(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050374
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】流体ミキシング装置
(51)【国際特許分類】
B01F 23/232 20220101AFI20230404BHJP
B01F 25/40 20220101ALI20230404BHJP
B01F 25/10 20220101ALI20230404BHJP
B01F 23/40 20220101ALI20230404BHJP
【FI】
B01F3/04 C
B01F5/06
B01F5/00 G
B01F3/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160440
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】596171384
【氏名又は名称】株式会社 徳武製作所
(71)【出願人】
【識別番号】521427704
【氏名又は名称】株式会社光和
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】徳武 利洋
(72)【発明者】
【氏名】古田 和幸
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB16
4G035AB27
4G035AB37
4G035AC26
4G035AC44
4G035AE13
(57)【要約】
【課題】複数の流体を混ぜ合わせて混合流体を生成するとき、複数の流体の混合撹拌性能を向上させた流体ミキシング装置を提供すること。
【解決手段】複数の流体を混合する流体ミキシング装置1Aは、本体部材10と、入力ポート部材20と、流体路形成部材30と、を備えている。流体路形成部材30に有するスパイラルノズル穴31は、複数個の穴を先細り円錐形状に配置し、第1流体の第1流入口31aと第1流出口31bとを2軸傾斜穴により繋いで形成する。流体路形成部材30に有するストレート穴32は、第2流体の第2流入口32aと第2流出口32bとを軸心穴により繋いで形成する。流体路形成部材30は、円周上に複数個開口された第1流出口31bと、複数個の第1流出口31bにより囲まれた中心部に開口された第2流出口32bと、を先端面36aに形成する。流体路形成部材30は、先端面36aを流体ミキシング部12の流体入口領域に配置する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体を混合する流体ミキシング装置であって、
前記複数の流体の流れ方向に沿って本体中心軸上に、部材取付け部と、流体ミキシング部と、を有する本体部材と、
前記部材取付け部に固定され、外部から第1流体を導く第1入力ポートと、外部から前記第1流体と異なる第2流体を導く第2入力ポートと、を有する入力ポート部材と、
前記入力ポート部材の下流位置に固定され、前記第1入力ポートからの前記第1流体が流入するノズル穴と、前記第2入力ポートからの前記第2流体が流入するストレート穴と、を有する流体路形成部材と、を備え、
前記ノズル穴は、複数個の穴を先細り円錐形状に配置し、前記第1流体の第1流入口と第1流出口とを、前記本体中心軸に対して穴中心軸が径方向と周方向に傾斜する2軸傾斜穴により繋いで形成し、
前記ストレート穴は、前記第2流体の第2流入口と第2流出口とを、穴中心軸を前記本体中心軸と一致させた軸心穴により繋いで形成し、
前記流体路形成部材は、円周上に複数個開口された前記第1流出口と、複数個の前記第1流出口により囲まれた中心部に開口された前記第2流出口と、を先端面に形成し、前記先端面を前記流体ミキシング部の流体入口領域に配置する
ことを特徴とする流体ミキシング装置。
【請求項2】
請求項1に記載された流体ミキシング装置において、
前記ノズル穴は、2軸傾斜によるノズル穴内面に、前記第1流体の前記第1流入口から前記第2流出口に向かって螺旋状に突出する内面突起を有するスパイラルノズル穴である
ことを特徴とする流体ミキシング装置。
【請求項3】
請求項2に記載された流体ミキシング装置において、
前記スパイラルノズル穴は、前記第1流体の前記第1流入口から前記第1流出口までの区間を、前記第1流入口から途中位置までの第1区間と、前記途中位置から前記第1流出口までの第2区間に分け、
前記第1区間を、前記ノズル穴内面に前記内面突起を有する内面突起区間とし、前記第2区間を、同径穴が形成された同径穴区間とし、前記第1流出口の先端面を、前記穴中心軸に直交させた傾斜面とする
ことを特徴とする流体ミキシング装置。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載された流体ミキシング装置において、
前記流体路形成部材は、前記第2流出口の位置に、前記ストレート穴の穴内径より内径を拡大したバッファ穴を有する
ことを特徴とする流体ミキシング装置。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載された流体ミキシング装置において、
前記流体ミキシング部は、前記流体路形成部材からの流体が流入する流入側内径から流出側内径まで徐々に縮小させた縮小テーパー内面を有する
ことを特徴とする流体ミキシング装置。
【請求項6】
請求項5に記載された流体ミキシング装置において、
前記流体ミキシング部は、前記流出側内径の最小内径を、少なくとも複数個の前記第1流出口の断面積の合計断面積が得られる内径に設定する
ことを特徴とする流体ミキシング装置。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載された流体ミキシング装置において、
前記本体部材は、前記流体ミキシング部に隣接する下流位置にディフューザー部を有し、
前記ディフューザー部は、前記流体ミキシング部からの混合流体が流入するディフューザー流入側内径を、混合流体の流出側に向かって拡大させた拡大テーパー内面を有する
