(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050210
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】積層フィルム
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20230404BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20230404BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B27/20 Z
B32B27/32 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160203
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】逸崎 淳平
(72)【発明者】
【氏名】穴田 有弘
(72)【発明者】
【氏名】竹田 裕孝
【テーマコード(参考)】
4F100
5E321
【Fターム(参考)】
4F100AB02A
4F100AB10A
4F100AB15A
4F100AB16A
4F100AB17A
4F100AB24A
4F100AB31A
4F100AK03C
4F100AK42B
4F100AK52A
4F100AL07C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA02A
4F100CA23A
4F100DG01A
4F100GB41
4F100JA06
4F100JB13A
4F100JG01A
4F100JK06C
4F100YY00A
5E321AA23
5E321BB23
5E321BB34
5E321BB53
5E321GG05
(57)【要約】
【課題】半導体モールド成型工程時に、成型性や電界シールド性に優れた電界シールド層を、半導体部品へ転写することに適した積層フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルムと電界シールド層とを含む積層フィルムであって、電界シールド層が、アスペクト比(長軸/短軸)が10以上であるフィラーとバインダー樹脂とを含み、基材フィルムの厚みが10μm以上であり、基材フィルムと電界シールド層の厚み比(電界シールド層/基材フィルム)が0.04~2であることを特徴とする積層フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと電界シールド層とを含む積層フィルムあって、
電界シールド層が、アスペクト比(長軸/短軸)が10以上であるフィラーとバインダー樹脂とを含み、
基材フィルムの厚みが10μm以上であり、
基材フィルムと電界シールド層の厚み比(電界シールド層/基材フィルム)が0.04~2であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
電界シールド層におけるフィラーの含有量が50質量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
基材フィルムと電界シールド層との間に中間層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
層間密着強度が0.02~4.00N/cmである層間を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
中間層が、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤とを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
フィラーが、ナノ繊維状であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項7】
フィラーが、金属を含むことを特徴とする請求1~6のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項8】
フィラーを構成する金属が、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト、およびこれらの元素を含む合金から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項7に記載の積層フィルム。
【請求項9】
バインダー樹脂が、熱硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項10】
電界シールド層の表面抵抗率が103Ω/sq以下であることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項11】
電子部品の製造方法であって、
素子を封止するモールド材と電界シールド層とが接するように、請求項1~10のいずれかに記載の積層フィルムを金型に配する工程と、電界シールド層を基材フィルムから剥離し、モールド材表面に転写する工程を有することを特徴する電子部品の製造方法。
【請求項12】
素子が、半導体または半導体を含むモジュールであることを特徴とする請求項11に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は積層フィルムに関し、特に、樹脂モールド型半導体部品の製造に好適に使用できる積層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の誤作動等を抑制するEMC(電磁両立性)対策は、製品レベルで施されるものであった。しかし、電子機器の小型化、高速化、低消費電力化、さらにはSiPなどの半導体部品の高集積化や5Gなどの通信、自動運転技術のセンシングにミリ波帯の高周波が利用されることなどにより、製品内部および各部品内部での自家中毒による信号感度の低下や誤作動が起きている。そのため、EMC対策に伴う基板の再設計や、製品レベルでの対策を繰り返すことを余儀なくされ、電子機器の開発費や製造コストのコストアップにつながることが問題視されている。前記コストアップの抑制方法として、実装基板レベルや半導体部品レベルからEMC対策を施し、ノイズ発生源からの対策が進められている。なかでも、ノイズによる誤作動が人命に関わる自動車、医療などの業界で使われる電子機器においては、半導体部品レベルでのEMC対策、評価が特に必要とされている。
【0003】
半導体部品レベルでのEMC対策としては、メタルケースや、特許文献1に開示されたようなスパッタリングによる導電体で、半導体部品を覆う方法が知られている。しかし、メタルケースで覆う方法は、半導体部品を隙間無く覆うことが難しく、半導体部品の小型化、薄型化、複雑形状への対応が困難である。また、スパッタリングによる導電体で覆う方法は、半導体部品の小型化、薄型化、複雑形状への対応には優れているが、メタルケースと比較し製造コストが3倍以上に膨らむ問題があった。そこで、特許文献2には、半導体のモールド成型用離型フィルムに電磁波遮蔽材料を蒸着法などで設けておき、成形時に電磁波遮蔽材料をモールド材表面に転写するプロセスが開示されている。また、特許文献3には、基材層とノイズ抑制層とを有する電磁波シールド用フィルムが開示され、粒子状の導電材料とバインダー樹脂を含有するノイズ抑制層を、半導体封止後に被覆する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-290217号公報
