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特開2023-50258二段歯車の製造方法、金型部材の製造方法及び金型部材
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  • 特開-二段歯車の製造方法、金型部材の製造方法及び金型部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050258
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】二段歯車の製造方法、金型部材の製造方法及び金型部材
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20230404BHJP
   F16H 55/06 20060101ALI20230404BHJP
   F16H 55/17 20060101ALI20230404BHJP
   B29C 33/14 20060101ALI20230404BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B29C45/14
F16H55/06
F16H55/17 Z
B29C33/14
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160280
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】599109906
【氏名又は名称】住友電工ファインポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】岡部 昭平
(72)【発明者】
【氏名】井上 幹久
【テーマコード(参考)】
3J030
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3J030BA01
3J030BA05
3J030BC01
3J030BC02
3J030BC08
3J030BC10
4F202AA23
4F202AA29
4F202AA34
4F202AD03
4F202AD15
4F202AD18
4F202AD21
4F202AD23
4F202AD24
4F202AG05
4F202AG19
4F202AG26
4F202AG28
4F202AH04
4F202AH12
4F202AJ02
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CD18
4F202CK11
4F202CK25
4F202CK32
4F202CK81
4F202CQ01
4F202CQ05
4F202CQ10
4F206AA23
4F206AA29
4F206AA34
4F206AD03
4F206AD15
4F206AD18
4F206AD21
4F206AD23
4F206AD24
4F206AG05
4F206AG19
4F206AG28
4F206AH04
4F206AH12
4F206AJ02
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JN25
4F206JQ81
4F206JW34
(57)【要約】
【課題】寸法精度及び耐久性に優れる二段歯車を容易に製造可能な二段歯車の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係る二段歯車の製造方法は、軸部と、上記軸部の第1の位置に配置され、周面に第1歯車を有する金属製の第1歯車部と、上記軸部の第2の位置に配置され、周面にピッチ円直径が上記第1歯車よりも大きい第2歯車を有する樹脂製の第2歯車部とを備える二段歯車の製造方法であって、上記第1歯車部を作製する工程と、上記第2歯車部を作製する工程とを備え、上記第2歯車部を作製する工程では、金型を用いた射出成形により上記第2歯車部を作製する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と、
上記軸部の第1の位置に配置され、周面に第1歯車を有する金属製の第1歯車部と、
上記軸部の第2の位置に配置され、周面にピッチ円直径が上記第1歯車よりも大きい第2歯車を有する樹脂製の第2歯車部と
を備える二段歯車の製造方法であって、
上記第1歯車部を作製する工程と、
