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特開2023-50506油圧システム、油圧ショベル、及び油圧ショベルの制御方法
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  • 特開-油圧システム、油圧ショベル、及び油圧ショベルの制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050506
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】油圧システム、油圧ショベル、及び油圧ショベルの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F15B 21/0427 20190101AFI20230404BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
F15B21/0427
E02F9/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160635
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】住野 亘
(72)【発明者】
【氏名】小塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 輝
(72)【発明者】
【氏名】池田 真俊
【テーマコード(参考)】
2D003
3H082
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA01
2D003CA02
2D003DA02
3H082AA07
3H082CC02
3H082DB07
3H082EE02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】油圧ショベルに搭載されている油圧機器を暖気すること。
【解決手段】油圧システムは、作業機シリンダ24を駆動するオープン回路により構成されたメイン油圧回路と、旋回モータ30を駆動するクローズド回路により構成された旋回油圧回路と、メイン弁26とタンク28との間のタンク流路27に配置され、メイン弁26の背圧を調整する背圧弁18と、中立保持弁33のスプールの周囲に配置される暖機流路76と、メイン弁26と背圧弁18との間のタンク流路17の上流部分と暖機流路76の入口ポートとを接続する供給流路78と、背圧弁18とタンク28との間のタンク流路の下流部分と暖機流路76の出口ポートとを接続する排出流路79と、を備える。低温時は、背圧弁18を第2セット圧とし、メイン弁26のリリーフ操作で暖気された暖かい油を中立保持弁33の暖気回路に供給することで、中立保持弁33の暖気を促進する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインポンプと、作業機シリンダと、前記メインポンプから前記作業機シリンダへの作動油の流入を制御するメイン弁と、前記作業機シリンダから流出した作動油が前記メイン弁を介して排出されるタンクと、を有するオープン回路により構成されたメイン油圧回路と、
旋回ポンプと、旋回モータと、前記旋回ポンプと前記旋回モータとの間の作動油の通過を制御する中立保持弁と、を有するクローズド回路により構成された旋回油圧回路と、
前記メイン弁と前記タンクとの間のタンク流路に配置され、前記メイン弁の背圧を調整する背圧弁と、
前記中立保持弁のスプールの周囲に配置される暖機流路と、
前記メイン弁と前記背圧弁との間の前記タンク流路の上流部分と前記暖機流路の入口ポートとを接続する供給流路と、
前記背圧弁と前記タンクとの間の前記タンク流路の下流部分と前記暖機流路の出口ポートとを接続する排出流路と、を備える、
油圧システム。
【請求項2】
前記中立保持弁は、前記スプールの周囲に配置されるボディを有し、
前記暖機流路は、前記ボディに配置される、
請求項1に記載の油圧システム。
【請求項3】
前記メインポンプと前記メイン弁との間のポンプ流路に接続され、前記メインポンプの吐出圧が予め定められたリリーフ圧以上のときに開放されるリリーフ弁を備え、
前記リリーフ弁から流出した作動油が、前記上流部分及び前記供給流路を介して前記暖機流路に供給される、
請求項1又は請求項2に記載の油圧システム。
【請求項4】
前記背圧が第1背圧から前記第1背圧よりも高い第2背圧に変化するように前記背圧弁を制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、前記上流部分から前記暖機流路に前記作動油が供給されるように、前記背圧を前記第2背圧に調整する、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の油圧システム。
【請求項5】
前記タンク流路の作動油の温度を検出する温度センサを備え、
前記コントローラは、前記温度センサの検出値が予め定められた規定値以下のときに、前記背圧を前記第2背圧に調整する、
請求項4に記載の油圧システム。
【請求項6】
前記メイン油圧回路は、走行モータを有し、
前記メイン弁は、前記メインポンプから前記走行モータへの作動油の流入を制御し、
前記コントローラは、前記走行モータへの作動油の流入が制限され、且つ、前記走行モータが駆動しているときに、前記背圧を前記第2背圧に調整する、
請求項4又は請求項5に記載の油圧システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の油圧システムと、
前記旋回モータにより旋回する上部旋回体と、
前記上部旋回体に連結され、前記作業機シリンダにより動作する作業機と、を備える、
油圧ショベル。
【請求項8】
メインポンプと、作業機シリンダと、前記メインポンプから前記作業機シリンダへの作動油の流入を制御するメイン弁と、前記作業機シリンダから流出した作動油が前記メイン弁を介して排出されるタンクと、を有するオープン回路により構成されたメイン油圧回路と、
旋回ポンプと、旋回モータと、前記旋回ポンプと前記旋回モータとの間の作動油の通過を制御する中立保持弁と、を有するクローズド回路により構成された旋回油圧回路と、
前記メイン弁と前記タンクとの間のタンク流路に配置され、前記メイン弁の背圧を調整する背圧弁と、を備える油圧ショベルの制御方法であって、
前記メイン弁と前記背圧弁との間の前記タンク流路の上流部分から前記中立保持弁のスプールの周囲に配置される暖機流路に作動油を流入させることと、
前記暖機流路から前記背圧弁と前記タンクとの間の前記タンク流路の下流部分に作動油を流出させることと、を含む、
