(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000503
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】2液混合式塗装機及びこれに内蔵される混合ノズル
(51)【国際特許分類】
B05B 7/04 20060101AFI20221222BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20221222BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20221222BHJP
B05B 5/04 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
B05B7/04
B01F3/08 Z
B01F5/00 D
B01F5/06
B05B5/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101367
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】591274059
【氏名又は名称】CFTランズバーグ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】本崎 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】石橋 昇吉
(72)【発明者】
【氏名】中川 文寛
【テーマコード(参考)】
4F033
4F034
4G035
【Fターム(参考)】
4F033QA01
4F033QB03X
4F033QB18
4F033QD02
4F033QD15
4F033QE09
4F033QE14
4F034AA04
4F034BA22
4F034BB25
4G035AB37
4G035AC01
4G035AC26
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】メンテナンス性に優れた塗装機及びこれに内蔵される混合ノズルを提供する。
【解決手段】塗装機は第1液、第2液の供給を受けて、これら第1液、第2液を混合するための混合ノズル2を備えている。混合ノズル2は、第1液を供給する第1通路120と、第2液を供給する第2通路122とを包囲する周囲壁4を有し、また、第1通路120及び第2通路122の出口の近傍において、周囲壁4からノズル軸線Axに向けて延びて第2通路122の出口と対向して位置する邪魔壁6を有する。邪魔壁6によって第2通路122から出た第2液はその流れ方向が強制的に偏向され、第2液は第1通路120の出口又はその近傍に差し向けられる。第1通路120の出口近傍は第1混合室8を構成する。この第1混合室8で、第2通路122から出た直後の第2液が第1通路120から出た直後の第1液と接触して混合を開始する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1液、第2液の供給を受けて、これら第1液、第2液を混合する機能を備えた塗装機において、
前記第1液を供給する第1通路を形成する第1管路と、前記第2液を供給する第2通路を形成する第2管路とを包囲する周囲壁を有する混合ノズルを含み、
該混合ノズルは、
前記第1通路及び前記第2通路の出口の前方に位置するノズル吐出口と、
該ノズル吐出口と前記第1通路の出口及び前記第2通路の出口との間において且つ前記第1通路及び前記第2通路の出口の近傍において、前記周囲壁からノズル軸線に向けて延びて前記第2通路の出口と対向して位置し、前記第2通路の出口から出た前記第2液の流れ方向を強制的に偏向させて、該第2液を前記第1通路の出口又はその近傍に差し向ける邪魔壁と、
該邪魔壁によって強制的に前記第1通路の出口又はその近傍に差し向けられた前記第2液が、前記第1通路から出た前記第1液と接触して混合を開始する第1混合室とを有する、ことを特徴とする塗装機。
【請求項2】
前記第1液が硬化剤であり、前記第2液が主剤である、請求項1に記載の塗装機。
【請求項3】
前記第1管路と前記第2管路が前記ノズル軸線を共通の軸線とする内外二重管で構成され、
前記第1管路が、前記硬化剤の通路を構成する内側管路であり、前記第2管路が前記主剤の通路を構成する外側管路である、請求項2に記載の塗装機。
