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  • 特開-ロボット移動システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050329
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ロボット移動システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
B25J5/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160380
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】593058190
【氏名又は名称】ダブル技研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085257
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 有
(72)【発明者】
【氏名】和田 博
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS14
3C707AS15
3C707AS22
3C707CY22
3C707HS27
3C707HT03
3C707HT04
3C707LV18
3C707LV23
3C707MT05
3C707WA23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ビルの外面などの垂直面に沿って移動するロボット移動システムを提供する。
【解決手段】ロボット本体12の可動範囲において、ロボット本体12の位置と各繰出し・巻取り装置2から繰出された左右のチェーン6a(6b)、7a(7b)の長さは一義的に決まっている。そのため、例えばコントローラにロボット本体12の可動範囲を表示し、この表示された可動範囲の目的とする位置を指先などで指定することで、左右のチェーンの長さが分かるため、自動的にサーボモータ3に所定の繰出し長さになる回転数が送信され、ロボット本体12の移動が遠隔操作される。可動範囲の限界に近い箇所に移動すると、左右のチェーンの支持体8に対する作用点が異なるため、支持体8は垂直面内において傾くが、ロボット本体12はユニバーサルジョイント11によって支持体8に連結しているため、支持体8が傾斜してもロボット本体12は水平状態を維持している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直面に沿ってロボットを移動させるシステムであって、このシステムは、建造物の上部に離間して配置された線材の繰出し・巻取り装置と、この繰出し・巻取り装置からの線材によって支持される支持体と、この支持体にユニバーサルジョイントを介して吊下げ支持されるロボット本体とからなり、このロボット本体には作業治具が搭載されるとともに垂直面における姿勢安定を図るための安定化手段が設けられていることを特徴とするロボット移動システム。
【請求項2】
請求項1に記載のロボット移動システムにおいて、前記線材は、各繰出し・巻取り装置ごとに2本の平行なチェーンを用いることを特徴とするロボット移動システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のロボット移動システムにおいて、前記繰出し・巻取り装置は垂直面に対して直交方向にスプロケットまたはプーリの位置を調整可能とされていることを特徴とするロボット移動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルの外窓清掃、建造物の壁面などの垂直面に沿った重量物の搬送或は非破壊検査の検査治具などの搭載に用いるロボット移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの外窓やファサードの清掃、壁面やガラス窓への描画に用いる装置が提案されている。
特許文献1には窓清掃ロボットが開示されている。この窓清掃ロボットはセンサによって壁面の突起を感知し、ガラス表面と均等に接触するように洗浄ブラシの位置を調節する人工知能制御可動洗浄システムを有し、清掃対象表面から外れないように、ファンが風の速度及び方向に応じて軸方向推力を調節することが開示されている。
また、高速ファンモータ(サーボモータ)による軸方向推力を調節することで、清掃対象表面と一定の力でロボットが接触することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、吊下げ物体(移動体)を3~5本の線条体(ワイヤ)で吊り下げることが記載され、この吊下げ物体の姿勢安定を図るため、吊下げ部材を中心として左右に位置し、垂直方向と直交する水平方向に延びる回動軸を中心として上下方向へ回動自在に取り付けられた一対の連結部材と、一端が線条体に連結され且つ他端が一方の連結部材に対して垂直方向へ延びる軸ピンに連結されて水平方向へ回動自在に支持された1本又は2本の第1アーム部材、及び、一端が線条体に連結され且つ他端が他方の連結部材に対して垂直方向へ延びる軸ピンに連結されて水平方向へ回動自在に支持された2本又は3本の第2アーム部材と、一対の連結部材間を回動自在であってそれぞれの回動角の比率を調節可能に連結する動力伝達角度変更機構が開示されている。
