IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アイチコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-作業用車両の操舵制御装置 図1
  • 特開-作業用車両の操舵制御装置 図2
  • 特開-作業用車両の操舵制御装置 図3
  • 特開-作業用車両の操舵制御装置 図4
  • 特開-作業用車両の操舵制御装置 図5
  • 特開-作業用車両の操舵制御装置 図6
  • 特開-作業用車両の操舵制御装置 図7
  • 特開-作業用車両の操舵制御装置 図8
  • 特開-作業用車両の操舵制御装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050341
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】作業用車両の操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 7/14 20060101AFI20230404BHJP
   B62D 7/15 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B62D7/14 Z
B62D7/15 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160393
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】武藤 修
(72)【発明者】
【氏名】森 邦博
【テーマコード(参考)】
3D034
【Fターム(参考)】
3D034CA03
3D034CB01
3D034CC03
3D034CC12
3D034CC13
3D034CD13
3D034CE02
3D034CE03
3D034CE04
3D034CE05
3D034CE09
3D034CE12
(57)【要約】
【課題】前輪および後輪を操舵可能な車両における操舵時の操作性を向上させることができる作業用車両の操舵制御装置を提供する。
【解決手段】操舵ダイヤル72により車両の進行方向を直進方向から右方向に変化させる操舵操作が行われたときには、前輪12,12の舵角が最大舵角θに到達するまでは操舵ダイヤル72の操作に応じて前輪12,12のみを転舵作動させ、前輪12,12の舵角が最大舵角θに到達した後は、操舵ダイヤル72の操作に応じて前輪12,12は最大舵角θのまま維持し、後輪13,13を左方向に転舵作動させる制御を行うように構成する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体の前後左右にそれぞれ回転自在且つ転舵可能に設けられた前輪および後輪と、
前記前輪および/または前記後輪を転舵作動させるステアリングアクチュエータと、
前記前輪および前記後輪の操舵操作を行うステアリング操作装置と、
前記ステアリング操作装置の操舵操作に基づいて前記ステアリングアクチュエータの作動を制御するステアリング作動制御装置と、
前記前輪および前記後輪の舵角を検出する舵角検出器と、を備えた作業用車両の操舵制御装置であって、
前記ステアリング作動制御装置は、
前記ステアリング操作装置により車両の進行方向を変化させる変向操舵操作が行われたときには、
前記舵角検出器による検出結果に基づき、
前記前輪および前記後輪のうちの一方の車輪の舵角が所定の角度未満であるときは前記ステアリングアクチュエータにより前記変向操舵操作に応じて前記一方の車輪のみを転舵作動させ、
前記一方の車輪の舵角が前記所定の角度以上であるときは前記ステアリングアクチュエータにより前記変向操舵操作に応じて前記前輪および前記後輪のうちの他方の車輪を前記一方の車輪とは逆方向に転舵作動させる制御を行うことを特徴とする作業用車両の操舵制御装置。
【請求項2】
前記所定の角度が前記一方の車輪の最大舵角であることを特徴とする請求項1に記載の作業用車両の操舵制御装置。
【請求項3】
前記舵角検出器に替えて、前記一方の車輪の舵角が前記最大舵角に到達したことを検出する検出スイッチを備えることを特徴とする請求項2に記載の作業用車両の操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪および後輪を転舵作動させて進行方向を変化させて走行する作業用車両の操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前輪および後輪を転舵作動させる作業用車両の一例として、車体上にブーム式やシザースリンク式の昇降装置とその昇降装置に支持されて昇降移動される作業台とを備えたいわゆる自走式高所作業車や、車体上に掘削装置を備えた自走式掘削車両等が知られており、土木建設作業や造船作業等に広く用いられている。このような作業用車両は、車両が停止している時に車輪の回転を規制するブレーキが自動的にかかり、安全な状態で高所作業等を行うことができるように構成されている。そして、走行操作が行われたときには、ブレーキ作動を解除するとともに当該走行操作に基づいて車輪を回転駆動して車両を走行移動させることができるように構成されている。
【0003】