油圧ショベルの制御方法。
【請求項9】
前記背圧弁により前記メイン弁の背圧を高めて、前記暖機流路に作動油を流入させる、
請求項8に記載の油圧ショベルの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧システム、油圧ショベル、及び油圧ショベルの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルに係る技術分野において、特許文献1に開示されているような油圧ショベルが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5954360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
油圧ショベルは、複数の油圧機器を有する。油圧ショベルの始動において、油圧機器が暖機される場合がある。例えば暖機されていない油圧機器に高温度の作動油がいきなり供給されると、油圧機器の動作不良が発生する可能性がある。
【0005】
本開示は、油圧ショベルに搭載されている油圧機器を暖気することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従えば、メインポンプと、作業機シリンダと、メインポンプから作業機シリンダへの作動油の流入を制御するメイン弁と、作業機シリンダから流出した作動油がメイン弁を介して排出されるタンクと、を有するオープン回路により構成されたメイン油圧回路と、旋回ポンプと、旋回モータと、旋回ポンプと旋回モータとの間の作動油の通過を制御する中立保持弁と、を有するクローズド回路により構成された旋回油圧回路と、メイン弁とタンクとの間のタンク流路に配置され、メイン弁の背圧を調整する背圧弁と、中立保持弁のスプールの周囲に配置される暖機流路と、メイン弁と背圧弁との間のタンク流路の上流部分と暖機流路の入口ポートとを接続する供給流路と、背圧弁とタンクとの間のタンク流路の下流部分と暖機流路の出口ポートとを接続する排出流路と、を備える、油圧システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、油圧ショベルに搭載されている油圧機器が暖機される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る油圧ショベルを示す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る油圧システムを示す図である。
図3図3は、実施形態に係るコントローラを示すブロック図である。
図4図4は、実施形態に係る中立保持弁を模式的に示す図である。
図5図5は、実施形態に係る油圧ショベルの制御方法を示すフローチャートである。
図6図6は、実施形態に係る中立保持弁が暖機されているときの油圧システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する各実施形態の構成要素は適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[油圧ショベル]
図1は、実施形態に係る油圧ショベル1を示す斜視図である。図1に示すように、油圧ショベル1は、上部旋回体2と、作業機3と、下部走行体4と、操作レバー5とを備える。
【0011】
上部旋回体2は、下部走行体4に旋回可能に支持される。上部旋回体2は、作業機3を支持する。上部旋回体2は、運転室6を有する。油圧ショベル1の操作者は、運転室6に搭乗する。操作者が着座する運転席7が運転室6に設けられる。
【0012】
作業機3は、上部旋回体2に連結される。作業機3は、ブーム8と、アーム9と、バケット10とを含む。ブーム8は、上部旋回体2に回動可能に連結される。アーム9は、ブーム8に回動可能に連結される。バケット10は、アーム9に回動可能に連結される。
【0013】
下部走行体4は、上部旋回体2を支持する。下部走行体4は、駆動輪11と、履帯12とを有する。駆動輪11が回転することにより、履帯12が回転する。履帯12が回転することにより、下部走行体4が走行する。
【0014】
操作レバー5は、油圧ショベル1の操作者に操作される。操作レバー5は、上部旋回体2、作業機3、及び下部走行体4のそれぞれを動作させるために操作される。操作レバー5は、運転室6に配置される。
【0015】
[油圧システム]
図2は、実施形態に係る油圧システム13を示す図である。油圧システム13は、油圧ショベル1に搭載される。図1及び図2に示すように、油圧システム13は、エンジン14と、パワーテイクオフ15と、メイン油圧回路16と、旋回油圧回路17と、背圧弁18と、リリーフ弁19と、温度センサ20と、コントローラ21とを備える。
【0016】
エンジン14は、油圧ショベル1の動力源である。エンジン14として、ディーゼルエンジンが例示される。エンジン14は、パワーテイクオフ15に連結される。
【0017】
メイン油圧回路16は、作業機3及び下部走行体4の少なくとも一方を動作させる。メイン油圧回路16には、作業機3及び下部走行体4の少なくとも一方を動作させるための作動油が流れる。メイン油圧回路16は、メインポンプ22と、ポンプ流路23と、作業機シリンダ24と、走行モータ25と、メイン弁26と、タンク流路27と、タンク28と有する。メイン油圧回路16は、オープン回路により構成される。
【0018】
旋回油圧回路17は、上部旋回体2を動作させる。旋回油圧回路17には、上部旋回体2を動作させるための作動油が流れる。旋回油圧回路17は、旋回ポンプ29と、旋回モータ30と、第1メイン流路31と、第2メイン流路32と、中立保持弁33と、を有する。旋回油圧回路17は、クローズド回路により構成される。
【0019】
パワーテイクオフ15は、エンジン14が発生した動力を、メインポンプ22、及び旋回ポンプ29のそれぞれに分配する。
【0020】
<メイン油圧回路>
メインポンプ22は、可変容量型の油圧ポンプである。メインポンプ22は、パワーテイクオフ15に連結される。メインポンプ22は、エンジン14により駆動される。メインポンプ22は、作業機シリンダ24及び走行モータ25のそれぞれを駆動するための作動油を吐出する。
【0021】
ポンプ流路23は、メインポンプ22の吐出口22Aに接続される。メインポンプ22の吐出口22Aから吐出された作動油は、ポンプ流路23を流れる。
【0022】
作業機シリンダ24は、油圧シリンダである。作業機シリンダ24は、作業機3を動作させるための動力を発生する。作業機シリンダ24は、メインポンプ22から吐出された作動油に基づいて駆動する。作業機シリンダ24は、ブームシリンダ35と、アームシリンダ36と、バケットシリンダ37とを含む。ブームシリンダ35は、ブーム8を動作させる。アームシリンダ36は、アーム9を動作させる。バケットシリンダ37は、バケット10を動作させる。
