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特開2023-50234評価装置、評価方法、検査方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050234
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】評価装置、評価方法、検査方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20230404BHJP
   G06F 30/15 20200101ALI20230404BHJP
   G06F 30/10 20200101ALI20230404BHJP
   G01M 17/08 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F30/15
G06F30/10 100
G01M17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160248
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】弁理士法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】亀甲 智
(72)【発明者】
【氏名】下川 嘉之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和典
(72)【発明者】
【氏名】徳永 智史
(72)【発明者】
【氏名】水野 将明
(72)【発明者】
【氏名】品川 大輔
(72)【発明者】
【氏名】谷峰 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】上田 佳央
(72)【発明者】
【氏名】鬼氣 寛史
(72)【発明者】
【氏名】石田 昭佳
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA05
5B146DJ02
5B146DJ07
5B146DJ14
(57)【要約】
【課題】構造部材の検査対象位置を効率よく把握することを可能にする評価装置、評価方法、プログラムおよび検査方法を提供する。
【解決手段】評価装置は、FEMモデルの外表面の第1節点に生じる第1応力に関する数値および内表面の第2節点に生じる第2応力に関する数値を算出する応力算出部と、第1応力に関する数値および第2応力に関する数値を比較する比較部と、第1節点に生じる応力に関する数値として第1応力に関する数値を出力する出力部と、を備える。第2節点はいずれかの第1節点に対応付けられている。比較部は、第2節点について、対応付けられた第1節点との間で第1応力に関する数値と第2応力に関する数値とを比較する。出力部は、比較部によって比較結果が予め設定された第1要件を満たしていると判定された第2節点の第2応力に関する数値を、第1節点に生じる応力に関する数値として、第1応力に関する数値に代えて出力する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面および内表面を有するFEMモデルに荷重を与え、前記外表面の複数の第1節点に生じる第1応力に関する数値および前記内表面の複数の第2節点に生じる第2応力に関する数値を算出する応力算出部と、
前記第1応力に関する数値および前記第2応力に関する数値を比較する比較部と、
前記複数の第1節点それぞれに生じる応力に関する数値として前記第1応力に関する数値を出力する出力部と、を備え、
前記複数の第2節点は、いずれかの前記第1節点に対応付けられており、
前記比較部は、前記複数の第2節点それぞれについて、対応付けられた前記第1節点との間で前記第1応力に関する数値と前記第2応力に関する数値とを比較し、比較結果が予め設定された第1要件を満たしているか否かを判定し、
前記出力部は、前記比較部によって前記比較結果が前記第1要件を満たしていると判定された前記第2節点の前記第2応力に関する数値を、その第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、構造部材の評価装置。
【請求項2】
2つ以上の前記第2節点が共通の1つの前記第1節点に対応付けられている場合、前記比較部は、前記2つ以上の前記第2節点それぞれについて、前記1つの前記第1節点との間で前記第1応力に関する数値と前記第2応力に関する数値とを比較し、比較結果が前記第1要件を満たしているか否かを判定し、
前記出力部は、前記2つ以上の前記第2節点の前記比較結果がいずれも前記第1要件を満たしている場合、前記2つ以上の前記第2節点のうち、予め設定された第2要件を満たした前記第2節点の前記第2応力に関する数値を、その第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、請求項1に記載の構造部材の評価装置。
【請求項3】
前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、対応関係生成部を備える、請求項1または2に記載の構造部材の評価装置。
【請求項4】
前記対応関係生成部は、前記第1節点と前記第2節点との距離に基づいて、前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、請求項3に記載の構造部材の評価装置。
【請求項5】
前記対応関係生成部は、前記第2節点に対する前記第1節点の方向に基づいて、前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、請求項3に記載の構造部材の評価装置。
【請求項6】
前記第1応力に関する数値および前記第2応力に関する数値はそれぞれ、安全率である、請求項1から5のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【請求項7】
前記第1応力に関する数値および前記第2応力に関する数値はそれぞれ、応力値である、請求項1から5のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【請求項8】
前記出力部の出力に基づいて、前記外表面に生じる応力に関する数値の分布図を作成する分布図作成部を備える、請求項1から7のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【請求項9】
前記出力部は、前記内表面のうち予め設定された領域に含まれる前記第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、予め設定された数値を、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、請求項1から8のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【請求項10】
前記出力部の出力に基づいて、前記外表面における検査対象位置を特定する特定部を備える、請求項1から9のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【請求項11】
前記特定部は、前記出力部の出力に基づいて、前記検査対象位置における検査の重要度を判定する、請求項10に記載の構造部材の評価装置。
