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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050285
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20230404BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
H02M7/12 W
H02M3/28 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160319
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上妻 央
(72)【発明者】
【氏名】叶田 玲彦
(72)【発明者】
【氏名】馬淵 雄一
(72)【発明者】
【氏名】古川 公久
【テーマコード(参考)】
5H006
5H730
【Fターム(参考)】
5H006AA01
5H006CA02
5H006CB01
5H006CB08
5H006CC01
5H006CC02
5H006DA02
5H006DC02
5H730AA02
5H730AS08
5H730BB27
5H730BB82
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE21
5H730EE59
5H730FD31
5H730FG12
(57)【要約】
【課題】複数の電力変換ユニットの出力側を多並列接続する電力変換器において、並列接続された各ユニットのコンデンサ間の共振電流を低減し、小型化した電力変換装置を提供する。
【解決手段】複数の電力変換ユニット20と、電力変換ユニットの出力端子の電流を検出する電流センサ301と、電流センサの検出する電流の所定の周波数範囲の周波数成分を測定する制御部310とを備え、電力変換ユニットは、入力端子の交流電力を出力端子に出力するAC/DCコンバータ113と、出力端子に並列に接続され、出力電圧を平滑する平滑コンデンサ18と、平滑コンデンサの一端と出力端子の一端との間に接続された可変抵抗スイッチ201とを有し、制御部は電流センサの検出する所定の周波数成分の大きさに応じて可変抵抗スイッチの抵抗値を制御し、複数の電力変換ユニットの出力端子は、並列に接続されて電力変換装置1としての出力端子37,38を構成する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの1次側入力端子と二つの2次側出力端子を有する複数の電力変換ユニットと、
前記電力変換ユニットのそれぞれの2次側出力端子に流れる電流を検出する複数の電流センサと、
複数の前記電流センサの検出する電流の所定の周波数範囲の周波数成分を測定する制御部と、
を備え、
前記電力変換ユニットは、
二つの前記1次側入力端子の間に入力した交流電力を二つの前記2次側出力端子の間に出力するAC/DCコンバータと、
二つの前記2次側出力端子の間に並列に接続され、二つの前記2次側出力端子の間に出力される出力電圧を平滑する出力側平滑コンデンサと、
前記出力側平滑コンデンサの一端と前記2次側出力端子の一端との間に接続された可変抵抗スイッチと、
を有し、
前記制御部は、複数の前記電流センサの検出する電流の所定の周波数成分の大きさに応じて、複数の前記可変抵抗スイッチの抵抗値を制御し、
複数の前記電力変換ユニットのそれぞれの2次側出力端子は、互いに並列に接続されて電力変換装置としての直流電源端子を構成する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
請求項1において、
複数の前記電流センサは、複数の前記電力変換ユニットにそれぞれ備えられる、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記AC/DCコンバータは、
前記1次側入力端子から入力した交流電圧の周波数を高い周波数に変換する周波数変換器と、
前記周波数変換器の出力する第1の交流電圧を入力し、第2の交流電圧に変換して出力する高周波トランスと、
前記高周波トランスの出力する交流を入力して、直流に変換して出力する2次側交直変換器と、
を具備して構成される、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項4】
請求項1において、
複数の前記電力変換ユニットの二つの1次側入力端子は、複数の前記電力変換ユニットの間において直列に接続される、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記周波数変換器は、
入力した交流を直流に変換して出力する第1交直変換器と、
前記第1交直変換器の直流の出力電圧を平滑化する1次側平滑コンデンサと、
前記第1交直変換器の出力する直流を交流に変換して出力する第2交直変換器と、
を備えて構成される、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記可変抵抗スイッチは、並列接続されたトランジスタとダイオードを備えて構成される、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記制御部は、前記可変抵抗スイッチの前記トランジスタの駆動電圧を可変できる機構を備える、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記可変抵抗スイッチの導通抵抗特性が、前記トランジスタの駆動電圧で制御される、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項9】
請求項6において、
前記可変抵抗スイッチは、並列接続されたトランジスタとダイオードの組が複数の組で構成され、複数の前記組が直列接続されて構成される、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項10】
請求項7において、
前記可変抵抗スイッチと並列に接続されているバイパススイッチを備え、
前記バイパススイッチの開閉が前記制御部で制御される、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記バイパススイッチは、電磁開閉器またはリレーを備えて構成される、
ことを特徴とする電力変換装置。
【請求項12】
請求項1において、
複数の直流電力を伝送する直流バスと、
複数のバス切替スイッチを有する並列数切替スイッチ部と、
を備え、
前記並列数切替スイッチ部が複数の前記バス切替スイッチを選択的に接続することによって、複数の前記電力変換ユニットのそれぞれの2次側出力端子の直流出力を、複数の前記直流バスを介して、複数の直流負荷に選択的に供給する、
ことを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電力変換装置は、その主要部品であるパワー半導体モジュールの技術革新によって、より高速なスイッチング動作を実現し、このパワー半導体から発する損失を低減させている。このように、損失による発熱を低減させることによって、特に冷却器を小型化することができて、電力変換装置を小型化が可能となっている。また、パワー半導体の損失を低減することによって、電力変換装置の効率を向上することができる。
【0003】
例えば、SiC(炭化ケイ素)やGaN等(窒化ガリウム)のワイドバンドギャップデバイスは、電子飽和速度がSi(ケイ素)に対し約2倍以上あることから高速スイッチング動作によるスイッチング損失の低減、さらに高周波インバータスイッチング動作が可能となる。
【0004】
また、産業向け電力変換器では、システムの高効率化のため、システム電圧の高耐圧化が進んでいる。システム電圧を高耐圧化とすることで、同一電力における電流・導通損失を低減できて、システムを高効率化できる。
ただし、パワー半導体モジュールの耐圧には制限があることから、パワー半導体デバイスを含む複数の電力変換ユニットを直列接続し、電力変換器のシステム電圧を高耐圧化する電力変換器構成が提案されている。
【0005】
また、システム高効率化のため、電力変換器から負荷までの配電ラインを直流とする直流配電の適用が検討されている。直流配電の適用により、同一電力における電流・導通損失を低減でき、システムを高効率化できる。
ただし、パワー半導体モジュールの耐圧には制限があることから、パワー半導体デバイスを含む複数の電力変換ユニットを直列接続し、電力変換器のシステム電圧を高耐圧化する電力変換器構成が提案されている。
【0006】
こうした本技術分野の背景技術として、特許文献1、特許文献2、および特許文献3の技術が開示されている。
【0007】
特許文献1の[要約]には、「[課題]直流端子PN間の電圧を脈動させずに交流出力の高調波が低減できる電力変換装置及び電力変換方法を提供する。[解決手段]電力変換装置1は、直流端子5のP端子とN端子間に、複数台の単位変換器2を直列に接続して構成されたP側アームARMPと、複数台の単位変換器2を直列に接続して構成されたN側アームARMNの直列回路によりレグを構成し、P側アームARMPとN側アームARMNの接続点を交流端子4の三相(U、V、W)にそれぞれ接続している。」と記載され、電力変換装置の技術が開示されている。
