(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050273
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】鋼管柱の溶接用ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/12 20060101AFI20230404BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20230404BHJP
B23K 9/028 20060101ALI20230404BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20230404BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B23K9/12 331K
B23K9/00 501B
B23K9/028 J
E04B1/24 P
E04B1/58 503H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160302
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】305017815
【氏名又は名称】十一屋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 剛
(72)【発明者】
【氏名】森 貴久
(72)【発明者】
【氏名】大附 和敬
(72)【発明者】
【氏名】田原 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一道
【テーマコード(参考)】
2E125
4E081
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AB16
2E125AC16
2E125AG03
2E125BE10
2E125CA90
2E125EB12
4E081BA02
4E081BB03
4E081DA11
4E081EA24
4E081FA14
4E081YB03
(57)【要約】
【課題】複数の溶接用ロボットを用いた場合であっても、上部鋼管柱と下部鋼管柱との安定した溶接を行うことができる鋼管柱の溶接用ロボットシステムを提供する。
【解決手段】上部鋼管柱10と下部鋼管柱20とを溶接する複数の多関節ロボット80と、多関節ロボット80A、80Bの動作と、その溶接の実行および停止とを制御する制御装置40と、備えている。制御装置40の溶接実行部44は、複数の多関節ロボット80のうち、いずれか1つの多関節ロボット80の溶接の開始が検出されていないときに、他の多関節ロボット80に、前記中断位置までの溶接を実行させた後、開始が検出されていない多関節ロボット80の溶接が開始されるまで、多関節ロボット80の溶接の中断を継続する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクションピースを建て入れ冶具で連結して仮固定された上部鋼管柱と下部鋼管柱との周方向に沿って形成された開先に、溶融した溶接材料を供給しながら、前記上部鋼管柱と前記下部鋼管柱とを溶接する複数の溶接用ロボットと、
前記溶接用ロボットごとに設定された溶接区間に対して溶接を行うように、前記各溶接用ロボットの動作と、前記各溶接用ロボットによる溶接の実行および停止とを制御する制御装置と、
を少なくとも備えた溶接用ロボットシステムであって、
前記制御装置は、
前記溶接用ロボットの個数に応じて、前記周方向に沿って周回する前記開先を分割した分割区間と、前記分割区間の両端において、隣接した分割区間と重複する一対の重複区間と、を溶接区間として、前記溶接用ロボットごとに前記溶接区間を設定する区間設定部と、
前記溶接用ロボットごとの溶接区間において、前記各溶接用ロボットが溶接を開始する前記重複区間が、他の溶接用ロボットが溶接を開始する重複区間と、異なる重複区間となるように、前記溶接用ロボットごとの溶接の開始を設定する溶接開始設定部と、
前記溶接用ロボットごとに、前記分割区間において、前記溶接を中断する中断位置を設定する中断位置設定部と、
前記一対の重複区間のうち、一方の重複区間から溶接を開始し、前記中断位置において前記溶接を中断し、他方の重複区間まで、前記溶接用ロボットに前記溶接を実行させる溶接実行部と、
前記溶接用ロボットごとの前記溶接の開始を検出する溶接開始検出部と、を備えており、
前記溶接実行部は、前記複数の溶接用ロボットのうち、いずれか1つの溶接用ロボットの溶接の開始が検出されていないときに、他の溶接用ロボットに、前記中断位置までの溶接を実行させた後、開始が検出されていない前記溶接用ロボットの溶接が開始されるまで、前記他の溶接用ロボットの前記溶接の中断を継続することを特徴とする溶接用ロボットシステム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記溶接用ロボットごとに設けられており、
前記各溶接用ロボットの制御装置は、当該制御装置に制御された溶接用ロボットが、前記一方の重複区間において前記溶接が開始されてから、他の溶接用ロボットが前記中断位置において前記溶接を再開するまで、前記他の溶接用ロボットの制御装置に、溶接開始信号を出力する開始信号出力部をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の溶接用ロボットシステム。