【0023】
走行モータ25は、油圧モータである。走行モータ25は、下部走行体4を動作させるための動力を発生する。走行モータ25は、メインポンプ22から吐出された作動油に基づいて駆動する。走行モータ25は、駆動輪11を回転させる。
【0024】
メイン弁26は、ポンプ流路23を介してメインポンプ22に接続される。メイン弁26は、メインポンプ22から作業機シリンダ24への作動油の流入を制御する。また、メイン弁26は、メインポンプ22から走行モータ25への作動油の流入を制御する。メイン弁26は、ブームスプール38と、アームスプール39と、バケットスプール40と、走行スプール41とを有する。
【0025】
ブームスプール38は、メインポンプ22からブームシリンダ35への作動油の流入を制御する。ブームスプール38は、メインポンプ22からブームシリンダ35に供給される作動油の流量及び方向を制御する。
【0026】
アームスプール39は、メインポンプ22からアームシリンダ36への作動油の流入を制御する。アームスプール39は、メインポンプ22からアームシリンダ36に供給される作動油の流量及び方向を制御する。
【0027】
バケットスプール40は、メインポンプ22からバケットシリンダ37への作動油の流入を制御する。バケットスプール40は、メインポンプ22からバケットシリンダ37に供給される作動油の流量及び方向を制御する。
【0028】
走行スプール41は、メインポンプ22から走行モータ25への作動油の流入を制御する。走行スプール41は、走行モータ25に供給される作動油の流量及び方向を制御する。
【0029】
タンク流路27は、タンク28に接続される。作業機シリンダ24から流出した作動油は、メイン弁26を流れた後、タンク流路27を流れる。
【0030】
タンク28は、タンク流路27から作動油を排出される。作業機シリンダ24から流出した作動油は、メイン弁26を介してタンク28に排出される。
【0031】
メイン弁26は、ポンプポート38A、第1入出口ポート38Bと、第2入出口ポート38Cと、タンクポート38Dと、中立入口ポート38Eと、中立出口ポート38Fとを有する。ポンプポート38Aは、流入流路42を介してポンプ流路23に接続される。第1入出口ポート38Bは、ボトム流路43を介してブームシリンダ35のボトム室35Aに接続される。第2入出口ポート38Cは、ロッド流路44を介してブームシリンダ35のロッド室35Bに接続される。タンクポート38Dは、流出流路45を介してタンク流路27に接続される。中立入口ポート38Eは、中立流路46に接続される。中立出口ポート38Fは、中立流路47に接続される。
【0032】
ブームスプール38は、ボトム位置とロッド位置と中立位置とに移動する。ブームスプール38がボトム位置に配置されると、メインポンプ22から吐出された作動油が、流入流路42、ブームスプール38、及びボトム流路43を介して、ブームシリンダ35のボトム室35Aに供給され、ブームシリンダ35のロッド室35Bから排出された作動油が、ロッド流路44、ブームスプール38、及び流出流路45を介して、タンク28に排出される。ブームスプール38がロッド位置に配置されると、メインポンプ22から吐出された作動油が、流入流路42、ブームスプール38、及びロッド流路44を介して、ブームシリンダ35のロッド室35Bに供給され、ブームシリンダ35のボトム室35Aから排出された作動油が、ボトム流路43、ブームスプール38、及び流出流路45を介して、タンク28に排出される。ブームスプール38が中立位置に配置されると、ブームスプール38において作動油の通過が遮断される。
【0033】
メイン弁26は、ポンプポート39Aと、第1入出口ポート39Bと、第2入出口ポート39Cと、タンクポート39Dと、中立入口ポート39Eと、中立出口ポート39Fとを有する。ポンプポート39Aは、流入流路48を介してポンプ流路23に接続される。第1入出口ポート39Bは、ボトム流路49を介してアームシリンダ36のボトム室36Aに接続される。第2入出口ポート39Cは、ロッド流路50を介してアームシリンダ36のロッド室36Bに接続される。タンクポート39Dは、流出流路51を介してタンク流路27に接続される。中立入口ポート39Eは、中立流路47に接続される。中立出口ポート39Fは、中立流路52に接続される。
【0034】
アームスプール39は、ボトム位置とロッド位置と中立位置とに移動する。アームスプール39がボトム位置に配置されると、メインポンプ22から吐出された作動油が、流入流路48、アームスプール39、及びボトム流路49を介して、アームシリンダ36のボトム室36Aに供給され、アームシリンダ36のロッド室36Bから排出された作動油が、ロッド流路50、アームスプール39、及び流出流路51を介して、タンク28に排出される。アームスプール39がロッド位置に配置されると、メインポンプ22から吐出された作動油が、流入流路48、アームスプール39、及びロッド流路50を介して、アームシリンダ36のロッド室36Bに供給され、アームシリンダ36のボトム室36Aから排出された作動油が、ボトム流路49、アームスプール39、及び流出流路51を介して、タンク28に排出される。アームスプール39が中立位置に配置されると、アームスプール39において作動油の通過が遮断される。
【0035】
メイン弁26は、ポンプポート40Aと、第1入出口ポート40Bと、第2入出口ポート40Cと、タンクポート40Dと、中立入口ポート40Eと、中立出口ポート40Fとを有する。ポンプポート40Aは、流入流路53を介してポンプ流路23に接続される。第1入出口ポート40Bは、ボトム流路54を介してバケットシリンダ37のボトム室37Aに接続される。第2入出口ポート40Cは、ロッド流路55を介してバケットシリンダ37のロッド室37Bに接続される。タンクポート40Dは、流出流路56を介してタンク流路27に接続される。中立入口ポート40Eは、中立流路52に接続される。中立出口ポート40Fは、中立流路57に接続される。
【0036】
バケットスプール40は、ボトム位置とロッド位置と中立位置とに移動する。バケットスプール40がボトム位置に配置されると、メインポンプ22から吐出された作動油が、流入流路53、バケットスプール40、及びボトム流路54を介して、バケットシリンダ37のボトム室37Aに供給され、バケットシリンダ37のロッド室37Bから排出された作動油が、ロッド流路55、バケットスプール40、及び流出流路56を介して、タンク28に排出される。バケットスプール40がロッド位置に配置されると、メインポンプ22から吐出された作動油が、流入流路53、バケットスプール40、及びロッド流路55を介して、バケットシリンダ37のロッド室37Bに供給され、バケットシリンダ37のボトム室37Aから排出された作動油が、ボトム流路54、バケットスプール40、及び流出流路56を介して、タンク28に排出される。バケットスプール40が中立位置に配置されると、バケットスプール40において作動油の通過が遮断される。