【特許文献2】特開2016-201573号公報
【特許文献3】国際公開第2019/044512号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2において電磁波遮蔽材料として用いられている金属層は、金属特有の疲労現象により屈曲等に対して脆弱であるという場合があった。また、特許文献3では、粒子状の導電材料とバインダー樹脂で構成されているノイズ抑制層は、成形時に屈曲部で粒子間隔が広がり、導電性の低下、すなわち電磁波シールド性が低下する場合があった。また、半導体封止後にノイズ抑制層を被覆するために、真空圧空成形やプレス成形などを行う工程が増えるため、生産性向上について改善の余地があった。
本発明の課題は、半導体モールド成型工程時に、成型性や電界シールド性に優れた電界シールド層を、半導体部品へ転写することに適した積層フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、基材フィルムと電界シールド層とを含む積層フィルムにおいて、電界シールド層が特定形状のフィラーを含み、基材フィルムと電界シールド層が特定の厚みであると、上記課題を解決することを見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)基材フィルムと電界シールド層とを含む積層フィルムであって、
電界シールド層が、アスペクト比(長軸/短軸)が10以上であるフィラーとバインダー樹脂とを含み、
基材フィルムの厚みが10μm以上であり、
基材フィルムと電界シールド層の厚み比(電界シールド層/基材フィルム)が0.04~2であることを特徴とする積層フィルム。
(2)電界シールド層におけるフィラーの含有量が50質量%以上であることを特徴とする(1)に記載の積層フィルム。
(3)基材フィルムと電界シールド層との間に中間層を有することを特徴とする(1)または(2)に記載の積層フィルム。
(4)層間密着強度が0.02~4.00N/cmである層間を含むことを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の積層フィルム。
(5)中間層が、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤とを含むことを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の積層フィルム。
(6)フィラーが、ナノ繊維状であることを特徴とする(1)~(5)のいずれかに記載の積層フィルム。
(7)フィラーが、金属を含むことを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の積層フィルム。
(8)フィラーを構成する金属が、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト、およびこれらの元素を含む合金から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする(7)に記載の積層フィルム。
(9)バインダー樹脂が、熱硬化性樹脂であることを特徴とする(1)~(8)のいずれかに記載の積層フィルム。
(10)電界シールド層の表面抵抗率が103Ω/sq以下であることを特徴とする(1)~(9)のいずれかに記載の積層フィルム。
(11)電子部品の製造方法であって、
素子を封止するモールド材と電界シールド層が接するように(1)~(10)のいずれかに記載の積層フィルムを金型に配する工程と、電界シールド層を積層フィルムから剥離し、モールド材表面に転写する工程を有することを特徴とする電子部品の製造方法。
(12)素子が、半導体または半導体を含むモジュールであることを特徴とする(11)に記載の電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層フィルムは、屈曲や絞りなどの成型性と電界シールド性に優れていることから、半導体部品の製造工程において、金型面側に基材フィルムを配置し、モールド材側に電界シールド層を配置して使用することにより、電界シールド層がモールド材表面に転写した半導体モールドを製造することができる。本発明の積層フィルムは、半導体パッケージを一括に、かつ、簡便に製造することができ、転写された電界シールド層は、優れた電界シールド性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層フィルムは、基材フィルムと電界シールド層とを含む積層フィルムである。
【0010】
<基材フィルム>
本発明において、基材フィルムを構成する樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド6、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド4T、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリイミド、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エチレン・テトラフルオロエチレン系共重合体などが挙げられる。基材フィルムは、複数の樹脂から構成されてもよく、またアロイの状態でもよい。基材フィルムは、単層でも、複層でもよく、複層フィルムの場合、同種樹脂からなるフィルムで構成されてもよく、また、例えば、ポリアミド6/MXD6ナイロン/ポリアミド6、ポリアミド6/エチレン-ビニルアルコール共重合体/ポリアミド6などの異種樹脂からなるフィルムで構成されてもよい。
【0011】
なかでも、耐熱性と成型性、コストの観点から、基材フィルムは、半導体パッケージのモールド工程で使用される金型設定温度(たとえば170℃)以上に融点を2点以上有する延伸ポリエステルフィルムであることが好ましく、それぞれ融点が金型設定温度以上である2種類以上のポリエステル樹脂が混合されているフィルムであることがより好ましい。基材フィルムは、それぞれ融点が金型設定温度以上である2種類以上のポリエステル樹脂が混合されていることで、低融点側の樹脂のもつ、金型温度170℃という高温での柔軟性により、金型への追従性が向上し、一方、高融点側の樹脂のもつ耐熱性により、離型時の破れが防止されるといった、両方の性質を併せ持つ利点がある。
このようなポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、または、それらの共重合体などを挙げることができる。
ポリエステル樹脂は、構成するジカルボン酸成分および/またはジオール成分が、炭素数2~5のアルキル鎖を繰り返し成分として含むと、高温下での高分子鎖が動きやすく、金型への追従性に適しているため、特に好ましい。このようなポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アジピン酸共重合体ポリエステルなどの共重合体といった170℃以上に融点をもつものを挙げることができる。
【0012】
ポリエステル樹脂としてポリエチレンテレフタレートを用いる場合、混合比率は20~60質量%であることが好ましく、25~55質量%がより好ましい。また、ポリブチレンテレフタレートを用いる場合、混合比率が40~80質量%であることが好ましく、45~75質量%がより好ましい。