上記第2歯車部を作製する工程と
を備え、
上記第2歯車部を作製する工程では、金型を用いた射出成形により上記第2歯車部を作製する二段歯車の製造方法。
【請求項2】
上記第1歯車部を作製する工程では、切削加工により上記第1歯車を形成する請求項1に記載の二段歯車の製造方法。
【請求項3】
上記金型に、上記第1歯車部が篏合する穴が設けられており、
上記穴が、電極を用いた放電加工により形成されている請求項1又は請求項2に記載の二段歯車の製造方法。
【請求項4】
上記電極の周面に歯車が設けられており、
上記第1歯車部を作製する工程では、上記電極の歯車と同じ加工方法で上記第1歯車を形成する請求項3に記載の二段歯車の製造方法。
【請求項5】
上記第1歯車がハスバ歯車である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の二段歯車の製造方法。
【請求項6】
軸部と、
上記軸部の第1の位置に配置され、周面に第1歯車を有する金属製の第1歯車部と、
上記軸部の第2の位置に配置され、周面にピッチ円直径が上記第1歯車よりも大きい第2歯車を有する樹脂製の第2歯車部と
を備える二段歯車の製造に用いられる射出成形用の金型部材の製造方法であって、
上記第1歯車部が篏合する穴を、電極を用いた放電加工により形成する工程を備え、
上記電極の周面に、上記第1歯車と同じ加工方法で形成された歯車が設けられている金型部材の製造方法。
【請求項7】
軸部と、
上記軸部の第1の位置に配置され、周面に第1歯車を有する金属製の第1歯車部と、
上記軸部の第2の位置に配置され、周面にピッチ円直径が上記第1歯車よりも大きい第2歯車を有する樹脂製の第2歯車部と
を備える二段歯車の製造に用いられる射出成形用の金型部材であって、
上記第1歯車部が篏合する穴を有しており、
上記第1歯車部が篏合した状態で、上記第2歯車部を形成する射出成形用樹脂の浸入が防止されるように上記穴と上記第1歯車とのクリアランスが保たれる金型部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二段歯車の製造方法、金型部材の製造方法及び金型部材に関する。
【背景技術】
【0002】
動力を伝達するための部品として、軸部材の中心軸方向に沿ってピッチ円直径の異なる2つの歯車部が配置されている二段歯車が用いられている。この二段歯車は、自動車、自転車等の車両や、電子部品、産業ロボットなどに広く利用されている。この二段歯車としては、樹脂を用いた射出成形によって形成されたものが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-236136号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る二段歯車の製造方法は、軸部と、上記軸部の第1の位置に配置され、周面に第1歯車を有する金属製の第1歯車部と、上記軸部の第2の位置に配置され、周面にピッチ円直径が上記第1歯車よりも大きい第2歯車を有する樹脂製の第2歯車部とを備える二段歯車の製造方法であって、上記第1歯車部を作製する工程と、上記第2歯車部を作製する工程とを備え、上記第2歯車部を作製する工程では、金型を用いた射出成形により上記第2歯車部を作製する。
【0005】
本開示の別の一態様に係る金型部材の製造方法は、軸部と、上記軸部の第1の位置に配置され、周面に第1歯車を有する金属製の第1歯車部と、上記軸部の第2の位置に配置され、周面にピッチ円直径が上記第1歯車よりも大きい第2歯車を有する樹脂製の第2歯車部とを備える二段歯車の製造に用いられる射出成形用の金型部材の製造方法であって、上記第1歯車部が篏合する穴を、電極を用いた放電加工により形成する工程を備え、上記電極の周面に、上記第1歯車と同じ加工方法で形成された歯車が設けられている。
【0006】
本開示のさらに別の一態様に係る金型部材は、軸部と、上記軸部の第1の位置に配置され、周面に第1歯車を有する金属製の第1歯車部と、上記軸部の第2の位置に配置され、周面にピッチ円直径が上記第1歯車よりも大きい第2歯車を有する樹脂製の第2歯車部とを備える二段歯車の製造に用いられる射出成形用の金型部材であって、上記第1歯車部が篏合する穴を有しており、上記第1歯車部が篏合した状態で、上記第2歯車部を形成する射出成形用樹脂の浸入が防止されるように上記穴と上記第1歯車とのクリアランスが保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る二段歯車の製造方法を示すフロー図である。
