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特開2023-50190アピキサバン含有口腔内崩壊錠、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050190
(43)【公開日】2023-04-10
(54)【発明の名称】アピキサバン含有口腔内崩壊錠、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4545 20060101AFI20230403BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20230403BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230403BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230403BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230403BHJP
【FI】
A61K31/4545
A61P7/02
A61K9/20
A61K47/38
A61K47/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156497
(22)【出願日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2021160131
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000209049
【氏名又は名称】沢井製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】隈元 信貴
(72)【発明者】
【氏名】生野 浩平
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC14
4C076EE13A
4C076EE32A
4C076FF06
4C076GG09
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB05
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA10
4C086ZA54
(57)【要約】
【課題】一実施形態において、アピキサバンの非晶質安定性を維持しながら、要求される崩壊性を備えたアピキサバン含有口腔内崩壊錠を提供する。または、一実施形態において、アピキサバンの非晶質安定性を維持しながら、要求される崩壊性を備えたアピキサバン含有口腔内崩壊錠の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【解決手段】本発明の一実施形態によると、アピキサバン含有口腔内崩壊錠は、医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーを担体として、非晶質のアピキサバンが分散したアピキサバン固体分散体を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーを担体として、非晶質のアピキサバンが分散したアピキサバン固体分散体を含む、アピキサバン含有口腔内崩壊錠。
【請求項2】
前記アピキサバン固体分散体に含まれる前記非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%以上、100重量%以下のヒプロメロースを前記担体とする、請求項1に記載のアピキサバン含有口腔内崩壊錠。
【請求項3】
前記アピキサバン固体分散体に含まれる前記非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%より多く、100重量%以下のヒドロキシプロピルセルロース又はアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを前記担体とする、請求項1に記載のアピキサバン含有口腔内崩壊錠。
【請求項4】
崩壊剤と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、をさらに含む、請求項1乃至3の何れか一に記載のアピキサバン含有口腔内崩壊錠。
【請求項5】
アピキサバンと、医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーと、を溶媒に溶解して溶液を調製し、
噴霧乾燥により、前記溶液から前記溶媒を除去して、前記医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は前記医薬的に許容されたアクリル系ポリマーを担体として、非晶質のアピキサバンが分散したアピキサバン固体分散体を得て、
前記アピキサバン固体分散体と、崩壊剤と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を混合して、打錠する、アピキサバン含有口腔内崩壊錠の製造方法。
【請求項6】
前記アピキサバン固体分散体に含まれる前記非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%以上、100重量%以下のヒプロメロースを前記担体として含むように、前記溶液を調製する、請求項5に記載のアピキサバン含有口腔内崩壊錠の製造方法。
【請求項7】
