高分子量ポリオールとしては、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリエーテルポリオール;
エチレングリコールとアジピン酸との反応物やブチレングリコールとアジピン酸との反応物等のポリエステルポリオール;
上記(硬化剤)の項目で述べた、上記式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール;
ポリカーボネートポリオール;
ポリカプロラクトンポリオール;
又はこれらのうちの2種以上の組み合わせ;が挙げられる。
いくつかの実施形態において、高分子量ポリオールが、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましく、特にポリテトラメチレンエーテルグリコールを含むことがより好ましい。
【0046】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー全体に対する、高分子量ポリオールの含有量は、25~75重量%が好ましく、35~65重量%がより好ましく、40~60重量%が最も好ましい。
【0047】
(ポリイソシアネート成分)
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーに含まれるポリイソシアネート成分としては、
m-フェニレンジイソシアネート、
p-フェニレンジイソシアネート、
2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、
2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、
ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、
ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、
4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、
3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニルジイソシアネート、
3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、
キシリレン-1,4-ジイソシアネート、
4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、
トリメチレンジイソシアネート、
ヘキサメチレンジイソシアネート、
プロピレン-1,2-ジイソシアネート、
ブチレン-1,2-ジイソシアネート、
シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、
シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、
p-フェニレンジイソチオシアネート、
キシリレン-1,4-ジイソチオシアネート、
エチリジンジイソチオシアネート、
又はこれらのうちの2種以上組み合わせが挙げられる。
この中でも、得られる研磨パッドの研磨特性や機械的強度等の観点から、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)等のトリレンジイソシアネートを使用することが好ましい。
【0048】
イソシアネート末端ウレタンプレポリマー全体に対する、上記ポリイソシアネート成分の含有量は、20~50重量%が好ましく、25~45重量%がより好ましく、30~40重量%が最も好ましい。
【0049】
(微小中空球体)
いくつかの実施形態において、硬化性樹脂組成物は微小中空球体をさらに含むことができる。
微小中空球体をポリウレタン樹脂に混合することによって発泡体を形成することができる。微小中空球体とは、熱可塑性樹脂からなる外殻(ポリマー殻)と、外殻に内包される低沸点炭化水素とからなる未発泡の加熱膨張性微小球状体と、未発泡の加熱膨張性微小球状体を加熱膨張させたものをいう。前記ポリマー殻としては、例えば、アクリロニトリル-塩化ビニリデン共重合体、アクリロニトリル-メチルメタクリレート共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体などの熱可塑性樹脂を用いることができる。同様に、ポリマー殻に内包される低沸点炭化水素としては、例えば、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、石油エーテル、又はこれらのうちの2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0050】
(その他の成分)
その他に当業界で一般的に使用される触媒などを硬化性樹脂組成物に添加しても良い。
また、上述したポリイソシアネート成分を硬化性樹脂組成物に後から追加で添加することもでき、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと追加のポリイソシアネート成分との合計重量に対する追加のポリイソシアネート成分の重量割合は、0.1~10重量%が好ましく、0.5~8重量%がより好ましく、1~5重量%が特に好ましい。
