(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050256
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】表面形状測定方法及び表面形状測定装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/24 20060101AFI20230404BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G01B11/24 K
G01B11/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160278
(22)【出願日】2021-09-30
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】502340996
【氏名又は名称】学校法人法政大学
(71)【出願人】
【識別番号】591060382
【氏名又は名称】聖和精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083895
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【弁理士】
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一朗
(72)【発明者】
【氏名】中谷 暖
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA25
2F065AA49
2F065AA55
2F065BB05
2F065FF04
2F065FF61
2F065GG21
2F065LL08
2F065LL34
2F065QQ25
2F065QQ28
2F065QQ29
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】測定場所や測定可能な測定対象物の大きさの制約が比較的に少なく、且つ測定対象面の表面形状、特に基準面状に形成された傷や摩耗による凹部の大きさを測定することが可能となる表面形状測定方法を提供する。
【解決手段】当該方法は、測定対象面を有する測定対象物、及び測定対象面に対応する測定基準面を有するシリンドリカルレンズを準備するステップ(S100)と、測定対象面に塗料を塗布するステップ(S110)と、測定対象面と測定基準面との間に塗料が挟まれるようにしてシリンドリカルレンズを測定対象物に押し付けるステップ(S130)と、測定対象面と測定基準面との間に挟まれた塗料をシリンドリカルレンズを通して撮影するステップ(S140)と、撮影した画像の複数の位置での輝度値を取得するステップ(S150)と、輝度値から塗料の厚さ分布を推定して測定対象面の表面形状を求めるステップと、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象面を有する測定対象物、及び前記測定対象面に対応する測定基準面を有する基準透明体を準備するステップと、
前記測定対象面と前記測定基準面とのうちの少なくとも一方に塗料を塗布するステップと、
前記測定対象面と前記測定基準面との間に前記塗料が挟まれるようにして前記基準透明体を前記測定対象物に押し付けるステップと、
前記測定対象面と前記測定基準面との間に挟まれた前記塗料を前記基準透明体を通して撮影するステップと、
前記撮影するステップにおいて撮影した画像の複数の位置での輝度値を取得するステップと、
前記輝度値から前記塗料の厚さ分布を推定して前記測定対象面の表面形状を求めるステップと、
を含む、表面形状測定方法。
【請求項2】
前記表面形状を求めるステップは、前記測定対象面にある凹部の底と前記凹部の周辺部とにおける前記輝度値の差に基づいて前記底と前記周辺部との間の塗料の厚さの差を推定して前記凹部の深さを求めることを含む、請求項1に記載の表面形状測定方法。
【請求項3】
前記測定基準面が長手軸線方向に延びる断面円弧状の凸面であり、前記複数の位置が前記長手軸線方向に一直線上に並んだ位置である、請求項1又は2に記載の表面形状測定方法。
【請求項4】
前記基準透明体がシリンドリカルレンズである、請求項3に記載の表面形状測定方法。
【請求項5】