【請求項12】
前記特定部は、前記内表面のうち予め設定された領域に含まれる前記第2節点に対応付けられた前記第1節点を、前記検査対象位置として特定する、請求項10または11に記載の構造部材の評価装置。
【請求項13】
構造部材の外表面の任意の検査位置について、検査によって得られた損傷度と、前記出力部によって出力された前記応力に関する数値と、応力に関する数値、損傷度および標準使用期間の関係を示す情報とに基づいて、前記検査位置の標準使用期間を算出する期間算出部を備える、請求項1から12のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【請求項14】
外表面および内表面を有するFEMモデルを用いてコンピュータによって実行される構造部材の評価方法であって、
前記外表面は複数の第1節点を含み、前記内表面は複数の第2節点を含み、かつ前記複数の第2節点はいずれかの前記第1節点に対応付けられており、
前記複数の第1節点に生じる第1応力に関する数値および前記複数の第2節点に生じる第2応力に関する数値を算出し、
前記複数の第2節点それぞれについて、対応付けられた前記第1節点との間で前記第1応力に関する数値と前記第2応力に関する数値とを比較し、比較結果が予め設定された第1要件を満たしているか否かを判定し、
前記複数の第1節点それぞれに生じる応力に関する数値として前記第1応力に関する数値を出力し、
前記比較結果が前記第1要件を満たしていると判定された前記第2節点の前記第2応力に関する数値を、その第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、構造部材の評価方法。
【請求項15】
2つ以上の前記第2節点が共通の1つの前記第1節点に対応付けられている場合、前記2つ以上の前記第2節点それぞれについて、前記1つの前記第1節点との間で前記第1応力に関する数値と前記第2応力に関する数値とを比較し、比較結果が前記第1要件を満たしているか否かを判定し、
前記2つ以上の前記第2節点の前記比較結果がいずれも前記第1要件を満たしている場合、前記2つ以上の前記第2節点のうち、予め設定された第2要件を満たした前記第2節点の前記第2応力に関する数値を、その第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、請求項14に記載の構造部材の評価方法。
【請求項16】
前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、請求項14または15に記載の構造部材の評価方法。
【請求項17】
前記第1節点と前記第2節点との距離に基づいて、前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、請求項16に記載の構造部材の評価方法。
【請求項18】
前記第2節点に対する前記第1節点の方向に基づいて、前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、請求項16に記載の構造部材の評価方法。
【請求項19】
前記第1応力に関する数値および前記第2応力に関する数値はそれぞれ、安全率である、請求項14から18のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【請求項20】
前記第1応力に関する数値および前記第2応力に関する数値はそれぞれ、応力値である、請求項14から18のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【請求項21】
前記出力された前記応力に関する数値に基づいて、前記外表面に生じる応力に関する数値の分布図を作成する、請求項14から20のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【請求項22】
前記内表面のうち予め設定された領域に含まれる前記第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、予め設定された数値を、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、請求項14から21のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【請求項23】
前記出力された前記応力に関する数値に基づいて、前記外表面における検査対象位置を特定する、請求項14から22のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【請求項24】
前記出力された前記応力に関する数値に基づいて、前記検査対象位置における検査の重要度を判定する、請求項23に記載の構造部材の評価方法。
【請求項25】
前記内表面のうち予め設定された領域に含まれる前記第2節点に対応付けられた前記第1節点を、前記検査対象位置として特定する、請求項23または24に記載の構造部材の評価方法。
【請求項26】
構造部材の外表面の任意の検査位置について、検査によって得られた損傷度と、前記出力された前記応力に関する数値と、応力に関する数値、損傷度および標準使用期間の関係を示す情報とに基づいて、前記検査位置の標準使用期間を算出する、請求項14から25のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【請求項27】
請求項1から13のいずれかに記載の評価装置を用いて、構造部材の前記FEMモデルの前記外表面の前記複数の第1節点に生じる前記応力に関する数値を取得し、取得した前記複数の第1節点に生じる応力に関する数値に基づいて前記構造部材を検査する、構造部材の検査方法。
【請求項28】
請求項14から26のいずれかに記載の評価方法をコンピュータに実行させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材の評価装置、評価方法および検査方法、ならびにこれらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用台車枠(以下、台車枠と略記する。)は、車体を支持すると共に、車輪、車軸、主電動機、駆動装置、およびサスペンション部品等の種々の台車部品を支持する構造部材である。鉄道車両の走行時には、上記の種々の台車部品から台車枠に荷重が伝達される。このため、台車枠には、これらの荷重に対して十分な強度および耐久性が要求される。
【0003】
そこで、従来、台車枠の強度を評価するために種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1に開示された台車枠の強度評価方法では、台車枠のFEMモデルを用いて台車枠の強度評価が行われる。
【0004】
具体的には、特許文献1の強度評価方法では、FEMモデルの表面上の複数の節点に対してそれぞれ仮想的に歪みゲージが定義され、荷重負荷時に生じる応力が節点ごとに算出される。そして、予め準備された耐久限度線図と節点ごとに算出された応力とに基づいて、各節点における安全率が算出される。また、特許文献1の強度評価方法では、算出された各節点の安全率に基づいて、コンター図(安全率分布図)が作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-190242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の強度評価方法は、例えば、台車枠の非破壊検査(磁粉探傷、浸透探傷、超音波探傷または産業用CTスキャン等)の際に利用することができる。具体的には、作業者は、特許文献1の強度評価方法を利用して作成された台車枠の安全率分布図に基づいて、台車枠のうち重点的に検査を行うべき部位(安全率が低い部位)を把握することができる。
