(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050413
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】養殖残渣の再生処理方法、それによる有機粉粒製品およびその再生処理プラント
(51)【国際特許分類】
B09B 3/70 20220101AFI20230404BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20230404BHJP
【FI】
B09B3/00 304Z
B09B3/00 Z ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160495
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】506207152
【氏名又は名称】森内 忠良
(71)【出願人】
【識別番号】512303976
【氏名又は名称】田丸 重徳
(71)【出願人】
【識別番号】513017858
【氏名又は名称】小泉 國雄
(71)【出願人】
【識別番号】598144247
【氏名又は名称】皆川 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】田 丸 重 徳
(72)【発明者】
【氏名】森 内 忠 良
(72)【発明者】
【氏名】小 泉 國 雄
(72)【発明者】
【氏名】皆 川 秀 夫
【テーマコード(参考)】
4D004
【Fターム(参考)】
4D004AA04
4D004AC05
4D004CA04
4D004CA13
4D004CA15
4D004CA41
4D004CA42
4D004CA48
4D004CB13
4D004CB21
4D004CB46
4D004CC03
4D004CC12
4D004CC20
4D004DA03
4D004DA06
4D004DA08
4D004DA10
4D004DA11
4D004DA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】陸揚げされた養殖残渣の保管中の悪臭を防止し、熟練の技術などを要さずとも簡単、且つより経済的に有価物化処理できる上、従前までのような産業廃棄物としての処理を不要とすることができる新規な養殖残渣の再生処理技術を提供する。
【解決手段】養殖残渣に脱臭剤を散布し脱臭残渣とし(b)、該脱臭残渣を残渣粉粒とし(d)、溶融槽に残渣粉粒、溶剤、および、常温の水を投入し、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物とし(g)、該酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を溶融処理し、ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物とした(j)上、排液と溶融有機粉粒とに分離処理し(k)、該溶融有機粉粒を乾燥処理し(m)、有機粉粒製品とし(n)、該排液は、浄化処理し(p)、浄化排水として排水する(q)ようにした養殖残渣の再生処理方法である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水産物の養殖の過程に伴って陸揚げされ、集積された海中棲生付着物である養殖残渣に脱臭剤を散布して脱臭残渣とした後、該脱臭残渣を再生処理プラントに搬入し、同脱臭残渣を粉砕処理して残渣粉粒とし、該残渣粉粒、同残渣粉粒1t当たり1リットルないし3リットルの酢酸を主成分とする溶剤、および、同残渣粉粒1t当たり1m3の常温の水を溶融槽に投入し、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物とし、これら酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を撹拌、曝気処理し、同酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を時間経過に伴って溶融処理し、ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物とした上、これらゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物を排液と溶融有機粉粒とに分離処理し、該溶融有機粉粒を乾燥処理して有機粉粒製品とし、当該排液は、浄化処理し、浄化排水として排水するようにしたことを特徴とする養殖残渣の再生処理方法。
【請求項2】
水産物の養殖の過程に伴って陸揚げされ、集積された海中棲生付着物である養殖残渣に脱臭剤を散布して脱臭残渣とした後、該脱臭残渣を再生処理プラントに搬入し、同脱臭残渣を粉砕処理して残渣粉粒とし、該残渣粉粒、同残渣粉粒1t当たり1リットルないし3リットルの酢酸を主成分とする溶剤、および、同残渣粉粒1t当たり1m3の常温の水を溶融槽に投入し、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物とし、これら酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を撹拌、曝気処理し、同酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を時間経過に伴って溶融処理し、ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物とした上、これらゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物を排液と溶融有機粉粒とに分離処理し、該溶融有機粉粒を乾燥処理して有機粉粒製品とし、当該排液は、浄化処理し、浄化排水として排水するようにし、当該養殖残渣の露天保管中の悪臭、害虫、鳥害の発生を防止すると共に、同養殖残渣を有価有機物として再生可能とすることを特徴とする養殖残渣の再生処理方法。
【請求項3】
