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特開2023-50291学習モデル生成方法、プログラム及び空気比推定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050291
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】学習モデル生成方法、プログラム及び空気比推定装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/00 20060101AFI20230404BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230404BHJP
【FI】
F23N5/00 H
G06N20/00 130
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160328
(22)【出願日】2021-09-30
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】山崎 将英
(72)【発明者】
【氏名】岡村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 裕也
【テーマコード(参考)】
3K003
【Fターム(参考)】
3K003EA08
3K003FA02
3K003GA03
3K003JA05
(57)【要約】
【課題】観察窓から加熱炉内の火炎画像を撮像するだけで高い精度で空気比の推定を可能にする。
【解決手段】学習モデル生成方法は、燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼するバーナーを備える炉内の火炎を、炉の外から観察窓を通じて撮像した火炎画像データであって、個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データとして取得し、教師データを用い、観察窓を通じて撮像された火炎画像データを入力、空気比を出力とする学習モデルを生成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼するバーナーを備える炉内の火炎を、炉の外から観察窓を通じて撮像した火炎画像データであって、個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データとして取得し、
前記教師データを用い、前記観察窓を通じて撮像された前記火炎画像データを入力、空気比を出力とする学習モデルを生成する、
学習モデル生成方法。
【請求項2】
前記教師データに、撮影倍率が異なる複数の前記火炎画像データを含める、
請求項1に記載の学習モデル生成方法。
【請求項3】
燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼するバーナーを備える炉内の火炎を、炉の外から観察窓を通じて撮像された火炎画像データを取得し、
個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データに用いて学習させた学習モデルに、取得した前記火炎画像データを入力して、対応する空気比を出力する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項4】
前記火炎画像データは、現場の作業者により手持ちで撮像される、
請求項3に記載のプログラム。
【請求項5】
燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼するバーナーを備える炉内の火炎を、炉の外から観察窓を通じて撮像された火炎画像データを取得する取得部と、
個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データに用いて学習させた学習モデルに、取得した前記火炎画像データを入力して、対応する空気比を出力する出力部と、
を有する空気比推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習モデル生成方法、プログラム及び空気比推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等で使用される加熱炉では、複数の火炎が配列されるバーナーが使用される。この種のバーナーは、火炎が一列に配列される特徴から、ラインバーナーやリボンバーナーとも呼ばれる。
現在、加熱炉内の火炎の状態は、燃料ガスと空気が予め混合されたガス(以下「予混合ガス」という)の空気比を手動で調整している。具体的には、作業者は、加熱炉に設けた観察窓から炉内の火炎を観察し、自身の感覚やノウハウに基づいて空気比を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-83558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、作業者による空気比の判断には個人差があり、判断の精度にも限界がある。また、技能の承継も問題になっている。更に、工場等では、数百本のラインバーナーが使用されることがあり、多くの時間と手間を必要とする。
【0005】