【0007】
ところで、台車枠の検査対象位置を適切に把握するためには、台車枠の外表面(外観に表れる表面)および内表面(例えば、閉断面部の内面)のうち強度が低い部位(例えば、安全率が低い部位)を適切に把握する必要がある。この点に関して、作業者は、安全率分布図が付されたFEMモデルの外観を確認することによって、台車枠の外表面の各部の安全率を容易に把握することができる。
【0008】
一方で、FEMモデルの外観からは、台車枠の内表面の各部の安全率を把握することはできない。このため、作業者は、安全率分布図が付されたFEMモデルの内部を表示させて、台車枠の内表面において安全率が低い部位を確認しなければならない。
【0009】
このように、従来の評価方法では、台車枠の検査対象位置を適切に把握するためには、FEMモデルに付された外表面の情報(上記の例では安全率)および内表面の情報を、それぞれ別個に確認する必要があり、作業効率の点で改善の余地があった。
【0010】
そこで、本発明は、構造部材の検査対象位置を効率よく把握することを可能にする評価装置、評価方法およびプログラム、ならびに当該評価装置を用いた構造部材の検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記の評価装置、評価方法、検査方法およびプログラムを要旨とする。
【0012】
(1)外表面および内表面を有するFEMモデルに荷重を与え、前記外表面の複数の第1節点に生じる第1応力に関する数値および前記内表面の複数の第2節点に生じる第2応力に関する数値を算出する応力算出部と、
前記第1応力に関する数値および前記第2応力に関する数値を比較する比較部と、
前記複数の第1節点それぞれに生じる応力に関する数値として前記第1応力に関する数値を出力する出力部と、を備え、
前記複数の第2節点は、いずれかの前記第1節点に対応付けられており、
前記比較部は、前記複数の第2節点それぞれについて、対応付けられた前記第1節点との間で前記第1応力に関する数値と前記第2応力に関する数値とを比較し、比較結果が予め設定された第1要件を満たしているか否かを判定し、
前記出力部は、前記比較部によって前記比較結果が前記第1要件を満たしていると判定された前記第2節点の前記第2応力に関する数値を、その第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、構造部材の評価装置。
【0013】
(2)2つ以上の前記第2節点が共通の1つの前記第1節点に対応付けられている場合、前記比較部は、前記2つ以上の前記第2節点それぞれについて、前記1つの前記第1節点との間で前記第1応力に関する数値と前記第2応力に関する数値とを比較し、比較結果が前記第1要件を満たしているか否かを判定し、
前記出力部は、前記2つ以上の前記第2節点の前記比較結果がいずれも前記第1要件を満たしている場合、前記2つ以上の前記第2節点のうち、予め設定された第2要件を満たした前記第2節点の前記第2応力に関する数値を、その第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、上記(1)に記載の構造部材の評価装置。
【0014】
(3)前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、対応関係生成部を備える、上記(1)または(2)に記載の構造部材の評価装置。
【0015】
(4)前記対応関係生成部は、前記第1節点と前記第2節点との距離に基づいて、前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、上記(3)に記載の構造部材の評価装置。
【0016】
(5)前記対応関係生成部は、前記第2節点に対する前記第1節点の方向に基づいて、前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、上記(3)に記載の構造部材の評価装置。
【0017】
(6)前記第1応力に関する数値および前記第2応力に関する数値はそれぞれ、安全率である、上記(1)から(5)のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【0018】
(7)前記第1応力に関する数値および前記第2応力に関する数値はそれぞれ、応力値である、上記(1)から(5)のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【0019】
(8)前記出力部の出力に基づいて、前記外表面に生じる応力に関する数値の分布図を作成する分布図作成部を備える、上記(1)から(7)のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【0020】
(9)前記出力部は、前記内表面のうち予め設定された領域に含まれる前記第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、予め設定された数値を、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、上記(1)から(8)のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【0021】
(10)前記出力部の出力に基づいて、前記外表面における検査対象位置を特定する特定部を備える、上記(1)から(9)のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【0022】
(11)前記特定部は、前記出力部の出力に基づいて、前記検査対象位置における検査の重要度を判定する、上記(10)に記載の構造部材の評価装置。
【0023】
(12)前記特定部は、前記内表面のうち予め設定された領域に含まれる前記第2節点に対応付けられた前記第1節点を、前記検査対象位置として特定する、上記(10)または(11)に記載の構造部材の評価装置。
【0024】
(13)構造部材の外表面の任意の検査位置について、検査によって得られた損傷度と、前記出力部によって出力された前記応力に関する数値と、応力に関する数値、損傷度および標準使用期間の関係を示す情報とに基づいて、前記検査位置の標準使用期間を算出する期間算出部を備える、上記(1)から(12)のいずれかに記載の構造部材の評価装置。
【0025】
(14)外表面および内表面を有するFEMモデルを用いてコンピュータによって実行される構造部材の評価方法であって、
前記外表面は複数の第1節点を含み、前記内表面は複数の第2節点を含み、かつ前記複数の第2節点はいずれかの前記第1節点に対応付けられており、
前記複数の第1節点に生じる第1応力に関する数値および前記複数の第2節点に生じる第2応力に関する数値を算出し、
前記複数の第2節点それぞれについて、対応付けられた前記第1節点との間で前記第1応力に関する数値と前記第2応力に関する数値とを比較し、比較結果が予め設定された第1要件を満たしているか否かを判定し、