水産物の養殖の過程に伴って陸揚げされた海中棲生付着物である養殖残渣を、周壁および屋根を有して通気性が確保された集積所に集積し、該養殖残渣に対し、酢酸を90%以上含む溶剤を、水で100倍ないし500倍に希釈してなる脱臭剤を散布し脱臭残渣とした後、該脱臭残渣を再生処理プラントに搬入し、該脱臭残渣を粉砕処理し直径3mm以下の残渣粉粒とし、該残渣粉粒、および、酢酸を90%以上含む溶剤の残渣粉粒1t当たり1リットルないし3リットルを溶融槽に投入、撹拌して酢酸溶剤・残渣粉粒混合物とし、該溶融槽に、残渣粉粒1t当たり1m3の常温の水を注入し、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物とし、これら酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を撹拌、曝気処理し、同酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を24時間ないし48時間に亘り溶融処理を行い、直径2mm以下のゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物とした上、該ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物を、透水フィルターを用いて排液と溶融有機粉粒とに分離処理し、該溶融有機粉粒を乾燥処理して有機粉粒製品とし、当該排液は、一般排水基準を満たすよう浄化処理して浄化排水とした上、排水するようにしたことを特徴とする養殖残渣の再生処理方法。
【請求項4】
養殖残渣が、養殖された成貝、および、その養殖の過程で水揚げされた養殖資材から剥離された、ムラサキイガイ、キヌマトガイ、ミミヅガイ、クラゲ、ヒドロ虫、フジツボ、褐藻アミクサ、珪藻を含む海中棲生付着物に加え、養殖未成貝、養殖損傷貝、養殖変形貝を含むものである、前記請求項1ないし請求項3何れか一記載の養殖残渣の再生処理方法。
【請求項5】
溶融槽に注入する水の温度を15℃ないし45℃に設定した、前記請求項1ないし請求項4何れか一記載の養殖残渣の再生処理方法。
【請求項6】
水産物の養殖の過程に伴い陸揚げされた海中棲生付着物である養殖残渣に対し、酢酸を90%以上含む溶剤を、水で100倍ないし500倍に希釈してなる脱臭剤が混合された脱臭残渣が、直径3mm以下に粉砕された残渣粉粒とされ、該残渣粉粒、同残渣粉粒1t当たり1リットルないし3リットル酢酸を90%以上含む溶剤、および、同残渣粉粒1t当たり1m3の常温の水からなる酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物とされ、該酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物が溶融され、直径2mm以下のゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物とされ、該ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物から分離された溶融有機粉粒が乾燥処理されてなるものであることを特徴とする、前記請求項1ないし請求項5何れか一記載の養殖残渣の再生処理方法により、再生された有機粉粒製品。
【請求項7】
建屋に脱臭残渣の搬入口を有し、同建屋内には、該搬入口にホッパー部が臨み、該脱臭残渣を搬送すると共に粒状化処理するスパイラル送りコンベアーが配され、該パイラル送りコンベアーの吐出端に、粒状化された該脱臭残渣を粉砕処理し、残渣粉粒とする粉砕機が配され、該粉砕機の吐出口には、撹拌機および水中ポンプを有し、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を溶融処理する溶融槽が配され、該溶融槽の水中ポンプの送出端に、ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物を排液と溶融有機粉粒とに分離処理する透水フィルターが配され、該透水フィルターの近傍に溶融有機粉粒を有機粉粒製品とする乾燥機が配され、該乾燥機の近傍には有機粉粒製品の保管庫が配され、該保管庫の近傍に当該建屋の搬出口が設けられ、当該透水フィルターの下部に排液管路の上流端が配され、同排液管路の下流端が、浄化槽の上流端に接続され、同浄化槽の下流端が外部の排水路に接続されてなることを特徴とする、前記請求項1ないし請求項5何れか一記載の養殖残渣の再生処理方法に利用する再生処理プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水産物の養殖の過程に伴い、陸揚げされた海中棲生付着物である養殖残渣を衛生的に保管すると共に、有効な資源として再生可能とする技術分野、および、その分野には属していないが、そこでの技術的思想の創作内容を取り入れたと同定されるような類いの技術によって製造された再生製品を製造、提供する分野についてまでをも含むのは勿論のこと、それらの分野に係わって行う輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
垂下式養殖に依って2年間ほどに亘って養成されたホタテの成貝は、漁獲され、漁港に水揚げされた際に、貝上面に着床している海中棲生付着物(ムラサキイガイ、キヌマトガイ、ミミヅガイ、クラゲ、ヒドロ虫、フジツボ、褐藻アミクサ、珪藻類など)を剥離、除去されると共に、成貝の選別作業で除去されて残る養殖ホタテ未成貝、養殖ホタテ損傷貝、養殖ホタテ変形貝を含めたものが有機残渣となり、屋外の集積場所に纏めて山積みされたまま、廃棄処理のため搬出されるまでのしばらくの期間に亘り、風雨に晒されたまま保管されることとなっているが、当該有機残渣は、時間の経過と共に、酢酸生成菌、メタン細菌、硫酸還元菌などの嫌気性微生物が有機物類を分解しながら繁殖し、その過程で悪臭の元となるガスを発生させてしまうと共に、害虫の発生や、ネズミ、カラスなどといった害鳥獣を寄せ付けてしまうなどの公害を巻き起こしてしまい、近隣住民の生活環境に悪影響を及ぼすといった弊害をもたらすだけではなく、当該有機残渣の廃棄処理に当たる作業員の作業環境を悪化させてしまうといった問題を抱えてきていた。
【0003】
さらに現在、新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりにより、国内でも多くの都市で緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置が断続的に施行され、不要不急の外出の自粛や飲食店の営業時間の短縮などの要請によって観光並びに移出需要が激減してしまい、こうした煽りを受けて、漁業協同組合およびホタテ養殖漁業者も多大な経済的打撃を被ることとなってしまっていることから、従前までの慣行に従って、当該有機残渣を産業廃棄物として適正に処理するための多額の費用を負担することが次第に困難になりつつ有るというのが実情であり、その対策が急務となっている。
【0004】