上記のような作業用車両には、車体の前後左右に設けられた前輪および後輪のいずれか一方を転舵作動させて進行方向を変化させる2輪操舵型の作業用車両と、前輪および後輪の両方を転舵作動させて進行方向を変化させる4輪操舵型の作業用車両とがある。また、4輪操舵型の作業用車両の中には、2輪操舵状態と4輪操舵状態とを切り替えられるように構成された作業用車両も知られている(例えば、特許文献1を参照)。なお、4輪操舵状態には、前輪と後輪とが左右逆向きに転舵する操舵状態(「逆位相4輪操舵状態」とも称する)と、前輪と後輪とが左右同じ向きに転舵する操舵状態(「同位相4輪操舵状態」とも称する)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-6905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
2輪操舵状態と逆位相4輪操舵状態とを切り替えられるように構成された作業用車両では、逆位相4輪操舵状態は、主に車両の回転半径を小さくしたい場合に選択され、2輪操舵状態はそのような必要性がない通常の場合に選択される。従来の作業用車両では、2輪操舵状態と逆位相4輪操舵状態との切替えは、作業者が切替スイッチ等を操作することにより行われるようになっている。そのため、2輪操舵状態を選択して操舵しつつ車両の回転走行を開始したが、途中で車両の回転半径をより小さくしたくなったような場合には、作業者が操舵等を中断して切替スイッチ等を操作し、2輪操舵状態から逆位相4輪操舵状態に切り替える必要があり、操舵時の操作性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、前輪および後輪を操舵可能な作業用車両における操舵時の操作性を向上させることができる作業用車両の操舵制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、車体(例えば、実施形態における走行体フレーム11)と、前記車体の前後左右にそれぞれ回転自在且つ転舵可能に設けられた前輪および後輪と、前記前輪および/または前記後輪を転舵作動させるステアリングアクチュエータ(例えば、実施形態における前輪操舵シリンダ92および後輪操舵シリンダ94)と、前
記前輪および前記後輪の操舵操作を行うステアリング操作装置(例えば、実施形態における操舵ダイヤル72)と、前記ステアリング操作装置の操舵操作に基づいて前記ステアリングアクチュエータの作動を制御するステアリング作動制御装置(例えば、実施形態におけるコントローラ50)と、前記前輪および前記後輪の舵角を検出する舵角検出器と、を備えた作業用車両の操舵制御装置であって、前記ステアリング作動制御装置は、前記ステアリング操作装置により車両の進行方向を変化させる変向操舵操作が行われたときには、前記舵角検出器による検出結果に基づき、前記前輪および前記後輪のうちの一方の車輪の舵角が所定の角度(例えば、実施形態におけるθ)未満であるときは前記ステアリングアクチュエータにより前記変向操舵操作に応じて前記一方の車輪のみを転舵作動させ、前記一方の車輪の舵角が前記所定の角度以上であるときは前記ステアリングアクチュエータにより前記変向操舵操作に応じて前記前輪および前記後輪のうちの他方の車輪を前記一方の車輪とは逆方向に転舵作動させる制御を行うように構成される。
【0008】
上記構成の操舵制御装置において、前記所定の角度が前記一方の車輪の最大舵角であることが好ましい。
【0009】
上記構成の操舵制御装置において、前記舵角検出器に替えて、前記一方の車輪の舵角が前記最大舵角に到達したことを検出する検出スイッチを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る操舵制御装置によれば、車両の進行方向を変化させる変向操舵操作が行われたときには、前輪および後輪のうちの一方の車輪の舵角が所定の角度未満であるときは変向操舵操作に応じて一方の車輪のみが転舵作動され、一方の車輪の舵角が所定の角度以上であるときは前輪および後輪のうちの他方の車輪が変向操舵操作に応じて一方の車輪とは逆方向に転舵作動される。したがって、変向操舵操作に応じて一方の車輪のみが転舵する操舵状態と、変向操舵操作に応じて他方の車輪も転舵する操舵状態とを、変向操舵操作を行うことによりスムーズに切り替えることができるので、変向操舵操作時の操作性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る操舵制御装置を備えた作業用車両の一例である自走式の高所作業車の側面図である。
図2】上記高所作業車の平面図である。
図3】上記高所作業車の作動制御構成を示すブロック図である。
図4】上記高所作業車の走行制御構成の一部を示す油圧回路図である。
図5】上記高所作業車の操舵ダイヤルの構成を示す模式図である。
図6】上記操舵ダイヤルが基準位置に操作されている場合の操舵制御例を示す模式図である。
図7】上記操舵ダイヤルが右中間捻り位置に操作されている場合の操舵制御例を示す模式図である。
図8】上記操舵ダイヤルが右最大捻り位置に操作されている場合の操舵制御例を示す模式図である。
図9】上記操舵ダイヤルの替わりに用いることができる操舵スイッチレバーの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本発明に係る操舵制御装置を備えた作業用車両の一例として、図1および図2に自走式の高所作業車1を示している。高所作業車1は、走行可能に構成された走行体10と、走行体10の上部に水平旋回可能に設けられた旋回体20と、旋回体20の上部に起伏可能に設けられたブーム30と、
ブーム30の先端部に設けられた作業台40とを備えて構成される。
【0013】