このように特許文献1には、交流を直流に変換するAC/DC変換回路を含む変換ユニットにおいて、複数ユニットの交流入力と直流出力を直列接続し、高圧AC入力/高圧DC出力に対応した高圧変換機構成が記載されている。また、高圧変換機部は、三相UVW入力に対応するため、3組で構成され、U相、V相、W相のそれぞれに対応した高圧変換機のDC出力は、並列接続された構成となることが示されている。
【0008】
また、特許文献2の[要約]には、「[課題]信頼性の向上が可能な充電装置を提供する。[解決手段]充電装置は、複数の蓄電装置を充電するものであって、直流電力を出力する複数のコンバータセル(20-1~20-M)と、複数のコンバータセルの複数の出力が接続される複数の入力ポート(21-x1~21-xM)と複数の蓄電装置が接続される複数の出力ポート(21-y1~21-yM)とを有する切替器(21)と、切替器が、複数の入力ポートのいずれかを、複数の出力ポートのいずれかに接続するとき、複数の出力ポートのいずれかに接続される蓄電装置の電圧に応じて、複数の入力ポートのいずれかに接続されるコンバータセルの出力電圧を調整する制御装置(22)とを備える。」と記載され、充電装置の技術が開示されている。
このように特許文献2には、交流を直流に変換するAC/DC変換回路と入出力が絶縁されたDC/DC変換回路を含む変換ユニットにおいて、複数ユニットの交流入力を直列接続し、また複数ユニットの直流出力を並列接続し、高圧AC入力/低圧DC出力に対応した高圧変換機の技術、構成が示されている。
【0009】
また、特許文献3の[要約]には、「[課題]インバータのスイッチング素子のスイッチング動作時に第1、第2のコンデンサが共振することを抑制して共振電流の増加を防止し、大きな電流に対応することを不要とすることで第1、第2のコンデンサの小型化を図ることができる電力変換装置を提供する。[解決手段]スイッチング素子7、8のスイッチング動作により直流電源3から供給される直流電力を交流電力に変換するインバータ6と、接続配線4、5間の直流電源3側に配置された第1のコンデンサ2と、スイッチング素子7、8側に配置された第2のコンデンサ15とを備え、接続配線4、5の等価インダクタンスと第1のコンデンサ2の静電容量で定まる共振周波数を、スイッチング素子7、8のスイッチング動作時に該スイッチング素子7、8から接続配線4、5に重畳される高周波電流の周波数帯域に合わせるように、接続配線4、5の等価インダクタンスと第1のコンデンサ2の静電容量を設定する。」と記載され、電力変換装置の技術が開示されている。
このように特許文献3には、二つのコンデンサ間に共振抑制用のリアクトルを配置することで共振電流を抑制することを可能とする構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2020-80627号公報
【特許文献2】特開2019-213424号公報
【特許文献3】特開2010-252535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
高圧AC/DC変換機において、MMC(Modular Multilevel Converter)方式では入力端子と出力端子が絶縁されてないため、地絡時の故障拡大や、入出力間のノイズ伝搬等が課題となる。より高信頼なシステムには入出力間が絶縁された高圧AC/DC変換機が必要である。
特許文献1に開示された技術では、絶縁型の高圧AC/DC変換機において、多重絶縁トランスを適用した高圧電力変換器を備えているが、多重絶縁トランスを用いることに起因して、電力変換器の重量、体積が大型化するという課題がある。
【0012】
特許文献2に開示された技術では、高周波絶縁トランスを適用したマルチステージ変換器(MSC)は、絶縁トランスの小型化が可能となり省スペース化に有利となっている。ただし、マルチステージ変換器では、絶縁型DC/DC変換回路を含む電力変換ユニットを複数台、直列/並列接続して高圧から低圧まで任意の入出力電圧に対応する。このように、電力変換ユニットのDC出力を複数並列接続したマルチステージ変換器では、各電力変換ユニットの出力に内蔵されたDCリンクコンデンサと他の電力変換ユニットの出力のDCリンクコンデンサ間が並列接続された構成となる。その構成のため、コンデンサ間のインダクタンス値との関係で反共振点が形成され、共振電流がユニット間に発生してしまうという課題がある。
【0013】
特許文献3に開示された技術では、コンデンサ間に共振抑制用のリアクトルを配置することで共振電流を抑制することが可能としている。ただし、この手法をマルチステージ変換器(MSC)に適用すると、各ユニットの出力にリアクトルを配置する必要があり、変換器(電力変換装置)の体積が増大するという課題がある。
【0014】
本発明は、複数の電力変換ユニットの出力側を多並列接続する電力変換器において、並列接続された各ユニットのコンデンサ間の共振電流を低減し、小型化した電力変換装置を提供することを課題(目的)とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の課題を解決するために、本発明を以下のように構成した。
すなわち、本発明の電力変換装置は、二つの1次側入力端子と二つの2次側出力端子を有する複数の電力変換ユニットと、前記電力変換ユニットのそれぞれの2次側出力端子に流れる電流を検出する複数の電流センサと、複数の前記電流センサの検出する電流の所定の周波数範囲の周波数成分を測定する制御部と、を備え、前記電力変換ユニットは、二つの前記1次側入力端子の間に入力した交流電力を二つの前記2次側出力端子の間に出力するAC/DCコンバータと、二つの前記2次側出力端子の間に並列に接続され、二つの前記2次側出力端子の間に出力される出力電圧を平滑する出力側平滑コンデンサと、前記出力側平滑コンデンサの一端と前記2次側出力端子の一端との間に接続された可変抵抗スイッチと、を有し、前記制御部は、複数の前記電流センサの検出する電流の所定の周波数成分の大きさに応じて、複数の前記可変抵抗スイッチの抵抗値を制御し、複数の前記電力変換ユニットのそれぞれの2次側出力端子は、互いに並列に接続されて電力変換装置としての直流出力端子を構成することを特徴とする。
【0016】
また、その他の手段は、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の電力変換ユニットの出力側を多並列接続する電力変換器において、並列接続された各ユニットのコンデンサ間の共振電流を低減し、小型化した電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置における1次側系統電圧と2次側系統電圧の波形例を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置を三相交流システムに適用した構成例を示す図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る電力変換装置における電力変換ユニットであるコンバータセルの構成例と機能例を説明する図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るコンバータセルに可変抵抗スイッチを備えた構成例と機能例を説明する図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るコンバータセルの可変抵抗スイッチのゲート駆動電圧制御フローのフローチャート例を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。
図8A】本発明の第2実施形態に係るコンバータセルのバイパススイッチと可変抵抗スイッチを制御するフローチャート例を示す図である。
図8B】本発明の第2実施形態に係るコンバータセルのバイパススイッチと可変抵抗スイッチを制御するフローチャート例を示す図である。
図9】本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。
図10】本発明の第4実施形態に係る電力変換装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下においては「実施形態」と表記する)を、適宜、図面を参照して説明する。
【0020】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1の構成について、図を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1の構成例を示す図である。
図1において、電力変換装置1は、N台の電力変換ユニットであるコンバータセル20-1~20-Nを有して構成されている。
各々のコンバータセル20-k(kは段数番号、1≦k≦N)は、一対の1次側端子25,26と、一対の2次側端子27,28と、交直変換器11(AC-DCコンバータ)と、交直変換器12(DC-ACインバータ)と、交直変換器13(AC-DCコンバータ)とを備えている。