前記アピキサバン固体分散体に含まれる前記非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%より多く、100重量%以下のヒドロキシプロピルセルロース又はアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを前記担体として含むように、前記溶液を調製する、請求項5に記載のアピキサバン含有口腔内崩壊錠の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、アピキサバン固体分散体を含む口腔内崩壊錠に関する。または、本発明の一実施形態は、アピキサバン固体分散体を含む口腔内崩壊錠の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アピキサバン(1-(4-Methoxyphenyl)-7-oxo-6-[4-(2-oxopiperidin-1-yl)phenyl]-4,5,6,7-tetrahydro-1H-pyrazolo [3,4-c]pyridine-3-carboxamide)は、血液凝固活性化第X因子(FXa)を可逆的に阻害する経口抗凝固薬であり、血栓塞栓性疾患の治療に有効である(特許文献1)。アピキサバンは難溶性薬物であるため、特許文献1においては、非晶質のアピキサバンと、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択されるポリマーとを含む固体非晶質分散物を用いることで、アピキサバンの溶解性を改善している。しかし、特許文献1においては、アピキサバン含有製剤からのアピキサバンの放出制御を課題としており、アピキサバン非晶質の安定性についての記載はなく、製剤中でアピキサバンが非晶質形態で維持されているかについては一切の検討がなされていない。
【0003】
また、服用性向上等の目的から、アピキサバン含有製剤を高齢者や嚥下困難な患者等に飲みやすい剤形である口腔内崩壊錠とすることが望まれている。アピキサバン含有製剤を口腔内崩壊錠とする場合、優れた崩壊性が要求されるが、アピキサバン含有口腔内崩壊錠における崩壊性の検討結果はこれまでに報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5775071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の記載から、アピキサバンは難溶性薬物であり、アピキサバン固体分散体を用いることにより、アピキサバンの溶解性の改善が見込まれる。一方で、本発明者らが検討した結果、アピキサバンは非晶質形態では安定性が低く、固体分散体中であっても結晶化しやすいことが明らかとなったため、アピキサバン固体分散体又はそれを含む製剤における、アピキサバンの非晶質安定性を向上させる必要がある。
【0006】
さらに、アピキサバン含有口腔内崩壊錠を実現するためには、製剤中でアピキサバンを非晶質形態で安定的に維持しながら、優れた崩壊性を有するアピキサバン含有口腔内崩壊錠を提供する必要がある。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するものであって、製剤中でのアピキサバンの非晶質安定性を維持しながら、要求される崩壊性を備えたアピキサバン含有口腔内崩壊錠を提供することを目的の一つとする。または、一実施形態において、製剤中でのアピキサバンの非晶質安定性を維持しながら、要求される崩壊性を備えたアピキサバン含有口腔内崩壊錠の製造方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によると、医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーを担体として、非晶質のアピキサバンが分散したアピキサバン固体分散体を含む、口腔内崩壊錠が提供される。
【0009】
アピキサバン固体分散体に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%以上、100重量%以下のヒプロメロースを前記担体としてもよい。
【0010】
前記アピキサバン固体分散体に含まれる前記非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%より多く、100重量%以下のヒドロキシプロピルセルロース又はアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを前記担体としてもよい。
【0011】
崩壊剤と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、をさらに含んでもよい。
【0012】
本発明の一実施形態によると、アピキサバンと、医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーと、を溶媒に溶解して溶液を調製し、噴霧乾燥により、溶液から溶媒を除去して、前記医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーを担体として、非晶質のアピキサバンが分散したアピキサバン固体分散体を得て、アピキサバン固体分散体と、崩壊剤と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を混合して、打錠する、アピキサバン含有口腔内崩壊錠の製造方法が提供される。
【0013】
アピキサバン固体分散体に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%以上、100重量%以下のヒプロメロースを担体として含むように、溶液を調製してもよい。
【0014】