測定対象物の測定対象面の表面形状を測定するための表面形状測定装置であって、
前記測定対象面に対応する測定基準面を有する基準透明体と、
前記測定対象面と前記測定基準面との間に塗料が挟まれるようにして前記基準透明体が前記測定対象物に押し付けられた状態で、前記測定対象面と前記測定基準面との間に挟まれた前記塗料を前記基準透明体を通して撮影するようにされた撮像手段と、
前記撮像手段で撮影した画像の複数の位置での輝度値を取得し、前記輝度値に基づいて前記塗料の厚さ分布を推定して前記測定対象面の表面形状を求めるようにされた演算部と、
を備える表面形状測定装置。
【請求項6】
前記測定対象面を照らすための赤外線照明をさらに備え、前記撮像手段が赤外線カメラである、請求項5に記載の表面形状測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面形状測定方法及び表面形状測定装置に関し、より詳細には表面に形成された傷や摩耗部などの微細な凹部の大きさを測定するための表面形状測定方法及び表面形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表面の微細な形状を測定するための装置として、測定対象面に沿って触針を移動させたときの触針の上下の変位量を読み取ることにより表面形状を測定するようにした触針式の表面形状測定装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、平坦な表面上の僅かな歪みや凹凸の有無とその位置を確認するために、光明丹やブリューペーストのような塗料をその表面に塗布して別の基準となる平面を摺り合わせることも行なわれている(特許文献2)。この方法によれば、摺り合わせた後に表面上に塗料が多く残っている所が他の部分よりも凹んでいる部分であることが分かり、表面上の凹凸を視覚的に容易に確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-191631号公報
【特許文献2】特開2021-58975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に上述のような触針式の表面形状測定装置は、比較的に大型の据え置き型の装置である。また、測定機の構造上、測定可能な物の大きさは限られる。一方で、上述の塗料を使用した凹凸確認方法では、表面の凹凸の有無をその場で確認する事はできるが、凹部の深さなどの具体的な大きさを測定することは難しい。
【0006】
そこで本発明は、測定場所や測定可能な測定対象物の大きさの制約が比較的に少なく、且つ測定対象面の表面形状、特に基準表面上の傷や摩耗によって形成された凹部の大きさを測定することが可能となる表面形状測定方法および表面形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、
測定対象面を有する測定対象物、及び前記測定対象面に対応する測定基準面を有する基準透明体を準備するステップと、
前記測定対象面と前記測定基準面とのうちの少なくとも一方に塗料を塗布するステップと、
前記測定対象面と前記測定基準面との間に前記塗料が挟まれるようにして前記基準透明体を前記測定対象物に押し付けるステップと、
前記測定対象面と前記測定基準面との間に挟まれた前記塗料を前記基準透明体を通して撮影するステップと、
前記撮影するステップにおいて撮影した画像の複数の位置での輝度値を取得するステップと、
前記輝度値から前記塗料の厚さ分布を推定して前記測定対象面の表面形状を求めるステップと、
を含む、表面形状測定方法。
【0008】
当該表面形状測定方法においては、基準透明体を測定対象面に押し付けることによりそれらの間に挟まれた塗料を比較的容易に均一に薄く延ばすことができる。また、基準透明体を測定対象面から離そうとすると塗料が基準透明体に付着して持っていかれて塗料の表面が乱れる虞があるが、当該表面形状測定方法においては基準透明体を押し付けたままの状態で基準透明体を通して測定を行うため塗料の表面が荒れることがなく、安定した状態で測定を行うことができる。これらにより、測定のバラツキを小さくすることが可能となる。また、撮影した画像に基づいて表面形状を測定する方式であるので、従来の触針式の表面形状測定装置に比べて測定場所や測定可能な測定対象物の大きさの制約を比較的に小さくすることが可能となる。さらには、単に凹凸の有無や位置を確認するだけではなく、十分な測定精度で凹部の深さやその形状を測定することも可能となる。