ポリウレタン樹脂硬化性組成物に追加で添加するポリイソシアネート成分としては、上述のポリイソシアネート成分を特に限定なく使用することができるが、4,4’-メチレン-ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)が好ましい。
【0051】
2.光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法
本願において、光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法は、上述の研磨パッドを使用して光学材料又は半導体材料の表面を研磨する工程を含む。
いくつかの実施形態において、光学材料又は半導体材料の表面を研磨する方法は、研磨パッドの表面、光学材料若しくは半導体材料の表面、又はそれらの両方にスラリーを供給する工程を更に含むことができる。
【0052】
(スラリー)
スラリーに含まれる液体成分としては、特に限定されないが、水(純水)、酸、アルカリ、有機溶剤、又はそれらの組み合わせが挙げられ、被研磨物の材質や所望の研磨条件等によって選択される。スラリーは、水(純水)を主成分とすることが好ましく、スラリー全体に対して、水を80重量%以上含むことが好ましい。スラリーに含まれる砥粒成分としては、特に限定されないが、シリカ、珪酸ジルコニウム、酸化セリウム、酸化アルミニウム、酸化マンガン、又はそれらの組み合わせが挙げられる。スラリーは、液体成分に可溶な有機物やpH調整剤等、その他の成分を含有していてもよい。
【実施例0053】
本発明を以下の例により実験的に説明するが、以下の説明は、本発明の範囲が以下の例に限定して解釈されることを意図するものではない。
【0054】
(材料)
後述の実施例1~11及び比較例1~3で使用した材料を以下に列挙する。
【0055】
・イソシアネート末端ウレタンプレポリマー:
プレポリマー(1)・・・ポリイソシアネート成分として、2,4-トリレンジイソシアネートを412重量部含み、高分子量ポリオール成分として、数平均分子量が650であるポリテトラメチレンエーテルグリコールを529重量部、及び低分子量ポリオール成分として、ジエチレングリコールを59重量部含む、NCO当量500のウレタンプレポリマー(プレポリマー(1)全体に対して、2,4-トリレンジイソシアネート、数平均分子量が650であるポリテトラメチレンエーテルグリコール、及びジエチレングリコールの含有量は、それぞれ41.2重量%、52.9重量%、及び5.9重量%となる。)
【0056】
・硬化剤:
MOCA・・・3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(別名:メチレンビス-o-クロロアニリン)(MOCA)(NH当量=133.5)
PEPCD(ポリエーテルポリカーボネートジオール)(1)・・・数平均分子量250のポリテトラメチレンエーテルグリコールに由来する構造単位を含み、数平均分子量が1000であるポリエーテルポリカーボネートジオール(上述の式(I)において、複数のRがいずれもn-ブチレンであり、nが3.2、mが2.8であるポリエーテルポリカーボネートジオールに相当する。下記の表1に詳細を示す。)
PEPCD(2)~(9)・・・それぞれポリエーテルポリカーボネートジオール(2)~(9)(上記PEPCD(1)と同様に、下記の表1に詳細を示す。)
PTMG1000・・・数平均分子量1000のポリテトラメチレンエーテルグリコール
PPG1000・・・数平均分子量1000のポリプロピレングリコール
【0057】
【表1】
【0058】
・微小中空球体:
Expancel461DU20(日本フィライト株式会社製)
【0059】
(実施例1)
A成分としてプレポリマー(1)を1000g、B成分として、硬化剤であるMOCAを169g、PEPCD(1)を270g、C成分として微小中空球体(Expancel461DU20)を30g、それぞれ準備した。なお、各成分の比率を示すためにg表示として記載しているが、ブロックの大きさに応じて必要な重量(部)を準備すれば良い。以下同様にg(部)表記で記載する。
A成分とC成分を混合し、得られたA成分とC成分との混合物を減圧脱泡した。また、B成分であるMOCAとPEPCD(1)を混合し、得られた混合物を減圧脱泡した。脱泡したA成分とC成分との混合物及び脱泡したB成分の混合物を混合機に供給し、A成分、B成分、及びC成分の混合液を得た。なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマーのNCOのモル数に対する、B成分のMOCAのNHのモル数とPEPCDのOHのモル数との合計の比率((NHのモル数+OHのモル数)/NCOのモル数)は0.9である。また、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、MOCAとPEPCDとのモル比は7:3であり、MOCAとPEPCDとの重量比は3.8:6.2である。
