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特開2023-50494ミスト装置、及びこれを備えたミストシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050494
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】ミスト装置、及びこれを備えたミストシステム
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/06 20060101AFI20230404BHJP
   A61H 33/10 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A61H33/06 Q
A61H33/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160617
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100159846
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 尚
(72)【発明者】
【氏名】原島 立成
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 元太
(72)【発明者】
【氏名】碇 洋平
(72)【発明者】
【氏名】牧 愛子
(72)【発明者】
【氏名】大江 俊春
【テーマコード(参考)】
4C094
【Fターム(参考)】
4C094AA01
4C094BA18
4C094DD09
4C094DD14
4C094EE03
4C094EE20
(57)【要約】
【課題】使用者の顔付近を冷やすことができ、ミスト入浴時の使用者の快適性を向上できるミスト装置を提供する。
【解決手段】本発明のミスト装置1は、ミストを生成するミスト生成部8と、上方が開放された滞留空間を形成する浴槽本体6内に、ミスト生成部により生成されたミストを供給するミスト供給部10と、を備え、ミスト供給部から供給されたミストがミストの立上雲状体を浴槽本体の溢れ部より上方まで立ち上がるように形成した後、供給されたミストがミストの滞留層Cを浴槽本体の滞留空間4内に形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽本体に用いられるミスト装置であって、
ミストを生成するミスト生成部と、
上方が開放された滞留空間を形成する上記浴槽本体内に、上記ミスト生成部により生成されたミストを供給するミスト供給部と、を備え、
上記ミスト供給部から供給されたミストがミストの立上雲状体を上記浴槽本体の溢れ部より上方まで立ち上がるように形成した後、供給されたミストがミストの滞留層を上記浴槽本体の上記滞留空間内に形成する、ミスト装置。
【請求項2】
上記ミスト装置は、上記ミスト供給部から供給されたミストが上記浴槽本体内から上方に向かう上昇気流を利用してミストの立上雲状体を上記浴槽本体の溢れ部より上方まで立ち上がるように形成するように構成される、請求項1に記載のミスト装置。
【請求項3】
上記ミスト装置は、上記浴槽本体内に貯留される水の温度とミストの供給開始前の上記浴槽本体が使用される浴室内の温度との温度差により上記浴槽本体内から上方に向かう上昇気流を形成させるように構成されている、請求項2に記載のミスト装置。
【請求項4】
上記ミスト装置は、
供給されたミストがミストの滞留層を上記浴槽本体の上記滞留空間内に形成した後、
上記滞留空間内のミストの一部を上記浴槽本体の水の溢れ部よりも上方まで上昇させるように構成されている、請求項1乃至3の何れか1項に記載のミスト装置。
【請求項5】
上記ミスト装置は、上記ミスト供給部から供給された上記浴槽本体内のミストの雰囲気温度と、ミストの滞留層を形成している状態における上記浴槽本体が使用される浴室内の温度との温度差により上記浴槽本体内のミストに上方に向かう上昇気流を生じさせるように構成されている、請求項4の何れか1項に記載のミスト装置。
【請求項6】
上記ミスト装置は、ミストの滞留層を上記浴槽本体の上記滞留空間内に形成した上で、上記浴槽本体が配置される浴室内の床面にも上記浴槽本体内からミストを供給する、請求項1乃至5の何れか1項に記載のミスト装置。
【請求項7】
ミストの滞留層の上部側の滞留境界面は、上記浴槽本体の溢れ部よりも高い位置に形成される、請求項6に記載のミスト装置。
【請求項8】
上記ミスト供給部の下端は上記浴槽本体の溢れ部より上方に配置される、請求項7に記載のミスト装置。
【請求項9】
ミストシステムであって、
請求項1乃至8の何れか1項に記載のミスト装置と、
上記ミスト装置の上記ミスト供給部から供給されるミストを受け入れる上記滞留空間を形成する上記浴槽本体と、を備えるミストシステム。
【請求項10】
上記浴槽本体の上記ミスト供給部と対向する内側側壁は、上方に向けて外側に傾斜するように形成されている、請求項9に記載のミストシステム。
【請求項11】
上記ミスト装置の上記ミスト供給部は、上記浴槽本体の短辺側に配置される、請求項9又は10に記載のミストシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミスト装置に係り、特に、浴槽本体に用いられるミスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、サウナ浴をするための浴槽サウナ装置が知られており、このような浴槽サウナ装置は、ミストを用いたサウナ空間を形成するために浴槽本体の上部に設けられる浴槽蓋を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-018130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような浴槽サウナ装置においては、サウナ空間を形成するために浴槽蓋が必要であることから、使用者の位置が拘束されてしまい快適性が損なわれると共に、使用者の利便性に欠けるという問題があった。
【0005】
これに対し、本発明の発明者らは、浴槽蓋を省略して上方が開放された浴槽本体内にミストを滞留させることに対し鋭意研究をおこなった。
【0006】
しかしながら、浴槽蓋を省略して浴槽本体内にミストを滞留させようとする場合、滞留するミストが浴槽本体内に座っている使用者の顔を温めすぎるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、使用者の顔付近を冷やすことができ、ミスト入浴時の使用者の快適性を向上できるミスト装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一実施形態は、浴槽本体に用いられるミスト装置であって、ミストを生成するミスト生成部と、上方が開放された滞留空間を形成する上記浴槽本体内に、上記ミスト生成部により生成されたミストを供給するミスト供給部と、を備え、上記ミスト供給部から供給されたミストがミストの立上雲状体を上記浴槽本体の溢れ部より上方まで立ち上がるように形成した後、供給されたミストがミストの滞留層を上記浴槽本体の上記滞留空間内に形成することを特徴としている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ミスト供給部から供給されたミストがミストの立上雲状体を上記浴槽本体の溢れ部より上方まで立ち上がるように形成するので、浴槽本体に座ってミスト発生装置を使用する使用者の顔の高さまでミストの立上雲状体が形成される。これにより、立上雲状体のミストの一部が気化する際の気化熱により使用者の顔付近を冷やすことができると共に、身体をミストの滞留層によりミスト浴として温めることができる。従って、ミスト浴時の使用者の快適性を向上できる。
【0009】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト装置は、上記ミスト供給部から供給されたミストが上記浴槽本体内から上方に向かう上昇気流を利用してミストの立上雲状体を上記浴槽本体の溢れ部より上方まで立ち上がるように形成するように構成される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置は、ミスト供給部から供給されたミストが上記浴槽本体内から上方に向かう上昇気流を利用してミストの立上雲状体を上記浴槽本体の溢れ部より上方まで立ち上がるように形成するように構成される。これにより、ミストの立上雲状体を上記浴槽本体から立ち上がるように形成できる。
【0010】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト装置は、上記浴槽本体内に貯留される水の温度とミストの供給開始前の上記浴槽本体が使用される浴室内の温度との温度差により上記浴槽本体内から上方に向かう上昇気流を形成させるように構成されている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ミスト装置は、上記浴槽本体内に貯留される水の温度とミストの供給開始前の上記浴槽本体が使用される浴室内の温度との温度差により上記浴槽本体内から上方に向かう上昇気流を形成させる。これにより、ミストの立上雲状体を形成するための構造物を浴槽本体6内に物理的に配置することなく、ミストの立上雲状体を上昇気流により上記浴槽本体から立ち上がるように形成できる。
【0011】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト装置は、供給されたミストがミストの滞留層を上記浴槽本体の上記滞留空間内に形成した後、上記滞留空間内のミストの一部を上記浴槽本体の水の溢れ部よりも上方まで上昇させるように構成されている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置は、供給されたミストがミストの滞留層を上記浴槽本体の上記滞留空間内に形成した後、上記滞留空間内のミストの一部を浴槽本体の水の溢れ部よりも上方まで上昇させるように構成されている。これにより、滞留層が形成された後の滞留空間内のミストの一部が溢れ部よりも上方まで上昇して気化され、この気化熱により使用者の顔付近を冷やすことができると共に、身体をミストの滞留層によりミスト浴として温めることができる。従って、ミスト浴時の使用者の快適性をより向上できる。