【0013】
ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートを含むことで、高温下で成型をする際に、ポリエチレンテレフタレートのもつ耐熱性により、フィルムが破れにくくなる。一方、ポリブチレンテレフタレートは、例えばポリエチレンテレフタレートに比べて、化学骨格中に含まれる脂肪族の炭素数が2つ多いため、分子鎖の可動性が高く、柔軟性に優れている。このため、基材フィルムを構成するポリエステル樹脂として、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートを上記の最適な比率で混合して用いることで、得られたフィルムは、耐熱性、柔軟性が向上して、成型時の金型追従性が向上する。
【0014】
基材フィルムは、引張強度や成形性が向上し、また高温雰囲気下での収縮性が低下することから、延伸フィルムであることが好ましい。未延伸フィルムは、配向していないため、強度が低く、成型時に破れやすく、高温雰囲気下では収縮が大きくシワが発生しやすい。
【0015】
基材フィルムの厚みは、10μm以上であることが必要であり、モールド成型時の成形性の観点から、10~350μmであることが好ましく、12~250μmであることがより好ましく、15~125μmであることがさらに好ましく、20~100μmであることが特に好ましく、25~75μmであることが最も好ましい。基材フィルムは、厚みが10μm未満であると、モールド成型時に破れやすく、厚みが350μmを超えると、モールド成型時の成型性が劣ることがある。
【0016】
本発明の積層フィルムは、上記基材フィルムと電界シールド層とを含むものであり、モールド形状による圧縮や伸張が必要なモールド成型の成形性向上の観点で、基材フィルムと電界シールド層の厚み比(電界シールド層/基材フィルム)は、0.04~2であることが必要であり、0.1~1であることが好ましい。厚み比が上記範囲を外れた積層フィルムは、モールド成型時の基材フィルムと電界シールド層との伸縮差により、シワが発生しやすくなる。
【0017】
基材フィルムは、目的に応じて、シリカ、酸化チタン、ガラス繊維、炭酸カルシウム等の無機フィラーや、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、難燃剤などの添加剤を含有してもよい。
【0018】
<電界シールド層>
本発明の積層フィルムを構成する電界シールド層は、アスペクト比(長軸/短軸)が10以上であるフィラーとバインダー樹脂とを含む。
【0019】
フィラーは、アスペクト比(長軸/短軸)が10以上であることが必要であり、100以上であることがさらに好ましい。フィラーのアスペクト比(長軸/短軸)が10未満であると、モールド成型後にモールド材表面に転写された電界シールド層は、電界シールド性が低下することがある。一方、フィラーは、アスペクト比が大きすぎると凝集し、電解シールド層を形成するための塗工液の塗工性が低下したり、得られる電界シールド層の電界シールド性が低下する場合があるため、アスペクト比が10000以下であることが好ましい。
【0020】
フィラーの形状は、アスペクト比が10以上であれば特に限定されず、扁平状、針状、樹枝状、フレーク、繊維状などが挙げられる。その中でも、アスペクト比が100以上であるようなナノ繊維状が好ましい。フィラーの形状がナノ繊維状であると、パーコレーション閾値が低下し、また、耐屈曲性を有することから、モールド成型時にフィラーの破壊が起きにくくなる。
ナノ繊維状フィラーとしては、繊維径が1μm未満のナノロッド、ナノワイヤー、ナノチューブなどが挙げられ、具体的には、例えば、カーボンナノチューブ、金属ナノワイヤーが挙げられ、金属ナノワイヤーが好ましい。金属ナノワイヤーを構成する金属は、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト、およびこれらの元素を含む合金が挙げられ、導電性の観点より銀、銅、アルミニウムが好ましい。
金属ナノワイヤーは、市販品として入手することができる。例えば、ACS MATERIAL社製Agnw-90(銀ナノワイヤー)、NOVARIALS社製Silver nanowires A50(銀ナノワイヤー)、NOVARIALS社製Copper nanowires A2(銅ナノワイヤー)が挙げられる。また、金属ナノワイヤーは、公知の方法で製造することもできる。
【0021】
電界シールド層におけるフィラーの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、電界シールド性向上の観点で、80質量%以上であることがより好ましい。一方、電界シールド層形成用塗工液の流動性向上の観点で、95質量%以下であること好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。電界シールド層におけるフィラーの含有量は、蛍光X線分析によって定量することができる。
【0022】
本発明の積層フィルムを構成する電界シールド層は、バインダー樹脂を含むことが必要である。バインダー樹脂としては、例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステルおよび/またはポリエステル共重合体、アクリルゴム、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。なかでも、バインダー樹脂は、融点または軟化点が高い樹脂や熱硬化性樹脂であることが好ましく、熱硬化性樹脂が特に好ましく、なかでも、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が最も好ましい。熱硬化性のバインダー樹脂は、モールド成型時に硬化することができるため、硬化済み、半硬化、未硬化いずれの状態でもよい。
【0023】
電界シールド層に含まれるバインダー樹脂は、電子機器の部品に影響しないように、ハロゲン量が1500ppm以下であることが好ましく、さらには、塩素量が900ppm以下であり、臭素量が900ppm以下であることが好ましい。
【0024】
電界シールド層の厚みは、特に制限はないが、電界シールド性向上の観点から、0.4μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、2.5μm以上であることがさらに好ましい。一方、電界シールド層は、厚すぎるとモールド成型時の成形性が劣るため、厚みが100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
【0025】
電界シールド層の表面抵抗率は電界シールド性向上の観点から、103Ω/sq以下であることが好ましく、100Ω/sq以下であることがより好ましく、電気的に導電であることがさらに好ましい。電界シールド層が、フィラーを含む表面抵抗率が103Ω/sq以上であると、電界シールド性が不十分となる。
【0026】
本発明の効果を損なわない範囲で、目的や用途に応じて電界シールド層に、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、熱伝導剤、補強材、充填剤、軟化剤、滑剤、顔料、着色剤、防カビ剤、粘着剤等の公知の添加剤を適宜配合することができる。
