(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050286
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ローダ
(51)【国際特許分類】
B66F 9/06 20060101AFI20230404BHJP
B66F 7/12 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B66F9/06 A
B66F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160321
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】594040556
【氏名又は名称】有限会社矢島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081271
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 芳春
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 達昭
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 隆一
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 誠司
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA03
3F333AB20
3F333BA01
3F333DB10
(57)【要約】
【課題】床にレール状溝を有する貨物専用車両や倉庫等の床面に置かれたパレットに積載された荷物に対して、車両等の後方の開口部側でも、車両荷台の奥側でも操作ロッドを使って荷物を荷台床の床面より持ち上げて、前へ押すことで移動させる作業ができ、かつ操作ロッドを操作する際に嵌合が途中で外れることがなく、構造が簡単で確実に荷受部材を台車に対して昇降させることができるローダを提供する。
【解決手段】ローダは、両側壁の内側に走行ローラと昇降用ローラとが同軸に装着された複数のローラ組が設けられ、荷台床の床面に形成された溝状のレールに沿って走行可能な台車と、上面と両側壁とからなるコ字形断面を有し、内側に複数の昇降用ローラに当接し移動可能な逆V形の傾斜面を有する複数の昇降用傾斜カムが設けられ、複数の昇降用傾斜カムを介して台車に載設される荷受部材と、荷受部材の両端側にそれぞれ連結されて荷受部材を台車に対して昇降させる1対の昇降駆動機構とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側壁の内側に走行ローラと昇降用ローラとが同軸に装着された複数のローラ組が設けられ、荷台床の床面に形成された溝状のレールに沿って走行可能な台車と、
上面と両側壁とからなるコ字形断面を有し、内側に前記複数の昇降用ローラに当接し移動可能な逆V形の傾斜面を有する複数の昇降用傾斜カムが設けられ、前記複数の昇降用傾斜カムを介して前記台車に載設される荷受部材と、
前記荷受部材の両端側にそれぞれ連結されて前記荷受部材を前記台車に対して昇降させる1対の昇降駆動機構とを備えていることを特徴とするローダ。
【請求項2】
前記1対の昇降駆動機構の各々は、一端側に挿嵌凹部が形成され、前記荷受部材の上面に設けられた開口から露出する嵌挿穴を有し、外部からの力によって他端側の回動軸を中心に回動可能なクランク部材と、一端が嵌挿穴を有し、かつ前記挿嵌凹部に挿脱可能に形成され、他端が連結用軸穴を有する連結片と、一端が前記連結片の他端に回動自在に連結され、他端が前記荷受部材に回動可能に連結されたリンク部材とを備え、
前記クランク部材の前記回動軸の両端は、前記台車の両側壁に装着されていることを特徴とする請求項1に記載のローダ。
【請求項3】
挿入部が前記昇降駆動機構の前記嵌挿穴に嵌接可能な操作ロッドをさらに備えており、該操作ロッドは前記挿入部が前記クランク部材及び前記連結片の前記嵌挿穴に嵌接された状態で後方へ引っ張られることにより前記クランク部材及び前記連結片を回動させることにより、前記荷受部材を後方へ移動させると共に、上昇させるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のローダ。