また、平滑コンデンサ17(1次側平滑コンデンサ)と、平滑コンデンサ18(出力側平滑コンデンサ)と、可変抵抗スイッチ201と、高周波トランス15とを備えている。
【0021】
以上のコンバータセル20-kの詳細な構成、機能、動作については、図4を参照して後記する。
なお、図1における交直変換器11,12,13のブロックにおいて、「波形」と「斜線」と「横線」の記号を用いて表記しているが、「波形」は交流を表し、「横線」は直流を表し、「斜線」は変換を意味している。すなわち、所定の制御によって、交直変換器11,13は、AC/DC変換を行い、交直変換器12は、DC/AC変換を行う。
また、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1は、交流の1次側系統から入力して、直流の2次側系統に出力する場合と、直流の2次側系統から入力して、交流の1次側系統へ出力する場合の双方向の可能性がある。ただし、本発明の第1実施形態においては、可変抵抗スイッチ201の役割と効果を説明するのが主眼であるため、交流の1次側系統から入力して、直流の2次側系統に出力する場合を主として説明する。
【0022】
《電力変換装置1の構成、機能、動作》
次に、複数のコンバータセル20-k(1≦k≦N)を組み合わせによる電力変換装置1の構成、機能、動作の例について説明する。
図1において、N台の電力変換ユニットであるコンバータセル20-1~20-Nの1次側端子25,26は、順次、直列に接続され、これら直列回路(端子35,36)に、1次側電源系統31(VS1)が接続されている。
前記したように、交流の1次側系統と直流の2次側系統とにおける電力の伝送は双方向の可能性がある。
そのため、交流系統である1次側電源系統31は、純正の交流電圧波形のみではなく、スイッチング動作などによるノイズ波形を含む場合も対象とするため、1次側電源系統31(VS1)の機器においては、誘導性のインピーダンス、またはフィルタリアクトルを内包するものとする。
【0023】
コンバータセル20-1~20-Nの2次側端子27,28は、互いに並列に接続され、これらコンバータセルの並列回路の出力(出力端子37,38)に、直流系統である2次側電源系統32(VS2)として、DC負荷系統が接続されている。
【0024】
また、1次側電源系統31、2次側電源系統(DC負荷系統)32としては、例えば、商用電源系統、太陽光発電システム、モータ等、様々な発電設備や受電設備を採用することができる。
【0025】
前記したように、1次側電源系統31の電圧を1次側系統電圧VS1とし、2次側電源系統(2次側負荷系統)32の電圧を2次側系統電圧VS2とする。
1次側系統電圧VS1と2次側系統電圧VS2とは、振幅および周波数が相互に独立している。
また、前記したように、電力変換装置1は、1次側電源系統31と2次側電源系統32との間で、一方向または双方向に電力を伝送する。
【0026】
なお、図1に示す1次側電源系統31の一対の端子(35,36)において、端子36を、1次側基準端子36と呼ぶ。
同様に、2次側電源系統32の一対の端子(37,38)において、端子38を、2次側基準端子38と呼ぶ。
1次側基準端子36は、1次側基準電位が現れる端子であり、2次側基準端子38は、2次側基準電位が現れる端子である。1次側基準電位および2次側基準電位は、例えば接地電位である。ただし、基準電位は、必ずしも接地電位でなくともよい。
【0027】
<電力変換装置における系統電圧の波形例と三相交流システムへの応用>
電力変換装置1を構成する電力変換ユニットであるコンバータセル20-k(1≦k≦N)の詳細を説明する前に、「1次側系統電圧VS1と2次側系統電圧VS2の波形例」と「電力変換装置1の三相交流システムへの応用」を、それぞれ図2図3を参照して先に説明する。
その後、「コンバータセル20-kの構成と機能の詳細」について、図4図6を参照して説明する。
【0028】
《1次側系統電圧VS1と2次側系統電圧VS2の波形例》
1次側系統電圧VS1と2次側系統電圧VS2の波形例について説明する。
図2は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置における1次側系統電圧VS1と2次側系統電圧VS2の波形例を示す図である。
【0029】
図2において、上段に示す波形は、電力変換装置1の入力に交流電圧が印加される1次側系統電圧VS1の波形例である。もしくは電力変換装置1が、交流電圧を1次側系統に出力する場合の波形例である。交流波形である正弦波の1周期分(0~2π)に相当する波形(Vmax,-Vmax)を示している。
また、図2の下段に示す波形は、電力変換装置1から出力される2次側系統電圧VS2の波形例であって、直流電圧(V、V)間の電圧が出力される。なお、図2の下段の図における破線は、例えば後記する図3における接地電位のNに対応している。
【0030】
なお、図2の上段における交流波形は、正弦波に対して、ノイズ成分が含まれている例を示している。
電力変換装置1に入力する電圧は、前記したように、商用電源系統、太陽光発電システム、モータ等、様々な発電設備からのものであり、必ずしも純正な正弦波形ではない。また、電力変換装置1から1次側電源系統31に交流電圧(交流電力)を出力する場合がある。そのため、図2の上段における交流波形にはノイズ成分が含まれている例を示している。
このような交流波形にはノイズ成分が含まれている場合に対処するために、前記したように、1次側電源系統31には、誘導性のインピーダンス、またはフィルタリアクトルを内包することを推奨している。
【0031】
《電力変換装置1の三相交流システムへの応用》
次に、電力変換装置1の三相交流システムへの応用例について説明する。
図3は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置1を三相交流システムに適用した構成例を示す図である。
図3において、図1で説明した電力変換装置1を3台(1U,1V,1W)備えて、三相交流(三相交流システム)に適用している。
電力変換装置1(1U)は、図1で示したように複数のコンバータセル20-k(1≦k≦N)を組み合わせて電力変換装置が構成されている。
同様に、電力変換装置1(1V)と電力変換装置1(1W)も、それぞれ複数のコンバータセル20-k(1≦k≦N)を組み合わせて、それぞれ電力変換装置が構成されている。
【0032】
電力変換装置1U(1)の入力端子(35,36)は、一端がU端子に、他端がN端子に接続されている。また、電力変換装置1Uの出力端子(27,28)は、一端がP端子に、他端がN端子に接続されている。
電力変換装置1V(1)の入力端子(35,36)は、一端がV端子に、他端がN端子に接続されている。また、電力変換装置1Vの出力端子(27,28)は、一端がP端子に、他端がN端子に接続されている。
電力変換装置1W(1)の入力端子(35,36)は、一端がW端子に、他端がN端子に接続されている。また、電力変換装置1Wの出力端子(27,28)は、一端がP端子に、他端がN端子に接続されている。
【0033】
そして、電力変換装置1U(1)のひとつの入力端子(36)は、中性点N1に接続されている。電力変換装置1V(1)のひとつの入力端子(36)は、中性点N1に接続されている。電力変換装置1W(1)のひとつの入力端子(36)は、中性点N1に接続されている。
すなわち、電力変換装置1U、電力変換装置1V、電力変換装置1Wの入力側は、Y結線(スター結線)されている。そして、U端子、V端子、W端子、および中性点N1との間に三相交流電力(三相交流電圧)が印加される。
【0034】
また、電力変換装置1U(1)、電力変換装置1V(1)、電力変換装置1W(1)の出力であるP端子とN端子は、それぞれ並列に接続されて、直流電力(直流電圧)が共通に出力される。
ただし、電力変換装置1U(1)、電力変換装置1V(1)、電力変換装置1W(1)のそれぞれの出力であるP端子とN端子は、それぞれ独立して、別系統に直流電力(直流電圧)を供給する場合もある。
【0035】
以上の図3で示した3台の電力変換装置の構成によって、三相交流電力(三相交流電圧)を用いた三相交流電力から直流電力への電力変換の三相交流システムが実現する。
【0036】
<コンバータセル20-kの構成と機能の詳細>
図1で示した電力変換装置1の電力変換ユニット(コンバータセル20)であるコンバータセル20-k(1≦k≦N)の構成と機能の詳細について図4を参照して説明する。
図4は、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置における電力変換ユニットであるコンバータセル20の構成例と機能例を説明する図である。
前記したように、本発明の第1実施形態に係る電力変換装置は、交流の1次側系統から入力して、直流の2次側系統に出力する場合と、直流の2次側系統から入力して、交流の1次側系統へ出力する場合の双方向の可能性がある。
しかし、簡単化のために、交流の1次側系統から入力して、直流の2次側系統に出力する場合について、以下に説明する。