走行体10は、走行体フレーム11に回転自在に設けられた左右一対の前輪12および後輪13を有している。前輪12および後輪13はそれぞれタイヤ車輪である。走行体10は、左右の前輪12をそれぞれ回転駆動する2つの前輪走行モータ16(図3を参照)と、左右の後輪13をそれぞれ回転駆動する2つの後輪走行モータ17(図3を参照)とを有している。走行体10は、前輪および後輪走行モータ16,17により左右の前輪12および後輪13をそれぞれ回転駆動するとともに、これら前輪12および後輪13をそれぞれ操舵することにより、所望の方向へと走行移動できるように構成されている。
【0014】
走行体フレーム11の上部中央には旋回機構15が設けられている。旋回機構15は、走行体フレーム11に固定された外輪と、旋回体20に固定され、前記外輪に係合された内輪と、旋回体20に設けられた旋回モータ26(図3を参照)と、旋回体20に設けられた油圧ポンプP(図3を参照)から走行体10に設けられた前輪および後輪走行モータ16,17等に作動油を供給するためのロータリーセンタージョイントとを有している。旋回体20は、旋回機構15により走行体フレーム11に水平旋回自在に取り付けられ、旋回モータ26を正転もしくは逆転作動させることにより、走行体10に対して左右方向に旋回可能に構成されている。
【0015】
旋回体20の上部には、枢結ピン34によりブーム30が上下方向に揺動自在(起伏自在)に設けられている。ブーム30は、旋回体20とブーム30の間に跨設されたブーム起伏シリンダ35(図3を参照)により旋回体20に対して起伏作動が可能になっている。ブーム30は、旋回体20に枢結された基端ブーム31、並びに、基端ブーム31に入れ子式に組み合わされた中間ブーム32および先端ブーム33を有して伸縮自在に構成される。ブーム30は、ブーム30内に設けられたブーム伸縮シリンダ36(図3を参照)により伸縮作動が可能になっている。
【0016】
先端ブーム33の先端部には、枢結ピンにより垂直ポスト37が上下方向に揺動自在に設けられている。垂直ポスト37の上部には、作業台40が左右方向に旋回自在(首振り自在)に設けられている。先端ブーム33の先端部と垂直ポスト37との間には上側レベリングシリンダ(図示せず)が跨設されている。この上側レベリングシリンダは、基端ブーム31と旋回体20との間に跨設される下側レベリングシリンダ(図示せず)との間で油圧ホースによって閉回路が形成されており、下側レベリングシリンダの伸縮作動に応じて上側レベリングシリンダが伸縮作動されることにより、垂直ポスト37を先端ブーム33に対して上下揺動させてブーム30の起伏角度によらず常に作業台40の床面を水平な状態に保持するように構成されている。
【0017】
作業台40は、作業台40に設けられた首振りモータ46(図3を参照)により垂直ポスト37に対して左右方向に旋回作動(首振り作動)が可能に構成されている。作業台40は、作業者が搭乗可能な略矩形状の作業床41と、その作業床41の周囲に立設された手摺り42とを有している。作業台40には、走行体10の走行操作やブーム30の作動操作等を行うための操作装置70が設けられている。
【0018】
操作装置70は、図3に示すように、走行体10の発進停止および前進後退の切り替え等を行う走行操作レバー71と、走行体10の操舵操作(前輪12および後輪13の操舵)を行う操舵ダイヤル72と、旋回体20の旋回操作を行う旋回操作レバー74と、ブーム30の起伏および伸縮操作を行うブーム操作レバー75と、作業台40の首振り操作(旋回操作)を行う首振り操作レバー76とを有している。操作装置70の各操作レバーは、非操作状態において垂直姿勢となる中立位置に位置し、この中立位置を基準に各方向へ傾倒操作可能に構成されている。高所作業車1では、作業者が作業台40に搭乗し、走行
操作レバー71および操舵ダイヤル72等を操作することにより所望の作業位置に走行移動させるとともに、旋回操作レバー74およびブーム操作レバー75等を操作することにより作業台40を所望の高所位置に昇降移動させることができるように構成されている。
【0019】
左右の前輪12および後輪13と操舵ダイヤル72とは、ステアリング装置90を介して連動連結されている。ステアリング装置90は、図2および図3に示すように、左右の前輪12に繋がる前輪転舵機構93と、前輪転舵機構93を駆動して左右の前輪12の舵角(走行体10の前後中心軸に対する前輪12の偏向角)を変化させる前輪操舵シリンダ92と、左右の後輪13に繋がる後輪転舵機構91と、後輪転舵機構91を駆動して左右の後輪13の舵角(走行体10の前後中心軸に対する後輪13の偏向角)を変化させる後輪操舵シリンダ94と、左右の前輪12の舵角を検出する前輪舵角検出器96と、左右の後輪13の舵角を検出する後輪舵角検出器97とを有している。
【0020】
後輪転舵機構91は、左右の後輪13を後輪キングピン軸95の周りに揺動可能に支持する左右一対の後輪ナックルアーム91aと、左右の後輪ナックルアーム91aを連結ピンP1により連結する後輪タイロッド91bとを有している。後輪操舵シリンダ94は、一端が連結ピンP2により右側の後輪ナックルアーム91aに連結され、他端が連結ピンにより走行体フレーム11のシリンダ連結部(図示せず)に連結されている。ステアリング装置90では、後輪操舵シリンダ94を伸縮作動させることにより、右側の後輪13を後輪キングピン軸95の周りに揺動させ、後輪タイロッド91bを介して左側の後輪13を右側の後輪13と同時かつ同方向に揺動させ、左右の後輪13の舵角を変化させることができるように構成されている。
【0021】