【0012】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト装置は、上記ミスト供給部から供給された上記浴槽本体内のミストの雰囲気温度と、ミストの滞留層を形成している状態における上記浴槽本体が使用される浴室内の温度との温度差により上記浴槽本体内のミストに上方に向かう上昇気流を生じさせるように構成されている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ミスト装置は、上記ミスト供給部から供給された上記浴槽本体内のミストの雰囲気温度と、ミストの滞留層を形成している状態における上記浴槽本体が使用される浴室内の温度との温度差により上記浴槽本体内のミストの一部を上昇させる上昇気流を生じさせるように構成されている。これにより、ミストの立上雲状体を形成するための構造物を浴槽本体6内に物理的に配置することなく、浴槽本体内のミストを上昇気流により上記浴槽本体から上昇させやすくできる。
【0013】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト装置は、ミストの滞留層を上記浴槽本体の上記滞留空間内に形成した上で、上記浴槽本体が配置される浴室内の床面にも上記浴槽本体内からミストを供給する。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置は、ミストの滞留層を形成した上で、浴槽本体が配置される浴室内の床面にも浴槽本体内からミストを供給できる。これにより、浴室内の床面からもミストが気化でき、その気化熱により浴室内の空間をより効率よく冷却できる。よって、浴槽本体から出ている使用者の顔をより冷やすことができると共に、身体をミストの滞留層によりミスト浴として温めることができる。従って、ミスト入浴時の使用者の快適性をより向上できる。
【0014】
本発明の一実施形態において、好ましくは、ミストの滞留層の上部側の滞留境界面は、上記浴槽本体の溢れ部よりも高い位置に形成される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミストの滞留層の滞留境界面は、上記浴槽本体の溢れ部よりも高い位置に形成される。これにより、よって、ミスト滞留時において、使用者の身体を浴槽本体の溢れ部よりも高い位置のミストの滞留境界面までミスト入浴として温めることができる。さらに、浴室内の床面にミストを供給することができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト供給部の下端は上記浴槽本体の溢れ部より上方に配置される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ミスト供給部の下端は上記浴槽本体の溢れ部より上方に配置される。これにより、ミスト供給部の下端が溢れ部よりも下方に位置する場合に比べて、少ないミスト流量で滞留境界面を溢れ部よりも高い位置に形成しやすくできる。
【0016】
本発明の一実施形態において、好ましくは、ミストシステムであって、請求項1乃至8の何れか1項に記載のミスト装置と、上記ミスト装置の上記ミスト供給部から供給されるミストを受け入れる上記滞留空間を形成する上記浴槽本体と、を備える。
【0017】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記浴槽本体の上記ミスト供給部と対向する内側側壁は、上方に向けて外側に傾斜するように形成されている。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記浴槽本体は、上記ミスト供給部と対向する内側側壁が上方に向けて外側に傾斜するように形成されている。これにより、上記ミスト供給部から供給されたミストが内側側壁に沿って上記浴槽本体の溢れ部より上方まで立ち上がりやすくでき、ミストの立上雲状体を形成しやすくできる。
【0018】
本発明の一実施形態において、好ましくは、上記ミスト装置の上記ミスト供給部は、上記浴槽本体の短辺側に配置される。
このように構成された本発明の一実施形態においては、上記ミスト装置の上記ミスト供給部は、上記浴槽本体の短辺側に配置される。これにより、ミスト供給部は、浴槽本体の長辺に向けてミストを供給でき、仮にミストが浴槽本体の上方に向けて上昇したとしても浴槽本体の上方に浮遊しやすくできる。逆に、ミスト供給部が浴槽本体の長辺側に配置される場合には、上昇するミストが浴槽本体外の洗い場側に向かいやすくなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のミスト装置によれば、使用者の顔付近を冷やすことができ、ミスト入浴時の使用者の快適性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムの概略斜視図である。
図2】本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムの概略構成図である。
図3】本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムを浴槽本体の長辺方向に沿って切った概略断面図である。
図4】本発明の一実施形態によるミスト装置の内部構成を示す概略構成図である。
図5】本発明の一実施形態によるミスト装置の内部構成を示すブロック図である。
図6】本発明の一実施形態によるミスト装置からのミスト供給動作を説明する図である。
図7】本発明の一実施形態によるミスト装置からのミスト供給動作を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態によるミスト装置からのミスト供給動作を説明する図である。
図9】本発明の一実施形態によるミスト装置からのミスト供給動作を説明する図である。
図10】本発明の一実施形態によるミスト装置からのミスト供給動作を説明する図である。
図11】本発明の一実施形態によるミスト装置からのミスト供給動作を説明する図である。
図12】本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムにおいて滞留空間内に滞留状態を形成するかしないかの条件を示す図である。
図13】本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムにおいて滞留空間内に滞留状態を形成するかしないかの条件を示す図である。
図14】本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムにおけるミストの雰囲気温度の測定方法、水温の測定方法及び浴室内の室温の測定方法を説明する図である。
図15】本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムにおけるミストの流量の計測装置及び計測方法を説明する図である。
図16】本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムにおけるミストの粒径の計測装置の斜視図である。
図17】本発明の一実施形態によるミスト装置のミスト供給部から供給されるミストの粒径の計測装置の上面図である。
図18】本発明の一実施形態によるミスト装置のミスト供給部から供給されるミストの粒径を、粒子径分布測定装置により測定した粒子径分布データの一例を示す図である。
図19】本発明の一実施形態によるミスト装置のミスト供給部から供給されるミストが浴槽本体内において滞留しているかの判定に用いる透過率の測定装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本明細書に開示する本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下の説明から、当業者にとって、本発明の多くの改良や他の実施の形態が明らかである。従って、以下の説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更することができる。
【0022】
以下、添付図面を参照して本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムについて説明する。
図1は本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムの概略斜視図であり、図2は本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムの概略構成図であり、図3は本発明の一実施形態によるミスト装置を備えたミストシステムを浴槽本体の長辺方向に沿って切った概略断面図である。
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態によるミスト装置1を備えたミストシステム2は、浴室3に設けられる。ミストシステム2は、吐水された水を受ける水受け部分を有する水受け機器である。また、ミストシステム2は、水を使う場所の機器として使用されるいわゆる水回り機器として機能する。
【0023】