ことを特徴とする流体ミキシング装置。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載された流体ミキシング装置において、
前記流体ミキシング部は、前記流体路形成部材からの流体が流入する流入側内径から流出側内径まで徐々に縮小させた縮小テーパー内面を有し、
前記本体部材は、前記流体ミキシング部に隣接する下流位置にディフューザー部を有し、
前記流体ミキシング部と前記ディフューザー部との境界位置に、外部から径方向に第3流体を導く第3入力ポート及び径方向流路を有する
ことを特徴とする流体ミキシング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流体を混合する流体ミキシング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中に微細気泡を発生させるための微細気泡発生器としては、本体部と、水による旋回流を形成する旋回流形成部と、旋回流の流速を増速させる流速増速部と、水の流路に連通する空気の導入路を形成する気体導入部と、を備えるものが知られている。微細気泡発生器は、旋回流形成部およびこれに対応する流速増速部の組合せが、本体部の中心軸方向視で複数箇所となるように並列的に設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術にあっては、液体(水)と気体(空気)との混合流体を生成するとき、増速旋回流による水の外側から空気を導入して水と空気を合流させている。よって、水と空気の合流が、軸方向に流れる増速旋回流の水に対し、水表面領域を軸方向に移動する空気を巻き込ませる外側巻き込み合流になる。このため、増速旋回流となって流れる水の内部へ空気を取り込むときの取り込み効率が低くなり、水と空気との混合撹拌性能の向上を望めない、という課題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、複数の流体を混ぜ合わせて混合流体を生成するとき、複数の流体の混合撹拌性能を向上させた流体ミキシング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、複数の流体を混合する流体ミキシング装置であって、本体部材と、入力ポート部材と、流体路形成部材と、を備えている。本体部材は、複数の流体の流れ方向に沿って本体中心軸上に、部材取付け部と、流体ミキシング部と、を有する。入力ポート部材は、部材取付け部に固定され、外部から第1流体を導く第1入力ポートと、外部から第1流体と異なる第2流体を導く第2入力ポートと、を有する。流体路形成部材は、入力ポート部材の下流位置に固定され、第1入力ポートからの第1流体が流入するノズル穴と、第2入力ポートからの第2流体が流入するストレート穴と、を有する。ノズル穴は、複数個の穴を先細り円錐形状に配置し、第1流体の第1流入口と第1流出口とを、本体中心軸に対して穴中心軸が径方向と周方向に傾斜する2軸傾斜穴により繋いで形成する。ストレート穴は、第2流体の第2流入口と第2流出口とを、穴中心軸を本体中心軸と一致させた軸心穴により繋いで形成する。流体路形成部材は、円周上に複数個開口された第1流出口と、複数個の第1流出口により囲まれた中心部に開口された第2流出口と、を先端面に形成し、先端面を流体ミキシング部の流体入口領域に配置する。
【発明の効果】
【0007】
上記手段の採用により、流体路形成部材の先端面に有する第1流体の第1流出口から流体ミキシング部の流体入口領域に向かって増速された旋回流が噴出するため、流体路形成部材の先端面の中心部領域に負圧が発生する。この負圧発生領域と第2流体の第2流出口が配置される位置とが一致するため、第2流体は負圧引き込み作用力を受ける。よって、第1流体と第2流体の合流が、第1流体の内側中心部に向かって第2流体が吸い込まれる内側吸込み合流になり、旋回流により噴出している第1流体の内部に第2流体が効率良く取り込まれて混合撹拌される。この結果、複数の流体を混ぜ合わせて混合流体を生成するとき、複数の流体の混合撹拌性能を向上させた流体ミキシング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の流体ミキシング装置の外観形状を示す全体正面図である。
【
図2】実施例1の流体ミキシング装置を入力ポート部材側から視た構成を示す側面図である。
【
図3】実施例1の流体ミキシング装置の内部構成を示す
図1のI-I断面図である。
【
図4】実施例1の流体ミキシング装置の内部構成を示す
図2のII-II断面図である。
【
図5】実施例1の流体ミキシング装置の本体部材を示す拡大断面図である。
【
図6】実施例1の流体ミキシング装置の入力ポート部材を示す図である。
【
図7】実施例1の流体ミキシング装置の流体路形成部材を示す正面図である。
【
図8】実施例1の流体ミキシング装置の流体路形成部材を示す
図9のIII-III断面図である。
【
図9】
図7に示す流体路形成部材を入力側から視た構成を示す側面図である。
【
図10】
図8に示す流体路形成部材に形成されたスパイラルノズル穴の一つに穴形状ピンを差し込んだ状態を示す縦断面図である。
【
図11】スパイラルノズル穴の穴形状を反転形状によりあらわした
図10の穴形状ピンを示す正面視構成図及び先端視構成図である。
【
図12】スパイラルノズル穴の穴形状を反転形状によりあらわした
図10の穴形状ピンを示す斜視図である。
【
図13】流体路形成部材の先端面を流体ミキシング部側から視た構成を示す斜視図である。
【
図14】実施例1の流体ミキシング装置の解析モデルを用いた解析結果のうち速度ベクトルを示す速度ベクトル図である。
【
図15】実施例1の流体ミキシング装置の解析モデルを用いた解析結果のうち水と空気の流線を示す流線図である。
【
図16】実施例1の流体ミキシング装置の解析モデルを用いた解析結果のうち空気のみの流線を示す空気流線図である。
【
図17】実施例2の流体ミキシング装置の外観形状を示す全体正面図である。
【