【0037】
図4において、コンバータセル20-k(1≦k≦N)は、1次側電力変換ユニット101と、2次側電力変換ユニット102と、高周波トランス15を備えて、構成される。
1次側電力変換ユニット101は、入力端子(25,26)から交流電力(交流電圧)を入力して、高い周波数の交流電圧に変換する。そして、変換した高い周波数の交流電圧を高周波トランス15の1次側に出力する。
高周波トランス15は、1次側に入力した交流電圧を、例えば高い電圧に変圧して、高い電圧の交流電圧を2次側に出力する。そして、高い電圧に変圧された交流電力(交流電圧)を2次側電力変換ユニット102に供給する。
2次側電力変換ユニット102は、入力した高い電圧の交流電力(交流電圧)を直流電力(直流電圧)に変換する。
【0038】
《1次側電力変換ユニット101の構成と機能の詳細》
図4において、1次側電力変換ユニット101は、交直変換器11と平滑コンデンサ17と交直変換器12とを備えて構成される。
交直変換器11(第1交直変換器)は、それぞれHブリッジ状に接続された4個のスイッチング素子と、これらスイッチング素子にそれぞれ逆並列に接続された計4個のダイオードFWD(Free Wheeling Diode)とを有して構成される。また、交直変換器11の出力側には平滑コンデンサ17(1次側平滑コンデンサ)が並列に接続されている。
交直変換器11には、入力端子(25,26)から交流電圧(交流電力)を入力して、Hブリッジ状に接続された4個のスイッチング素子を、図示していない変換器制御回路によって所定の波形で制御(PWM:Pulse Width Modulation)する。
すると入力した交流電圧(正弦波)は、整流変換されて、直流電圧(直流電力)が平滑コンデンサ17の両端に出力される。
【0039】
すなわち、交直変換器11は、交流電力(交流電圧)を直流電力(直流電圧)に変換するコンバータ(AC/DC変換器)の役目をする。
なお、この変換にダイオードFWDは、負荷電流を転流させる役目をする。また、ダイオードFWDは、寄生ダイオードを利用することもできる。
また、交直変換器11の4個のスイッチング素子は、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられる。
また、交直変換器11の出力側に並列に接続された平滑コンデンサ17は、交直変換器11の出力した交流電圧からリップルを低減する役目をする。
【0040】
なお、コンバータセル20-k(1≦k≦N)の1次側端子25,26の間に現れる電圧を1次側AC端子間電圧VU1kと呼び、平滑コンデンサ17の両端の間に現れる電圧を1次側DCリンク電圧Vdc1(1次側直流電圧)と呼ぶ。
また、交直変換器11は、1次側AC端子間電圧VU1kと、1次側DCリンク電圧Vdc1とを、制御方法を選択することによって、相互に変換可能である。そして、電力を一方向または双方向に伝送することが可能である。
【0041】
図4において、交直変換器12(第2交直変換器)は、交直変換器11と同様に、それぞれHブリッジ状に接続された4個のスイッチング素子と、これらスイッチング素子に逆並列に接続された4個のダイオードFWDとを有して構成される。
ただし、交直変換器12は、交直変換器11とは4個のスイッチング素子の制御波形が異なる。交直変換器12において、平滑コンデンサ17から直流電力(直流電圧)を入力して、Hブリッジ状に接続された4個のスイッチング素子を、図示していない変換器制御回路によって、交直変換器11とは異なる所定の波形で制御(PWM:Pulse Width Modulation)すると、入力端子(25,26)の周波数よりも高い周波数の交流電圧(交流電力)に変換して出力される。
【0042】
以上のように、1次側電力変換ユニット101は、入力端子(25,26)から入力した交流電圧(交流電力)の周波数を、高い周波数に変換する。
すなわち、1次側電力変換ユニット101は、周波数変換器でもある。なお、1次側電力変換ユニット101は、入力した交流電圧の周波数を高くも、低くも変換可能であるが、高周波トランスへ出力する場合には、高い周波数に変換する。
周波数変換器でもある1次側電力変換ユニット101は、高い周波数の交流電圧(交流電力)を出力する。この高い周波数の交流電圧(交流電力)を高周波トランス15の1次側へ出力する。
【0043】
《高周波トランス15》
高周波トランス15は、1次巻線15aと2次巻線15bとを有し、1次巻線15aと2次巻線15bとの間で、所定の周波数で電力を伝送する。
高周波トランス15においては、1次側電力変換ユニット101から入力した交流電圧を、例えば高い電圧の交流電圧に変換する。
そして変換した、例えば高い電圧の交流電圧(交流電力)を2次側電力変換ユニット102に入力する。
【0044】
高周波トランス15は、高周波数において効率よく、トランスの1次側に入力した交流電圧を変圧して、トランスの2次側に交流電圧を出力する。
トランス(高周波トランス)は、交流電圧の1次電圧を2次電圧に変圧する際に、高周波を用いることによってトランスのコアを小型にできる。すなわちトランスを小型化できる。
このように、トランスを小型化するために、前記した電力変換ユニットであるコンバータセル20-kにおいては、例えば商用周波数の低い周波数の交流電圧を、高い周波数の交流電圧に変換してから、高周波トランス15に供給し、高周波トランス15で効率よく変圧(例えば昇圧)してから、高周波数の交流電圧を直流電圧に整流して出力する方法をとっている。
【0045】
なお、ここで高周波とは、例えば100Hz以上の周波数である。さらには、1kHz以上の周波数を採用することが好ましく、10kHz以上の周波数を採用することがより好ましい。
そのため、前記したように、1次側電力変換ユニット101を周波数変換器として動作させている。
【0046】
《2次側電力変換ユニット102の構成と機能の詳細》
図4において、2次側電力変換ユニット102は、交直変換器13と平滑コンデンサ18と可変抵抗スイッチ201を備えて構成される。
交直変換器13は、前記した交直変換器11と同様に、それぞれHブリッジ状に接続された4個のスイッチング素子と、これらスイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードFWDとを有して構成される。また、交直変換器13の出力には平滑コンデンサ18が並列に接続されている。
交直変換器13には、高周波トランス15から交流電圧(交流電力)を入力して、Hブリッジ状に接続された4個のスイッチング素子を図示していない変換器制御回路によって、所定の波形で制御すると、直流電圧(直流電力)に変換される。
平滑コンデンサ18の両端の間に現れる電圧を2次側DCリンク電圧Vdc2(2次側直流電圧)と呼ぶ。
【0047】
すなわち、交直変換器13は、交流電圧(交流電力)を直流電圧(直流電力)に変換するAC/DCコンバータの役目をする。
また、ダイオードFWDについては、交直変換器11におけるダイオードと同じ構成であるので、重複する説明は省略する。
【0048】
なお、1次側電力変換ユニット101と高周波トランス15と交直変換器13によって、AC/DCコンバータ113を構成しているとも考えられる。
【0049】
また、図4における平滑コンデンサ18は、交直変換器13の出力した交流電圧、またはAC/DCコンバータ113の出力した交流電圧からリップルを低減する役目をする。
このリップルを低減した直流電圧(直流電力)をコンバータセル20-kの出力電圧(出力電力)として、出力端子(27,28)から出力する。
【0050】
また、図4において、平滑コンデンサ18の一端と出力端子27との間に可変抵抗スイッチ201が備えられている。
可変抵抗スイッチ201は、並列に接続された複数のコンバータセル20-k(1≦k≦N)間における反共振を防止するためのものである。
この反共振の現象、および可変抵抗スイッチ201の詳細については、後記する。
【0051】
なお、平滑コンデンサ18の両端の間に現れる電圧を2次側DCリンク電圧Vdc2(2次側直流電圧)と呼ぶ。また、2次側端子27,28の間に現れる電圧を2次側DC端子間電圧Vu2kと呼ぶ。
【0052】
また、コンバータセル20(20-k)は、1次側端子25,26から交流電圧(交流電力)を入力して2次側端子27,28から直流電圧(直流電力)を出力する例を説明した。ただし、前記したように、制御の仕方によって、1次側端子25,26と2次側端子27,28との間で双方向に電力(交流電力⇔直流電力)を伝送することも可能である。
【0053】
<電力変換器の出力に関連する反共振の現象について>
複数のコンバータセル20-k(1≦k≦N)を備えて構成される電力変換装置1の出力に関連する反共振の現象について、図1を参照して説明する。
図1において、複数のコンバータセル20-k(1≦k≦N)のそれぞれの出力端子(27,28)を互いに並列に接続された構成となっている。
この構成では、AC/DC変換器である交直変換器13の駆動周波数条件や、並列接続される電力変換ユニットの2次側端子間の配線寄生インダクタンス成分により、出力側平滑コンデンサ18間に反共振(不要共振電流)が発生することがある。