【0027】
<中間層>
本発明の積層フィルムは、基材フィルムと電界シールド層との間に中間層を有してもよい。基材フィルムと電界シールド層とが、中間層を介して積層することで、基材フィルムと電界シールド層との層間において、または、電界シールド層と中間層との層間において、層間密着強度を0.02~4.00N/cmに調整しやすくなり、電界シールド層のモールド材表面への転写を容易にすることができる。
【0028】
中間層を構成する成分として、シリコーン系化合物、含フッ素共重合体、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、長鎖アルキル化合物含有物、アクリル樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類、およびそれらの混合物が挙げられ、酸やアミンなどの極性基で変性されていてもよい。また、これらの成分は、自己架橋性を有していてもよく、架橋剤を含有していてもよい。
なかでも、塗工性、密着性の観点から、ポリオレフィン系樹脂やシリコーン系化合物、フッ素系化合物、長鎖アルキルを側鎖にもつ樹脂やそれらの混合物が好ましい。
【0029】
(ポリオレフィン系樹脂)
本発明において、中間層を構成するポリオレフィン系樹脂は、酸変性ポリオレフィン樹脂であることが好ましい。酸変性ポリオレフィン樹脂は、オレフィン成分を主成分とし、酸変性成分により変性された樹脂である。
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン成分は、エチレン、プロピレン、ブテンから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、積層フィルムにおける電界シールド層との密着強度の観点で、プロピレンを含むことがより好ましい。
電界シールド層との密着強度を上記範囲にするために、オレフィン成分におけるプロピレンの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることが特に好ましい。
【0030】
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する酸変性成分としては、不飽和カルボン酸成分が挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でも、後述する樹脂の水性分散化において、樹脂を安定的に分散するために、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。これらの酸変性成分は酸変性ポリオレフィン樹脂中に2種類以上含まれていてもよい。
【0031】
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する各成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
【0032】
本発明において、層間密着強度を特定の範囲に調整するために、中間層は架橋剤を含有することが好ましい。
架橋剤の含有量は、例えば、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1~20質量部であることが好ましく、2~15質量部であることがより好ましく、2~10質量部であることがさらに好ましい。架橋剤の含有量が1質量部未満であると、中間層は、凝集力が弱くなりやすく、基材フィルムとの密着性が低下する傾向がある。一方、架橋剤の含有量が20質量部を超えると、中間層は、密着強度が上記範囲を外れることがある。
【0033】
架橋剤としては、カルボキシル基と反応する官能基を分子内に複数個有する化合物等を用いることができ、多官能エポキシ化合物;多官能イソシアネート化合物;多官能アジリジン化合物;カルボジイミド基含有化合物;オキサゾリン基含有化合物;フェノール樹脂;および尿素化合物、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂等が挙げられる。これらのうちの1種類を使用しても2種類以上を併用してもよい。このうち、多官能イソシアネート化合物、メラミン化合物、尿素化合物、多官能エポキシ化合物、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物等が好ましく、カルボジイミド基含有化合物、オキサゾリン基含有化合物がより好ましく、オキサゾリン基含有化合物がさらに好ましい。オキサゾリン基含有化合物を用いることにより、基材フィルムとの密着性に優れた中間層を得ることが可能となる。また、これらの架橋剤は組み合わせて使用してもよい。
【0034】
本発明において、中間層は、本発明の効果を損なわない範囲で、水溶性高分子を含有してもよい。水溶性高分子として、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0035】
(シリコーン系化合物)
本発明において、中間層を構成するシリコーン系化合物には、溶剤型および無溶剤型のものがある。溶剤型シリコーン樹脂は、溶剤希釈して塗工液とするため、高分子量・高粘度のポリマーから低粘度の低分子量ポリマーまで、幅広く使用することができる。そのため、無溶剤型のものと比較して、剥離性の制御が容易である。
また、シリコーン樹脂には、付加反応型、縮合反応型、紫外線硬化型、電子線硬化型等のものがある。付加反応型シリコーン樹脂は、反応性が高く生産性に優れ、縮合反応型のものと比較すると、製造後の剥離力の変化が小さく、また硬化収縮がない等のメリットがあるため、本発明の積層フィルムの中間層を構成する樹脂として好ましい。
【0036】
(含フッ素共重合体)
本発明において、中間層を構成する含フッ素共重合体は、フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とすることが好ましい。
フルオロオレフィンは、分子中に少なくとも2個のフッ素原子を有するオレフィン(CF2=CXY、ただし、XはFまたはH、YはCl、F、CF3)であって、例えば、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン等が好適である。これらのフルオロオレフィンは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル(CH2=C(R)COOC6H11、ただし、RはHまたはCH3)は、具体例として、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等を挙げられ、シクロヘキシルメタクリレートが好ましい。
水酸基含有ビニルエーテル(CH2=C(H)OROH、ただし、Rは炭素数2~5のアルキレン基またはシクロへキシレン基)は、具体例として、ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられ、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテルが好ましい。これらの水酸基含有ビニルエーテルは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