【請求項4】
前記主剤通路の出口開口の高さに対応する前記邪魔壁の高さの比である前記邪魔壁のオーバーラップ率が50%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の塗装機。
【請求項5】
前記邪魔壁の仮想延長線と前記ノズル軸線との交差角度が直角である、請求項1~4のいずれか一項に記載の塗装機。
【請求項6】
前記邪魔壁の仮想延長線と前記ノズル軸線との交差角度が鋭角であり、前記邪魔壁が、ノズル軸線に近づくに従って、その内端が前記硬化剤通路の出口に接近する傾斜壁で構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の塗装機。
【請求項7】
前記硬化剤通路の出口部分が面取りされている、請求項6に記載の塗装機。
【請求項8】
前記第1混合室に続く第2混合室と、
該第2混合室に続いて、前記ノズル吐出口に通じる第3混合室とを更に有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の塗装機。
【請求項9】
前記第1混合室と前記第2混合室とを連通する中継通路を更に有し、
前記中継通路の直径が、前記硬化剤通路の直径と同じかそれよりも小さい、請求項8に記載の塗装機。
【請求項10】
前記第2混合室の直径が、前記硬化剤通路の直径よりも大きい、請求項8又は9に記載の塗装機。
【請求項11】
前記第3混合室の直径が、前記第2混合室の直径よりも小さい、請求項8~10のいずれか一項に記載の塗装機。
【請求項12】
前記塗装機が、回転霧化頭を備えた回転霧化型静電塗装機である、請求項1~11のいずれか一項に記載の塗装機。
【請求項13】
第1液、第2液の供給を受けて、これら第1液、第2液を混合する機能を備えた塗装機に組み込まれる混合ノズルであって、
前記第1液を供給する第1通路を形成する第1管路と、前記第2液を供給する第2通路を形成する第2管路とを包囲する周囲壁と、
前記第1通路及び前記第2通路の出口の前方に位置するノズル吐出口と、
該ノズル吐出口と前記第1通路の出口及び前記第2通路の出口との間において且つ前記第1通路及び前記第2通路の出口の近傍において、前記周囲壁からノズル軸線に向けて延びて前記第2通路の出口と対向して位置し、前記第2通路の出口から出た前記第2液の流れ方向を強制的に偏向させて、該第2液を前記第1通路の出口又はその近傍に差し向ける邪魔壁と、
該邪魔壁によって強制的に前記第1通路の出口又はその近傍に差し向けられた前記第2液が、前記第1通路から出た前記第1液と接触して混合を開始する第1混合室とを有する、ことを特徴とする混合ノズル。
【請求項14】
前記第1管路と前記第2管路が前記ノズル軸線を共通の軸線とする内外二重管で構成され、
前記第1管路が、硬化剤の通路を構成する内側管路であり、前記第2管路が主剤の通路を構成する外側管路である、請求項13に記載の混合ノズル。
【請求項15】
前記第1混合室に続く第2混合室と、
該第2混合室に続いて、前記ノズル吐出口に通じる第3混合室とを更に有する、請求項13又は14に記載の混合ノズル。
【請求項16】
前記第3混合室の直径が、前記第2混合室の直径よりも小さい、請求項15に記載の混合ノズル。
【請求項17】
前記第1混合室と前記第2混合室との間に中継通路を更に有する、請求項15に記載の混合ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2液混合式塗装機及びこれに内蔵される混合ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、異なる色の塗料を塗装機の内部で混合する機能を備えた塗装機を開示している。特許文献1に開示の塗装機は回転霧化型静電塗装機であり、2系統の塗料フィードチューブを備えている。各塗料フィードチューブからベルカップに供給される液体塗料は、独立して制御されるバルブによってON/OFF制御される。各塗料フィードチューブと塗料源との間にはギヤポンプを有し、各ギヤポンプは独立して制御されるサーボモータによって駆動される。そして、これにより2系統の塗料フィードチューブを通じてベルカップに供給される各塗料の量が制御される。この塗装機は、典型的には、塗装機内部で混合する2つの色の塗料の混合比率を変化させて、被塗物の表面にグラデーション模様を作るのに用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の回転霧化型静電塗装機は、塗装機の内部で2液を混合する機構を備えている。