【請求項3】
前記溶接実行部は、前記一方の重複区間と前記他方の重複区間との間を、往復するように、前記溶接を実行するものであり、
前記溶接実行部は、すべての溶接用ロボットが、前記一方の重複区間から前記他方の重複区間までの溶接を完了したのち、前記各溶接用ロボットの前記他方の重複区間からの溶接を開始させることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接用ロボットシステム。
【請求項4】
前記重複区間は、前記エレクションピースが配置された区間であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の溶接用ロボットシステム。
【請求項5】
前記中断位置は、前記エレクションピースが配置された区間内であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の溶接用ロボットシステム。
【請求項6】
前記複数の溶接用ロボットは、一対の多関節ロボットであり、
前記溶接実行部は、前記下部鋼管柱を挟むように、前記下部鋼管柱に取付けられた一対のレールに沿って前記多関節ロボットを走行させながら、前記各溶接用ロボットに、前記溶接を実行させることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の溶接用ロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部鋼管柱と下部鋼管柱を溶接する鋼管柱の溶接用ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、たとえば、特許文献1には、上部鋼管柱と下部鋼管柱との開先に、溶融した溶接材料を供給しながら、上部鋼管柱と下部鋼管柱とを溶接する鋼管柱の溶接用ロボットが提案されている。
【0003】
具体的には、この溶接用ロボットは、エレクションピースを建て入れ冶具で連結して、仮固定された上部鋼管柱と下部鋼管柱とを初期溶接を行い、建て入れ冶具を取り除いた後、さらに溶接を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、たとえば、特許文献1などで例示される溶接用ロボットを複数用いて、上部鋼管柱と下部鋼管柱とを開先に沿って溶接する際に、一つの溶接用ロボットの溶接用のアークがうまく生成されないことがある。このような場合には、アークが生成されない溶接用ロボットは、溶接が開始できないため、アークが生成されるまで、その位置で待機状態となる。この状態で、他の溶接用ロボットが、溶接のために開先に沿って移動すると、溶接の開始ができない溶接用ロボットに、他の溶接用ロボットが接触したり、設計通りの溶接ができなかったりするおそれがある。
【0006】
また、溶接ができる他の溶接用ロボットのみを、先行して溶接を続行すると、先行して溶接した部分と、それ以外の部分とで、溶接部分のひずみの入り方に偏りが生じることが考えられる。この結果、溶接後の鋼管柱に不要な傾きが生じたり、余剰な応力が作用したりするおそれがある。
【0007】
これに加えて、溶接ができる他の溶接用ロボットのみを先行して溶接を続行すると、先行して溶接を行ったビード(溶接の層)が厚くなるため、溶接できなかった溶接用ロボットの溶接経路との間に段差が生じることがある。これにより、溶接できなかった溶接用ロボットが溶接を再開した際には、このロボットが担当する溶接経路の端部において、溶接金属が垂れたり、溶接部分が不整形な形となったりするおそれがある。
【0008】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の溶接用ロボットを用いた場合であっても、上部鋼管柱と下部鋼管柱との安定した溶接を行うことができる鋼管柱の溶接用ロボットシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を鑑みて、本発明に係る溶接用ロボットシステムは、エレクションピースを建て入れ冶具で連結して仮固定された上部鋼管柱と下部鋼管柱との周方向に沿って形成された開先に、溶融した溶接材料を供給しながら、前記上部鋼管柱と前記下部鋼管柱とを溶接する複数の溶接用ロボットと、前記溶接用ロボットごとに設定された溶接区間に対して溶接を行うように、前記各溶接用ロボットの動作と、前記各溶接用ロボットによる溶接の実行および停止とを制御する制御装置と、を少なくとも備えた溶接用ロボットシステムであって、前記制御装置は、前記溶接用ロボットの個数に応じて、前記周方向に沿って周回する前記開先を分割した分割区間と、前記分割区間の両端において、隣接した分割区間と重複する一対の重複区間と、を溶接区間として、前記溶接用ロボットごとに前記溶接区間を設定する区間設定部と、前記溶接用ロボットごとの溶接区間において、前記各溶接用ロボットが溶接を開始する前記重複区間が、他の溶接用ロボットが溶接を開始する重複区間と、異なる重複区間となるように、前記溶接用ロボットごとの溶接の開始を設定する溶接開始設定部と、前記溶接用ロボットごとに、前記分割区間において、前記溶