【0037】
メイン弁26は、ポンプポート41Aと、第1入出口ポート41Bと、第2入出口ポート41Cと、タンクポート41Dと、中立入口ポート41Eと、中立出口ポート41Fとを有する。ポンプポート41Aは、流入流路58を介してポンプ流路23に接続される。第1入出口ポート41Bは、第1モータ流路59を介して走行モータ25の第1吸込口25Aに接続される。第2入出口ポート41Cは、第2モータ流路60を介して走行モータ25の第2吸込口25Bに接続される。タンクポート41Dは、流出流路61を介してタンク流路27に接続される。中立入口ポート41Eは、ポンプ流路23に接続される。中立出口ポート41Fは、中立流路46に接続される。
【0038】
走行スプール41は、前進位置と後進位置と中立位置とに移動する。走行スプール41が前進位置に配置されると、メインポンプ22から吐出された作動油が、流入流路58、走行スプール41、及び第1モータ流路59を介して、走行モータ25の第1吸込口25Aに供給され、走行モータ25の第2吸込口25Bからから排出された作動油が、第2モータ流路60、走行スプール41、及び流出流路61を介して、タンク28に排出される。走行スプール41が後進位置に配置されると、メインポンプ22から吐出された作動油が、流入流路58、走行スプール41、及び第2モータ流路60を介して、走行モータ25の第2吸込口25Bに供給され、走行モータ25の第1吸込口25Aからから排出された作動油が、第1モータ流路59、走行スプール41、及び流出流路61を介して、タンク28に排出される。走行スプール41が中立位置に配置されると、走行スプール41において作動油の通過が遮断される。
【0039】
実施形態において、流入流路42と流入流路48と流入流路53と流入流路58とは、ポンプ流路23に並列に接続される。流出流路45と流出流路51と流出流路56と流出流路61とは、タンク流路27に並列に接続される。
【0040】
図2に示す例において、ブームスプール38、アームスプール39、バケットスプール40、及び走行スプール41のそれぞれは、中立位置に配置される。中立流路57は、メインポンプ22の容量をネガティブ制御するネガティブ制御機構62に接続される。ブームスプール38、アームスプール39、バケットスプール40、及び走行スプール41のそれぞれが中立位置に配置されると、メインポンプ22から吐出された作動油は、ポンプ流路23、走行スプール41、中立流路46、ブームスプール38、中立流路47、アームスプール39、中立流路52、バケットスプール40、中立流路57、ネガティブ制御機構62、及びタンク流路27を介して、タンク28に排出される。
【0041】
流入流路42にブームチェック弁63が配置される。流入流路48にアームチェック弁64が配置される。流入流路53にバケットチェック弁65が配置される。流入流路58に走行チェック弁66が配置される。
【0042】
ブームチェック弁63は、ブームシリンダ35からブームスプール38を介してメインポンプ22に作動油が逆流することを抑制する。アームチェック弁64は、アームシリンダ36からアームスプール39を介してメインポンプ22に作動油が逆流することを抑制する。バケットチェック弁65は、バケットシリンダ37からバケットスプール40を介してメインポンプ22に作動油が逆流することを抑制する。走行チェック弁66は、走行モータ25から走行スプール41を介してメインポンプ22に作動油が逆流することを抑制する。
【0043】
<旋回油圧回路>
旋回ポンプ29は、可変容量型の油圧ポンプである。旋回ポンプ29は、パワーテイクオフ15に連結される。旋回ポンプ29は、エンジン14により駆動される。旋回ポンプ29は、旋回モータ30を駆動するための作動油を吐出する。
【0044】
旋回モータ30は、油圧モータである。旋回モータ30は、上部旋回体2を旋回させるための動力を発生する。旋回モータ30は、旋回ポンプ29から吐出された作動油に基づいて駆動する。
【0045】
第1メイン流路31は、旋回ポンプ29の第1吐出口29Aと旋回モータ30の第1吸込口30Aとを接続する。第2メイン流路32は、旋回ポンプ29の第2吐出口29Bと旋回モータ30の第2吸込口30Bとを接続する。第1メイン流路31と第2メイン流路32と旋回ポンプ29と旋回モータ30とにより、クローズド回路が構成される。
【0046】
中立保持弁33は、旋回ポンプ29と旋回モータ30との間の作動油の通過を制御する。中立保持弁33は、第1メイン流路31及び第2メイン流路32に介在するように配置される。中立保持弁33は、スプール67を有する。中立保持弁33は、コントローラ21から出力された制御信号に基づいて動作する。
【0047】
中立保持弁33は、第1ポンプポート67Aと、第2ポンプポート67Bと、第1モータポート67Cと、第2モータポート67Dとを有する。第1ポンプポート67Aは、第1メイン流路31を介して旋回ポンプ29の第1吐出口29Aに接続される。第2ポンプポート67Bは、第2メイン流路32を介して旋回ポンプ29の第2吐出口29Bに接続される。第1モータポート67Cは、第1メイン流路31を介して旋回モータ30の第1吸込口30Aに接続される。第2モータポート67Dは、第2メイン流路32を介して旋回モータ30の第2吸込口30Bに接続される。
【0048】
スプール67は、第1位置と第2位置と中立位置とに移動する。スプール67が第1位置に配置されると、第1ポンプポート67Aと第1モータポート67Cとの間の作動油の通過が遮断され、第2モータポート67Dから第2ポンプポート67Bへの作動油の通過が許容される。スプール67が第2位置に配置されると、第2ポンプポート67Bと第2モータポート67Dとの間の作動油の通過が遮断され、第1モータポート67Cから第1ポンプポート67Aへの作動油の通過が許容される。中立保持弁33のスプール67が中立位置に配置されると、第1ポンプポート67Aと第1モータポート67Cとの間の作動油の通過が遮断され、第2ポンプポート67Bと第2モータポート67Dとの間の作動油の通過が遮断される。
【0049】
中立保持弁33は、スプール67をバイパスするように配置される第1バイパス流路68及び第2バイパス流路69を有する。第1バイパス流路68は、旋回ポンプ29の第1吐出口29Aと旋回モータ30の第1吸込口30Aとを接続する。第2バイパス流路69は、旋回ポンプ29の第2吐出口29Bと旋回モータ30の第2吸込口30Bとを接続する。