本発明は、観察窓から加熱炉内の火炎画像を撮像するだけで高い精度で空気比の推定を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼するバーナーを備える炉内の火炎を、炉の外から観察窓を通じて撮像した火炎画像データであって、個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データとして取得し、前記教師データを用い、前記観察窓を通じて撮像された前記火炎画像データを入力、空気比を出力とする学習モデルを生成する、学習モデル生成方法である。
請求項2に記載の発明は、前記教師データに、撮影倍率が異なる複数の前記火炎画像データを含める、請求項1に記載の学習モデル生成方法である。
請求項3に記載の発明は、燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼するバーナーを備える炉内の火炎を、炉の外から観察窓を通じて撮像された火炎画像データを取得し、個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データに用いて学習させた学習モデルに、取得した前記火炎画像データを入力して、対応する空気比を出力する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
請求項4に記載の発明は、前記火炎画像データは、現場の作業者により手持ちで撮像される、請求項3に記載のプログラムである。
請求項5に記載の発明は、燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼するバーナーを備える炉内の火炎を、炉の外から観察窓を通じて撮像された火炎画像データを取得する取得部と、個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データに用いて学習させた学習モデルに、取得した前記火炎画像データを入力して、対応する空気比を出力する出力部と、を有する空気比推定装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、観察窓から加熱炉内の火炎画像を撮像するだけで高い精度で空気比を推定できる。
請求項2記載の発明によれば、空気比の推定精度を一段と高めることができる。
請求項3記載の発明によれば、観察窓から加熱炉内の火炎画像を撮像するだけで高い精度で空気比を推定できる。
請求項4記載の発明によれば、様々な現場での撮像を可能にできる。
請求項5記載の発明によれば、観察窓から加熱炉内の火炎画像を撮像するだけで高い精度で空気比を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】火炎画像と炉内の空気比の関係を学習したモデルの生成に使用する学習システムの一例を説明する図である。
図2】火炎画像データの取得時におけるカメラと火炎との位置関係を説明する図である。(A)は撮影距離Lと火炎を撮像する角度θを示し、(B)は角度θの具体例を示す。
図3】機械学習装置に与えられる火炎画像の一例を説明する図である。(A)~(J)は、各空気比に対応する火炎画像の例である。
図4】機械学習装置のハードウェア構成の一例を説明する図である。
図5】深層学習モデルの一例を説明する図である。
図6】加熱炉の観察窓を通して撮像された火炎画像から炉内の空気比を推定する推定システムの構成例を説明する図である。
図7】空気比推定装置のハードウェア構成の一例を説明する図である。
図8】学習モデルの生成に使用した教師データの具体例を説明する図表である。
図9】撮像された火炎画像を使用して学習した学習モデルを使用した空気比の推定結果の精度を説明する図である。(A)は教師データとして使用した火炎画像を学習モデルに与えることで得られた空気比の正答率の推移を示し、(B)は教師データとして使用した火炎画像を学習モデルに与えることで得られた空気比の誤差の推移を示し、(C)はテストデータとしての火炎画像を学習モデルに与えることで得られた空気比の正答率の推移を示し、(D)はテストデータとしての火炎画像を学習モデルに与えることで得られた空気比の誤差の推移を示す。
図10】カメラ一体型の空気比推定装置のハードウェア構成の一例を説明する図である。
図11】加熱炉の観察窓を通して撮像された火炎画像から炉内の空気比を推定する他の推定システムの構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
<実施の形態>
<学習システムの構成>
図1は、火炎画像と炉内の空気比の関係を学習したモデル(以下「学習モデル」という)の生成に使用する学習システム1Aの一例を説明する図である。
図1に示す学習システム1Aが生成する学習モデルは、工場で使用する加熱炉10における空気比の推定に使用される。
【0010】
図1に示す加熱炉10の構造は、説明のために簡略化されており、実際の加熱炉10の構造とは必ずしも一致しない。また、図1に示す加熱炉10の構造は、加熱炉10を透過的に表現している。
図1に示す加熱炉10の炉内には、リボンバーナー20と、センサ30と、コンベア40が配置されている。
【0011】
リボンバーナー20は、中空管(すなわちパイプ)に1つ又は複数のノズル列を形成した構造を有している。1つのノズル列には、例えば複数のノズルが一列に形成されている。この構造により、リボンバーナー20は、中空管の軸方向に沿って配列された火炎列を形成する。
リボンバーナー20には、燃料ガスと空気を事前に混合した予混合ガスが導入される。予混合ガスを構成する燃料ガスと空気の流量は、燃料ガス用のバルブ20Aと空気用のバルブ20Bの開度により調整される。バルブの調整は、作業者が手動で行う。