【請求項4】
外周面が前記荷受部材の両側壁の表面から露出するように前記台車に装着された少なくとも1対のガイドローラをさらに備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のローダ。
【請求項5】
前記荷受部材の上面の内側に設けられ、長手方向に対向する1対の傾斜面を有する係合部材と、前記台車の両側壁に渡って装着された連結ピンとから構成され、前記荷受部材と前記台車と連結する連結機構をさらに備え、
前記操作ロッドの操作により前記荷受部材を上昇させる際に、前記連結ピンが前記係合部材の傾斜面に沿って移動可能するように構成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のローダ。
【請求項6】
前記複数のローラ組の各々は、1対の走行ローラと、該1対の走行ローラの間に配置されて前記1対の走行ローラの径より小さい径を有する昇降用ローラとから構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のローダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床にレール状溝を有する貨物専用車両や倉庫等の床面に置かれた荷物、例えばパレットに積載された荷物を移動するためのローダに関する。
【背景技術】
【0002】
貨物専用車両や倉庫などの荷台床に配置してある互いに平行な対のローダ用溝に差し入れ、荷受部(積載部)の昇降動作を通じて荷台床上の荷物を所定位置まで移動して格納する積み込みのため、及び格納位置から荷物を移動し外部に運び出す積み出しのために用いるローダは公知である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されたローダは、ローダ本体と作動装置とを具備しており、ローダ本体は、下側に位置しているローラフレームと、上側に位置しているローダベースと、ローラフレームとローダベースとの間に配置されたベースガイドとを備えている。ローダ本体は、その上面で荷物を積載した状態(荷受状態)で車両などの荷台床内に設けられているレール内を走行し、荷物の格納位置まで移動することができる。作動装置は、ローダベースの後端部側に配置されたローダベースを昇降動作させるための作動装置本体と、この作動装置を動作させるための操作棒とからなる。
【0004】
この種のローダは以下のように操作される。貨物専用車両や倉庫等において、床面に置かれた荷物を移動する際には、1対のローダ本体を荷物の下に設置された1対のローダ用レール溝内にそれぞれ差し入れる。また、1対のローダ本体が1対のローダ用レール溝内にあらかじめ収められている際には、荷物を1対のローダ本体が存在するレール溝上に載置する。次いで、1対の操作棒(操作ロッド)の挿入部をローダの作動装置の作動体の操作孔内にそれぞれ差し込み、これら1対の操作ロッドをギアシャフトを支点として後方側に倒すと、ローダベース及びベースガイドが後方へ引っ張られ、荷受部が荷台床の床面より徐々に上昇する。これにより、荷受部上に積載されている荷物は押し上げられ床面を離れる。次いで、両操作ロッドを所定角度倒した荷受状態のまま、手押し車のようにローダ本体をレール上を前進させ、荷物を格納位置に移動をさせる。これら操作ロッドを前方側に起こし、垂直状態に戻せば、荷受部は降下し、最終的にレール溝内に納まる。その後、垂直の状態にある両操作ロッドを持って、ローダ本体をレールに沿って後退させ、両操作ロッドをローダ本体からそれぞれ取り外す。
【0005】
しかし、特許文献1に記載されているごとき従来のローダは、貨物専用車両等の荷台床にある荷物を積み込み、又は格納位置から荷物を移動し外部に運び出す際に、車両後方の開口部からローダを荷台床のローダ用溝に挿入し、操作ロッドを後方へ引っ張ることで、荷受部が荷台床の床面より上昇させ、前へ又は後ろへ運びするため、特に車両後方の開口部付近の荷物を後ろへ運び出す場合、作業者が車両等の荷台から落ちる危険性があった。また、荷物を外部に運び出す際に後向きで荷物を引っ張ることしかできないため、作業性が悪いという問題点があった。また、車両後方の開口部側でも、車両荷台の奥側でも操作ロッドを使っても荷物を荷台床の床面より持ち上げて、前へ押すことで移動させる作業ができるローダが要望されている。