前記複数の第1節点それぞれに生じる応力に関する数値として前記第1応力に関する数値を出力し、
前記比較結果が前記第1要件を満たしていると判定された前記第2節点の前記第2応力に関する数値を、その第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、構造部材の評価方法。
【0026】
(15)2つ以上の前記第2節点が共通の1つの前記第1節点に対応付けられている場合、前記2つ以上の前記第2節点それぞれについて、前記1つの前記第1節点との間で前記第1応力に関する数値と前記第2応力に関する数値とを比較し、比較結果が前記第1要件を満たしているか否かを判定し、
前記2つ以上の前記第2節点の前記比較結果がいずれも前記第1要件を満たしている場合、前記2つ以上の前記第2節点のうち、予め設定された第2要件を満たした前記第2節点の前記第2応力に関する数値を、その第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、上記(14)に記載の構造部材の評価方法。
【0027】
(16)前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、上記(14)または(15)に記載の構造部材の評価方法。
【0028】
(17)前記第1節点と前記第2節点との距離に基づいて、前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、上記(16)に記載の構造部材の評価方法。
【0029】
(18)前記第2節点に対する前記第1節点の方向に基づいて、前記複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの前記第1節点に対応付ける、上記(16)に記載の構造部材の評価方法。
【0030】
(19)前記第1応力に関する数値および前記第2応力に関する数値はそれぞれ、安全率である、上記(14)から(18)のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【0031】
(20)前記第1応力に関する数値および前記第2応力に関する数値はそれぞれ、応力値である、上記(14)から(18)のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【0032】
(21)前記出力された前記応力に関する数値に基づいて、前記外表面に生じる応力に関する数値の分布図を作成する、上記(14)から(20)のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【0033】
(22)前記内表面のうち予め設定された領域に含まれる前記第2節点に対応付けられた前記第1節点に生じる前記応力に関する数値として、予め設定された数値を、前記第1応力に関する数値に代えて出力する、上記(14)から(21)のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【0034】
(23)前記出力された前記応力に関する数値に基づいて、前記外表面における検査対象位置を特定する、上記(14)から(22)のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【0035】
(24)前記出力された前記応力に関する数値に基づいて、前記検査対象位置における検査の重要度を判定する、上記(23)に記載の構造部材の評価方法。
【0036】
(25)前記内表面のうち予め設定された領域に含まれる前記第2節点に対応付けられた前記第1節点を、前記検査対象位置として特定する、上記(23)または(24)に記載の構造部材の評価方法。
【0037】
(26)構造部材の外表面の任意の検査位置について、検査によって得られた損傷度と、前記出力された前記応力に関する数値と、応力に関する数値、損傷度および標準使用期間の関係を示す情報とに基づいて、前記検査位置の標準使用期間を算出する、上記(14)から(25)のいずれかに記載の構造部材の評価方法。
【0038】
(27)上記(1)から(13)のいずれかに記載の評価装置を用いて、構造部材の前記FEMモデルの前記外表面の前記複数の第1節点に生じる前記応力に関する数値を取得し、取得した前記複数の第1節点に生じる応力に関する数値に基づいて前記構造部材を検査する、構造部材の検査方法。
【0039】
(28)上記(14)から(26)のいずれかに記載の評価方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、構造部材の検査対象位置を効率よく把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る評価装置の概略構成を示すブロック図である。
図2図2は、本実施形態に係る評価装置の評価対象となる鉄道車両用台車枠の一例を示す斜視図である。
図3図3は、台車枠のFEMモデルの一部を示す図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る評価装置の構成を具体的に示すブロック図である。
図5図5は、応力算出部の算出結果をそのまま利用して作成された安全率分布図である。
図6図6は、出力部の出力結果に基づいて作成された安全率分布図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る評価装置の動作を示すフロー図である。
図8図8は、本発明の一実施形態に係る評価装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態に係る評価装置および評価方法、これらを実現するためのプログラム、ならびに構造部材の検査方法について説明する。なお、以下においては、構造部材の一例として鉄道車両用台車枠を挙げ、鉄道車両用台車枠の各部に生じる応力に関する数値(本実施形態では、安全率)を評価装置によって算出する場合について説明する。
【0043】
[装置構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る評価装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る評価装置10は、応力算出部12、比較部14、および出力部16を備える。
【0044】
図2は、本実施形態に係る評価装置10の評価対象となる鉄道車両用台車枠の一例を示す斜視図である。図2に示すように、台車枠100は、一対の側梁102と、一対の側梁102を接続する横梁104とを備えている。横梁104は、一対のパイプ部材104aを有している。以下においては、評価装置10が、台車枠100のFEMモデルを用いて、台車枠100の各部の強度評価(安全率の算出)を行う場合について説明する。ただし、評価装置10によって評価される台車枠の構成は図2に示す台車枠100に限定されず、評価装置10は、種々の構成の台車枠の強度評価を行うために用いられる。
【0045】
図1に示すように、評価装置10には、評価対象となる構造部材(本実施形態では、台車枠100)のFEM(Finite Element Method)モデルが与えられる。FEMモデルは、複数の要素および複数の節点を有する。本実施形態では、複数の節点には、コーナー節点(一次節点:要素の角に配置された節点)に加えて、中間節点(二次節点:コーナー節点とコーナー節点との間に位置するように要素辺上に配置された節点)が含まれてもよい。なお、FEMモデルとしては、有限要素法(FEM)による応力解析において用いられる公知の解析モデルを利用することができるので、FEMモデルについての詳細な説明は省略する。