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、採光屋根を備えたテント状又はドーム状の構築物内に、有機汚泥やし尿、動物性又は植物性の有機残渣、おが屑等の木質廃材などの有機廃棄物を主原料とし、これに有機廃土や家畜糞尿等の他の有機廃棄物を混合し、微生物の分解作用によって熟成させることによって有機肥料化したり、飼料化したりガス燃料化又は固形燃料化したりする廃棄物処理設備と、前記廃棄物処理設備で生成された肥料や飼料や燃料を利用して畜産を行ったり作物の栽培等を行ったりする農産設備を備え、農産に必要な肥料や飼料類を低コストで生産することができるものとされた、有機廃棄物を利用した複合農産施設が知られている。
【0005】
また、同特許文献1(2)に見られるような、菌類、菌床、および有機残渣(または生ゴミ)を収容する容器が球形または楕円の長軸、あるいは短軸を中心に360度回転して出来るような変形の球形(卵型等)で、羽根の端が容器の内面に沿って回転するような位置、形で攪拌羽根、および、それを回転させる回転軸が取り付けられ、容器の形状により、内容物(菌類、菌床、有機残渣)が攪拌の回転毎に落下、横滑り、回転等の動きが加わり攪拌効率を上げた上、継続あるいは間欠回転の次の回転で掻き揚げ易い容器底の1点を中心に全体から集まるため、内容物が容器内全体に菌類、菌床、有機物有機残渣の均一な分布となり澱む所の無い有機残渣収集槽となり、有機残渣の分解、減量を促進することができる、有機残渣収集槽が既に開発済みとされている。
【0006】
しかし、前者特許文献1(1)の有機廃棄物を利用した複合農産施設、および、後者特許文献1(2)の有機残渣収集槽の夫々に示されているような有機残渣類の資源化や残渣量の減量化の技術は、何れも微生物の分解作用を利用するものであり、処理前の有機残渣類の悪臭や害虫の発生などを防止する技術を有していないことから、作業環境の悪化防止の面では機能していないだけではなく、微生物を正常に増殖させ、効率的に有機残渣類を分解するには適切な温度・湿度管理を常時行うために専門的な素養を必要としており、未経験者が、それらを初めから容易に管理できるものではないという欠点を有し、特に、水産物の養殖の過程に伴い、陸揚げされて集積される大量の海中棲生付着物である養殖残渣を、微生物の分解作用によって再生処理しようとするには、衛生環境の悪化や処理期間の長期化などに伴うコスト増が大いに懸念されるものであり、何よりも、大量の養殖残渣(海中棲生付着物)を、従前までのように産業廃棄物として焼却処分してしまうようにする場合よりも、低コストによって実現化するのが非常に困難なことであるという致命的な欠点を有するものとなっていた。
【特許文献1】(1)特開平10-262479号公報 (2)特開2005-313136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある有機廃棄物を利用した複合農産施設や、有機残渣収集槽などは、何れも海中棲生付着物である養殖残渣を、産業廃棄物として焼却処分してしまう場合よりも効率的且つ低コストにて処理することが出来ないという欠点を残すものであって、従前までと同様か、それ以上に多額の費用を掛け、産業廃棄物として適正に廃棄処理しなければならないものとなっており、新型コロナウイルス感染症の世界的な広がりによる煽りを受け、これ以上の経済的負担を負い兼ねる状況となっているホタテ漁業者にとって大きな課題となっており、こうした厳しい状況に鑑みた本願出願人は、水揚げされた成貝、および、稚貝籠や丸籠などの各種のホタテ養殖篭、ロープなどの養殖資材から、それらの洗浄作業で剥離、分離された海中棲生付着物、さらに、成貝の選別作業で排除された、養殖ホタテ未成貝、養殖ホタテ損傷貝、養殖ホタテ変形貝を含めた養殖残渣を、処理技術の未経験者であっても、熟練を要さず、短期間の中に簡便に有価物化処理することができる上、その再生処理作業に要する経費を大幅に削減し、従前まで大きな経済的負担となってきた養殖残渣の処理費用を大幅に削減し、さらには、同養殖残渣を有価物化出来るようにする新技術の必要性を痛感するに至ったものである。
【0008】
(発明の目的)
そこで、この発明は、陸揚げされた後、成貝および養殖資材から剥離された海中棲生付着物である養殖残渣の集積、保管中における悪臭の発生をより確実に防止し、該養殖残渣を、特殊知識や熟練の技術などを要さず、未経験者であっても簡単且つより経済的に有価物化処理できる上、従前までのような産業廃棄物としての処理を不要とすることができる新規な養殖残渣の再生処理技術の開発はできないものかとの判断から、逸速く、その開発、研究に着手し、長期に亘る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新たな養殖残渣の再生処理方法、それによって製造された新規な構造の有機粉粒製品、および、その製造に利用する新規構造の再生処理プラントを実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の養殖残渣の再生処理方法は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、水産物の養殖の過程に伴い陸揚げされ、集積された海中棲生付着物である養殖残渣に脱臭剤を散布して脱臭残渣とした後、該脱臭残渣を再生処理プラントに搬入し、同脱臭残渣を粉砕処理して残渣粉粒とし、該残渣粉粒、同残渣粉粒1t当たり1リットルないし3リットルの酢酸を主成分とする溶剤、および、同残渣粉粒1t当たり1m3の常温の水を溶融槽に投入し、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物とし、これら酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を撹拌、曝気処理し、同酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を時間経過に伴って溶融処理し、ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物とした上、これら該ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物を排液と溶融有機粉粒とに分離処理し、該溶融有機粉粒を乾燥処理して有機粉粒製品とし、当該排液は、浄化処理し、浄化排水として排水するようにした構成を要旨とする養殖残渣の再生処理方法である。
【0010】