【0006】
これらの課題を解決するために、本出願人は、台車の両端側にそれぞれ連結されて荷受部材を台車に対して昇降させる1対の昇降駆動機構を備えるローダ(
図8及び
図9参照)を提案した(PCT/JP2021/022567)。
【0007】
図8及び
図9に示すローダ1において、1対の昇降駆動機構の各々は、クランク部材31Aと、リンク部材32Aとを備えている。クランク部材31Aは、操作ロッド40の嵌挿穴31aが設けられた上部部材31A
1と、この上部部材31A
1を支持する下部部材31A
2と、上部部材31A
1と下部部材31A
2とを、リンク部材32Aが連結される側において回動自在に係合する係合回動軸36Aとから構成される。
【0008】
上部部材31A1及び下部部材31A2の自由端側には、それぞれ回動軸33Aの上半円部と下半円部が嵌入可能な凹部31c及び31dが形成されている。下部部材31A2にも嵌挿穴31aが設けられており、操作ロッド40の挿入部41が下部部材31A2の嵌挿穴31a内に嵌入可能である。
【0009】
操作ロッド40で一端側の昇降駆動機構30Aの引き起こし操作を行う際に、上部部材31A
1及び下部部材31A
2の凹部31c及び31dが回動軸33の上半円部及び下半円部に嵌合し(
図9(A)参照)、クランク部材31Aが回動軸33Aを中心に回動することで、台車10Aを後方へ移動させることができる。
【0010】
一方、操作されていない側のクランク部材31Aが台車10Aの移動と共に引っ張られて回動軸33Aがこれらの凹部31c及び31dから離脱するように構成されている(
図9(B)参照)。これにより、台車10Aが操作される側に引っ張られると共に、荷受部材20Aが上昇するようになり、パレットが床面より高い位置に持ち上げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、
図8及び
図9に示すローダ1は、上部部材31A
1及び下部部材31A
2の凹部31c及び31dが口を開けて回動軸33Aを迎えに行き、口を閉じて回動軸33Aを挟むことにより、回動軸33Aの上半円部及び下半円部に嵌合するように構成されていたので、急いで操作した場合に嵌合が途中で外れてしまう不都合が生じる恐れがあった。また、
図8に示すローダ1では、複数の走行ローラと複数の昇降用ローラとは別に設置するため、構成が複雑で制作コストが高いという問題点もあった。
【0013】
従って、本発明は上述した問題点を解消するものであり、本発明の目的は、床にレール状溝を有する貨物専用車両や倉庫等の床面に置かれたパレットに積載された荷物に対して、車両等の後方の開口部側でも、車両荷台の奥側でも操作ロッドを使って荷物を荷台床の床面より持ち上げて、前へ押すことで移動させる作業ができ、かつ構造が簡単で制作コストを低減することができるローダを提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、操作ロッドを操作する際に嵌合が途中で外れることがなく、確実に荷受部材を台車に対して昇降させることができるローダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、ローダは、両側壁の内側に走行ローラと昇降用ローラとが同軸に装着された複数のローラ組が設けられ、荷台床の床面に形成された溝状のレールに沿って走行可能な台車と、上面と両側壁とからなるコ字形断面を有し、内側に複数の昇降用ローラに当接し移動可能な逆V形の傾斜面を有する複数の昇降用傾斜カムが設けられ、複数の昇降用傾斜カムを介して前記台車に載設される荷受部材と、荷受部材の両端側にそれぞれ連結されて荷受部材を台車に対して昇降させる1対の昇降駆動機構とを備えている。
【0016】
荷受部材を台車に対して昇降させる1対の昇降駆動機構を台車の両端側にそれぞれ配置することにより、床にレール状溝を有する貨物専用車両や倉庫等の床面に置かれたパレットに積載された荷物に対して、例えば車両等の後方の開口部側でも、車両荷台の奥側でも操作ロッドを使っても荷物を荷台床の床面より持ち上げて、前へ押すことで移動させる作業ができる。荷物を外部に運び出す際に後向きで荷物を引っ張る作業をしなくても良い、より安全に作業を行うことができる。また、走行ローラと昇降用ローラとが同軸に装着された複数のローラ組が設けられることで、構造が簡単で制作コストを低減することができる。