このとき、2次側出力における出力側平滑コンデンサ18には、反共振の現象による不要共振電流が流れることで、コンデンサ発熱が増大する。
【0054】
また、出力側平滑コンデンサ18や配線寄生インダクタンス成分のみならず、交直変換器13や高周波トランス15が反共振の現象に関与することがある。場合によっては、2次側電源系統32に起因する直流電源端子37,38間に存在する静電容量の成分が関与することがある。
【0055】
これらの場合の共振は、複数の回路構成によって、複数の共振現象が存在し、これらの複数の共振経路による共振が様々に発生あるいは消滅し、これらの共振現象が様々に移り変わっていく反共振が起こりうる。
この反共振に伴うリプル電流(不要共振電流)を抑制し、このリプル電流による出力側平滑コンデンサ18のコンデンサ発熱を低減するために、図1および図4において、可変抵抗スイッチ201を設けている。
【0056】
《可変抵抗スイッチ201》
図5は、本発明の第1実施形態に係るコンバータセルに可変抵抗スイッチ201を備えた構成例と機能例を説明する図である。
なお、図5においては、可変抵抗スイッチ201の機能を説明することが主眼である。そのため、図5においては、AC/DCコンバータ113を用いて、コンバータセル20-k(1≦k≦N)の記載を簡略化して表現している。
すなわち、図5において、「AC/DC1」、「AC/DC2」、・・・、「AC/DCN」と表記したAC/DCコンバータ113は、図4におけるAC/DCコンバータ113と表記した交直変換器11、平滑コンデンサ17、交直変換器12、高周波トランス15、交直変換器13の合成回路に相当する。
以下においては、可変抵抗スイッチ201の構成、機能、動作について、図5を参照して説明する。
【0057】
図5において、コンバータセル20-1は、AC/DCコンバータ113と平滑コンデンサ(出力側平滑コンデンサ)18と、可変抵抗スイッチ201とを備えて構成されている。
可変抵抗スイッチ201は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子を備えて構成され、平滑コンデンサ(出力側平滑コンデンサ)18の一端と出力端子27との間に接続されている。
【0058】
可変抵抗スイッチ201は、トランジスタ(IGBT素子)211とトランジスタ(IGBT素子)212とを備えて構成される。なお、寄生ダイオード(ダイオード)221はIGBT素子211に、寄生ダイオード(ダイオード)222は、IGBT素子212に付随して形成される。
IGBT素子211のカソードは、IGBT素子212のカソードに接続されている。
IGBT素子211のエミッタは、平滑コンデンサ(出力側平滑コンデンサ)18の一端に接続され、IGBT素子212のエミッタは出力端子27に接続されている。
【0059】
すなわち、トランジスタ(IGBT素子)211とダイオード(寄生ダイオード)221が並列に接続された第1の回路と、トランジスタ(IGBT素子)212とダイオード(寄生ダイオード)222が並列に接続された第2の回路とが、直列に接続されて、可変抵抗スイッチ201が構成されている。
IGBT素子211とIGBT素子212のゲートは、後記する制御部310の抵抗値制御信号322が接続され、この抵抗値制御信号322が駆動するゲート駆動電圧で、IGBT素子211,212の導通時の可変抵抗スイッチ201の抵抗値(抵抗成分)が制御可能となる。
なお、図5において示したIGBT素子は、ゲート電圧を高くすると電流が流れやすくなり、抵抗値は低くなる特性を有している。
【0060】
また、図5において、可変抵抗スイッチ201の一端と出力端子27とに流れる電流を検出する電流センサ(電流検出器)301が設けられている。
この電流センサ301は、コンバータセル20-k(1≦k≦N)において、同様に設けられている。
この複数の電流センサ301で検出された電流検出信号321は、制御部310に伝送されている。
制御部310は、電流検出信号321によって、電流値を感知し、その結果によって、複数の可変抵抗スイッチ201の抵抗値を制御する抵抗値制御信号322を、複数の可変抵抗スイッチ201に送る。そして、抵抗値制御信号322によって、複数の可変抵抗スイッチ201の抵抗値(導通抵抗特性)を制御する。
なお、制御部310は、電流検出信号321によって、可変抵抗スイッチ201の抵抗値(導通抵抗特性)を制御する機構を備えている。
【0061】
また、制御部310では、反共振が起きていのか否かを判定するために、電流検出信号321による検出電流の所定の周波数成分に着目して検出する。
ただし、反共振の現象においては、共振周波数は必ずしも一定していない。すなわち、可能性のある複数の共振の間で遷移することがある。そのため、検出する周波数の範囲は、所定の幅を持った周波数帯域である。
なお、制御部310が複数の可変抵抗スイッチ201の抵抗値を制御することによって、複数のコンバータセル20-k(1≦k≦N)のそれぞれの出力端子(27,28)に流れる電流を制御する。そして、複数のコンバータセル20-k(1≦k≦N)の出力端子(27,28)間を介して、発生する反共振を抑制する。
【0062】
<可変抵抗スイッチ201のゲート駆動電圧制御フロー>
次に、図5で示した可変抵抗スイッチ201のゲート駆動電圧の制御フローについて、図6を参照して説明する。
図6は、図5で示した本発明の第1実施形態に係るコンバータセルの可変抵抗スイッチ201のゲート駆動電圧制御フローのフローチャート例を示す図である。
【0063】
《ステップS401》
ステップS401において、初期設定として、可変抵抗スイッチ(201:図5)を駆動する。そしてステップS402に進む。
なお、フローチャート上において、表記の都合により、適宜、可変抵抗スイッチを「可変抵抗SW」と記載する。
【0064】
《ステップS402》
ステップS402において、図5に示した電流センサ301によって、「ユニット出力電流を検出」する。すなわち、図5における複数のコンバータセル20-k(1≦k≦N)の出力側の電流を、複数の電流センサ301で検出する。
【0065】
《ステップS403》
ステップS403では、複数の電流センサ301で検出した電流値を、図5に示した制御部310に集約して、「いずれかのユニット(電力変換ユニット、コンバータセル)で出力電流の特定周波数成分(所定の周波数帯域の周波数成分)が規定値以上か?」を判定する。
規定値以上の特定周波数成分の電流(反共振電流)を、いずれかのユニットで検出した場合(Yes)には、共振(反共振)が起きていると判定して、「共振抑制モード」に移行するため、ステップS424に進む。
また、いずれのユニットでも、規定値以上の特定周波数成分の電流(反共振電流)を検出しない場合(No)には、可変抵抗スイッチの抵抗を下げることが可能であるとして、「低抵抗モード」に移行するため、ステップS414に進む。
【0066】
《ステップS414》
ステップS414においては、制御部310の抵抗値制御信号322によって、複数の「可変抵抗スイッチの駆動電圧を上昇」して可変抵抗スイッチ201の抵抗値を下げる。
なお、可変抵抗スイッチの抵抗値を下げるのは、直流電源の出力(出力端子37,38)としての出力インピーダンスを下げて、直流電源としての出力特性を良好にするためである。
そしてステップS415に進む。
【0067】
《ステップS415》
ステップS415においては、ステップS414における「可変抵抗スイッチの駆動電圧を上昇」後の「ユニット出力電流を(再度)検出」する。
そしてステップS416に進む。
【0068】
《ステップS416》
ステップS416においては、「いずれかのユニット(電力変換ユニット、コンバータセル)で出力電流の特定周波数成分(所定の周波数帯域の周波数成分)が規定値以上か?」を判定する。
いずれのユニットでも、規定値以上の特定周波数成分の電流(反共振電流)を検出しない場合(No)には、まだ可変抵抗スイッチの抵抗値に余裕があるとして、ステップS414に戻り、可変抵抗スイッチの抵抗値を下げることを、再度、試みる。
また、規定値以上の特定周波数成分の電流(反共振電流)を、いずれかのユニットで検出した場合(Yes)には、共振(反共振)がすでに起きていると判定して、ステップS417に進む。
【0069】
《ステップS417》
ステップS417においては、共振(反共振)がすでに起きているのは、可変抵抗スイッチの抵抗値が低すぎるためであるとして、「可変抵抗スイッチ駆動電圧を低下」して可変抵抗スイッチの抵抗値を高くする。この「可変抵抗スイッチ駆動電圧を低下」する際における電圧は、共振(反共振)が起こらなかったことが確認されている前の段階の電圧「駆動電圧」である。
そして、ステップS418に進む。
【0070】
《ステップS418》
ステップS418においては、共振(反共振)が起こらなかったことが確認されている前の段階の電圧で、可変抵抗スイッチの「駆動電圧を決定」して複数のコンバータセル20-k(1≦k≦N)、および電力変換装置1を動作させる。
【0071】
《ステップS424》