前記アピキサバン固体分散体に含まれる前記非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%より多く、100重量%以下のヒドロキシプロピルセルロース又はアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを前記担体として含むように、溶液を調製してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態によると、アピキサバンの非晶質安定性を維持しながら、要求される崩壊性を備えたアピキサバン含有口腔内崩壊錠が提供される。または、本発明の一実施形態によると、アピキサバンの非晶質安定性を維持しながら、要求される崩壊性を備えたアピキサバン含有口腔内崩壊錠の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るアピキサバン含有口腔内崩壊錠及びその製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明のアピキサバン含有口腔内崩壊錠及びその製造方法は、以下に示す実施形態及び実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0017】
本発明者らが検討した結果、固体分散体の担体とするポリマーは結合剤としての機能も有することから、製剤中のポリマーの含有量が崩壊時間の遅延につながることが明らかとなった。したがって、優れた崩壊性を有するアピキサバン含有口腔内崩壊錠を提供するためには、アピキサバン含有口腔内崩壊錠における、ポリマーの種類やその含有量について検討する必要がある。
【0018】
本発明に係るアピキサバン含有口腔内崩壊錠は、アピキサバン固体分散体を含む。一実施形態において、アピキサバン固体分散体は、非晶質のアピキサバンと、担体として医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーと、を含む。一実施形態において、アピキサバン固体分散体は、医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーを担体として、非晶質の状態のアピキサバンが分散した医薬組成物粒子である。
【0019】
一実施形態において、本発明に係るアピキサバン固体分散体は、非晶質のアピキサバンと、担体である医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーと、からなる医薬組成物粒子である。本実施形態に係るアピキサバン固体分散体においては、担体である医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマー中に、非晶質のアピキサバンが分散していることにより、アピキサバンの非晶質状態を維持することができる。
【0020】
本実施形態に係るアピキサバン固体分散体が担体として含む医薬的に許容されたセルロース系ポリマーは、アピキサバン固体分散体においてアピキサバンの非晶質状態を維持することが可能なポリマーであれば、特には限定されない。セルロース系ポリマーとして、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、及びヒプロメロース酢酸エステルコハク酸エステルから選択される1つ以上のポリマーを担体として含むことができる。
【0021】
本実施形態に係るアピキサバン固体分散体が担体として含む医薬的に許容されたアクリル系ポリマーは、アピキサバン固体分散体においてアピキサバンの非晶質状態を維持することが可能なポリマーであれば、特には限定されない。アクリル系ポリマーとして、例えば、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD、メタクリル酸コポリマーS、及びアンモニオアルキルメタクリレートコポリマーから選択される1つ以上のポリマーを担体として含むことができる。
【0022】
一般に、固体分散体の担体としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、メタアクリル酸共重合体、セルロース誘導体等のポリマー、尿素や糖等の低分子も固体分散体の担体として用いられる。しかし、固体分散体の担体として用いるポリマーや低分子の種類によって、アピキサバンの非晶質状態を維持することができるか否かが大きく変わる。このため、アピキサバンの非晶質状態を維持することができる担体を選択するのは、容易ではない。さらに、口腔内崩壊錠の速やかな崩壊性を得るために、アピキサバン固体分散体に含まれる担体を最適化することは、非常に困難である。
【0023】
一実施形態において、アピキサバン固体分散体に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%より多く、100重量%以下の医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーがアピキサバン固体分散体に担体として含まれる。また、一実施形態において、アピキサバン固体分散体に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して、医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーが50重量%以下の範囲で含まれてもよい。また、一実施形態において、アピキサバン固体分散体に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%以上、100重量%以下のヒプロメロースがアピキサバン固体分散体に担体として含まれる。
【0024】
アピキサバン固体分散体に担体として含まれる医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーが、非晶質のアピキサバンに対して、10重量%より少ない場合、アピキサバンの非晶質状態を維持することが困難である。また、アピキサバン固体分散体に担体として含まれる医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーが、非晶質のアピキサバンの重量に対して100重量%を超えても、アピキサバンの非晶質状態は維持される。
【0025】