上記のような基本的な構成からなるこの発明の養殖残渣の再生処理方法は、その表現を変えて示すならば、水産物の養殖の過程に伴い陸揚げされ、集積された海中棲生付着物である養殖残渣に脱臭剤を散布して脱臭残渣とした後、該脱臭残渣を再生処理プラントに搬入し、同脱臭残渣を粉砕処理して残渣粉粒とし、該残渣粉粒、同残渣粉粒1t当たり1リットルないし3リットルの酢酸を主成分とする溶剤、および、同残渣粉粒1t当たり1m3の常温の水を溶融槽に投入し、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物とし、これら酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を撹拌、曝気処理し、同酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を時間経過に伴って溶融処理し、ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物とした上、これらゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物を排液と溶融有機粉粒とに分離処理し、該溶融有機粉粒を乾燥処理して有機粉粒製品とし、当該排液は、浄化処理し、浄化排水として排水するようにし、当該養殖残渣の露天保管中の悪臭、害虫、鳥害の発生を防止すると共に、同養殖残渣を有価有機物として再生可能とする構成からなる養殖残渣の再生処理方法となる。
【0011】
より具体的には、水産物の養殖の過程に伴い陸揚げされた海中棲生付着物である養殖残渣を、周壁および屋根を有し、通気性が確保された集積所に集積し、該養殖残渣に対し、酢酸を90%以上含む溶剤を、水で100倍ないし500倍に希釈してなる脱臭剤を散布し脱臭残渣とした後、該脱臭残渣を再生処理プラントに搬入し、該脱臭残渣を粉砕処理し直径3mm以下の残渣粉粒とし、該残渣粉粒、および、酢酸を90%以上含む溶剤の残渣粉粒1t当たり1リットルないし3リットルを溶融槽に投入、撹拌して酢酸溶剤・残渣粉粒混合物とし、該溶融槽に、残渣粉粒1t当たり1m3の常温の水を注入し、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物とし、これら酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を撹拌、曝気処理し、同酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を24時間ないし48時間に亘り溶融処理を行い、直径2mm以下のゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物とした上、該ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物を、透水フィルターを用いて排液と溶融有機粉粒とに分離処理し、該溶融有機粉粒を乾燥処理して有機粉粒製品とし、当該排液は、一般排水基準を満たすよう浄化処理して浄化排水とした上、排水するようにした構成からなる養殖残渣の再生処理方法となる。
【0012】
(関連する発明1)
上記した養殖残渣の再生処理方法に関連し、この発明には、それによって製造された有機粉粒製品も包含している。
即ち、水産物の養殖の過程に伴い陸揚げされた海中棲生付着物である養殖残渣に対し、酢酸を90%以上含む溶剤を、水で100倍ないし500倍に希釈してなる脱臭剤が混合された脱臭残渣が、直径3mm以下に粉砕された残渣粉粒とされ、該残渣粉粒、同残渣粉粒1t当たり1リットルないし3リットル酢酸を90%以上含む溶剤、および、同残渣粉粒1t当たり1m3の常温の水からなる酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物とされ、該酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物が溶融され、直径2mm以下のゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物とされ、該ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物から分離された溶融有機粉粒が乾燥処理されてなるものであることを特徴とする、前記何れか一記載の養殖残渣の再生処理方法により、再生された有機粉粒製品である。
【0013】
(関連する発明2)
上記した養殖残渣の再生処理方法に関連し、この発明には、その実施の際に利用されることとなる再生処理プラントも包含している。
即ち、建屋に脱臭残渣の搬入口を有し、同建屋内には、該搬入口にホッパー部が臨み、該脱臭残渣を搬送すると共に粒状化処理するスパイラル送りコンベアーが配され、該パイラル送りコンベアーの吐出端に、粒状化された該脱臭残渣を粉砕処理し、残渣粉粒とする粉砕機が配され、該粉砕機の吐出口には、撹拌機および水中ポンプを有し、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を溶融処理する溶融槽が配され、該溶融槽の水中ポンプの送出端に、ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物を排液と溶融有機粉粒とに分離処理する透水フィルターが配され、該透水フィルターの近傍に溶融有機粉粒を有機粉粒製品とする乾燥機が配され、該乾燥機の近傍には有機粉粒製品の保管庫が配され、該保管庫の近傍に当該建屋の搬出口が設けられ、当該透水フィルターの下部に排液管路の上流端が配され、同排液管路の下流端が、浄化槽の上流端に接続され、同浄化槽の下流端が外部の排水路に接続されてなるものとされたことを特徴とする、前記何れか一記載の養殖残渣の再生処理方法に利用する再生処理プラントである。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、この発明の養殖残渣の再生処理方法によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、従前までであれば、陸揚げされ、堆積された養殖残渣は、嫌気性微生物の繁殖により、悪臭を放って集積所の周辺環境および処理作業の作業環境を悪化させるものとなっていたが、陸上に集積されたときに脱臭剤を散布し、脱臭残渣とすることによって悪臭の発生を防止し、加えて、害虫の発生や、ネズミ、カラスなどが群がるのをより確実に阻止し、周辺環境および処理作業の環境をより衛生的なものに改善することができる。
【0015】