接を中断する中断位置を設定する中断位置設定部と、前記一対の重複区間のうち、一方の重複区間から溶接を開始し、前記中断位置において前記溶接を中断し、他方の重複区間まで、前記溶接用ロボットに前記溶接を実行させる溶接実行部と、前記溶接用ロボットごとの前記溶接の開始を検出する溶接開始検出部と、を備えており、前記溶接実行部は、前記複数の溶接用ロボットのうち、いずれか1つの溶接用ロボットの溶接の開始が検出されていないときに、他の溶接用ロボットに、前記中断位置までの溶接を実行させた後、開始が検出されていない前記溶接用ロボットの溶接が開始されるまで、前記他の溶接用ロボットの前記溶接の中断を継続することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、複数の溶接用ロボットは、区間設定部により、溶接用ロボットごとに設定された溶接区間において、上部鋼管柱と下部鋼管柱との周方向に沿って形成された開先に、溶融した溶接材料を供給しながら、上部鋼管柱と前記下部鋼管柱を溶接することができる。ここで、溶接開始設定部により、各溶接用ロボットが溶接を開始する重複区間が、他の溶接用ロボットが溶接を開始する重複区間と、異なる重複区間となる。このため、溶接用ロボットが、同じ重複区間に対して、溶接を同時に開始されることはないので、複数の溶接用ロボットによる溶接の開始時に、溶接用ロボットが、接触することはない。
【0011】
このようにして、溶接実行部は、一対の重複区間のうち、一方の重複区間から溶接を開始し、中断位置において前記溶接を中断し、他方の重複区間まで、溶接用ロボットに溶接を実行させることができる。
【0012】
ここで、溶接実行部は、複数の溶接用ロボットのうち、いずれか1つの溶接用ロボットの溶接の開始が検出されていないときに、他の溶接用ロボットに、中断位置までの溶接を実行させた後、開始が検出されていない溶接用ロボットの溶接が開始されるまで、他の溶接用ロボットの溶接の中断を継続する。このようにして、1つの溶接用ロボットの溶接が開始されない場合には、他の溶接用ロボットは、中断位置で、溶接が中断されるため、溶接用ロボットが重複区間において、接触することを回避することができる。さらに、溶接用ロボットは、当初から溶接を中断することが教示された位置で、その中断が継続されるため、溶接用ロボットによる溶接の品質を損なうことはない。このような結果、複数の溶接用ロボットを用いた場合であっても、上部鋼管柱と下部鋼管柱との安定した溶接を行うことができる。
【0013】
好ましい態様としては、前記制御装置は、前記溶接用ロボットごとに設けられており、前記各溶接用ロボットの制御装置は、当該制御装置に制御された溶接用ロボットが、前記一方の重複区間において前記溶接が開始されてから、他の溶接用ロボットが前記中断位置において前記溶接を再開するまで、前記他の溶接用ロボットの制御装置に、溶接開始信号を出力する開始信号出力部をさらに備えている。
【0014】
この態様によれば、溶接用ロボットが、一方の重複区間において前記溶接が開始されてから、他の溶接用ロボットが中断位置において溶接を再開するまで、開始信号出力部により、他の溶接用ロボットの制御装置に、溶接開始信号を出力することができる。これにより、他の溶接用ロボットの制御装置は、この溶接開始信号を受信するため、他の溶接用ロボットが、中断位置に到達した際に、中断が継続されることなく、スムーズに溶接を再開することができる。
【0015】
さらに、好ましい態様としては、前記溶接実行部は、前記一方の重複区間と前記他方の重複区間との間を、往復するように、前記溶接を実行するものであり、前記溶接実行部は、すべての溶接用ロボットが、前記一方の重複区間から前記他方の重複区間までの溶接を完了したのち、前記各溶接用ロボットの前記他方の重複区間からの溶接を開始させる。
【0016】
この態様によれば、溶接実行部により、一方の重複区間から他方の重複区間までの往路の溶接を完了したのち、各溶接用ロボットの他方の重複区間から一方の重複区間までの復路の溶接を行うことができる。これにより、復路の溶接においても、溶接用ロボットは異なる重複区間の溶接を行うため溶接用ロボット間の接触を回避しつつ、設計通りの安定した溶接を行うことができる。
【0017】
より好ましい態様としては、前記重複区間は、前記エレクションピースが配置された区間である。エレクションピースは溶接用ロボットによる連続した溶接を妨げるものであり、エレクションピースが配置された区間では連続した溶接を中断せざるを得ない。したがって、この区間を重複区間とすることで、品質的に不利な溶接が不連続となる位置の箇所数を最小限にすることができる。
【0018】
さらに好ましい態様としては、前記中断位置は、前記エレクションピースが配置された区間内である。溶接区間のうち、エレクションピースが配置された区間内の位置では、溶接用ロボットによる溶接を中断し、溶接用ロボットの姿勢を変更して、溶接を再開するので、この位置を利用すれば、より円滑に溶接を行うことができる。
【0019】
さらに好ましい態様としては、前記複数の溶接用ロボットは、一対の多関節ロボットであり、前記溶接実行部は、前記下部鋼管柱を挟むように、前記下部鋼管柱に取付けられた一対のレールに沿って前記多関節ロボットを走行させながら、前記各溶接用ロボットに、前記溶接を実行させる。
【0020】
