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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050516
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】打音検査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20230404BHJP
   G01N 29/04 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G01N29/265
G01N29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160658
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【弁理士】
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 武志
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA10
2G047AD11
2G047BA04
2G047BC07
2G047CA03
2G047DB03
2G047EA10
2G047EA13
2G047GA19
2G047GA21
2G047GG47
2G047GH12
2G047GJ02
(57)【要約】
【課題】作業者が一人でもスムーズに測量作業が可能な測量システムの提供。
【解決手段】ターゲットと、飛行ユニットと、検査体の打音検査を実施する打音検査機構とを有する打音検査装置と、スキャン光を走査して点群データを習得するスキャナを有し、前記ターゲットを追尾、測距および測角が可能に構成された測量機と、前記スキャナが習得した点群データを解析して形状データを算出する点群データ解析部と、前記点群データ解析部が算出した前記形状データを基に、前記打音検査装置の飛行計画を算出する飛行計画算出部と、とを有する演算処理部と、を備え、前記測量機は、前記打音検査装置の前記ターゲットを追尾して、前記打音検査機構が打音検査時に測距および測角を実施する。検査体の形状データを基に飛行計画を算出して、自動で打音検査を行うことができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットと、飛行ユニットと、検査体の打音検査を実施する打音検査機構とを有する打音検査装置と、
スキャン光を走査して点群データを習得するスキャナを有し、前記ターゲットを追尾、測距および測角が可能に構成された測量機と、
前記スキャナが習得した点群データを解析して形状データを算出する点群データ解析部と、前記点群データ解析部が算出した前記形状データを基に、前記打音検査装置の飛行計画を算出する飛行計画算出部と、とを有する演算処理部と、
を備え、
前記測量機は、前記打音検査装置の前記ターゲットを追尾して、前記打音検査機構が打音検査を実施するタイミングと同期したタイミングで、測距および測角を実施する、
ことを特徴とする打音検査システム。
【請求項2】
前記飛行計画算出部は、前記形状データの表面を所定距離ごとに打音検査の検査点を設定して、網羅的に前記検査体の表面に打音検査を実施させる飛行計画を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の打音検査システム。
【請求項3】
前記演算処理部は、前記点群データ解析部が算出した前記形状データを基に、および前記測量機による測距・測角で取得したデータに基づいて、前記打音検査装置による打音検査結果を視認可能な情報とする打音検査後処理部を備える、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の打音検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広範囲に安定して打音検査できる打音検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建造物には、安全性を維持するための定期的な点検が実施される。例えば、コンクリート建造物では、検査者がハンマーで打撃して打音を検査する打音検査によって、コンクリート内部にひび割れや浮きなどの異常部位がないか調べられる。作業者が直接ハンマーで打撃するだけでなく、アームの先端に検査装置を付けてアームを伸ばして検査した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-205216号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし検査対象は、ビル、橋脚、トンネルなど、大型の建造物であり、アームの長さに限界がある。