【0009】
また、前記表面形状を求めるステップは、前記測定対象面にある凹部の底と前記凹部の周辺部とにおける前記輝度値の差に基づいて前記底と前記周辺部との間の塗料の厚さの差を推定して前記凹部の深さを求めることを含むようにすることができる。
【0010】
さらには、前記測定基準面が長手軸線方向に延びる断面円弧状の凸面であり、前記複数の位置が前記長手軸線方向に一直線上に並んだ位置であるようにすることができる。
【0011】
具体的には、前記基準透明体がシリンドリカルレンズであるようにすることができる。
【0012】
また本発明は、
測定対象物の測定対象面の表面形状を測定するための表面形状測定装置であって、
前記測定対象面に対応する測定基準面を有する基準透明体と、
前記測定対象面と前記測定基準面との間に塗料が挟まれるようにして前記基準透明体が前記測定対象物に押し付けられた状態で、前記測定対象面と前記測定基準面との間に挟まれた前記塗料を前記基準透明体を通して撮影するようにされた撮像手段と、
前記撮像手段で撮影した画像の複数の位置での輝度値を取得し、前記輝度値に基づいて前記塗料の厚さ分布を推定して前記測定対象面の表面形状を求めるようにされた演算部と、
を備える表面形状測定装置を提供する。
【0013】
具体的には、前記測定対象面を照らすための赤外線照明をさらに備え、前記撮像手段が赤外線カメラであるようにすることができる。
【0014】
以下、本発明に係る表面形状測定方法及び表面形状測定装置の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表面形状測定装置を示す概略図である。
【
図2】
図1のA-A線における拡大断面図であり、測定対象物の測定対象面に形成された凹部を示す図である。
【
図3】従来の触針式の表面形状測定装置によって測定対象面を測定した結果を示す図である。
【
図4】
図1の表面形状測定装置によってシリンドリカルレンズを通して撮影した画像の輝度値を示す図である。
【
図5】
図4のラインプロットに沿った輝度値を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る表面形状測定方法の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る表面形状測定装置10は、
図1に示すように、赤外線カメラ(撮像手段)12と、赤外線照明14と、偏光フィルタ16と、赤外線カメラ12に接続された演算部18とを備える。
図1に示す測定対象物1は、断面円弧状の測定対象面2を有する。測定対象物1を照らすための赤外線照明14は、有効波長域が940nm~960nmで、ピーク波長が950nmである。当該表面形状測定装置10はさらにシリンドリカルレンズ(基準透明体)20を備え、このシリンドリカルレンズ20は、後述するように、測定対象物1の測定対象面2とシリンドリカルレンズ20の凸面(測定基準面)22との間に塗料3が挟まれるようにして測定対象面2の上に置かれる。
図2に示すように、この測定対象面2には傷又は摩耗により形成された凹部4があり、その中は塗料3で満たされている。凹部4の部分は他の部分よりも塗料3が厚くなるため、シリンドリカルレンズ20を通して測定対象面2を観察すると、その部分はその深さに応じて塗料3が他の部分よりも濃い色に見える。なお、本実施形態においては、塗料3として光明丹をマシンオイルと混ぜてペースト状にしたものを使用しているが、ブリューペーストや蛍光塗料などの他の材料を塗料3として使用してもよい。
【0017】
図2に示す測定対象面2の凹部4を触針式の表面形状測定装置で直接測定した結果が
図3に示されている。
図3における「長さ」方向は、
図1における奥行き方向(すなわち
図2における横方向)に対応している。ノイズを除去するために測定データに対してローパスフィルタを適用し、得られた曲線から測定対象面2の高さ位置5と凹部4の底6の位置を特定し、その間の距離dを凹部4の最大深さDとして求めた。触針式の表面形状測定装置で測定した測定対象物1の凹部4の最大深さDは、1.651μmであった。
【0018】
当該表面形状測定装置10の赤外線カメラ12でシリンドリカルレンズ20を通して測定対象面2を撮影した画像を輝度値に変換すると