この態様によれば、レールに沿って、多関節ロボットを動作させつつ、これを走行させながら、上部鋼管柱と下部鋼管柱との溶接を行うため、多関節ロボット同士は接触するおそれがあるところ、上述した制御により、これらの接触を回避しつつ溶接を行うことができる。さらに、前記一対の多関節ロボットの前記トーチの先端を、前記鋼管柱の中心軸を挟んで対向させながら、前記上部鋼管柱と前記下部鋼管柱との溶接を行うことができるため、上部鋼管柱および下部鋼管柱への溶接時の熱を、鋼管柱の中心軸を挟んで略対称に入熱することができる。この結果、鋼管柱の中心軸の歪み等を抑えることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の溶接用ロボットを用いた場合であっても、上部鋼管柱と下部鋼管柱との安定した品質の溶接をより簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る溶接用ロボットシステムによる溶接前の鋼管柱の側面図である。
【
図2】
図1に示す鋼管柱と、実施形態に係る溶接用ロボットシステムとの模式的斜視図である。
【
図3】
図2に示す溶接用ロボットの制御装置のブロック図である。
【
図5】(a)は、
図4のA部の拡大図であり、(b)は、
図4のB部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る鋼管柱の溶接用ロボットシステムについて、図面を参照しながら説明する。
【0024】
1.仮固定された鋼管柱1について
図1は、本発明の実施形態に係る溶接用ロボットシステムによる溶接前の鋼管柱の側面図である。ここで、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20とは、4つの平面部と4つの湾曲部によって形成された多角形鋼管からなり、上部鋼管柱10および下部鋼管柱20のそれぞれの平面部には、エレクションピース11、21が取付けられている。なお、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20とは、
図2および
図3等に示す四角形の角形鋼管柱に限定されるものではなく、たとえば、四角形以外の多角形の角形鋼管柱(具体的には四面以上の多角形鋼管)であってもよく、四面ボックス柱など多面ボックス柱であってもよい。本実施形態では、平面部ごとにエレクションピースを設けたが、たとえば、4つの平面部のうち、対向する2つの平面部のみにエレクションピースが設けられていてもよく、1つの平面部に複数のエレクションピースが設けられていてもよい。
【0025】
上部鋼管柱10の下端縁面13は、外側に向いて傾斜したテーパ面であり、下部鋼管柱20の上端縁面23は、下部鋼管柱20の長手方向に対して直交するように形成された平坦面である。これにより、下部鋼管柱20の上端縁面23に対向するように、上部鋼管柱10の下端縁面13を配置すると、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20との間に、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20の周方向に沿った開先30を形成することができる。
【0026】
さらに、本実施形態では、下部鋼管柱20の内壁面には、裏当金(図示せず)が周方向に沿って取付けられている。裏当金は、下部鋼管柱20の上端縁面23から鉛直方向(下部鋼管柱20の長手方向)に突出しており、下部鋼管柱20に上部鋼管柱10を配置する際に、裏当金31の突出した部分が、上部鋼管柱10に内挿される。
【0027】
このような裏当金により、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20との間隙を、裏当金で覆うことができるので、溶接時に、溶融した溶接材料が、鋼管柱1の内部に入り込むことを防止することができる。なお、本実施形態では、裏当金を、下部鋼管柱20の内壁面に取付けたが、たとえば、上部鋼管柱10の下端縁面13から突出するように、裏当金を上部鋼管柱10の内壁面に取付けてもよい。
【0028】
図1に示すように、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20とは、仮固定されている。下部鋼管柱20に上部鋼管柱10を配置するとともに、裏当金の突出した部分を、上部鋼管柱10に内挿する。例えば、建て入れ冶具3の上側の端部を、ボルト等を用いてエレクションピース11に締結し、その下側の端部を、ボルト等を用いてエレクションピース21に締結する。これにより、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20とのエレクションピース11、21同士を建て入れ冶具3で連結し、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20とを仮固定することができる。
【0029】
ここでは、建て入れ冶具3の構造の詳細な説明を省略するが、各建て入れ冶具3は、上下に配置された2つのエレクションピース11、21同士の間の距離を調節可能に構成されている。溶接後またはその途中で、建て入れ冶具3はエレクションピース11、21から取り外され、溶接後またはその途中で、エレクションピース11、21は上部鋼管柱10および下部鋼管柱20から切断される。
