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  • 特開-自動溶接方法及び自動溶接装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050250
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】自動溶接方法及び自動溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/127 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
B23K9/127 506Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160272
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武内 清
(72)【発明者】
【氏名】明石 大輔
(57)【要約】
【課題】複雑な処理を必要とすることなく、より簡便な装置と制御によって溶接線の位置を検出して自動溶接する方法の提供を目的とする。
【解決手段】溶接線に合わせて溶接トーチを動作しながら隅肉溶接する溶接機を用いた自動溶接方法において、前記溶接機は前記溶接線に対して傾斜した方向に進行し、前記溶接トーチから被溶接部材までの距離であるトーチ測定距離を測定し、前記トーチ測定距離が変化したとき、前記溶接トーチを前記溶接機の進行方向に対して略直交する第1直交方向かつ前記トーチ測定距離の測定方向に対して略直交して前記第1直交方向とは異なる第2直交方向に動作する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接線に合わせて溶接トーチを動作しながら隅肉溶接する溶接機を用いた自動溶接方法において、
前記溶接機は前記溶接線に対して傾斜した方向に進行し、
前記溶接トーチから被溶接部材までの距離であるトーチ測定距離を測定し、
前記トーチ測定距離が変化したとき、前記溶接トーチを前記溶接機の進行方向に対して略直交する第1直交方向かつ前記トーチ測定距離の測定方向に対して略直交して前記第1直交方向とは異なる第2直交方向に動作する
ことを特徴とする自動溶接方法。
【請求項2】
前記溶接機が進行方向に進む際に、前記トーチ測定距離の大きさを維持するように、前記溶接トーチを前記第1直交方向及び前記第2直交方向に移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の自動溶接方法。
【請求項3】
前記被溶接部材は積層された2枚の鋼板であり、
前記溶接トーチの伸長は、前記トーチ測定距離が、前記溶接トーチから前記2枚の鋼板のうちの上側に載置された鋼板上面までの距離に対して、前記溶接トーチから前記2枚の鋼板のうちの下側に載置された鋼板上面までの距離に変化した際に行う
ことを特徴とする請求項2に記載の自動溶接方法。
【請求項4】
延伸ガイドと、当該延伸ガイドに沿って走行し、被溶接部材を溶接する溶接トーチを有する台車とを備えた自動溶接装置であって、
前記延伸ガイドは被溶接部材の溶接線に対して傾斜した方向に延伸してなり、
前記台車は、前記溶接トーチと前記被溶接部材までのトーチ測定距離を測定する距離測定部と、前記距離測定部の測定データに基づいて所定距離に合致するかを判定する距離判定部と、前記距離判定部に基づいて前記溶接トーチを移動可能なトーチ移動部とを有し、
前記台車が進行する際、前記トーチ測定距離が前記所定距離を維持可能となるように制御される
ことを特徴とする自動溶接装置。
【請求項5】
前記距離測定部は前記溶接トーチに対して前記台車の進行方向の前部側に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の自動溶接装置。
【請求項6】
前記溶接トーチは、その移動方向が前記延伸ガイドの延伸方向に対して略直交する第1直交方向かつ前記距離測定部の測定方向に対して略直交する第2直交方向となるように設定されている
ことを特徴とする請求項4または5に記載の自動溶接装置。
【請求項7】
前記台車は、前記溶接トーチと、前記距離測定部の位置をそれぞれ調整可能な位置調整機構を備える
ことを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の自動溶接装置。
【請求項8】
前記延伸ガイドはマグネットにより着脱可能であり、前記溶接線の長さに応じて複数の前記ガイドを連結可能に構成されている