【0046】
なお、本実施形態では、他の装置において作成されたFEMモデルが評価装置10に与えられるが、公知のFEM解析ソフトと同様に、ユーザの操作に基づいて評価装置10においてFEMモデルが作成されてもよい。
【0047】
本実施形態では、FEMモデルの表面は、予め定義付けられた外表面および内表面を含む。外表面とは、例えば、台車枠100の外部から視認できる表面であり、内表面とは、例えば、台車枠100の外部から視認できない表面(閉断面部の内面等)である。外表面および内表面の定義付けは、例えば、FEMモデルを作成する際にユーザが行えばよい。
【0048】
本実施形態では、FEMモデルの外表面に含まれる複数の節点にはそれぞれ、外表面の節点であることを示す情報が予め付与され、内表面に含まれる複数の節点にはそれぞれ、内表面の節点であることを示す情報が予め付与されている。このようにして、本実施形態では、FEMモデルの表面の各部が、外表面または内表面に設定されている。以下、外表面に含まれる節点を第1節点と称し、内表面に含まれる節点を第2節点と称する。
【0049】
本実施形態では、複数の第2節点はそれぞれ、いずれかの第1節点に予め対応付けられている。なお、第1節点と第2節点との対応付けは、ユーザが任意に設定したルールに従って行えばよい。本実施形態では、任意の第2節点に相当する位置を外表面側から非破壊検査(磁粉探傷、浸透探傷、超音波探傷または産業用CTスキャン等)すると仮定した場合に、検査領域に含まれる第1節点が、その第2節点に対応付けられる。言い換えると、第2節点の近傍に位置する第1節点が、その第2節点に対応付けられる。具体的には、例えば、第1節点と第2節点との距離に基づいて、または第2節点に対する第1節点の方向に基づいて、第2節点を第1節点に対応付けることができる。以下、図面を用いて簡単に説明する。
【0050】
図3は、台車枠100のFEMモデル200の一部を示す図である。図3には、FEMモデル200の外表面200aの第1節点N11,N12,N13、および内表面200bの第2節点N2が示されている。なお、実際には、FEMモデル200には、5つ以上の節点が設けられているが、説明を簡便にするために、図3には4つの節点N11,N12,N13,N2のみを示している。
【0051】
図3に示す例では、第2節点N2の近傍に、3つの第1節点N11,N12,N13が位置している。第2節点N2と第1節点N12との距離d2は、第2節点N2と第1節点N11との距離d1よりも小さく、第2節点N2と第1節点N13との距離d3よりも小さい。例えば、第1節点と第2節点との距離に基づいて第2節点を第1節点に対応付ける場合には、第2節点N2を、第2節点N2に最も近い第1節点N12に対応付ければよい。このように、第1節点と第2節点との距離に基づいて第2節点を第1節点に対応付ける場合には、複数の第1節点のうち、任意の第2節点に最も近い第1節点を、その第2節点に対応付ければよい。
【0052】
また、図3に示す例では、第2節点N2から第1節点N12に向かう方向と、第2節点N2において内表面200bに対して垂直な方向(矢印Xで示す方向:以下、第2節点N2の垂直方向Xと記載する。)とのなす角θ2は、第2節点N2から第1節点N11に向かう方向と第2節点N2の垂直方向Xとがなす角θ1よりも小さく、第2節点N2から第1節点N13に向かう方向と第2節点N2の垂直方向Xとがなす角θ3よりも小さい。例えば、第2節点に対する第1節点の方向に基づいて第2節点を第1節点に対応付ける場合には、第2節点N2を、第2節点N2に対する方向が、第2節点N2の垂直方向Xに最も近い第1節点N12に対応付ければよい。このように、第2節点に対する第1節点の方向に基づいて第2節点を第1節点に対応付ける場合には、複数の第1節点のうち、任意の第2節点に対する方向がその第2節点の垂直方向に最も近くなる第1節点を、その第2節点に対応付ければよい。
【0053】
図1を参照して、応力算出部12は、ユーザによって設定された条件に従ってFEMモデルに荷重を与え、FEMモデルの表面の各節点に生じる応力に関する数値(本実施形態では、安全率)を算出する。本実施形態では、応力算出部12は、まず、ユーザによって設定された荷重に基づいてFEMモデルに荷重を与え、有限要素法による応力解析を行うことによって、複数の第1節点に生じる第1応力および複数の第2節点に生じる第2応力を算出する。次に、応力算出部12は、各節点について、算出した応力と、予め設定された許容応力とに基づいて、安全率を算出する。以下、応力算出部12が算出した第1節点の安全率を第1安全率と称し、応力算出部12が算出した第2節点の安全率を第2安全率と称する。本実施形態では、第1安全率が、第1応力に関する数値に対応し、第2安全率が、第2応力に関する数値に対応する。
【0054】
本実施形態では、応力算出部12は、例えば、各節点について、予め設定された許容応力と算出された応力との比を、安全率として算出する。言い換えると、応力算出部12は、各節点について、予め設定された許容応力を、算出された応力で除算することによって得られる値を、安全率として算出する。なお、各節点の応力および安全率の算出方法は特に限定されず、公知の方法を利用して各節点の応力および安全率を算出することができる。例えば、特開2005-190242号公報または特開2021-67991号公報に記載された方法を利用して、各節点の応力および安全率を算出してもよい。
【0055】
比較部14は、複数の第2節点それぞれについて、対応付けられた第1節点との間で、応力算出部12が算出した第1安全率と第2安全率とを比較し、比較結果が予め設定された第1要件を満たしているか否かを判定する。本実施形態では、比較部14は、第2安全率が第1安全率よりも低い場合、第1安全率と第2安全率との比較結果が第1要件を満たしていると判定する。
【0056】
出力部16は、応力算出部12が算出した第1安全率を、第1節点の安全率として出力する。また、出力部16は、応力算出部12が算出した第2安全率を、第2節点の安全率として出力する。ただし、出力部16は、比較部14によって比較結果が第1要件を満たしていると判定された第2節点の第2安全率を、その第2節点に対応付けられた第1節点の安全率として、第1安全率に代えて出力する。
【0057】
以上のように、本実施形態では、第2節点は、その第2節点の近傍に位置する第1節点に対応付けられている。また、第2節点の第2安全率が、その第2節点に対応付けられた第1節点の第1安全率よりも低い場合には、出力部16は、第1節点の安全率として、第1安全率ではなく第2安全率を出力する。例えば、図3において、応力算出部12が算出した第2節点N2の第2安全率が、応力算出部12が算出した第1節点N12の第1安全率よりも低い場合には、出力部16は、第1節点N12の安全率として、第2節点N2の第2安全率を出力する。
【0058】