【0017】
1対の昇降駆動機構の各々は、一端側に挿嵌凹部が形成され、荷受部材の上面に設けられた開口から露出する嵌挿穴を有し、外部からの力によって他端側の回動軸を中心に回動可能なクランク部材と、一端が嵌挿穴を有し、かつ挿嵌凹部に挿脱可能に形成され、他端が連結用軸穴を有する連結片と、一端が連結片の他端に回動自在に連結され、他端が荷受部材に回動可能に連結されたリンク部材とを備え、クランク部材の回動軸の両端は、台車の両側壁に装着されていることが好ましい。これにより、従来のように急いで操作した場合に嵌合が途中で外れてしまう不都合が生じることがなく、確実に荷受部材を台車に対して昇降させることができる。
【0018】
挿入部が昇降駆動機構の嵌挿穴に嵌接可能な操作ロッドをさらに備えており、この操作ロッドは挿入部がクランク部材及び連結片の嵌挿穴に嵌接された状態で後方へ引っ張られることによりクランク部材及び連結片を回動させることにより、前記荷受部材を後方へ移動させると共に、上昇させるように構成されていることも好ましい。
【0019】
外周面が荷受部材の両側壁の表面から露出するように台車に装着された少なくとも1対のガイドローラをさらに備えていることがより好ましい。
【0020】
荷受部材の上面の内側に設けられ、長手方向に対向する1対の傾斜面を有する係合部材と、台車の両側壁に渡って装着された連結ピンとから構成され、荷受部材と台車と連結する連結機構をさらに備え、操作ロッドの操作により荷受部材を上昇させる際に、連結ピンが係合部材の傾斜面に沿って移動可能するように構成されていることがより好ましい。
【0021】
複数のローラ組の各々は、1対の走行ローラと、この1対の走行ローラの間に配置されて1対の走行ローラの径より小さい径を有する昇降用ローラとから構成されていることがより好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、荷受部材を台車に対して昇降させる1対の昇降駆動機構を台車の両端側にそれぞれ配置することにより、床にレール状溝を有する貨物専用車両や倉庫等の床面に置かれたパレットに積載された荷物に対して、例えば車両等の後方の開口部側でも、車両荷台の奥側でも操作ロッドを使っても荷物を荷台床の床面より持ち上げて、前へ押すことで移動させる作業ができる。また、走行ローラと昇降用ローラとが同軸に装着された複数のローラ組が設けられることで、構造が簡単で制作コストを低減することができる。
【0023】
また、1対の昇降駆動機構の各々は、一端側に挿嵌凹部が形成され、荷受部材の上面に設けられた開口から露出する嵌挿穴を有し、外部からの力によって他端側の回動軸を中心に回動可能なクランク部材と、一端が嵌挿穴を有し、かつクランク部材の挿嵌凹部に挿脱可能に形成され、他端が連結用軸穴を有する連結片と、一端が連結片の他端に回動自在に連結され、他端が荷受部材に回動可能に連結されたリンク部材とを備え、クランク部材の回動軸の両端は、台車の両側壁に装着されていることで、操作ロッドを使っても荷物を荷台床の床面より持ち上げる際に、クランク部材の挿嵌凹部に連結片を挿入して操作ロッドをクランク部材及び連結片の嵌挿穴内に嵌入するようにしているので、操作ロッドを完全に引き抜かない限り、連結片とクランク部材との嵌合が途中で外れる恐れはなくなる。即ち、従来のように急いで操作した場合に嵌合が途中で外れてしまう不都合が生じることがなく、確実に荷受部材を台車に対して昇降させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態におけるローダの外観構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1のローダの台車の構成を示す(A)側面断面図及び(B)上面図である。
【
図3】
図1のローダの荷受部材の構成を示す(A)側面断面図及び(B)下面図である。
【
図4】
図1のローダの昇降駆動機構の構成を示す(A)側面局部断面図及び(B)上面図である。
【
図5】
図1のローダの内部構成を分解して示す側面断面図である。
【
図6】
図1のローダの内部構成を示す(A)組み立て状態及び(B)パレットを持ち上げた状態の側面断面図である。
【
図7】
図1のローダの昇降駆動機構によるパレットを持ち上げる動作を詳細に示す(A)操作側及び(B)従動側の側面断面図である。
【