具体的に説明すると、特許文献1の塗装機は、混合機構としてスタティックミキサを有し、スタティックミキサは、ベルカップと2系統の塗料フィードチューブとの間に配置されている。このスタティックミキサは、複数の攪拌用の邪魔板を有している。このことから、塗料成分が邪魔板の部分に溜まり易く、その洗浄に手間が掛かる等、メンテナンス性が悪いという問題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、2液を混合する機構を内部に備えた塗装機において、メンテナンス性に優れた塗装機及びこれに内蔵される混合ノズルを提供することにある。
【0006】
本発明は、塗装機の内部において、フィードチューブから吐出された、その直後に2液の混合を積極的に開始させる機構を有することを特徴とする。より具体的には、本発明は、基本的には、
第1液、第2液の供給を受けて、これら第1液、第2液を混合する機能を備えた塗装機において、
前記第1液を供給する第1通路(120)を形成する第1管路(110)と、前記第2液を供給する第2通路(122)を形成する第2管路(112)とを包囲する周囲壁(4)を有する混合ノズル(2)を含み、
該混合ノズル(2)は、
前記第1通路(120)及び前記第2通路(122)の出口の前方に位置するノズル吐出口(104a)と、
該ノズル吐出口(104a)と前記第1通路(120)の出口及び前記第2通路(122)の出口との間において且つ前記第1通路(120)及び前記第2通路(122)の出口の近傍において、前記周囲壁(4)からノズル軸線(Ax)に向けて延びて前記第2通路(122)の出口と対向して位置し、前記第2通路(122)の出口から出た前記第2液の流れ方向を強制的に偏向させて、該第2液を前記第1通路(120)の出口又はその近傍に差し向ける邪魔壁(6)と、
該邪魔壁(6)によって強制的に前記第1通路(120)の出口又はその近傍に差し向けられた前記第2液が、前記第1通路(120)から出た前記第1液と接触して混合を開始する第1混合室(8)とを有する、ことを特徴とする塗装機を提供することにより上記の技術的課題が達成される。
【0007】
本発明によれば、従来の塗装機の内部に組み込まれていた複数の攪拌用の邪魔板を有していないため、メンテナンス性に優れた塗装機及び混合ノズルを提供することができる。また、上記の邪魔壁(6)を設けたことにより、これを設けない場合に比べて、第1液と第2液の混合を早期に開始させることができる。
【0008】
本発明の他の目的、作用効果は、以下の本発明の好ましい実施例の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施例の塗装機に組み込んだ第1混合ノズルの断面図である。
【
図2】
図1に図示の第1混合ノズルに含まれる邪魔壁の部分を拡大した図である。
【
図3】第1混合ノズルに含まれる邪魔壁の変形例を説明するための図である。
【
図4】邪魔壁の傾斜角度に関し、傾斜角度が鋭角であってもよいことを説明するための図である。
【
図5】邪魔壁は階段状であってもよいことを説明するための図である。
【
図6】主剤通路の出口と対向して位置する邪魔壁が主剤通路の出口に対して最低限どの程度オーバーラップする必要があるかを説明するための図である。
【
図7】第2実施例の塗装機に組み込んだ第2混合ノズルの断面図である。
【
図8】第3実施例の塗装機に組み込んだ第3混合ノズルの断面図である。
【
図9】第4実施例の塗装機に組み込んだ第4混合ノズルの断面図である。
【
図10】第5実施例の塗装機に組み込んだ第5混合ノズルの断面図である。
【
図11】第6実施例の塗装機に組み込んだ第6混合ノズルの断面図である。
【
図12】第7実施例の塗装機に組み込んだ第7混合ノズルの断面図である。
【
図13】第8実施例の塗装機に組み込んだ第8混合ノズルの断面図である。
【
図14】第9実施例の塗装機に組み込んだ第9混合ノズルの断面図である。
【
図15】第10実施例の塗装機に組み込んだ第10混合ノズルの断面図である。
【
図16】試作品の回転霧化型塗装機の概要を説明するための図であり、図示の塗装機は比較例である。
【
図17】