含フッ素共重合体は、前記フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、および水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とするものであるが、さらにこれらの成分に加えて、使用目的などに応じて20モル%を超えない範囲で他の共重合可能な成分を含むこともできる。共重合可能な成分としては、例えば、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、n-酪酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類等が挙げられる。
【0038】
(長鎖アルキル化合物含有物)
本発明において、中間層を構成する長鎖アルキル化合物含有物において、長鎖アルキル化合物とは、炭素数が通常6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。アルキル基を有する化合物とは、例えば、各種の長鎖アルキル基含有高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。また、効果的に離型性を得られるという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物であることがより好ましい。
【0039】
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、反応性基を有する高分子化合物と、この反応性基と反応可能な長鎖アルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。
高分子化合物が有する反応性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物等が挙げられる。これらの反応性基を有する高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、反応性基含有ポリエステル樹脂、反応性基含有ポリ(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮するとポリビニルアルコールであることが好ましい。
上記高分子化合物が有する反応性基と反応可能な長鎖アルキル基を有する化合物としては、例えば、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等の長鎖アルキル基含有イソシアネート、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、デシルクロライド、ラウリルクロライド、オクタデシルクロライド、ベヘニルクロライド等の長鎖アルキル基含有クロライド、長鎖アルキル基含有アミン、長鎖アルキル基含有アルコール等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮すると、長鎖アルキル基含有イソシアネートが好ましく、オクタデシルイソシアネートが特に好ましい。
【0040】
また、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの重合や、長鎖アルキル(メタ)アクリレートと他のビニル基含有モノマーとの共重合によって得ることもできる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
(アクリル樹脂)
本発明において、中間層を構成するアクリル樹脂は、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体のいずれでもよい。
【0042】
上記炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
【0043】
アクリル樹脂は、上記炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる単独重合体あるいは共重合体の他、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれ、例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。
あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様に、ポリウレタン溶液、またはポリウレタン分散液中で、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様に、他のポリマー溶液、または他のポリマー分散液中で、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
【0044】
また、アクリル樹脂は、ヒドロキシル基、アミノ基を含有することも可能であり、中間層の透明性の低下を抑える観点から、ヒドロキシル基を含有していることが好ましい。アクリル樹脂がヒドロキシル基を含有する場合、アクリル樹脂の水酸基価は、2~100mgKOH/gであることが好ましく、5~50mgKOH/gであることがより好ましい。アクリル樹脂の水酸基価が上記範囲であると、中間層は、外観や透明性が良好なものとなる。
【0045】
(ポリエステル樹脂)
本発明において、中間層を構成するポリエステル樹脂は、主な構成成分が、例えば、下記の多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物であるものが好ましい。
多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4′-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができる。
多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオ-ル、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオ-ル、2-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ル、p-キシリレングリコ-ル、ビスフェノ-ルA-エチレングリコ-ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、ポリテトラメチレングリコ-ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ-ル、ジメチロ-ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ジメチロ-ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ-ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。
これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0046】
(ウレタン樹脂)
本発明において、中間層を構成するウレタン樹脂は、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物である。
通常ウレタン樹脂は、ポリオールとイソシアネートの反応により合成される。
ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0047】