【0004】
特許文献3には壁面移動機械が開示されている。この壁面移動機械は吸盤機構を備え、この吸盤機構を構成する吸盤内の気圧を低下させて、吸盤を物体に張り付けるようにしている。
【0005】
特許文献4には、吸着盤を吸着させながら平滑面を走行する吸着走行装置が開示されている。この吸着走行装置は、負圧発生手段に接続された負圧室と、負圧室の開口部周縁リング溝内に嵌挿される弾力性を有する筒状シール材と、該シール材の頂面に貼着され、その内周縁及び外周縁を走行面から反り返らせたシール材肉厚より広幅の、摩擦係数の小さな環状シート状の滑り材とを備えている。
【0006】
特許文献5には吸着装置を持たない壁面作業ロボットが開示されている。この壁面作業ロボットは、建物の屋上に設けた横行装置から吊下した2本のストリングにロボット本体を支持し、また壁面から離隔した位置に配設したテンションロープによってロボット本体を壁面に押付けるようにしている。
【0007】
特許文献6には、外壁面に沿って吊り下げ支持されるゴンドラユニットに清掃装置などのメンテナンスユニットを積み込み、高層のビルディングの屋上部に移動自在に設けた屋上ユニットにて前記ゴンドラユニットを移動する内容が開示されている。
【0008】
非特許文献1、2には、室内の壁に描画する装置として、左右に離間した箇所から延びる線材若しくはタイミングベルトの先端に移動ユニットを取り付け、この移動ユニットにペンなどの描画具を取り付けた構造が開示されている。
非特許文献3にも、描画装置ではないが、非特許文献1、2と同様の構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2019-535403号公報
【特許文献2】特開2017-149574号公報
【特許文献3】特開2015-148343号公報
【特許文献4】特開2000-179531号公報
【特許文献5】特開2000-169083号公報
【特許文献6】特開平6-229114号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】https://www.youtube.com/watch?v=T0jwdrgVBBc
【非特許文献2】https://www.youtube.com/watch?v=3hGSXFdmET0
【非特許文献3】https://drive.google.com/file/d/1yK8QLOLW76istxCuTSlsPtO6FTYB7Yj3/view?usp=sharing
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した先行技術文献のうち、吸着盤を使用して壁面に沿って移動するタイプは、移動に時間がかかり作業効率が悪く、壁面に沿った移動がスムーズに行えず、特に壁面に凹凸がある場合には、壁面に取りつくことができず、対応できる壁面が限られてしまう。
【0012】
ワイヤなどの線材を用いて壁面に沿って移動するタイプは、移動に要する時間は短くなるが、移動体(ロボット)の姿勢が安定しない不利がある。特に移動体の移動可能範囲の限界近くに移動した場合に安定した姿勢を保つことができない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明に係る垂直面に沿ったロボット移動システムは、建造物の上部に離間して配置された線材の繰出し・巻取り装置と、この繰出し・巻取り装置からの線材によって支持される支持体と、この支持体にユニバーサルジョイントを介して吊下げ支持されるロボット本体とからなり、このロボット本体には作業治具が搭載されるとともに垂直面における姿勢安定を図るためのカウンターバランスユニットなどの安定化手段を設けた構成とした。
【0014】
前記線材としてはチェーンが好ましい。チェーンとすることにより繰出し及び巻取り精度を高めることができ、また支持体に連結しない反対側の端部をフリーの状態にしておいても絡まることもない。
【0015】
更に、支持体に連結される線材は、各繰出し・巻取り装置ごとに2本の平行な線材とすることで、垂直面に対して直交する方向の姿勢安定が図れる。
また、壁面に対する押圧力をコントロールするカウンターバランスユニットの他に垂直面と直行する面内での姿勢をコントロールするカウンターバランスユニットをロボットに設けてもよい。このように構成することで、ロボットの姿勢の微調整が簡単に行える。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るロボット移動システムによれば、ビルの外窓の清掃、竪壁の空洞検査などをロボットで行う際の垂直面内での動きを素早くスムーズに行え、特にロボットの移動可能範囲の限界付近でのロボットの姿勢を安定させることができ、作業効率が大幅に向上する。
【0017】
また、線材としてチェーンを用いた場合には、繰出し及び巻取りの制御を細かく行うことができ、更にロープやタイミングベルトと異なり余った部分を巻き取る必要はなく、長さを追加するなどの処置が簡単に行える。
【0018】
更に、支持体に連結される線材を、各繰出し・巻取り装置毎に平行な2本の線材とすることで、垂直面に対する安定化を図ることができ、且つ万一1本が破損した場合にも残りの線材がロボットを支えるため、安全性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るロボット移動システムの全体斜視図