図16に図示の混合ノズル部分の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0010】
本発明の実施例を説明するのに先立って、
図16、
図17を参照して比較例を説明する。本発明者らは、塗装機の内部で2液を混合する機構を考察及び検討する中で、
図16、
図17に図示の試作品を作って検証した。
図16において、参照符号100は試作品の回転霧化型塗装機を示す。参照符号102はベルカップを示す。ベルカップ102には混合ノズル104を通じて塗料が供給される。ベルカップ102は、仕切り壁102aによって形成された塗料滞留室106を有し、混合ノズル104から供給された塗料は塗料滞留室106及び複数の小径塗料通路108を通じてベルカップ102の外周縁から散布される。
【0011】
図17を参照して、混合ノズル104は、混合ノズル104の中心軸線Axを共通の軸線とする内外二重管110、112で構成されたフィードチューブ114を有し、フィードチューブ114によって、中心部分の硬化剤通路120、その外周の主剤通路122、最外周のシンナー通路124が形成されている。硬化剤通路120は、第1のON/OFFバルブ126を介して硬化剤源128に通じている。主剤通路122は、第2のON/OFFバルブ130を介して主剤(塗料)源132に通じている。シンナー通路124は、第3のON/OFFバルブ134を介してシンナー源136に通じている。
【0012】
なお、硬化剤と主剤とを塗装機の内部で混合する機構を備えた塗装機は、例えばWO 2008/081634号公報に開示されている。
【0013】
図17から良く分かるように、混合ノズル104は、ノズル吐出口104aとフィードチューブ114の先端との間に混合室140を有している。そして、混合室140はノズル吐出口104aに向けて先細りの形状を有している。
【0014】
2液混合機構つまり混合室140を備えた混合ノズル104を含む塗装機100、つまり比較例の塗装機100の性能評価実験を繰り返したところ、各塗料の流量、流速、粘度や混合室形状などの各種条件によっては、始動直後に混合不良が発生する場合があることが判明した。その原因を考察したとき、フィードチューブ114から混合室140に吐出された主剤と硬化剤は、そのいずれか一方が先にノズル吐出口104aに到達する現象が発生することが判明した。主剤、硬化剤からなる2液混合塗料は、一般的に、主剤の量が硬化剤よりも相対的に多く調合される。この一般的な2液混合塗料を使用したとき、主剤が硬化剤よりも先にノズル吐出口104aに到達し、ノズル吐出口104aから主剤だけベルカップ102に供給されて散布されることが分かった。この現象は塗料の硬化不良を引き起こす原因となる。
【0015】
この問題に対して、塗装機100の始動時の制御として、硬化剤通路120を制御する第1のON/OFFバルブ126を、主剤通路122を制御する第2のON/OFFバルブ130よりも先に開いて硬化剤と主剤が同期してノズル吐出口104aから吐出されるように制御することも考えられる。しかし、主剤である塗料の粘度が環境温度によって変化する等、このようなバルブタイミング制御による解決以外の選択肢も望まれる。
【0016】
以下に、
図1ないし
図15に基づいて本発明の好ましい複数の実施例を説明する。本発明の実施例の説明において、前述した比較例(
図16、
図17)の要素と同じ要素には、同じ参照符号を用いることで、その説明を適宜省略する。
【0017】
第1実施例及びその変形例(図1ないし図6):
第1実施例の塗装機150Aに含まれる第1混合ノズル2は、試作品100の混合ノズル104と機能的に共通する部材である。第1混合ノズル2は、フィードチューブ114の先端部分を包囲する円筒状の周囲壁4から軸線Axに向けて延びる邪魔壁6を有し、邪魔壁6は、主剤通路122の開口つまり出口と対向して位置している。この邪魔壁6は、周囲壁4とフィードチューブ114の出口とで第1混合室8を形成している。主剤通路122から吐出された主剤の流れを矢印Xで示す。
【0018】
図2は、第1混合ノズル2の邪魔壁6及びその近傍部分を拡大した図である。
図2を参照して、主剤通路122から吐出された直後に、主剤(矢印X)は、邪魔壁6と衝突して、その流れ方向が強制的に偏向され、主剤は第1混合ノズル2のノズル軸線Axに向かう(矢印Y)。すなわち、主剤通路122から出た主剤は直ちに邪魔壁6によって強制的に硬化剤通路120の出口の方向に差し向けられる。他方、硬化剤通路120は硬化剤を矢印Zの方向つまりノズル軸線Axの方向に吐出する。