「共振抑制モード」であるステップS424においては、可変抵抗スイッチの抵抗を高くして、共振を抑制するために、「可変抵抗スイッチ駆動電圧を低下」させる。
そして、ステップS425に進む。
【0072】
《ステップS425》
ステップS425では、ステップS424で「可変抵抗スイッチ駆動電圧を低下」させたものの、適正な駆動電圧であるかは不明であるため、「ユニット出力電流を検出」することを行う。
そして、ステップS426に進む。
【0073】
《ステップS426》
ステップS426においては、「いずれかのユニット(電力変換ユニット、コンバータセル)で出力電流の特定周波数成分(所定の周波数帯域の周波数成分)が規定値以上か?」を判定する。
規定値以上の特定周波数成分の電流(反共振電流)を、いずれかのユニットで検出した場合(Yes)には、共振(反共振)が引き続き起きているとして、ステップS424に戻る。
また、いずれのユニットでも、規定値以上の特定周波数成分の電流(反共振電流)を検出しない場合(No)には、共振(反共振)が収まったと判定して、ステップS427に進む。
【0074】
《ステップS427》
ステップS427においては、共振(反共振)が収まっているので、この収まったときの駆動電圧を採用すべく、「駆動電圧を決定」して、複数のコンバータセル20-k(1≦k≦N)、および電力変換装置1を動作させる。
【0075】
図6のフローチャートの補足>
図6のフローチャートについて、実際の動作との関係について、以下に補足する。
【0076】
ステップS401においては、電力変換ユニットの可変抵抗SW(可変抵抗スイッチ)を導通状態とし、各負荷に電力を供給するモードに移行する場合は、可変抵抗SWのゲート駆動電圧が設定される。
【0077】
ステップS403においては、制御部310(図5)には電流センサ301からの電流情報が入力される。検出された電流値が特定の周波数で規定値以下となり、不要な共振電流(不要共振電流)が流れてないと判定されたとき(S403(No))、ゲート駆動電圧を上昇させて、低抵抗モード(S414)で駆動される。
【0078】
低抵抗モードでは、不要共振電流が発生するか、また定格の規定値まで段階的に上昇させる。ゲート電圧上昇中に、電流検出情報から不要共振電流が発生したと判定した場合(S416(Yes))には、共振電流が発生しない電圧までゲート駆動電圧を下げ(S417)、ゲート駆動電圧を策定(決定)する(S418)。
【0079】
一方、ステップS403において、検出された電流値が特定の周波数で規定値以下となり、不要共振電流が流れていると判定された(Yes)とき、ゲート駆動電圧は共振抑制モードで駆動される(S424)。
【0080】
共振抑制モードでは、不要共振電流が規定値以下(S426(No))となるか、また導通状態を維持できる下限の規定値まで段階的にゲート電圧を低下させる(S424)。
ゲート電圧低減中に、電流検出情報から不要共振電流が規定値以下となった場合、そのゲート駆動電圧で策定する(S427)。
【0081】
以上、図6で示した制御フローで適切な可変抵抗スイッチの駆動電圧が決定できる。
本発明の第1実施形態に係る電力変換装置を図6で示した制御フローで運用すれば、不要共振電流が発生しない条件下では、可変抵抗スイッチ(可変抵抗SW)201の抵抗成分を低減したモードで駆動でき、可変抵抗スイッチでの損失を低減することで、電力変換効率を向上することが可能となる。
【0082】
<第1実施形態の総括>
図1に示すように電力変換ユニット20の2次側出力端子27,28を並列接続した構成では、AC/DC変換器である交直変換器13の駆動周波数条件や、並列接続される電力変換ユニットの2次側端子間の配線寄生インダクタンス成分により、出力側平滑コンデンサ18間に反共振が発生し、不要共振電流が流れることがある。
この際、2次側出力の平滑コンデンサ18は、不要共振電流が流れることで、コンデンサ発熱が増大する。
【0083】
一方、図4図1に示したように、第1実施形態の電力変換装置においては、平滑コンデンサ18の一端と出力端子27との間に可変抵抗スイッチ201が備えられている。
そのため、2次側出力の平滑コンデンサ18と並列接続される他の電力変換ユニットの2次側出力の平滑コンデンサ18との間に可変抵抗スイッチ201が存在することなる。
この構成において、複数の平滑コンデンサ18が関与する反共振現象において、不要共振電流発生時に可変抵抗スイッチ201の導通抵抗を高くすることで、共振電流を抑制し、コンデンサの発熱を低減することが可能となる。
コンデンサの発熱を低減することで、冷却機構の簡易化や必要コンデンサ容量を削減可能となり、電力変換装置の小型化が可能である。
なお、負荷側から電力変換装置へ、すなわち、2次側電源系統32から1次側電源系統31へ、電力が供給される場合においても、可変抵抗スイッチ201を用いることによって、反共振を防止することができる。
【0084】
<第1実施形態の効果>
本発明によれば、複数の電力変換ユニットの出力側を多並列接続する電力変換器において、並列接続された各ユニットのコンデンサ間の共振電流を低減し、小型化した電力変換装置を提供できる。
また、反共振に伴うリプル電流を抑制し、コンデンサ(平滑コンデンサ)の発熱を低減することができる。
また、コンデンサの発熱を低減することで、冷却機構の簡易化や必要とするコンデンサ容量を削減可能となり、さらなる電力変換装置の小型化が可能である。
【0085】
≪第2実施形態≫
本発明の第2実施形態に係る電力変換装置1Bの構成について、図7を参照して説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置の構成例を説明する図である。
図7においては、図5に記載の電力変換器において、複数のバイパススイッチ601が複数の可変抵抗スイッチ201のそれぞれに並列に備えられている。
バイパススイッチ601は、並列に接続されている可変抵抗スイッチ201をバイパスする。
バイパススイッチ601は、例えば電磁開閉器やリレーのように、前記した可変抵抗スイッチ201を構成するIGBTやMOSFETなどの半導体スイッチよりも導通抵抗が低いスイッチである。
【0086】
なお、図7で示した本発明の第2実施形態の電力変換装置1Bの特徴は、前記のバイパススイッチ601を備えたことにあり、他の回路構成や機能について、事実上、重複する説明は、省略する。
また、図7では、記載の簡単化のために、コンバータセルの数を3台に限定して表記している。本発明の第2実施形態における電力変換装置の特徴は、前記したように、バイパススイッチ601を備えたことにあるので、コンバータセルの数を3台に限定して説明しても、本質的には問題は生じないからである。
また、電力変換装置1Bの直流電力(直流電圧)の出力端子側を2次側電源系統32Bと表記している。
なお、図7における2次側電源系統32Bは、直流電力(直流電圧)の負荷側に相当することもある。
【0087】
図7において、複数(3台)の電流センサ301は、それぞれ複数(3台)のコンバータセルの出力の電流を検出している。
複数の電流センサ301の検出した電流検出信号321は、制御部311に入力する。
制御部311は、電流検出信号321の特定周波数成分(所定の周波数帯域の周波数成分)を検出して、反共振が起きているか否かを検出する。そして、特定周波数成分の有無に応じて、可変抵抗スイッチ201への抵抗値制御信号322と共に、バイパススイッチ601の開閉を制御する開閉制御信号323を出力する。
【0088】
制御部311は、可変抵抗スイッチ201の抵抗値を下限近く低下させた際に、さらに抵抗値を低くする余地があると判定した場合に、バイパススイッチ601を短絡し、その際に、反共振が発生しない場合には、電力変換装置1Bとしての出力インピーダンスの向上(低抵抗化)を図る。
次に、可変抵抗スイッチ201とバイパススイッチ601の制御フローについて説明する。
【0089】
<バイパススイッチ601と可変抵抗スイッチ201の制御フロー>
図7で示したバイパススイッチ601と可変抵抗スイッチ201を制御する制御フローについて、図8A図8Bを参照して説明する。
図8Aおよび図8Bは、図7で示した本発明の第2実施形態に係るコンバータセルのバイパススイッチ601と可変抵抗スイッチ201を制御するフローチャート例を示す図である。
【0090】
図8Aにおいて、ステップS501~S503は、図6のステップS401~S403に対応し、図8BにおけるステップS524~S527は、図6のステップ424~S427に対応している。そのため、事実上、重複する説明は省略する。
図8AにおけるステップS514~S517と、ステップ537~S538、および図8BにおけるステップS518~S521、そしてステップS541について、以下に説明する。
【0091】
《ステップS514》
図8Aにおいて、ステップS514において、制御部311の抵抗値制御信号322によって、複数の「可変抵抗スイッチの駆動電圧を上昇」して可変抵抗スイッチ201の抵抗値を下げる。
なお、前記したように、可変抵抗スイッチの抵抗値を下げるのは、直流電源の出力(出力端子37,38)としての出力インピーダンスを下げて、直流電源としての出力特性を良好にするためである。