ウレタン樹脂は、溶剤を媒体とするものであってもよいが、水を媒体とするものが好ましい。ウレタン樹脂を水に分散または溶解させたものには、乳化剤を用いた強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入した自己乳化型、あるいは水溶型等のものがある。
特に、ウレタン樹脂の構造中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化型のものは、液の貯蔵安定性に優れ、また、得られる中間層は、耐水性、透明性に優れている。導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。またこのカルボキシル基は、アンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましく、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンで中和することがより好ましい。ウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、他の架橋剤による架橋反応点として用いることができる。これにより、塗布前の液は、液の状態での安定性に優れる上、得られる中間層は、耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等がさらに改善されたものとなる。
【0048】
(滑剤)
本発明において、中間層は、本発明の効果を損なわない範囲で、滑剤を含有してもよい。滑剤として、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機粒子や、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンワックス等の有機粒子、界面活性剤等が挙げられる。
【0049】
中間層の厚みは特に限定されず、0.01~1μm程度あればよい。
【0050】
<製造方法>
本発明の積層フィルムの製造方法としては、例えば、基材フィルム上に電界シールド層を積層する方法が挙げられる。また、中間層を有する積層フィルムの製造方法としては、基材フィルム上に中間層を積層し、中間層上に電界シールド層を積層する方法が挙げられる。
【0051】
電界シールド層を基材フィルム上に積層する方法としては、電界シールド層形成用塗工液を、基材フィルムに塗布、乾燥して積層する方法が挙げられる。また、電界シールド層を中間層上に積層する方法としては、中間層形成用塗工液を基材フィルムに塗布、乾燥して中間層を積層したのち、電界シールド層形成用塗工液を中間層に塗布、乾燥して積層する方法が挙げられる。
電界シールド層形成用塗工液や中間層形成用塗工液を塗布する方法としては、公知慣用の方法が挙げられ、例えば、ダイコーティング、コンマコーティング、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が挙げられる。
【0052】
基材フィルムまたは中間層上に均一に電界シールド層を塗布し、必要に応じて室温付近でセッティングした後、加熱処理に供して乾燥する。このようにすることで、均一な電界シールド層を基材フィルムまたは中間層上に密着させて形成することができる。
塗布した電界シールド層の乾燥初期温度は、40~150℃であることが好ましく、60~140℃であることがより好ましく、65~120℃であることがさらに好ましい。乾燥初期温度が低すぎると、乾燥ができず、高すぎると、基材フィルムは、熱によるダメージが大きくなり、次工程での使用に耐えられない状況になることがある。
さらに、エージング処理を行うことによって、電界シールド層は、凝集性や、基材フィルムまたは中間層との密着性を高めることができる。エージング処理は、基材フィルムへのダメージを軽減する観点からは、比較的低温で行うことが好ましいが、反応を十分かつ速やかに進行させるという観点からは、高温で行うことが好ましく、エージング温度は、20~100℃であることが好ましく、30~70℃であることがより好ましく、40~60℃であることがさらに好ましい。
【0053】
電界シールド層を基材フィルムまたは中間層上に形成する際には、オフラインコート法、インラインコート法、いずれの方法も採用できる。
インラインコート法は、電界シールド層形成用塗工液を、未延伸状態や一軸延伸状態の基材フィルムに、または、中間層が形成された基材フィルムの中間層側に塗布し、基材フィルムと共に、乾燥、配向延伸する方法である。インラインコート法は、配向延伸後に熱固定処理してもよい。インラインコート法は、製造工程中の基材フィルムに中間層形成用塗工液と電界シールド層形成用塗工液を順に塗布することにより、基材フィルム表面の配向結晶化の程度が小さい状態で中間層を形成することができるため、基材フィルムと中間層の密着力が向上することができる。
なお、基材フィルムの製造方法が逐次二軸延伸法である場合、一軸方向に延伸された基材フィルムに中間層形成用塗工液を塗布し、中間層形成用塗工液が塗布された基材フィルムを乾燥し、次いで、中間層上に電界シールド層形成用塗工液を塗布し、電界シールド層形成用塗工液が中間層上に塗布された基材フィルムを乾燥、その後、基材フィルムを前記方向と直交する方向にさらに延伸し、熱処理してもよい。
オフラインコート法は、電界シールド層を、未延伸状態や二軸延伸状態の基材フィルムに、または、中間層が塗布された基材フィルムの中間層側に塗布、乾燥して電界シールド層を形成する方法であり、電界シールド層形成後に延伸処理を施さない方法である。
【0054】
基材フィルムに積層加工する方法としては特に限定されず、必要に応じたコーティングを実施すればよい。積層フィルムは、基材フィルムと電界シールド層とを含む構成であればよく、中間層に加えて、各層の間にさらなる機能層を設けてもよい。
【0055】
<積層フィルムの使用>
本発明の積層フィルムは、トランスファーモールドまたはコンプレッションモールドによる樹脂モールド型半導体部品の製造方法に好適に用いることができる。
素子を封止するモールド材と電界シールド層とが接するように、本発明の積層フィルムを金型に配し、前記モールド材を硬化または半硬化させた後に、電界シールド層、または中間層が積層された電界シールド層を、積層フィルムから剥離し、モールド材表面に転写することで、金型とモールド樹脂との離型と同時にEMC対策を施した電子部品を製造することができる。素子としては、半導体または半導体を含むモジュールが好適である。
【0056】
本発明の積層フィルムは、半導体部品のモールド工程において、金型とモールド樹脂との離型と同時にEMC対策を施した半導体部品を製造する用途などに好適に用いることができる。
【実施例0057】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。積層フィルムの特性は下記の方法で測定した。
【0058】
(1)塗工性
電界シールド層形成用塗工液を、コンマコーティング(ヒラノテクシード社製マルチコーターMODEL-200)を用いて、塗工幅が200mm、塗工速度が2m/min、ドライ膜厚が2~300μmとなるように、基材フィルムまたは中間層に塗工し、積層された電界シールド層について、スジや抜けの欠点の有無を、巻長50mに渡って目視で確認した。欠点の発生数によって、下記の基準で塗工性を評価した。