図2】同ロボット移動システムの正面図
図3】同ロボット移動システムの側面図
図4】カウンターバランスユニットの断面図
図5】ロボットが移動界領域に近づいた場合の正面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、壁体などの建造物1の上端部に左右に離間して繰出し・巻取り装置2が配置されている。各繰出し・巻取り装置2はサーボモータ(ステッピングモータ)3、このサーボモータ3に軸4に取付けられる2つのスプロケット5a、5bから構成される。
【0021】
スプロケット5a、5bの建造物1からの突出量を調整するために、繰出し・巻取り装置2を移動可能とするか、軸4を突出量を調整可能とする。
突出量を調整することで、壁面に移動を妨げる凸部などが存在していても、それを回避することができる。
【0022】
一方の繰出し・巻取り装置2のスプロケット5a、5bにはチェーン6a、6bが掛けられ、他方の繰出し・巻取り装置2のスプロケット5a、5bにはチェーン7a、7bが掛けられ、これら、チェーン6a、6b、7a、7bの4本の線材の先端が支持体8に連結されている。
【0023】
また、チェーン6a、6b、7a、7bの他端側はそのまま垂れ下げている。高層ビルの外窓清掃のような場合に、チェーンの余った部分をそのまま垂れ下げておいても絡んだりすることがないので有利である。
【0024】
支持体8は枠状をなし、中央部に2本の支柱9、9を立設し、これら支柱9、9間で4つのスプロケット10a、10b、10c、10dを回転自在に支持し、スプロケット10a、10b、10c、10dに前記チェーン6a、6b、7a、7bを掛け渡し、チェーン6a、6bの端部を支持体8の左側部に、チェーン7a、7bの端部を支持体8の右側部に連結している。
【0025】
支持体8にはユニバーサルジョイント11を介してロボット本体12が吊下げ支持されている。ロボット本体12には作業治具13が搭載されている。作業治具13としては、清掃具、非破壊検査機、塗布装置、ロボットハンドなどが考えられるが、これに限定されない。
【0026】
ロボット本体12の壁面側には壁面に沿って移動する際に壁面とロボット本体12との接触を避けるためのキャスター14が取付けられ、更にロボット本体12の内部にはロボット本体12の垂直面と平行な方向の姿勢を安定させるための安定化手段としてのカウンターバランスユニット15を設けている。
【0027】
カウンターバランスユニット14は図4に示すように、筒体16内にサーボモータ17、このサーボモータ17によって回転せしめられるスクリュー18及びスクリュー18に螺合しスクリュー18の回転で筒体16内を往復動するウェイト19からなる。
【0028】
以上において、ロボット本体12の可動範囲において、ロボット本体12の位置と各繰出し・巻取り装置2から繰出された左右のチェーン6a(6b)、7a(7b)の長さは一義的に決まっている。そのため、例えばコントローラにロボット本体12の可動範囲を表示し、この表示された可動範囲の目的とする位置を指先などで指定することで、左右のチェーン6a(6b)、7a(7b)の長さが分かるため、自動的にサーボモータ3に所定の繰出し長さになる回転数が送信され、ロボット本体12の移動が遠隔操作される。
【0029】
上記の操作によって、図2に示す可動範囲の中心にロボット本体12が位置する状態から、図5に示すような可動範囲の限界に近い箇所に移動すると、左右のチェーン6a(6b)、7a(7b)の支持体8に対する作用点が異なるため、支持体8は垂直面内において傾く。
【0030】
一方、ロボット本体12はユニバーサルジョイント11によって支持体8に連結し、且つカウンターバランスユニット15を備えているため、支持体8が傾斜してもロボット本体12は水平状態を維持している。このため、作業治具13の作業位置が正確にコントロールできる。
【0031】
図示例では、チェーンとスプロケットを用いた例を示したが、ワイヤやタイミングベルトとプーリとの組み合わせを用いてもよい。
【0032】
またボット本体12の姿勢を制御する手段としては、カウンターバランスユニット以外に、ジャイロ(フライホイール)をロボットの一部に組み込み、揺れに対する安定性を確保することも可能である。
【0033】
更に、ロボット本体にファンを設け、このファンを利用して壁面に対する押圧力を発生させたり、カウンターバランスユニットのアシストとして機能させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係る壁面ロボット移動システムは、果実や野菜などを棚や壁面に沿って垂直方向に栽培する場合に、当該垂直方向に延びる栽培面を壁面と考え、農業分野での収穫作業にも利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…建造物、2…繰出し・巻取り装置、3…サーボモータ(ステッピングモータ)、4…軸、5a、5b…スプロケット、6a、6b、7a、7b…チェーン、8…支持体、9…支柱、10a、10b、10c、10d…スプロケット、11…ユニバーサルジョイント、12…ロボット本体、13…作業治具、14…キャスター、15…カウンターバランスユニット、16…筒体、17…サーボモータ、18…スクリュー、19…ウェイト。
図1
図2
図3
図4
図5