図8】先行出願のローダの外観構成を示す斜視図である。
【
図9】先行出願のローダの昇降駆動機構によるパレットを持ち上げる動作を詳細に示す(A)操作側及び(B)従動側の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るローダの実施形態を、図を参照して説明する。この実施形態は、荷物としてパレットを扱うパレットローダに関するものであり、その台車の昇降動作を操作ロッドを用いて手動で行う構成となっている。このローダは、貨物専用車両や倉庫等の床面について、前後に平行に形成された溝状のレールに沿って走行可能である。
【0026】
図1は本発明のローダの一実施形態としてのパレットローダ100の外観構成を概略的に示している。
図2はこのパレットローダ100の台車10の構成を示しており、同図(A)は側面の部分断面図であり、(B)は上から見た図である。
図3はパレットローダ100の荷受部材20の構成を示しており、同図(A)は側面の部分断面図であり、(B)は下から見た図である。
図4は昇降駆動機構30の構成を示しており、同図(A)は側面の部分断面図であり、(B)は上から見た図である。
図5はパレットローダ100の内部構成を分解して示している。
図6はパレットローダ100の内部構成を示す組み立て状態(パレット持ち上げ前の状態)及びパレットを持ち上げた状態の側面断面図である。
図7は昇降駆動機構30によるパレットGを持ち上げる動作を詳細に示しており、同図(A)はパレットローダ100を溝状のレールに挿入して操作ロッド40を嵌挿穴31aに嵌接され、パレットを持ち上げた際に、操作側の状態を示しており、(B)は昇降駆動機構30によるパレットGを持ち上げた際に、従動側の状態を示している。
【0027】
これらの図に示すように、本実施形態のパレットローダ100は、走行ローラ11と昇降用ローラ21とが同軸に装着された複数のローラ組が設けられ、床面Fに形成された溝内に敷設されたレールRに沿って走行可能な台車10と、この台車10上に載設され、内側に複数の昇降用ローラ21に当接し移動可能な逆V形の傾斜面を有する複数の昇降用傾斜カム12が設けられる荷受部材20と、荷受部材20の両端側にそれぞれ連結されて荷受部材20を台車10に対して昇降させる1対の昇降駆動機構30と、操作ロッド40とを備えている。
【0028】
台車10は、
図2に示すように、ステンレス板材から形成され、端面10aと、両側壁10bと、複数のスペーサ10cとからなる枠状ものである。両側壁10bの間には走行ローラ11及び昇降用ローラ12からなる複数(例えば、6個)のローラ組が配置されている。複数のローラ組の各々は、1対の走行ローラ11と、この1対の走行ローラ11の間に配置されて1対の走行ローラ11の径より小さい径を有する昇降用ローラ12とから構成されている。複数のローラ組の各々は、軸11aにより軸支され、各走行ローラ11及び昇降用ローラ12はこの軸11aに対して回転自在に軸支されている。軸11aの両端が台車10の両側壁10bに形成された軸穴15に装着されている。この台車10は、床面Fに形成されたローダ用溝内に敷設されたレールRに沿って走行可能である。
【0029】
また、台車10には、外周面が荷受部材20の両側壁20bの表面から露出するように台車10に装着された少なくとも1対(本実施例では、2対)のガイドローラ13が設けられている。この2対のガイドローラ13は、台車10の前後端に近い位置にそれぞれ1対のガイドローラ13が設けられている。このように、ガイドローラ13を設けることで、荷受部材20の両側壁20bと床面Fに形成されたローダ用溝の側壁との摩擦を回避することができる。そのため、パレットローダ100は、床面Fに形成されたローダ用溝内に敷設されたレールRに沿ってスムーズに走行することができる。なお、台車10の両端には、昇降駆動機構30のクランク部材31を支持する半円柱形状の支持部材14が設けられている。
【0030】
荷受部材20は、
図3に示すように、ステンレス板を板金加工することにより形成され、上面20aと両側壁20bとからなるコ字形断面を有するものである。内側(即ち、上面20aの下部)に複数の昇降用傾斜カム21が長手方向に沿って設けられている。これら昇降用傾斜カム21は、逆V形の傾斜面を有し、逆V形の傾斜面がそれぞれ昇降用ローラ12に当接するように配置されている。なお、荷受部材20の両端側には、昇降用傾斜カム21の半分をカットした形状の片面昇降用傾斜カム21aが設けられている。この荷受部材20は、複数の昇降用ローラ12を介して台車10の上に載設され、即ち、複数の昇降用ローラ12により支持されている。荷受部材20が通常位置(降下位置)にあるとき、各昇降用ローラ12は昇降用傾斜カム21の逆V形の傾斜面の中央(逆V形の角部)に位置されている状態となり(