前輪転舵機構93は、上記後輪転舵機構91と同様に構成されている。前輪転舵機構93は、図示を省略しているが、左右の前輪12を前輪キングピン軸の周りに揺動可能に支持する左右一対の前輪ナックルアームと、左右の前輪ナックルアームを連結ピンにより連結する前輪タイロッドとを有している。前輪操舵シリンダ92は、一端が連結ピンにより右側の前輪ナックルアームに連結され、他端が連結ピンにより走行体フレーム11のシリンダ連結部に連結されている。ステアリング装置90では、前輪操舵シリンダ92を伸縮作動させることにより、右側の前輪12を前輪キングピン軸の周りに揺動させ、前輪タイロッドを介して左側の前輪12を右側の前輪12と同時かつ同方向に揺動させ、左右の前輪12の舵角を変化させることができるように構成されている。
【0022】
走行体10には、左右の前輪12の回転をそれぞれ制動する2つの前輪ブレーキシリンダ18と、左右の後輪13の回転をそれぞれ制動する2つの後輪ブレーキシリンダ19とが設けられている。前輪ブレーキシリンダ18は、作動油の供給を受けていないときに、内蔵されたスプリングの力により前輪走行モータ16のモータ軸の回転を制動ロックし、これにより前輪12の回転を制動するネガティブブレーキである(図4も参照)。後輪ブレーキシリンダ19は、前輪ブレーキシリンダ18と同様に、作動油の供給を受けていないときに、内蔵されたスプリングの力により後輪走行モータ17のモータ軸の回転を制動ロックし、これにより後輪13の回転を制動するネガティブブレーキである。
【0023】
旋回体20には、左右の前輪走行モータ16、左右の後輪走行モータ17、左右の前輪ブレーキシリンダ18、左右の後輪ブレーキシリンダ19、前輪操舵シリンダ92、後輪操舵シリンダ94、旋回モータ26、ブーム起伏シリンダ35、ブーム伸縮シリンダ36および首振りモータ46等の駆動源として、これらの油圧アクチュエータに作動油を供給する油圧ユニット80が設けられている。油圧ユニット80は、エンジンEと、エンジンEによって駆動される油圧ポンプPと、作動油タンクTと、油圧ポンプPから各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向および供給量を制御する制御バルブユニット85とを有している。制御バルブユニット85は、各油圧アクチュエータに対応して設けられ
た複数の制御バルブV1~V10を有している。
【0024】
旋回体20には、作業台40に設けられた操作装置70から操作信号が入力されるコントローラ50が設けられている。コントローラ50は、操作装置70からの操作信号を受けると、当該操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット80の制御バルブユニット85に出力する。例えば、操作装置70の旋回操作レバー74から操作信号が入力されると、旋回操作レバー74の傾倒操作方向および操作量に応じた指令信号を制御バルブユニット85の旋回制御バルブV7に出力して、旋回制御バルブV7のスプール移動方向およびバルブ開度を制御し、旋回モータ26を駆動させて走行体10に対して旋回体20を旋回作動させる。
【0025】
コントローラ50は、ブーム操作レバー75から操作信号が入力されると、ブーム操作レバー75の傾倒操作方向および操作量に応じた指令信号を制御バルブユニット85の起伏および伸縮制御バルブV8,V9に出力して、起伏および伸縮制御バルブV8,V9のスプール移動方向およびバルブ開度を制御し、ブーム起伏シリンダ35およびブーム伸縮シリンダ36を駆動させてブーム30を起伏および伸縮作動させる。また、コントローラ50は、首振り操作レバー76から操作信号が入力されると、首振り操作レバー74の傾倒操作方向および操作量に応じた指令信号を制御バルブユニット85の首振り制御バルブV10に出力して、首振り制御バルブV10のスプール移動方向およびバルブ開度を制御し、首振りモータ46を駆動させて垂直ポスト37に対して作業台40を首振り作動させる。
【0026】
このように旋回体20、ブーム30および作業台40の作動制御を行うため、高所作業車1は、走行体10に対する旋回体20の旋回角度を検出する旋回角度検出器61と、旋回体20に対するブーム30の起伏角度を検出するブーム起伏角度検出器62と、ブーム30の伸張量を検出するブーム伸張量検出器63と、ブーム30(垂直ポスト37)に対する作業台40の首振り角度(旋回角度)を検出する首振り角度検出器64と、水平面に対する走行体フレーム11の傾斜角度を検出する傾斜角度検出器65とを有し、これら各検出器からの検出信号がコントローラ50に入力されるようになっている。コントローラ50は、これら各検出器からの検出信号に基づいて走行体10に対する作業台40の移動位置を常に求めて記憶するようになっている。
【0027】
次に、高所作業車1(走行体10)の走行制御および操舵制御について、図3図5を追加参照して説明する。走行操作レバー71は、垂直方向に延びた中立位置から前方および後方にそれぞれ傾倒操作可能に構成され、中立位置からの傾倒操作方向および操作量に応じて走行体10の進行方向および目標速度を設定する操作信号をコントローラ50に出力する。走行操作レバー71の前方への傾倒操作は走行体10の前進走行信号に相当し、後方への傾倒操作は走行体10の後進走行信号に相当し、中立位置への復帰操作は走行体10の停止信号に相当する。コントローラ50は、走行操作レバー71から操作信号が入力されると、その操作信号に応じた指令信号を走行制御バルブユニット85の前輪走行制御バルブV1、後輪走行制御バルブV2、前輪ブレーキ制御バルブV5および後輪ブレーキ制御バルブV6に出力して、前輪走行モータ16,16および後輪走行モータ17,17の回転作動、すなわち前輪12,12および後輪13,13の駆動を制御する。