ことを特徴とする請求項4から7のいずれかに記載の自動溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溶接トーチを動作させながら隅肉溶接を行う自動溶接方法、およびその自動溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク溶接において溶接継手を安定した品質で得ようとする場合、自動溶接が適用される。自動溶接には、溶接ロボットや台車が利用されており、溶接トーチを溶接線に追従して移動させながら溶接する方法などが採られており、溶接線を検出する検出手段等を備えた構成となっている。
【0003】
溶接トーチを溶接線に追従させるための溶接線の検出には、継手形状に応じた方法が提案されており、隅肉溶接では特許文献1や特許文献2に示された方法がある。特許文献1では溶接ロボットを用いた装置が開示されており、レーザ光線を溶接線近傍で走査し、カメラで捉えたレーザ光線の反射光の軌跡を処理することで溶接線を検出している。特許文献2では台車を用いた溶接方法が開示されており、複数のレーザ距離計を用いて台車と溶接線の傾きの有無を測定し、傾きが生じた際には台車を旋回して傾きの無い平行状態に修正するように走行台車の車輪動作が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-62566号公報
【特許文献2】特開平11-216566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の装置の場合、カメラで得たレーザ光線の軌跡の画像を処理するために、被溶接部の形状特定と、その形状に基づいた溶接線の検出が必要となる。したがって、レーザ光線の走査装置の他、精緻な形状特定と溶接線検出を行う複雑な装置が必要である。
【0006】
また、特許文献2の装置の場合は、複数種類の距離を測定する必要があり、複数の距離測定装置を備え、複数の車輪を制御して溶接線に対して台車を平行に保つための複雑な走行機能も備える。そのため、複数の距離測定装置の制御と、その測定結果の応じた車輪の旋回動作の制御を高精度かつ安定的に行う必要があり、制御面でも複雑化する。
【0007】
自動溶接の方法や装置を採用するに際し、装置や制御の複雑化は費用増加だけでなく、処理時間の増加や重量増加を招く恐れもある。
【0008】
そこで、本発明は、複雑な処理を必要とすることなく、より簡便な装置と制御によって溶接線の位置を検出して自動溶接する方法、およびそれを実現する自動溶接装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は溶接線に合わせて溶接トーチを動作しながら隅肉溶接する溶接機を用いた自動溶接方法において、次のようにする。
【0010】
前記溶接機は前記溶接線に対して傾斜した方向に進行し、前記溶接トーチから被溶接部材までの距離であるトーチ測定距離を測定し、前記トーチ測定距離が変化したとき、前記溶接トーチを前記溶接機の進行方向に対して略直交する第1直交方向かつ前記トーチ測定距離の測定方向に対して略直交して前記第1直交方向とは異なる第2直交方向に動作する。
【0011】
これにより、トーチ測定距離の変化に基づいて、その距離が所定距離となる位置まで上記のとおりに溶接トーチを動作(移動)させるだけで所望する溶接線に沿った良好な溶接を行うことができる。つまり、簡易な手段及び制御で安定的な一定品質の溶接を実現することができる。
【0012】
また、本発明は、延伸ガイドと、当該延伸ガイドに沿って走行し、被溶接部材を溶接する溶接トーチを有する台車とを備えた自動溶接装置においては、次の構成を備える。
【0013】
前記延伸ガイドは被溶接部材の溶接線に対して傾斜した方向に延伸してなり、前記台車は、前記溶接トーチと前記被溶接部材までのトーチ測定距離を測定する距離測定部と、前記距離測定部の測定データに基づいて所定距離に合致するかを判定する距離判定部と、前記距離判定部に基づいて前記溶接トーチを移動可能なトーチ移動部とを有し、前記台車が進行する際、前記トーチ測定距離が前記所定距離を維持可能となるように制御される。
【0014】
この構成により、距離判定部の判定に応じて所定距離に合致するまでトーチ移動部が溶接トーチ部を移動させることで良好な溶接を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溶接トーチから被溶接部材までの一方向に沿った距離測定に基づいて、その測定距離(トーチ測定距離)が所定の値に合致するように溶接トーチの位置制御をすることで一定品質の溶接を行うことができ、従来よりも簡便な制御方法と簡便な装置構成の自動溶接方法および自動溶接装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の一つである塵芥車の外観を示す図である。