【0012】
本実施の形態の場合、燃料ガスには、例えばLPG(=Liquefied Petroleum Gas)、都市ガス、低カロリーガスが使用される。
LPGは、例えばプロパンやブタンを主成分とする液化石油ガスである。都市ガスは、例えばメタンを主成分とする天然ガスである。低カロリーガスは、例えば水素と一酸化炭素を主成分とするガスである。
【0013】
ところで、加熱炉10内における燃料ガスと空気との比率(すなわち空気比)は、必ずしも予混合ガスとして導入される燃料ガスと空気との混合比に一致しない。その原因には、例えばバルブ20A及び20Bの経年劣化、ノズルの目詰まり、炉壁10Aに存在する隙間や開口からの空気の流入がある。
【0014】
そこで、学習システム1Aで使用する加熱炉10にはセンサ30を配置し、炉内の空気比を正確に測定する。
本実施の形態の場合、センサ30には、例えば酸素濃度計やガスクロマトグラフィーを使用する。
センサ30は、火炎画像と空気比の紐付けのために使用するので、学習用の火炎画像を取得した後は、加熱炉10から取り外してもよい。
【0015】
図1に示すコンベア40は、焼成の対象である被加熱物を矢印の方向に搬送する。図1の場合、被加熱物は、火炎の先端より上空位置を水平方向に移動する。もっとも、図1は一例であり、被加熱物が火炎の下方位置を移動する場合もある。
図1に示すコンベア40は、被加熱物を矢印の方向に搬送するが、被加熱物を紙面の法線方向に搬送してもよい。紙面の法線方向に被加熱物を搬送する場合、図1に示すリボンバーナー20が、紙面の法線方向に複数配列される。
【0016】
加熱炉10の炉壁10Aの一部には、炉内の火炎を観察するための窓(以下「観察窓」という)10Bが設けられている。
観察窓10Bは、少なくとも1つリボンバーナー20に対応して設けられる。観察窓10Bは、例えば耐熱ガラスで構成される。
カメラ50は、観察窓10Bから炉内の火炎の撮像に用いられる撮像装置である。本実施の形態の場合、カメラ50には、単焦点レンズを使用する。
【0017】
単焦点レンズを使用することで、カメラ50から焦点位置までの距離(以下「撮影距離」という)Lは、使用する単焦点レンズの光学特性により概略一定に定まる。なお、被写界深度の範囲内であれば、撮影距離Lが異なってもピントがあった火炎画像の撮像が可能である。撮影距離Lが異なる火炎画像を撮像する場合には、ピントが合う距離が異なる他の単焦点レンズを交換する。本実施の形態では、撮影距離Lが異なる複数の単焦点レンズを使用して火炎画像を撮像する。
【0018】
本実施の形態で使用するカメラ50には、カラー画像を撮像できるカラーカメラを使用する。ただし、カメラ50には、火炎画像のデータ(以下「火炎画像データ」という)を色補正せずに出力する機能が求められる。色補正された火炎画像を学習しても、学習モデル60Aの汎用性が損なわれるためである。
このため、カメラ50が色補正機能を有する場合には、色補正機能をオフした状態で火炎画像を撮像する。本実施の形態の場合、火炎の全体を含む画像を「火炎画像」という。
【0019】
火炎画像は、カメラ50を不図示の取付台等に取り付けた状態で撮像してもよいし、作業者がカメラ50を手で持った状態で撮像してもよい。
本実施の形態の場合、火炎画像を撮像する際の火炎とカメラ50の位置関係を記録する。
ここでの位置関係は、撮影距離Lと、レンズの光軸と撮像される火炎とがなす角(以下「角度」という)θを含む。
【0020】
図2は、火炎画像データの取得時におけるカメラ50と火炎との位置関係を説明する図である。(A)は撮影距離Lと火炎を撮像する角度θを示し、(B)は角度θの具体例を示す。
前述したように、撮影距離Lは、火炎画像の撮像に使用する単焦点レンズの光学特性に応じて決定される。
本実施の形態では、火炎画像に紐付けて撮影距離Lを記録するが、1つの空気比について、複数の単焦点レンズを使用して火炎画像を撮像すれば、撮影距離Lの記録は必ずしも必要ない。
【0021】
また、本実施の形態では、1つの空気比について、複数の角度θで火炎画像を撮像し、撮像時の角度θを記録する。もっとも、撮影距離Lと同様、1つの空気比について複数の角度θで火炎画像が撮像すれば、角度θの記録は必ずしも必要ない。
図2(B)に示す丸印は、火炎画像を撮像する際における単焦点レンズの中心位置の例を示している。
【0022】
換言すると、個々の丸印は、カメラ50の撮像位置を表している。火炎画像の撮像に使用する中心位置の集合は、複数の空気比で共通でもよいが、異なってもよい。例えば空気比「0.6」に紐付けられる火炎画像の撮像に使用した中心位置の集合と、空気比「1.0」に紐付けられる火炎画像の撮像に使用した中心位置の集合は異なってもよい。
【0023】
なお、同じ同心円上に位置する複数の丸印に対応する角度θの絶対値はいずれも同じになる。
本実施の形態では、1つの角度θについて、火炎を斜め左方から撮像する丸印の位置、斜め上方から撮像する丸印の位置、斜め右方から撮像する丸印の位置など、複数の方向から火炎画像を撮像する。
【0024】
図1の説明に戻る。
本実施の形態では、1つの空気比について、複数の撮影距離L×複数の角度θで火炎画像が撮像される。例えば空気比「0.6」について、10個の撮影距離Lと、各撮影距離Lについて10個の角度θ(角度の大きさは同じで方向が違う場合を含む)とで100個の火炎画像を撮像する。
空気比と火炎画像との紐付けには、例えば時刻データを使用する。
【0025】