一方で、速やかな崩壊性が要求される口腔内崩壊錠では、結合剤としての機能も有するポリマーの含有量が多いと崩壊時間の遅延につながる。したがって、アピキサバン固体分散体に担体として含まれる医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーが、非晶質のアピキサバンの重量に対して100重量%を超えると、アピキサバン固体分散体を口腔内崩壊錠に用いた際に、速やかな崩壊性を得ることができない。
【0026】
[口腔内崩壊錠]
本発明に係るアピキサバン含有口腔内崩壊錠は、上述したアピキサバン固体分散体に加えて、崩壊剤と、医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、をさらに含む。アピキサバン含有口腔内崩壊錠は、1錠あたり非晶質のアピキサバンを2.5mg又は5mg含むが、これらに限定されず、必要に応じて処方を変更することも可能である。
【0027】
アピキサバン含有口腔内崩壊錠が含む医薬的に許容される添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、矯味剤、滑沢剤及び香料等が挙げられる。これらの添加剤から、1つ以上を選択してアピキサバン含有口腔内崩壊錠を構成することができるが、口腔内で崩壊する特性を付与するために、賦形剤及び崩壊剤を含むことが好ましい。また、これらの添加剤の2種以上を組み合わせて事前に混合した添加剤を含んでもよい。
【0028】
賦形剤は、例えば、糖類、糖アルコール類、デンプン類、セルロース類、カルメロース類、アラビアゴム、デキストラン、プルラン、ケイ酸塩類、リン酸塩、炭酸塩及び硫酸塩等から選択することができる。糖類としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、トレハロース、マルトース等が挙げられる。糖アルコール類としては、マンニトール、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、イソマルト等が挙げられる。また、デンプン類としては、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファー化デンプン、部分アルファー化デンプン、デキストリン等が挙げられる。セルロース類としては、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。カルメロース類としては、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。ケイ酸塩類としては、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等が挙げられる。リン酸塩としては、リン酸水素カルシウム等が挙げられる。炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。硫酸塩としては、硫酸カルシウム等が挙げられる。これらの賦形剤は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】
結合剤は、例えば、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、エチルセルロース及びメチルセルロースなどのセルロース類、ポビドン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルアルコール完全けん化物、ポリビニルアルコール部分けん化物、カルボキシビニルポリマー、ポリ塩化ビニルなどのビニル系高分子物質、アミノアルキルメタクリレートコポリマー(E、RS)、メタクリル酸コポリマー(L、S、LD)、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液などのアクリル系高分子物質、ステアリルアルコール、ゼラチン、デキストリン、アラビアゴム、プルラン、マクロゴール、デンプン等から選択することができる。
【0030】
崩壊剤は、例えば、カルメロース、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム及びメチルセルロースなどのセルロース類、部分アルファー化デンプン及びトウモロコシデンプンなどのデンプン類、クロスポビドン等から選択することができる。
【0031】
安定化剤は、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アルギニン、エデト酸ナトリウム、無水クエン酸、クエン酸水和物、クエン酸ナトリウム水和物、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、ステアリン酸、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム等から選択することができる。
【0032】
矯味剤は、例えば、アスコルビン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アスパルテーム、カラメル、還元麦芽糖水アメ、グリチルリチン酸、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクラロース、ステビア抽出精製物、精製白糖、メントール等から選択することができる。
【0033】
滑沢剤は、例えば、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ロイシン等から選択することができる。
【0034】