図18】実施例2の流体ミキシング装置の内部構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による流体ミキシング装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1及び実施例2に基づいて説明する。
【実施例0010】
実施例1の流体ミキシング装置1Aは、複数の流体を混ぜ合わせる流体ミキシング装置のうち、第1流体を水とし第2流体を空気とし、水と空気を混合して気液混相流体を生成する装置例である。ここで、「流体」は、自由に形を変えながら流れていくことができる液体や気体などを総称する文言として用いる。そして、「複数の流体」とは、流体自体の性質である物性(粘性、圧縮性など)が異なる2種類以上の流体をいい、液体と気体の組み合わせ以外に、異種の液体の組み合わせ、異種の気体の組み合わせなども含む。異種の液体の組み合わせとしては、例えば、水と油の組み合わせがある。
【0011】
まず、
図1~
図4を参照し、所定の水圧により供給される水に空気を混合して気液混相流体を生成する流体ミキシング装置1Aの全体構成を説明する。ここで、「水」は、粘度が空気より高い非圧縮性液体であり、例えば、水道水である。「空気」は、粘度が水より低い圧縮性気体の一例である。
【0012】
流体ミキシング装置1Aは、
図1~
図4に示すように、本体部材10と、入力ポート部材20と、流体路形成部材30と、を備えている。各部材10,20,30は、例えば、使用環境や流体の種類などに応じて選択された合成樹脂材を素材とし、樹脂成形機による成形によって製造される。なお、各部材10,20,30の素材としては、合成樹脂材以外に、金属材、金属材と合成樹脂材の複合材などを用いても勿論良い。
【0013】
本体部材10は、円筒状部材であって、水と空気との流れ方向(
図1の左側から右側へと向かう流れ方向)に沿って本体中心軸CL上に、部材取付け部11と、流体ミキシング部12と、ディフューザー部13と、直管部14と、を有する。実施例1の本体部材10は、水道系配管部材を入力側に連結して用いることを考慮し、例えば、30mm程度の直径と90mm程度の軸方向長さを有する円筒状部材としている。
【0014】
入力ポート部材20は、
図3及び
図4に示すように、部材取付け部11に対してネジ止めにより締め付け固定される。入力ポート部材20は、外部から水を導く第1入力ポート21と、外部から水と異なる空気を導く第2入力ポート22と、を有する。第1入力ポート21には、図示していない水道系配管部材が連結される雌ネジ21aが形成されている。第2入力ポート22には、
図1及び
図2に示すように、空気吸引パイプ23が連結されている。
【0015】
流体路形成部材30は、部材取付け部11のうち入力ポート部材20の下流位置に固定される。流体路形成部材30は、第1入力ポート21からの水が流入するスパイラルノズル穴31と、第2入力ポート22からの空気が流入するストレート穴32と、を有する。流体路形成部材30は、入力ポート部材20を部材取付け部11に対して雌雄ネジによって締め付け固定するときの移動により押付け力を受け、入力ポート部材20と部材取付け部11との間に挟持状態で固定される。
【0016】
次に、
図5~
図12を参照し、流体ミキシング装置1Aを構成する各部材(本体部材10、入力ポート部材20、流体路形成部材30)の詳細構成を説明する。
【0017】
本体部材10は、
図5に示すように、本体中心軸CL上に、部材取付け部11と、流体ミキシング部12と、ディフューザー部13と、直管部14と、を有する。そして、本体部材10の流出側外周部には、図示しないシャワーヘッドや高圧洗浄ヘッドや微細気泡発生ヘッドなどを取り付ける雄ネジ部15が形成されている。
【0018】
部材取付け部11は、入力ポート部材20と流体路形成部材30を取り付ける本体穴である。部材取付け部11は、雌ネジ部11aと、円筒内面部11bと、テーパー内面部11cと、段差嵌合面部11dと、を有する。入力ポート部材20と流体路形成部材30の取り付けは、流体路形成部材30を、円筒内面部11bとテーパー内面部11cと段差嵌合面部11dに差し込み組付けた状態で、雌ネジ部11aに入力ポート部材20をネジ止め固定することで行われる。
【0019】
流体ミキシング部12は、流体路形成部材30からの旋回流により噴出する水に対して旋回流中心部に吸い込まれる空気を混合撹拌する流路である。流体ミキシング部12は、流体路形成部材30からの流入側内径Dinを、ディフューザー部13への流出側内径Doutまで徐々に縮小させた縮小テーパー内面12aを有する。
【0020】
流入側内径Dinは、部材取付け部11と接する位置の内径であり、後述する複数個の第1流出口31bの外接円よりも大きな内径に設定する。流出側内径Doutは、ディフューザー部13と接する位置の内径であり、少なくとも後述する複数個の第1流出口31bの断面積の合計断面積が得られる内径を最小内径に設定する。なお、流出側内径Doutは、流入側内径Dinより小さい径であって、少なくとも装置流量として許容される最小限流量が確保される流速が得られるように縮径させたときの内径を最大内径に設定する。よって、流出側内径Doutは、例えば、流入側内径Din、第1流出口31bの2軸傾斜角度、流体ミキシング部12の軸方向長さ300などに応じて適切に決められる。
【0021】
流体ミキシング部12の軸方向長さ300は、複合旋回流により噴出する水に、負圧により旋回流中心部に吸い込まれる空気を混合して撹拌できる長さに設定される。具体的な流体ミキシング部12の軸方向長さ300は、混合する流体の組み合わせ毎に、流体の種類や粘性などに応じて異なる長さに設定される。例えば、混合する流体の組み合わせが選択されると、軸方向長さを変えて混合撹拌性能の比較実験を行い、高い混合撹拌性能が得られた長さに決められる。ここで、流体ミキシング部12のうち水と空気が合流する流体入口領域には、後述する流体路形成部材30の先端面36aに形成された水の第1流出口31bと空気の第2流出口32bとが配置されている(
図13を参照)。
【0022】