図2】(a)は本発明の実施形態の一つである塵芥車のボデーの図2のA-A断面図である。(b)はB部の拡大図である。
図3】本発明の実施形態に係る自動溶接装置全体の構成示す正面図である。
図4】レール、被溶接部材、溶接線および台車の関係を示す上面図である。
図5】溶接トーチとレーザ距離計を適切な位置に設定した状態を示す図である。
図6】溶接線および端部付近の拡大図で(a)はレーザ距離計のレーザ光線が上側の鋼製部材に照射されている状態、(b)はトーチ部が右側に移動して下側の鋼製部材に照射されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
図1は本発明に係る自動溶接装置の溶接対象となる荷箱11が架装された塵芥車1を示している。荷箱11は車両前後方向を長手方向とするシャシフレーム上に搭載された鋼製の箱体となっており、車両前後方向を長手方向とする延伸した形状を有している。
【0018】
図2(a)は、図1中の荷箱11のA-A断面図である。図示のとおり、荷箱11は複数の金属製の板体(鋼製部材)が組み合わされてなる。本実施形態では、この鋼製部材同士が接合されてなるB部分の溶接を中心に説明する。B部分の拡大図となる図2(b)に示すとおり、荷箱の床にあたる鋼製部材13の上に鋼製部材14が重ねて配置されている。本実施形態では、鋼製部材13の上面と鋼製部材14の端面とが溶接される。鋼製部材13の上面と鋼製部材14の端面が交わってなるとともに車両前後方向を長手方向とする交線が溶接線12となる。本実施形態では溶接線12に沿って進むように溶接を行う。このため、複数の鋼製部材が互いに点溶接(車両前後方向に沿って数か所ずつ局所的に溶接)することで仮組状態とすることで、図示するように上下左右が複数の鋼製部材で囲まれた空間S内に自動溶接装置を入れて車両前後方向に沿って連続的に溶接(本溶接)する。
【0019】
連続的に溶接するための本実施形態に係る自動溶接装置2の構成を、図3を用いて説明する。図3は自動溶接装置2の正面図である。
自動溶接装置2は、鋼製部材13上に設置されたレール3と、レール3上を走行する台車4を備えており、台車4には上部に設けられた制御部41と、側方(X軸負方向側)に延出したアーム42と、アーム42に取付けられて下方を向いた状態のトーチ部43とが設けられている。
【0020】
レール3は、台車4の走行をガイドする機能を有し、車両前後方向に溶接線に対して水平面上で傾斜した方向に延びる長尺部材となっている。レール3は、台座部301とガイド部302とを有し、台座部301には下部に固定用のマグネット303を備え、マグネット303の磁力を介して鋼製部材13の上面に固定される。ガイド部302は台座部301の上に固定された状態で設けられており、略逆T字状断面を有する。なお、台座部301及びガイド部302のいずれも上記傾斜した方向に延びる長尺部材となっている。
【0021】
台車4は、上述した制御部41、アーム42、及びトーチ部43の他に、ローラ50とローラ駆動部51とを備える。ローラ50は台車4の前後に1組ずつの計2組あり、その1組が図示されており、ガイド部302における略逆T字状の起立部を転動する4つのローラ部を有している。4つのローラ部のうちの2つが、ガイド部302の起立部側面(図中の右側面)を転動し、1つのローラ部が起立部の反対側側面(図中の左側面)を転動し、さらに残りの1つのローラが上記起立部の上面を転動するように設けられている。なお、前側のローラ1組は後ろ側の1組に重複するため図示されていない。これらのローラ部によって、台車4はガイド部302の延伸方向に沿って安定的に移動することができる。ローラ駆動部51は、ローラ50を駆動する駆動源(不図示)を有し、自動溶接を開始する適時のタイミングで駆動源のオンまたはオフ制御が行われる。
【0022】
制御部41は、ローラ駆動源51に接続されて駆動制御指令の出力が可能となっているとともに、後述するアーム駆動部422、距離測定部432、及び距離判定部(不図示)にも接続されてデータの入出力が可能となっている。
【0023】
アーム42は、台車4との接合部421と、接合部421から水平方向に延びたアーム駆動部422と、アーム駆動部422に取り付けられて水平方向に移動可能なアーム移動部423とで構成される。アーム移動部423は、アーム駆動部422によって台車4に対して水平方向に移動可能で、アーム駆動部422は電動モータとボールねじによるユニット、又は電動モータとベルトによるユニット等の既知の構成となっている。また、アーム移動部423にはトーチ部43が取り付けられている。