本実施形態に係るアピキサバン含有口腔内崩壊錠は、アピキサバン固体分散体を構成する医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーが、アピキサバンの非晶質状態を維持することができる。アピキサバン固体分散体に担体として含まれる医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーが、非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%より少ない場合、アピキサバンの非晶質状態を維持することが困難である。また、アピキサバン固体分散体に担体として含まれる医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーが、非晶質のアピキサバンの重量に対して100重量%を超えても、アピキサバンの非晶質状態は維持される。
【0035】
一方で、速やかな崩壊性が要求される口腔内崩壊錠では、結合剤としての機能も有するポリマーの含有量が多いと崩壊時間の遅延につながる。したがって、アピキサバン固体分散体に担体として含まれる医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーが、非晶質のアピキサバンの重量に対して100重量%を超えると、アピキサバン固体分散体を口腔内崩壊錠に用いた際に、速やかな崩壊性を得ることができない。
【0036】
[アピキサバン固体分散体の製造方法]
本実施形態に係るアピキサバン固体分散体は、スプレードライ法により製造された噴霧乾燥物である。例えば、アピキサバンと、上述した医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーと、を溶媒に溶解して溶液を調製する。本実施形態においては、アピキサバン固体分散体の非晶質が維持されれば、アピキサバン固体分散体を製造するための原料として用いるアピキサバンは、非晶質のアピキサバンであってもよく、アピキサバン結晶であってもよい。溶媒としては医薬的に許容される溶媒から、アピキサバンと、医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーと、を溶解可能な溶媒を選択することができる。アピキサバンが難溶性薬物であることから、例えば、ジクロロメタンとエタノールの混合溶媒(混合比4:1)を用いることができる。
【0037】
一実施形態において、アピキサバン固体分散体に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%以上、100重量%以下の医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーを担体として含むように、溶液を調製する。
【0038】
スプレードライヤーを用いて、噴霧乾燥により、溶液から溶媒を除去する。これにより、非晶質のアピキサバンと、医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーを担体として含む粒子を得ることができる。
【0039】
[アピキサバン含有口腔内崩壊錠の製造方法]
本実施形態に係るアピキサバン含有口腔内崩壊錠は、アピキサバン固体分散体と、崩壊剤と、上述した医薬的に許容される1つ以上の添加剤と、を混合し、得られた混合物を打錠することにより製造することができる。また、添加剤の2種以上を組み合わせて事前に混合した添加剤を用いてもよい。
【0040】
本実施形態においては、アピキサバン固体分散体をスプレードライ法により製造することにより、アピキサバンを非晶質状態に維持することができる。また、アピキサバン固体分散体に含まれる非晶質のアピキサバンの重量に対して、10重量%以上、100重量%以下の医薬的に許容されたセルロース系ポリマー又は医薬的に許容されたアクリル系ポリマーを担体としてアピキサバン固体分散体に含むことにより、アピキサバン含有口腔内崩壊錠において、アピキサバンの非晶質状態を維持するとともに、速やかな崩壊性を得ることができる。
【0041】
[非晶質の評価]
アピキサバンの非晶質状態は、粉末X線回折測定法にて評価することができる。本明細書において、「非晶質」とは、粉末X線回折測定法により得られた回折パターンにおいて、結晶成分に由来するピークが検出されないことを意味する。「ピークが検出されない」とは、回折パターンにおいて、ベースラインに対してブロードなハローパターンが観察され、結晶成分に由来する顕著なピークが観察されないことを意味する。
【0042】
[崩壊性の評価]
本明細書において、アピキサバン含有口腔内崩壊錠の崩壊性は、被験者2名による官能試験により崩壊時間を測定し、その平均値をそれぞれの口腔内崩壊錠の崩壊時間とすることにより評価するものとする。
【実施例0043】
[固体分散体の担体の検討]
アピキサバン固体分散体に用いる担体を検討した。
【0044】
[実施例1]
担体として、ヒドロキシプロピルセルロースを用いた。アピキサバン結晶 15gと、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL、日本曹達株式会社) 15gをジクロロメタン/エタノール混合液(混合比4:1) 530gに溶解させた。得られた溶液をスプレードライヤー(ミニスプレードライヤー B-290、BUCHI)で噴霧乾燥し、溶媒を除去して、実施例1のアピキサバン固体分散体の粒子を得た。
【0045】
[実施例2]
担体をヒプロメロース(TC-5(登録商標)E、信越化学工業株式会社)に変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、実施例2のアピキサバン固体分散体を得た。
【0046】
[実施例3]
担体をアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(EUDRAGIT(登録商標)EPO、Evonik Roehm)に変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、実施例3のアピキサバン固体分散体を得た。
【0047】
[比較例1]