ミスト装置1は、浴槽本体6に用いられる。浴室3は、箱型の空間であり、内部で水を使用するため一定程度密閉された室内空間5を形成している。水には、外気温(常温)より温度の高い水、加熱された水(いわゆる湯)も含まれる。ミストシステム2は、ミスト装置1の後述するミスト供給部から供給されるミストを受け入れる滞留空間4を形成する浴槽本体6を備えている。ミストシステム2には、水の供給を行う供給装置7が設けられている。ミストシステム2は、後述するように、浴槽本体6内に、室温よりも加温された温水層X(図2参照)と、温水層の上方の滞留空間4内において加温されているミストにより形成されたミストの滞留層Cと、が形成されるように構成されている。浴室3は、浴槽本体6のみが配置される部屋に限られず、トイレ、手洗い機器、洗面台、又はこれらの組合せを備えていてもよい。
【0024】
浴槽本体6は、ミストシステム2の浴槽本体6が配置される室内空間5に向けて上方が開放された滞留空間4を形成する。浴槽本体6は、浴槽であり、内側の滞留空間4内に水が貯水できるようになっている。浴槽本体6は、上面視で長方形に形成され、長方形の長辺側に長辺側部分6dが形成され、短辺側に短辺側部分6eが形成されている。短辺側部分6eは、長辺側部分6dに比べて浴槽の幅が短くなっている。浴槽本体6のミスト供給部10と対向する短辺側側壁6f(図3参照)は、上方に向けて外側に傾斜するように形成されている。浴槽本体6は、例えば200L~500Lの範囲内の容積を有している。例えば、浴槽本体6は、300Lの容積であり、浴槽本体6の温水層Xの容積は、130Lであり、滞留空間4の容積は170L(水が貯水されていない場合は例えば300L)である。
【0025】
滞留空間4は、浴槽本体6の内側において概ね直方体形状に形成される空間である。図3に示すように使用者Aが入浴する際には、滞留空間4の下部側に34℃乃至45℃の水Bが貯水され(温水層Xが形成され)、使用者Aが座った状態で入浴することができる。なお、後述するように、図3においては、滞留空間4内の水Bの上方にはミストが滞留した状態(ミストの滞留層Cが形成されている状態)となっている。滞留空間4は、浴槽本体6の上端部6aまで形成され、天面側が開口されている。浴槽本体6は、滞留空間4の天面を覆うような蓋を省略した状態で、後述するようにミストが滞留空間4内に滞留されるようになっている。なお、滞留空間4内に水Bが貯水されずにミストが滞留されていてもよい。浴槽本体6の形状は実施形態のような箱状に限定されず、滞留空間を形成できる形状であればよい。例えば、浴槽本体6が上面視で円形や楕円形に形成され、内側にボウル状の滞留空間が形成されていてもよい。浴槽本体6の底面は使用者が寝浴姿勢や座り姿勢に近い姿勢をとれるように斜めに形成されていてもよく、底面に段部が形成されていてもよく又は形成されていなくてもよい。浴槽本体6の壁部の頂辺部が、一定の高さで水平に形成されている必要はなく高さが変化するように形成されていてもよい。例えば、浴槽本体6の壁部の頂辺部が、側面視で、斜め上方又は下方に延びる形状、一部が下方に凹む弓状に延びる形状や、略直角を形成するような凹凸形状とされてもよい。ミストシステム2は、ミスト供給部から供給されたミストが滞留空間4内に滞留するように構成されている。
【0026】
供給装置7は、浴槽本体6や洗い場側の水栓装置等に水を供給する供給装置である。供給装置7は、例えば給湯機であり、水道等の供給源から供給され加温されていない水や、加熱された水(いわゆる湯)を供給することができる。供給装置7は、浴槽本体6に形成された給水口6gと接続され、給水口6gから浴槽本体6内に水を供給できるように構成されている。供給装置7は、給水路14を介してミスト装置1とも接続され、水をミスト装置1にも供給できる。なお、ミスト装置1は、供給装置7を介さずに、水道等の給水源と直接に接続されていてもよい。また、ミスト装置1には、供給装置7と給水源の両方が接続されていてもよい。供給装置7には、水道等の給水源から水が供給される。供給装置7は、給水制御部25と電気的に接続されている。本実施形態の供給装置7は、浴槽本体6内の水を取水口である給水口6gから取込んだ上で内部でこの水を加熱して浴槽本体6内に戻す追い焚き装置としての機能を有している。追い焚き装置は、浴槽本体6内にすでに貯水されている水を再加熱する。なお、供給装置7は、追い焚き装置としての機能を有していなくともよい。なお、供給装置7は、給水口6gから浴槽本体6内に水を供給しているが、変形例として、供給装置7は、浴槽本体6に設けられた浴槽本体への給水用の水栓装置と接続され、この水栓装置から浴槽本体6内に水を供給してもよい。なお、浴槽本体6への給水用の水栓装置は、供給装置7を介さずに、給水源と直接接続されていてもよい。また、水栓装置には、供給装置7と給水源の両方が接続されていてもよい。
【0027】
次に、図1乃至図5により、上述した本発明の一実施形態によるミスト装置をより詳細に説明する。
ミストシステム2は、ミスト装置1を備える。図3に示すように、ミスト装置1は、貯水された水からミストを生成するミスト生成部8と、ミストを浴槽本体6内に供給するミスト供給部10と、浴室3内の室温を調整するように温風や冷風を送出可能な浴室空調機80(図1参照)と、ヒータ20と、ヒータ20を制御するヒータ制御部21と、使用者の操作入力を受け付けるミスト装置操作部28と、ミスト生成部8におけるミストの生成やミスト供給部10によるミストの供給を制御するミスト装置制御部26と、を備えている。ミスト装置1は、横長の箱型のケーシング9(図4参照)内にミスト生成部8が設けられ、ミスト生成部8と接続されたミスト供給部10がケーシング9の正面側から下方に延びるように形成されている。
【0028】
ミスト生成部8は、加熱された水から加温されたミストを生成する、又は、水から生成されたミストを加熱することで加温されたミストを生成する。よって、ミスト生成部8は、浴室内の室温よりも加温されているミストを生成する。よって、加温されているミストにはミスト生成後に加温されたものも含まれる。ミスト生成部8は、浴槽本体6の短辺側の短辺側部分6eの上方において壁Wに取付けられている。
【0029】
図5に示すように、ミスト生成部8は、内部に水を貯める貯水部12と、水を給水源から貯水部12に給水する給水路14と、水を貯水部12から排水管に排水する排水路16と、貯水部12の内側の底部に設けられた超音波振動子18と、貯水部12の内側に設けられた水温検知手段である水温計測器22と、貯水部12の外側に設けられた気温検知手段である室内温度計測器24(図3参照)と、貯水部12内の水の水位の上昇により、フロートが軸部上を給水規定水位まで上昇したときに給水停止信号を発信するフロートスイッチ29と、貯水部12内の水の水位が給水規定水位Q1を超えてさらに上昇し、水が上端開口部の高さ位置を上回ってオーバーフローした際には、水が上端開口部から排水管側に排水されるようになっているオーバーフロー管31と、を備えている。
【0030】
貯水部12は、直方体形状のミスト生成部8の内部の貯水空間として形成されている。貯水部12の上部に給水路14が接続され、貯水部12の下部に排水路16が接続されている。貯水部12の中央近傍の側壁にミスト供給部10が接続されている。給水路14には、給水路14を開閉する給水路電磁弁30が設けられている。給水路14は、供給装置7に接続されている。給水路電磁弁30は、給水部としてミスト生成部8内の水の温度よりも低い温度の水をミスト生成部8に供給する機能を有する。なお、供給装置7は、ミスト生成部8内の水の温度(例えば約60℃)よりも低い温度(例えば約38℃)の水をミスト生成部8に供給するようになっている。排水路16には、排水路16を開閉する排水路電磁弁32が設けられている。また、排水路16には、貯水部12から水を排水させるための排水ポンプ33が設けられている。また、オーバーフロー管31は、貯水部12内の給水側部12aに設けられている。オーバーフロー管31の上端は、給水規定水位Q1よりわずかに上方に位置し、貯水部12内の水が溢れ出ないように構成されている。貯水部12の下部には、故障等による漏水を排出する排出弁41が設けられている。
【0031】
超音波振動子18は、貯水部12内の水に超音波を発振して、液面の水を振動させ、液面に生じた水柱から水を微粒子状に分離させ、所定の粒径のミスト(霧)を生じさせることができる。超音波振動子18は、ミスト装置制御部26と電気的に接続され、超音波振動子18の超音波の発振出力、周波数等を調整することにより、発生させるミストの粒径を変更できるようになっている。超音波振動子18は、所定の発振出力によりザウタ―平均粒径が3.1μm以上且つ10μm以下となるミストを生じさせるようになっている。超音波振動子18は、所定の粒径のミストを生じさせる他の装置、例えばスチームによるミスト装置、圧力噴霧によるミスト装置、アーク放電によるミスト装置等に変更されてもよい。また、本実施形態においては、超音波振動子18は、貯水部12内に複数並んで設けられている。超音波振動子18は、ミスト装置1のケーシング内において超音波振動子18を駆動させる発振器19(図4参照)と接続されている。
【0032】
ヒータ20は、ミスト生成部8内の貯水部12の内側の水中の底部に設けられている。ヒータ20は、貯水部12内の水を加熱するように構成されている。ヒータ20は、ミスト生成部8内の貯水部12内に限られず、貯水部12内の空中に設けられてもよく、ミスト供給部10に設けられてもよい。よって、ヒータ20は、貯水部12内のミスト又は空気を加熱するように構成されていてもよい。例えば、ヒータ20は、供給装置7から供給された水(例えば40℃程度まで加温された水)を60℃以上まで加熱することができる。
【0033】
水温計測器22は、貯水部12内の水の水温を検知する。ミスト装置制御部26は、水温計測器22と電気的に接続され、ミスト装置制御部26が貯水部12内の水の水温を認識できる。水温計測器22は、例えばサーミスタである。室内温度計測器24は、浴槽本体6が配置される室内空間5の貯水部12の外側の空気の温度を検知する。ミスト装置制御部26は、室内温度計測器24と電気的に接続され、ミスト装置制御部26が室内空間5の空気の温度を認識できる。なお、ミストの供給開始前(ミスト生成部8が駆動される前)の状態においては、室内空間5の空気の温度と、滞留空間4内の空気の温度とはほぼ等しい又は比較的近い温度であると仮定されるので、ミスト装置制御部26は、室内温度計測器24が測定した室内空間5の空気の温度を、滞留空間4内の空気の温度と推定できる。