【0050】
第1バイパス流路68にチェック弁70が配置される。第2バイパス流路69にチェック弁71が配置される。チェック弁70及びチェック弁71は、旋回ポンプ29から旋回モータ30への作動油の通過を許容し、旋回モータ30から旋回ポンプ29への作動油の通過を阻止する。
【0051】
<背圧弁>
背圧弁18は、メイン弁26とタンク28との間のタンク流路27に配置される。背圧弁18は、メイン弁26の背圧を調整する。背圧弁18は、メイン弁26の背圧として、少なくともメイン弁26と背圧弁18との間のタンク流路27の圧力を調整する。
【0052】
背圧弁18は、タンク流路27を開放して、メイン弁26からの作動油の通過を許容することにより、メイン弁26の背圧を下降させる。背圧弁18は、タンク流路27を絞って、メイン弁26からの作動油の通過を制限することにより、メイン弁26の背圧を上昇させる。
【0053】
背圧弁18のスプールは、タンク流路27を開放する開放位置と、タンク流路27を絞る絞り位置とに移動する。実施形態において、背圧弁18は、ノーマルクローズ方式である。背圧弁18のスプールの一部に電磁部18Aが接続され、他の一部にスプリング部18Bが接続される。電磁部18Aが通電状態においては、電磁部18Aの作用により、背圧弁18のスプールは、開放位置に移動する。電磁部18Aが非通電状態においては、スプリング部18Bの作用により、背圧弁18のスプールは、絞り位置に移動する。
【0054】
背圧弁18は、タンク流路27を開放することにより、メイン弁26の背圧を第1背圧に調整する。背圧弁18は、タンク流路27を絞ることにより、メイン弁26の背圧を第2背圧に調整する。第2背圧は、第1背圧よりも高い。一例として、第1背圧は、ゲージ圧で0[kg/cm]である。第2背圧は、ゲージ圧で8[kg/cm]である。
【0055】
以下の説明において、メイン弁26と背圧弁18との間のタンク流路27を適宜、タンク流路27の第1部分(上流部分)27A、と称し、背圧弁18とタンク28との間のタンク流路27を適宜、タンク流路27の第2部分(下流部分)27B、と称する。
【0056】
<リリーフ弁>
リリーフ弁19は、リリーフ流路74を介して、メインポンプ22とメイン弁26(走行スプール41)との間のポンプ流路23に接続される。また、リリーフ弁19は、リリーフ流路75を介して、タンク流路27の第1部分27Aに接続される。実施形態において、リリーフ流路75は、流出流路61に接続される。流出流路61は、タンク流路27の第1部分27Aに接続される。リリーフ弁19は、リリーフ流路75及び流出流路61を介して、タンク流路27の第1部分27Aに接続される。
【0057】
リリーフ弁19は、メインポンプ22の吐出圧が予め定められたリリーフ圧以上のときに開放される。メインポンプ22の吐出圧は、ポンプ流路23の作動油の圧力を含む。リリーフ弁19が開放されると、リリーフ弁19からリリーフ流路75に作動油が流出する。リリーフ弁19から流出した作動油は、流出流路61を介して第1部分27Aに供給される。
【0058】
<温度センサ>
温度センサ20は、タンク流路27の作動油の温度を検出する。実施形態において、温度センサ20は、第2部分27Bの作動油の温度を検出する。なお、温度センサは、タンク流路27の作動油の温度を検出できればよく、配置位置は限定されない。温度センサ20は、ポンプの吸込配管等の低圧回路側に設けてもよい。
【0059】
<コントローラ>
図3は、実施形態に係るコントローラ21を示すブロック図である。コントローラ21は、コンピュータシステムを含む。コントローラ21は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサ21Aと、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリ及びRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含むメインメモリ21Bと、ストレージ21Cと、入出力回路を含むインターフェース21Dとを有する。コントローラ21の機能は、コンピュータプログラムとしてストレージ21Cに記憶されている。プロセッサ21Aは、コンピュータプログラムをストレージ21Cから読み出してメインメモリ21Bに展開し、コンピュータプログラムに従って規定の処理を実行する。なお、コンピュータプログラムは、ネットワークを介してコントローラ21に配信されてもよい。
【0060】
コントローラ21は、少なくとも背圧弁18を制御する。コントローラ21は、メイン弁26の背圧が第1背圧から第1背圧よりも高い第2背圧に変化するように、背圧弁18を制御する。すなわち、コントローラ21は、タンク流路27が開放されている状態から絞られる状態に変化するように、背圧弁18を制御する。上述のように、実施形態において、背圧弁18は、ノーマルクローズ方式である。コントローラ21は、電磁部18Aが通電状態になるように制御信号を出力することにより、背圧弁18のスプールを開放位置から絞り位置に移動させることができる。
【0061】
コントローラ21は、温度センサ20の検出値に基づいて、背圧弁18を制御する。コントローラ21は、温度センサ20の検出値が予め定められた規定値以下のときに、背圧を第2背圧に調整する。規定値は、例えば40[℃]である。
【0062】
また、コントローラ21は、中立保持弁33を制御する。コントローラ21は、上部旋回体2を旋回させるために操作された操作レバー5の操作信号に基づいて、中立保持弁33を制御する。コントローラ21は、スプール67の端部の圧力室に作用するパイロット圧を調整することにより、スプール67を第1位置と第2位置と中立位置とに移動させることができる。
【0063】
操作レバー5は、油圧ショベル1の操作者に操作される。上部旋回体2を旋回させるために操作レバー5が操作されると、操作レバー5の操作量及び操作方向に対応する操作信号が操作レバー5から出力される。
【0064】
コントローラ21は、操作レバー5からの操作信号に基づいて、操作レバー5の操作量及び操作方向に応じた制御信号を中立保持弁33に出力する。
【0065】
操作レバー5が中立位置に配置されている場合、旋回ポンプ29の斜板の傾転角がゼロになる。斜板の傾転角がゼロである場合、エンジン14が起動して旋回ポンプ29が駆動されても、旋回ポンプ29からの作動油の吐出量はゼロであるため、旋回モータ30は回転しない。
【0066】