得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液を80℃に加熱した型枠(850mm×850mmの正方形の形状)に注型し、30分間、80℃にて一次硬化させた。形成された樹脂発泡体を型枠から抜き出し、オーブンにて120℃で4時間、二次硬化した。得られた樹脂発泡体を25℃まで放冷した後、再度オーブンにて120℃で5時間加熱した。得られた樹脂発泡体を厚さ方向にわたって1.3mm厚にスライスしてウレタンシートを作成し、このウレタンシートの裏面に両面テープを貼り付け、研磨パッドとした。
【0060】
(実施例2~6)
実施例1のB成分のPEPCD(1) 270gに代えて、それぞれPEPCD(2)~(6) 270gを使用した以外は、実施例1と同様にして、ウレタンシートを作成し、実施例2~6それぞれの研磨パッドを得た。
なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマーのNCOのモル数に対する、B成分のMOCAのNHのモル数とPEPCDのOHのモル数との合計の比率((NHのモル数+OHのモル数)/NCOのモル数)はいずれも0.9である。また、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、MOCAとPEPCDとのモル比はいずれも7:3であり、MOCAとPEPCDとの重量比はいずれも3.8:6.2である。
【0061】
(実施例7~9)
実施例1のB成分のPEPCD(1) 270gに代えて、それぞれPEPCD(7)~(9) 535gを使用した以外は、実施例1と同様にして、ウレタンシートを作成し、実施例7~9それぞれの研磨パッドを得た。
なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマーのNCOのモル数に対する、B成分のMOCAのNHのモル数とPEPCDのOHのモル数との合計の比率((NHのモル数+OHのモル数)/NCOのモル数)はいずれも0.9である。また、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、MOCAとPEPCDとのモル比はいずれも7:3であり、MOCAとPEPCDとの重量比はいずれも2.4:7.6である。
【0062】
(実施例10)
実施例1のB成分のMOCA 168g及びPEPCD(1) 270gに代えて、MOCA 216g及びPEPCD(1) 93gを使用した以外は、実施例1と同様にして、ウレタンシートを作成し、実施例10の研磨パッドを得た。
なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマーのNCOのモル数に対する、B成分のMOCAのNHのモル数とPEPCDのOHのモル数との合計の比率((NHのモル数+OHのモル数)/NCOのモル数)は0.9である。また、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、MOCAとPEPCDとのモル比は9:1であり、MOCAとPEPCDとの重量比はいずれも7.0:3.0である。
【0063】
(実施例11)
実施例1のB成分のMOCA 168g及びPEPCD(1) 270gに代えて、MOCA 120g及びPEPCD(1) 450gを使用した以外は、実施例1と同様にして、ウレタンシートを作成し、実施例11の研磨パッドを得た。
なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマーのNCOのモル数に対する、B成分のMOCAのNHのモル数とPEPCDのOHのモル数との合計の比率((NHのモル数+OHのモル数)/NCOのモル数)は0.9である。また、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、MOCAとPEPCDとのモル比は5:5であり、MOCAとPEPCDとの重量比はいずれも2.1:7.9である。
【0064】
(比較例1)
実施例1のB成分のMOCA 168g及びPEPCD(1) 270gに代えて、MOCA 240gを使用した以外は、実施例1と同様にして、ウレタンシートを作成し、研磨パッドを得た。
なお、A成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマーのNCOのモル数に対する、B成分のMOCAのNHのモル数の比率(NHのモル数/NCOのモル数)は0.9である。
【0065】
(比較例2)
実施例1のB成分のPEPCD(1) 270gに代えて、上述のPTMG1000 270gを使用した以外は、実施例1と同様にして、ウレタンシートを作成し、研磨パッドを得た。
なお、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、A成分のプレポリマーのNCOのモル数に対する、B成分のMOCAのNHのモル数とPEPCDのOHのモル数との合計の比率((NHのモル数+OHのモル数)/NCOのモル数)は0.9である。また、得られたA成分、B成分、及びC成分の混合液における、MOCAとPTMG1000とのモル比は7:3である。