本発明は、この問題を鑑みてなされたものであり、検査員が手の届かない高所でも安定して打音検査できる打音検査システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題を解決するため、本開示のある態様では、ターゲットと、飛行ユニットと、検査体の打音検査を実施する打音検査機構とを有する打音検査装置と、スキャン光を走査して点群データを習得するスキャナを有し、前記ターゲットを追尾、測距および測角が可能に構成された測量機と、前記スキャナが習得した点群データを解析して形状データを算出する点群データ解析部と、前記点群データ解析部が算出した前記形状データを基に、前記打音検査装置の飛行計画を算出する飛行計画算出部と、とを有する演算処理部と、を備え、前記測量機は、前記打音検査装置の前記ターゲットを追尾して、前記打音検査機構が打音検査を実施するタイミングと同期したタイミングで、測距および測角を実施するように、打音検査システムを構成した。
【0006】
この態様によれば、スキャナによる検査体の形状を把握して飛行計画を算出でき、自動で検査装置を飛行させて打音検査できる。さらに正確な打音検査装置の位置や姿勢を把握し、打音検査位置を精密に把握することができる。
【0007】
また、ある態様では、前記飛行計画算出部は、前記形状データの表面を所定距離ごとに打音検査の検査点を設定して、網羅的に前記検査体の表面に打音検査を実施させる飛行計画を算出するように構成した。この態様によれば、飛行計画で、自動で検査体を網羅的に検査できる。
【0008】
また、ある態様では、前記演算処理部は、前記点群データ解析部が算出した前記形状データを基に、および前記測量機による測距・測角で取得したデータに基づいて、前記打音検査装置による打音検査結果を視認可能な情報とする打音検査後処理部を備えるように構成した。検査体の形状データと共に、検査結果に基づいて異常個所を可視化できる。
【発明の効果】
【0009】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、高所でも安定して打音検査できる打音検査システムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】好適な実施形態に係る打音検査システムの概略構成図である。
図2】測量機の構成ブロック図である。
図3】スキャナの構成ブロック図である。
図4】打音検査装置の正面図である。
図5】打音検査装置の構成ブロック図である。
図6】打音検査装置の接地状態を示す。図7(A)は、接地面が天井面の場合の接地状態を示す。図7(B)は、接地面が傾斜面である場合の接地状態を示す。図7(C)は、接地面が鉛直面である場合の接地状態を示す。
図7】処理PCの構成ブロック図である。
図8】三次元形状データ算出の一例である。
図9】飛行計画算出の一例である。
図10】打音検査のフローチャートである。
図11】打音検査の後処理後表示の一例である。
図12】打音検査の結果の一例である。
図13】打音検査の結果の一例である。
図14】打音検査システムによる別の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の構成の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。また、同一の構成を持つものは同一の符号を付して、説明を省略する。
【0012】
(打音検査システム)
図1は、本発明の好適な実施形態である打音検査システム1の概略構成図であり、検査現場での作業イメージを示している。本実施形態に係る打音検査システム1は、打音検査装置4、測量機2、処理PC6を備える。処理PC6、測量機2、打音検査装置4は、相互に接続され、互いに情報を送受信可能となっている。
【0013】
打音検査装置4は、マルチコプターなどの自立飛行可能な無人飛行体(UAV:Unmanned Air Vehicle)である。打音検査装置4は入力された飛行計画(飛行プログラム)に従って自動操縦、または手動操縦される。打音検査装置4は、検査位置まで自ら移動して、打音検査を実施する。打音検査装置4にはターゲットTが取り付けられている。
【0014】
測量機2は、3次元スキャナ搭載型トータルステーションである。自動追尾機能・測距及び測角機能・スキャン機能を有する。全周にわたってスキャン光を走査して、全周の三次元点群データを習得可能に構成されている。また、ターゲットTの追尾、測距および測角を実施する。
【0015】
処理PC6は、検査体Bのある現場内に設置される。測量機2、打音検査装置4、および処理PC6は相互に無線接続され(有線接続も可)、互いに情報を送受信可能となっている。
【0016】
測量機2は、基準点中心上に三脚を用いて設置される。測量機2は、検査体Bをスキャン走査して、三次元点群データを取得する。三次元形状データを取得する。処理PC6は、習得された三次元点群データから三次元形状データを算出し、打音検査の検査点を含む飛行計画を算出するなど、さまざまな演算処理を実施する。
【0017】
(測量機2)
前述の通り、測量機2は、3次元スキャナ搭載型トータルステーションであり、図1に示すように、整準器の上に設けられた基盤部2aと、基盤部2aを軸H-H周りに水平に回転する托架部2bと、托架部2bの中央で軸V-V周りに鉛直回転する望遠鏡2cを有し、さらに上部にスキャナ30を有する。
【0018】
図2は、測量機2の構成ブロック図である。測量機2は、水平角検出器21、鉛直角検出器22、水平回転駆動部23、鉛直回転駆動部24、測量機制御部25、測距部26、追尾部27、通信部28、スキャナ30を備える。