【0030】
2.レール73とその取付け構造について
図2に示すように、本実施形態では、一対の溶接用ロボット(多関節ロボット)80で上部鋼管柱10と下部鋼管柱20との溶接を行い、多関節ロボット80は、レール73を走行する。一対のレール73は、下部鋼管柱20を挟むように、下部鋼管柱20に取付けられている。
【0031】
具体的には、下部鋼管柱20の4つの平面部のうち、反対側に位置する2つの平面部のそれぞれには、一対の支持片78、78が溶接されている。本実施形態では、下部鋼管柱20に、第1支持部材71で挟むように、支持片78、78に、第1支持部材71が固定されている。第1支持部材71は、H形鋼などの長尺状の部材であり、溶接用ロボット80が、走行するレール73と直交する方向に延在している。
【0032】
さらに、本実施形態では、下部鋼管柱20を挟むように、一対の第1支持部材71に跨って、一対の第2支持部材72が固定されている。第2支持部材72は、長尺状の部材であり、第2支持部材72には、長手方向に沿ってレール73が取付けられているので、下部鋼管柱20を挟むように、下部鋼管柱20に一対のレール73、73を、取付けることができる。なお、本実施形態では、第1支持部材71と第2支持部材72とを用いて、下部鋼管柱20にレール73を取付けたが、たとえば、剛性が確保することができるのであれば、下部鋼管柱20に、レール73を取付けてもよい。
【0033】
本実施形態では、レール73は、リニアガイドレールであり、レール73には、台車(スライダ)74が取付けられている。台車74は、図示しないモータにより、レール73に沿って走行自在となっている。なお、本実施形態では、台車74の走行制御、後述する多関節ロボット80の駆動制御、多関節ロボット80の先端に取付けられたトーチ92による溶接条件に応じた溶接等は、後述する制御装置40により行われる。
【0034】
3.溶接用ロボットシステム100について
溶接用ロボットシステム100は、一対の多関節ロボット80A、80Bと、これらを制御する制御装置40A、40Bと、を備えている。多関節ロボット80A、80Bは、エレクションピース11、21を建て入れ冶具3で連結して仮固定された上部鋼管柱10と下部鋼管柱20との周方向に沿って形成された開先30に、溶融した溶接材料を供給しながら、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20とを溶接する装置である。
【0035】
制御装置40A、40Bは、多関節ロボット80A、80Bごとに設定された溶接区間1T、2Tに対して溶接を行うように、各多関節ロボット80A、80Bの動作と、各多関節ロボット80A、80Bによる溶接の実行および停止と、を制御する装置である。
【0036】
なお、本実施形態では、2つの多関節ロボット80A、80Bにより、以下に示す溶接を行うが、たとえば、3以上の多関節ロボットにより溶接を行ってもよい。さらに、本実施形態では、多関節ロボット80A、80Bごとに、制御装置40A、40Bが設けられているが、1つの制御装置により、複数の多関節ロボットの制御を行ってもよい。まず、以下に、多関節ロボット80(80A、80B)について、詳述する。
【0037】
4.溶接用ロボット80(80A、80B)について
多関節ロボット80は、台車74に設置されている。本実施形態で用いる多関節ロボット80は、6軸で回動するロボットアームであり、溶接機に接続された溶接用ロボットである。
【0038】
多関節ロボット80は、溶接機(図示せず)および制御装置40に接続された溶接用ロボットであり、多関節ロボット80は、台車74に取付けられる基台82と、基台82に載置され、基台82に対して旋回する旋回台83と、を備えている。旋回台83には、ロアアーム84が枢動自在に取付けられている。ロアアーム84の先端には、関節部85が枢動自在に取付けられている。関節部85には、アッパアーム86が、長手方向を軸心として回動自在に取付けられている。
【0039】
台車74の走行、旋回台83の旋回、ロアアーム84の枢動、およびアッパアーム86の回動等は、それぞれモータなどのアクチュエータ(図示せず)により行われる。制御装置40は、これらのアクチュエータを制御することにより、多関節ロボット80の動作を制御することができる。
【0040】
さらに、アッパアーム86の先端には、エンドエフェクタとなる溶接機のトーチ92を支持する支持アーム87が取付けられている。支持アーム87は、アッパアーム86に対して、トーチ92には、溶接ワイヤを送給するケーブル91が接続されており、ケーブル91の基端は溶接ワイヤを送給する送給装置(図示せず)に接続されている。
【0041】
溶接機のトーチ92を印加することにより、アークが生成される。このアークに溶接ワイヤが送給されることにより、溶接ワイヤが溶融し、溶融した溶接材料が開先30を供給に供給することができる。制御装置40は、トーチ92の印加およびその停止、溶接ワイヤの送給およびその停止を制御することにより、溶接の実行および停止を制御することができる。
【0042】
5.制御装置40(40A、40B)について