【0028】
コントローラ50は、走行操作レバー71が中立位置にある、もしくは傾倒操作された状態から中立位置に復帰操作されて操作信号の出力が停止されると、前輪走行制御バルブV1および後輪走行制御バルブV2への指令信号の出力を停止して、前輪走行モータ16,16および後輪走行モータ17,17への作動油の供給を停止させる。さらに、操作信号の出力がされていないときには、ステアリング規制時を除き原則として、前輪ブレーキ制御バルブV5および後輪ブレーキ制御バルブV6への指令信号の出力を停止する。前輪
および後輪ブレーキ制御バルブV5,V6はそれぞれ、3ポート2位置の電磁切換バルブであり、コントローラ50からの指令信号の出力が停止されてソレノイドが非励磁状態になると、油圧ポンプPから前輪ブレーキシリンダ18,18および後輪ブレーキシリンダ19,19への作動油の供給を遮断する。左右の前輪および後輪ブレーキシリンダ18,19はそれぞれ、上述したようにネガティブブレーキであり、作動油の供給が停止されると、前輪走行モータ16,16および後輪走行モータ17,17のモータ軸の回転を制動ロックし、これにより前輪12,12および後輪13,13の回転を制動させる。
【0029】
走行操作レバー71が中立位置から前方もしくは後方に傾倒操作され、前進もしくは後進走行信号が入力されると、コントローラ50は、前輪ブレーキ制御バルブV5および後輪ブレーキ制御バルブV6に指令信号を出力する。前輪および後輪ブレーキ制御バルブV5,V6はそれぞれ、コントローラ50からの指令信号によってソレノイドが励磁されると、油圧ポンプPからの作動油を前輪ブレーキシリンダ18,18および後輪ブレーキシリンダ19,19に供給させる。左右の前輪および後輪ブレーキシリンダ18,19はそれぞれ、作動油の供給を受けると、前輪走行モータ16,16および後輪走行モータ17,17のモータ軸の回転、すなわち前輪12,12および後輪13,13の回転を許容する。そして、前進もしくは後進走行信号に応じた指令信号を前輪走行制御バルブV1および後輪走行制御バルブV2に出力して前輪走行モータ16,16および後輪走行モータ17,17に作動油を供給させ、前進もしくは後進走行信号に対応した回転方向および回転速度で前輪走行モータ16,16および後輪走行モータ17,17を回転駆動させて走行体10を前進もしくは後進走行させる。
【0030】
操舵ダイヤル72は、図5に示すように、回転可能な円形のダイヤル基部72aと、ダイヤル基部72aの外縁部の一位置に外方に突出するように設けられた棒状の回転位置指示部72bとを備える。この操舵ダイヤル72は、回転位置指示部72bが所定の基準位置Pを向く中立状態を基準に右回り(時計回り)および左回り(反時計回り)にそれぞれ90度程捻り操作可能に構成され、基準位置Pからの捻り操作方向および操作量に応じて前輪12,12および後輪13,13の目標舵角を設定する操作信号をコントローラ50に出力する。操舵ダイヤル72の右回りの捻り操作は走行体10の進行方向を右方向に変化させる操舵信号に相当し、左回りの捻り操作は走行体10の進行方向を左方向に変化させる操舵信号に相当し、中立位置への復帰操作は走行体10の進行方向を直進方向に変化させる(前輪12,12および後輪13,13の舵角を零の状態にする)操舵信号に相当する。
【0031】
より詳細には、操舵ダイヤル72が基準位置Pから右中間捻り位置PR1図5を参照)までの角度範囲α1内で右回りに捻り操作された場合は、その操作量に応じて前輪12,12のみを右方向に転舵させるための目標舵角を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。特に、操舵ダイヤル72の回転位置指示部72bが右中間捻り位置PR1を向く状態まで操舵ダイヤル72が右回りに捻り操作された場合は、前輪12,12の右方向の舵角を最大とするための目標舵角を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。また、操舵ダイヤル72が右中間捻り位置PR1から右最大捻り位置PR2までの角度範囲α2内で右回りに捻り操作された場合は、その操作量に応じて後輪13,13のみを(前輪12,12を転舵させた右方向とは逆方向となる)左方向に転舵させるための目標舵角を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。特に、操舵ダイヤル72の回転位置指示部72bが右最大捻り位置PR2を向く状態まで操舵ダイヤル72が右回りに捻り操作された場合は、後輪13,13の左方向の舵角を最大とするための目標舵角を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。
【0032】
同様に、操舵ダイヤル72が基準位置Pから左中間捻り位置PL1までの角度範囲β1内で左回りに捻り操作された場合は、その操作量に応じて前輪12,12のみを左方向