このため、出力部16から出力された第1節点の安全率が低い部位では、外表面および内表面のうちの少なくとも一方において安全率が低くなっている。したがって、作業者は、評価装置10を用いてFEMモデルの複数の第1節点の安全率を取得し、取得した複数の第1節点の安全率に基づいて、台車枠100を適切に検査することができる。例えば、作業者は、出力部16から出力された第1節点の安全率が低い部位を台車枠100の外側から非破壊検査することによって、台車枠100のうち安全率が低くなっている部位を適切に検査することができる。言い換えると、作業者は、FEMモデルの外表面の複数の第1節点に付された情報(本実施形態では、第1安全率または第2安全率)を確認することによって、内表面の複数の第2節点に付された情報を確認しなくても、台車枠100の検査対象位置を適切に把握することができる。この場合、FEMモデルの外表面の複数の第1節点に付された情報および内表面の複数の第2節点に付された情報をそれぞれ別個に確認する場合に比べて、作業効率が向上する。
【0059】
次に、評価装置10の具体的な構成について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係る評価装置の構成を具体的に示すブロック図である。
【0060】
図4に示すように、本実施形態に係る評価装置10は、応力算出部12、比較部14および出力部16に加えて、付与部18、対応関係生成部20、記憶部22、分布図作成部24、特定部26および期間算出部28を備えている。
【0061】
付与部18は、FEMモデルの複数の第1節点および複数の第2節点に対してそれぞれ、複数の材料区分の中から選択された一の材料区分を付与するとともに、複数の仕様区分の中から選択された一の仕様区分を付与する。本実施形態において材料区分とは、台車枠100において各節点に対応する部分の材料の種類(例えば、SM400、SM400A、SM490、SM490A等)を示す区分である。また、仕様区分とは、各節点に対応する部分の状態(例えば、母材、溶接まま、研磨仕上げ等)を示す区分である。本実施形態では、付与部18は、ユーザによって入力された材料区分および仕様区分に従って、各節点に材料区分および仕様区分を付与する。なお、上述の実施形態では、FEMモデルの外表面および内表面が予め規定されている場合について説明した。しかしながら、付与部18が、ユーザの操作に基づいて、FEMモデルの表面の複数の節点にそれぞれ、外表面の節点であることを示す情報または内表面の節点であることを示す情報を付与することによって、外表面および内表面が規定されてもよい。
【0062】
対応関係生成部20は、予め設定されたルールに従って、評価装置10に与えられたFEMモデルの複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの第1節点に対応付ける。なお、第1節点と第2節点との対応付けは、上述の実施形態と同様に行われるので、詳細な説明は省略する。
【0063】
記憶部22は、安全率情報および使用期間情報を記憶している。安全率情報および使用期間情報については後述する。
【0064】
応力算出部12は、上述したように、FEMモデルに荷重を与え、複数の第1節点それぞれの第1安全率および複数の第2節点それぞれの第2安全率を算出する。ただし、本実施形態では、応力算出部12は、記憶部22に記憶された複数の安全率情報を用いて、第1安全率および第2安全率を算出する。安全率情報とは、節点周りに生じる応力に基づいて当該節点における安全率を算出するための情報である。
【0065】
複数の安全率情報にはそれぞれ、特定の材料区分および仕様区分が紐付けられている。例えば、一つの安全率情報には、材料区分「SM400」および仕様区分「母材」が紐付けられる。また、例えば、他の安全率情報には、材料区分「SM400」および仕様区分「溶接まま」が紐付けられる。本実施形態では、各節点に対して付与可能な材料区分の数と各節点に対して付与可能な仕様区分の数とを乗算して得られる数の安全率情報が用いられる。なお、複数の安全率情報は、評価装置10によって台車枠100の評価を行う際にユーザによって入力されてもよい。
【0066】
本実施形態では、応力算出部12は、複数の第1節点および複数の第2節点のそれぞれについて、付与部18で付与された材料区分および仕様区分に対応する安全率を算出する。
【0067】
比較部14は、上述したように、複数の第2節点それぞれについて、対応付けられた第1節点との間で、応力算出部12が算出した第1安全率と第2安全率とを比較し、比較結果が予め設定された第1要件を満たしているか否かを判定する。上述したように、比較部14は、第2安全率が第1安全率よりも低い場合、第1安全率と第2安全率との比較結果が第1要件を満たしていると判定する。
【0068】
出力部16は、上述したように、応力算出部12が算出した各第1節点の第1安全率および各第2節点の第2安全率を出力する。また、上述したように、出力部16は、比較部14によって比較結果が第1要件を満たしていると判定された第2節点の第2安全率を、その第2節点に対応付けられた第1節点の安全率として、第1安全率に代えて出力する。
【0069】
なお、対応関係生成部20において第2節点を第1節点に対応付ける際に、2つ以上の第2節点が共通の1つの第1節点に対応付けられる場合があり得る。この場合、比較部14は、2つ以上の第2節点それぞれについて、共通の1つの第1節点との間で、第1安全率と第2安全率とを比較し、比較結果が予め設定された第1要件を満たしているか否かを判定する。
【0070】
また、出力部16は、上記2つ以上の第2節点(第2安全率)と上記共通の1つの第1節点(第1安全率)との比較結果がいずれも上記第1要件を満たしている場合、上記2つ以上の第2節点のうち、予め設定された第2要件を満たした第2節点の第2安全率を、その第2節点に対応付けられた第1節点の安全率として、第1安全率に代えて出力する。本実施形態では、上記2つ以上の第2節点のうち、第2安全率が最も低い第2節点を、第2要件を満たした第2節点とする。したがって、本実施形態では、出力部16は、上記2つ以上の第2節点の第2安全率のうち最も低い数値を、上記2つ以上の第2節点に対応付けられた第1節点の安全率として出力する。
【0071】
分布図作成部24は、出力部16の出力に基づいて、台車枠100において各節点に対応する部位の安全率を示した安全率分布図(コンター図)を作成する。図5および図6は、分布図作成部24によって作成される安全率分布図を説明するための図であり、図5には、応力算出部12の算出結果をそのまま利用して作成された安全率分布図を示し、図6には、出力部16の出力結果に基づいて作成された安全率分布図を示している。なお、図5および図6には、FEMモデル200のT字継手部が示されている。また、図5および図6において(a)は、FEMモデル200を外表面200a側から見た斜視図であり、(b)は、FEMモデル200を内表面200b側から見た斜視図である。
【0072】
図5および図6に示すFEMモデル200では、内表面200bの複数の第2節点のうち、一部の第2節点の第2安全率が、外表面200aの第1節点の第1安全率よりも大幅に低くなった。しかし、図5に示すように、応力算出部12の算出結果をそのまま利用して作成された安全率分布図では、外表面200aにおける安全率分布からは、安全率が低くなった部位を把握することができない。このため、台車枠100のうち安全率が低くなっている部位を適切に把握するためには、作業者は、外表面200aの安全率分布および内表面200bの安全率分布をそれぞれ別個に確認する必要がある。
【0073】