中立保持弁33が中立位置に配置されると、旋回モータ30から旋回ポンプ29への作動油の通過が阻止される。また、第1バイパス流路68及び第2バイパス流路69には、旋回モータ30から旋回ポンプ29への作動油の通過を阻止するチェック弁70及びチェック弁71が設けられる。そのため、例えば油圧ショベル1が坂道に停車され、上部旋回体2を旋回させる外力が上部旋回体2に作用しても、旋回モータ30の停止した状態が維持されるため、上部旋回体2が不用意に旋回することが抑制される。
【0067】
上部旋回体2を旋回させるために操作レバー5が操作者に操作されると、操作レバー5の操作量及び操作方向に応じた制御信号がコントローラ21から中立保持弁に出力される。旋回ポンプ29の斜板の傾転角は変更され、中立保持弁33のスプール67は、中立位置から第1位置又は第2位置に移動する。
【0068】
例えば、旋回ポンプ29の第1吐出口29Aから作動油が吐出され、中立保持弁33のスプール67が第1位置に移動すると、旋回ポンプ29の第1吐出口29Aから第1メイン流路31に吐出された作動油は、第1バイパス流路68を介して旋回モータ30の第1吸込口30Aに供給される。旋回モータ30に供給された作動油は、第2吸込口30Bから第2メイン流路32に吐出された後、中立保持弁33を介して旋回ポンプ29の第2吐出口29Bに供給される。この場合、上部旋回体2は、例えば右回りに旋回する。
【0069】
例えば、旋回ポンプ29の第2吐出口29Bから作動油が吐出され、中立保持弁33のスプール67が第2位置に移動すると、旋回ポンプ29の第2吐出口29Bから第2メイン流路32に吐出された作動油は、第2バイパス流路69を介して旋回モータ30の第2吸込口30Bに供給される。旋回モータ30に供給された作動油は、第1吸込口30Aから第1メイン流路31に吐出された後、中立保持弁33を介して旋回ポンプ29の第1吐出口29Aに供給される。この場合、上部旋回体2は、例えば左回りに旋回する。
【0070】
[中立保持弁の暖機]
図4は、実施形態に係る中立保持弁33を模式的に示す図である。図4に示すように、中立保持弁33は、スプール67と、スプール67の周囲に配置されるボディ77とを有する。図2及び図4に示すように、中立保持弁33は、中立保持弁33のスプール67の周囲に配置される暖機流路76がボディ77に形成される。ボディ77は、スプール67を移動可能に支持する。暖機流路76は、ボディ77に配置される。実施形態において、暖機流路76は、ボディ77の内部に形成される。なお、暖機流路76は、ボディ77の外面に接触するように配置されたチューブの流路でもよい。
【0071】
暖機流路76は、入口ポート76Aと出口ポート76Bとを有する。暖かい作動油が入口ポート76Aを介して暖機流路76に流入して、暖機流路76を流れることにより、中立保持弁33が暖機される。暖機流路76を流れた作動油は、出口ポート76Bから流出する。暖機流路76は、ボディ77の第1ポンプポート67Aと、第2ポンプポート67Bと、第1モータポート67Cと、第2モータポート67Dとが形成される位置と異なる位置に形成され、第1ポンプポート67Aと、第2ポンプポート67Bと、第1モータポート67Cと、第2モータポート67Dと繋がっていない。
【0072】
図2及び図4に示すように、油圧システム13は、暖機流路76の入口ポート76Aに接続される供給流路78と、暖機流路76の出口ポート76Bに接続される排出流路79とを備える。供給流路78は、メイン弁26と背圧弁18との間のタンク流路27の第1部分27Aと暖機流路76の入口ポート76Aとを接続する。排出流路79は、背圧弁18とタンク28との間のタンク流路27の第2部分27Bと暖機流路76の出口ポート76Bとを接続する。
【0073】
上述のように、メインポンプ22の吐出圧がリリーフ圧以上のときにリリーフ弁19が開放される。リリーフ弁19が開放されると、リリーフ弁19から作動油が流出する。リリーフ弁19から作動油が流出するとき、作動油の圧力エネルギーが熱エネルギーに変換され、作動油の温度が上昇する。すなわち、リリーフ弁19から流出する作動油は、暖かい。
【0074】
リリーフ弁19から流出した暖かい作動油は、流出流路61を介して第1部分27Aに供給される。すなわち、暖かい作動油が第1部分27Aに供給される。リリーフ弁19から流出した暖かい作動油は、第1部分27A、供給流路78、及び入口ポート76Aを介して、暖機流路76に供給される。暖かい作動油が暖機流路76を流れるので、中立保持弁33が暖機される。暖機流路76を流れた作動油は、出口ポート76Bから流出し、第2部分27Bを介してタンク28に排出される。
【0075】
[制御方法]
図5は、実施形態に係る油圧ショベル1の制御方法を示すフローチャートである。図5を参照しながら、油圧ショベル1の制御方法として中立保持弁33の暖機方法について説明する。
【0076】
油圧ショベル1がキーオンされ、油圧ショベル1が起動すると、温度センサ20は、作動油の温度を検出する。コントローラ21は、温度センサ20の検出値を取得する(ステップS1)。
【0077】
コントローラ21は、作動油の温度を示す温度センサ20の検出値が予め定められた規定値以下か否かを判定する(ステップS2)。
【0078】
ステップS2において、温度センサ20の検出値が規定値以下であると判定した場合(ステップS2:Yes)、コントローラ21は、中立保持弁33の暖機が必要であると判定する。
【0079】
コントローラ21は、タンク流路27が絞られるように、背圧弁18を制御する。タンク流路27が閉鎖されることにより、メイン弁26の背圧は、第2背圧に調整される(ステップS3)。
【0080】
図6は、実施形態に係る中立保持弁33が暖機されているときの油圧システム13を示す図である。図6に示すように、中立保持弁33を暖気する場合、コントローラ21は、第1部分27Aから暖機流路76に作動油が供給されるように、メイン弁26の背圧を第2背圧に調整する。メイン弁26の背圧が上昇すると、タンク流路27の第1部分27Aから暖機流路76への作動油の供給が促進される。
【0081】
実施形態においては、中立保持弁33の暖機と並行して、メイン弁26の暖機が実施される。中立保持弁33の暖機及びメイン弁26の暖機を実施する場合、メインポンプ22の吐出圧がリリーフ圧以上に上昇される。
【0082】
図6に示すように、油圧ショベル1の操作者は、例えばバケットシリンダ37のピストンがピストンの可動範囲の端部(ストロークエンド)に到達するように、操作レバー5を操作する。図6に示す例において、油圧ショベル1の操作者は、ピストンの可動範囲においてピストンが最もボトム側に配置されるように、操作レバー5を操作する。ピストンが最もボトム側に配置されることにより、バケットシリンダ37が最も収縮される。ピストンが最もボトム側に配置された状態で、メインポンプ22からバケットシリンダ37のロッド室37Bに作動油が供給され続けると、ポンプ流路23、流入流路53、ロッド流路55、及びロッド室37Bのそれぞれの作動油の圧力が上昇する。