図4のようになる。ここで、元の画像サイズは1280ピクセル×960ピクセルであるが、
図4の画像は、X軸方向については160~1120ピクセルの範囲に切り取っている。なお、当該表面形状測定装置10において使用したシリンドリカルレンズ20の幅の実寸は10mmであり、元の画像上でのシリンドリカルレンズ20の幅は1032ピクセルであったので、撮影した画像は1ピクセル当り9.690μmである。
図4から分かるように、画像中心付近の凹部4の位置では塗料3が厚くその色が濃くなることから輝度値が大きくなり、凹部4から上下に離れた位置では、シリンドリカルレンズ20が測定対象面2における凹部4の周辺部7に実質的に接触していて塗料3が極めて薄いか又は無いため塗料3の色は薄くなり輝度値は小さくなる。
図4から、凹部4の位置での輝度値の平均は約130であり、凹部4のない周辺部7の位置での輝度値の平均は約150である。よって、凹部4と周辺部7とにおける輝度値の差は20程度であり、凹部4の深さDは従来の触針式の表面形状測定装置による測定によれば1.651μmであるので、当該表面形状測定装置10においては、輝度値の一階調当り0.08255μm程度になると考えられる。以下の実験結果は、この分解能をもとに凹部4の最大深さDを求めている。なおこの分解能は、カメラのレンズや照明、偏光フィルタの有無などにより変わる。
【0019】
当該表面形状測定装置10を使用して測定対象面2の表面形状、特に測定対象面2上に形成されている凹部4の深さDを測定する表面形状測定方法を
図6を参照して説明する。まず、測定対象面2を有する測定対象物1、及び測定対象面2に対応する凸面22を有するシリンドリカルレンズ20を準備する(S100)。次に、測定対象面2に塗料3を薄く塗布する(S110)。そして、測定対象面2と凸面22との間に塗料3が挟まれるようにしてシリンドリカルレンズ20を測定対象物1に押し付ける(S120)。このとき、間に挟まれた塗料3ができるだけ薄く均一に延びるようにする。なお、ここでの説明では塗料3を測定対象面2に塗布しているが、シリンドリカルレンズ20の凸面22に塗布したり、測定対象面2と凸面22の両方に塗布したりしてもよい。続いて、測定対象面2とシリンドリカルレンズ20の凸面22との間に挟まれた塗料3を赤外線照明14を照射した状態でシリンドリカルレンズ20を通して赤外線カメラ12で撮影する(S130)。撮影した画像データは演算部18に送られる。演算部18は、撮影した画像をピクセル毎に輝度値に変換する。演算部18はさらに、シリンドリカルレンズ20のX方向での中心となる位置(
図4の480ピクセルの位置)でY方向(長手軸線方向)に一直線上に並んだ各ピクセルでの輝度値を取得する(S140)。そして、取得した輝度値から塗料3の厚さ分布を推定して測定対象面2の表面形状を求める(S150)。当該実施形態においては、具体的には、
図5に示すように、取得した輝度値データに含まれるノイズを除去するためにローパスフィルタを適用し、得られた曲線Cから凹部4の底6とその周辺部7の位置を特定して、凹部4の底6と周辺部7との間での輝度値の差aを求め、周辺部7に対する凹部4の底6の位置での塗料3の厚さを推定する。上述のとおり、塗料3の膜厚が大きいほど(すなわち、凹部4の深さが大きいほど)、塗料3の色が濃くなり輝度値が大きくなる。当該実施形態では、最も大きい極大点Mが凹部4の底6の位置であり、曲線Cの両端付近にある2つの極小点Nが凹部4の周辺部7の位置であると判断するようにしている。図示の例では、2つの極小点Nを結んで形成される周辺部7の高さ位置5と凹部4の底6との間の輝度値の差aは22.36である。上記検討から輝度値の一階調当りの深さが0.08255μmであるとすると、輝度値の差22.36は塗料3の厚さ1.846μmに相当することになる。よって、凹部4の底6と周辺部7との間の塗料3の厚さの差は1.846μmであると推定できる。したがって、測定対象物1の測定対象面2にある凹部4の深さDは1.846μmであると求めることができる。
【0020】
当該表面形状測定方法の再現性を確認するために上述の測定方法(S100~S150)を10回繰り返して行なったときの測定結果を表1に示す。
【0021】
【0022】