さらに、再生処理プラントに搬入し、脱臭残渣を粉砕処理し、残渣粉粒とすることによって、その後の溶融処理の処理効果を高めることができる上、溶融処理に用いる溶剤は、経済的に入手可能であって、水で希釈してしまえば人体や環境に悪影響が無く、しかも常温の条件下で該残渣粉粒をより効果的に溶融処理することが可能な酢酸を主成分としたから、溶融槽に該残渣粉粒と酢酸を主成分とする溶剤、および、常温の水を投入し、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物とし、撹拌、曝気処理し、時間の経過を待つという簡単な作業によって溶融処理の効果を格段に高めることができ、これら溶融処理によって得られたゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物は、容易に排液と溶融有機粉粒とに分離処理することができ、該溶融有機粉粒を乾燥処理するだけで有価な有機粉粒製品として出荷することができることとなるから、従前までであれば、産業廃棄物として多大な処理費用を負担しながら廃棄処理しなければならなかった養殖残渣を、より経済的に有価商品に再生することができるものとなるという秀でた特徴が得られるものである。
【0016】
加えて、ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物より分離した排液は、浄化処理し、浄化排水として排水するようにしたから、処理経費を節減できると共に、排水の水質および周辺環境を悪化させることなく保全できるという利点が得られる。
そして、この発明の養殖残渣の再生処理方法により、再生された有機粉粒製品は、海中棲生付着物由来の化学成分を豊富に含み、家畜用の飼料や農業用の肥料など、様々な用途に有効利用することができるものとなる。
【0017】
また、この発明の養殖残渣の再生処理方法に利用する再生処理プラントは、当該養殖残渣の再生処理方法を実施する上で、その工程を、より効率的に実現化するのに有効な構造とされており、脱臭残渣を建屋内に搬入することによって施設内を一層衛生的に保つことができるものとなるから、再生処理工程の衛生、安全の面で優れているだけではなく、これら脱臭残渣は、スパイラル送りコンベアーから粉砕機を通過することにより、搬送と同時に粉砕され残渣粉粒とされると共に、溶融槽に効率的に投入されるよう配置されているから、煩雑な運搬作業が不要となって優れた作業性を達成できる上、溶融槽内で経済的に溶融処理されたゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物は、水中ポンプによって簡便且つ迅速に透水フィルターに供給され、速やかに排液と溶融有機粉粒とに分離処理されることとなり、人手を要する作業を大幅に削減することができ、該透水フィルターに近接する位置に、溶融有機粉粒を乾燥する乾燥機が配され、同乾燥機の近傍には、有機粉粒製品を保管する保管庫が配されているから、有機粉粒製品をより円滑に保管および出荷することができ、さらに、排液は、排液管路を通じて浄化槽に流下され、同浄化槽で、一般排水基準を満たすよう浄化処理し、浄化排水とされた上、外部の排水路に排水されるものとなっているから、周辺の河川の水質や自然環境に悪影響を及ぼすことがなく、脱臭残渣をより経済的且つ短期間の内に再生処理し、より低廉且つ利用価値に優れた有機粉粒製品を生産することができるという大きな効果を奏するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
水産物は、養殖技術によって生産された魚類、貝類、エビ、カニ、タコ、イカ、ウニ、ナマコなどの水産動物、および、コンブ・ワカメなど海藻などを含むものであり、例えば、漁獲された二枚貝や巻き貝などとすることができ、より具体的には、カキ類、ホタテ、アサリ、アワビとすることができ、それらの成貝(市場に出荷するのに適した大きさまで充分に成長し、漁獲された貝)の外、未成貝(成貝まで成長していない貝)も含まれている。
【0019】
有機残渣は、水産物を養殖、漁獲および洗浄する過程で、これら水産物から分離された海中棲生付着物、および、同水産物を養殖する過程で水揚げされた養殖資材を洗浄する工程にて、この養殖資材から分離された海中棲生付着物、さらに、養殖によって漁獲されたが、未成長、損傷、、変形などの理由で商品価値を失った不良水産物などを含むものであり、具体的には、養殖牡蠣に付着する褐藻、珪藻、コケムシ、ヒドロムシなどの海中棲生付着物、および、牡蠣の未成貝や半成貝、損傷貝、変形貝、斃死貝などとすることができる外、養殖アワビに付着するフジツボや海藻などの海中棲生付着物、および、アワビの未成貝や半成貝、損傷貝、変形貝、斃死貝などとすることができる。
【0020】
有機残渣をより具体的なものとして示すならば、後述する実施例にも示すように、養殖ホタテ貝に付着する二枚貝(ムラサキイガイ)、キヌマトイ貝、斃死稚貝、フジツボ、ミミヅ貝、クラゲ、海藻、褐藻、珪藻、ヒドロ虫、フジツボ、その他の有機性付着物などであると云うことができ、さらに、ホタテ貝の未成貝、波などの影響を受け、ぶつかりあって損傷したり斃死したりした貝、および、生育過程で変形を生じた貝なども含むものとすることができる外、ホタテ貝の水揚げに際し陸揚げされた養殖篭、ロープ、ネット類などの養殖資材を洗浄した際、それら養殖資材から剥離されてしまった有機性付着物も含んでいる。
【0021】
水産物の養殖の過程に伴い陸揚げされた海中棲生付着物である養殖残渣を集積する場所は、水揚げされた水産物から剥離した海中棲生付着物や、水揚げされた養殖資材から剥離された海中棲生付着物、および、出荷品質を満たさず、選別作業によって排除された不良の水産物などの有機残渣を、一時的に保管する場所であり、例えば、漁港の近隣の一角や、水産物加工工場の近隣の一角などに確保された場所とすることができ、後述する実施例にも示しているように、コンクリート製の床壁、および、前面が搬入・搬出用に開放され、左右壁および背壁を有する平面コ字形のブロック塀からなる周囲壁に囲まれ、その天面に雨晒しになるのを防ぐ屋根が設けられた集積所とするのが望ましい。
【0022】
脱臭残渣は、集積所に集積された養殖残渣に対して脱臭剤を満遍なく散布し、周辺に悪臭を発生しないよう消臭処理されたものであり、より具体的には、悪臭の原因となる有機物(H,O,C,H,Sの化合物)が陸上に堆積され、嫌気性状態に放置された場合、従前までであれば、酢酸生成菌、メタン細菌、硫酸還元菌などが有機物類を分解し、悪臭の元となるアンモニアを主成分(80%以上)とするガスを発生することとなるが、この発明の新技術によれば、養殖残渣に対し、酢酸を主成分とする脱臭剤を満遍なく散布し、酢酸生成菌、メタン細菌、硫酸還元菌などの増殖を阻止することによって脱臭するものとる。
【0023】