担体をポリビニルピロリドン(K-30、第一工業製薬株式会社)に変更したこと以外は、実施例1と同様の製造方法により、比較例1のアピキサバン固体分散体を得た。
【0048】
[参考例1]
ポリマーとして、ヒドロキシプロピルセルロースを用いた。非晶質のアピキサバン 1gと、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL、日本曹達株式会社) 1gをビニール袋内で混合して、参考例1の混合物を得た。
【0049】
[参考例2]
ポリマーをヒプロメロース(TC-5(登録商標)E、信越化学工業株式会社)に変更したこと以外は、参考例1と同様の製造方法により、参考例2の混合物を得た。
【0050】
[参考例3]
ポリマーをアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(EUDRAGIT(登録商標)EPO、Evonik Roehm)に変更したこと以外は、参考例1と同様の製造方法により、参考例3の混合物を得た。
【0051】
[非晶質の評価]
粉末X線回折測定法にて、実施例1~3、比較例1のアピキサバン固体分散体及び参考例1~3の混合物が非晶質状態であることを確認した。それぞれ25℃、相対湿度75%の開放条件下で1ヶ月間保存し、粉末X線回折測定法にて、非晶質状態を確認した。測定には、粉末X線回折装置Bruker D8 ADVANCEを用い、Cu-Ka線、管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲:2θ=10.0~25.0°、スキャンスピード:1sec/step、ステップサイズ:0.015°の条件により測定した。
【0052】
非晶質状態の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0053】
表1の結果より、セルロース系ポリマー又はアクリル系ポリマーを担体とした実施例1~3のアピキサバン固体分散体は、1ヶ月の保存後においてもアピキサバンが非晶質状態を維持することが示された。一方、ポリビニルピロリドンを担体とした比較例1のアピキサバン固体分散体は、1ヶ月の保存後においてはアピキサバンが非晶質状態を維持することができないことが明らかとなった。また、参考例1~3の結果より、セルロース系ポリマー又はアクリル系ポリマーを含むだけでは、アピキサバンの非晶質状態を維持することはできず、固体分散体にする必要があることが明らかとなった。
【0054】
上記の実施例1~3及び比較例1のアピキサバン固体分散体を用いて、口腔内崩壊錠を製造した。
【0055】
[実施例4]
実施例1のアピキサバン固体分散体 5g、ラウリル硫酸ナトリウム(エマールOS、花王株式会社) 1g、D-マンニトール(グラニュトールF、フロイント産業株式会社) 7.5g、D-マンニトール(マンニット-P、三菱商事ライフサイエンス株式会社) 69.255g、結晶セルロース(CEOLUS(登録商標)PH-101、旭化成株式会社) 8.55g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC(登録商標)NBD-022、信越化学工業株式会社) 4.275g、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-F、BASFジャパン) 1.71g、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-M、BASFジャパン) 1.71g、及びステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業株式会社) 1gをビニール袋中で混合し、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所)にて打錠し、100mgの実施例4のアピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0056】
[実施例5]
実施例2のアピキサバン固体分散体を用いたこと以外は、実施例4と同様の製造方法により、実施例5のアピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0057】
[実施例6]
実施例3のアピキサバン固体分散体を用いたこと以外は、実施例4と同様の製造方法により、実施例6のアピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0058】
[比較例2]
比較例1のアピキサバン固体分散体を用いたこと以外は、実施例4と同様の製造方法により、比較例2のアピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0059】
[非晶質の評価]
粉末X線回折測定法にて、実施例4~6及び比較例2のアピキサバン含有口腔内崩壊錠が非晶質状態であることを確認した。それぞれ25℃、相対湿度75%の開放条件下で1ヶ月間保存し、粉末X線回折測定法にて、非晶質状態を確認した。測定には、粉末X線回折装置Bruker D8 ADVANCEを用い、Cu-Ka線、管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲:2θ=10.0~25.0°、スキャンスピード:1sec/step、ステップサイズ:0.015°の条件により測定した。
【0060】
[口腔内崩壊錠の崩壊性の評価]
実施例4~6のアピキサバン含有口腔内崩壊錠について、崩壊性を評価した。崩壊性は、被験者2名による官能試験により崩壊時間を測定し、その平均値をそれぞれの口腔内崩壊錠の崩壊時間とした。なお、比較例2の口腔内崩壊錠については、1ヶ月保存後にアピキサバンが結晶化したため、口腔内崩壊時間の測定は行っていない。
【0061】
非晶質状態の評価結果及び口腔内崩壊錠の崩壊性の評価結果を表2に示す。