【0019】
水平角検出器21と鉛直角検出器22は、エンコーダである。水平角検出器21は、托架部2bの回転軸に設けられ、托架部2bの水平角を検出する。鉛直角検出器22は、望遠鏡2cの回転軸に設けられ、望遠鏡2cの鉛直角を検出する。
【0020】
水平回転駆動部23および鉛直回転駆動部24はモータである。水平回転駆動部23は托架部2bの回転軸を動かし、鉛直回転駆動部24は、望遠鏡2cの回転軸を動かす。両駆動部の協働により、望遠鏡2cの向きが変更される。水平角検出器21と鉛直角検出器22とで、測角部を構成する。水平回転駆動部23および鉛直回転駆動部24とで、駆動部を構成する。
【0021】
測距部26は、送光部と受光部を備え、例えば赤外パルスレーザ等の測距光を送光部から出射し、その反射光を受光部で受光し、測距光と内部参照光との位相から測距する。測距部は、プリズム測定のみならず、ノンプリズム測定も可能となっている。
【0022】
追尾部27は、測距光とは異なる波長の赤外線レーザなどの追尾光として出射する追尾送光系と、CCDセンサまたはCMOSセンサなどのイメージセンサを有する追尾受光系を有する。追尾部27は、追尾光を含む風景画像と追尾光を除いた風景画像を取得し、両画像を測量機制御部25に送る。測量機制御部25は、両画像の差分からターゲット像の中心を求め、ターゲット像の中心と望遠鏡2cの視軸中心からの隔たりが一定値以内に収まる位置をターゲットの位置として検出し、常に望遠鏡2cがターゲットの方向を向くように、自動追尾する。
【0023】
通信部28は、外部ネットワークとの通信を可能にするものであり、例えば、インターネットプロトコル(TCP/IP)を用いてインターネットを接続し、打音検査装置4および処理PC6と情報の送受信を行う。無線通信はこれに制限されず、既知の無線通信を使用することができる。
【0024】
スキャナ30は、三次元レーザスキャナである。
【0025】
図3は、スキャナの構成ブロック図である。スキャナ30は、スキャナ鉛直角検出器31、スキャナ鉛直回転駆動部32、回動ミラー33、スキャナ測距部37、スキャナ制御部39を有する。
【0026】
回動ミラー33は、スキャナ鉛直回転駆動部32に駆動されて、図示しない鏡筒を介して、鉛直方向回動軸R-R周りに回動する。回動ミラーは、スキャナ30の筐体30aを介して、測量機2の水平方向回転軸H-H上に配置されており、スキャナ30の筐体30aと托架部2bとは一体的に水平回転する。
【0027】
スキャナ測距部37は、スキャン光として赤外線パルスレーザ光を、回動ミラー33を用いて、測定対象物に向けて出力し、フォトダイオードなどの受光部でその反射光を受光する。
【0028】
スキャナ制御部39は、スキャナ鉛直回転駆動部32を制御して、回動ミラー33を回動するとともに、水平回転駆動部23を制御して水平駆動させ、スキャン光を鉛直方向および水平方向に走査させる。スキャン光が出射されてから受光部で受光するまでの時間を計測することで、スキャン光の反射点までの距離が求められる。またスキャナ鉛直角検出器31と、水平角検出器21から、反射点の角度を計測する。これを繰り替えることで、反射点の三次元点群データを得る。取得した点群データは通信部28により処理PC6へ送られる。スキャナの基準点および基準方向と、望遠鏡2cとの関係は既知とする。
【0029】
本実施形態においては、スキャナ30は測量機2の上部に配置され、水平回動は基盤部2aを水平に回転する托架部2bを用いたが、スキャナ30専用の水平回転駆動部と水平角度検出を備えた構成でもよく、またスキャナ30が望遠鏡2cと一体化した構成の測量機を用いてもよい。
【0030】
測量機制御部25は、CPUを備えたマイクロコントローラであり、ROMおよびRAMを有し、ROMに収納されたプログラムにより、RAMにて各制御が実行される。制御として、通信部28を介した情報の送受信、水平回転駆動部23および鉛直回転駆動部24による各回転軸の駆動、測距部26による測距、水平角検出器21および鉛直角検出器22による測角、追尾部27による自動追尾、スキャナ30による三次元点群データの取得を行う。
【0031】
測量機2は、測距部26および測角部(21、22)により、ターゲットTの測距および測角を行う。打音検査が実施されたタイミングと同期したタイミングで、測量機2はターゲットTの測距および測角を行い、測定(測距・測角)した結果(以下、測定データDAと称する)は、通信部28を介して処理PC6へ送られる。また、測量機2は追尾中も、所定の間隔で随時、ターゲットTへの測距・測角を行う。追尾時の測定データも処理PC6へ送られ、ターゲットT、即ち、打音検査装置4の移動ルートや移動時間が把握される。
【0032】
(打音検査装置4)
図4は、打音検査装置4の側面である。図5は打音検査装置4の構成ブロック図である。
【0033】
打音検査装置4は、ターゲットT、打音検査機構50、飛行ユニット41、マーキング機構43、3軸センサ44、検知センサ45、通信部46、装置制御部49を有する。
【0034】