○:スジや抜けの欠点が全くない
△:スジや抜けの欠点が1~30点
×:スジや抜けの欠点が30点以上
【0059】
(2)成型性
キャビティの容積が220mm×55mm×1.0mmであり、設定温度が170℃である金型に、積層フィルムを充填して真空引きし、2分間保持した。その後、真空引きを解除して常圧にし、金型から積層フィルムを取りはずし、取りはずした積層フィルムにおける角や辺部の状態を観察した。この操作を200個の試料について行ない、角の丸みや辺部のシワ、破れが一つでも生じた試料を成型不良と判断し、その個数を計数した。実用的には成型不良の試料数は、70個以下であることが求められ、20個以下であることが好ましく、10個以下であることが最も好ましい。
【0060】
(3)転写性
キャビティ内の内寸が220mm×55mm×1.5mmであり、設定温度が170℃である金型を用いて、また、モールド材としてエポキシ樹脂(昭和電工マテリアルズ社製 CEL9750HF10)を用いて、モールド成型装置により、積層フィルムの加工を行った。成型後に金型を開けた時の積層フィルムとパッケージの状態を目視で観察し、次の基準に従って評価した。実用的には○、△が求められ、○が好ましい。
○:電界シールド層がパッケージに転写され、積層フィルムがパッケージから完全に剥がれていた。
△:金型の型開き時に積層フィルムの一部がパッケージに引っ張られながら剥がれた。
×:積層フィルムがパッケージから剥がれず残っていた。
【0061】
(4)密着強度
60mm×100mmの大きさのエポキシプリプレグ(住友ベークライト社製 EI-6765)の両面を、積層フィルムの電界シールド層面でそれぞれ挟み、プレス板の温度を170℃に設定したプレス機で5kg/cm2で20分間保持した。その後、室温まで冷却して試料を得た。得られた試料の、硬化後のエポキシプリプレグと密着した電界シールド層と基材フィルムとの密着強度を、25℃の恒温室で、引張試験機(インテスコ社製、精密万能材料試験機、2020型)にて測定した。剥離角度は180度、剥離速度は300mm/分とした。密着強度は、スペクトルの強度が安定した部分の平均値を取った。実用的には層間の密着強度は、0.02~4.00N/cmであることが求められ、0.10~0.50N/cmであることが好ましい。
【0062】
(5)表面抵抗率
積層フィルムから110mm×110mmの大きさの試料を切り出した。試料を室温23±2℃、相対湿度50±5%の雰囲気中に1時間以上放置した後、同雰囲気下で日東精工社製抵抗率計(型式MCP-T700)を用いて、JIS K 7194-1994に準拠して、積層フィルムの表面抵抗率を測定した。なお、表面抵抗率は、例えば、3.1×10-2Ω/sqを「3.1E-02Ω/sq」と記載する方法により示した。
【0063】
(6)成型後電界シールド性
真空成型機にて、Φ70mm、絞り深さ5mmに真空成型した積層フィルムについて、0.1~1000MHz帯の電界シールド性を、KEC法を用いて測定した。測定値が40dB以上である場合をA、20dB以上、40dB未満である場合をB、20dB未満である場合をCとして、電界シールド性を評価した。実用的には20dB以上であることが求められ、40dB以上であることが好ましい。
【0064】
積層フィルム製造の原料として下記のものを使用した。
(1)中間層形成用塗工液
(1.1)塗工液X-1
中間層形成用塗工液X-1は、以下の方法により製造した。
<酸変性ポリオレフィン樹脂の製造>
プロピレン-ブテン-エチレン三元共重合体(プロピレン/ブテン/エチレン=68.0/16.0/16.0(質量比))280gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸32.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応生成物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、酸変性ポリオレフィン樹脂A-1を得た。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の水性分散体の製造>
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、上記方法で製造した60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂A-1と、45.0gのエチレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点171℃)と、6.9gのN,N-ジメチルエタノールアミン(沸点134℃、樹脂中の無水マレイン酸単位のカルボキシル基に対して1.0倍当量)と、188.1gの蒸留水とを、上記のガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。そうしたところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)することで、均一な酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の水性分散体(固形分濃度25質量%)を得た。なお、フィルター上には残存樹脂はほとんどなかった。
【0065】
酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の水性分散体と、ポリビニルアルコール水溶液(日本酢ビ・ポバール社製ポバールVC-10)と、架橋剤(日本触媒社製エポクロスWS-700、オキサゾリン基含有化合物)とを、それぞれ固形分が、100質量部と、300質量部と、7質量部となるように混合したのち、純水を添加して、最終固形分濃度が6.0質量%の中間層形成用塗工液X-1を得た。
【0066】
(1.2)塗工液X-2
中間層形成用塗工液X-2は、溶剤付加反応型シリコーン(信越化学工業社製KS-847T)をトルエンで希釈して調製した。
【0067】
(2)電界シールド層形成用塗工液
電界シールド層形成用塗工液を製造するためのフィラーとバインダー樹脂は、以下のものを使用した。
<フィラー>
N-1:銀ナノワイヤー(ACS MATERIAL社製Agnw-90、平均短軸90nm、平均長軸30μm、アスペクト比333)
N-2:銅ナノワイヤー(NOVARIALS社製Copper nanowires A2、平均短軸100nm、平均長軸10μm、アスペクト比100)
N-3:下記の方法で製造したニッケルナノワイヤー(平均短軸90nm、平均長軸25μm、アスペクト比277)
塩化ニッケル六水和物4g、クエン酸三ナトリウム二水和物0.375gをエチレングリコールに添加し、全量で500gとした。この溶液を90℃に加熱した。一方、水酸化ナトリウム1g、塩化白金酸六水和物1.2μgをエチレングリコールに添加し、全量で499gにした。この溶液を90℃に加熱した。各溶液中の化合物がすべて溶解した後、水酸化ナトリウムが含まれる溶液にヒドラジン一水和物1g添加し、その後、2つの溶液を混合した。混合した溶液を、磁気回路に入れ、150mTの磁場を印加し、90~95℃に維持したまま15分間静置して還元反応をおこない、遠心分離によりニッケルナノワイヤーN-3を得た。得られたニッケルナノワイヤーN-3は、SEMにより100本の長さを計測し、平均長軸が25μmであった。次に、TEMにより100本の径を測定し、平均短軸90nmであった。測定した平均長軸と平均短軸からアスペクト比を算出した。