【0034】
フロートスイッチ29は、水位と連動して上下動できるフロートを有している。
フロートスイッチ29は、水位がフロート上端の給水規定水位Q1に到達したことを検知できる。また、フロートスイッチ29は、水位がフロート下端の下端水位に到達したことも検知できる。このような給水規定水位の検知と、下端水位の検知は別々のフロートにより行われていてもよい。フロートスイッチ29は、ミスト装置制御部26と電気的に接続されている。
【0035】
ミスト供給部10は、ミスト生成部8により生成されたミストを、浴槽本体6が配置される室内に向けて上方が開放された滞留空間4を形成する滞留部である浴槽本体6内に供給する。ミスト供給部10は、浴槽本体6の短辺側の短辺側部分6eの上方に配置されている。ミスト供給部は上記浴槽本体内の水の溢れ部より上方に配置される。ミスト供給部10は、図3に示す流路の断面により示されるように、ミスト生成部8から滞留空間4の一端の上部まで横向きに延びるミスト供給流路11と、ミスト供給流路11の下流端と接続され下方向きに開口する出口であるミスト供給口部13を備える。ミスト供給流路11は、正面から(滞留空間4側から)見て、横長の長方形の流路(例えば流路断面)を形成している。ミスト供給口部13は、ミスト供給流路11の下流端から下方向に延びている。ミスト供給口部13は、下方側に延びるダクト状の流路を形成している。ミスト供給口部13は、下方向きに開口する開口部を形成している。ミスト供給口部13は、その開口部の正面から見た場合(ミスト供給口部113の下方から上方を見た場合)、横長の長方形の流路(例えば流路断面)を形成している。ミスト供給口部13の下端13aは、浴槽本体6内の水の溢れ面6bより上方に配置される。よって、浴槽本体6内の水が汚水の流れとしてミスト供給口部13から上流側に侵入することを抑制できる。変形例として溢れ面6bは、浴槽本体6内に設けられたオーバーフロー口でもよい。
【0036】
ミスト供給部10は、例えば、0.03mL/min・L~1.5mL/min・Lの範囲の単位時間あたりの供給量のミストを供給できる。ミスト供給部10は、例えば、浴槽本体6の体積330Lの滞留空間4に11mL/minの単位時間あたりの供給量のミストを供給できる。また、例えば、ミスト供給部10は、他の水受け機器等の体積4.32Lの滞留空間4に6mL/minの単位時間あたりの供給量のミストを供給できる。
【0037】
ミストシステム2のミスト装置1は、滞留空間4内に滞留状態を形成するミストを滞留空間4内に供給する。ミスト装置1は、ミスト供給部10から供給されたミストが浴槽本体6の滞留空間4内に滞留されるように構成される。また、ミスト装置1は、ミスト供給部10から供給されたミストが浴槽本体6内から上方に向かう上昇気流からミストが受ける力を利用しながら、滞留状態と近い密度状態を有するミストの立上雲状体Rを上記浴槽本体の溢れ部より上方まで立ち上がるように形成した後、供給されたミストがミストの滞留層Cを上記浴槽本体6の滞留空間4内に形成するように構成される。滞留層Cは完全な層である必要は無く、ミストの雲状体が層を形成するように一定の高さに存在していればよい。ミスト装置1は、ミストの立上雲状体Rを形成する程度まで上昇しつつも、滞留状態に戻れるミストを供給している。
【0038】
浴室空調機80は、浴槽本体6の設けられた空間内の温度よりも高い温度の温風、空間内の温度よりも低い温度の冷風、空間内の温度とほぼ同じ温度の送風を送出可能である。浴室空調機80は、浴室の天井に設けられている。ミストシステム2は、浴室空調機80を制御して浴室内の温度を調整でき、浴槽本体6内に貯留される水の温度とミストの供給開始前の浴槽本体6が使用される浴室内の温度との温度差により浴槽本体6内から上方に向かう上昇気流の強さを制御できるように構成されている。温風の温度は、温風送風機84の送風口において測定される。なお、ミスト装置1は、浴室内の温度が適切な温度であるような場合には、浴室空調機80を作動させずに、上昇気流を形成させてもよい。すなわち、ミストシステム2は、必ずしも浴室空調機80を備えなくてもよい。
【0039】
給水制御部25は、浴槽本体6や洗い場側の水栓装置への水の供給を制御する。給水制御部25は、CPU及びメモリ等を内蔵し、メモリ等に記録された所定の制御プログラムに基づいて水の給水、後述する所定のモード等を実行するように接続された機器を制御する。給水制御部25は、供給装置7、操作部27、ミスト装置制御部26、浴室空調機80等と電気的に接続されている。これらの電気的な接続は、無線通信等により行われてもよい。給水制御部25とミスト装置制御部26、及び/又は操作部27等との電気的な接続は、無線通信等により行われてもよい。例えば、給水制御部25とミスト装置制御部26、及び/又は操作部27等とは、無線通信により制御されてもよい。
【0040】
給水制御部25は、ミスト装置1の動作とは独立して、浴槽本体6に水を供給するように動作できる。なお、給水制御部25は、ミスト装置制御部26と連携することにより、ミスト装置1の動作と関係して動作することも可能となっている。給水制御部25と、ミスト装置制御部26とは、相互に通信しており一つの制御部として機能している。このように、給水制御部25と、ミスト装置制御部26とは、本実施形態においては別の制御部として説明されているが、一つに統合された形態の制御部であってもよく、又はさらに細分化される等の異なる形態の制御部として存在していてもよい。
【0041】
操作部27は、浴室内の浴槽本体6の周囲の壁面に設けられている浴室操作部27aと、さらに浴室外の壁面に設けられている浴室外操作部27bとを備えている。浴室外操作部27bは例えばキッチンや廊下等に設けられている。操作部27は、無線通信等により遠隔操作可能な操作部で構成されてもよい。例えば、操作部27は、所定のプログラムを使用することにより使用者のスマートフォン等により構成されてもよい。
【0042】
ミスト装置操作部28は、使用者の操作入力をミスト装置制御部26に伝達する。ミスト装置操作部28は、浴室内の浴槽本体6の周囲の壁面に設けられている浴室操作部28aと、さらに浴室外の壁面に設けられている浴室外操作部28bとを備えている。浴室外操作部28bは例えば浴室の手前の部屋や廊下等に設けられている。ミスト装置操作部28は、無線通信等により遠隔操作可能な操作部で構成されてもよい。例えば、ミスト装置操作部28は、所定のプログラムを使用することにより使用者のスマートフォン等により構成され、インターネットを介してミスト装置制御部26と接続されてもよい。ミスト装置操作部28は、ミストを供給する場合のミストシステム2への水の貯水操作、水の温度設定等も行うことができる。ミスト装置操作部28は、供給されるミストの温度を設定できる操作機能、供給されるミストの粒径を設定できる操作機能等を有していてもよい。
【0043】
ミスト装置制御部26は、CPU及びメモリ等を内蔵し、メモリ等に記録された所定の制御プログラムに基づいてミストの生成、後述する所定のモード等を実行するように接続された機器を制御する。ミスト装置制御部26は、超音波振動子18、ヒータ20、水温計測器22、室内温度計測器24、ミスト装置操作部28、浴室空調機80等と電気的に接続されている。ミスト装置制御部26は、さらに、給水路14に設けられた給水路電磁弁30と、排水路に設けられた排水路電磁弁32とも電気的に接続され、これらを制御できる。
【0044】
ミスト装置制御部26は、制御部として、ミスト生成部を制御する機能を備えている。ミスト装置制御部26は、ミスト生成部8によりミストを生成させるミスト生成モード26aを備えている。ミスト装置制御部26は、ミスト生成モードを記憶装置に記憶されたプログラムにより実行できる。ミスト生成モードは、本実施形態において開示されているミスト生成部8の動作の全てを実行するものである必要は無く、動作のうち少なくともミストを生成させる動作を実行させるものであればよい。
【0045】
次に、図3図6乃至図11により、上述した本発明の一実施形態によるミスト装置の動作を説明する。
図3に示すように、ミスト装置1の動作の開始前の待機状態においては、浴槽本体6の滞留空間4の下半分には約38℃の水が貯溜された状態となっている。浴室3内の室内空間5の空気の温度と滞留空間4内の空気の温度とはほぼ等しい温度となっている。給水路電磁弁30及び排水路電磁弁32は閉弁されている。貯水部12内には水が無い状態となっている。超音波振動子18及びヒータ20は停止された状態である。
【0046】
使用者がミスト装置操作部28を操作しミスト装置1のミストの供給制御を開始させる。ミストの供給開始前に、室内温度計測器24は、室内空間5の空気の温度を測定し、ミスト装置制御部26は、室内空間5の空気の温度を認識する。ミスト装置制御部26は、給水路電磁弁30を開弁し、水を給水路14から貯水部12内に供給する。排水路電磁弁32は閉弁されたままである。貯水部12内に予め決められた水量の水が貯溜されると、給水路電磁弁30は閉弁される。次に、ミスト装置制御部26は、ヒータ20を作動させ、水を給水された水の水温から60℃以上まで加熱する。ミスト装置制御部26は、水が60℃以上まで加熱された後、所定の温度のミストを供給するようにミストの温度を調整する。次いで、ミスト装置制御部26は、ミスト生成モードを実行して、超音波振動子18を作動させ、貯水部12内にミストを生じさせる。
【0047】
図6においては、ミスト供給部10から滞留空間4内へのミストの供給が開始された直後の状態が示される。
貯水部12内に生じたミストは、ミスト供給部10から浴槽本体6内の滞留空間4に供給される。ミストは、矢印F1に示すように、ミスト供給部10から、ミストの自重により自由落下しながら滞留空間4内に供給される。このように、ミストが下方への移動速度以外の他の方向への移動速度を持つことが抑制されている。従って、ミストが滞留空間4内において、撹拌、拡散、上昇等の移動をしにくくされている。