一方、図6に示すように、出力部16の出力結果に基づいて作成された安全率分布図では、外表面200aの第1節点の第1安全率よりも低くなった内表面200bの第2節点の第2安全率が、外表面200aの第1節点の安全率として表示される。このため、作業者は、外表面200aの安全率分布を確認することによって、内表面200bの安全率分布を確認することなく、台車枠100のうち安全率が低くなっている部位を適切に把握することができる。
【0074】
図4を参照して、特定部26は、出力部16の出力に基づいて、外表面200aにおける検査対象位置を特定する。本実施形態では、特定部26は、例えば、出力部16によって出力された複数の第1節点の安全率が、予め設定された安全率の閾値よりも低い場合、その第1節点を検査対象位置として特定する。また、特定部26は、特定した検査対象位置を、FEMモデルに表示する。特定部26は、例えば、FEMモデルにおいて、検査対象位置と検査対象位置以外の部分とに、異なる色を付して検査対象位置を特定する。具体的には、特定部26は、例えば、FEMモデルにおいて、検査対象位置を黒色で示し、検査対象位置以外の部分を白色で示してもよい。この場合、作業者は、特定部26に特定された検査対象位置を確認することによって、台車枠100において検査すべき部位を容易に把握することができる。
【0075】
なお、特定部26は、例えば、出力部16の出力に基づいて、検査対象位置における検査の重要度を判定してもよい。具体的には、特定部26は、例えば、予め設定された情報(安全率と重要度との関係を示す情報)と出力部16によって出力された複数の第1節点の安全率とを比較し、複数の第1節点それぞれの検査の重要度を判定してもよい。なお、検査の重要度とは、例えば、検査頻度を挙げることができる。この場合、特定部26は、出力部16の出力に基づいて、台車枠100の各部位について、何年ごとに検査すべきかを判定してもよい。
【0076】
また、特定部26は、例えば、FEMモデルの内表面のうち予め設定された領域(例えば、リブ等が設けられた、検査重要度が高い部位。)に含まれる第2節点に対応付けられた第1節点を、検査対象位置として特定してもよい。この場合、作業者は、特定部26によって特定された検査対象位置を確認することによって、安全率に関わらず、検査重要度の高い部位を適切に把握することができる。
【0077】
期間算出部28は、台車枠100の外表面の任意の検査位置(実際に検査された位置)について、実際の検査によって得られた損傷度と、出力部16によって出力された安全率と、記憶部22に記憶された使用期間情報とに基づいて、検査位置の標準使用期間を算出する。なお、実際の検査によって得られた損傷度は、ユーザまたは検査装置によって評価装置10に入力される。本実施形態において、使用期間情報とは、安全率、損傷度および標準使用期間の関係を示す情報である。例えば、評価装置10のユーザが、台車枠100を実際に検査したときの位置(外表面の位置)に対応する第1節点と、検査によって得られた損傷度を評価装置10に入力し、入力されたデータに基づいて、期間算出部28が、検査位置の標準使用期間を算出する。本実施形態では、評価装置10のユーザは、台車枠100の実際の使用期間が、期間算出部28によって算出された標準使用期間よりも長い場合、検査位置を、補修(ガウジングまたは超音波衝撃処理等)または交換等の何らかの措置を施すべき部位(損傷が大きい部位)として認識することができる。
【0078】
以上のように、本実施形態に係る評価装置10においては、出力部16の出力だけでなく、分布図作成部24または特定部26の出力を参考にして、台車枠100の検査対象位置を効率よく把握することができる。
【0079】
(変形例)
上述の実施形態では、出力部16が、第1安全率と第2安全率との比較結果が予め設定された第1要件を満たす場合に、第2安全率を第1節点の安全率として出力する場合について説明したが、出力部16の処理は上述の例に限定されない。例えば、出力部16が、FEMモデルの内表面のうち予め設定された領域(例えば、リブ等が設けられた、検査重要度が高い部位。)に含まれる第2節点に対応付けられた第1節点の安全率として、予め設定された数値を、第1安全率に代えて出力してもよい。この場合、上記予め設定された数値を十分に小さい数値(例えば、0.1等)にすることによって、作業者は、応力算出部12によって算出される安全率に関わらず、出力部16の出力に基づいて、検査重要度の高い部位を適切に把握することができる。
【0080】
上述の実施形態では、応力算出部12が、応力に関する数値として安全率を出力する場合について説明したが、応力算出部12が出力する数値は安全率に限定されない。例えば、応力算出部12が、第1応力に関する数値として第1節点に生じる応力値(以下、第1応力値と称する。)を出力し、第2応力に関する数値として第2節点に生じる応力値(以下、第2応力値と称する。)を出力してもよい。
【0081】
この場合、比較部14は、複数の第2節点それぞれについて、対応付けられた第1節点との間で第1応力値と第2応力値とを比較し、比較結果が予め設定された第1要件を満たしているか否かを判定する。具体的には、比較部14は、例えば、第2応力値が第1応力値よりも高い場合、第1応力値と第2応力値との比較結果が第1要件を満たしていると判定する。
【0082】
また、出力部16は、応力算出部12が算出した第1応力値を、第1節点の応力値として出力し、応力算出部12が算出した第2応力値を、第2節点の応力値として出力する。ただし、出力部16は、比較部14によって比較結果が第1要件を満たしていると判定された第2節点の第2応力値を、その第2節点に対応付けられた第1節点に生じる応力値として、第1応力値に代えて出力する。なお、出力部16は、FEMモデルの内表面のうち予め設定された領域(例えば、リブ等が設けられた、検査重要度が高い部位。)に含まれる第2節点に対応付けられた第1節点の応力値として、予め設定された数値(十分に高い数値)を、第1応力値に代えて出力してもよい。
【0083】
なお、出力部16は、2つ以上の第2節点(第2応力値)と共通の1つの第1節点(第1応力値)との比較結果がいずれも上記第1要件を満たしている場合、上記2つ以上の第2節点のうち、予め設定された第2要件を満たした第2節点の第2応力値を、その第2節点に対応付けられた第1節点の応力値として、第1応力値に代えて出力する。本実施形態では、上記2つ以上の第2節点のうち、第2応力値が最も高い第2節点を、第2要件を満たした第2節点とする。したがって、本実施形態では、出力部16は、上記2つ以上の第2節点の第2応力値のうち最も高い数値を、上記2つ以上の第2節点に対応付けられた第1節点の応力値として出力する。
【0084】
なお、詳細な説明は省略するが、分布図作成部24は、応力値の分布図(コンター図)を作成してもよい。また、特定部26は、各節点の応力値に基づいて検査対象位置を特定してもよい。また、特定部26は、予め設定された情報(応力値と重要度との関係を示す情報)と出力部16によって出力された複数の第1節点の応力値とを比較し、複数の第1節点それぞれの検査の重要度を判定してもよい。また、記憶部22に記憶される使用期間情報が、応力値、損傷度および標準使用期間の関係を示す情報であってもよい。この場合、期間算出部28が、実際の検査によって得られた損傷度と、出力部16によって出力された応力値と、記憶部22に記憶された使用期間情報とに基づいて、検査位置の標準使用期間を算出してもよい。
【0085】