図2図2は、図1の二段歯車の製造方法によって製造される二段歯車の模式的斜視図である。
図3図3は、図2の二段歯車のIII-III線断面図である。
図4図4は、図1の二段歯車の製造方法における第2歯車部を作製する工程を示す模式的端面図である。
図5図5は、本開示の一実施形態における金型部材の穴に第1歯車部が篏合している状態を示す図4のV-V線断面図である。
図6図6は、本開示の一実施形態に係る金型部材の製造方法を示すフロー図である。
図7図7は、図6の金型部材の製造方法における形成する工程を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載されている二段歯車は、全体が合成樹脂から形成されているため、成形時における合成樹脂の膨張収縮に起因して寸法変化を生じやすい。また、この二段歯車は、2つの歯車がいずれも合成樹脂から形成されているため、用途によっては耐久性が不十分になるおそれがある。
【0009】
本開示は上記事情に基づいてなされたものであり、寸法精度及び耐久性に優れる二段歯車を容易に製造可能な二段歯車の製造方法の提供を目的とする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示の一態様に係る二段歯車の製造方法は、寸法精度及び耐久性に優れる二段歯車を容易に製造することができる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0012】
本開示の一態様に係る二段歯車の製造方法は、軸部と、上記軸部の第1の位置に配置され、周面に第1歯車を有する金属製の第1歯車部と、上記軸部の第2の位置に配置され、周面にピッチ円直径が上記第1歯車よりも大きい第2歯車を有する樹脂製の第2歯車部とを備える二段歯車の製造方法であって、上記第1歯車部を作製する工程と、上記第2歯車部を作製する工程とを備え、上記第2歯車部を作製する工程では、金型を用いた射出成形により上記第2歯車部を作製する。
【0013】
当該二段歯車の製造方法では、上記第1歯車部が金属製であるので、この第1歯車部の強度及び寸法精度が高い。また、当該二段歯車の製造方法は、上記第2歯車部を作製する工程で、金型を用いた射出成形によって上記第2歯車部を作製するので、上記軸部に対する上記第2歯車部の密着力を高めつつ、動力を伝達する際に負荷のかかりやすい部分に適度の弾性を持たせることができる。従って、当該二段歯車の製造方法は、得られる二段歯車の耐久性を高めることができる。
【0014】
上記第1歯車部を作製する工程では、切削加工により上記第1歯車を形成するとよい。このように、上記第1歯車部を作製する工程で、切削加工により上記第1歯車を形成することによって、上記第1歯車を所望の形状に容易に形成することができる。
【0015】
上記金型に、上記第1歯車部が篏合する穴が設けられており、上記穴が、電極を用いた放電加工により形成されているとよい。当該二段歯車の製造方法は、上記第1歯車部を作製する工程と、上記第2歯車部を作製する工程とをこの順で行うことで、二段歯車を製造することができる。この際に、上記金型に、上記第1歯車部が篏合する穴が設けられており、上記穴が、電極を用いた放電加工により形成されていることによって、上記第1歯車部を上記穴に篏合することで、上記軸部の第2の位置を上記金型内に容易に位置決めすることができる。その結果、上記第2歯車部を容易に作製することができる。
【0016】
上記電極の周面に歯車が設けられており、上記第1歯車部を作製する工程では、上記電極の歯車と同じ加工方法で上記第1歯車を形成するとよい。このように、上記電極の周面に歯車が設けられており、上記第1歯車部を作製する工程で、上記電極の歯車と同じ加工方法で上記第1歯車を形成することで、上記第1歯車の形状を上記穴の周面形状に合致させることができる。その結果、上記第2歯車部を作製する工程で、射出成形用樹脂が上記第1歯車部と上記穴との隙間に浸入することを容易かつ確実に抑制することできる。これにより、上記第1歯車部への樹脂の付着を抑制することで、上記第1歯車部の寸法精度をより高めることができると共に、上記金型に対する樹脂の付着を抑制することで、二段歯車の製造効率を格段に高めることができる。
【0017】