打音検査装置4は、筐体4aを有する。ターゲットTは、筐体4aの下部に固定されている。ターゲットTは、複数の三角錐状のプリズムを放射状に組み合わせて構成された、いわゆる全方位プリズムであり、その全周(360°)から入射する光を、その入射方向と反対の方向に再帰反射する。
【0035】
打音検査機構50は、筐体4aの上部に設けられ、打撃部51と、収音部52とを有する。
【0036】
打撃部51は、ソレノイドコイル51aおよび円柱状のハンマー51bを有し、ソレノイドコイルへの通電のON/OFFにより、ハンマー51bを上下移動させて、検査面Aを打撃する。本実施形態においては、ハンマー51bの打点を検査点Pとしている。詳しくは、仮想水平天井面に打音検査装置4が水平状態で接地したときのハンマー51bの中心の鉛直線と仮想水平天井面との交点を、ハンマー51bの打点としている。
【0037】
収音部52は、いわゆるマイクであり、ハンマー51b近傍に配置され、ハンマー51bによる打音を収音する。収音された収音データDCは装置制御部49へ出力される。
【0038】
ターゲットTは、ハンマー51bの鉛直下方に配置され、ハンマー51bの中心軸である鉛直軸Z上にターゲットTの光学中心(光学的な反射点)が通るように取り付けされている。ターゲットTの光学中心点とハンマー51bの打点との相対位置は既知とする。
【0039】
飛行ユニット41は、それぞれ同数で、4以上かつ偶数であるプロペラ41a、プロペラフレーム41b、プロペラモータ41c、および接地棒41dから構成される。プロペラフレーム41bは筐体4aから放射状に延出し、各プロペラフレーム41bの先端にはプロペラモータ41cが取り付けられている。プロペラモータ41cの出力軸にはプロペラ41aが取り付けられている。プロペラモータ41cによりプロペラ41aが回転し、打音検査装置4は飛行する様に構成されている。接地棒41dは、打音検査装置4が着陸もしくは検査体Bに接地した際に支持する脚であり、プロペラフレーム41bの先端から上下両方向に垂設されている。各接地棒41dは、水平面に接地した際、打音検査装置4が水平姿勢となるように調整されている。飛行ユニット41は、打音検査装置4の飛行装置および姿勢制御装置として機能する。
【0040】
マーキング機構43は、着色されたマーキング用の着色溶液を先端のノズルから噴射し、標点にマーキングを行う吐出装置である。マーキング機構43は、打音検査装置4が水平面に着陸した際、溶液の噴射方向が鉛直上方となるように筐体4aの上部に固定されている。打音検査の結果、異常有りと判定された場合に溶液を噴射して、異常個所を可視化する。蛍光塗料を溶液に含ませると、トンネルなどの暗所や夜間でも作業者が位置を把握しやすく好ましい。
【0041】
3軸センサ44は、IMU(慣性計測装置)であり、3軸ジャイロと3軸加速度センサを有し、打音検査装置4の3軸方向(ロール・ピッチ・ヨー)の角速度と加速度を取得する。3軸センサ44は、打音検査装置4の姿勢を検出する姿勢検出装置として機能する。以下、3軸センサ44の検出結果を姿勢データDBと称する。打音検査が実施されたタイミングと同期されたタイミングで取得された3軸センサ44の姿勢データDBは処理PC6へ送られる。打音検査装置4は、飛行体であり、3軸方向に傾いた姿勢をとることができるため、打音検査の検査点Pの詳細な位置把握のために、打音検査時の姿勢データDBがあると好ましい。処理PC6に送られた姿勢データDBは、ターゲットTの測距・測角データである測定データDAと共に、実際に打音検査を実施した検査点Pの詳細な三次元座標の算出に用いられる。ここで検査点Pは、飛行計画上の打音検査を実施の設定位置であり、検査点PPは、実際に打音試験で打撃された打点となる。
【0042】
検知センサ45は、障害物を検知する光学センサであり、筐体4aの四方に配置され、打音検査装置4の周囲の障害物を検知する。障害物が検知された場合、打音検査装置4はこれを回避する。CCD、CMOSセンサなどの撮像素子を用いて、撮像された画像の解析により障害物や有無や、障害物の位置を特定するように構成してもよい。
【0043】
通信部46は、前述の通信部28と同等の構造を有し、測量機2および処理PC6と情報の送受信を行う。打音検査装置4が手動操縦される場合に、処理PC6からの操縦信号を受信し、その操縦信号を装置制御部49に入力する。自動操縦される場合には、飛行計画を受信し、装置制御部49のメモリ(ROM)に入力する。
【0044】
装置制御部49は、CPUを備えたマイクロコントローラであり、ROMおよびRAMを有し、ROMに収納されたプログラムにより、RAMにて各制御が実行される。プログラムは、自動操縦の場合には入力された飛行計画、手動操縦の場合には、装置通信部47から受信した操縦信号、およびIMU5lの検出結果に基づき、飛行に関する制御信号を演算し、飛行ユニット41(詳しくはプロペラモータ41c)に所要の状態に駆動するよう命令する飛行プログラムなどが収納されている。装置制御部49は、打音検査機構50の打音検査のタイミング、マーキング機構43への噴射指示、3軸センサ44や検知センサ45のデータ取得など、打音検査装置4に搭載された各種機構を制御する。
【0045】
装置制御部49には、打音検査機構50から出力された収音データDCを解析して、異常の有無の有無を判定する判定部491が搭載されている。ここで、異常とは、検査面の亀裂、剥離、浮き、内部空洞などである。異常があった場合、装置制御部49は、マーキング機構43に溶液を噴射させる。