【0019】
その結果、硬化剤通路120の出口の近傍において、硬化剤通路120から出た直後に硬化剤は主剤と接触し、そして、主剤と硬化剤との混合が強制的に開始される。このことは、硬化剤通路120の出口部分及びその近傍が第1混合室8を構成していることを意味している。第1混合室8は、周囲壁4と邪魔壁6と硬化剤通路120の出口部分及びその近傍で規定され、邪魔壁6によって主剤通路122の出口から出た主剤はその流れ方向が強制的に偏向され、硬化剤通路120の出口又はその近傍に差し向けられる。この第1混合室8で、主剤通路122から出た直後の主剤が、硬化剤通路120から出た直後の硬化剤と接触して混合を開始する。この第1混合室8が第1混合ノズル2の最上流部分に存在している。これにより、塗装機150Aの始動直後から主剤と硬化剤とが強制的に接触及び混合され、そして、後に説明するように第2混合室10、第3混合室12を経ることで十分に混合された状態の塗料を塗装機150Aから吐出させることが可能である。
【0020】
図1を参照して、上述したように、内側管路110はその内部に硬化剤通路120を形成する。そして、内側管路110とその外方に位置する外側管路112との間で主剤通路122を形成する。
図1を参照して、内側管路110の先端は、外側管路112の先端よりも前方に突出している。この相対的な突出量ΔEtは任意であり、
図2などに図示するように、突出量ΔEtがゼロ、つまり内側管路110の先端と外側管路112の先端が同じ鉛直面上に位置していてもよい。
【0021】
第1混合ノズル2は、邪魔壁6の径方向内端6aからノズル吐出口104aに向けて円筒状に延びる第2混合室10を有し、また、この第2混合室10に続いてノズル吐出口104aに向けて延びる第3混合室12を有する。第3混合室12は円筒状の形状を有しており、ノズル吐出口104aに直接的に通じている。これら第2混合室10、第3混合室12は軸線Ax上に順次配置されている。
【0022】
円筒状の第2混合室10の直径は、硬化剤通路120の出口の直径とほぼ等しい。第3混合室12は、円筒状の形状を有し、その直径は第2混合室10の直径よりも小さい。この直径の違いによって、第2混合室10から第3混合室12に移行した2液は流れに乱れが発生し、この流れの乱れによって、第3混合室12での2液の混合が促進される。
【0023】
特に限定するものではないが、第2混合室10と第3混合室12との断面積の比は、例えば第2混合室10が第3混合室12の2~10倍、又は2~6倍或いは2~3倍であるのがよい。
【0024】
図1に図示の参照符号14はキャップ部材を示す。キャップ部材14は、第1混合ノズル2の先端部分を構成し、このキャップ部材14には、ノズル吐出口104a、第3混合室12、第2混合室10の一部が形成されている。キャップ部材14は、第1混合ノズル2の該当箇所に圧入することで第1混合ノズル2に組み込まれ、第1混合ノズル2と一体化される。
【0025】
ノズル軸線Axに対する邪魔壁6の角度を説明する。
図2において、邪魔壁6の仮想延長線がノズル軸線Axと交差する角度を「α」で示す。第1混合ノズル2では、邪魔壁6の角度αは直角(90°)である。
【0026】
図3ないし
図6は、邪魔壁6に関する変形例を説明するための図であり、
図3ないし
図6に開示の様々な変形例及びこれら変形例の組み合わせを第1混合ノズル2(
図1)及び
図7以降の別の実施例に組み込んでもよい。
【0027】
図1、
図2に図示の邪魔壁6は平面の壁面で構成されているが、邪魔壁6は、
図3に示すように、主剤通路122に向けて凹の曲面の壁面で構成されていてもよいし、
図3に仮想線で示すように、主剤通路122に向けて凸の曲面の壁面で構成されていてもよい。
【0028】
図4、
図5は、邪魔壁6の仮想延長線とノズル軸線Axとの交差角度αを説明するための図である。
図1の第1混合ノズル2では、前述したように交差角度αが直角であるが、この交差角度αは直角に限定されない。交差角度αは、
図4に示すように、鋭角α
(1)であってもよい。すなわち、邪魔壁6は、ノズル軸線Axに近づくに従って邪魔壁内端6aが硬化剤通路120の出口に接近する傾斜壁で構成されていてもよい。この鋭角α
(1)は、45°<α
(1)<90°、好ましくは60°<α
(1)<90°であるのがよい。