機械学習装置60には、1つの空気比について、複数の撮影距離Lと複数の角度θとの組み合わせで撮像された複数枚の火炎画像が与えられる。
撮影距離Lが異なる火炎画像は、カメラ50に取り付けられる単焦点レンズを交換することで撮像が可能である。
具体的には、1つの空気比について、1つの単焦点レンズで複数の角度θで火炎画像を撮像すると、別の単焦点レンズに交換後、改めて複数の角度θで火炎画像を撮像する。
撮影距離Lが異なる複数の単焦点レンズによる火炎画像の撮像が終了すると、空気比を別の値に調整して、火炎画像の撮像を繰り返す。
【0026】
図3は、機械学習装置60に与えられる火炎画像の一例を説明する図である。(A)~(J)は、各空気比に対応する火炎画像の例である。
因みに、図3(A)に示す火炎画像は空気比が0.6の例、図3(B)に示す火炎画像は空気比が0.7の例、図3(C)に示す火炎画像は空気比が0.75の例、図3(D)に示す火炎画像は空気比が0.8の例、図3(E)に示す火炎画像は空気比が0.85の例、図3(F)に示す火炎画像は空気比が0.9の例、図3(G)に示す火炎画像は空気比が0.95の例、図3(H)に示す火炎画像は空気比が1.0の例、図3(I)に示す火炎画像は空気比が1.05の例、図3(J)に示す火炎画像は空気比が1.1の例である。
【0027】
図3に示す例は、学習の対象として10個の空気比を選択しているが、学習の対象とする空気比の数は10個に限らない。例えば空気比の数は10個より少なくてもよいし、10個より多くてもよい。
1つの空気比については、複数の撮影距離Lと複数の角度θの組み合わせで特定される火炎画像を撮像するが、前述したように、1つの角度θについて撮像の方向が異なる複数の火炎画像を撮像してもよい。
【0028】
機械学習装置60(図1参照)は、1つの空気比について撮影距離Lと角度θの組み合わせを変えて撮像された複数枚の火炎画像を入力とし、空気比を出力とする関係を学習した学習モデル60Aを機械学習により生成する。
本実施の形態では、火炎画像と、火炎画像の撮像時に測定された空気比とを教師データとして機械学習装置60に与える。
【0029】
すなわち、機械学習装置60は、教師あり学習により、火炎画像と空気比の関係を学習した学習モデル60Aを生成する。具体的には、機械学習装置60は、火炎画像に含まれる火炎の特徴(色味や形状)と空気比との関係を学習する。
図4は、機械学習装置60のハードウェア構成の一例を説明する図である。機械学習装置60は、例えばコンピュータにより構成される。
【0030】
図4に示す機械学習装置60は、プログラムを実行するプロセッサ61と、BIOS(=Basic Input Output System)を記憶するROM(=Read Only Memory)62と、ワークエリアとして用いるRAM(=Random Access Memory)63と、ハードディスク装置64と、火炎画像や空気比の入力に使用するインタフェース65で構成されている。
【0031】
プロセッサ61は、例えばCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphical Processing Unit)であり、機械学習プログラムを実行する。
ここでの機械学習プログラムは、火炎画像を入力とし、空気比を出力とする関係を機械学習するプログラムである。
機械学習プログラムは、補助記憶装置であるハードディスク装置64に記憶されている。
【0032】
機械学習プログラムは、教師データに基づいて、深層学習モデルを構成する各階層の変数を調整し、入力として火炎画像が与えられると、火炎画像の撮像時の空気比が出力されるように学習を進める。
図5は、深層学習モデルの一例を説明する図である。図5においては、深層学習モデルの一例として、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolutional Neural Network)を例示している。
【0033】
畳み込みネットワークは、火炎画像から特徴を抽出する畳み込み層と、抽出された特徴の平均や最大値を抽出するプーリング層と、全結合層とで構成される。
畳み込みネットワークは、畳み込み層とプーリング層とで構成される単位構造を多段階に接続した多層構造を有し、全結合層は、それらの最終段に配置される。
図5の例では、全結合層の出力として、空気比が0~1.5のいずれかの値が出力される。
【0034】
<推定システム>
図6は、加熱炉10の観察窓10Bを通して撮像された火炎画像から炉内の空気比を推定する推定システム1Bの構成例を説明する図である。
図6には、図1との対応部分に対応する符号を付して示している。図6では、推定システム1Bに加熱炉10も含めているが、狭義の推定システム1Bは、空気比推定装置70のみで構成される。
【0035】
推定システム1Bでは、作業者が手持ちでカメラ50Aを構え、観察窓10Bから観察される火炎の画像(すなわち火炎画像)を撮像する。
ただし、火炎画像の撮像に使用されるカメラ50Aの光学特性等は、学習モデル60Aの学習に用いた火炎画像の撮像に用いたカメラ50(図1参照)の光学特性と同等であることが要求される。
【0036】
具体的には、カメラ50Aの撮影距離Lが、学習時に使用した撮影距離Lの範囲内であること、カメラ50Aのレンズの光学特性が、学習時に使用したカメラ50(図1参照)のレンズの特性の範囲内であることが要求される。これらの光学特性を満たすカメラ50Aは、例えば学習モデル60Aを生成した事業者等によって指定される。
【0037】