【0046】
打音検査装置4は、飛行計画にのっとり自動で検査点P(P1、P2、P3・・・)を順次移動し、各検査点で打音検査を実施する。打音検査装置4の検査点Pnまでの飛行、検査点Pへ打音検査するための検査体Bへの接地、接地後の姿勢制御、および打音検査は、自動で行われる。飛行中の手動/自動の切り替えも可能で、作業者は自動から手動に切り替えて自ら操縦してもよく、さらに再び自動飛行へ切り替えてもよい。
【0047】
自動操縦を開始されると、打音検査装置4は自動で離陸し最初の検査点Pまで飛行し、到達するとハンマー51bの打点と検査点Pの位置合わせを行い、検査体Bの形状に合わせて接地して姿勢を維持する。打点検査が実施され、判定部491が検査体Bに異常有りと判定する、マーキング機構43により溶液が噴射され、マーキングが施される。打音検査装置4はそこから自動で離脱し、次に検査点まで飛行する。これを全ての検査点が終了するまで繰り返す。これにより打音検査装置4は所望の全ての検査点Pに打音検査を実施することができる。
【0048】
図6は、打音検査装置4の検査時の姿勢を示す。打音検査装置4は、筐体4aの上下方向方に延出する接地棒41dにて、検査体Bの表面(以下、検査面Aと称する)に接地可能に構成されている。
【0049】
接地棒41dは、打音検査装置4の脚として、プロペラフレーム41bの端部から上下方向に延出しており、上方向は検査面に接地するため、下方向は着地のために設けられている。検査体Bの打音検査を実施するには、まず打音検査装置4を、打音検査を実施する検査面Aへ打音検査機構50を対向させるようにして姿勢制御しながら、検査面Aへ近づける。
【0050】
プロペラ41aが回転するとプロペラ41a上方の気圧が下がり、下方の気圧よりも気圧が低くなり、揚力が発生する。検査面Aに近づくと、この気圧差により、打音検査装置4は検査面Aに引き寄せられる。引き寄せられた打音検査装置4は、検査面Aに接地棒41dで接地する。前述の気圧差により、打音検査装置4は、検査面Aへ引き寄せられて張り付くため、打音検査装置4の姿勢は安定する。
【0051】
飛行時には打音検査機構50のハンマー51bは、筐体4a方向に下げられた状態となっており、接地棒41dの上端部よりも下方配置されており、検査面Aに接地棒41dが当接しても、打音検査機構50が検査面Aと干渉することはない。打音検査時には、ハンマー51bは、検査面A方向へ突出して、検査面Aを打撃する。
【0052】
図6(A)に示すように、検査面Aが、例えばトンネルの上部や橋梁床版の下面など(以下、天井面と称す)、天井面である場合、検査面Aの下方まで飛行し、そこから上昇して検査面Aに接地棒41dで当接して張り付く。図6(B)に示すように、検査面Aが傾斜面である場合や、図6(C)に示すように、検査面Aが鉛直面である場合であっても、打音検査装置4は、検査面Aに当接して張り付くことができ、安定して打音検査を実施できる。
【0053】
(処理PC6)
図7は、処理PC6の構成ブロック図である。処理PC6は、汎用パーソナルコンピュータ、PLD(programmable Logic Device)などによる専用ハードウェア、タブレット端末、またはスマートフォンなどである。処理PC6は、通信部61と、表示部62と、入力部63と、記憶部64と、演算処理部65を有する。
【0054】
通信部61は、前述の通信部28と同等の構造を有し、測量機2および打音検査装置4と情報の送受信を行う。
【0055】
表示部62は、例えば液晶ディスプレイである。入力部63は、キーボード、マウスなどであり、種々の入力・選択・決定を可能にする。
【0056】
記憶部64は、例えばHDDドライブである。記憶部64には、打音検査システム1が取得したデータが収納される。
【0057】
演算処理部65は、少なくともCPUおよびメモリ(RAM、ROMなど)を集積回路に実装した制御ユニットである。ROMに収納された各種プログラムに基づいて、RAMで演算処理を行う。演算処理部65は、操作部651、点群データ解析部652、飛行計画算出部653、打音検査後処理部654がプログラム的に構成されている。
【0058】
操作部651は打音検査装置4のコントロールプログラムである。打音検査装置4は、自動飛行、および手動飛行が可能な構成となっている。手動飛行(マニュアル飛行)では、操作部651が入力部63と協働して作業者が直接打音検査装置4の操作(マニュアル飛行)を行う。自動飛行では、操作部651は、測量機2の自動追尾により位置情報を把握して、フィードバック制御しながら、入力した飛行計画に基づいて所望のルートを走行させる。自動飛行においては、作業者は操作不要で、打音検査装置4は、操作部651の完全制御により自動運転する。状況に応じて、手動飛行/自動飛行を切り替えることも可能である。この場合、入力部63として、別体の専用コントローラを用意してもよい。
【0059】
点群データ解析部652は、スキャナ30で取得した三次元点群データを基にスキャン対象物の三次元形状を算出する。算出方法は既知の方法を用いてよく、詳細は省略する。
【0060】