図6(A)参照)、一方、荷受部材20が上昇位置にあるとき、各昇降用ローラ12は昇降用傾斜カム21の逆V形の傾斜面の下端部(凹弧面部)に当接されている状態となる(
図6(B)参照)。また、荷受部材20の両端側の上面の昇降駆動機構30に対応する位置に操作ロッド40の挿入部41が挿入し昇降駆動機構30の引き起こし操作を行うための開口部22が設けられている。これにより、荷受部材20が操作される側に引っ張られると共に、荷受部材20が上昇するようになる。荷受部材20の両端側(開口部22)において、連結部材23を介して1対の昇降駆動機構30がそれぞれ連結されている。
【0031】
また、荷受部材20の上面の内側に、長手方向に対向する1対の傾斜面を有する略W形の係合部材51が設けられている。この略W形の係合部材51の両端が荷受部材20の上面の内側に固定されている。この係合部材51と台車10の両側壁に渡って装着された連結ピン52とが荷受部材20と台車10と連結する連結機構50を構成する。操作ロッド40の操作により荷受部材20を上昇させる際に、連結ピン52が係合部材51の傾斜面51a又は51bに沿って移動可能するように構成されている。荷受部材20が通常位置(降下位置)にあるとき、連結ピン52が係合部材51の1対の傾斜面の上端に位置する。一方、荷受部材20が上昇位置にあるとき、連結ピン52が係合部材51の1対の傾斜面のいずれかの下端に位置する。この連結機構50は、荷受部材20を持ち上げる際に、台車10と外れないように機能する。
【0032】
1対の昇降駆動機構30は、
図4に示すように、連結軸34を介して台車10の両端側にそれぞれ連結されて、荷受部材20を台車10に対して昇降させるものである。この1対の昇降駆動機構30の各々は、一端側に挿嵌凹部31bが形成され、荷受部材20の上面20aに設けられた開口22から露出する嵌挿穴31aを有し、外部からの力(操作ロッド40の操作)によって他端側の回動軸34を中心に回動可能なクランク部材(下アゴ)31と、一端が嵌挿穴32aを有し、かつ挿嵌凹部31bに挿脱可能に形成され、他端が連結用軸穴32bを有する連結片(上アゴ)32と、一端が連結片32の他端に回動自在に連結され、他端が荷受部材20に回動可能に連結されたリンク部材33とを備え、クランク部材31の回動軸34の両端は、台車10の両側壁10bに装着されている。また、クランク部材31の嵌挿穴31a及び連結片32の嵌挿穴32aは操作ロッド40の挿入部41が挿脱可能に形成されている。
【0033】
1対の昇降駆動機構30の各々において、操作ロッド40の挿入部41が嵌挿穴31aに嵌接された状態で後方へ引っ張られることで、リンク部材33を介して荷受部材20を後方向(引っ張る方向)に移動させることができる。荷受部材20が後方向に移動すると共に、荷受部材20の昇降用傾斜カム12の逆V形の上角部に位置する昇降用ローラ12が斜面に沿って傾斜面の下端に位置するようになり、即ち、荷受部材20が高い位置に移動するように構成されている。一方、操作ロッド40でクランク部材31を元の位置に戻すと、荷受部材20が前方に移動すると共に、荷受部材20の昇降用傾斜カム12の逆V形の傾斜面の下端に位置する昇降用ローラ21が斜面に沿って昇降用傾斜カム12の逆V形の上角部に位置するようになり、即ち、荷受部材20が低い位置に移動するように構成されている。これにより、荷受部材20が上下方向に昇降する。
【0034】
操作ロッド40は、昇降駆動機構30のクランク部材31の嵌挿穴31a及び連結片32との嵌挿穴32aに挿入する挿入部41を備えている。挿入部41を嵌挿穴31a及び嵌挿穴32a内に挿入し、後方へ倒すことにより、クランク部材31が回動軸34を軸として回動させることができる。この操作ロッド40を後方側に倒したり前方側に起こすことにより荷受部材20の昇降を行うことができる。
【0035】
図5及び