【0029】
邪魔壁6は平面の壁面(
図1)、主剤通路122に向けて凹の曲面の壁面(
図3の実線)又は主剤通路122に向けて凸の曲面の壁面(
図3の仮想線)で構成されているが、
図5に示すように複数の段を備えた階段状の壁面で構成されていてもよい。
【0030】
図1に図示の第1混合ノズル2の邪魔壁6は、主剤通路122の開口の全領域と対向する壁面の大きさを有し、主剤通路122の開口と完全にオーバーラップしている。
図6は、主剤通路122の開口に対する邪魔壁6のオーバーラップ率を説明するための図である。
図6において、主剤通路122の開口の高さをH1で示してある。そして、この主剤通路122の開口の高さH1に対応する邪魔壁6の高さをH2で示してある。主剤通路122の出口開口高さH1に対する邪魔壁6の高さH2の比をオーバーラップ率と呼ぶと、オーバーラップ率は
図1に図示の例のように100%を遙かに越えていなくても、50%以上であればよく、好ましくは60%以上、更に好ましくは65%以上であればよい。主剤通路122から吐出される主剤の半分以上の量の吐出方向X(
図1)が邪魔壁6によって半径方向内方(
図1の矢印Y)に偏向すれば、この強制的に偏向された主剤が、主剤通路122から吐出される主剤の残部と衝突して、この残部の流れの方向に影響を与えると共に、主剤の流れに乱れを発生させる。これにより硬化剤通路120の出口から出た直後に硬化剤と主剤とを直ちに且つ積極的に接触させることができる。その結果、硬化剤通路120の出口近傍で主剤と硬化剤が混合し始める。
【0031】
第2実施例(図7):
第2実施例の塗装機150Bに含まれる第2混合ノズル60は、上述した第1混合ノズル2(
図1)の変形例でもある。このことから、第1混合ノズル2と同じ要素には同じ参照符号を付して、適宜その説明を省略する。
【0032】
第1混合ノズル2に含まれる第1混合室8に直結した第2混合室10は円筒形状であったが、
図7に図示の第2混合ノズル60に含まれる第2混合室10は樽形の形状を有する。すなわち、第2混合室10は、その長手方向中間部分が半径方向外方に膨らみ出した形状を有している。このように第2混合室10の形状を樽形の形状にすることで、この第2混合室10の中を流れる2液混合液が強制的に半径方向に流れて乱れ、この流れの乱れによって2液混合を促進することができる。
【0033】
第3実施例(図8):
第3実施例の塗装機150Cに含まれる第3混合ノズル62は、第1混合室8と第2混合室10との間に相対的に小径の中継通路32を有する。中継通路32の直径は、邪魔壁内端6aによって規定される。中継通路32の直径は、特に限定するものではないが、硬化剤通路120の出口と実質的に同じ又は硬化剤通路120の出口の直径よりも小さいのが好ましい。
【0034】
第1混合室8で混合が開始された2液つまり主剤と硬化剤は、相対的に小径の中継通路32を通過する過程で流れに乱れが発生し、そして、中継通路32よりも相対的に大径の円筒状の第2混合室10に入って2液が半径方向外方に拡散する。この現象によって2液の混合を促進することができる。
【0035】
第4実施例(図9):
第4実施例の塗装機150Dに含まれる第4混合ノズル64は、上述した第3実施例の塗装機150Cに含まれる第3混合ノズル62(
図8)の変形例でもある。
【0036】
第2混合室10の形状は任意であり、
図9に示すように、第2混合室10は、その円筒状本体部分10aの上流側に入口部分10bを有し、及び/又は、円筒状本体部分10aの下流側に出口部分10cを有していてもよい。入口部分10bは、中継通路32から円筒状本体部分10aに向けて徐々に拡径するテーパ状の形状を有しているのがよい。出口部分10cは円筒状本体部分10aから第3混合室12に向けて徐々に縮径するテーパ状の形状を有しているのがよい。
【0037】
第5実施例(図10):
第5実施例の塗装機150Eに含まれる第5混合ノズル66は、上述した第4実施例の塗装機150Dに含まれる第4混合ノズル64(
図9)の変形例でもある。上述したように、第2混合室10の形状は任意であり、
図10に図示の第5混合ノズル66では、樽形の形状の第2混合室10が採用されている。
【0038】
第6実施例(図11):
第6実施例の塗装機150Fに含まれる第6混合ノズル68は、邪魔壁6の仮想延長線とノズル軸線Axとの交差角度αとして、これを鋭角α