また、火炎画像を撮像する場合、撮像された火炎画像を色補正する機能を有しないカメラ50Aを使用するか、カメラ50Aが有する色補正の機能をオフに設定することが求められる。
例えばカメラ50Aには、学習モデル60Aを生成した事業者が提供する専用のアプリケーションプログラム(以下「専用アプリ」という)をインストールする。専用アプリがインストールされている場合、専用アプリを起動して火炎画像を撮像すれば、作業者は、色補正の設定等を気にすることなく、火炎画像の撮像に専念できる。
【0038】
専用アプリを起動して火炎画像を撮像すれば、学習モデル60Aの学習時と同じ条件で処理された火炎画像が出力される。
もっとも、撮像条件が満たされれば、専用アプリの使用は必須ではない。すなわち、作業者が、学習モデル60Aを生成した事業者等が指定するカメラ50Aを用い、同事業者が指定する処理モード等の撮像条件を満たした状態で火炎画像を撮像できるのであれば、専用アプリの使用は必須ではない。
【0039】
図6の例では、任意の撮影距離Lと任意の角度θで撮像された火炎画像がカメラ50Aから空気比推定装置70に与えられる。因みに、撮影距離Lと角度θは、学習モデル60Aの学習時に使用した範囲内であればよい。
空気比推定装置70は、カメラ50Aで撮像された火炎画像を学習モデル60Aに入力として与え、学習モデル60Aから出力される空気比を推定値として、作業者が使用するスマートフォン80に出力する。
【0040】
図6では、推定された空気比の通知先としてスマートフォン80を例示しているが、空気比の通知先となる情報端末はスマートフォンに限らない。例えばデスクトップ型のコンピュータ、ノート型のコンピュータ、タブレット型のコンピュータ、スマートグラスやスマートウォッチ等のウェアラブルコンピュータでもよい。
【0041】
本実施の形態の場合、空気比の通知を確認した作業者は、バルブ20A及び20Bのいずれか又は両方を手動で操作し、加熱炉10内の空気比が目標値に一致するように調整する。加熱炉10内の空気比が目標値に一致したことは、調整後に撮像した火炎画像から推定された空気比の数値により確認される。
【0042】
本実施の形態の場合、空気比推定装置70は、例えばクラウドサーバとして実現される。この運用形式の場合、カメラ50Aで撮像された火炎画像は、カメラ50Aや作業者が操作するコンピュータ等を通じ、空気比推定装置70にアップロードされる。
この場合、空気比推定装置70は、学習モデル60Aを生成した事業者等により運用され、火炎画像から推定された空気比は、サービスとして空気比推定装置70からスマートフォン80に提供される。
【0043】
図7は、空気比推定装置70のハードウェア構成の一例を説明する図である。空気比推定装置70は、例えばコンピュータにより構成される。
図7に示す空気比推定装置70は、プログラムを実行するプロセッサ71と、BIOSを記憶するROM72と、ワークエリアとして用いるRAM73と、ハードディスク装置74と、火炎画像や空気比の入出力に使用するインタフェース75で構成されている。
【0044】
プロセッサ71は、例えばCPUやGPUであり、学習モデル60Aを使用して、カメラ50Aで撮像された火炎画像から加熱炉10内の現時点の空気比を推定する。このため、プロセッサ71は、火炎画像データを取得する火炎画像取得部71Aと、推定された空気比を出力する空気比出力部71Bとして機能する。ここでの火炎画像取得部71Aは取得部の一例であり、空気比出力部71Bは出力部の一例である。
【0045】
火炎画像取得部71Aは、カメラ50Aで撮像された火炎画像データが取得されると、取得された火炎画像データを学習モデル60Aに入力する。
空気比出力部71Bは、学習モデル60Aから出力された空気比を、スマートフォン80に送信する。
図7の場合、学習モデル60Aは、補助記憶装置であるハードディスク装置74に記憶されている。
【0046】
本実施の形態の場合、インタフェース75は、通信インタフェースである。
インタフェース75は、加熱炉10側から火炎画像を受信すると共に、推定された空気比をスマートフォン80に送信する。
なお、火炎画像が記憶された半導体メモリを受け取った場合、半導体メモリに記憶されている火炎画像はインタフェース75を通じて読み出される。また、空気比を半導体メモリに記憶する場合には、インタフェース75を通じて空気比の書き込みが実行される。
【0047】
<具体例>
図8は、学習モデルの生成に使用した教師データの具体例を説明する図表である。
教師データとして使用する火炎画像は、加熱炉10(図1参照)内の空気比を、「0.6」、「0.7」、[0.75]、「0.8」、「0.85」、「0.9」、「0.95」、「1.0」、「1.05」、「1.1」に制御した状態で行った。
因みに、空気比の「0.6」は、加熱炉10内に、予混合ガス量を10-21[NL/min]で供給することで実現した。他の空気比については、図8の図表に示す通りである。
【0048】
図8の場合、空気比の「0.6」について、撮影距離Lと角度θの組み合わせが異なる522枚の火炎画像を撮像した。空気比の「0.7」~「1.0」については、図8の図表に示す通りである。図8の場合、合計3220枚の火炎画像が撮像されている。
図9は、撮像された火炎画像を使用して学習した学習モデル60A(図6参照)を使用した空気比の推定結果の精度を説明する図である。
【0049】