【表2】
【0062】
表2の結果より、固体分散体の状態で非晶質を維持することができるセルロース系ポリマー又はアクリル系ポリマーを担体とするアピキサバン固体分散体を含む実施例4~6のアピキサバン含有口腔内崩壊錠は、1ヶ月の保存後においてもアピキサバンが非晶質状態を維持することが示された。一方、固体分散体の状態で非晶質を維持することができないポリビニルピロリドンを担体とするアピキサバン固体分散体を含む比較例2のアピキサバン含有口腔内崩壊錠は、1ヶ月の保存後においてはアピキサバンが非晶質状態を維持することができないことが明らかとなった。
【0063】
また、表2の結果より、固体分散体の状態で非晶質を維持することができるセルロース系ポリマー又はアクリル系ポリマーを担体とするアピキサバン固体分散体を含む実施例4~6のアピキサバン含有口腔内崩壊錠は、60秒以内の速やかな崩壊性を示すことが明らかとなった。
【0064】
[固体分散体の担体の含有量の検討]
実施例1~3のアピキサバン固体分散体においては、非晶質のアピキサバンの重量に対して、100重量%の担体を添加した。担体の含有量による非晶質の維持への影響について検討した。
【0065】
[実施例7]
実施例7においては、非晶質のアピキサバンの重量に対して、担体の含有量を50重量%となるように調製した。担体として、ヒドロキシプロピルセルロースを用いた。アピキサバン結晶 20gと、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL、日本曹達株式会社) 10gをジクロロメタン/エタノール混合液(混合比4:1) 705gに溶解させた。得られた溶液をスプレードライヤー(ミニスプレードライヤー B-290、BUCHI)で噴霧乾燥し、溶媒を除去して、実施例7のアピキサバン固体分散体の粒子を得た。
【0066】
[実施例8]
担体をヒプロメロース(TC-5(登録商標)E、信越化学工業株式会社)に変更したこと以外は、実施例7と同様の製造方法により、実施例8のアピキサバン固体分散体を得た。
【0067】
[実施例9]
担体をアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(EUDRAGIT(登録商標)EPO、Evonik Roehm)に変更したこと以外は、実施例7と同様の製造方法により、実施例9のアピキサバン固体分散体を得た。
【0068】
[比較例3]
比較例3においては、非晶質のアピキサバンの重量に対して、担体の含有量を10重量%となるように調製した。担体として、ヒドロキシプロピルセルロースを用いた。アピキサバン結晶 22gと、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SSL、日本曹達株式会社) 2.2gをジクロロメタン/エタノール混合液(混合比4:1) 774.2gに溶解させた。得られた溶液をスプレードライヤー(ミニスプレードライヤー B-290、BUCHI)で噴霧乾燥し、溶媒を除去して、比較例3のアピキサバン固体分散体の粒子を得た。
【0069】
[実施例10]
担体をヒプロメロース(TC-5(登録商標)E、信越化学工業株式会社)に変更したこと以外は、比較例3と同様の製造方法により、実施例10のアピキサバン固体分散体を得た。
【0070】
[比較例4]
担体をアミノアルキルメタクリレートコポリマーE(EUDRAGIT(登録商標)EPO、Evonik Roehm)に変更したこと以外は、比較例3と同様の製造方法により、比較例4のアピキサバン固体分散体を得た。
【0071】
[非晶質の評価]
粉末X線回折測定法にて、実施例7~10及び比較例3~4のアピキサバン固体分散体が非晶質状態であることを確認した。それぞれ25℃、相対湿度75%の開放条件下で1ヶ月間保存し、粉末X線回折測定法にて、非晶質状態を確認した。測定には、粉末X線回折装置Bruker D8 ADVANCEを用い、Cu-Ka線、管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲:2θ=10.0~25.0°、スキャンスピード:1sec/step、ステップサイズ:0.015°の条件により測定した。
【0072】
非晶質状態の評価結果を表3に示す。
【表3】
【0073】
表3の結果より、非晶質のアピキサバンに対して50重量%のセルロース系ポリマー又はアクリル系ポリマーを担体として含む実施例7~9のアピキサバン固体分散体は、1ヶ月の保存後においてもアピキサバンが非晶質状態を維持することが示された。また、非晶質のアピキサバンに対して10重量%のヒプロメロースを担体として含む実施例10のアピキサバン固体分散体は、1ヶ月の保存後においてもアピキサバンが非晶質状態を維持することが示された。一方、非晶質のアピキサバンに対して10重量%のセルロース系ポリマー又はアクリル系ポリマーを担体として含むアピキサバン固体分散体であっても、ヒドロキシプロピルセルロースを含む比較例3及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを含む比較例4のアピキサバン固体分散体は、1ヶ月の保存後においてはアピキサバンが非晶質状態を維持することができないことが明らかとなった。
【0074】
上記の実施例7~10及び比較例3~4のアピキサバン固体分散体を用いて、口腔内崩壊錠を製造した。
【0075】
[実施例11]