(1)に設定した具体例である。交差角度αが鋭角α
(1)であってもよいことは、既に
図4に基づいて説明した通りである。
【0039】
なお、
図11において、第2混合室10の形状に関し、
図9に図示の第4混合ノズル64で説明した形状と実質的に同じであるが、これは単なる例示に過ぎず、
図8に図示の第3混合ノズル62の第2混合室10と同じ形状であってもよいし、
図10に図示の第5混合ノズル66の第2混合室10と同じ形状であってもよい。
【0040】
図11を参照して、鋭角α
(1)の傾斜角で延びる邪魔壁6は、ノズル軸線Axに近づくに従って邪魔壁内端6aが硬化剤通路120の出口に接近する。そして、邪魔壁6の内端6aが内側管路110の内径に接近するほど、邪魔壁6は、主剤を内側管路110の出口に案内するガイド機能を備えるようになる。図示の第6混合ノズル68は、邪魔壁6の内端6aつまり中継通路32の直径が内側管路110の内径よりも小さいため、主剤通路122から出た主剤は、邪魔壁6で反射し、そして、邪魔壁6で案内されて硬化剤通路120の出口まで強制的に誘導される。
【0041】
内側管路110は出口が面取りされているのが好ましい。面取り部分を参照符号120aで示す。この面取り部分120aによって、内側管路110から吐出される硬化剤の一部が面取り部分120aに案内されて径方向外方に差し向けられる。このことから、第1混合室8では、邪魔壁6で案内されて硬化剤通路120の出口まで強制的に誘導される主剤、これに対向して硬化剤通路120から出ようとする硬化剤、面取り部分120aに案内されて径方向外方に差し向けられる硬化剤が混在し、主剤と硬化剤とが盛んに接触する状態が生成される。
【0042】
また、邪魔壁6の内端6aつまり中継通路32の直径が、内側管路110の内径つまり硬化剤通路120の直径よりも小さいため、換言すれば、硬化剤通路120の直径が中継通路32の直径よりも大きい。このため、硬化剤通路120から吐出された硬化剤の一部が、第1混合室8において、邪魔壁6を逆流する方向に流れ込む現象が発生する。このことによって、主剤と硬化剤とが第1混合室8に滞留する時間を延長することができ、また、第1混合室8の中で主剤と硬化剤とが激しく接触することで、この第1混合室8での2液の混合を促進することができる。
【0043】
第7実施例(図12):
第7実施例の塗装機150Jに含まれる第7混合ノズル70は、上述した第6実施例の塗装機150Fに含まれる第6混合ノズル68(
図11)の変形例でもある。
図12に図示の第7混合ノズル70において、鋭角α
(1)の傾斜角度を有する邪魔壁6は、その内端6aがノズル軸線Axで合流されて頂点Pを構成している。すなわち、邪魔壁6は、硬化剤通路120の出口に向けて突出し且つノズル軸線Ax上に頂点Pを有する円錐状の形状を有している。そして、
図12から分かるように、この円錐状の形状の邪魔壁6によって、第1混合室8と第2混合室10とが画成されている。このことから、閉じた第1混合室8の中で、硬化剤及び主剤は、硬化剤通路120及び主剤通路122から出ると直ちに混合が開始される。
【0044】
邪魔壁6には複数の貫通孔34が形成され、この複数の貫通孔34によって、第1、第2の混合室8、10が連通されている。貫通孔34は、
図11などに見られる中継通路32に比べて小径である。このことから、各貫通孔34は一種のオリフィスを構成し、第1混合室8の中の主剤と硬化剤の混合液が複数の貫通孔34を通過する過程でも、また、第2混合室10に入り込む際にも2液の混合が促進される。特に、各貫通孔34が比較的小径の通路であることから、この貫通孔34から出て第2混合室10に入ると混合液は圧力が解放され、第2混合室10の中に拡散する現象が発生し、ここでも2液の混合が促進される。
【0045】
複数の貫通孔34は、その指向方向が異なるように設定されるのが好ましい。これにより、複数の異なる方向に指向された貫通孔34から第2混合室10に流れ込む混合液は第2混合室10で様々な方向に吐出される。これにより、第2混合室10に流れ込む混合液はその流れに大きな乱れが発生し、これにより主剤と硬化剤の混合が促進される。
【0046】
以上、本発明に適用可能な邪魔壁6の様々な態様、第2混合室10の様々な形状などを説明した。換言すれば邪魔壁6、第2混合室10の態様は、各図に図示の態様に限定されないことを説明した。このことを前提として、
図13、
図14に図示の第8、第9実施例を説明する。