上記第1歯車がハスバ歯車であるとよい。このように、上記第1歯車がハスバ歯車であることによって、上記第1歯車の強度を高めると共に、動力の伝達を円滑に行うことができる。
【0018】
本開示の別の一態様に係る金型部材の製造方法は、軸部と、上記軸部の第1の位置に配置され、周面に第1歯車を有する金属製の第1歯車部と、上記軸部の第2の位置に配置され、周面にピッチ円直径が上記第1歯車よりも大きい第2歯車を有する樹脂製の第2歯車部とを備える二段歯車の製造に用いられる射出成形用の金型部材の製造方法であって、上記第1歯車部が篏合する穴を、電極を用いた放電加工により形成する工程を備え、上記電極の周面に、上記第1歯車と同じ加工方法で形成された歯車が設けられている。
【0019】
当該金型部材の製造方法は、上記電極の周面に、上記第1歯車と同じ加工方法で形成された歯車が設けられているので、上記金型部材に形成される上記穴の周面形状を上記第1歯車の形状に合致させることができる。その結果、射出成形用樹脂が上記第1歯車部と上記穴との隙間に浸入することを容易かつ確実に抑制することできる。
【0020】
本開示のさらに別の一態様に係る金型部材は、軸部と、上記軸部の第1の位置に配置され、周面に第1歯車を有する金属製の第1歯車部と、上記軸部の第2の位置に配置され、周面にピッチ円直径が上記第1歯車よりも大きい第2歯車を有する樹脂製の第2歯車部とを備える二段歯車の製造に用いられる射出成形用の金型部材であって、上記第1歯車部が篏合する穴を有しており、上記第1歯車部が篏合した状態で、上記第2歯車部を形成する射出成形用樹脂の浸入が防止されるように上記穴と上記第1歯車とのクリアランスが保たれる。
【0021】
当該金型部材は、上記第1歯車部が篏合する穴への射出成形用樹脂の浸入が防止されるので、上記第1歯車部への樹脂の付着を抑制することで、上記第1歯車部の寸法精度をより高めることができると共に、上記金型部材に対する樹脂の付着を抑制することで、二段歯車の製造効率を格段に高めることができる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
<二段歯車の製造方法>
当該二段歯車の製造方法は、軸部と、上記軸部の第1の位置に配置され、周面に第1歯車を有する金属製の第1歯車部と、上記軸部の第2の位置に配置され、周面にピッチ円直径が上記第1歯車よりも大きい第2歯車を有する樹脂製の第2歯車部とを備える二段歯車を製造する。図1に示すように、当該二段歯車の製造方法は、第1歯車部を作製する工程S1と、第2歯車部を作製する工程S2とを備える。第2歯車部を作製する工程S2では、金型を用いた射出成形により上記第2歯車部を作製する。なお、以下では、第1歯車部を作製する工程S1を、「第1歯車部作製工程S1」ともいい、第2歯車部を作製する工程S2を、「第2歯車部作製工程S2」ともいう。
【0024】
当該二段歯車の製造方法では、上記第1歯車部が金属製であるので、この第1歯車部の強度及び寸法精度が高い。また、当該二段歯車の製造方法は、第2歯車部作製工程S2で、金型を用いた射出成形によって上記第2歯車部を作製するので、上記軸部に対する上記第2歯車部の密着力を高めつつ、動力を伝達する際に負荷のかかりやすい部分に適度の弾性を持たせることができる。従って、当該二段歯車の製造方法は、得られる二段歯車の耐久性を高めることができる。
【0025】
〈二段歯車〉
図2及び図3を参照して、当該二段歯車の製造方法によって製造される二段歯車の一例について説明する。図2及び図3に示す二段歯車10は、軸部1aと、軸部1aの第1の位置11aに配置される金属製の第1歯車部1bと、軸部1aの第2の位置11bに配置される樹脂製の第2歯車部2とを備える。軸部1a及び第1歯車部1bは、いずれも金属製であり、一体的に形成されている。すなわち、二段歯車10は、軸部1a及び第1歯車部1bを含む金属製の芯部材1と、芯部材1における第1歯車部1bが形成されている以外の部分に配置される樹脂製の第2歯車部2とを備える。
【0026】
二段歯車10の用途としては、特に限定されるものではなく、例えば自動車、自転車等の車両や、電子部品、産業ロボットなどが挙げられる。
【0027】