そしてステップS515に進む。
【0092】
《ステップS515》
ステップS515においては、ステップS514における「可変抵抗スイッチの駆動電圧を上昇」後の「ユニット出力電流を(再度)検出」する。
そしてステップS516に進む。
【0093】
《ステップS516》
ステップS516においては、「いずれかのユニット(電力変換ユニット、コンバータセル)で出力電流の特定周波数成分(所定の周波数帯域の周波数成分)が規定値以上か?」を判定する。
いずれのユニットでも、規定値以上の特定周波数成分の電流(反共振電流)を検出しない場合(No)には、まだ可変抵抗スイッチの抵抗値に余裕があるとして、ステップS517に進む。
また、規定値以上の特定周波数成分の電流(反共振電流)を、いずれかのユニットで検出した場合(Yes)には、共振(反共振)がすでに起きていると判定して、ステップS537に進む。
【0094】
《ステップS537》
ステップS537においては、共振(反共振)がすでに起きているのは、可変抵抗スイッチの抵抗値が低すぎるためであるとして、「可変抵抗スイッチ駆動電圧を低下」して可変抵抗スイッチの抵抗値を高くする。この「可変抵抗スイッチ駆動電圧を低下」する際における電圧は、共振(反共振)が起こらなかったことが確認されている前の段階の電圧「駆動電圧」である。
そして、ステップS538に進む。
【0095】
《ステップS538》
ステップS538においては、共振(反共振)が起こらなかったことが確認されている前の段階の電圧で、可変抵抗スイッチの「駆動電圧を決定」して複数のコンバータセル20-k(1≦k≦3)、および電力変換装置1を動作させる。
【0096】
《ステップS517》
ステップ517においては、共振(反共振)が起きていないことから、可変抵抗スイッチの駆動電圧を高く(低抵抗化)することが可能であるかを検証する。
具体的には、「可変抵抗スイッチ駆動電圧が規定値以上か?」を判定する。
可変抵抗スイッチ駆動電圧が規定値以上ではない場合(No)には、ステップS514に戻り、可変抵抗スイッチ駆動電圧を高くすることを試みる。
また、可変抵抗スイッチ駆動電圧が規定値以上の場合(Yes)には、可変抵抗スイッチの駆動電圧を更に高くするよりも、バイパススイッチ601を用いる方法が適当であるとして、ステップS518(図8B)に進む。
以下は、図8Bを参照して説明する。
【0097】
《ステップS518》
図8BにおけるステップS518においては、バイパススイッチ(601:図7)をオン(ON)する。すなわち、可変抵抗スイッチ201の両端をバイパススイッチ601で短絡する。
そして、ステップS519に進む。
【0098】
《ステップS519》
ステップS519においては、ステップS518における「バイパススイッチをオン」後の「ユニット出力電流を検出」する。
そしてステップS520に進む。
【0099】
《ステップS520》
ステップS520においては、「いずれかのユニット(電力変換ユニット、コンバータセル)で出力電流の特定周波数成分(所定の周波数帯域の周波数成分)が規定値以上か?」を判定する。
いずれのユニットでも、規定値以上の特定周波数成分の電流(反共振電流)を検出しない場合(No)には、ステップS521に進む。
また、規定値以上の特定周波数成分の電流(反共振電流)を、いずれかのユニットで検出した場合(Yes)には、共振(反共振)がすでに起きていると判定して、ステップS541に進む。
【0100】
《ステップS521》
ステップS521においては、バイパススイッチをオンしても共振(反共振)が起きていないとして、電力変換装置1B(複数のコンバータセル)の出力インピーダンス特性と良好な「バイパススイッチをオン状態を保持」する。
すなわち、バイパススイッチをオン状態で電力変換装置1Bを動作させる。
【0101】
《ステップS541》
ステップS541においては、バイパススイッチをオンすると共振(反共振)が起きているとして、「バイパススイッチをオフ」する。
すなわち、可変抵抗スイッチのオン状態のみとして、電力変換装置1Bを動作させる。
【0102】
図8A図8Bのフローチャートの補足>
図8A図8Bのフローチャートについて、実際の動作との関係について、以下に補足する。
図8A図8Bのフローチャートは、前記した図6のフローチャートに対して、さらにバイパススイッチの制御を含めたフローチャートである。
そのため、バイパススイッチの制御が関連しない制御フローは、図6のフローチャートと同じになるので、重複する説明は省略する。
【0103】
低抵抗モード(S503(No))で可変抵抗SWのゲート電圧を上昇させ(S514)、検出された電流値が特定の周波数で規定値以下の状態(S516(No))で、可変抵抗SWの駆動電圧が規定値に到達した場合(S517(Yes))は、バイパススイッチ(バイパスSW)601(図7)が導通状態に制御される。バイパスSWが導通状態で、不要共振電流が規定値以下と判定(S520(No))されたとき、バイパスSWの導通状態を維持(保持)し(S521)、バイパスSW導通モードで変換器が駆動される。
【0104】
一方、バイパスSWを導通状態としたとき、検出された電流値が特定の周波数で規定値以上となった場合(S520(Yes))は、バイパスSWをオフし(S541)、可変抵抗SW低抵抗導通モードで変換器が駆動される。
【0105】
以上、図8A図8Bで示した制御フローで適切な可変抵抗スイッチとバイパススイッチを使い分けることによって、不要共振電流が発生せずに、スイッチ部(可変抵抗スイッチ+バイパススイッチ)での損失を低減することで、電力変換効率を向上することが可能となる。
すなわち、不要共振抑制モードと高効率運転モードの切り替えが図れる。
【0106】
<第2実施形態の効果>
可変抵抗スイッチに並列に接続したバイパススイッチを設けて、可変抵抗スイッチとバイパススイッチを適切に使い分けることによって、不要共振電流を発生せずに、出力インピーダンスを低下して、電力変換効率を向上させることが可能となる効果がある。
【0107】
≪第3実施形態≫
本発明の第3実施形態に係る電力変換装置1Cの構成について、図9を参照して説明する。
図9は、本発明の第3実施形態に係る電力変換装置の構成例を説明する図である。
図9においては、電力変換装置1Cのコンバータセルにおける可変抵抗スイッチ202として、IGBT素子211と寄生ダイオード221とを備えて構成されている。
なお、図5図7で示した可変抵抗スイッチ201は、IGBT素子211と寄生ダイオード221の対、およびIGBT素子212と寄生ダイオード222の対、いわば2対で構成されていた。
それに対して、図9の可変抵抗スイッチ202では、IGBT素子211と寄生ダイオード221の1対で構成されている。
【0108】
図9における電力変換装置1Cは、図7における電力変換装置1Bとの相違は、図9の可変抵抗スイッチ202と、図7の可変抵抗スイッチ201との相違のみである。
その他の重複する説明は、適宜、省略する。
図9の可変抵抗スイッチ202を用いた場合においても、図8A図8Bのフローチャートで示した同様の電力変換装置としての制御が可能である。
図9における電力変換装置1Cにおいても、半導体スイッチ(可変抵抗スイッチ)の素子数を低減しつつ、不要共振抑制モードと高効率運転モードの切り替えが可能となる。
【0109】
<第3実施形態の効果>
第3実施形態の電力変換装置1Cにおいても、半導体スイッチ(可変抵抗スイッチ)の素子数を低減しつつ、不要共振抑制モードと高効率運転モードの切り替えが可能となる。
【0110】
≪第4実施形態≫
本発明の第4実施形態に係る電力変換装置1Dの構成について、図10を参照して説明する。
図10は、本発明の第4実施形態に係る電力変換装置の構成例を説明する図である。
図10においては、図5に示した電力変換装置1における出力側において、直流負荷である接続負荷(801,802)と電力変換ユニット(コンバータセル)の接続並列数を切り替える並列数切替スイッチ701をさらに備えた電力変換装置1Dを示している。
【0111】
また、図5においては、電力変換ユニットであるコンバータセル20-1~20-Nは、N台とし、それに伴い各コンバータセルの入力側のAC/DCコンバータ113を「AC/DC1」、「AC/DC2」、・・・、「AC/DCN」として記載した。
それに対して、図10においては、簡単化のために、入力側のAC/Dソコンバータ113を「AC/DC1」、「AC/DC2」、「AC/DC3」として示したように、電力変換ユニットであるコンバータセルを3台の場合で示している。
また、図10において、直流負荷である接続負荷(801,802)を「DC/DC1」、「DC/DC2」と記載している。
なお、図10において、図5と重複する説明は、適宜、省略する。
【0112】
また、図10において、並列数切替スイッチ701は、直流電力(直流電圧)を複数の系列で伝送する第1直流バス(DCBUS1P,DCBUS1N)と、第2直流バス(DCBUS2P,DCBUS2N)とを備えている。
また、並列数切替スイッチ701は、電力変換ユニット(コンバータセル)の出力を第1直流バス(DCBUS1P,DCBUS1N)に接続するバス切替スイッチ(711A,711B)、バス切替スイッチ(712A,712B)、バス切替スイッチ(713A,713B)を備えている。