(A)は教師データとして使用した火炎画像を学習モデル60Aに与えることで得られた空気比の正答率の推移を示し、(B)は教師データとして使用した火炎画像を学習モデル60Aに与えることで得られた空気比の誤差の推移を示し、(C)はテストデータとしての火炎画像を学習モデル60Aに与えることで得られた空気比の正答率の推移を示し、(D)はテストデータとしての火炎画像を学習モデル60Aに与えることで得られた空気比の誤差の推移を示す。
【0050】
図9の場合、教師データとして使用した火炎画像は3220枚のうちの一部である。また、テストデータとしての火炎画像は、3220枚の火炎画像のうち教師データに用いなかった残りである。
図9(A)~(D)の横軸は、反復回数(Epoch)である。
図9(A)及び(C)の縦軸は、正答率であり、次式で計算される。
正答率(Accuracy)=(TP+TN)/(TP+FP+TN+FN)
図9(B)及び(D)の縦軸は、誤差である。
【0051】
TPは、推定値が正解で実際も正解の場合、すなわち真陽性(True Positive)を意味する。
TNは、推定値は不正解だが実際も不正解である場合、すなわち真陰性(True Negative)を意味する。
FPは、推定値は正解であるが実際は不正解の場合、すなわち偽陽性(False Positive)を意味する。
FNは、推定値は不正解であるが実際は正解の場合、すなわち偽陰性(False Negative)を意味する。
【0052】
図9(A)~(D)には、4種類の深層学習モデルによる学習を繰り返した場合の結果の推移をグラフとして表している。
4種類の深層学習モデルは、シンプルな畳み込みニューラルネットワーク(Simple CNN)、深さが16層の畳み込みニューラルネットワーク(VGG16)、深さが19層の畳み込みニューラルネットワーク(VGG19)、深さが50層の畳み込みニューラルネットワーク(ResNet50)である。
【0053】
図9(A)及び(B)に示すように、教師データに用いた火炎画像を学習モデル60Aに入力した場合の空気比の推定値は、いずれの深層学習モデルを用いる場合にも、学習を繰り返すほど正答率は高く、誤差は少なくなる傾向が認められた。
一方、図9(C)及び(D)に示すように、テストデータとしての火炎画像を与えた場合には、VGG16やVGG19では、学習を繰り返すほど、正答率が高く、誤差が少なくなり、教師データと同等の結果が得られることが分かった。このことは、実用上も高い精度での空気比の推定が可能なことを意味する。
【0054】
一方で、Simple CNNやResNet50の場合、学習を繰り返しても正答率は若干低く、誤差も低下しなかった。
今回の結果に限れば、学習モデル60Aの生成には、VGG16やVGG19の採用が望ましいことが分かった。
【0055】
<まとめ>
本実施の形態で説明した学習システム1A(図1参照)を採用して、1つの空気比について、様々な撮影距離Lと角度θの組み合わせで撮像された火炎画像を学習した学習モデル60Aを生成することにより、空気比の推定精度が高い学習モデル60Aを生成することができる。
このため、現場の作業者は、任意の位置から火炎画像を撮像するだけで(換言すると、任意の撮影距離Lや角度θで火炎画像を撮像するだけで)、0.05刻みという高い精度で空気比の推定結果を得ることができる。
【0056】
結果的に、空気比の測定作業の効率が向上し、短時間のうちに数多くの加熱炉10の空気比を高い精度で測定することができる。
また、学習モデル60Aを用いて推定された空気比を用いることにより、従前のように、火炎の状態を熟練作業者が観察して判断する手法に比べ、加熱炉10内の空気比を正確に把握することができる。
このため、手動によるバルブ20Aやバルブ20Bの調整を通じて予混合ガスの空気比を調整する場合でも、火炎画像を撮像するだけで調整の結果を確認できる。また、高い精度で加熱炉10内の空気比を調整できる結果、加熱炉10の省エネ化も達成できる。
また、学習モデル60Aを用いて推定された空気比を用いる手法は、作業者の技量によらないため、技能承継の問題も解消できる。
【0057】
<他の実施の形態>
(1)以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、前述の実施の形態に記載の範囲に限定されない。前述した実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0058】
(2)例えば前述の実施の形態においては、空気比推定装置70(図6参照)がクラウドサーバとして実現される場合を例示したが、空気比推定装置70は、加熱炉10(図6参照)を管理する作業者が操作するコンピュータとして実現してもよい。この場合、作業者が操作するコンピュータには、学習モデル60Aを使用して火炎画像から空気比を推定するプログラムがインストールされている。
【0059】
ここでの空気比推定装置70は、火炎画像を撮像するカメラ50Aと一体型のコンピュータとして実現してもよい。例えばスマートフォン80やタブレット型のコンピュータとして実現してもよい。
図10は、カメラ一体型の空気比推定装置70Aのハードウェア構成の一例を説明する図である。図10には、図6及び図7との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0060】
図10に示す空気比推定装置70Aでは、ハードディスク装置74(図7参照)に代えて記憶容量が大きいメモリカード74Aを使用する。メモリカード74Aには、学習モデル60Aが記憶されている。
また、図10に示す空気比推定装置70Aには、タッチパネル76とカメラ50Aが実装されている。
タッチパネル76は、例えば液晶ディスプレイと静電容量式タッチセンサとで構成される。