軸部1aは、その中心軸方向に沿って第1の位置11aと第2の位置11bとを有する。第1の位置11aと第2の位置11bとは、軸部1aの中心軸方向の異なる位置に設けられている。第1の位置11aと第2の位置11bとは、軸部1aの任意の位置に設けることができる。図2及び図3では、第1の位置11aと第2の位置11bとは、軸部1aの中心軸方向の中間部分で互いに隣接して設けられている。つまり、図2及び図3において、軸部1aは、第1歯車部1b及び第2歯車部2を貫通している。第2の位置11bには、第2歯車部2との接続を強固にするための接続用歯車12が設けられていてもよい。また、第2の位置11bの第1の位置11aと隣接する側の端部には、第2歯車部2を構成する樹脂が充填される溝部13が設けられていてもよい。
【0028】
第1歯車部1bは、軸部1aと同軸に配置されている。第1歯車部1bは、周面に第1歯車14を有する。第1歯車14の歯底円直径及び歯先円直径は、軸部1aの中心軸方向に亘って一定とすることができる。第1歯車14の具体的な形状としては、特に限定されるものではなく、平歯車、ハスバ歯車等が挙げられる。中でも、第1歯車14としては、ハスバ歯車が好ましい。第1歯車14がハスバ歯車であることで、第1歯車14の強度を高めると共に、動力の伝達を円滑に行うことができる。
【0029】
第2歯車部2は、軸部1aと同軸に配置されている。第2歯車部2は、周面にピッチ円直径が第1歯車14よりも大きい第2歯車15を有する。第2歯車部2は、例えば筒状であり、その内周面が軸部1aの第2の位置11bに固定されている。第2歯車15は、第2歯車部2の外周面に形成されている。
【0030】
第2歯車15の具体的な形状としては、特に限定されるものではなく、平歯車、ハスバ歯車等が挙げられる。
【0031】
第2歯車部2の主成分としては、射出成形に使用可能な樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えばナイロン66等のポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。なお、「主成分」とは、質量換算で最も含有量の大きい成分をいい、例えば含有量が50質量%以上の成分を意味する。
【0032】
次に、当該二段歯車の製造方法における各工程について詳説する。
【0033】
(第1歯車部作製工程S1)
第1歯車部作製工程S1では、軸部1aの第1の位置11aに第1歯車部1bを作製する。第1歯車部作製工程S1では、切削加工によって第1歯車14を形成する。第1歯車部作製工程S1では、切削加工を用いることで、第1歯車14を所望の形状に容易に形成することができる。
【0034】
第1歯車部作製工程S1では、後述する電極32の歯車32aと同じ加工方法で第1歯車14を形成することが好ましい。この構成によると、電極32の周面に第1歯車14と同形状の歯車が形成されることになる。そのため、第1歯車14の形状を、第1歯車部1bが篏合する後述の穴23aの周面形状に合致させることができる。その結果、第2歯車部作製工程S2で、射出成形用樹脂が第1歯車部1bと穴23aとの隙間に浸入することを容易かつ確実に抑制することできる。これにより、第1歯車部1bへの樹脂の付着を抑制することで、第1歯車部1bの寸法精度をより高めることができると共に、上記金型に対する樹脂の付着を抑制することで、二段歯車10の製造効率を格段に高めることができる。
【0035】
第1歯車部作製工程S1における第1歯車14の加工方法としては、例えばホブ盤、ホブカッター等によるホブ加工、歯車研削盤、砥石等による歯研加工、ワイヤー放電加工、ワイヤーによるワイヤーカット加工などが挙げられる。第1歯車部作製工程S1では、例えばホブ盤等の歯切り盤を用いた歯切加工によって第1歯車14を形成することが好ましい。第1歯車部作製工程S1では、上記歯切り盤を用いることで、第1歯車14の形状を容易かつ緻密に制御することができる。なお、「第1歯車部作製工程で、電極の歯車と同じ加工方法で第1歯車を形成する」とは、第1歯車部作製工程で、電極の歯車の形成に用いたのと同じ切削具を用いて第1歯車を形成することを意味しており、例えば第1歯車部作製工程で、電極の歯車の形成に用いたのと同じ切削刃を用いて第1歯車を形成することを意味する。例えば第1歯車部作製工程S1で歯切り盤を用いる場合には、第1歯車部作製工程で、電極の歯車の形成に用いたのと同じ切削刃を有する歯切り盤を用いて第1歯車を形成することを意味する。第1歯車部作製工程S1で使用する切削具としては、電極の形成に使用される切削具自体であることが好ましい。
【0036】
(第2歯車部作製工程S2)