また、詳細な説明は省略するが、出力部16、分布図作成部24および特定部26が、拡張現実技術とともに利用可能なデータを出力してもよい。具体的には、例えば、出力部16、分布図作成部24および特定部26が、プロジェクトマッピングまたはアイウェア等において利用可能なデータを出力してもよい。また、詳細な説明は省略するが、台車枠100の特定の部位(例えば、溶接部等)に予め識別番号を付しておき、ユーザによって指定された識別番号に対応する部位の情報(安全率、応力値)を選択的に表示できるように、評価装置10を構成してもよい。
【0086】
上述の実施形態では、評価装置が、鉄道車両用台車枠を評価する場合について説明したが、本発明に係る評価装置の評価対象となる構造部材は、鉄道車両用台車枠に限定されない。例えば、評価装置による評価対象が、他の機械構造部材(自動車用車体等)、建築構造部材および土木構造部材等の種々の構造部材であってもよい。
【0087】
[装置動作]
次に、本実施形態に係る評価装置10の動作について図7を用いて説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る評価装置10の動作を示すフロー図である。なお、本実施形態に係る評価方法は、評価装置10を動作させることによって実施される。
【0088】
図7に示すように、本実施形態では、上述したように、まず、付与部18が、構造部材のFEMモデルの複数の節点に対してそれぞれ、材料区分および仕様区分を付与する(ステップS1)。また、上述したように、対応関係生成部20が、複数の第2節点をそれぞれ、いずれかの第1節点に対応付ける(ステップS2)。なお、ステップS1とステップS2を実行する順番は特に限定されない。
【0089】
次に、上述したように、応力算出部12が、FEMモデルに荷重を与え、第1節点に生じる第1応力に関する数値(安全率、応力値)および第2節点に生じる第2応力に関する数値(安全率、応力値)を算出する(ステップS3)。
【0090】
次に、上述したように、比較部14が、複数の第2節点それぞれについて、対応付けられた第1節点との間で、第1応力に関する数値と第2応力に関する数値とを比較し、比較結果が予め設定された第1要件を満たしているか否かを判定する(ステップS4)。
【0091】
次に、上述したように、出力部16が、複数の第1節点それぞれに生じる応力に関する数値として第1応力に関する数値を出力する(ステップS5)。ただし、ステップS5において出力部16は、ステップS4において比較結果が第1要件を満たしていると判定された第2節点の第2応力に関する数値を、その第2節点に対応付けられた第1節点に生じる応力に関する数値として、第1応力に関する数値に代えて出力する。
【0092】
次に、上述したように、分布図作成部24が、出力部16の出力に基づいて、応力に関する数値の分布図を作成する(ステップS6)。また、上述したように、特定部26が、構造部材の検査対象位置を特定するとともに、特定した検査対象位置における検査の重要度を判定する(ステップS7)。また、上述したように、期間算出部28が、構造部材の実際に検査された位置の標準使用期間を算出する(ステップS8)。なお、ステップS6~S8を実行する順番は特に限定されない。
【0093】
[プログラム]
本実施の態に係るプログラムは、コンピュータに、図7に示すステップS1~S8を実行させるプログラムであればよい。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態における評価装置と評価方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのプロセッサは、応力算出部12、比較部14、出力部16、付与部18、対応関係生成部20、分布図作成部24、特定部26および期間算出部28として機能し、処理を行う。
【0094】
また、本実施形態では、記憶部22は、コンピュータに備えられたハードディスク等の記憶装置に、これらを構成するデータファイルを格納することによって、又はこのデータファイルが格納された記録媒体をコンピュータと接続された読取装置に搭載することによって実現されている。
【0095】
また、本実施形態に係るプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されてもよい。この場合、各コンピュータがそれぞれ、応力算出部12、比較部14、出力部16、付与部18、対応関係生成部20、分布図作成部24、特定部26および期間算出部28のいずれかとして機能してもよい。また、記憶部22は、本実施形態に係るプログラムを実行するコンピュータとは別のコンピュータ上に構築されていてもよい。
【0096】
[物理構成]
図8は、本発明の一実施形態に係る評価装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。コンピュータ110は、本実施形態に係るプログラムを実行することによって、本実施形態に係る評価装置10を実現する。
【0097】
図8に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。なお、コンピュータ110は、CPU111に加えて、又はCPU111に代えて、GPU(Graphics Processing Unit)、又はFPGA(Field-Programmable Gate Array)を備えていてもよい。
【0098】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであってもよい。
【0099】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボードおよびマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0100】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、およびコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0101】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))およびSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記録媒体、又はCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記録媒体が挙げられる。
【0102】
なお、本実施形態に係る評価装置10は、プログラムがインストールされたコンピュータではなく、各部に対応したハードウェアを用いることによって実現されてもよい、また、評価装置10は、一部がプログラムで実現され、残りの部分がハードウェアで実現されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、構造部材の検査対象位置を効率よく把握することができる。
【符号の説明】
【0104】
10 評価装置
12 応力算出部
14 比較部
16 出力部
18 付与部18
20 対応関係生成部
22 記憶部
24 分布図作成部
26 特定部
28 期間算出部
100 台車枠
200 FEMモデル

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8