脱臭剤は、エタノールのように殺菌・消毒作用を有するアルコール類などを脱臭用の溶剤としたり、消臭作用を有する重曹の水溶液などとしたりすることが可能であるが、人体や自然環境に悪影響を及ぼさず、より海中棲生付着物の消臭効果に優れており、且つ、脱臭処理後に行う溶融処理工程に用いる溶剤と共有可能となるものを選択するのが経済的にも望ましいことから、酢酸を主成分(90%以上)とする溶剤が、水で希釈調整されてなる酢酸水溶液とするのが好都合であり、より具体的には、後述する実施例にも示しているように、例えば、S.T.C溶剤(「Scallop Technical Biolocal」の略称。株式会社昭和電工製でPH3.3とした貝殻用調整溶剤の意。以下、同様。酢酸90%以上)が、水道水で100~500倍に希釈調整されてなるようにしたS.T.C溶剤水溶液とするのが良い。
この脱臭剤を、S.T.C溶剤(酢酸90%以上)が、水道水で100倍未満に希釈調整されてなるS.T.C溶剤水溶液とされた場合には、このS.T.C溶剤の使用量が増加し、経済的な脱臭処理ができなるなる虞があり、また、S.T.C溶剤(酢酸90%以上)が、水道水で500倍を超えて希釈調整されてなるS.T.C溶剤水溶液とされた場合には、充分な消臭効果が得られない虞が生じる。
【0024】
残渣粉粒は、脱臭残渣が、後の溶融処理に際し、より効率的に溶融される細かさまで均質に粉砕処理されたものであり、より具体的には、脱臭残渣を溶融槽に投入するまでの何れかの段階に、直径3mm以下まで粉砕処理するのが望ましく、後述する実施例にも示すように、スパイラル送りコンベアーによる搬送に伴い破砕し、さらに、溶融槽に投入する直前に、粉砕機を用いて粉砕するようにするのが望ましく、スパイラル送りコンベアーの外に、打撃や加圧などによる破砕機能を有するエレベーターやベルトコンベアーなどによる搬送中に破砕加工されたものとすることができ、当該破砕機の外に粉砕機、製粉機、各種ミル、各種クラッチャー、石臼、乳鉢、微粉砕機、摩砕機などの何れかによって粉砕されたものとすることができる。
残渣粉粒が、直径3mmを超えた大きさのものを含むと、後の溶融処理で充分な溶融効果が得られなくなり、有機粉粒製品の品質が一定しなくなってしまう虞があり、直径3mm以下であれば粉状の残渣が含まれていても、充分な溶融処理の効果が得られ、品質の一定な有機粉粒製品を製造することができる。
【0025】
酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物は、残渣粉粒、同残渣粉粒1t当たり1リットルないし3リットルの酢酸を主成分とする溶剤、および、同残渣粉粒1t当たり1m3の常温の水の混合物であり、より具体的には、残渣粉粒、同残渣粉粒1t当たり1リットルないし3リットルの酢酸を主成分とする溶剤、および、同残渣粉粒1t当たり1m3の常温の水を溶融槽に投入、撹拌した直後であって、未だ化学的反応を生じていない状態のものである。
酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物は、それに含まれる酢酸を主成分とする溶剤の混合比が、残渣粉粒1t当たり1リットル未満の場合には、残渣粉粒を溶融するのが困難なものとなるか、または、充分に溶融するのに長時間を要するものとなってしまい、溶融処理の効率を悪化させてしまうことが懸念されるものであり、また、酢酸を主成分とする溶剤の混合比が、残渣粉粒1t当たり3リットルを超えた場合には、該酢酸を主成分とする溶剤の使用量が増加し、再生処理の経費が嵩み、その分、経済的優位性が損なわれてしまうという欠点が生じてしまう虞がある。
【0026】
水は、酢酸を主成分とする溶剤が、残渣粉粒を効率良く溶融可能となる常温のものが、同残渣粉粒1t当たり1m3、溶融槽に注入されなければならず、常温未満の水を溶融槽に注入すると、溶融を促進する効果が得られず、また、常温を超えた温水を溶融槽に注入すると、溶剤の主成分である酢酸が揮発したり、引火したりしてしまう虞がある。
常温とは、室温または実施地域の年間の平均気温の範囲とすることができる外、15℃ないし45℃とすることができ、表現を変えて示すならば、作業安全性を確保するよう、0℃ないし酢酸の引火点(58.7℃)よりも低い55℃とするのが良く、より残渣粉粒の溶融を促進するには、酢酸(90%以上)の融点(8.2℃~16.7℃)ないし引火点(58.7℃)より低い55℃とすることができる。
残渣粉粒1t当たり1m3未満の常温の水が、溶融槽に注入された場合には、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物の密度が高すぎて撹拌、曝気処理が困難なものとなってしまい、溶融処理の効率が低下してしまう虞があり、残渣粉粒1t当たり1m3を超える量の常温の水が、溶融槽に注入された場合には、酢酸溶剤の濃度が薄まり過ぎてしまい、充分な溶融処理効果を得るのが困難になってしまう虞がある。
【0027】
ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物は、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を曝気処理し、同酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物が、充分な細かさの粒径まで溶融処理されてなるものであり、より具体的には、後述する実施例にも示しているように、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を撹拌、曝気処理し、同酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物を24時間ないし48時間に亘り、直径2mm以下となるよう溶融処理されてなるものである。
【0028】
排液と溶融有機粉粒は、ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物を分離処理して得られたものであり、遠心分離、濾過分離、加熱蒸発による分離などの各種分離法を利用することができるが、その作業効率および経済性を考慮すると、後述する実施例にも示している通り、透水フィルターを用いて分離するのが良い。
溶融有機粉粒は、乾燥処理されることによって有機粉粒製品とされ、乾燥処理には、乾燥機を用いるのが望ましく、乾燥機は、除湿機構、加熱機構、減圧機構、冷蔵機構などの機能を有するものとすることができる外、送風機や撹拌機などを組み合わせたものなどとすることが可能であり、さらに、自然乾燥するものとすることができ、乾燥処理された該溶融有機粉粒は、有機粉粒製品(飼料や肥料などの有価有機物)となる。
ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物から分離された排液は、一般排水基準を満たすよう浄化処理され、浄化排水とされた上、下水道に排水されるものとしなければならない。