図6(A)に示すように、パレットローダ100は、荷受部材20を台車10の上に載せ、即ち、荷受部材20の複数の昇降用傾斜カム21の逆V形の傾斜面の上端(昇降用傾斜カム21中央の逆V形の角部)が複数の昇降用ローラ21にそれぞれ当接することで、平常位置(組み立て状態)として荷受部材20が台車10に安定的に載設される。また、連結機構50の連結ピン14を略W形の係合部材24の内側に挿通して装着するようにすることで、荷受部材20と台車10とを連結することができる。
【0036】
以下、パレットローダ100を用いてパレットに積載された荷物を移動する際の操作を説明する。
図6(A)はパレットローダ100が床面Fに形成されたローダ用溝内に敷設されたレールR上のパレットGの下方に挿入されている状態を示しており、
図6(B)はパレットローダ100によりパレットGが床面Fより高い位置に持ち上げられている状態を示している。
【0037】
図6(A)に示すように、パレットローダ100を床面Fに形成されたレールRに沿ってパレットGの下部に挿入する際、及びパレットローダ100が既に設置されているレールR上にパレットGを積み込む際は、荷受部材20が降下位置(平常位置)にあり、荷受部材20の上面20aが床面Fより低いため、パレットローダ100はパレットGに接触しない。従って、パレットローダ100をスムーズに挿入又は引抜くことができる。次いで、操作ロッド40を装着する。この場合、操作ロッド40の挿入部41を、1対の昇降駆動機構30のいずれか操作しやすい側の嵌挿穴31a及び32a内に嵌入させる。なお、以上の動作は1対のパレットローダ100について同様に行われる。
【0038】
その後、1対のパレットローダ100について、以下の動作が同時に行われる。まず、操作ロッド40を後ろ側へ所定角度倒す操作を行い、クランク部材31及びこのクランク部材31の挿嵌された連結片32を回動させることで、昇降駆動機構30が動作する。即ち、
図6(B)に示すように、リンク部材33を介して荷受部材20が台車10に対して後方(引っ張る方向)に移動する(
図7(A)参照)。一方、操作されていない側の連結片32が荷受部材20の移動と共に引っ張られてクランク部材31の挿嵌凹部31bから抜けるように構成されている(
図7(B)参照)。このように、荷受部材20は、後方に移動すると共に昇降用傾斜カム12の中央部(逆V形の角部)が昇降用ローラ12に当接する位置から昇降用傾斜カム12の傾斜面の下端が昇降用ローラ12に当接する位置まで移動することにより上方へ移動するので、パレットGが床面Fより高い位置に持ち上げられる。この場合、荷受部材20を上昇させる際に、クランク部材31と連結片32が確実に連結されるため、引き起こし操作途中でパレットGを落下することがなく、確実に持ち上げることができる。
【0039】
この状態で、1対の操作ロッド40を手動で前方へ押す(又は、後方へ引っ張る)ことでパレットGを所定位置まで移動する。パレットGを所定位置に移動した後、操作ロッド40を起こし、垂直状態に戻すように操作し、クランク部材31を逆回転させることで、昇降駆動機構30が動作し、リンク部材33を介して荷受部材20が前方に移動する。荷受部材20の前方への移動と共に、昇降用ローラ21が昇降用傾斜カム12の傾斜面の下端から中央部(逆V形の角部)に当接する位置になることにより荷受部材20が下方に移動するので、パレットGが床面F上に降ろされる。この状態で、1対のパレットローダ100をパレットGの下方から引き出すことができる。この場合、操作されていない側の連結片32が荷受部材20の移動と共にクランク部材31の挿嵌凹部31bの中に挿嵌する状態(即ち、嵌挿穴32aが嵌挿穴31aと同軸上になる状態)に戻る。
【0040】
以上説明したように、本実施形態におけるパレットローダ100は、走行ローラ11と昇降用ローラ21とが同軸に装着された複数のローラ組が設けられ、床面Fに形成された溝内に敷設されたレールRに沿って走行可能な台車10と、この台車10上に載設され、内側に逆V形の傾斜面を有する複数の昇降用傾斜カム21を有する荷受部材20と、荷受部材20の両端側にそれぞれ連結されて荷受部材20を台車10に対して昇降させる1対の昇降駆動機構30と、操作ロッド40とを備えていることにより、床にレール状溝を有する貨物専用車両や倉庫等の床面に置かれたパレットに積載された荷物に対して、例えば車両等の後方の開口部側でも、車両荷台の奥側でも操作ロッド40を使っても荷物(パレットG)を荷台床の床面Fより持ち上げて、前へ押すことで移動させる作業ができる。荷物を外部に運び出す際に後向きで荷物を引っ張る作業をしなくても良い、より安全に作業を行うことができる。また、走行ローラと昇降用ローラとが同軸に装着された複数のローラ組が設けられることで、構造が簡単で制作コストを低減することができる。