ディフューザー部13は、流体ミキシング部12から流入する混合流体の持つ運動エネルギーを圧力エネルギーに変換し、混合流体に逆流を発生させて撹拌することにより水に混合させた空気を細分化して空気泡にする流路である。ディフューザー部13は、流体ミキシング部12からの混合流体が流入するディフューザー流入側内径(=流出側内径Dout)を、混合流体の流出側の直管部14に向かって拡大させた拡大テーパー内面13aを有する。
【0023】
ここで、ディフューザー部13の拡大テーパー内面13aのテーパー角度は、流体ミキシング部12からの混合流の流速を落として逆流の発生を促すことができる角度に設定される。実施例1では、ディフューザー部13の拡大テーパー内面13aのテーパー角度は、縮小テーパー内面12aのテーパー角度より大きな角度の設定としている。ただし、流路面積の増加割合(=拡大テーパー内面13aのテーパー角度)が大きくなりすぎると、流路損失が増加する。このため、拡大テーパー内面13aのテーパー角度は、逆流の発生を促しながら、流路損失の増加を抑える角度に設定される。
【0024】
入力ポート部材20は、
図6に示すように、第1入力ポート21と、第2入力ポート22と、連結支柱部24と、第1流体穴25と、第2流体路26と、外周突起部27と、軸心突起部28と、を有する。
【0025】
第1入力ポート21は、水を流体路形成部材30の入力側外周領域に導くための軸方向ポートである。第1入力ポート21の内面には、図示していない水道系配管部材などが連結される雌ネジ21aが形成されている。
【0026】
第2入力ポート22は、空気を流体路形成部材30の軸心部に導くための径方向ポートである。第2入力ポート22の内面には、空気吸引パイプ23が連結されている(
図1及び
図2を参照)。なお、空気吸引パイプ23の代わりに、第2入力ポート22に外気を吸引するブリーダープラグなどを設けても良い。また、空気吸引パイプ23を無くした構成としても良い。
【0027】
連結支柱部24は、第1入力ポート21の中間位置を直径方向に連結し、第1入力ポート21からの水と第2入力ポート22からの空気を分配して流体路形成部材30へ導くための部材である。
【0028】
第1流体穴25は、連結支柱部24に形成され、第1入力ポート21からの軸方向に導かれる水を二方向に分けて流体路形成部材30の入力側外周領域に導く流路である。第1流体穴25は、連結支柱部24により二分割された一対の円弧形状穴25a,25bにより構成される(
図2及び
図3を参照)。なお、一対の円弧形状穴25a,25bの開口端面25cと、後述する流体路形成部材30の段差面34aとの間には、流体路形成部材30への水の供給に備えておく水貯留領域が形成される(
図3及び
図4を参照)。
【0029】
第2流体路26は、連結支柱部24に形成され、第2入力ポート22からの空気を流体路形成部材30の軸心部に導く流路である。第2流体路26は、径方向流路26aと軸方向流路26bにより構成される。径方向流路26aは、一端が第2入力ポート22に連通し、他端が連結支柱部24の中心部位置まで開けられている。軸方向流路26bは、一端が径方向流路26aに連通し、他端が軸心突起部28の先端面28aに開けられている。なお、径方向流路26aとしては、
図6に上方のみから空気を流入させる構成を示しているが、上下両方向や等角3方向などのように、複数の方向から空気を流入させる構成としても良い。また、複数方向から流体を導入する径方向流路を有する場合、それぞれの径方向流路で流体の種類を異ならせても良い。ただし、流体の種類を異ならせるとき、1つが空気であると他の流体も気体であるというように、粘度が同等の流体を選択することが好ましい。
【0030】
外周突起部27は、入力ポート部材20の本体部材側端面の外周部から円環状に突出し、本体部材10の部材取付け部11に入力ポート部材20をネジ止め固定する円環突起部である。外周突起部27の外周面には、雄ネジ部27aが形成され、部材取付け部11の雌ネジ部11aに対してネジ止め固定される。実施例1では、雄ネジ部27aと雌ネジ部11aとのネジ固定部に加わる圧接力での素材弾性変形により水の漏れを防止するシール性が確保されている。なお、ネジ固定部により水の漏れを防止できない場合、ネジ固定部にシール部材を設けても良い。
【0031】
軸心突起部28は、入力ポート部材20の本体部材側端面の中央部から円柱状に突出し、軸方向流路26bと流体路形成部材30に形成されたストレート穴32とを互いに連通させる突起部である(
図3及び
図4を参照)。軸心突起部28は、本体部材側に突出する先端面28aが、流体路形成部材30の軸心円柱部33の後端面33a(
図8を参照)に圧接する。実施例1では、先端面28aと後端面33aとに加わる圧接力での素材弾性変形により空気の漏れを防止するシール性が確保されている。なお、先端面28aと後端面33aとの圧接力などにより空気の漏れを防止できない場合、圧接面にシール部材を設けても良い。
【0032】
流体路形成部材30は、
図7~
図9に示すように、スパイラルノズル穴31(ノズル穴)と、ストレート穴32と、軸心円柱部33と、円筒部34と、テーパー円錐部35と、段差円筒部36と、を有する。ここで、スパイラルノズル穴31とストレート穴32を除いた流体路形成部材30の外観形状は、
図7及び
図8に示すように、軸心円柱部33と円筒部34とテーパー円錐部35と段差円筒部36とを一体に有する駒形状に形成している。
【0033】
軸心円柱部33は、上述した入力ポート部材20の軸心突起部28に対応するもので、後端面33aに軸心突起部28の先端面28aが圧接する。軸心円柱部33は、後端面33aの外径を、軸心突起部28の先端面28aの外径より大きく形成し、軸方向流路26bとストレート穴32とを互いに連通させている。
【0034】
円筒部34は、部材取付け部11の円筒内面部11bと対応する外径による外周面を有する。テーパー円錐部35は、部材取付け部11のテーパー内面部11cと対応するテーパー円錐面を有する。段差円筒部36は、部材取付け部11の段差嵌合面部11dと対応する外径による外周面を有する(