勿論、カメラ50Aには、学習モデル60Aの生成時に使用したカメラ50(図1参照)と同等の光学特性が要求される。
【0061】
(3)前述の実施の形態においては、空気比推定装置70で推定された空気比を確認した作業者がバルブ20A等を調整しているが、バルブ20A等の調整を自動化してもよい。
図11は、加熱炉10の観察窓10Bを通して撮像された火炎画像から炉内の空気比を推定する他の推定システム1Cの構成例を説明する図である。図11には、図6との対応部分に対応する符号を付して示している。
【0062】
図11に示す推定システム1Cの場合、空気比推定装置70で推定された空気比は、流量調整装置90に出力される。流量調整装置90は、推定された空気比が目標値に一致するように、バルブ20A及び20Bの両方又は一方の開度を調整する。この場合、作業者は、加熱炉10内の火炎を、観察窓10Bを通して撮像するだけで、加熱炉10内の空気比を目標値に一致させることができる。
【0063】
(4)前述の実施の形態では、リボンバーナー20(図1参照)を使用する加熱炉10を例示したが、カーテン状の幅広の火炎を形成するピアンラインバーナーを使用する加熱炉10や耐熱金属繊維をニット状に編み込んだメタルニットバーナーを使用する加熱炉10にも使用が可能である。なお、リボンバーナー20、ピアンラインバーナー、メタルニットバーナーは一例であり、他の種類のバーナーを使用する加熱炉10でもよい。
【0064】
(5)前述の実施の形態では、学習モデル60A(図1参照)の学習に使用する火炎画像の撮像や空気比の推定のための火炎画像の撮像に、単焦点レンズを装着したカメラ50(図1参照)やカメラ50A(図6参照)を使用したが、撮影距離Lが可変のズームレンズを使用して撮像してもよい。
ズームレンズを用いる場合、撮影倍率の変更が可能であり、加熱炉10内の火炎を観察窓10Bから離れた位置から撮像することができる。この場合、学習モデル60Aの学習に使用する教師データに撮影倍率が異なる複数の火炎画像を含めることができる。
【0065】
(6)前述の実施の形態では、学習システム1A(図1参照)や推定システム1B(図6参照)を工場で用いる場合について説明したが、予混合ガスを燃焼する加熱炉を使用する任意の施設で用いることができる。
【符号の説明】
【0066】
1A…学習システム、1B、1C…推定システム、10…加熱炉、10A…炉壁、10B…観察窓、20…リボンバーナー、20A、20B…バルブ、30…センサ、40…コンベア、50、50A…カメラ、60…機械学習装置、60A…学習モデル、70、70A…空気比推定装置、80…スマートフォン、90…流量調整装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-01-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼するノズル列を備える炉内の火炎を、炉の外の地点から観察窓を通じて撮像した火炎画像データであって、個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データとして取得し、
前記教師データを用い、前記観察窓を通じて撮像された前記火炎画像データを入力、空気比を出力とする学習モデルを生成する、
学習モデル生成方法。
【請求項2】
前記教師データに、撮影倍率が異なる複数の前記火炎画像データを含める、
請求項1に記載の学習モデル生成方法。
【請求項3】
燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼する複数列のバーナーを備える炉内の火炎を、炉の外の地点から観察窓を通じ、作業者が都度撮像た火炎画像データを取得し、
個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データに用いて学習させた学習モデルに、取得した前記火炎画像データを入力して、対応する空気比を出力する処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項4】
燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼する複数列のバーナーを備える炉内の火炎を、炉の外の地点から観察窓を通じ、作業者が都度撮像た火炎画像データを取得する取得部と、
個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データに用いて学習させた学習モデルに、取得した前記火炎画像データを入力して、対応する空気比を出力する出力部と、
を有する空気比推定装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0002
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0002】
工場等で使用される加熱炉では、複数の火炎が配列されるバーナーが使用される。この種のバーナーは、火炎が一列に配列される特徴から、ラインバーナーとも呼ばれる。
現在、加熱炉内の火炎の状態は、燃料ガスと空気が予め混合されたガス(以下「予混合ガス」という)の空気比を手動で調整している。具体的には、作業者は、加熱炉に設けた観察窓から炉内の火炎を観察し、自身の感覚やノウハウに基づいて空気比を調整している。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