に転舵させるための目標舵角を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。特に、操舵ダイヤル72の回転位置指示部72bが左中間捻り位置PL1を向く状態まで操舵ダイヤル72が左回りに捻り操作された場合は、前輪12,12の左方向の舵角を最大とするための目標舵角を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。また、操舵ダイヤル72が左中間捻り位置PL1から左最大捻り位置PL2までの角度範囲β2内で左回りに捻り操作された場合は、その操作量に応じて後輪13,13のみを(前輪12,12を転舵させた左方向とは逆方向となる)右方向に転舵させるための目標舵角を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。特に、操舵ダイヤル72の回転位置指示部72bが左最大捻り位置PL2を向く状態まで操舵ダイヤル72が左回りに捻り操作された場合は、後輪13,13の右方向の舵角を最大とするための目標舵角を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。
【0033】
コントローラ50は、走行操作レバー71が傾倒操作されて前進もしくは後進走行信号が入力され、前輪ブレーキシリンダ18,18および後輪ブレーキシリンダ19,19によるブレーキ作動を解除させた状態において、操舵ダイヤル72から操舵信号が入力されると、ステアリング装置90の作動を許容し、操舵信号に応じた指令信号を前輪操舵制御バルブV3および後輪操舵制御バルブV4に出力して、前輪および後輪舵角検出器96,97により検出される舵角が操舵信号に対応した目標舵角となるように前輪操舵シリンダ92および後輪操舵シリンダ94を作動させて前輪12,12および後輪13,13を転舵作動させる。
【0034】
次に、高所作業車1(走行体10)の操舵制御の具体例について、図6図8を追加参照して説明する。ここでは、走行体10を右回りに走行させる場合の操舵制御を例にとって説明する。図6は、操舵ダイヤル72が基準位置Pに操作されており、前輪12,12および後輪13,13が中立位置(舵角が零となる位置)にある状態を示している。このとき、操舵ダイヤル72からは、前輪12,12および後輪13,13の操舵信号はコントローラ50に出力されないため、前輪操舵シリンダ92および後輪操舵シリンダ94は作動せず、これにより前輪12,12および後輪13,13は中立位置(前輪および後輪舵角検出器96,97により検出される各舵角が零(例えば、θ=0°±0.5°)となる位置)に保持される。
【0035】
図7は、操舵ダイヤル72が右中間捻り位置PR1に操作されている状態を示している。操舵ダイヤル72が基準位置Pから右中間捻り位置PR1に向けて右回りに捻り操作されると、その操作量に応じて前輪12,12のみを右方向に転舵させるための目標舵角(後述の最大舵角θ未満の角度)を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。この操舵信号が入力されるとコントローラ50は、当該操舵信号に応じた指令信号を前輪操舵制御バルブV3に出力して、前輪舵角検出器96により検出される前輪12,12の舵角が操舵ダイヤル72の操作量に応じた目標舵角となるように前輪操舵シリンダ92を作動させて前輪12,12を右方向に転舵作動させる。このとき、操舵ダイヤル72からは、後輪13,13を操舵するための操舵信号はコントローラ50に出力されないため、後輪操舵シリンダ94は作動ぜず、後輪13,13は中立位置に保持される。
【0036】
図7に示すように、操舵ダイヤル72が右中間捻り位置PR1に操作されたときは、前輪12,12のみを右方向に最大に転舵させるための目標舵角(後述の最大舵角θと同等の角度)を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。この操舵信号が入力されるとコントローラ50は、当該操舵信号に応じた指令信号を前輪操舵制御バルブV3に出力して、前輪舵角検出器96により検出される前輪12,12の右方向への舵角が最大舵角(例えば、θ=30°±0.5°)となるように前輪操舵シリンダ92を作動させて前輪12,12を右方向に転舵作動させる。このときも操舵ダイヤル72からは、後輪13,13を操舵するための操舵信号はコントローラ50に出力されないため、後輪操舵
シリンダ94は作動ぜず、後輪13,13は中立位置に保持される。
【0037】
図8は、操舵ダイヤル72が右最大捻り位置PR2に操作されている状態を示している。操舵ダイヤル72が右中間捻り位置PR1から右最大捻り位置PR2に向けてさらに右回りに捻り操作されると、その操作量に応じて後輪13,13のみを左方向に転舵させるための目標舵角(後述の最大舵角θ未満の角度)を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。この操舵信号が入力されるとコントローラ50は、前輪舵角検出器96により検出される前輪12,12の舵角が最大舵角θであるか否かを確認する。そして、前輪12,12の舵角が最大舵角θである場合は、当該操舵信号に応じた指令信号を後輪操舵制御バルブV4に出力して、後輪舵角検出器97により検出される舵角が操舵ダイヤル72の操作量に応じた目標舵角となるように後輪操舵シリンダ94を作動させて後輪13,13を左方向に転舵作動させる。なお、前輪12,12の舵角が最大舵角θである場合、操舵ダイヤル72からは、前輪12,12の操舵信号はコントローラ50に出力されず、前輪操舵制御バルブV3を中立に保持する。これにより、前輪操舵シリンダ92は作動せず、前輪12,12は右方向の最大舵角位置に保持される。
【0038】