図5を参照)。このように、流体路形成部材30は、その形状を本体部材10の部材取付け部11の形状に対応させたことで、本体部材10に対して流体路形成部材30を軸方向に差し込むことで組付けられる。以下、流体路形成部材30に形成されるスパイラルノズル穴31とストレート穴32の構成を説明する。
【0035】
流体路形成部材30は、スパイラルノズル穴31による水の第1流出口31bと、ストレート穴32による空気の第2流出口32bと、を先端面36aに形成している。そして、流体路形成部材30の先端面36aを流体ミキシング部12の流体入口領域を臨む位置に配置している。
【0036】
スパイラルノズル穴31は、所定の水圧により供給される水を増速させながら複合旋回流を作り出すノズル穴である。スパイラルノズル穴31には、軸心円柱部33と円筒部34との段差面34aに形成された第1流入口31aと、段差円筒部36の先端面36aに形成された第1流出口31bと、を有する。ここで、「複合旋回流」とは、「全体旋回流」と、「個別旋回流」と、が複合的に組み合わされた旋回流のことをいう。全体旋回流と個別旋回流については後述する。
【0037】
スパイラルノズル穴31は、6個形成されている。各穴の配置形状を先細り円錐形状の配置にしている。スパイラルノズル穴31は、水の第1流入口31aと第1流出口31bとを、本体中心軸CLに対して穴中心軸HCが径方向と周方向に傾斜する2軸傾斜穴により繋いで形成している。よって、6個のスパイラルノズル穴31の第1流出口31bから、2軸傾斜方向に6束水流を増速して噴出させると、2軸傾斜の交点が互いに一致しない6束の捩れ水流による全体旋回流が作り出される。「捩れ水流」とは、スパイラルノズル穴31の第1流出口31bから噴出した水が、流体ミキシング部12の縮小テーパー内面12aに沿って螺旋状に移動する流線を描く水流をいう。
【0038】
ここで、「径方向に傾斜する」とは、
図8に示すように、本体中心軸CLに対してスパイラルノズル穴31の穴中心軸HCが、第1流入口31aから第1流出口31bへと向かうのに従って本体中心軸CLに近づく第1倒れ傾斜角θ1を有することをいう。また、「周方向に傾斜する」とは、本体中心軸CLに対してスパイラルノズル穴31の穴中心軸HCが、第1流入口31aから第1流出口31bへと向かうのに従って周方向の一方に離れる第2倒れ傾斜角θ2を有することをいう。言い換えると、第2倒れ傾斜角θ2は、
図9に示すように、本体中心軸CLと第1流入口31aの中心を結ぶ第1径方向線R1と、本体中心軸CLと第1流出口31bの中心を結ぶ第2径方向線R2と、がなす周方向角度により表される。なお、実施例1では、第1倒れ傾斜角θ1と第2倒れ傾斜角θ2を同じ15°の傾斜角としている。また、
図9に示す穴中心軸HCが、スパイラルノズル穴31を軸方向から視たときの径方向(
図9の内径方向)と周方向(
図9の右回り周方向)への2軸傾斜状態を表す。
【0039】
スパイラルノズル穴31は、2軸傾斜によるノズル穴内面に、水の第1流入口31aから第1流出口31bに向かって螺旋状に突出する内面突起31cを有する。実施例1では、スパイラルノズル穴31の穴内面に向かって120°間隔で山形に突出する3本の内面突起31cを形成している。よって、内面突起31cを形成したスパイラルノズル穴31を水が螺旋状に増速しながら移動することで、6個のスパイラルノズル穴31のそれぞれにおいて個別旋回流が作り出される。
【0040】
スパイラルノズル穴31の詳細な穴形状を
図10~
図13に基づいて説明する。以下、
図10に示すように、スパイラルノズル穴31に同形状のピンを差し込んだときのピン形状(スパイラルノズル穴31の反転形状)を、スパイラルノズル穴形状31’という。
【0041】
スパイラルノズル穴形状31’は、
図11に示すように、第1流入口31aから第1流出口31bまでの区間が、第1流入口31aから途中位置までの第1区間S1と、途中位置から第1流出口31bまでの第2区間S2と、に分けられる。なお、第1区間S1と第2区間S2との間に連結区間S3を設定している。なお、第1区間S1が、全体の8割程度を占める最も長い区間である。各区間の長さの関係は、第1区間S1>第2区間S2>連結区間S3の関係である。
【0042】
第1区間S1は、スパイラルノズル穴31のテーパー穴内面に内面突起31cを有する内面突起区間としている。なお、内面突起31cは、スパイラルノズル穴形状31’において凹溝で表される。第2区間S2は、テーパー穴ではなく、円筒形状であり、同径穴が形成された同径穴区間としている。連結区間S3は、内面突起区間と同径穴区間とを滑らかに繋ぐ円錐穴区間としている。そして、6個の第1流出口31bの先端面36aを、穴中心軸HCに直交させた傾斜先端面形状としている。よって、第1流出口31bの先端面形状は本体中心軸CLに対して垂直なフラット面にならない。即ち、第1流出口31bの先端面形状は、
図13に示すように、段差面と扇状傾斜面を周方向に6回繰り返す凹凸傾斜面になる。
【0043】
スパイラルノズル穴31の第1流入口31aの開口形状は、3本の内面突起31cを除いた形状が楕円形状になる(
図9の3本の内面突起31cを除いたときのスパイラルノズル穴31を示す破線を参照)。一方、スパイラルノズル穴31の第1流出口31bの開口形状は、
図12のスパイラルノズル穴形状31’の先端面形状から明らかなように正円形状になる。「正円形状」とは、定点(中心点)からの距離が等しい点の集合によりできる曲線形状のことであり、楕円形状との区別を明示するために用いている。なお、「正円形状」は、高い真円度まで要求される形状ではなく、例えば、樹脂成形によって作り出される円形の形状も含まれる。
【0044】
ストレート穴32の詳細な穴形状を
図8及び
図13に基づいて説明する。ストレート穴32は、外部からの空気を、流体路形成部材30の先端面36aにて複数個の第1流出口31bにより囲まれた中心部に向かって負圧引き込みにより導く穴である。ストレート穴32は、空気の第2流入口32aと第2流出口32bとを軸心穴により繋いで形成している。ここで、軸心穴とは、ストレート穴32の穴中心軸ACを本体中心軸CLと一致させた穴をいう。
【0045】