第2歯車部作製工程S2は、第1歯車部作製工程S1で軸部1aに第1歯車部1bを作製した後に実施する。第2歯車部作製工程S2では、射出成形用樹脂を用いた射出成形によって軸部1aの第2の位置11bに第2歯車部2を作製する。具体的には、第2歯車部作製工程S2では、図4の金型20を用いた射出成形によって第2歯車部2を作製する。
【0037】
〈金型〉
図4の金型20は、第1金型部材21、第2金型部材22及び第3金型部材23の3つの金型部材を含む。第1金型部材21、第2金型部材22及び第3金型部材23で囲まれる内部空間は、射出成形用樹脂が射出されるキャビティ30を構成している。第1金型部材21には、射出成形用樹脂をキャビティ30に導入するためのゲート21aが形成されている。また、第1金型部材21には、軸部1aの一端(第1歯車部1bが設けられている側の反対側の端部)が篏合する凹部21bが形成されている。なお、ゲート21aの位置は特に限定されるものではなく、例えば第2金型部材22に設けられていてもよい。
【0038】
金型20、より詳しくは第3金型部材23には、第1歯車部1bが篏合する穴23aが設けられている。第2歯車部作製工程S2では、凹部21bに軸部1aの一端が篏合し、かつ穴23aに第1歯車部1bが篏合した状態でキャビティ30に射出成形用樹脂が射出される。換言すると、第2歯車部作製工程S2では、軸部1aの第2の位置11bがキャビティ30に選択的に露出した状態で、キャビティ30に射出成形用樹脂が射出される。
【0039】
第2歯車部作製工程S2では、まず、第3金型部材23が第2金型部材22に固定された状態で、第3金型部材23の穴23aに第1歯車部1bを挿入する。そして、第1金型部材21を第2金型部材22に固定することで金型20に芯部材1を設置した後に、キャビティ30に射出成形用樹脂を射出する。
【0040】
また、第2歯車部作製工程S2では、上記射出成形用樹脂をキャビティ30に射出した後に、キャビティ30を冷却し、上記射出成形用樹脂を硬化させる。これにより、軸部1aの第2の位置11bに第2歯車部2が作製される。
【0041】
続いて、第2歯車部作製工程S2では、上記射出成形用樹脂を硬化させた後に、第1金型部材21を開放し、キャビティ30から二段歯車10を取り出す。
【0042】
なお、当該二段歯車の製造方法は、キャビティ30から取り出した二段歯車10に電子線を照射する工程を備えていてもよい。当該二段歯車の製造方法は、上記電子線を照射する工程によって射出成形用樹脂を架橋することで、第2歯車部2の強度を高めることができる。
【0043】
(第3金型部材)
第3金型部材23は、第1歯車部1bが篏合する穴23aを有する篏合駒である。穴23aは、第3金型部材23を厚さ方向に貫通している。第3金型部材23は、それ自体本開示の一実施形態である。以下、第3金型部材23及びその製造方法について詳説する。
【0044】
第3金型部材23は、軸部1aと、軸部1aの第1の位置11aに配置され、周面に第1歯車14を有する金属製の第1歯車部1bと、軸部1aの第2の位置11bに配置され、周面にピッチ円直径が第1歯車14よりも大きい第2歯車15を有する樹脂製の第2歯車部2とを備える二段歯車10の製造に用いられる射出成形用の金型部材である。
【0045】
上述のように、第3金型部材23は、第1歯車部1bが篏合する穴23aを有している。穴23aは、例えば直径に対して深さが大きい円柱状である。穴23aは、電極を用いた放電加工によって形成されている。当該二段歯車の製造方法は、第1歯車部作製工程S1と、第2歯車部作製工程S2とをこの順で行うことで、二段歯車10を製造することができる。この際に、第3金型部材23に、第1歯車部1bが篏合する穴23aが設けられており、穴23aが、電極を用いた放電加工により形成されていることによって、第1歯車部1bを穴23aに篏合することで、軸部1aの第2の位置11bを金型20内のキャビティ30に容易に位置決めすることができる。その結果、第2歯車部2を容易に作製することができる。なお、「円柱状」とは、完全な円柱に限定されるものではなく、第1歯車に対応する凹凸を周面に有する形状を含む。
【0046】
図5に示すように、第1歯車部1bが穴23aに篏合した状態で、穴23aと第1歯車部1bとのクリアランスは、第2歯車部2を形成する射出成形用樹脂の浸入が防止されるように保たれている。
【0047】