【0041】
また、1対の昇降駆動機構30の各々は、一端側に挿嵌凹部31bが形成され、荷受部材20の上面20aに設けられた開口22から露出する嵌挿穴31aを有し、外部からの力(操作ロッド40の操作)によって他端側の回動軸33を中心に回動可能なクランク部材31と、一端が嵌挿穴32aを有し、かつ挿嵌凹部31bに挿脱可能に形成され、他端が連結用軸穴32bを有する連結片32と、一端が連結片32の他端に回動自在に連結され、他端が荷受部材20に回動可能に連結されたリンク部材33とを備え、クランク部材31の回動軸34の両端は、台車10の両側壁10bに装着されている。また、クランク部材31の嵌挿穴31a及び連結片32の嵌挿穴32aは操作ロッド40の挿入部41が挿脱可能に形成されていることで、クランク部材31の挿嵌凹部に連結片32を挿入して操作ロッド40をクランク部材31及び連結片32の嵌挿穴31a及び32a内に嵌入するようにしているので、操作ロッド40を完全に引き抜かない限り、嵌合が途中で外れる恐れはなくなる。即ち、従来のように急いで操作した場合に嵌合が途中で外れてしまう不都合が生じることがなく、確実に荷受部材20を台車10に対して昇降させることができる。
【0042】
なお、上述したパレットローダ100において、複数のローラ組の各々は、1対の走行ローラ11と、この1対の走行ローラ11の間に配置されて1対の走行ローラ11の径より小さい径を有する昇降用ローラ12とから構成されている構成例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複数のローラ組の各々は、1対の昇降用ローラと、この1対の昇降用ローラの間に配置されて1対の昇降用ローラの径より大きい径を有する走行ローラとから構成されても良い。この場合、1対の昇降用ローラに対応する位置に、荷受部材には1対の昇降用傾斜カムを設けることが必要となる。
【0043】
また、上述したパレットローダ100の昇降駆動機構30において、クランク部材31に挿嵌凹部31bが形成され、連結片32が挿嵌凹部31bに挿脱可能に形成されている例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、逆に、連結片32を回動軸34を中心に回動可能にして、クランク部材31をリンク部材33に連結されるようにしても良い。
【0044】
また、上述したパレットローダ100において、係合部材51と連結ピン52とからなる連結機構50が設けられている例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。荷受部材20と台車10と連結する他の連結機構を設けても良い。
【0045】
さらに、上述したパレットローダ100において、荷受部材20には、外周面が荷受部材の両側壁の表面から露出するように台車10に装着された2対のガイドローラが設けられている例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。台車10には、ガイドローラを設けなくても良い。
【0046】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0047】
1、100 パレットローダ(ローダ)
10、10A 台車
10a 底面
10b 側壁
10c、37 スペーサ
11、11A 走行ローラ
11a 軸
12 昇降用ローラ
13 ガイドローラ
14 支持部材
15 軸穴
20、20A 荷受部材
20a 上面
20b 側壁
21 昇降用傾斜カム
21a 片面昇降用傾斜カム
22 開口部
23 連結部材
30、30A 昇降駆動機構
31、31A クランク部材
31a、32a 嵌挿穴
31b 挿嵌凹部
31c、31d 凹部
31A1 上部部材
31A2 下部部材
32 連結片
33、 リンク部材
33A、34、35、36 回動軸
36A 係合回動軸
40 操作ロッド
41 挿入部
50 連結機構
51 係合部材
51a、51b 傾斜面
52 連結ピン
F 床面
G パレット
R レール