ストレート穴32は、第2流出口32bの位置に、ストレート穴32の穴内径より内径を拡大したバッファ穴37を有する(
図13を参照)。バッファ穴37は、負圧の発生により引き込まれる空気の流速を減速調整するために設けられたもので、バッファ穴37の穴内径や穴長さは選択される流体に応じて設定される。特に、負圧引き込みによる流速については選択される流体の粘度が大きく関与する。例えば、空気などのように粘度が低く負圧引き込みにより流速が高くなる場合は、バッファ穴37の穴内径や穴長さを、旋回流による水の噴出速度に合わせて減速させる設定にする。逆に、粘度が高く負圧引き込みにより流速が高くならない場合は、バッファ穴37を小容積にしても良いし、バッファ穴37そのものを無くしても良い。
【0046】
次に、
図14~
図16の解析例を参照し、水Wと空気Aを混合して気液混相流体Mを生成する気液混相流体生成作用について説明する。ここで、解析例としては、水(水圧=0.1MPa)と空気(大気圧=0MPa)を混合して気液混相流体を生成する解析条件を与えたときの速度ベクトル(
図14)、水と空気の流線(
図15)、空気のみの流線(
図16)を表す例を示す。
【0047】
所定の水圧(0.1MPa)による水Wが入力ポート部材20の第1入力ポート21に流入すると、一対の円弧形状穴25a,25b(
図2及び
図3を参照)による第1流体穴25を経由し、流体路形成部材30に形成されたスパイラルノズル穴31の第1流入口31aに到達する。流体路形成部材30においては、ノズル穴によるスパイラルノズル穴31の第1流入口31a(
図8を参照)に到達した水Wが第1流出口31bに向かって増速しながら移動し、スパイラルノズル穴31の内面に形成された内面突起31cにより個別旋回流が作り出される。そして、水Wが6個のスパイラルノズル穴31の第1流出口31bから流出すると、6個のスパイラルノズル穴31を2軸傾斜構成にしたことで、6束の捩れ水流による全体旋回流が作り出される。
【0048】
よって、流体路形成部材30の先端面36aに有する水Wの第1流出口31bから、流体ミキシング部12の流体入口領域に向かって増速された複合旋回流(全体旋回流+個別旋回流)が噴出することになる。このため、流体路形成部材30の先端面36aと、6個の第1流出口31bから噴出する複合旋回流の内側面と、に囲まれた円錐形状領域が、
図14に示すように、ベンチュリ効果によって負圧が発生する1次負圧発生領域100になる。ここで、「ベンチュリ効果」とは、流体力学の効果の一つであり、流体の流れの断面積を狭めて流速を増加させると、圧力が低い低圧部分や負圧部分が作り出される現象のことをいう。
【0049】
そして、流体路形成部材30の先端面36aの中心部分に形成される1次負圧発生領域100と、空気Aが流れるストレート穴32の第2流出口32bが配置される位置と、が一致する。このため、流体路形成部材30のストレート穴32などの空気通路に存在する空気Aは、大気圧と負圧との差圧に応じた負圧引き込み作用力を受ける。したがって、外部の空気Aは、入力ポート部材20の第2入力ポート22から、径方向流路26a、軸方向流路26b、ストレート穴32、バッファ穴37を経由し、水Wの内側中心部に吸い込まれる。ここで、空気Aが吸い込まれる水Wの内側中心部とは、6個のスパイラルノズル穴31から6束の水Wが先細り円錐形状により噴出するとき、先細り円錐形の頂点部領域をいう。
【0050】
よって、水Wと空気Aの合流が、水Wの内側中心部に向かって空気Aが吸い込まれる内側吸込み合流になる。そして、水Wと空気Aの合流開始領域が、流体路形成部材30の先端面36aが配置される流体ミキシング部12の流体入口領域になる。このため、流体ミキシング部12において、複合旋回流により噴出している水Wの内部に空気Aが効率良く取り込まれ、水Wと空気Aの混合撹拌が開始される。
【0051】
そして、流体ミキシング部12を流体出口に向かって水Wが通過するときは、
図15の流線特性に示すように、ディフューザー部13に向かって旋回しながら増速する。そして、空気Aは、
図16の空気Aの流線特性に示すように、複合旋回流による水Wの内側中心部を旋回しながら流れることにより、旋回している水Wに効率良く巻き込まれて混合撹拌される。なお、流体ミキシング部12においては、縮小テーパー内面12aを有することにより、複合旋回流による水Wが増速しながら出口に向かって通過する。このため、
図14に示すように、流体ミキシング部12とディフューザー部13の境界外周域には、ベンチュリ効果によって2次負圧発生領域200が形成される。
【0052】
次に、流体ミキシング部12を出た水Wと空気Aの混合流体は、ディフューザー部13に流入し、流体ミキシング部12から流入した混合流体の持つ運動エネルギーが圧力エネルギーに変換されて流速が低下する。よって、ディフューザー部13及び直管部14においては、
図13の速度ベクトル(矢印)で示すように、混合流体に逆流や渦巻流を発生させ、発生させた逆流や渦巻流により混合流体同士が衝突することによる撹拌作用が加わる。この撹拌作用により水Wに混合させた帯状の空気塊が分断されて空気泡に細分化され、水Wの内部全体に無数の空気泡を散在させた気液混相流体Mが生成されることになる。
【0053】
以上説明したように、実施例1の流体ミキシング装置1Aにあっては、下記に列挙する効果が得られる。
【0054】