【0048】
図7においては、ミストの供給開始から約数秒経過後の状態が示される。ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。供給されたミストは、水Bの水面の上方且つ滞留空間4内の低い部分に滞留を開始している。上昇気流によってミストを上昇させようとする力が、ミスト供給部10から供給されたミストの重さを超えないことによりミストが滞留空間4内に滞留しやすくなっている。よって、ミストは、滞留空間4内の比較的低い部分に滞留する。ミストは、ミスト供給部10側から徐々に供給及び追加され、滞留空間4内の水面上又は底部上においてミスト供給部10側から反対側の短辺に向けて徐々に進む。
【0049】
図8においては、図7の状態から、ミストが浴槽本体6の反対側の短辺まで到達した状態が示される。ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。
【0050】
図9に示すように、ミストが浴槽本体6の反対側の短辺まで到達した図8の状態からミストの立上雲状体Rが浴槽本体6の溢れ面6bより上方まで立ち上がるように形成される。ミスト供給部10から供給されたミストは、ミスト供給部10と反対側の短辺側部分6e側の短辺側側壁6fに沿って上昇し、上縁である溢れ面6bを超えてさらに上昇する。所定の密度のミストの集合体(立上雲状体R)が溢れ面6bより上方まで形成される。立上雲状体Rにおいては、ミストが空気中に一定以上の濃度となっている。後述するような滞留空間4外部に配置されたレーザー装置と、レーザーを受ける透過率計測装置とを立上雲状体Rの形成される場所に配置することにより、立上雲状体Rの透過率を測定し、透過率が、好ましくは少なくとも90%より小さい値とされ、より好ましくは80%~5%の範囲内の値とされ、さらに、このような測定値の透過率が1秒以上持続する場合に、所定の密度の立上雲状体Rが形成されていると判定できる。立上雲状体Rは、滞留層Cの密度に比較的近いミストの密度を有している。一定以上の密度のミストの集合体が溢れ面6bより上方まで立ち上がったものを、立上雲状体Rとしている。立上雲状体Rは、ミストの滞留層Cと連続して形成されており、立上雲状体Rは、ミストの滞留層C(ミストが滞留している部分)から上方に延びるように形成されている。
【0051】
ミストの供給開始時点から、浴槽本体6内に貯留される水の温度とミストの供給開始前の浴槽本体6が使用される浴室内の温度との温度差により浴槽本体6内から上方に向かう上昇気流が形成されている。よって、ミストが供給開始直後から上昇気流により上昇しやすくなっており、ミストが一時的に連続して上昇することにより形成される立上雲状体Rが溢れ面6bより上方に向けて形成されやすくなっている。
【0052】
図9に示すように、立上雲状体Rが溢れ面6bより約5cm~約30cmの範囲内の高さ程度上方まで立ち上がった後、一部のミストは浮遊や放散し、大半のミストは上昇気流からミストが受ける力よりも重力が大きくなり、再び徐々に浴槽本体6内の滞留空間4に向けて戻るように下降する、また一部のミストは移動の途中で気化して消滅する。溢れ面6bより上方まで立ち上った立上雲状体Rは、一部のミストが気化することにより周囲の熱を吸収して周囲を冷却する効果を有する。従って、仮に使用者の顔がこの短辺側部分6e側に近い位置にある場合、ミストの領域を使用者の顔の近傍領域に立ち昇らせることができ、立上雲状体Rの一部のミストの気化熱により、使用者の顔の周囲を冷却する効果を有する。従って、使用者の顔をやや冷却する効果を与えることができる。一方で、ミストの一部が一時的に溢れ面6bより上方まで上昇したとしても、ミストの主流が浴槽本体6から拡散しつつ立ち上り続けてしまうような流れは形成されず、一定程度上昇したとしても滞留空間4内に向けて下降する流れを形成し、ミストの主流は、滞留空間4内(主に溢れ面6bより下方の領域内)において滞留しており、滞留空間4内において滞留層Cを形成している。この間も、ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。
【0053】
図10に示すように、図9の状態からさらにミストが滞留空間4内に供給されるとともに、立上雲状体Rから下降するミストが滞留空間4内に再び戻って滞留している。
図11に示すように、ミストがさらに供給されると、増加されたミストが滞留空間4内の徐々に高い部分まで滞留されるようになる。ミスト供給部10から滞留空間4へのミストの供給は継続されている。滞留空間4内に供給されたミストが、さらに増加し、ミストが滞留空間4内の頂部(浴槽本体6の上端部6a)に近い部分まで滞留されている。ミストは、主に滞留空間4内において水Bの水面より上方且つ滞留空間4内の頂部より下方の領域に滞留している。ミストは水Bに落下して吸収されることにより消失する、又は浴槽本体6の壁面に水滴となって付着されることにより消失する、又は浴槽本体6の上端部6aの縁を超えて拡散する。消失するまでの時間はミストの粒径によって異なる。このようにミストは消失又は拡散されるものの、消失や拡散するまでに新しいミストが供給されることにより、滞留空間4内にミストの滞留層を形成できる。すなわち、ミストは滞留空間4内において緩やかに流動しつつも滞留空間4から拡散するには至らず安定的な滞留層Cを形成する。滞留層Cは、水Bの水面より上方において、一定以上の密度のミストが単位空間内に存在することにより形成される。滞留層は、白い雲状に認識される。滞留空間4の頂部までミストが満たされているように滞留層Cが視認される。滞留層Cは、滞留空間4から放散して室内空間全体に広がるミストとは区別される。
【0054】
滞留されたミストの上部側の滞留境界面66は、浴槽本体6の溢れ面6bの高さ(高さ位置M0(図3参照))に、上記浴槽本体6の深さL1に相当する高さを加えた高さ位置M1よりも下方に形成される。滞留境界面66はミストが空気中に一定以上の濃度となっている滞留層Cと、ミストが空気中に一定未満の濃度となっている空気層Jとの間の境界領域を示している。滞留境界面66は、ミストが滞留しながらある程度動いているため、上下方向にやや高さを持った領域として規定される。なお、浴槽本体6の溢れ部である溢れ面6bは、浴槽本体6の側壁のうち最も高さが低い部分、すなわち水が浴槽本体6の上限まで溜まると最初に溢れ出す部分である。
【0055】
例えば、滞留されたミストの上部側の滞留境界面66は、浴槽本体6の溢れ部である溢れ面6bの高さ位置M0よりも上方に形成されている。このとき例えば、滞留されたミストの上部側の滞留境界面66は、浴槽本体6の溢れ面6bの高さ(高さ位置M0)の200mm上方の高さ位置よりも下方に形成されてもよく、また例えば、浴槽本体6の溢れ面6bの高さ(高さ位置M0)の100mm上方の高さ位置よりも下方に形成されてもよい。このように、滞留境界面66が浴槽本体6の溢れ面6bの高さよりも高い位置となる場合には、使用者は浴槽を越える位置までのミスト入浴効果、すなわち湯船より高い高さまでの温浴効果を得ることができる。ミスト生成部8を駆動(使用)している間は、ミストが浴槽本体6内に供給されミストの滞留が継続されている。ミスト装置1は、滞留境界面66の高さ位置が、上述のような所定の高さ位置になるような、浴槽本体6内の水温と室温との温度差、ミストの粒径、ミストの供給量等を規定するように構成されている。
【0056】
供給されたミストがミストの滞留層Cを浴槽本体6の滞留空間4内に形成した後、滞留空間4内のミストの一部が浴槽本体6の水の溢れ部6Cよりも上方まで上昇される。例えば、滞留層Cの一部が盛り上がるようにして上昇して溢れ部6Cよりも上方まで上昇される。すなわち、比較的短時間において、滞留層Cから溢れ部6Cよりも上方まで立ち上がる比較的小さい立上雲状体Rが形成される。立上雲状体Rが形成されているかどうかの判定は、後述同様に透過率により判定可能である。これにより、滞留層Cが形成された後の滞留空間内のミストの一部が溢れ部6cよりも上方まで上昇されやすくなり、ミストが上昇して気化され、この気化熱により使用者の顔付近を冷やすことができると共に、身体をミストの滞留層によりミスト浴として温めることができる。
【0057】
また、図11に示すように、ミストの滞留層Cが浴槽本体6の滞留空間4内に形成された後、引き続きミスト供給部10から浴槽本体6にミストの供給を行うことで、滞留空間4内に入りきれなくなったミストを溢れさせ、ミストを浴槽本体6の隣の床面側に供給することも可能となる。これにより、浴室内の床面からもミストが気化でき、その気化熱により浴室内の空間をより効率よく冷却できる。よって、浴槽本体6から出ている使用者の顔をより冷やすことができると共に、身体をミストの滞留層Cによりミスト浴として温めることができる。使用者がミスト装置1の使用を終了する場合には、使用者はミスト装置操作部28を操作し、ミスト装置制御部26のミスト生成モードの実行が終了される。
【0058】
図11に示すように、ミストシステム2のミスト装置1による供給されるミストは、滞留空間4内に滞留状態を形成できる。このメカニズムについて説明する。