【0047】
第8実施例(図13):
第8実施例の塗装機150Kに含まれる第8混合ノズル72は、硬化剤通路120において、その出口近傍の内部構造に特徴を有している。したがって、硬化剤通路120以外の例えば邪魔壁6の傾斜角度、第2混合室10の形状などは
図13に図示の態様に限定されない。
【0048】
図13を参照して、硬化剤通路120の出口近傍には、内面に例えば捻り溝36aを備えた円筒状部材36が圧入されている。この円筒状部材36を硬化剤通路120の出口近傍に配置させることにより、硬化剤通路120から吐出される硬化剤はその流れが捻られる。硬化剤通路120の出口には面取り部分120aが好ましくは形成される。硬化剤通路120から捻られた状態で吐出される硬化剤の流れは、面取り部分120aによって径方向外方に指向される。そして、この硬化剤は、主剤通路122から吐出されて邪魔壁6によって強制的に径方向内方に指向された主剤と衝突して混合が促進される。
【0049】
第9実施例(図14):
第9実施例の塗装機150Lに含まれる第9混合ノズル74は、上記の第8混合ノズル72(
図13)と同様に、硬化剤通路120において、その出口近傍の内部構造に特徴を有している。したがって、硬化剤通路120以外の例えば邪魔壁6の傾斜角度、第2混合室10の形状などは
図14に図示の態様に限定されない。
【0050】
図14を参照して、硬化剤通路120の出口近傍には、内側管路110の内面に複数の円周溝38aを備えた円筒状部材38が圧入されている。この円周溝38aを硬化剤通路120の出口近傍に配置することにより、硬化剤通路120から吐出される硬化剤はその流れが乱れる。そして、硬化剤通路120から乱れた流れの状態で出る硬化剤は、主剤通路122から吐出されて邪魔壁6によって強制的に径方向内方に指向された主剤と衝突して混合が促進される。
【0051】
以上、
図1~
図14を参照して、同心の内外多重管からなるフィードチューブ114を備えたノズル2、60、62、64、66、68、70、72、74を説明した。本発明は同心の内外多重管からなるフィードチューブ114を備えた塗装機に限定されない。
【0052】
第10実施例(図15):
第10実施例の塗装機150Mに含まれる第10混合ノズル76は、第1管路80と第2管路82が並んで配置されている。第1管路80は硬化剤通路120を形成し、第2管路82は主剤通路122を形成している。一般的に主剤は硬化剤よりも量が多い。相対的に量が多い主剤のための主剤通路122の出口の近傍に邪魔壁6を配置するのがよい。主剤通路122から出た主剤は、その流れ方向が邪魔壁6によって硬化剤通路120の出口近傍に強制的に差し向けられる。これにより、主剤通路122、硬化剤通路120の出口近傍が第1混合室8を構成する。
【0053】
主剤通路122から出た主剤が硬化剤通路120の出口近傍に差し向けられることにより、硬化剤は、硬化剤通路120を出た直後に主剤と接して主剤との混合が開始される。塗装機150Mは、
図1などで説明した塗装機150Aなどと同様に、第1混合室8に続いて第2、第3の混合室10、12を備え、これら第1ないし第3混合室8、10、12が第10混合ノズル76の内部に位置する混合機構を構成するのは、前述した塗装機150Aなどと同じである。
【0054】
本発明に従う塗装機150A~150Mは、最外周にシンナー通路124を有し、このシンナー通路124を通じて供給されるシンナーつまり洗浄剤によって、随時、内部洗浄が可能である。
【0055】
本発明に従う塗装機150A~150Mによれば、塗装機150A~150Mの始動直後から主剤と硬化剤とが十分に混合された状態の2液混合塗料を塗装機150A~150Mから吐出することが可能である。本発明に従う塗装機150A~150Mは、固形分が10~15%又は30%のローソリッド塗料だけでなく、固形分が32%~37%又は41%~55%のハイソリッドの塗料にも適用可能であり、また、塗装機150A~150Mの始動直後から主剤と硬化剤とが十分に混合された状態の2液混合塗料を塗装機150A~150Mから吐出することが可能である。
【0056】
以上、第1ないし第10実施例の塗装機150A~150Mを主剤と硬化剤とを混合させる2液混合塗料を適用した場合を例に説明したが、本発明に従う塗装機は、特許文献1のように2種類の色の異なる塗料を塗装機の内部で混合する塗装機にも適用可能である。