【0083】
作動油の圧力が上昇して、ポンプ流路23、流入流路53、ロッド流路55、及びロッド室37Bのそれぞれの作動油の圧力がリリーフ圧以上になると、リリーフ弁19が開放される。リリーフ弁19が開放されると、リリーフ弁19からリリーフ流路75を介して流出流路61に作動油が流出する。上述のように、リリーフ弁19から流出する作動油は、暖かい。リリーフ弁19から流出した暖かい作動油は、第1部分27A及び供給流路78を介して暖機流路76に供給される。これにより、中立保持弁33が暖機される。
【0084】
暖機流路76を流れた作動油は、出口ポート76Bから流出し、排出流路79を介して第2部分27Bに供給される。第2部分27Bの圧力は、第2背圧よりも低い。そのため、暖機流路76を流れた作動油は、出口ポート76B及び排出流路79を介して第2部分27Bに流れることができる。第2部分27Bに供給された作動油は、タンク28に排出される。
【0085】
また、図6に示すように、リリーフ弁19から流出した温かい作動油は、流出流路45、流出流路51、流出流路56、第1モータ流路59、及び第2モータ流路60のそれぞれに供給される。また、バケットシリンダ37のボトム室37Aから作動油が流出するとき、作動油の圧力エネルギーが熱エネルギーに変換され、作動油の温度が上昇する。すなわち、バケットシリンダ37のボトム室37Aから流出する作動油は、暖かい。バケットシリンダ37のボトム室37Aから流出した作動油は、ボトム流路54に供給される。リリーフ弁19から流出した作動油及びバケットシリンダ37から流出した作動油により、メイン弁26が暖機される。
【0086】
なお、図6において、太い実線で示す流路は、暖機された作動油が通過する流路である。
【0087】
なお、図6には、バケットシリンダ37のピストンがストロークエンドに到達している状態が示されている。メインポンプ22の吐出圧をリリーフ圧以上にするために、ブームシリンダ35のピストンがストロークエンドに到達するように操作レバー5が操作されてもよいし、アームシリンダ36のピストンがストロークエンドに到達するように操作レバー5が操作されてもよい。
【0088】
コントローラ21は、温度センサ20の検出値が規定値を上回るまで、タンク流路27が閉鎖され続けるように、背圧弁18を制御する。
【0089】
コントローラ21は、タンク流路27が絞られた状態で、温度センサ20の検出値を取得し(ステップS1)、温度センサ20の検出値が規定値以下か否かを判定する(ステップS2)。
【0090】
ステップS2において、温度センサ20の検出値が規定値以下ではないと判定した場合(ステップS2:No)、コントローラ21は、中立保持弁33の暖機が不要であると判定する。中立保持弁33の暖機が不要である場合、コントローラ21による背圧弁18の制御が実施されない。コントローラ21から背圧弁18に制御信号が出力された場合、背圧弁18は、タンク流路27が開放されるように作動する。タンク流路27が開放されることにより、メイン弁26の背圧は、第1背圧に調整される。
【0091】
中立保持弁33が暖機されている場合、油圧ショベル1の操作者は、メイン弁26の背圧が第1背圧に調整されている状態で、操作レバー5を操作して、油圧ショベル1を動作させることができる。
【0092】
メイン弁26の背圧が第1背圧に調整されている状態で、作業機3を動作させることにより、油圧ショベル1の燃費が低減される。作業機3は、シリンダのロッド圧とヘッド側の圧力差により生じる推力により駆動する。メイン弁26の背圧が第1背圧に調整されている状態では、背圧が低くなるため、メインポンプ22の吐出圧が低くても、作業機3の駆動に必要なシリンダ差圧を得ることができる。これにより、メイン弁26の背圧が低い状態においては、エンジン14の出力が低く、メインポンプ22の吐出圧が低くても、作業機3の動作に必要な圧力の作業機シリンダ24に作動油を供給できるので、油圧ショベル1の燃費が低減される。
【0093】
走行モータ25が駆動するように操作レバー5が操作され、下部走行体4が走行している状態で、操作レバー5が中立位置に戻された場合、走行スプール41が中立位置に配置され、メインポンプ22から走行モータ25への作動油の流入が制限される。一方、操作レバー5が中立位置に戻されても、下部走行体4は慣性(惰性)で走行し続けるので、走行モータ25は駆動し続ける。メインポンプ22から走行モータ25への作動油の流入が制限された状態で、走行モータ25が駆動し続けると、走行モータ25の少なくとも一部が負圧になる可能性がある。走行モータ25の少なくとも一部が負圧になると、走行モータ25においてキャビテーションが発生する可能性がある。キャビテーションが発生すると、走行モータ25の動作不良が発生する可能性がある。
【0094】
実施形態において、コントローラ21は、メイン弁26の背圧が第1背圧に調整されている状態で、メインポンプ22から走行モータ25への作動油の流入が制限され、且つ、走行モータ25が駆動している惰性走行状態か否かを判定する(ステップS4)。
【0095】
ステップS4において、走行モータ25への作動油の流入が制限され、且つ、走行モータ25が駆動している惰性走行状態である判定した場合(ステップS4:Yes)、コントローラ21は、メインポンプ22が駆動している状態で、タンク流路27が閉鎖されるように、背圧弁18を制御する。メインポンプ22が駆動している状態で、タンク流路27が閉鎖されることにより、メイン弁26の背圧は、第2背圧に調整される(ステップS5)。
【0096】
メイン弁26の背圧が上昇すると、例えばタンク流路27の作動油が、流出流路61、走行スプール41、及び第1モータ流路59又は第2モータ流路60を介して、走行モータ25に供給される。すなわち、メイン弁26の背圧が上昇すると、タンク流路27から走行モータ25への作動油の供給が促進される。これにより、走行モータ25が負圧になることが抑制され、キャビテーションの発生が抑制される。
【0097】
ステップS4において、走行モータ25が駆動していない判定した場合(ステップS4:No)、タンク流路27が開放される(ステップS6)。
【0098】
以下、コントローラ21は、背圧弁18に係る制御について、油圧ショベル1がキーオフされるまで、上述の処理を繰り返す。
【0099】
[効果]