【0024】
トーチ部43は、アーク溶接を行う溶接トーチ431と、溶接トーチ431と鋼製部材13,15までの距離(トーチ測定距離)を測定する距離測定部432と、距離測定部432の測定機能を阻害しないように設けられた遮光板433(図3では破線で図示)とを備えている。
【0025】
溶接トーチ431は、図示のとおり鋼製部材13,15で形成される溶接線の部位を指向するように設けられており、鋼製部材13,15を隅肉溶接可能となっている。距離測定部432は、トーチ部43の所定箇所から2枚の鋼製部材のうちの上側にある鋼製部材14の上面までの距離を測定可能なレーザ距離計432aを備えてなる。距離測定部432は、溶接トーチ431に対して台車4の進行方向前側となる位置に隣接した状態で設けられており、鋼製部材14にレーザ光線を照射し、その反射光によって距離を測定する。測定した距離(トーチ測定距離)の情報は制御部41に設けられている距離判定部に送られる。距離判定部では、距離測定部432が測定して出力したデータが予め設定した所定の大きさに合致するか否かの判定を行う。制御部41は、距離判定部の判定結果に基づいてアーム駆動部422に対して駆動制御する指令を出力するする。遮光板433は、溶接のアーク光がレーザ距離計432aの測定に影響を与えることを防ぐため、レーザ距離計432aと溶接トーチ431の間に設けられている。トーチ部43には、さらに鋼製部材14との距離を一定に保持する倣い機構434が設けられており、倣い機構434は、鋼製部材14に向かって延びた棒状の延伸部材と、その延伸部材の先端に設けた車輪とを有し、トーチ部43と共に一体的に上下方向に動くことができ、重力等によって車輪を被溶接部材に押し付けることで、トーチ部43と鋼製部材14との距離を一定に保つことに役立つ。
【0026】
次に、自動溶接装置4を用いた鋼製部材13,15の隅肉溶接に関する自動溶接方法を説明する。
鋼製部材13,15と台車4の上面図となる図4に示すように、鋼製部材13上で車両前後方向(Y軸方向)を長手方向とする溶接線12に対してX軸方向に傾斜したレール3上に設けた台車4を矢印A方向に進行させる。溶接線12に対してレール3は、台車4が進行するにしたがって、溶接線12とレール3の距離が広くなるが、鋼製部材13の端部(起点)と端部(終点)のそれぞれの溶接線12に対する距離の差は、アーム移動部423の可動範囲に対して十分小さな値とする。なお、図4においては説明の便宜上、上側に位置する鋼製部材14の端部で隠れる溶接線12を一点鎖線で表示している。
【0027】
ただし、台車4を進行開始する前に、溶接トーチ431とレーザ距離計432aの位置をそれぞれの位置調整機構435a、435bを用いて調整しておく。本実施形態では、図5に示すように、レーザ距離計432aから照射されるレーザ光線は、鋼製部材14の上面(図中の右側端部)に対して略鉛直方向に照射される。この時、レーザ光線の照射位置103は図6(a)に示すように鋼製部材14の端部付近になるよう調整する。また、この時のレーザ距離計432aの測定距離を所定距離として設定とする。
【0028】
溶接を開始するとともに台車4の進行も開始させる。鋼製部材13のうねり等によって、台車4と溶接線12の位置関係が多少変化しても溶接トーチ431と溶接線12の上下方向の距離は倣い機構434によって一定に保たれる。一方で、レール3の延伸方向を溶接線12に対して傾斜させているため、台車4は進行するにしたがって少しずつ溶接線12(鋼製部材13)から離れる。
【0029】
特に、レーザ距離計432aのレーザ光線は鋼製部材14の右側端部に照射されているため、台車4の進行に伴って溶接トーチ431の位置が図上で少し右側にずれると、図6(b)に示すようにレーザ光線の照射対象が鋼製部材13の上面になる。このとき、レーザ距離計432aの測定距離(トーチ測定距離)が概ね上側に重ねられた鋼製部材14の板厚分だけ大きくなる。そのトーチ測定距離に関するデータを距離判定部に出力し、距離判定部において所定距離に合致しないと判定する。その判定結果に基づき、制御部41がアーム駆動部422に駆動指令を出力し、アーム駆動部422が駆動されるとアーム移動部423がアーム42の先端側に移動、具体的にはレールの延伸方向と略直交するとともに溶接線12に近づく方向(図4参照)で、かつレーザ距離計432aのレーザ照射方向(距離測定方向)に対して略直交するXY平面(図4参照)に沿って溶接線12に近づく方向に移動する。