制御装置40は、多関節ロボット80および溶接機(図示せず)等に接続されている。制御装置40は、これらの装置を制御するためのプログラムおよび溶接条件等が記録されたRAM、ROMなどの記憶装置(図示せず)と、その制御を実行するための制御指令を演算するCPUなどの演算装置(図示せず)と、を備えている。
【0043】
図3は、
図2に示す多関節ロボット80の制御装置40のブロック図である。本実施形態では、
図3に示すように、各制御装置40A、40Bは、ソフトウエアとして、区間設定部41、溶接開始設定部42、中断位置設定部43、溶接実行部44、溶接開始検出部46、および開始信号出力部47を少なくとも備えている。
【0044】
区間設定部41は、多関節ロボット80の個数に応じて、仮固定された上部鋼管柱10と下部鋼管柱20との周方向に沿って形成された開先30に対して、多関節ロボット80ごとに溶接区間を設定している。本実施形態では、多関節ロボット80の個数は2台であるので、2つの溶接区間1T、2Tが設定される。
【0045】
図4、5に示すように、各溶接区間1T、2Tは、周回する開先30(の溶接ライン)を分割した分割区間1D、2Dと、分割区間1D、2Dの両端において、隣接した分割区間1D(2D)と重複する一対の重複区間1S、1E(2S、2E)と、で構成されている。
【0046】
図5(a)、(b)に示すように、重複区間1S、1E(2S、2E)は、エレクションピース11、21が配置された区間であり、建て入れ冶具3と対向した区間である。多関節ロボット80Aによる重複区間1Sと、多関節ロボット80Bによる重複区間2Eと、が同じ区間である。多関節ロボット80Aによる重複区間1Eと、多関節ロボット80Bによる重複区間2Sと、が同じ区間である。これら重複区間1S、1E(2S、2E)では、2つ多関節ロボット80A、80Bにより、異なるタイミングで溶接が行われる。
【0047】
溶接開始設定部42は、多関節ロボット80ごとの溶接区間において、各多関節ロボット80が溶接を開始する重複区間が、他の多関節ロボット80が溶接を開始する重複区間と、異なる重複区間となるように、多関節ロボット80ごとの溶接の開始を設定する。
【0048】
具体的には、本実施形態では、多関節ロボット80A、80Bごとの溶接区間1T、2Tにおいて、多関節ロボット80Aが溶接を開始する重複区間は、重複区間1Sであり、多関節ロボット80Bが溶接を開始する重複区間は、重複区間2Sであり、これらの区間は、異なる区間である。
【0049】
したがって、本実施形態では、多関節ロボット80Aは、重複区間1Sで溶接を開始し、重複区間1Eで溶接を終了する。さらに、多関節ロボット80Bは、重複区間2Sで溶接を開始し、重複区間2Eで溶接を終了する。
【0050】
このようにして、多関節ロボット80A、80Bが、同じ重複区間に対して、溶接を同時に開始されることがないので、複数の多関節ロボット80A、80Bによる溶接の開始時に、多関節ロボット80A、80Bが、接触することはない。
【0051】
さらに、重複区間1S、1E(2S、2E)は、エレクションピース11、21が配置された区間であり、連続した溶接を行うことが困難な区間であり、溶接が不連続となる。一方、これらの重複区間1S、1E(2S、2E)は、2台のレール73、73から等距離の位置であり、2台の多関節ロボット80A、80Bが担当する溶接範囲の境界位置である。したがって、重複区間1S、1E(2S、2E)を、エレクションピース11、21が配置された区間に設定することにより、品質的に欠陥が出やすい溶接不連続部位の箇所数を最小限に抑えることができる。
【0052】
さらに、スムーズに溶接が開始される場合には、多関節ロボット80A、80B同士の接触を回避しつつ溶接を行うことができる。さらに、このような場合には、一対の多関節ロボット80A、80Bのトーチ92の先端を、鋼管柱1の中心軸を挟んで対向させながら、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20との溶接を行うことができる。このため、上部鋼管柱10および下部鋼管柱20への溶接時の熱を、鋼管柱1の中心軸を挟んで略対称に入熱することができる。この結果、鋼管柱1の中心軸の歪み等を抑えることができる。
【0053】
中断位置設定部43は、多関節ロボット80A、80Bごとに、分割区間1D、2Dにおいて、溶接を中断する中断位置1P、2Pを設定する。例えば、中断位置1P、2Pは、エレクションピース11、21が配置された区間内である。
【0054】
このようにして、溶接区間1T(2T)は、中断位置1P(2P)を境界として、前半の溶接を行う溶接区間1R(2R)と、後半の溶接を行う溶接区間1L(2L)で構成される。溶接区間1R(2R)と、溶接区間1L(2L)とは、多関節ロボット80A(80B)の溶接の中断前後において、重複する区間が形成されていてもよい。
【0055】
本実施形態では、溶接区間1T(2T)のうち、エレクションピース11、21が配置された区間内の位置では、そもそも、多関節ロボット80A(80B)による溶接を中断し、多関節ロボット80A(80B)の姿勢を変更して、溶接を再開する。したがって、この位置を利用すれば、より円滑に多関節ロボット80A(80B)による溶接を行うことができる。
【0056】
なお、区間設定部41、溶接開始設定部42、および中断位置設定部43による各設定は、入力装置(図示せず)を介して、制御装置40A、40Bに入力される。