飛行計画算出部653は、点群データ解析部652で算出された検査対象物の三次元形状データ、もしくはあらかじめ用意された検査対象物のCADデータを基に、打音検査装置4の飛行計画を算出する。打点を中心とした1回の打音検査の検査範囲を基に、未検査領域が発生しないよう、検査点Pを設定していく。
【0061】
打音検査後処理部654は、打音検査で取得したデータの後処理を行う。後処理について、詳しくは後述する。
【0062】
図8は、スキャナ30および点群データ解析部652による三次元形状データ算出の一例を示す。
【0063】
図8に示すように、まず既知の基準点Oに測量機2を設置して、検査体Bをスキャナ30のスキャン光で走査し、三次元点群データを取得する。
【0064】
また、基準点Oの座標(x0、y0、z0)から座標変換により、各点の座標を算出する。これにより、算出された検査体BDは、形状そのものだけでなく、絶対三次元座標軸上で形状が把握される。例えば、データ形状で矩形である検査面ADの四つの角部が、それぞれ座標C1(x1,y1,z1)、座標C2(x2,y2,z2)、座標C3(x3,y3,z3)、座標C4(x4,y4,z4)としても把握される。
【0065】
一度の三次元スキャンでは検査体Bの形状を把握しきれない場合、複数の基準点O2,O3,O4・・・に測量機2を配置してスキャンを実施する。あるいは、複数の測量機2を用いてもよい。
【0066】
図9は、飛行計画算出部653における飛行計画の一例を示す。飛行計画算出部653は、算出された検査体BDから飛行計画を算出する。検査体Bの検査領域として検査面ADおよびAD2が隙なく検査されるように、所定距離ごとに離間して検査点P(P1、P2、P3・・・)が設定され、これを全て結ぶ飛行ルートR1が算出される。飛行ルートR1や検査点Pも、検査点P1(xp1,yp1,zp1),検査点(xp2,yp2,zp2)・・・と座標で把握される。これらを含めて算出された飛行計画が打音検査装置4および測量機2へ送られる。
【0067】
検査体Bが一度の三次元スキャンでは形状を把握しきれない範囲では、測量機2がターゲットTを追尾できない場合もあり、複数回スキャンを行った場合は、一度だけの飛行で検査体Bを全て検査するのではなく、複数回の飛行により検査体Bの検査領域をカバーするように飛行計画が算出されると、精度よく全体を網羅できて好ましい。測量機2の設置、スキャン、飛行計画の算出、打音検査を、1セットとして、測量機2の設置位置ごとに実行することにより、検査体B全体を網羅的に検査してもよい。
【0068】
(打音検査方法)
次に、打音検査システム1を用いた打音検査方法を説明する。図10は、打音検査システム1を用いた作業工程フローである。打音検査システム1では、検査体Bの複数の検査点P(P1、P2、P3・・・)を順に連続して打音検査することができる。
【0069】
まず、ステップS101で、基準点に測量機2が設置される。基準点は既知点とする。
【0070】
次に、ステップS102に移行して、検査体Bのスキャンを実施する。測量機2のスキャナ30によりスキャン光で検査体Bを走査して、三次元点群データを取得する。
【0071】
次に、ステップS103に移行して、検査体Bの三次元形状を算出する。スキャナ30の走査で取得された3次元点群データに基づいて、点群データ解析部652が、検査体Bの三次元形状データを算出する。三次元形状データは、測量機2の設置された既知点である基準点から、絶対三次元座標としても把握される。
【0072】
次に、ステップS104に移行して、打音検査装置4の飛行計画を算出する。取得した三次元形状データに基づいて、隙なく検査されるように検査点P(P1、P2、P3・・・)が設定され、これを結ぶ飛行ルートが算出される。
【0073】
次に、ステップS105に移行して、打音検査装置4の離陸準備がなされる。処理PC6から打音検査装置4および測量機2に飛行計画が送られる。測量機2は測距・測角を実施して、打音検査装置4の初期位置が把握される。測量機2は打音検査装置4のターゲットTをロックして追尾を開始する。
【0074】
次に、ステップS106に移行して、打音検査装置4が検査点Pnへ向かって飛行する。打音検査装置4は、3軸センサ44、および測量機2による追尾で、随時打音検査装置4の姿勢・位置は把握されて制御ながら、検知センサ45で障害物を回避しつつ、検査点Pnへ向かって飛行する。
【0075】
次に、ステップS107に移行して、打音検査装置4が検査体Bに接地する。打音検査装置4が検査点Pn近傍に到達すると、検査点Pnのある検査面Aへ打音検査機構50を対向させるように姿勢制御されつつ、検査面Aに近づく。検査面Aに近づくと、打音検査装置4は検査面Aに引き寄せられ、検査面Aに接地棒41dで接地して姿勢が安定する。
【0076】
次に、ステップS108に移行して、打音検査が実施される。装置制御部49は、打音検査機構50のソレノイドコイル51aを通電させ、ハンマー51bを上下運動させて検査面Aを打撃させる。打音は収音部52で収音されて、取得された収音データDCが装置制御部49へ出力される。打音検査装置4は、ハンマーでの打音のタイミングに同期して、3軸センサ44で姿勢データDBを取得する。また、打音検査装置4の打音検査のタイミングに同期させて、測量機2によるターゲットTの測距・測角が実施され、習得された測定データDAは、通信部28を介して処理PC6へ送られる。