図8に示すように、操舵ダイヤル72が右最大捻り位置PR2に操作されたときは、後輪13,13のみを左方向に最大に転舵させるための目標舵角(後述の最大舵角θと同等の角度)を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。この操舵信号が入力されるとコントローラ50は、当該操舵信号に応じた指令信号を後輪操舵制御バルブV4に出力して、後輪舵角検出器97により検出される後輪13,13の左方向への舵角が最大舵角(例えば、θ=30°±0.5°)となるように後輪操舵シリンダ94を作動させて後輪13,13を左方向に転舵作動させる。このときも操舵ダイヤル72からは、前輪12,12の操舵信号はコントローラ50に出力されず、前輪操舵制御バルブV3を中立に保持する。これにより、前輪操舵シリンダ92は作動せず、前輪12,12は右方向の最大舵角位置に保持される。
【0039】
右最大捻り位置PR2に操作されていた操舵ダイヤル72が、右最大捻り位置PR2から右中間捻り位置PR1に向けて左回りに戻し操作されると、その操作量(操作位置)に応じて後輪13,13のみを中立位置に向けて右方向に転舵させるための目標舵角を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。この操舵信号が入力されるとコントローラ50は、当該操舵信号に応じた指令信号を後輪操舵制御バルブV4に出力して、後輪舵角検出器97により検出される後輪13,13の左方向への舵角が操舵ダイヤル72の操作量に応じた目標舵角となるように後輪操舵シリンダ94を作動させて後輪13,13を右方向に転舵作動させる。このときも操舵ダイヤル72からは、前輪12,12の操舵信号はコントローラ50に出力されず、前輪操舵制御バルブV3を中立に保持する。これにより、前輪操舵シリンダ92は作動せず、前輪12,12は右方向の最大舵角位置に保持される。
【0040】
操舵ダイヤル72がさらに左回りに戻し操作されて右中間捻り位置PR1に操作されたときは、後輪13,13のみを中立位置に転舵させるための目標舵角を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。この操舵信号が入力されるとコントローラ50は、当該操舵信号に応じた指令信号を後輪操舵制御バルブV4に出力して、後輪舵角検出器97により検出される後輪13,13の舵角がθとなるように後輪操舵シリンダ94を作動させて後輪13,13を中立位置に転舵作動させる。このときも操舵ダイヤル72からは、前輪12,12の操舵信号はコントローラ50に出力されず、前輪操舵制御バルブV3を中立に保持する。これにより、前輪操舵シリンダ92は作動せず、前輪12,12は右方向の最大舵角位置に保持される。
【0041】
操舵ダイヤル72が右中間捻り位置PR1から基準位置Pに向けてさらに左回りに戻
し操作されると、その操作量に応じて前輪12,12のみを中立位置に向けて左方向に転舵させるための目標舵角を設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。この操舵信号が入力されるとコントローラ50は、後輪舵角検出器97により検出される後輪13,13の舵角が零(θ)であるか否かを確認する。そして、後輪13,13の舵角が零(θ)である場合は、当該操舵信号に応じた指令信号を前輪操舵制御バルブV3に出力して、前輪舵角検出器96により検出される前輪12,12の舵角が操舵ダイヤル72の操作量に応じた目標舵角となるように前輪操舵シリンダ92を作動させて前輪12,12を左方向に転舵作動させる。なお、後輪13,13の舵角が零(θ)のとき、操舵ダイヤル72からは、後輪13,13の操舵信号はコントローラ50に出力されず、後輪操舵制御バルブV4を中立に保持する。これにより、後輪操舵シリンダ94は作動せず、後輪13,13は中立位置に保持される。
【0042】
操舵ダイヤル72がさらに左回りに戻し操作されて基準位置Pに操作されたときは、前輪12,12の目標舵角を零に設定する操舵信号がコントローラ50に出力される。この操舵信号が入力されるとコントローラ50は、当該操舵信号に応じた指令信号を前輪操舵制御バルブV3に出力して、前輪舵角検出器96により検出される各舵角が零(θ)となるように前輪操舵シリンダ92を作動させて前輪12,12を中立位置に転舵させる。このときも、後輪13,13の操舵信号はコントローラ50に出力されず、後輪操舵制御バルブV4を中立に保持する。これにより、後輪操舵シリンダ94は作動せず、後輪13,13は中立位置に保持される。
【0043】
以上、操舵ダイヤル72が基準位置Pから右最大捻り位置PR2まで右回りに捻り操作された場合と、操舵ダイヤル72が右最大捻り位置PR2から基準位置Pまで左回りに戻し操作された場合とについて、それぞれの場合における前輪12,12および後輪13,13の操舵制御について説明した。操舵ダイヤル72が基準位置Pから左最大捻り位置PL2まで左回りに捻り操作された場合と、操舵ダイヤル72が左最大捻り位置PL2から基準位置Pまで右回りに戻し操作された場合とにおける前輪12,12および後輪13,13の操舵制御については、前輪12,12および後輪13,13の転舵方向が左右逆向きとなるだけで、基本的な内容は上述した操舵制御と同様である。
【0044】
上述したように、高所作業車1の操舵制御装置によれば、操舵ダイヤル72を操作するだけで、その操作量に応じて、後輪13,13が中立位置に保持された状態で前輪12,12のみが中立位置と最大舵角位置との間を転舵される操舵状態と、前輪12,12が最大舵角位置に保持された状態で後輪13,13のみが中立位置と最大舵角位置との間を転舵される操舵状態とを切り替えることができる。また、これにより、高所作業車1(走行体10)の走行時の回転半径を最大回転半径から最小回転半径まで、操舵ダイヤル72の操作のみにより連続的に変化させることができる。そのため、2輪操舵状態と4輪操舵状態とを切替えスイッチ等により選択的に切り替えるように構成されたものに比較して、操舵時の操作性が格段に優れている。