実施例7のアピキサバン固体分散体 1.88g、ラウリル硫酸ナトリウム(エマールOS、花王株式会社) 0.5g、D-マンニトール(グラニュトールF、フロイント産業株式会社) 4.375g、D-マンニトール(マンニット-P、三菱商事ライフサイエンス株式会社) 34.6275g、結晶セルロース(CEOLUS(登録商標)PH-101、旭化成株式会社) 4.275g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC(登録商標)NBD-022、信越化学工業株式会社) 2.1375g、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-F、BASFジャパン) 0.855g、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-M、BASFジャパン) 0.855g、及びステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業株式会社) 0.5gをビニール袋中で混合し、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所)にて打錠し、100mgの実施例11のアピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0076】
[実施例12]
実施例8のアピキサバン固体分散体を用いたこと以外は、実施例11と同様の製造方法により、実施例12のアピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0077】
[実施例13]
実施例9のアピキサバン固体分散体を用いたこと以外は、実施例11と同様の製造方法により、実施例13のアピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0078】
[比較例5]
比較例3のアピキサバン固体分散体 1.38g、ラウリル硫酸ナトリウム(エマールOS、花王株式会社) 0.5g、D-マンニトール(グラニュトールF、フロイント産業株式会社) 4.875g、D-マンニトール(マンニット-P、三菱商事ライフサイエンス株式会社) 34.6275g、結晶セルロース(CEOLUS(登録商標)PH-101、旭化成株式会社) 4.275g、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC(登録商標)NBD-022、信越化学工業株式会社) 2.1375g、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-F、BASFジャパン) 0.855g、クロスポビドン(Kollidon(登録商標)CL-M、BASFジャパン) 0.855g、及びステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業株式会社) 0.5gをビニール袋中で混合し、ロータリー式打錠機(株式会社菊水製作所)にて打錠し、100mgの比較例5のアピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0079】
[実施例14]
実施例10のアピキサバン固体分散体を用いたこと以外は、比較例5と同様の製造方法により、実施例14のアピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0080】
[比較例6]
比較例4のアピキサバン固体分散体を用いたこと以外は、比較例5と同様の製造方法により、比較例6のアピキサバン含有口腔内崩壊錠を得た。
【0081】
[非晶質の評価]
粉末X線回折測定法にて、実施例11~14及び比較例5~6のアピキサバン含有口腔内崩壊錠が非晶質状態であることを確認した。それぞれ25℃、相対湿度75%の開放条件下で1ヶ月間保存し、粉末X線回折測定法にて、非晶質状態を確認した。測定には、粉末X線回折装置Bruker D8 ADVANCEを用い、Cu-Ka線、管電圧40kV、管電流40mA、測定範囲:2θ=10.0~25.0°、スキャンスピード:1sec/step、ステップサイズ:0.015°の条件により測定した。
【0082】
[口腔内崩壊錠の崩壊性の評価]
実施例11~14のアピキサバン含有口腔内崩壊錠について、崩壊性を評価した。評価方法は上述したとおりである。なお、比較例5~6の口腔内崩壊錠については、1ヶ月保存後にアピキサバンが結晶化したため、口腔内崩壊時間の測定は行っていない。
【0083】
非晶質状態の評価結果及び口腔内崩壊錠の崩壊性の評価結果を表4に示す。
【表4】
【0084】
表4の結果より、非晶質のアピキサバンの重量に対して50重量%のセルロース系ポリマー又はアクリル系ポリマーを担体として含むアピキサバン固体分散体を用いた実施例11~13のアピキサバン含有口腔内崩壊錠は、1ヶ月の保存後においてもアピキサバンが非晶質状態を維持することが示された。また、非晶質のアピキサバンに対して10重量%のヒプロメロースを担体として含むアピキサバン固体分散体を用いた実施例14のアピキサバン含有口腔内崩壊錠は、1ヶ月の保存後においてもアピキサバンが非晶質状態を維持することが示された。一方、非晶質のアピキサバンの重量に対して10重量%のセルロース系ポリマー又はアクリル系ポリマーを担体として含むアピキサバン固体分散体を用いたアピキサバン含有口腔内崩壊錠であっても、ヒドロキシプロピルセルロースを含む比較例5及びアミノアルキルメタクリレートコポリマーEを含む比較例6のアピキサバン含有口腔内崩壊錠は、1ヶ月の保存後においてはアピキサバンが非晶質状態を維持することができないことが明らかとなった。
【0085】
また、表4の結果より、固体分散体の状態で非晶質を維持することができるセルロース系ポリマー又はアクリル系ポリマーを担体とするアピキサバン固体分散体を含む実施例11~14のアピキサバン含有口腔内崩壊錠は、60秒以内の速やかな崩壊性を示すことが明らかとなった。なお、表2との対比から、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒプロメロースを用いたアピキサバン含有口腔内崩壊錠では、非晶質のアピキサバンの重量に対して100重量%を超えると、崩壊時間が長くなり、速やかな崩壊性を示さないことが明らかである。