【0077】
次に、ステップS109に移行して、判定部491により、収音データDCの解析から検査面Aの検査点Pnの近傍(打音検査範囲)における異常の有無が判定される。
【0078】
次に、ステップS110に移行して、判定部491が異常有りと判定した場合、ステップS111に移行して、マーキング機構43が溶液を検査面Aへ向かって噴射し、マーキングを行う。噴射が完了すると、ステップS112へ移行する。ステップS110で判定部491が異常なしと判定した場合、ステップS112へ移行する。
【0079】
次に、ステップS112に移行して、打音検査データとして、姿勢データDBと収音データDCが処理PC6へ送られる。処理PC6で、測定データDA、姿勢データDB、および収音データDCは、検査点Pnにおける打音検査結果として互いに紐づけされて、記憶部64に収納される。検査点Pnにおける打音検査が完了する。
【0080】
次に、ステップS113に移行して、次に打音検査すべき検査点Pnがある場合には、ステップS106へ移行し、全ての検査点Pの打音検査が完了するまでステップS106~ステップS113を繰り返す。全ての検査点Pの打音検査を終えると、終了する。
【0081】
(作用効果)
上記に示すように、打音検査システム1によれば、検査体Bの三次元形状が把握され、打音検査装置4は自動で、飛行計画に従って、順次、検査点の打音検査を実施する。検査面Aが鉛直面や天井面であっても問題なく移動でき、所望の位置で打音検査を実施することができる。検査体Bの形状および座標はスキャナ30によるスキャンにより把握されているため、打音検査装置4の飛行計画を算出することができる。安全に効率よく検査を実施できる。検査員の手が届かないほど高所であっても、打音検査装置4は自ら検査点へ移動して、問題なく打音検査を実施できる。高所の場合、検査員の足場の確保や安全性が問題となるが、足場を設ける必要がなく、安全に打音検査を実施することができる。また飛行体による検査は、熟練が必要であるが、事前の形状把握による自動飛行計画の作成で、作業者が操作しなくても、自動で打音検査が行われる。
【0082】
打音検査は、ハンマーで打撃して打音で判断するため、検査員の経験や感覚に依存するが、器械による打撃で何度も繰り返し同じ力で打撃でき、かつ判定部による解析から経験に依存せずに異常を検知することができる。定量的でばらつきのない検査を実施することができる。異常ありと判定された場所にマーキングが施されるため、一目で異常個所を把握できる。自動飛行で、自動で検査面Aが網羅的に検査される。検査位置は測量機2の測定により絶対座標で精度よく把握されるため、もれがなく、また異常が疑われる領域は重点的に検査できる。
【0083】
飛行体である打音検査装置4により、作業者が手の届かないような高所や、足場の組めないような場所であっても、打音検査を実施できる。
【0084】
追尾しながら随時、測量機2は測距・測角を実施する。これにより飛行ルートや検査点は精度よくかつ絶対座標にて把握される。飛行ルートは交差しても構わず、同じ場所を何度か打音検査を実施しても問題ない。また、飛行計画においては、検査対象物の態様(コンクリートなどの素材、建築からの経年年数、表面状態など)により、打音検査の検査半径は設定できる。打音検査で異常が検出された場合、追加ミッションとして再度その周囲で打音検査を実施するように構成しても良い。三次元形状データで、異常が発生しやすい打継目などを検出した際は、打継目近辺では検査範囲を小さくして、打音検査の密度を増やす、あるいは打音検査を繰り返すように設定してもよい。
【0085】
また、飛行体は姿勢制御が難しいが、打音検査装置4のターゲットTの測距・測角により、打点が三次元座標として精密に把握されるため、多少目標としてした検査点Pの座標と実際の打点にズレが生じても、問題無い程度であるかを判断でき、問題無しだと判断された場合には、次の検査点に移行することができる。このときの実際に検査が実施された打点の座標から、以降の飛行計画が修正されると好ましい。
【0086】
上記構成により、形状や座標が既知ではない検査体Bの形状が把握され、全領域を網羅的に、かつ自動で打音検査が行われる。検査体の三次元データの用意や検査点の設定などの事前の準備が不要で、3次元データのない古い建造物であっても、自動で網羅的な打音検査を実施することができる。
【0087】
(打音検査データの後処理)
次に、打音検査で取得されたデータの後処理につて詳しく説明する。
【0088】
記憶部64には、実際に打音検査された検査点PP(PP1,PP2,PP3・・・)における測定データDA(DA1、DA2、DA3・・・・)、姿勢データDB(DB1、DB2、DB3・・・)、収音データDC(DC1、DC2、DC3・・・)が収納されている。
【0089】
打音検査後処理部654は、三次元座標(絶対三次元座標)と、測量機2による測定データDA、および打音検査装置4の姿勢データDBから、検査点PPの三次元座標DPを算出する。そして算出した三次元座標DP(PD1、PD2、PD3・・・)に基づいて、検査体Bの三次元形状データである検査体BDに合わせて表示される。
【0090】