以上説明したように、実施形態によれば、油圧システム13は、オープン回路により構成されたメイン油圧回路16と、クローズド回路により構成された旋回油圧回路17とを備える。メイン油圧回路16は、メインポンプ22と、作業機シリンダ24と、メインポンプ22から作業機シリンダ24への作動油の流入を制御するメイン弁26と、作業機シリンダ24から流出した作動油がメイン弁26を介して供給されるタンク28と、を有する。旋回油圧回路17は、旋回ポンプ29と、旋回モータ30と、旋回ポンプ29と旋回モータ30との間の作動油の通過を制御する中立保持弁33と、を有する。また、油圧システム13は、メイン弁26とタンク28との間のタンク流路27に配置され、メイン弁26の背圧を調整する背圧弁18と、中立保持弁33のスプール67の周囲に配置される暖機流路76と、メイン弁26と背圧弁18との間のタンク流路27の第1部分27Aと暖機流路76の入口ポート76Aとを接続する供給流路78と、背圧弁18とタンク28との間のタンク流路27の第2部分27Bと暖機流路76の出口ポート76Bとを接続する排出流路79と、を備える。
【0100】
これにより、メイン油圧回路16から供給された暖かい作動油が暖機流路76を流れる。暖かい作動油が暖機流路76を流れるので、油圧機器の一種である中立保持弁33が暖機される。
【0101】
中立保持弁33が暖機されていない状態で、高温度の作動油が中立保持弁33にいきなり供給されると、中立保持弁33の動作不良が発生する可能性がある。例えば、スプール67の熱容量とボディ77の熱容量とが異なる場合、暖機されていない中立保持弁33に高温度の作動油がいきなり供給されると、スプール67の熱膨張量とボディ77の熱膨張量との差により、スプール67とボディ77とが固着する現象が発生する可能性がある。スプール67とボディ77とが固着すると、中立保持弁33の動作不良が発生する可能性がある。
【0102】
実施形態によれば、メイン油圧回路16から供給された暖かい作動油により中立保持弁33が暖機される。そのため、スプール67とボディ77とが固着する現象の発生が抑制される。したがって、中立保持弁33の動作不良の発生が抑制される。
【0103】
実施形態において、暖機流路76は、中立保持弁33のボディ77に配置される。これにより、中立保持弁33は、適正に暖機される。
【0104】
メイン油圧回路16は、メインポンプ22とメイン弁26との間のポンプ流路23に接続され、メインポンプ22の吐出圧が予め定められたリリーフ圧以上のときに開放されるリリーフ弁19を有する。リリーフ弁19から作動油が流出するとき、作動油の圧力エネルギーが熱エネルギーに変換され、作動油の温度が上昇する。リリーフ弁19から流出した暖かい作動油が、第1部分27A及び供給流路78を介して暖機流路76に供給されることにより、中立保持弁33が暖機される。
【0105】
実施形態において、コントローラ21は、メイン弁26の背圧が第1背圧から第1背圧よりも高い第2背圧に変化するように背圧弁18を制御する。メイン弁26の背圧が上昇されることにより、タンク流路27の第1部分27Aから暖機流路76への作動油の供給が促進される。したがって、中立保持弁33は、適正に暖機される。
【0106】
実施形態において、タンク流路27の作動油の温度が温度センサ20により検出される。コントローラ21は、温度センサ20の検出値が予め定められた規定値以下のときに、メイン弁26の背圧を第2背圧に上昇させる。これにより、中立保持弁33は、暖機が必要なときに適正に暖機される。
【0107】
実施形態において、コントローラ21は、走行モータ25への作動油の流入が制限され、且つ、走行モータ25が駆動している惰性走行状態のときに、メイン弁26の背圧を第2背圧に上昇させる。これにより、走行モータ25においてキャビテーションの発生が抑制される。
【0108】
[その他の実施形態]
上述の実施形態において、背圧弁18は、メイン弁26に内蔵されてもよい。
【符号の説明】
【0109】
1…油圧ショベル、2…上部旋回体、3…作業機、4…下部走行体、5…操作レバー、6…運転室、7…運転席、8…ブーム、9…アーム、10…バケット、11…駆動輪、12…履帯、13…油圧システム、14…エンジン、15…パワーテイクオフ、16…メイン油圧回路、17…旋回油圧回路、18…背圧弁、18A…電磁部、18B…スプリング部、19…リリーフ弁、20…温度センサ、21…コントローラ、21A…プロセッサ、21B…メインメモリ、21C…ストレージ、21D…インターフェース、22…メインポンプ、22A…吐出口、23…ポンプ流路、24…作業機シリンダ、25…走行モータ、25A…第1吸込口、25B…第2吸込口、26…メイン弁、27…タンク流路、27A…第1部分、27B…第2部分、28…タンク、29…旋回ポンプ、29A…第1吐出口、29B…第2吐出口、30…旋回モータ、30A…第1吸込口、30B…第2吸込口、31…第1メイン流路、32…第2メイン流路、33…中立保持弁、35…ブームシリンダ、35A…ボトム室、35B…ロッド室、36…アームシリンダ、36A…ボトム室、36B…ロッド室、37…バケットシリンダ、37A…ボトム室、37B…ロッド室、38…ブームスプール、38A…ポンプポート、38B…第1入出口ポート、38C…第2入出口ポート、38D…タンクポート、38E…中立入口ポート、38F…中立出口ポート、39…アームスプール、39A…ポンプポート、39B…第1入出口ポート、39C…第2入出口ポート、39D…タンクポート、39E…中立入口ポート、39F…中立出口ポート、40…バケットスプール、40A…ポンプポート、40B…第1入出口ポート、40C…第2入出口ポート、40D…タンクポート、40E…中立入口ポート、40F…中立出口ポート、41…走行スプール、41A…ポンプポート、41B…第1入出口ポート、41C…第2入出口ポート、41D…タンクポート、41E…中立入口ポート、41F…中立出口ポート、42…流入流路、43…ボトム流路、44…ロッド流路、45…流出流路、46…中立流路、47…中立流路、48…流入流路、49…ボトム流路、50…ロッド流路、51…流出流路、52…中立流路、53…流入流路、54…ボトム流路、55…ロッド流路、56…流出流路、57…中立流路、58…流入流路、59…第1モータ流路、60…第2モータ流路、61…流出流路、62…ネガティブ制御機構、63…ブームチェック弁、64…アームチェック弁、65…バケットチェック弁、66…走行チェック弁、67…スプール、67A…第1ポンプポート、67B…第2ポンプポート、67C…第1モータポート、67D…第2モータポート、68…第1バイパス流路、69…第2バイパス流路、70…チェック弁、71…チェック弁、74…リリーフ流路、75…リリーフ流路、76…暖機流路、76A…入口ポート、76B…出口ポート、77…ボディ、78…供給流路、79…排出流路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6