【0057】
溶接実行部44は、一対の重複区間1S、1E(2S、2E)のうち、一方の重複区間1S(2S)から溶接を開始し、中断位置1P(2P)において溶接を中断するように、多関節ロボット80A(80B)を制御する。さらに、溶接実行部44は、多関節ロボット80A(80B)の姿勢を変更した後、他方の重複区間1E(2E)まで、多関節ロボット80A(80B)に、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20と溶接を実行させる。
【0058】
ここで、溶接開始検出部46は、一方の重複区間1S(2S)における多関節ロボット80A(80B)の溶接の開始を検出してもよいが、本実施形態では、溶接開始検出部46は、重複区間1S(2S)の溶接を終えて(完了して)から、分割区間1D、2Dの溶接を開始してから、溶接の開始を検出することが好ましい。これにより、溶接が止まりやすい(生成したアークが安定し難い)重複区間1S(2S)を通過した後に、溶接開始を検出するので、検出の信頼性を高めることができる。さらに、溶接開始検出部46は、中断位置1P、2Pからの多関節ロボット80A(80B)ごとの溶接の再開も検出する。本実施形態では、一方の多関節ロボット80Aの溶接開始信号および溶接再開信号を、制御装置40A、40Bの溶接開始検出部46が検出する。同様に、他方の多関節ロボット80Bの溶接開始信号および溶接再開信号を、制御装置40A、40Bの溶接開始検出部46が検出する。なお、本実施形態では、多関節ロボット80A、80Bは、後述するように、溶接開始信号および溶接再開信号を継続的に出力しているが、溶接開始および溶接再開のタイミングで、溶接開始信号を出力し、溶接完了のタイミングで、溶接終了信号を出力し、これらの信号に基づいて、制御装置40A、40Bは、多関節ロボット80A、80Bを制御してもよい。
【0059】
さらに、溶接実行部44は、複数の多関節ロボット80のうち、いずれか1つの多関節ロボット80の溶接の開始が検出されていないときに、他の多関節ロボット80に、中断位置までの溶接を実行させた後、開始が検出されていない多関節ロボット80の溶接が開始されるまで、他の多関節ロボット80の溶接の中断を継続する。
【0060】
具体的には、本実施形態では、複数の多関節ロボット80は、2つの多関節ロボット80A、80Bからなる。したがって、たとえば、アークの生成不良などにより、一方の多関節ロボット80Aの溶接の開始が検出されていないときには、他方の制御装置40Bの溶接実行部44は、多関節ロボット80Bに、中断位置2Pまで、溶接区間2Rの溶接を実行させる。その後、一方の多関節ロボット80Aの溶接が開始されるまで(すなわち、他方の制御装置40Aの溶接開始検出部46が、多関節ロボット80Aの溶接の開始を検出するまで)、他方の多関節ロボット80の溶接の中断を継続する。一方の多関節ロボット80Aの溶接が開始されると、溶接実行部44は、他方の多関節ロボット80Bに、溶接区間2Lの溶接を実行させる。
【0061】
同様に、他方の多関節ロボット80Bの溶接の開始が検出されていないときには、一方の制御装置40Aの溶接実行部44は、多関節ロボット80Aに、中断位置1Pまで、溶接区間1Rの溶接を実行させる。その後、他方の多関節ロボット80Bの溶接が開始されるまで、一方の多関節ロボット80の溶接の中断を継続する。他方の多関節ロボット80の溶接が開始されると、溶接実行部44は、一方の多関節ロボット80Aに、溶接区間1Lの溶接を実行させる。
【0062】
このようにして、一方の多関節ロボット80A(80B)の溶接が開始されない場合には、一方の多関節ロボット80B(80A)は、中断位置2P(1P)で、溶接の中断されるため、多関節ロボット80B、80A同士が、重複区間2E、1S(1E、2S)において、接触することを回避することができる。さらに、一方の多関節ロボット80A(80B)は、当初から溶接を中断する位置で、その中断が継続されるため、一方の多関節ロボット80A(80B)による溶接の品質を損なうことはない。このような結果、一対の多関節ロボット80B、80Aを用いた場合であっても、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20との安定した溶接を行うことができる。
【0063】
開始信号出力部47は、一方の多関節ロボット80A(80B)が、一方の重複区間1S(2S)の溶接が完了し、分割区間1D、2Dの溶接を開始してから、他の多関節ロボット80B(80A)が中断位置2P(1P)において溶接を再開するまで、他方の多関節ロボット80B(80A)の制御装置40B(40B)に、溶接開始信号を出力する。ここで、一方の多関節ロボット80A(80B)溶接の開始、中断位置2P(1P)における溶接の再開は、溶接開始検出部46により検出される。
【0064】
これにより、他方の多関節ロボット80B(80A)の制御装置40B(40A)は、この溶接開始信号を受信するため、他方の多関節ロボット80B(80A)が、中断位置2P(1P)に到達した際に、中断が継続されることなく、スムーズに溶接を再開することができる。
【0065】