さらに、収音データDCを詳しく解析して、異常のレベルを算出し、これも検査体BDに合わせて表示する。これにより検査結果が可視化される。レベルに合わせて色付けして、表示部62に表示させ、異常個所の状態を分かりやすく示すと好ましい。
【0091】
図11(A)は、打音検査後処理部654により、上記後処理が実施され、表示部62に表示されるデータである検査体BDの一例である。図11(B)は打音検査後の検査体Bある。
【0092】
図11(A)に示すように、表示部62には検査体BDが表示され、異常が疑われる箇所が、領域として異常のレベルに合わせて図示される。図11(B)に示すように、実際の検査体Bには、マーキングが施されている。作業者は、データと現物の両方で、検査体Bの異常個所を視認して把握することができる。
【0093】
図12は、表示部62に表示されるデータの別の例である。検査体BD上には、検査点として打点のデータが点PPとして表示される。点PP(PP1、PP2、PP3・・・)は実際に打音検査された打点座標に対応して配置されている。このように後処理を施して表示することで、検査体BDと検査した打点が可視化される。
【0094】
点PPをクリックすると、収音データDCを聞くことや、判定内容、解析結果として、異常の種類(割れ、浮きなど)や、検査点を中心とした所定範囲の予測形状などが表示される。各点PPは、異常の有無または異常レベルにより色分けわれており、異常状態も一目で把握される。
【0095】
検査対象物は、安全のために毎年検査が義務づけされている場合が多く、検査体Bの形状データおよび飛行計画をそのまま次年度の検査に流用でき、毎年の検査の工数を抑制することができる。異常個所も把握できるため、検査体Bを所定時間経過後に再び網羅的に打音検査することで、検査体Bの経年変化を把握することができる。検査員の熟練度によらず、時間的に隔たりがあっても、同じ条件で検査を実施することができるため、客観的に検査体Bの状態が把握される。
【0096】
図13は、後処理後に表示部62に表示されるデータの別の例である。図11は、検査年度の異なる同じ検査体のデータを同時に表示させている。上から、2年前、1年前、今年の打音検査の結果を示している。このように、打音検査時の異なる検査体Bの状態を比較することで、経年劣化を可視化することができる。アニメーションのように所定時間で順に表示させて、アニメーションのように表示させても好ましい。
【0097】
打音検査装置4は飛行体であり、検査対象物が円柱やトンネルであっても、打音検査システム1を用いることができる。
【0098】
図14は、検査体B2がトンネルである打音検査システム1の実施例を示している。図14(A)は、検査体B2のトンネルを示す。トンネル内の既知点に測量機2を配置し、スキャンを実施し、取得した三次元点群データからトンネル形状データの検査体BD2を算出する。飛行計画を算出して、打音検査装置4を自動飛行させて、打音検査を実施する。
【0099】
図14(B)は、打音検査後に、データとして検査体BD2と打音検査の結果を表示部62に表示させたものである。算出された検査体BD2は薄墨で着色して示す。検査不要な路面は除いた。異常有りと判定された箇所を、より濃い薄墨で着色して示す。
【0100】
図14(C)は、検査後のトンネルを示す。打音検査により異常が判定された検査点(打点)にはマーキングが施されている。
【0101】
図14(B)および図14(C)に示すように、検査対象がトンネルであっても、打音検査システム1を適用でき、データでも、現場でも、異常個所が可視化され、検査員に異常個所をわかりやすく示される。打音検査は打音検査装置4の自動飛行により自動で網羅的に実施されるため、暗所であるトンネル内でも問題なく実施される。作業員はマーキング箇所を念入りに再検査し、修繕する。修繕後の再検査も容易に実施できる。全体の作業工数を大幅に減少させることができる。また、トンネル形状と異常個所の三次元座標が把握されるため、次年度の検査では、問題個所を重点検査できる。また、トンネルに限らず、暗所や夜間であっても打音検査システム1を適用でき、打音検査を実施できる。
【0102】
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例に過ぎない。例えば、判定部491を、処理PC6の演算処理部65に実装し、演算処理能力の高い処理PC6で解析や判定を行い、異常の有無のみ装置制御部49へ送るように構成してもよい。
【0103】
このような変形や実施例の組み合わせは当業者の知識に基づいて行うことができ、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
1 :打音検査システム
2 :測量機
4 :打音検査装置
6 :処理PC
1 :打音検査システム
30 :スキャナ
41 :飛行ユニット
50 :打音検査機構
65 :演算処理部
652 :点群データ解析部
653 :飛行計画算出部
654 :打音検査後処理部
B :検査体
P :検査点
P1 :検査点
PC :処理
PC6 :処理
PP :検査点
PR :検査点
Pn :検査点
T :ターゲット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14