【0066】
(比較例3)
比較例3として従来公知の研磨パッドであるIC1000(ニッタ・ハース社製)を準備した。
【0067】
(評価方法)
実施例1、7及び11、並びに比較例1~3それぞれの研磨パッドについて、以下の(1)段差解消性能及び(2)ディフェクトの各評価を行った。
【0068】
(1)段差解消性能
各研磨パッドを、研磨装置の所定位置にアクリル系接着剤を有する両面テープを介して設置し、下記の<研磨条件>に示す条件にて研磨加工を施した。そして、研磨加工後に、微細形状測定装置(KLAテンコール社製、P-16+OF)で測定することにより段差解消性能を評価した。各研磨パッドについての評価結果を表2並びに図3及び4に示す。
<測定手順・条件>
本実施例及び比較例では、約7000ÅのCu膜厚及び3000~3300Åの段差を有し、異なる配線幅を有する各パターンウエハ(絶縁膜:Si(OC膜)に対して、各研磨パッドを使用して、1回の研磨量が約1000Åになるように研磨レートを調整して研磨を実施し、段階的に研磨を行い、その都度ウエハの段差測定を実施した。段差測定は、パターンウエハ上の各配線幅の部分に対して行った。
図3の(a)のグラフはCu配線幅120μm及び絶縁膜の幅120μmの配線を研磨した場合、図3の(b)はCu配線幅100μm及び絶縁膜の幅100μmの配線を研磨した場合、図4の(c)はCu配線幅50μm及び絶縁膜の幅50μmの配線を研磨した場合、図4の(d)はCu配線幅10μm及び絶縁膜の幅10μmの配線を研磨した場合の結果を示す。配線幅の値が小さいほど配線が微細になっている。
【0069】
<研磨条件>
使用研磨機:F-REX300X(荏原製作所社製)
Disk:A188(3M社製)
研磨剤温度:20℃
研磨定盤回転数:90rpm
研磨ヘッド回転数:81rpm
研磨圧力:3.5psi
研磨スラリー:CSL-9044C(CSL-9044C原液:純水=重量比1:9の混合液を使用)(富士フィルムプラナーソリューションズ製)
研磨スラリー流量:200ml/min
研磨時間:60秒
被研磨物:(段差解消性能)上述の各パターンウエハ、(ディフェクト)Cu膜基板
パッドブレーク:32N 10分
コンディショニング:in-situ 18N 16スキャン、Ex-situ 35N 4スキャン
【0070】
(2)ディフェクト
各研磨パッドを、研磨装置の所定位置にアクリル系接着剤を有する両面テープを介して設置し、Cu膜基板(直径12インチの円盤)に対して、上述の(1)段差解消性能の<研磨条件>に示した条件にて研磨加工を施した。
研磨処理枚数が16枚目、26枚目、51枚目のCu膜基板を表面検査装置(KLAテンコール社製、Surfscan SP2XP)の高感度測定モードにて測定し、基板表面全体におけるマイクロスクラッチ(0.2μm以上10μm以下の微細打痕状のキズ)の個数を観察し、合計を求めた。評価結果を表3及び図5に示す。
マイクロスクラッチの数が5個以下であるとディフェクトが少なく良好であるといえる。
【0071】
【表2】
【0072】
*表2中の(a)~(d)は以下を示す。
(a):パターンウエハ上のCu配線幅120μm及び絶縁膜の幅120μmの配線部分の研磨
(b):パターンウエハ上のCu配線幅100μm及び絶縁膜の幅100μmの配線部分の研磨
(c):パターンウエハ上のCu配線幅50μm及び絶縁膜の幅50μmの配線部分の研磨
(d):パターンウエハ上のCu配線幅10μm及び絶縁膜の幅10μmの配線部分の研磨
【0073】
【表3】
【0074】
実施例1~11は、アミン系硬化剤及び上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤を含む硬化剤を使用して形成した研磨パッドに関する。一方、比較例1は、アミン系硬化剤のみを含む硬化剤を使用して形成した研磨パッドに関する。比較例2は、アミン系硬化剤及びポリテトラメチレンエーテルグリコール硬化剤を含む硬化剤を使用して形成した研磨パッドに関する。比較例3は、従来公知の研磨パッドに関する。
【0075】
上記(評価方法)(1)の段差解消性能の結果について、実施例1、7及び11の研磨パッドは、いずれも比較例1~3の研磨パッドに比べて、120μm・100μm・50μm・10μmのいずれの配線幅においても段差解消性能に優れていた。また、上記(評価方法)(2)のディフェクト性能の結果について、実施例1、7及び11の研磨パッドは、いずれもマイクロスクラッチの数が5個以下であるのに対し、比較例1~3の研磨パッドは、マイクロスクラッチの数が5個より大きくなった。したがって、実施例のパッドは、段差解消性能に優れ、ディフェクトの発生を抑制できることがわかった。
【0076】
以上より、アミン系硬化剤及び上述の式(I)で表されるポリエーテルポリカーボネートジオール硬化剤を含む硬化剤を使用して形成した研磨パッドは、研磨時のディッシングを抑制でき(段差解消性能に優れ)、また、ディフェクトの発生を抑制できる。
図1
図2
図3
図4
図5