【0045】
以上、本発明に係る好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、前輪12,12および後輪13,13を中立位置から転舵作動させる際には、前輪12,12の舵角が最大舵角θ未満の場合は前輪12,12のみが転舵作動され、前輪12,12の舵角が最大舵角θの場合は後輪13,13のみが転舵作動されるようになっているがこれに限定されるものではない。前輪12,12および後輪13,13を中立位置から転舵作動させる際に、前輪12,12の舵角が所定角度θ(θ<θ<θ)未満の場合は前輪12,12のみが転舵作動され、前輪12,12の舵角がθ以上θ未満の角度範囲にある場合は前輪12,12だけではなく後輪13,13も前輪12,12とは逆方向に転舵作動され、前輪12,12の舵角が最大舵角θに到達した場合は後輪13,13のみが転
舵作動されるように構成してもよい。
【0046】
また、上述の実施形態では、前輪12,12および後輪13,13を最大舵角位置から中立位置に戻すように転舵作動させる際には、後輪13,13の舵角が最大舵角θ以下でθよりも大である場合は後輪13,13のみが転舵作動され、後輪13,13の舵角がθになった場合は前輪12,12のみが転舵作動されるようになっているがこれに限定されるものではない。前輪12,12および後輪13,13を最大舵角位置から中立位置に戻すように転舵作動させる際に、後輪13,13の舵角が所定角度θ(θ<θ<θ)以上の場合は後輪13,13のみが転舵作動され、後輪13,13の舵角がθ未満でθよりも大である場合は後輪13,13だけではなく前輪12,12も後輪13,13とは逆方向に転舵作動され、後輪13,13の舵角がθとなった場合は前輪12,12のみが転舵作動されるように構成してもよい。
【0047】
また、上述の実施形態では、ステアリング操作手段として操舵ダイヤル72を備える構成について説明したが、操舵ダイヤル72に替えて、図9に示すような操舵スイッチレバー110を備える構成であってもよい。この操舵スイッチレバー110は、基部111と基部111から上方に突出するように設けられた棒状の操作部112とを有して構成される。操作部112は左方向および右方向に傾動させることが可能に構成されており、左方向に傾動させると車両の進行方向を左方向に変えるための操舵信号が出力され、右方向に傾動させると車両の進行方向を右方向に変えるための操舵信号が出力されるようになっている。なお、操作部112を中立位置に戻しても車輪を中立位置に戻す操舵信号は出力されないようになっており、その点で操舵ダイヤル72とは異なる。
【0048】
また、上述の実施形態では、前輪舵角検出器96により前輪12,12の舵角を直接検出しているが、前輪操舵シリンダ92のストロークをリミットスイッチやセンサ等により検出し、その検出結果に基づき前輪12,12の舵角を間接的に検出するようにしてもよい。同様に、上述の実施形態では、後輪舵角検出器97により後輪13,13の舵角を直接検出しているが、後輪操舵シリンダ94のストロークをリミットスイッチやセンサ等により検出し、その検出結果に基づき後輪13,13の舵角を間接的に検出するようにしてもよい。
【0049】
また、前輪舵角検出器96に替えて、前輪12,12の舵角が最大舵角に到達したこと(到達したか否か)を検出する前輪用リミットスイッチ(図示略)を前輪転舵機構93に設けてもよい。そして、前輪12,12および後輪13,13を中立位置から転舵作動させる際には、前輪用リミットスイッチの検出結果に基づき、前輪12,12の舵角が最大舵角θ未満である(θに到達していない)場合は前輪12,12のみが転舵作動され、前輪12,12の舵角が最大舵角θに到達した場合(以降)は後輪13,13のみが転舵作動されるようにしてもよい。同様に、後輪舵角検出器97に替えて、後輪13,13の舵角が零(θ)に到達した(戻った)ことを検出する後輪用リミットスイッチ(図示略)を後輪転舵機構91に設けてもよい。そして、前輪12,12および後輪13,13を最大舵角位置から中立位置に戻すように転舵作動させる際には、後輪用リミットスイッチの検出結果に基づき、後輪13,13の舵角がθよりも大である(θに到達していない)場合は後輪13,13のみが転舵作動され、後輪13,13の舵角がθに到達した場合(以降)は前輪12,12のみが転舵作動されるようにしてもよい。なお、リミットスイッチに替えて近接スイッチ等の他の検出スイッチを用いてもよい。また、上述の実施形態では、前輪走行モータ16,16および後輪走行モータ17,17を有する4輪駆動の構成であるが、前輪12,12および後輪13,13のいずれか一方を駆動する2輪駆動の構成であってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 高所作業車
10 走行体
11 走行体フレーム
12 前輪
13 後輪
16 前輪走行モータ
17 後輪走行モータ
50 コントローラ
72 操舵ダイヤル
90 ステアリング装置
92 前輪操舵シリンダ
94 後輪操舵シリンダ
96 前輪舵角検出器
97 後輪舵角検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9