(1)複数の流体を混合する流体ミキシング装置1Aであって、本体部材10と、入力ポート部材20と、流体路形成部材30と、を備えている。本体部材10は、複数の流体の流れ方向に沿って本体中心軸CL上に、部材取付け部11と、流体ミキシング部12と、を有する。入力ポート部材20は、部材取付け部11に固定され、外部から第1流体(水W)を導く第1入力ポート21と、外部から第1流体と異なる第2流体(空気A)を導く第2入力ポート22と、を有する。流体路形成部材30は、入力ポート部材20の下流位置に固定され、第1入力ポート21からの第1流体が流入するノズル穴(スパイラルノズル穴31)と、第2入力ポート22からの第2流体が流入するストレート穴32と、を有する。ノズル穴(スパイラルノズル穴31)は、複数個の穴を先細り円錐形状に配置し、第1流体の第1流入口31aと第1流出口31bとを、本体中心軸CLに対して穴中心軸HCが径方向と周方向に傾斜する2軸傾斜穴により繋いで形成する。ストレート穴32は、第2流体の第2流入口32aと第2流出口32bとを、穴中心軸ACを本体中心軸CLと一致させた軸心穴により繋いで形成する。流体路形成部材30は、円周上に複数個開口された第1流出口31bと、複数個の第1流出口31bにより囲まれた中心部に開口された第2流出口32bと、を先端面36aに形成する。流体路形成部材30は、先端面36aを流体ミキシング部12の流体入口領域に配置する。このため、複数の流体(水W、空気A)を混ぜ合わせて混合流体(気液混相流体M)を生成するとき、複数の流体の混合撹拌性能を向上させた流体ミキシング装置1Aを提供することができる。
【0055】
(2)ノズル穴は、2軸傾斜によるノズル穴内面に、第1流体(水W)の第1流入口31aから第1流出口31bに向かって螺旋状に突出する内面突起31cを有するスパイラルノズル穴31である。したがって、スパイラルノズル穴31の第1流出口31bから噴出される旋回流が、2軸傾斜のノズル穴により作り出される全体旋回流に、内面突起31cにより作り出される個別旋回流が加わった複合旋回流になる。このため、流体ミキシング部12の流体入口領域で第1流体(水W)と第2流体(空気A)の混合を素早く開始できるとともに、流体ミキシング部12において第1流体(水W)と第2流体(空気A)の混合撹拌性能を向上させることができる。加えて、流体ミキシング部12での混合撹拌性能の向上により流体ミキシング部12の軸方向長さ300を短くすることができ、流体ミキシング装置1Aのコンパクト化に寄与できる。
【0056】
(3)スパイラルノズル穴31は、第1流入口31aから第1流出口31bまでの区間を、第1流入口31aから途中位置までの第1区間S1と、途中位置から第1流出口31bまでの第2区間S2に分ける。第1区間S1を、ノズル穴内面に内面突起31cを有する内面突起区間とし、第2区間S2を、同径穴が形成された同径穴区間とし、第1流出口31bの先端面36aを、穴中心軸HCに直交させた傾斜面とする。したがって、第1流出口31bに繋がる穴が同径穴になるとともに、第1流体(水W)の第1流出口31bにおけるスパイラルノズル穴31の開口形状が、楕円形状ではなく正円形状になる。このため、スパイラルノズル穴31の正円形状の第1流出口31bから噴出する第1流体(水W)の流線の乱れを、楕円形状の流出口から噴出させる場合に比べて抑えることができる。
【0057】
(4)流体路形成部材30は、第1流体(水W)の第1流出口31bにより囲まれた中心部に開口された第2流出口32bの位置に、ストレート穴32の穴内径より内径を拡大したバッファ穴37を有する。したがって、負圧吸引により流体ミキシング部12の流体入口領域に向かう第2流体(空気A)の流速が、ストレート穴32より流路断面積が拡大されたバッファ穴37により減速する。よって、複合旋回流の内側中心部に向かって吸い込まれる第2流体(空気A)の流速を、第1流体(水W)の複合旋回流の流速に合わせて調整することができる。このため、流体ミキシング部12の流体入口領域において、第1流体(水W)の複合旋回流の内側中心部に向かって適切な速度により第2流体(空気A)が合流し、第1流体(水W)と第2流体(空気A)との合流性能を向上させることができる。
【0058】
(5)流体ミキシング部12は、流体路形成部材30から流入する流体(水W、空気A)の流入側内径Dinを流出側内径Doutまで縮小させた縮小テーパー内面12aを有する。ここで、流体ミキシング部12の流体入口領域では負圧が発生する。このため、例えば、流体ミキシング部をテーパー無しの内面にすると、負圧による流体入口側への引き込みにより、混合流体が減速したり停滞したりすることがある。これに対し、流体ミキシング部12は、増速を促す縮小テーパー内面12aを有することで、所定の流速による混合流体の移動が確保される区間になる。このため、流体ミキシング部12において、流体ミキシング部12を通過する混合流体が減速したり停滞したりするのが防止され、第1流体(水W)と第2流体(空気A)の混合撹拌性能をより向上させることができる。
【0059】
(6)流体ミキシング部12は、流出側内径Doutの最小内径を、少なくとも複数個の第1流出口31bの断面積の合計断面積が得られる内径に設定する。したがって、流出側内径Doutの最小内径を、複数個の第1流出口31bの断面積の合計断面積が得られる内径にすることで、絞り過ぎによる流路抵抗の増大が抑えられる。このため、流体ミキシング部12において、流出側内径Doutの絞り過ぎによる流路抵抗の増大を抑制することができる。なお、流出側内径Doutの最大内径を、少なくとも装置流量として許容される最小限流量が確保される流速が得られる内径に設定すると、流出側内径Doutの開き過ぎによる流速の低下を抑制することができる。
【0060】
(7)本体部材10は、流体ミキシング部12に隣接する下流位置にディフューザー部13を有する。ディフューザー部13は、流体ミキシング部12からの混合流体が流入するディフューザー流入側内径を、混合流体の流出側に向かって拡大させた拡大テーパー内面13aを有する。したがって、拡大テーパー内面13aを有するディフューザー部13において、流体ミキシング部12から流入した混合流体の持つ運動エネルギーが圧力エネルギーに変換されて流速が低下し、混合流体に逆流や渦巻流を発生させる。このため、ディフューザー部13において、発生させた逆流や渦巻流により混合流体が有効に撹拌されることで、第1流体(水W)の内部全体に微小な第2流体(空気A)を散在させた混合流体(気液混相流体M)を生成することができる。
流体ミキシング部12は、実施例1と同様に、縮小テーパー内面12aを有する。ディフューザー部13は、流体ミキシング部12の下流位置に隣接配置され、拡大テーパー内面13aを有する。