N-4:下記の方法で製造したニッケルナノワイヤー(平均短軸50nm、平均長軸58μm、アスペクト比1163)
上記N-3の製造方法において、印加する磁場を150mTから500mTに変更した以外はN-3と同様にしてニッケルナノワイヤーN-4を得た。得られたニッケルナノワイヤーN-4の平均長軸、平均短軸についてもN-3と同手法で測定し、アスペクト比を算出した。
N-5:下記の方法で製造したニッケルナノワイヤー(平均短軸90nm、平均長軸0.72μm、アスペクト比8)
上記N-3の製造方法において、印加する磁場を150mTから50mTに変更し、印加後に、90~95℃に維持したまま15分間静置して還元反応をおこない、さらに超音波を20分照射した後に遠心分離した以外はN-3と同様にしてニッケルナノワイヤーN-5を得た。得られたニッケルナノワイヤーN-5の平均長軸、平均短軸についてもN-3と同手法で測定し、アスペクト比を算出した。
P-1:銀粒子(NOVARIALS社製Silver nanoparticles、平均粒径100nm)
【0068】
<バインダー樹脂>
D-1:シリコーン樹脂(MOMENTIVE社製TSE3450(B))
D-2:エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製YDF-8170C)
【0069】
<電界シールド層形成用塗工液Y-1の製造>
電界シールド層形成用塗工液Y-1は、フィラーとして銀ナノワイヤーN-1、バインダー樹脂としてシリコーン樹脂D-1を使用し、フィラーと、バインダー樹脂を、それぞれ固形分が90質量%と、10質量%となるように混合したのち、トルエンを添加して製造した。
【0070】
実施例1
ポリブチレンテレフタレート(PBT、IV(極限粘度)1.08dl/g、Tm(融点)223℃)54質量部と、ポリエチレンテレフタレート(PET、IV0.75dl/g、Tm255℃)46質量部とをドライブレンドしたものを、Tダイを備えた押出機を用いて、275℃でシート状に溶融押出し、表面温度18℃の冷却ドラムに密着させて冷却し、厚さ600μmの未延伸フィルムを成型した。
続いてこの未延伸フィルムを90℃に加熱した縦延伸ロールで3.5倍に縦延伸した。
<中間層の形成(インラインコート法)>
この縦延伸フィルムの片側に、リバースグラビアコーターを用いて、中間層形成用塗工液X-1を5g/m2(WET換算)の塗布量になるように塗工し、横延伸テンターにおいて120℃で4.5倍延伸後、230℃で10秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。得られた積層フィルムSの厚さは25μmであり、中間層の厚さはおよそ0.08μmであった。
<電界シールド層の形成(オフラインコート法)>
上記積層フィルムSの中間層に、電界シールド層形成用塗工液Y-1を、コンマコーターを用いて241g/m2(WET換算)の塗布量になるように塗工し、120℃、70秒間熱処理したのち、冷却し巻き取った。得られた積層フィルムの厚さは40μmであり、電界シールド層の厚さはおよそ20μmであった。
【0071】
実施例2~10、比較例1~5
フィラーの種類や含有量、電界シールド層や基材フィルムの厚み、バインダー樹脂の種類を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0072】
実施例11
溶剤付加反応型シリコーンのトルエン希釈液(X-2)をマルチコーターにてリバースグラビアコートした後、150℃、30秒間乾燥し、厚さ0.2μmの中間層を形成した以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0073】
実施例12
縦延伸フィルムに中間層を設けずに横延伸し、得られた基材フィルムに電界シールド層を設けた以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0074】
実施例13
基材フィルムを構成する樹脂について、ポリエチレンテレフタレートを構成するジカルボン酸成分のうち、テレフタル酸をアジピン酸単位に16モル%置き換えた共重合ポリエステル樹脂(AD16、Tm216℃)30質量部とポリエチレンテレフタレート(PET、IV0.75dl/g、Tm255℃)70質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0075】
実施例14
基材フィルムを構成する樹脂について、ポリエチレンテレフタレート(PET、IV0.75dl/g、Tm255℃)100質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0076】
実施例15
基材フィルムを構成する樹脂について、ポリエチレンテレフタレートを構成するジカルボン酸成分のうち、テレフタル酸をアジピン酸単位に16モル%置き換えた共重合ポリエステル樹脂(AD16、Tm216℃)100質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0077】
実施例16
積層フィルムSをPTFEフィルム(中興化成工業社製MSF-100、厚み50μm)に変更し、このフィルムに実施例1と同様にして電界シールド層を形成して、積層フィルムを得た。
【0078】
比較例6
電界シールド層として、真空蒸着法を用いて厚さ300nmの銅蒸着層(V-1)を中間層の表面に設けた以外は実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。
【0079】
得られた積層フィルムの構成、評価結果を表1に示す。
【0080】
【0081】
実施例の積層フィルムは、本発明で規定するアスペクト比のフィラーとバインダー樹脂とを含有する電界シールド層が設けられ、基材フィルムと電界シールド層との厚み比が本発明で規定する範囲であるため、成型性と電界シールド性がともに優れるものであった。また、電界シールド層は、フィラーを含有するため、表面抵抗率が103Ω/sq以下の導電体であり、0.1~1000MHz帯における電界シールド性が優れるものであった。さらに、酸変性ポリオレフィン樹脂と架橋剤とを含有する中間層形成用塗工液は、塗工性に優れ、形成された中間層と電界シールド層とは、好ましい密着強度を有していた。
【0082】
比較例1、2の積層フィルムは、電界シールド層を構成するフィラーのアスペクト比が本発明で規定する範囲を満たさないため、電界シールド性を示さなかった。
比較例3の積層フィルムの電界シールド層は、フィラーの含有量が本発明で規定する範囲を超えていたため、塗工時のスジ状欠点が増え、さらに、積層フィルムは、成型時にシワが多く発生し、成型性に劣っていた。
比較例4の積層フィルムの電界シールド層は、フィラーの含有量が本発明で規定する範囲を満たさないため、電界シールド性を示さなかった。
比較例5の積層フィルムは、基材フィルムの厚みが本発明で規定する範囲を満たしておらず、さらに基材フィルムと電界シールド層の厚み比が本発明で規定する範囲を満たさないため、成型時に破れが生じた。
比較例6の、電界シールド層として金属蒸着層を設けた積層フィルムは、成型時の屈曲によるクラックが発生し、電界シールド性に劣っていた。