【0030】
レーザ距離計432aによるトーチ測定距離の測定は、台車4の進行中は継続して行うものとし、トーチ測定距離の値が所定距離の値に戻るまでアーム駆動部422を駆動してアーム移動部423の移動も継続する。所定距離の値に合致するトーチ測定距離のデータが距離判定部に入力され、距離判定部が所定距離に合致することを判定すると、制御部41はアーム駆動部422への駆動指令を停止する。これによって、アーム移動部423の移動が停止し、溶接トーチ431の溶接線12に対するずれは解消され、溶接トーチ431が適切に溶接線12上での溶接を継続することができる。ている。
【0031】
本実施形態では、トーチ部43は台車4の進行とともに積極的に台車4を溶接線から離れるようにした上で、トーチ測定距離の測定と距離判定部による判定に基づく制御となっており、溶接トーチ431の溶接線12に対する距離の測定や溶接線の位置や形状を特定する手段や制御を備える必要がなくなり、従来よりも簡便な装置構成と制御で十分な精度での自動溶接が可能となる。また、溶接線12の位置を略鉛直方向を測定方向とするレーザ距離計432aの測定値の変化で検出しているため、複雑な処理を伴うことなく位置を検出することができる。
【0032】
なお、溶接トーチ431を適切に配置可能であれば、レール3を鋼製部材14に設置し、レール3の傾斜を台車4の進行とともに溶接線12に近づく方向に設置しても同様の制御が可能である。
【0033】
また、レーザ距離計432aのレーザ照射対象を下側にある鋼製部材13としつつ、レール3の延伸方向を台車4の進行と共に溶接線12に近づく方向に傾斜させた状態で設置しても同様の制御が可能である。ただし、仮溶接によって事前に溶接線12上に微小な溶接が数か所行われているために、この仮付け溶接箇所とレーザ光線の照射位置が重複すると、仮付けによる盛り上がり部分の影響でトーチ測定距離が短くなる。短くなる距離は仮付けの大きさによるため、トーチ測定距離の変化が鋼製部材14の板厚分よりも十分小さくなるような仮付けにする必要がある。なお、仮付けの影響が無視できる場合や、仮付けを実施しない場合はこの限りではない。
【0034】
本実施形態では主面同士を重ねた鋼製部材13,15の隅肉溶接を示したが、適用対象となる溶接継手の形状はこれに限定されるものではない。距離の変化によって溶接線の位置を検出できるのであれば、例えばT字に突き合わせた板の隅肉溶接等にも適用可能である。
【0035】
また、マグネット31を用いて被溶接部材12に固定するレール3としたが、固定手段はマグネット31には限定されない。
【0036】
また、レール3を被溶接部材12に固定して、その被溶接部材12上を台車4が移動する形態としたが、これに限定されない。例えば、溶接線12の上下左右が覆われてなる(囲われてなる)被溶接部材12を溶接対象としない場合には、被溶接部材とは異なる位置にレール3を設けて、そのレール3上を台車が移動する形式でも良い。
【0037】
また本実施形態ではレール3を1本で示したが、複数に分けて溶接線の長さに合わせて連結する形状としてもよい。レール3の延伸方向に関しても、本実施形態では直線状による一方向としたが、湾曲などの曲線状でも多段的に折れ曲がる形状でも構わない。溶接線12に関しても直線状のものには同様に限定されない。
【0038】
また距離測定手段はレーザ距離計432aには限定されない。距離の変化を適切に検出可能であれば、他の方法から適宜選択可能である。また、距離測定の方向に対しても被溶接部材に対して略鉛直方向に限定されず、溶接方法の簡便性や溶接装置の簡易性を阻害しない範囲で他の角度でも採用可能である。
【0039】
さらに、本実施形態では塵芥車1に架装される荷箱11を対象としているが、他種の車両に架装されるものでも、車両分野とは異なる分野の被溶接部材であっても構わない。
【符号の説明】
【0040】
1 塵芥車
11 荷箱
12 溶接線
13 鋼製部材 (下)
14 鋼製部材 (上)
2 自動溶接装置
3 レール
301 ガイド部
302 台座部
303 マグネット
4 台車
41 制御部
42 アーム
421 接合部
422 アーム駆動部
423 アーム移動部
43 トーチ部
431 溶接トーチ
432 距離測定部
432a レーザ距離計
433 遮光板
434 倣い機構
435a 位置調整機構
435b 位置調整機構
50 ローラ
51 ローラ駆動部
103 レーザ照射位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6