【0029】
再生処理プラントは、搬入された脱臭残渣に破砕処理、溶融処理などの加工処理を加え、最終的に有機粉粒製品に再生処理可能とする機能を分担し、その建屋に脱臭残渣の搬入口を有し、同建屋内には、粉砕機、上水道、水中ポンプを有する溶融槽、分離機、保管庫、浄化槽、搬出口などが設けられたものとすべきであり、より具体的には、後述する実施例に示すように、建屋に脱臭残渣の搬入口を有し、同建屋内には、スパイラル送りコンベアー、粉砕機、上水道、ボイラー、撹拌機および水中ポンプを有する溶融槽、分離機としての透水フィルター、乾燥機、保管庫、浄化槽、搬出口、休憩室などが設けられたものとするのが望ましく、さらに、吸排気塔、吸排気装置が設けられたものとし、該浄化槽は、その上流がわから下流がわに向け、排水沈殿槽、中和処理槽、浄化水排出槽が順次接続されてなるものとするのが良い。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図面は、この発明の養殖残渣の再生処理方法、それによる有機粉粒製品およびその再生処理プラントの技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
【
図1】この発明の再生処理プラントを示す平面図である。
【
図3】この発明のホタテ養殖残渣の再生処理方法を示すフローチャートである。
【実施例0031】
図1に示す事例は、建屋10内には、同建屋10の搬入口13に臨ませたスパイラル送りコンベアーSCが配され、該パイラル送りコンベアーSCの吐出端に粉砕機2が配され、該粉砕機2の突出口20に、水中ポンプ5を有した溶融槽3が配され、該水中ポンプ5の吐出端51に透水フィルター6が配され、該透水フィルター6の近傍に乾燥機7が配され、該乾燥機7の近傍には保管庫70が配され、該保管庫70の近傍に当該建屋10の搬出口16が設けられ、当該透水フィルター6の下部から延伸された排液管路60に浄化槽8が接続され、同浄化槽8の下流端が外部の排水路83に接続されてなる、この発明の養殖残渣の再生処理方法に利用する再生処理プラントにおける代表的な一実施例を示すものである。
【0032】
図1および
図2からも明確に把握できるとおり、この発明の養殖残渣の再生処理方法を実施するに当たり、この発明の再生処理プラント1に加え、海中棲生付着物である養殖残渣が陸揚げされる漁港の近くか、同漁港と該再生処理プラント1との間か、または、該再生処理プラント1の近くかの何れか、例えば、漁港の近隣に残渣集積所CPが設置されており、該残渣集積所CPは、横幅4.0m、奥行き4.5mの鉄筋コンクリート製の床FL、前面が出納口TSとして開口された平面コ字形の高さ4.0mの鉄筋コンクリート製の周壁PW、および、金属板製の片流れ屋根SRが設けられ、該床FLは、出納口TS(前方)に向けて排水用の緩やかな下り勾配を有し、その出納口TSに臨む前方位置には左右幅に渡り、集水桝WBが凹設されたものとされたものとなっている。
片流れ屋根SRは、開閉可能なものとすることができ、例えば、キャンバスや合成樹脂製の屋根シート、または、その他の軟質・防水屋根シート(何れも図示せず)などの何れかが張設され、さらに、図示しない巻取り・巻戻し機構が設けられ、該巻取り・巻戻し機構が操作されると、屋根シートが開閉操作されるものに置き換えることができる。
【0033】
残渣集積所CPとは別の敷地に設置された、この発明の再生処理プラント1は、その建屋10が、鉄筋コンクリート製の床11、周壁12、および、広い空間を作るトラス構造、アーチ構造、吊り構造、シェル構造、空気膜構造などの何れかからなる屋根を有し、該建屋10の一角の周壁12に、搬送車両などの重機類が安全に通過できる大きさの養殖残渣用の搬入口13が開口され、該搬入口13に臨む屋内がわの床11には、搬入された養殖残渣の重量を計測する計量機14が設けられたものとすることができるが、バキューム車などのような計量機能を備えた車両によって搬送する場合などは、該計量機14の設置は不要となる。
【0034】
搬入口13の屋内がわには養殖残渣用の搬入室15が設けられ、同搬入室15内の搬入口13とは反対がわとなる位置には、スパイラル送りコンベアーSC(株式会社ホーライ社製)の取込み端のホッパー部HPが配され、該搬入室15内から建屋10内の中央がわに延伸された同スパイラル送りコンベアーSCの吐出端に、粉砕機2が配され、同粉砕機2の吐出口20には、複数の撹拌機30,30,……(阪和化工機株式会社製 縦型撹拌機:HSL7607-17)を有する溶融槽3が設けられ、該溶融槽3には、上水道40から温水ボイラー41を経由して常温の水を計量および供給可能な水量計を有する給水バルブおよび給水口4が設けられている。
【0035】
さらに、溶融槽3には、水中ポンプ5(寺田ポンプ製作所製SA150-C型)が設置され、該水中ポンプ5から延伸された圧送配管50の吐出端51下には、粉粒成分を留め水分を透過する透水フィルター6が設けられ、建屋10内の該透水フィルター6に近接する位置には、乾燥機7が配され、同乾燥機7の送出口に対峙する位置に、有機粉粒製品用の保管庫70が、その搬入口を該乾燥機7の送出口に向けるよう設置され、同保管庫70の搬入口とは反対がわとなる搬出口に臨む、建屋10の周壁12に、有機粉粒製品を出荷する搬出口16が開設され、当該建屋10内の同搬出口16の近くには、作業者用の休憩室17が配されたものとなっている。
当該水中ポンプ5は、加圧機能がさらに高められたポンプ、例えば、鶴見製作所製の高圧ジェットポンプHPJ―E型に置き換えられたものとし、ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物中の溶融有機粉粒をさらに破砕、微細化しながら透水フィルター6まで圧送するようにしたものとすることができる。
【0036】
また、透水フィルター6の下流がわには、排液管路60の上流端が接続され、同排液管路60の中途部が床11下に埋設され、同下流端が建屋10の屋外まで延伸され、同建屋10屋外の同敷地内に埋設された浄化槽8の排水沈殿槽80に接続されたものとされ、該浄化槽8は、同排水沈殿槽80に中和処理槽81および浄化水排出槽82が、上流がわから下流がわに向け、順に接続され、該浄化水排出槽82の吐出口が、外部の排水路83に接続されたものとなっている。
【0037】
(実施例1の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の再生処理プラント1の一例を利用し、この発明の養殖残渣の再生処理方法、および、それによって製造された有機粉粒製品の構成について、以下に示して行くこととする。