基本的なメカニズムとしては、浴槽本体6内の水温と浴室の室温との温度差ΔTによって生じる上昇気流によってミストを上昇させようとする力が、ミスト供給部10から供給されたミストの重さを超えないことによりミストが滞留空間4内に滞留される。すなわち、ミストの重さがミストを上昇させようとする力よりも大きいことにより、ミストが滞留状態を形成する。従って、ミストシステム2のミスト装置1は、このような条件を満たすミストを供給することにより、滞留空間4内にミストの滞留状態を形成しやすくできる。上昇気流は、浴槽本体6内の水温と浴室の室温との温度差ΔTによって生じるが、ミストの温度(ミストの雰囲気温度)とミストの滞留層を形成している状態における浴室の室温との温度差によっても生じる。また、ミストの重さには、ミストの粒径とミストの密度が影響する。ミストの供給量が多くなるとミストの密度が高まる及び/又はミスト同士が結合してミストの粒径が大きくなる等してミストの集合体の重さが重くなる。従って、ミストの供給量が多くなるとミストが滞留状態を形成しやすくなる。一方で、ミストの供給量が少なくなるとミストが滞留状態を形成しにくくなる。また、供給されるミストの粒径が大きくなるとミストが滞留状態を形成しやすくなる。また、滞留空間4内にミストの滞留状態を形成するためには、滞留空間4が大きいほど、ミストの供給量が多く必要となる。滞留空間4が比較的小さい場合には、ミストの供給量が少なくとも、より少ない供給量でミストを満たされやすくなり、ミストの密度が高まりやすくなるため、より少ない供給量で滞留空間4内にミストの滞留状態を形成できる。また、ミスト供給時にミストが有している運動エネルギーが大きい場合にはミストが放散しやすくなるので、ミストが滞留状態を形成しにくくなる。ミストの供給量が比較的少ない場合には、ミストが気化されやすくなるため、ミストが滞留状態を形成しにくくなる。本発明の発明者らは、このような知見を基にして、以下のように、ミストが滞留空間4内に滞留されやすくなる状態の知見を得た。
【0059】
次に、図12を参照して、ミストが滞留空間4内に滞留されやすくなる状態を説明する。図12に示すように、浴槽本体6内の水温と浴室内の室温との温度差ΔT[℃]に対する、ミストの供給流量[ml/min]を変えて、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留されるか、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成されることなくミストが滞留空間4内に滞留されるか、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となるかの評価をおこなった。このとき、ミスト供給部10の下端の溢れ面6b(上部リム部)からの高さは50mmであり、ミストのザウタ―平均粒径は、3.1μm以上且つ10μm以下となっている。なお、浴槽本体6内に水が貯水されない場合には、浴槽本体6内の水温は、浴槽本体6の温度、すなわち室温として評価される。
【0060】
図12において、ミストの供給流量[ml/min]に対し、浴槽本体6内の水温と浴室内の室温との温度差ΔT[℃]を変えて、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となるか、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留されるかの境となるポイントとなる温度差ΔT[℃]が0[℃]、7.9[℃]、11.5[℃]、17.0[℃]、22.0[℃]と見出されている。この複数の温度を通る仮想境界線P1は、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となる領域と、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域との境を示す。同様に、ミストの立上雲状体が浴槽本体6の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留されるか、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成されることなくミストが滞留空間4内に滞留されるかの境となるポイントとなる温度差ΔT[℃]が0[℃]、4.0[℃]、4.3[℃]、7.6[℃]、8.2[℃]、7.5[℃]と見出されている。この複数の温度を通る仮想境界線P2は、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域と、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域との境を示す。
【0061】
図12において、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となる領域N1においては、水温と室温との差異から生じる上昇気流が比較的強い領域であり、滞留空間4内においてミストの重さ(重力)が、上昇気流がミストに作用する力よりも小さくなっているため、ミストが上昇気流により滞留空間4より上方に浮遊及び放散されている。
ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成されることなくミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域N2においては、水温と室温との差異から生じる上昇気流が比較的弱い領域であり、滞留空間4内におけるミストの重さ(重力)が、上昇気流がミストに作用する力よりも大きくなっているため、ミストが上昇気流により上昇されにくく、滞留空間4内且つ溢れ面6bより下方の位置においてミストが滞留状態となっている。
ミストの立上雲状体が浴槽本体6の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域N3においては、水温と室温との差異から生じる上昇気流が一定程度生じる領域であり、滞留空間4内におけるミストの重さ(重力)が、上昇気流がミストに作用する力よりも大きいものの、ミストの重さと上昇気流により作用される力が比較的近くなっているため、ミストが上昇気流により一旦溢れ面6bより上方の位置まで立ち上るように上昇し、立上雲状体を形成した後、徐々にミストが滞留空間4に向けて下降して、滞留空間4内且つ溢れ面6bより下方の位置においてミストの滞留状態を形成する。
【0062】
なお、図13に示すように、ミスト供給部10の下端の溢れ面6b(上部リム部)からの高さを110mmと変更し、図12と同様の測定が行われた。すなわち、図13におけるミスト供給部10の下端の溢れ面6bからの高さが、図12における高さよりもより高くなっている。図13においては、ミスト供給部10の下端の高さ以外のパラメータについては、図12と同様に設定されている。
【0063】
図13においては、ミストの供給流量[ml/min]に対し、浴槽本体6内の水温と浴室内の室温との温度差ΔT[℃]を変えて、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となるか、ミストの立上雲状体が浴槽本体4の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留されるかの境となるポイントとなる温度差ΔT[℃]が0[℃]、2[℃]、7.2[℃]、10.1[℃]、15.5[℃]、17.2[℃]、20.5[℃]と見出されている。仮想境界線P3は、この複数の温度を通るように算出され、ミストが滞留空間4外に浮遊してミストが滞留空間4内に滞留されない状態となる領域と、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域との境を示す。
また、ミストの立上雲状体が浴槽本体6の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留されるか、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成されることなくミストが滞留空間4内に滞留されるかの境となるポイントとなる温度差ΔT[℃]が0[℃]、2.5[℃]、3.3[℃]と見出されている。仮想境界線P4は、この複数の温度を通るように算出され、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域と、ミストの立上雲状体が浴槽本体の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となる領域との境を示す。よって、図13においても、図12と同様に、領域N1、N2、N3が示される。
【0064】
図13においては、ミスト供給部10から滞留空間4内に供給されるミストが水面まで落下する高さが、図12における落下する高さよりも高くなり、ミストが下降中に拡散してミストの密度が下がりやすくなる。よって、滞留空間4内等にミストの重さが軽くなりミストが浮遊及び放散しやすくなる。また、図13においてミスト供給部10から滞留空間4内に供給されるミストが水面まで落下する高さが、図12における落下する高さよりも高くなり、ミストはより速い速度を有する。従って、ミストの速度が予め低い場合と比べて、ミストの速度が比較的速い場合には、ミストの運動エネルギーが高くなり、ミストが浮遊及び放散しやすくなる。また、ミストがミストの供給側と反対側の短辺側部分6eに到達した場合に、壁面に沿って上昇しやすくなる。従って、仮想境界線P3は、仮想境界線P1よりも低い温度となり、水温と室温との差異から生じる上昇気流がより弱い場合(ΔTが小さい場合)であっても、ミストが上昇気流により滞留空間4より上方に浮遊及び放散することが分かる。また、仮想境界線P4は、仮想境界線P2よりも低い温度となり、水温と室温との差異から生じる上昇気流がより弱い場合(ΔTが小さい場合)であっても、ミストの立上雲状体が浴槽本体6の溢れ部より上方まで形成された後にミストが滞留空間4内に滞留される状態となることを示している。
【0065】
図12及び図13に示すような浴槽本体6内の水温と浴室内の室温との温度差ΔT[℃]に対する、ミストの供給流量[ml/min]の関係は、浴槽本体6に対して示されている。本発明者らは、同様の関係の傾向が浴槽本体6のみならず浴槽本体6よりも滞留空間4の容積が異なる他の水受け機器、例えば浴室の洗い場床、シャワールーム、手洗いボウル、洗面台ボウル、キッチンシンク、トイレ等にも成立することを確認した。例えば、これらの各機器においては、滞留空間4の容積が浴槽本体6内の容積と比べて比較的小さくなる。