流体ミキシング部12とディフューザー部13との境界位置に、外部から径方向に添加液剤を導く第3入力ポート16及び径方向流路17を有する。径方向流路17は、一端が第3入力ポート16に連通し、他端が流体ミキシング部12とディフューザー部13との境界位置にて開口する。第3入力ポート16には、添加液剤吸引パイプ18が連結されている。なお、他の構成は、実施例1の流体ミキシング装置1Aと同様であるので詳細な説明は省略する。
したがって、添加液剤吸引パイプ18、第3入力ポート16及び径方向流路17を経由して負圧吸込みにより吸い込まれた添加液剤は、複合旋回流による水に対して直角方向に導入されることになる。このため、複合旋回流による水を剪断方向に引きちぎりながら添加液剤が水に混合する。このとき、水が旋回していることで添加液剤の混合撹拌効果が増し、水に空気を混合した気液混相流体Mに、添加液剤を混ぜ合わせた三種混合流体が生成される。なお、水と空気を混合して気液混相流体Mを生成する気液混相流体生成作用については、実施例1の流体ミキシング装置1Aと同様であるので説明を省略する。
(8)流体ミキシング部12は、流体路形成部材30からの流体が流入する流入側内径Dinから流出側内径Doutまで徐々に縮小させた縮小テーパー内面12aを有する。本体部材10は、流体ミキシング部12に隣接する下流位置にディフューザー部13を有する。流体ミキシング部12とディフューザー部13との境界位置に、外部から径方向に第3流体(添加液剤)を導く第3入力ポート16及び径方向流路17を有する。即ち、縮小テーパー内面12aを有する流体ミキシング部12は、流体ミキシング部12の出口側で2次負圧が発生する。よって、2次負圧発生領域200に対して本体中心軸CLの直交方向に第3入力ポート16及び径方向流路17を設けると、第3流体(添加液剤)は2次負圧による引き込み作用力を受け、複合旋回流による第1流体(水)に対して直角方向に導入される。このため、2次負圧の発生を利用した簡単な流路構成を追加するだけで、第1流体(水)に第2流体(空気)を混合した混合流体に、さらに第3流体(添加液剤)を混ぜ合わせた三種混合流体を生成することができる。
以上、本発明の流体ミキシング装置を実施例1及び実施例2に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではない。特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
実施例1,2では、スパイラルノズル穴31として、6個の穴を先細り円錐形状に配置する例を示した。しかし、スパイラルノズル穴としては、6個の穴に限定されるものではなく、例えば、3個以上の複数個の穴を先細り円錐形状に配置する例としても良い。
実施例1,2では、ノズル穴として、2軸傾斜穴にするとともに、ノズル穴内面に螺旋状に突出する内面突起31cを有するスパイラルノズル穴31とし、全体旋回流に個別旋回流が加わって複合旋回流になる好ましい例を示した。しかし、ノズル穴としては、内面突起を有さない2軸傾斜のノズル穴とし、2軸傾斜のノズル穴により全体旋回流が作り出される例としても良い。また、ノズル穴内面に螺旋状に突出する内面突起を有する場合、実施例1では3本の内面突起を有する例を示したが、3本に限定されるものではなく、少なくとも1本以上の内面突起を有するものであれば良い。実施例1では内面突起の断面形状が山形状の例を示したが、内面突起の断面形状は山形状に限られるものではなく、個別旋回流を作り出すことができる形状であれば良い。
実施例1,2では、2軸傾斜によるスパイラルノズル穴31を形成するとき、軸方向の第1倒れ傾斜角θ1と周方向の第2倒れ傾斜角θ2を、15°の同じ傾斜角に設定する例を示した。しかし、2軸傾斜によるスパイラルノズル穴を形成するとき、同じ傾斜角による設定に限られるものではなく、軸方向の第1倒れ傾斜角θ1と周方向の第2倒れ傾斜角θ2を異なる角度に設定しても勿論良い。
実施例1,2では、2軸傾斜によるスパイラルノズル穴31を形成するとき、第1流体の第1流出口31bの先端面36aを穴中心軸HCに直交させた傾斜面とし、第1流出口31bにおけるスパイラルノズル穴31の開口形状を正円形状にする例を示した。しかし、2軸傾斜によるスパイラルノズル穴を形成するとき、第1流出口から噴出する流線の乱れが問題にならない第1流体が選択されるような場合、楕円形状の流出口から噴出させるようにしても良い。
実施例1,2では、流体路形成部材30に形成したストレート穴32の第2流出口32bの位置に、穴内径より内径を拡大したバッファ穴37を有する例を示した。しかし、第2流体として粘度が高い流体が選択される場合、流体路形成部材にバッファ穴を有さない例としても良い。また、バッファ穴を有する例の場合、穴内径や穴長さを実施例1とは異ならせた例としても良い。
実施例1,2では、流体ミキシング部12として、軸方向長さ300の全長にわたって縮小テーパー内面12aを有し、流出側内径Doutを流入側内径Dinより小さく設定する例を示した。しかし、流体ミキシング部としては、軸方向の全長のうち、少なくとも一部に縮小テーパー内面を有するものであれば良い。例えば、開始位置から途中位置までを縮小テーパー内面とし、それ以降を同径内面とする例としても良い。また、軸方向の全長のうち、開始位置から途中位置までを同径内面とし、それ以降を縮小テーパー内面とする例としても良い。さらに、軸方向の全長のうち、前後領域を同径内面とし、中間領域を縮小テーパー内面とする例としても良い。
実施例1,2では、流体ミキシング部12に隣接する下流位置に、拡大テーパー内面13aを有するディフューザー部13を配置する例を示した。しかし、流体ミキシング部に隣接する下流位置に、流体ミキシング部の流出側内径から一気に内径が拡大する直管部を配置するような例としても良い。
実施例2では、混合する複数の流体として、第1流体を水とし、第2流体を空気とし、第3流体を添加液剤とし、水と空気を混合したもの添加液剤を混ぜ合わせて三種混合流体を生成する例を示した。しかし、第1流体と第2流体は、上記のように水と空気との組み合わせ例に限られるものではない。また、第3流体も添加液剤(液体)に限られるものではなく、他の液体や気体であっても良い。