図1ないし
図3からも明確に把握できるとおり、この発明の養殖残渣の再生処理方法は、養殖場にて漁獲されたホタテの成貝が漁港に水揚げされ、該成貝の洗浄・選別過程にて、同成貝の主に上の殻の外側面に着床、共生するムラサキイガイ、キヌマトガイ、ミミヅガイ、クラゲ、ヒドロ虫、フジツボ、褐藻アミクサ、珪藻類などを剥離処理した海中棲生付着物、および、ホタテの成貝と同種の未成貝、波などの影響を受けぶつかりあったりして損傷した損傷貝、斃死した斃死貝、および、生育過程で変形を生じた貝などのホタテの不良貝類を含む養殖残渣を、バケットタイヤローダーなどを用いて残渣集積所CPに集積する(a)。
【0038】
残渣集積所CPに集積した養殖残渣に対し、S.T.C溶剤(酢酸90%以上:株式会社昭和電工製 PH3.3溶融液)を水道水で100~500倍に希釈調整した脱臭剤としてのS.T.C溶剤水溶液を、噴霧器を用いて万遍悪散布し、脱臭処理を行い脱臭残渣とし、酢酸生成菌、メタン細菌、硫酸還元菌の嫌気性微生物の繁殖を抑制し、有機物類の分解によるアンモニアの発生を阻止し、悪臭の発生を防止すると共に、害虫の発生およびネズミやカラスを寄せ付けなくし、次工程に移行するまでの期間に亘って衛生的に保管する(b)。
【0039】
再生処理プラント1へ向けて搬出する際には、バキューム車を用いて脱臭残渣の積載量を計量して搬出することとなり、該再生処理プラント1に計量機14を設置する必要がなく、例えば、バケットタイヤローダーおよびダンプトラックなどの計量機能を有さない車両で搬送する場合には、計量機14の設置が必要となり、バキューム車によって該再生処理プラント1の搬入口13に搬入(c)した場合には、ホッパー部HPに直接、脱臭残渣を供給するようにすることができ、また、脱臭残渣を搬入室15内に一旦集積し、バケットタイヤローダーなどを用いてホッパー部HPに投入するようにすることが可能である。
【0040】
ホッパー部HPより投入された脱臭残渣は、スパイラル送りコンベアーSCの起動によって螺旋状のブレードの回転に伴い破砕されながら自動搬送され、粉砕機2に供給され、同粉砕機2によって直径3mm以下まで粉砕され、残渣粉粒とされ(d)、粉砕された該残渣粉粒は、同粉砕機2の吐出口20から溶融槽3に供給されることとなる(e)。
これら脱臭残渣は、当該残渣集積所CPから搬出され、再生処理プラント1に搬入され、ホッパー部HPに投入され、スパイラル送りコンベアーSCを通じて粉砕機2に供給され、残渣粉粒とされ(d)、該粉砕機2から溶融槽3に投入(e)されるまでの間に渡り、悪臭の発生を抑制されるから、再生処理プラント1内、および、再生作業に従事する作業者の作業環境を衛生的に保つことができる。
【0041】
溶融槽3に投入(e)された残渣粉粒は、同残渣粉粒1t当たり1リットルないし3リットルに相当する量のS.T.C溶剤(酢酸90%以上:(株)昭和電工製 PH3.3溶融液)が、
図1中の実線矢印Bに示すよう投入された後、撹拌機30,30,……を作動させ、酢酸溶剤・残渣粉粒混合物とされ(f)、さらに、該溶融槽3に対し給水口4より、残渣粉粒1t当たり1m
3の常温(例えば、15℃ないし45℃)の水道水が注入され、酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物とされる(g)。
給水口4より供給される水道水が、常温(例えば、15℃ないし45℃)より低い場合には、温水ボイラー41を作動させ、常温(例えば、15℃ないし45℃)まで水温を上昇させた上、該溶融槽3に注入するようにする。
【0042】
溶融槽3内の酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物は、常温以上の温度に保たれると、より効率的に溶融が進み、さらに、例えば数時間置き毎など、間欠的に撹拌機30,30,……を作動させ、該酢酸溶剤・水・残渣粉粒混合物に対し曝気処理を施し(h)、より効果的に溶融を促進することが可能となり、24時間ないし48時間に亘り溶融処理されると、直径2mm以下のゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物となる(j)。
【0043】
ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物が、直径2mm以下まで溶融された後、溶融槽3の水中ポンプ5を起動させ、圧送配管50を通じ、該ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物を透水フィルター6に供給し、同ゲル状カルシウム溶液・溶融有機粉粒混合物が、排液と溶融有機粉粒とに分離処理される(k)。
【0044】
透水フィルター6上に残された溶融有機粉粒は、バケットタイヤローダー、フォークリフト、ドラム缶リフターまたは台車などを用いて乾燥機7に供給し、乾燥処理し(m)、同乾燥処理(m)後の有機粉粒製品を、バケットタイヤローダー、フォークリフト、ドラム缶リフターまたは台車などを用いて保管庫70へ移送し、乾燥状態を保つよう保管し、注文に応じて、該有機粉粒製品を該保管庫70から搬出口16を通じて出荷されることとなる(n)。
【0045】
また、当該透水フィルター6によって分離処理(k)された排液は、排液管路60を通じて浄化槽8の排水沈殿槽80に送液され、中和処理槽81にて水酸化カルシウムを投入され、中性とするようPH調整を行うなどし、一般排水基準を満たす水質まで浄化処理された後(p)、浄化水排出槽82を経て、当該再生処理プラント1の敷地外の一般の排水路83に放流されることとなる(q)。
【0046】
(結 び)
叙述の如く、この発明の養殖残渣の再生処理方法、それによる有機粉粒製品およびその再生処理プラントは、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも実施も容易で、従前までは殆ど再生利用されることなく、産業廃棄物として処分せざるを得なかった養殖残渣を、付加価値に優れた有機粉粒製品へと再生し、しかもその再生処理に要する作業工数を大幅に簡素化し、再生処理作業者への作業負担を大幅に軽減することができる上、希釈された溶剤を利用した溶融処理を採用することによってより経済的なものとなり、該溶剤がもつ脱臭効果によって周辺環境および作業環境を格段に衛生的なものに改善することができるから、養殖残渣の廃棄処分とその処理費用の負担に永年悩まされきた養殖漁業者は元より、漁業協同組合、魚介類加工・販売業界、および漁港周辺地域の住民にも高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。