従来の触針式の表面形状測定装置で測定した凹部4の深さDが1.651μmであったのに対して、当該表面形状測定装置10で測定した凹部4の深さDの10回の平均値は1.798μmである。従来の触針式の表面形状測定装置の測定結果に対して0.147μmの差があるが、これは輝度値の一階調当りの塗料3の厚さ(凹部4の深さ)をより適切に設定することにより小さくなると考えられる。標準偏差は0.0683μmであり、0.1μm以下の測定精度を満たしている。この結果から、当該表面形状測定装置10による上記測定方法は、0.1μm以下の高い再現性を有することが分かる。
【0023】
次に、赤外線カメラ12による画像撮影と画像解析の繰り返し性を確認するために、上述のS120において測定対象面2と凸面22との間に塗料3が挟まれるようにしてシリンドリカルレンズ20を測定対象面2に押し付けた後に、その測定対象物1とシリンドリカルレンズ20のセットに対してS130~S150のステップを10回繰り返して行なったときの測定結果を表2に示す。
【0024】
【0025】
標準偏差は0.0291μmであり、0.1μm以下の測定精度を十分に満たしている。この結果から、当該方法は0.03μm以下の高い繰り返し性を有していることが分かる。
【0026】
当該表面形状測定装置10による上述の表面形状測定方法においては、基準透明体であるシリンドリカルレンズ20を測定対象面2に押し付けることにより、間に挟まれた塗料3を比較的容易に均一に薄く延ばすことができる。また、光明丹を使用した従来の通常の凹凸確認方法では測定対象面を基準面と摺り合わせた後に測定対象面を基準面から離して表面に付着した光明丹を観察するが、測定対象面を基準面から離すときに光明丹の一部が基準面に付着して持って行かれることがある。これに対して本発明に係る表面形状測定方法においては、シリンドリカルレンズ20を測定対象面2に押し付けたままの状態でシリンドリカルレンズ20を通して測定対象面2及び塗料3の撮影を行なうため、塗料がより安定した状態で測定を行なうことができる。これらにより、測定のバラツキを小さくすることができる。また、塗料3を撮影した画像データに基づいて表面形状を測定することができるため、赤外線カメラ12を配置するスペースを確保できればよく、測定可能な物の大きさに対する制約が小さくなり、その場での測定を行ないやすい。さらには、単に凹凸の有無を確認するのではなく、凹部4の深さDやその表面形状も測定することができ、且つ0.1μm以下の高い測定精度も実現することが可能である。なお、上記実施形態では、赤外線カメラ12と赤外線照明14を利用することにより、蛍光灯などの他の光源による測定への影響を最小限に抑えるようにしている。
【0027】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の表面形状測定装置および表面形状測定方法は、凹状の面だけではなく、平坦な面や凸状の面などを測定対象面とすることができる。また、基準透明体は、シリンドリカルレンズに限定されず、測定対象面の形状に合わせて、例えば平らなガラスプレートや円錐状レンズ(コーンレンズ)、又は球面、非球面、若しくはトーリック面を有するレンズなどとすることもできる。また、上記実施形態における基準透明体としてのシリンドリカルレンズはガラスにより形成されたものであるが、基準透明体は透明な樹脂材料などの他の材料で形成したり、可視光は透過しないが赤外光は透過するシリコン単結晶でできたシリコンレンズとしたりすることもできる。さらに上記実施形態では、塗料の厚さ分布として凹部の底の位置における周辺部との塗料の厚さの差を推定して凹部の深さのみを最終的には求めているが、塗料の厚さの2次元的な分布を推定して凹部の長さや凹部の2次元形状を測定結果として求めることもできる。また上記実施形態では表面形状を特定するために一直線上に並んだ点(ラインプロット)上の輝度値を利用しているが、ある範囲内の面上の全ての点又はいくつかの点における輝度値を利用して3次元的な表面形状を求めることもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 測定対象物
2 測定対象面
3 塗料
4 凹部
5 高さ位置
6 底
7 周辺部
10 表面形状測定装置
12 赤外線カメラ(撮像手段)
14 赤外線照明
16 偏光フィルタ
18 演算部
20 シリンドリカルレンズ(基準透明体)
22 凸面(測定基準面)
a 輝度値の差
C 曲線
d 距離
D 深さ
M 極大点
N 極小点