図12に示すような浴槽本体6の滞留空間4の容積に比べて、滞留空間の容積が小さくなる場合には、ミストの密度が高まりやすくなり、ミストが滞留状態を形成しやすくなるので、図12中の仮想境界線P1の位置が上方に移動される(例えば仮想境界線P5により示す)。図12中の仮想境界線P2の位置も上方に移動される(例えば仮想境界線P6により示す)。逆に、図12に示すような浴槽本体6の滞留空間4の容積に比べて、滞留空間の容積が大きくなる場合には、ミストの密度が低くなりやすくなり、ミストが滞留状態を形成しにくくなるので、図12中の仮想境界線P1の位置が下方に移動される(例えば仮想境界線P7により示す)。図12中の仮想境界線P2の位置も下方に移動される(例えば仮想境界線P8により示す)。
【0066】
図12及び図13においては、超音波振動子18により生成されるミストの粒径は所定の粒径となっているが、ミストの生成の手段(遠心分離機等)や超音波振動子の周波数等を変更することによりミストの粒径を変更することも可能である。図12において用いられているミストの粒径に比べて、ミストの粒径が大きくなる場合には、ミストの重さが重くなり、ミストが滞留状態を形成しやすくなるので、図12中の仮想境界線P1の位置が上方に移動される(例えば仮想境界線P5により示す)。また、図12中の仮想境界線P2の位置も上方に移動される(例えば仮想境界線P6により示す)。逆に、図12において用いられているミストの粒径に比べて、ミストの粒径が小さくなる場合には、ミストの重さが軽くなり、ミストが滞留状態を形成しにくくなるので、図12中の仮想境界線P1の位置が下方に移動される(例えば仮想境界線P7により示す)。また、図12中の仮想境界線P2の位置も下方に移動される(例えば仮想境界線P8により示す)。
このようにして、滞留空間4の容積が変わった場合や、ミストの粒径が変わった場合についても図12及び図13等に基づいてミストが滞留空間4内に滞留される状態と滞留されない状態との関係を理解可能である。
【0067】
次に、図14を参照して、浴槽本体6内のミストの雰囲気温度の測定方法について説明する。空気の温度を計測できる温度測定装置、例えばサーミスタ95を用いて浴槽本体6内のミストの雰囲気温度[℃]を測定する。浴槽本体6内のミストの雰囲気温度を測定したいときにサーミスタ95を配置して測定を行う。サーミスタ95の温度測定部は、浴槽本体6の長辺の中央部且つ短辺の中央部且つ浴槽本体6内に貯水されている水の表面から溢れ面6bまでの高さの中央部に配置され、ミストの温度の測定を行うようになっている。例えば、浴槽本体6内のミストの雰囲気温度は、ミスト供給を開始した後、十分に時間が経過(例えば2500[s]経過)し、温度上昇がほぼ止まった温度により測定される。測定時には測定対象の温度に極端な勾配が生じないように留意している。
【0068】
次に、図14を参照して、浴槽本体6内の水温(湯温)の測定方法について説明する。水温を計測できる温度測定装置、例えばサーミスタ99を用いて浴槽本体6内の水温[℃]を測定する。浴槽本体6内の水温を測定したいときにサーミスタ99を浴槽本体内の所定位置に配置して水温の測定を行う。サーミスタ99の温度測定部は、浴槽本体6の長辺の中央部且つ短辺の中央部且つ浴槽本体6内に貯水されている水の深さの中央部に配置され、水温の測定を行うようになっている。測定時には測定対象の温度に極端な勾配が生じないように留意している。
【0069】
次に、図14を参照して、浴槽本体6の設けられた浴室内の室温の測定方法について説明する。ミスト生成部8は、室内温度計測器24を備えるので、室温は基本的に室内温度計測器24により測定される。ミスト生成部8が、室内温度計測器24を備えていない場合や、室内温度計測器24により室温が測定できない(又はしにくい)場合には、サーミスタ86を浴室空間内の浴槽本体近傍の所定位置に配置して室温の測定を行う。このサーミスタ86の温度測定部は、例えば、浴槽本体6の側方側に200mmの位置且つ浴槽本体の長辺方向に沿って紙面奥側の壁から200mm手前側の位置、且つ床面より1000mm上方の位置に配置され、室温の測定を行うようになっている。測定時には測定対象の温度に極端な勾配が生じないように留意している。
【0070】
次に、図15を参照して、ミスト供給部10から供給されるミストの流量の計測装置及び計測方法について説明する。
ミストの流量の流量計測装置90は、ミスト生成部8と、ミスト供給部10と、ミスト生成部8とミスト供給部10とを貯水タンク上に支持する支持構造体91と、水を貯水する貯水タンク92と、貯水タンク92から水をミスト生成部8に供給する給水ポンプ94と、ミスト供給部10から供給されるミストを流量計測装置90の外方に送り出すファン96と、重量を測定する電子天秤98と、を備えている。ミスト生成部8の超音波振動子18は支持構造体91に取付けられた発振回路93により駆動される。給水ポンプ94及びファン96は、支持構造体91により支持されている。すなわち、流量計測装置90は、ミスト生成に用いられる水及びミスト生成に用いるミスト生成部8等が電子天秤98上に載せられた状態で構成されている。電子天秤98には、A&D社製GF-32Kを用いる。
【0071】
流量計測装置90において、ミスト生成前の状態において、ミスト生成部8、ミスト供給部10、支持構造体91、水の貯水されている貯水タンク92、給水ポンプ94、及びファン96の重量(以下、ミスト生成部8等の重量と称する)を、電子天秤98に載せた状態で測定する。以後、これらのミスト生成部8等を電子天秤98上に載せた状態のままミストの生成を行う。このような流量計測装置90において、給水ポンプ94によりミスト生成部8に給水を行うと共に、オーバーフロー管31から水を排水することで水位をほぼ固定する。超音波振動子18を駆動することによりミストを生成し、ミスト供給部10から流出したミストをファン96により流量計測装置90の外方に送り出す。超音波振動子18の駆動開始後、1分の経過時点において、超音波振動子18の駆動を停止させ、電子天秤98により、ミスト生成部8等の重量を測定する。よって、以下の式、「ミスト生成時減少量=ミストの生成前のミスト生成部8等の重量-ミストの生成後のミスト生成部8等の重量」、によりミスト生成時減少量を求めることができる。その上で、以下の式、「ミスト供給流量[ml/min]=ミスト生成時減少量-蒸発量」、によりミストの供給流量を求めることができる。このようにして得られるミスト供給流量[ml/min]は、同様の3回のミスト供給流量[ml/min]の測定を行い、測定結果の平均を行って、最終的なミスト供給流量[ml/min]を決定する。また、蒸発量は、測定中の自らの自然蒸発量を考慮するものである。従って、流量計測装置90において、超音波振動子18を駆動せず、1分間経過後の重量減少量を測定する。同様の一連の3回の重量減少量の測定を行い、測定結果の平均を行って、最終的な重量減少量を蒸発量として決定し、上述のミスト供給流量の算定に用いる。
【0072】
流量計測装置90においては、ミスト以外の水(例えば超音波振動子により生じる水柱の水滴等)が流量計測装置90の外部に飛び出さないように測定を行っている。また、生成されたミストがミスト供給部10において一部水に戻った場合にもこの水が貯水タンク92等に戻るように流量計測装置90が構成される。ファン96はミストがミスト供給部10及びミスト生成部8内に淀むことなく外方に流れることができる程度の風量及び向きで設定される。
【0073】
次に、図16乃至図18を参照して、ミスト供給部10から供給されるミストの粒径の計測装置及び計測方法について説明する。
ミストの粒径の計測装置37は、前述と同じ大きさ及び形状の仮想滞留空間34を設定する箱状装置39と、粒子径分布測定装置53とを備えている。この箱状装置39の側壁、すなわち仮想滞留空間34の側方の壁の中央近傍に、20mm×20mmの正方形の開口52を形成し、この開口52に蓋57が取り付けられている。ミストの粒径を測定しようとする場合には、ミストの粒径の計測装置37を浴槽本体6の代わりに配置するようにしてミストの粒径の測定を行う。ミスト供給部10の下端と計測装置37との位置関係は、ミスト供給部10と浴槽本体6との位置関係とほぼ同様となるように計測装置37が配置され、ミスト供給部10から浴槽本体6へのミストの供給と同様に、ミスト供給部10から計測装置37へのミストの供給が行われる。
【0074】
図17に示すように、粒子径分布測定装置53は、開口52の近傍且つ正面に粒径計測レーザーの計測領域Eが位置するように配置された粒径計測レーザー54を備えている。上面視で、粒径計測レーザー54のレーザー光が仮想滞留空間34の長辺と平行になるように粒径計測レーザー54が配置されている。粒径計測レーザー54から発信されるレーザー光が通過する計測領域Eが開口52の正面に位置している。計測領域Eは、開口52から150mmの距離に位置する。粒子径分布測定装置53は、さらに、このレーザー光の回折・散乱光を検出するように計測レンズ56を備えている。
【0075】
この開口に蓋57を取付けた状態で、仮想滞留空間34内にミストの供給を開始する。ミスト供給部10からのミストの供給口は図示を省略している。ミストの供給開始から1分後に蓋57を開放し、ミストを粒径計測レーザー54の計測領域Eに向けて漏出させる。粒径計測レーザー54の透過率60%~90%の状態で計測レンズ56により散乱光分布を計測する。例えば、粒径計測レーザー54及び計測レンズ56は、マイクロトラック・ベル株式会社製のスプレー粒子径分布測定装置のエアロトラック LDSA-SPRシリーズのLDSA-SPR1500Aを使用する。粒子径分布データを10回測定し、この粒子径分布データをPCに記録する。PCにおいて10回の粒子径分布データを平均化する。図18には、粒子径分布測定装置53により測定された粒子径分布データの一例を示す。図18においては、左側縦軸において頻度[%]を示し、右側縦軸において累積[%]を示し、横軸において粒径[μm]を示している。例えば、PCは、このように得られた粒子径分布データを分析し、例えば粒子径分布データの20%タイル値粒径Gを粒径データとして取得し、又は例えばザウター平均粒径Hを粒径データとして取得してもよい。ザウター平均粒径は、全粒子の全表面積に対する全粒子の全体積と同じ表面積対体積率を有する粒径を示す。ザウター平均粒径により平均粒径をもとめることにより少ない数の大粒径を有する粒子による測定値への影響を抑制できる。このようにしてミスト供給部10から供給されるミストの主な(例えば半分以上の)粒径が計測できる。本実施形態におけるミスト装置1から供給されるミストのザウター平均粒径Hは、3.1μm以上且つ10μm以下となっている。ミスト生成部8の超音波振動子18の出力を変更する、超音波振動子18の振動周波数を変更する又はミスト生成手段を遠心分離装置等に変更すること等により、ミストのザウター平均粒径Hを変更することができる。例えばミスト供給部10から供給されるミストのザウター平均粒径Hを、3.1μm以上且つ40μm以下の範囲内で変更して設定することも可能である。