さらに、溶接実行部44は、一方の重複区間1S(2S)と他方の重複区間1E(2E)との間を、往復するように、多関節ロボット80B(80A)に溶接を実行させる。溶接実行部44は、すべての多関節ロボット80B、80Aが、一方の重複区間1S(2S)と他方の重複区間1E(2E)までの溶接を完了したのち、多関節ロボット80A(80B)の他方の重複区間1E(2E)からの溶接を開始させる。これにより、復路の溶接においても、多関節ロボット80A、80Bの接触を回避しつつ、設計通りの安定した溶接を行うことができる。
【0066】
以下に、
図6を参照しながら、
図3に示す制御装置40の制御フロー図を説明する。
まず、ステップS1では、溶接実行部44は、一方の重複区間1S、2Sから、多関節ロボット80A、80Bに溶接を開始させる。次に、ステップS2で、溶接開始検出部46が、溶接の開始を検出した場合には、開始信号出力部47が、溶接開始信号を継続して出力する。
【0067】
次に、ステップS3に進み、中断位置1P(2P)に、一方の多関節ロボット80A(80B)が到達した場合には、溶接実行部44は、到達した一方の多関節ロボット80A(80B)の溶接を中断し、ステップS4に進む。
【0068】
ステップS4では、他方の多関節ロボット80B(80A)が、一方の重複区間1S(2S)において、溶接を開始したかを判定する。具体的には、他方の制御装置40B(40A)が、開始信号出力部47により、溶接開始信号を出力しているかの判定を行う。ここで、溶接を開始していない場合(NOの場合)には、ステップS4を繰り返す。これにより、一方の多関節ロボット80A(80B)による溶接の中断は継続される。一方、溶接を開始している場合には、ステップS5に進む。
【0069】
ステップS5では、溶接実行部44は、一方の多関節ロボット80A(80B)の姿勢を変更させ、残りの溶接区間1L(2L)の溶接を再開する。ステップS6では、一方の多関節ロボット80A(80B)が溶接を再開したタイミングで、開始信号出力部47が、溶接再開信号を継続して出力する。このときには、開始信号出力部47は、ステップS2から溶接開始信号を継続して出力している。なお、ステップS3では、一方の多関節ロボット80A(80B)の溶接を中断し、ステップS5で、一方の多関節ロボット80A(80B)の姿勢を変更させたが、ステップS3において、一方の多関節ロボット80A(80B)の姿勢を変更させた後、ステップS4に進んでもよい。この場合には、ステップS5で、一方の多関節ロボット80A(80B)の溶接を速やかに再開することができる。
【0070】
ステップS7では、溶接実行部44は、一方の多関節ロボット80A(80B)により、他方の重複区間1E(2E)で、溶接を終了させる。このとき、多関節ロボット80A(80B)の動作も停止させる。
【0071】
ステップS8では、一方の制御装置40A(40B)は、多関節ロボット80B(80A)が、中断位置2P(1P)から溶接が再開されたか判定する。具体的には、他方の制御装置40B(40A)の開始信号出力部47が、溶接再開信号を継続して出力しているかの判定を行う。ここで、溶接が再開されていない場合(NOの場合)には、ステップS8を繰り返す。
【0072】
一方、溶接が再開されている場合(YESの場合)には、ステップS9に進む。ステップS9では、一方の多関節ロボット80A(80B)の溶接開始信号は、不要であるので、この出力を終了し、ステップS10に進む。ステップS10では、他方の多関節ロボット80B(80A)の溶接開始信号は、不要であるので、この出力を終了し、ステップS11に進む。
【0073】
ステップS11では、一方の多関節ロボット80A(80B)は、他方の重複区間1E(2E)に到達しているので、溶接再開信号の出力を終了し、ステップS12に進む。他方の多関節ロボット80B(80A)が、他方の重複区間2E(1E)に到達してから、他方の多関節ロボット80B(80A)の溶接再開信号の出力を終了する。
【0074】
このようして、すべての多関節ロボット80A、80Bが、一方の重複区間1S(2S)から他方の重複区間1E(2E)までの溶接を完了したとみなすことができ、他方の重複区間1E(2E)から一方の重複区間1S(2S)までの溶接をステップS1からステップS12に示した同様の方法で、行う。このようして、一方の重複区間1S(2S)から他方の重複区間1E(2E)までの往路の溶接と、一方の重複区間1S(2S)から他方の重複区間1E(2E)までの復路の溶接を繰り返す。
【0075】
このようにして、一対の多関節ロボット80A、80Bを用いた場合であっても、これらが接触することを回避し、上部鋼管柱10と下部鋼管柱20との安定した溶接を行うことができる。
【0076】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0077】
1:鋼管柱、3:建て入れ冶具、10:上部鋼管柱、11:エレクションピース、20:下部鋼管柱、21:エレクションピース、30:開先、40,40A,40B:制御装置、41:区間設定部、42:溶接開始設定部、43:中断位置設定部、44:溶接実行部、46:溶接開始検出部、47:開始信号出力部、80,80A,80B:溶接用ロボット(多関節ロボット)、100:溶接用ロボットシステム、1T、2T:溶接区間、1D,2D:分割区間、1S、2S:重複区間(一方の重複区間)、1E、2E:重複区間(他方の重複区間)、1P.2P:中断位置