当該第3金型部材23は、第1歯車部1bが篏合する穴23aへの射出成形用樹脂の浸入を防止できるので、第1歯車部1bへの樹脂の付着を抑制することで、第1歯車部1bの寸法精度をより高めることができると共に、穴23aへの樹脂の付着を抑制することで、二段歯車10の製造効率を格段に高めることができる。従って、当該第3金型部材23を用いることで、寸法精度及び耐久性に優れる二段歯車10を容易に製造することができる。
【0048】
また、穴23aは、第1歯車部1bの挿入時に、第1歯車部1bとの接触が抑制されるように第1歯車部1bとのクリアランスが緻密に制御されている。一般に、射出成形用樹脂の浸入を防止できるように穴23aと第1歯車部1bとのクリアランスを小さくした場合、第1歯車部1bの挿入時に、第1歯車部1bが穴23aの周面に接触しやすくなる。また、仮に接触しない場合であっても、両者の間隔に誤差があると、第1歯車部1bの挿入時にエラーが生じるおそれが高くなる。これに対し、当該第3金型部材23は、穴23aへの射出成形用樹脂の浸入を防止できることに加えて、第1歯車部1bを穴23aに容易かつ確実に挿入することができる。
【0049】
第3金型部材23の内面(キャビティ30に露出する側の面)における穴23aと第1歯車部1bとの間隔Cの下限(すなわち、穴23aと第1歯車部1bとの最小間隔)としては、1μmが好ましく、5μmがより好ましい。一方、上記間隔Cの上限(すなわち、穴23aと第1歯車部1bとの最大間隔)としては、60μmが好ましく、50μmがより好ましい。第3金型部材23の穴23aは、後述の電極32を用いた放電加工によって形成される。その結果、第3金型部材23は、上記間隔Cを上記範囲内に緻密に制御することができる。また、第3金型部材23は、第1歯車部1bの中心軸方向の両端に亘って、穴23aと第1歯車14とのクリアランスを微小かつ緻密に制御することができる。上記間隔Cが上記下限に満たないと、第1歯車部1bを穴23aに挿入する際に第1歯車部1bが穴23aの周面に接触するおそれがある。逆に、上記間隔Cが上記上限を超えると、射出成形用樹脂が穴23aと第1歯車部1bとの隙間に浸入するおそれがある。なお、従来では、穴23aと第1歯車14とは、それぞれ別個に図面を起こして形成されていた。しかしながら、この手順によると、両者の形状を合致させ難いため、第1歯車部1bを穴23aに挿入する際の接触を防止する観点等から、両者のクリアランスを大きめに設定することがあった。また、従来の形成方法によると、部分的に両者のクリアランスに誤差が生じやすくなり、穴23aと第1歯車部1bとの間に隙間の大きい部分が生じやすかった。そのため、従来の形成方法によると、穴23aと第1歯車部1bとの隙間に射出成形用樹脂が浸入しやすく、二段歯車10の製造効率を十分に高め難かった。これに対し、当該二段歯車の製造方法は、第3金型部材23を用いることで、穴23aの周面への第1歯車部1bの接触を防止しつつ、穴23aへの射出成形用樹脂の浸入を容易かつ確実に抑制でき、二段歯車10の製造効率を著しく高めることができる。
【0050】
第3金型部材23の穴23aの深さDの下限としては、0.3mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。上記深さDが上記下限に満たないと、第1歯車部1bを所望のサイズに形成できないおそれや、第1歯車部1bを穴23aに適切に篏合できないおそれがある。これに対し、当該第3金型部材23の穴23aは、電極32を用いた放電加工によって形成されることで、深さ方向の両端に亘って第1歯車部1bとのクリアランスを容易に制御することができる。そのため、上記深さDを上記下限以上とした場合でも、穴23aと第1歯車部1bとの接触を防止しつつ、穴23aと第1歯車部1bとの隙間への射出成形用樹脂の浸入を抑制することができる。なお、上記深さDの上限としては、特に限定されるものではないが、20mmが好ましく、15mmがより好ましい。上記深さDが上記上限を超えると、離型抵抗が大きくなるおそれがある。
【0051】
(第3金型部材の製造方法)
第3金型部材23は、図6に示す手順によって製造することができる。すなわち、第3金型部材の製造方法(以下、「当該金型部材の製造方法」ともいう)は、第1歯車部が篏合する穴を、電極を用いた放電加工により形成する工程S11を備える。
【0052】
図7に示すように、形成する工程S11では、電極32を用いた放電加工によって金属製の基材(金属ブロック)33に穴23aを形成する。電極32の主成分としては、特に限定されるものではないが、例えば銅が挙げられる。形成する工程S11では、例えば電極32を回転させつつ基材33に挿入してゆくことで、基材33に穴23aを形成する。