また、並列数切替スイッチ701は、電力変換ユニット(コンバータセル)の出力を第2直流バス(DCBUS2P,DCBUS2N)に接続するバス切替スイッチ(721A,721B)、バス切替スイッチ(722A,722B)、バス切替スイッチ(723A,723B)を備えている。
【0113】
並列数切替スイッチ701の第1直流バス(DCBUS1P,DCBUS1N)は、直流負荷(DC/DC1)801に接続されている。なお、直流負荷(DC/DC1)801の入力側には平滑コンデンサ191が接続されている。
また、並列数切替スイッチ701の第2直流バス(DCBUS2P,DCBUS2N)は、直流負荷(DC/DC2)802に接続されている。なお、直流負荷(DC/DC2)802の入力側には平滑コンデンサ192が接続されている。
【0114】
以上の構成によって、電力変換装置1Dは、複数の電力変換ユニット(コンバータセル)の直流電力を、並列数切替スイッチ701に備えた複数のバス切替スイッチを適正に切り替えることによって、一つの電力変換器で複数負荷への同時接続が可能となる。かつ、負荷の電力量に応じて接続並列数を適切に切り替えることで、高効率での運転が可能となる。
また、並列数切替スイッチ701によって、接続負荷や、並列接続数が切り替わるごとに、図6で示した制御フローで可変抵抗スイッチ201の駆動電圧が調整される。
【0115】
<第4実施形態の効果>
第4実施形態の電力変換装置によれば、並列数切替スイッチによって、一つの電力変換器で複数負荷への同時接続が可能となる。
また、負荷の電力量に応じて接続並列数を適切に切り替えることで、高効率での運転が可能となる。
また、それぞれの変換器ユニット(コンバータセル)に可変抵抗スイッチを設けているので、並列コンデンサ数や負荷条件が切り替わる場合においても、可変抵抗スイッチのゲート駆動電圧を制御することで、反共振の発生や不要共振電流の抑制が可能となる。
【0116】
≪その他の実施形態≫
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものでなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を追加・削除・置換をすることも可能である。
以下に、その他の実施形態や変形例について、さらに説明する。
【0117】
《制御部の可変抵抗スイッチの抵抗値制御について》
図5を参照して第1実施形態では、制御部310が複数の電流センサ301に流れる所定の周波数成分を検出して、その結果を用いて、一律に可変抵抗スイッチの抵抗値を制御していたが、複数の電流センサ301の個々の検出値によって、対応する可変抵抗スイッチの抵抗値を個別に制御する方法もある。
このように個別に制御する方法の方が、反共振の抑制と電力変換器の出力特性の向上の相反する特性の両立を、より精度よく図れる。
【0118】
《並列数切替スイッチと可変抵抗スイッチ、バイパススイッチの抵抗値制御》
第4実施形態においては、並列数切替スイッチ701によって、接続負荷や、並列接続数が切り替わるごとに、図6の制御フローに基づき、可変抵抗スイッチ201の駆動電圧が調整される場合について説明した。
しかし、並列数切替スイッチ701を用いた場合に、調整をするのは可変抵抗スイッチ201に限定されない。
図7で示した電力変換装置1Bに、図10で示した並列数切替スイッチ701を併用してもよい。この場合には、並列数切替スイッチ701によって、接続負荷や、並列接続数が切り替わるごとに、図8A図8Bで示した制御フローに基づき、可変抵抗スイッチとバイパススイッチを調整する。
【0119】
《可変抵抗スイッチの素子》
可変抵抗スイッチはIGBT素子に限定されない。MOSFETFET、スーパージャンクションMOSFET、バイポーラトランジスタなどの半導体素子のいずれかで構成してもよい。
また、半導体素子をN型系統のスイッチング素子でも、P型系統のスイッチング素子で構成してもよい。ただし、可変抵抗スイッチを制御する抵抗値制御信号の極性を反転して用いる。
【0120】
《可変抵抗スイッチを構成する半導体素子の対数》
図5においては、可変抵抗スイッチをIGBT素子211とダイオード221の対と、IGBT素子212とダイオード222の対の計2対で構成していた。
また、図9においては、可変抵抗スイッチをIGBT素子211とダイオード221の対による1対で構成していた。
しかし、2対や1対に限定されない、3対以上で構成してもよい。
【0121】
《バイパススイッチの構成》
図7において、バイパススイッチ601について、「電磁開閉器やリレーのように半導体スイッチよりも導通抵抗が低いスイッチである」と説明した。しかし電磁開閉器やリレーのように半導体以外の部品に限定されない。
半導体素子においても、半導体素子の形状や、印加する電圧の選択、あるいは低いスレッショルド電圧の特性のものを採用する、などの様々な手法を採用することによって、バイパススイッチ601を半導体素子で構成する方法もある。
【0122】
《並列数切替スイッチ部における直流バス数》
図10においては、並列数切替スイッチ部における直流バスを第1直流バスと第2直流バスの2系列としたが、3系列以上でもよい。また接続負荷(直流負荷)の台数、系列数(801,802)を2台(系列)としたが、共に3系列以上でもよく、一般的にN系列で構成してもよい。
【0123】
《複数の電力変換ユニットの交流側の接続方法》
図1図5図7図9図10においては、複数の電力変換ユニット(コンバータセル)の1次側端子(25,26)は、直列に順次接続される構成例で説明した。
しかし、複数の電力変換ユニット(コンバータセル)の1次側端子(25,26)は、直列に接続されることに限定されない。
複数の電力変換ユニット(コンバータセル)の1次側端子(25,26)が互いに、並列に接続される場合においても、2次側(出力側)において、可変抵抗スイッチやバイパススイッチを設ける方法は、反共振を防止するにあたって有効な方法である。
【0124】
《電力変換ユニットの構成》
図1および図4においては、電力変換ユニット(コンバータセル)の構成として、高周波トランス15を備える場合について説明した。しかし電力変換ユニットとして、高周波トランスを備えることは必須ではない。
図4図5図7図9図10におけるAC/DCコンバータ113は、交流電力(交流電圧)を直流電力(直流電圧)に変換する役目であるので、高周波トランスを含まずに構成してもよい。
【0125】
《電流センサの個数》
図5図7図9において、電流センサ301の個数は、電力変換ユニット(コンバータセル)と同数である場合について、説明した。
しかし、電流センサ301は、すべての電力変換ユニットに設けるとは限らない。
反共振の現象が発生する場合には、複数の他の電力変換ユニットが関連するのが一般的であるので、電流センサ301の数が電力変換ユニットの数と一致しない構成でも反共振を検出する構成をとることは可能である場合がある。
【0126】
《電流センサの配置》
図5図7図9において、電流センサ301を、電力変換ユニット(コンバータセル)を構成する要素として、電力変換ユニットに取り込んで構成してもよい。
また、複数の電力変換ユニットを構成した後に、複数の電流センサ301を複数の電力変換ユニットに配備してもよい。
【符号の説明】
【0127】
1,1B,1C,1D,1U,1V,1W 電力変換装置
11 第1交直変換器(交直変換器)
12 第2交直変換器(交直変換器)
13 2次側交直変換器(交直変換器)
15 高周波トランス
17 1次側平滑コンデンサ(平滑コンデンサ)
18 出力側平滑コンデンサ(平滑コンデンサ)
191,192 平滑コンデンサ
25,26 1次側端子、入力端子
27,28 2次側端子、出力端子、2次側出力端子
20,20-1,20-2,20-k,20-N コンバータセル、電力変換ユニット、ユニット
31 1次側電源系統
32,32A,32B,32C 2次側電源系統、DC負荷系統
35 交流電源端子、入力端子
36 交流電源端子、1次側基準端子、入力端子、端子
37 直流電源端子、出力端子
38 直流電源端子、2次側基準端子、出力端子、端子
101 1次側電力変換ユニット、周波数変換器
102 2次側電力変換ユニット
113 AC/DCコンバータ
201,202 可変抵抗スイッチ
211,212 トランジスタ、IGBT素子
221,222 ダイオード、寄生ダイオード
301 電流センサ、電流検出器
310,311 制御部
321 電流検出信号
322 抵抗値制御信号
323 開閉制御信号
601 バイパススイッチ
701 並列数切替スイッチ部
711A,711B,712A,712B,713A,713B,721A,721B,722A,722B,723A,723B バス切替スイッチ
801,802 直流負荷、接続負荷
DCBUS1P,DCBUS1N 第1直流バス
DCBUS2P,DCBUS2N 第2直流バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10