【0076】
次に、図19を参照して、浴槽本体6内の滞留空間4において、ミストが滞留状態となっているか(ミストの滞留層Cを形成しているか)否かの判定装置及びその判定方法について説明する。
図19に示すように、透過率の測定装置68を用いて浴槽本体6内の滞留空間4内部において測定された内部透過率と、滞留空間4外部において測定された外部透過率と、を比較し、外部透過率よりも内部透過率が低い場合に、滞留空間4内部にミストが滞留していると判定できる。より具体的には、内部透過率/外部透過率<1となることにより滞留空間4内部にミストが滞留していると判定される。
【0077】
例えば、図11に示すように、滞留空間4内部にミストが滞留している状態では、内部透過率が低下する。一方で、ミストは主に滞留空間4内部に留まっており、滞留境界面66より上方において測定される外部透過率は、比較的高い値となっている。よって、内部透過率/外部透過率<1となり、滞留空間4内部にミストが滞留していると判定される。なお、内部透過率が15%以下の範囲内にあることによって、滞留空間4内部にミストが滞留していると判定してもよい。
【0078】
次に、図19を参照して、透過率の測定装置68について説明する。
滞留状態が形成されているかについては、透過率の測定装置68を浴槽本体6に取付けることにより判定可能である。
透過率の測定装置68は、滞留空間4内部に測定部が配置された第1レーザー装置70と、レーザーを受ける第1透過率計測装置72とを備えている。第1レーザー装置70と、第1透過率計測装置72とは、滞留空間4の上端より下方側に150mmの位置(例えば滞留空間4の深さに対して3割程度の深さ位置)において水平方向に150mm離れて配置されている。第1レーザー装置70と、第1透過率計測装置72とは、上面視で滞留空間4の中央近傍に配置される。第1レーザー装置70から発振されるレーザー光の強度に対し、第1透過率計測装置72で測定したレーザー光の強度を測定し、内部透過率を測定する。
透過率の測定装置68は、さらに、滞留空間4外部に配置された第2レーザー装置74と、レーザーを受ける第2透過率計測装置76とを備えている。第2レーザー装置74と、第2透過率計測装置76とは、滞留空間4の上端より上方側に150mmの位置(例えば滞留層Cの上端の滞留境界面66よりも上方となると想定される位置)において水平方向に離れて配置されている。第1レーザー装置70と、第1透過率計測装置72とは、上面視で滞留空間4の中央近傍に配置される。第2レーザー装置74から発振されるレーザー光の強度に対し、第2透過率計測装置76で測定したレーザー光の強度を測定し、外部透過率を測定する。このようにして滞留空間4内の内部透過率と、外部透過率とをそれぞれ測定できる。
測定装置68のより具体的な装置構成としては、キーエンス社製デジタルファイバアンプFS-N11MNから発せられたレーザー光を同社製FU-77TZ(第1レーザー装置70又は第2レーザー装置74)を通して発振し、同社製FU-77TZ(第1透過率計測装置72又は第2透過率計測装置76)にて受光する。受光した光はファイバアンプFS-N11MNへと返され、光量に応じて例えば1-5Vの電圧出力を行う。光量は、例えば1500~4500で行う。出力された電圧は、同社製NR-500シリーズNR-HA08にて計測し、PC上で0~100%の値にスケーリングする。透過率のデータは例えばサンプリング周期100msにて計測される。例えば、ミストをほぼ定量で供給開始してから滞留層Cが形成されて以後、例えば30秒間の透過率のデータを平均して算出する。例えば、ミストの立上雲状態の判定測定を行う場合は平均算出は行わず、時間経過のデータにより判定する。
【0079】
次に、本実施形態の構成による効果を説明する。
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト供給部10から供給されたミストがミストの立上雲状体を浴槽本体6の溢れ部より上方まで立ち上がるように形成するので、浴槽本体6に座ってミスト装置1を使用する使用者の顔の高さまでミストの立上雲状体が形成される。これにより、立上雲状体のミストの一部が気化する際の気化熱により使用者の顔付近を冷やすことができると共に、身体をミストの滞留層によりミスト浴として温めることができる。従って、ミスト浴時の使用者の快適性を向上できる。
【0080】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置1は、ミスト供給部10から供給されたミストが浴槽本体6内から上方に向かう上昇気流を利用してミストの立上雲状体を浴槽本体6の溢れ部より上方まで立ち上がるように形成するように構成される。これにより、ミストの立上雲状体を形成するための構造物を浴槽本体6内に物理的に配置することなく、ミストの立上雲状体を浴槽本体6から立ち上がるように形成できる。
【0081】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置1は、浴槽本体6内に貯留される水の温度とミストの供給開始前の浴槽本体6が使用される浴室内の温度との温度差により浴槽本体6内から上方に向かう上昇気流を形成させる。これにより、ミストの立上雲状体を上昇気流により浴槽本体6から立ち上がるように形成できる。
【0082】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置1は、供給されたミストがミストの滞留層Cを浴槽本体6の滞留空間4内に形成した後、滞留空間4内のミストの一部を浴槽本体6の水の溢れ部よりも上方まで上昇させるように構成されている。これにより、滞留層Cが形成された後の滞留空間4内のミストの一部が溢れ部よりも上方まで上昇して気化され、この気化熱により使用者の顔付近を冷やすことができると共に、身体をミストの滞留層Cによりミスト浴として温めることができる。従って、ミスト浴時の使用者の快適性をより向上できる。
【0083】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置1は、ミスト供給部10から供給された浴槽本体6内のミストの雰囲気温度と、ミストの滞留層を形成している状態における浴槽本体6が使用される浴室内の温度との温度差により浴槽本体6内のミストの一部を上昇させる上昇気流を生じさせるように構成されている。これにより、浴槽本体6内のミストを上昇気流により浴槽本体6から上昇させやすくできる。
【0084】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置1は、ミストの滞留層Cを形成した上で、浴槽本体6が配置される浴室内の床面にも浴槽本体6内からミストを供給できる。これにより、浴室内の床面からもミストが気化でき、その気化熱により浴室内の空間をより効率よく冷却できる。よって、浴槽本体6から出ている使用者の顔をより冷やすことができると共に、身体をミストの滞留層Cによりミスト浴として温めることができる。従って、ミスト入浴時の使用者の快適性をより向上できる。
【0085】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミストの滞留層の滞留境界面66は、浴槽本体6の溢れ部よりも高い位置に形成される。これにより、ミスト滞留時において、使用者の身体を浴槽本体6の溢れ部よりも高い位置のミストの滞留境界面66までミスト入浴として温めることができる。
【0086】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト供給部10の下端は浴槽本体6の溢れ部より上方に配置される。これにより、ミスト供給部10の下端が溢れ部よりも下方に位置する場合に比べて、少ないミスト流量で滞留境界面66を溢れ部よりも高い位置に形成しやすくできる。
【0087】
また、本発明の一実施形態は、ミストシステム2であって、本発明の一実施形態のミスト装置1と、ミスト装置1のミスト供給部1010から供給されるミストを受け入れる滞留空間4を形成する浴槽本体66とを備えることを特徴としている。
【0088】
このように構成された本発明の一実施形態においては、浴槽本体6は、ミスト供給部10と対向する内側側壁が上方に向けて外側に傾斜するように形成されている。これにより、ミスト供給部10から供給されたミストが内側側壁に沿って浴槽本体6の溢れ部より上方まで立ち上がりやすくでき、ミストの立上雲状体を形成しやすくできる。
【0089】
このように構成された本発明の一実施形態においては、ミスト装置1のミスト供給部10は、浴槽本体6の短辺側に配置される。これにより、ミスト供給部10は、浴槽本体6の長辺に向けてミストを供給でき、仮にミストが浴槽本体6の上方に向けて上昇したとしても浴槽本体6の上方に浮遊しやすくできる。逆に、ミスト供給部10が浴槽本体6の長辺側に配置される場合には、上昇するミストが浴槽本体6外の洗い場側に向かいやすくなる。
【符号の説明】
【0090】
1 :ミスト装置
2 :ミストシステム
3 :浴室
4 :滞留空間
6 :浴槽本体
6b :面
8 :ミスト生成部
10 :ミスト供給部
66 :滞留境界面
A :使用者
B :水
C :滞留層
R :立上雲状体
X :温水層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19