請求項1に記載の発明は、燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼するノズル列を備える炉内の火炎を、炉の外の地点から観察窓を通じて撮像した火炎画像データであって、個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データとして取得し、前記教師データを用い、前記観察窓を通じて撮像された前記火炎画像データを入力、空気比を出力とする学習モデルを生成する、学習モデル生成方法である。
請求項2に記載の発明は、前記教師データに、撮影倍率が異なる複数の前記火炎画像データを含める、請求項1に記載の学習モデル生成方法である。
請求項3に記載の発明は、燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼する複数列のバーナーを備える炉内の火炎を、炉の外の地点から観察窓を通じ、作業者が都度撮像た火炎画像データを取得し、個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データに用いて学習させた学習モデルに、取得した前記火炎画像データを入力して、対応する空気比を出力する処理をコンピュータに実行させるプログラムである。
請求項4に記載の発明は、燃料ガスと空気を予め混合した予混合ガスを燃焼する複数列のバーナーを備える炉内の火炎を、炉の外の地点から観察窓を通じ、作業者が都度撮像た火炎画像データを取得する取得部と、個々の空気比について、火炎を撮像する角度と火炎までの距離の組み合わせが異なる複数の火炎画像データを教師データに用いて学習させた学習モデルに、取得した前記火炎画像データを入力して、対応する空気比を出力する出力部と、を有する空気比推定装置である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、観察窓から加熱炉内の火炎画像を撮像するだけで高い精度で空気比を推定できる。
請求項2記載の発明によれば、空気比の推定精度を一段と高めることができる。
請求項3記載の発明によれば、観察窓から加熱炉内の火炎画像を撮像するだけで高い精度で空気比を推定できる。
請求項4記載の発明によれば、観察窓から加熱炉内の火炎画像を撮像するだけで高い精度で空気比を推定できる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
図1に示す加熱炉10の構造は、説明のために簡略化されており、実際の加熱炉10の構造とは必ずしも一致しない。また、図1に示す加熱炉10の構造は、加熱炉10を透過的に表現している。
図1に示す加熱炉10の炉内には、ラインバーナー20と、センサ30と、コンベア40が配置されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
ラインバーナー20は、中空管(すなわちパイプ)に1つ又は複数のノズル列を形成した構造を有している。1つのノズル列には、例えば複数のノズルが一列に形成されている。この構造により、ラインバーナー20は、中空管の軸方向に沿って配列された火炎列を形成する。
ラインバーナー20には、燃料ガスと空気を事前に混合した予混合ガスが導入される。予混合ガスを構成する燃料ガスと空気の流量は、燃料ガス用のバルブ20Aと空気用のバルブ20Bの開度により調整される。バルブの調整は、作業者が手動で行う。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
図1に示すコンベア40は、焼成の対象である被加熱物を矢印の方向に搬送する。図1の場合、被加熱物は、火炎の先端より上空位置を水平方向に移動する。もっとも、図1は一例であり、被加熱物が火炎の下方位置を移動する場合もある。
図1に示すコンベア40は、被加熱物を矢印の方向に搬送するが、被加熱物を紙面の法線方向に搬送してもよい。紙面の法線方向に被加熱物を搬送する場合、図1に示すラインバーナー20が、紙面の法線方向に複数配列される。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
加熱炉10の炉壁10Aの一部には、炉内の火炎を観察するための窓(以下「観察窓」という)10Bが設けられている。
観察窓10Bは、少なくとも1つラインバーナー20に対応して設けられる。観察窓10Bは、例えば耐熱ガラスで構成される。
カメラ50は、観察窓10Bから炉内の火炎の撮像に用いられる撮像装置である。本実施の形態の場合、カメラ50には、単焦点レンズを使用する。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
(4)前述の実施の形態では、ラインバーナー20(図1参照)を使用する加熱炉10を例示したが、カーテン状の幅広の火炎を形成するピアンラインバーナーを使用する加熱炉10や耐熱金属繊維をニット状に編み込んだメタルニットバーナーを使用する加熱炉10にも使用が可能である。なお、ラインバーナー20、ピアンラインバーナー、メタルニットバーナーは一例であり、他の種類のバーナーを使用する加熱炉10でもよい。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
1A…学習システム、1B、1C…推定システム、10…加熱炉、10A…炉壁、10B…観察窓、20…ラインバーナー、20A、20B…バルブ、30…センサ、40…コンベア、50、50A…カメラ、60…機械学習装置、60A…学習モデル、70、70A…空気比推定装置、80…スマートフォン、90…流量調整装置