【0053】
電極32は棒状である。電極32の周面には歯車32aが設けられている。より詳しくは、電極32の周面には、第1歯車14と同じ加工方法で形成された歯車32aが設けられている。電極32の歯車32aは、例えばホブ盤等の歯切り盤を用いた歯切加工によって形成することができる。電極32の歯車32aは、第1歯車14と同じ加工方法で形成されることによって、歯面形状が第1歯車14と一致している。
【0054】
形成する工程S11では、この電極32を用いた放電加工によって穴23aを形成する。そのため、当該金型部材の製造方法によると、穴23aの周面形状を、穴23aの深さ方向の全領域に亘って、第1歯車部1bと微小かつ緻密なクリアランスを保てるように容易に制御することができる。すなわち、電極32を基材33に挿入してゆくと、電極32と基材33との間で繰り返されるアーク放電によって、基材33には電極32よりも僅かに径の大きい穴23aが深さ方向に亘って形成されてゆく。その結果、形成する工程S11で形成された穴23aと第1歯車部1bとのクリアランスは、部分的に誤差を生じ難く、全領域に亘って一定に制御される。
【0055】
当該金型部材の製造方法は、電極32の周面に、第1歯車14と同じ加工方法で形成された歯車32aが設けられているので、第3金型部材23に形成される穴23aの周面形状を第1歯車14の形状に合致させることができる。その結果、射出成形用樹脂が第1歯車部1bと穴23aとの隙間に浸入することを容易かつ確実に抑制することできる。また、第1歯車部1bの穴23aへの挿入を容易かつ確実に行うことができる。従って、当該金型部材の製造方法で製造された第3金型部材23を用いることで、寸法精度及び耐久性に優れる二段歯車10を容易に製造することができる。
【0056】
電極32の周面に形成される歯車32aとしては、ハスバ歯車が好ましい。この構成によると、穴23aの周面には、ハスバ歯車の反転形状が形成される。従来の図面を起こす形成方法で電極32の周面にハスバ歯車に形成した場合、第1歯車14と穴23aとの形状を合致させ難いため、第1歯車部1bの穴23aへの挿入が困難になるおそれや、第1歯車部1bと穴23aとの隙間から樹脂漏れを生じるおそれが高い。つまり、第1歯車14がハスバ歯車である場合、第1歯車部1bを回転させながら穴23aに挿入してゆくことを要するが、第1歯車14と穴23aとの形状が十分に合致していないと、第1歯車部1bの挿入時に第1歯車部1bと穴23aとが接触しやすい。逆に、第1歯車部1bと穴23aとの接触を防止すべく穴23aを比較的大きく形成すると、第1歯車部1bと穴23aとの隙間に射出成形用樹脂が浸入しやすくなる。これに対し、当該金型の製造方法によると、第3金型部材23に形成される穴23aの周面形状を第1歯車14の形状に合致させることができるので、第1歯車14がハスバ歯車である場合でも、第1歯車部1bの穴23aへの挿入の容易化を図りつつ、第1歯車部1bと穴23aとの間の隙間への射出成形用樹脂の浸入を確実に抑制することができる。
【0057】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0058】
上記第1歯車の形成手順は、上述の切削加工に限定されない。上記第1歯車の形成手順は、第1歯車の具体的な歯面形状や、この歯面形状に要求される精度等に基づいて、選択可能である。
【0059】
当該二段歯車の製造方法で製造される二段歯車の具体的な形状は、上記実施形態に記載された形状に限定されない。また、当該二段歯車の製造方法に用いられる金型の具体的な形状は、二段歯車の形状に対応して適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 芯部材
1a 軸部
1b 第1歯車部
2 第2歯車部
10 二段歯車
11a 第1の位置
11b 第2の位置
12 接続用歯車
13 溝部
14 第1歯車
15 第2歯車
20 金型
21 第1金型部材
21a ゲート
21b 凹部
22 第2金型部材
23 第3金型部材
23a 穴
30 キャビティ
32 電極
32a 歯車
33 基材
C 穴と第1歯車部との間隔
D 穴の深さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7