(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050533
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】送排水コンテナ、防災用車両、および防災用車両の運用方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20230404BHJP
B60P 3/00 20060101ALI20230404BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20230404BHJP
B62D 33/00 20060101ALI20230404BHJP
A62C 27/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C02F1/00 J
B60P3/00 R
B62D25/20 B
B62D33/00 A
A62C27/00 508
C02F1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160686
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000215822
【氏名又は名称】帝国繊維株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光夫
【テーマコード(参考)】
2E189
3D203
【Fターム(参考)】
2E189AB06
3D203AA14
3D203BC28
3D203DA73
3D203DA82
(57)【要約】
【課題】大型であっても車両搭載時の最大積載量や走行安定性を確保できる送排水コンテナを提供する。
【解決手段】駆動用エンジン11と、ブースト水ポンプ12と、水中ポンプ14とを、1つの収容箱21に備え、収容箱21を車両本体30に対して着脱自在に構成した送排水コンテナ10であって、収容箱22には、収容箱22を車両本体30から降ろしたときに自立させるとともに、車両本体30に対する収容箱21の積み降ろしの際に収容箱21の荷重伝達底面25aとコンテナ接地面Gと間に車両本体30のコンテナ載置部33を進退自在にするための支持脚22が備えられている。また、車両本体30は、エアサスペンション39を備え、このエアサスペンション39によってコンテナ載置部33を昇降する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動用エンジンと、前記駆動用エンジンにより駆動されるブースト水ポンプと、前記駆動用エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータを有するとともに外部の取水源に投入可能な水中ポンプとを、1つの収容箱に備え、前記収容箱を車両本体に対して着脱自在に構成した送排水コンテナであって、
前記収容箱には、前記収容箱を前記車両本体から降ろしたときに自立させるとともに、前記車両本体に対する前記収容箱の積み降ろしの際に前記収容箱の荷重伝達底面とコンテナ接地面との間に前記車両本体のコンテナ載置部を進退自在にするための支持脚が備えられている
ことを特徴とする送排水コンテナ。
【請求項2】
請求項1記載の送排水コンテナを車両本体のコンテナ載置部に着脱自在に搭載する防災用車両であって、
前記車両本体は、エアサスペンションを備え、
前記エアサスペンションによって前記コンテナ載置部を下降させた状態では、前記コンテナ載置部が、前記支持脚で自立状態の前記送排水コンテナの前記荷重伝達底面よりも下方に位置し、
前記エアサスペンションによって前記コンテナ載置部を上昇させた状態では、前記コンテナ載置部が、前記荷重伝達底面に当接するとともに自立状態の前記送排水コンテナを持ち上げるように構成されている
ことを特徴とする防災用車両。
【請求項3】
前記送排水コンテナの荷重伝達底面の近傍には、前後方向に延びるガイドレール部が設けられ、
前記車両本体の前記コンテナ載置部には、前記送排水コンテナの前記車両本体に対する着脱の際に前記ガイドレール部に当接して前記送排水コンテナの前記車両本体に対する左右方向の位置ずれを防止するためのガイドローラが設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の防災用車両。
【請求項4】
前記収容箱の底部には、左右方向を軸心とする支持筒部が設けられ、前記支持脚は、前記支持筒部に対して回転自在かつ前記軸心の延びる方向にスライド自在に挿入される回転軸部を基端部に有することを特徴とする請求項2または3に記載の防災用車両。
【請求項5】
駆動用エンジンと、前記駆動用エンジンにより駆動されるブースト水ポンプと、前記駆動用エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータを有するとともに外部の取水源に投入可能な水中ポンプとを、1つの収容箱に備え、前記収容箱に支持脚を設けた送排水コンテナを、エアサスペンションを備えた車両本体に対して着脱自在に構成した防災用車両の運用方法であって、
前記送排水コンテナを搭載した前記防災用車両を取水源付近の設置ポイントにおいて前記エアサスペンションを使用して前記車両本体のコンテナ載置部を上昇させ、
前記送排水コンテナの前記支持脚を、先端部がコンテナ接地面を向いた使用形態にし、 前記エアサスペンションを使用して前記車両本体の前記コンテナ載置部を下降させることにより、前記コンテナ載置部を、前記支持脚によって自立した前記送排水コンテナの荷重伝達底面よりも下方に位置させ、
前記車両本体を前進させて、前記コンテナ載置部を前記送排水コンテナの前記収容箱の下方から離脱させ、
前記水中ポンプの送水口と前記ブースト水ポンプの吸入口とを第1送水ホースで接続し、
前記水中ポンプを前記取水源に投入し、
前記ブースト水ポンプの吐出口と水送り先とを第2送水ホースで接続し、
前記駆動用エンジンの動力に基づいて前記水中ポンプと前記ブースト水ポンプを駆動させて、前記取水源から前記水送り先まで水を供給する
ことを特徴とする防災用車両の運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災現場から離れた場所にある水源からの送水や、洪水時の大量の水の排水が可能な送排水コンテナ、当該送排水コンテナを備えた防災用車両、および防災用車両の運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防災用車両には、火災、洪水、地震等の各種災害時に大量送水、大量排水、生活用水の確保を行うための車両がある。このような防災用車両では、通常、送水車両と、ホース延長車両の2台の車両が1組として使用されている。そして、遠方に位置する海や河川等の水利ポイントから火災現場まで、長距離かつ大量に送水したり、台風等で洪水、水没している場所から大量の水を排水したりすることが可能となっている。また、地震で水道管網が使用できなくなったとき等には河川から生活用水を住宅地まで供給することも可能となっている。
【0003】
送水車両は、例えば特許文献1に開示されているように、海および河川等の大量に揚水可能な取水源に、油圧で駆動される水中ポンプによって、揚水することが可能な車両である。ホース延長車両は、1000m以上離れている場所に、送水できる送水ホースが積まれている。ホース延長車両には、車両外部に取り出されている送水ホースを回収するホース回収装置が搭載されている。
【0004】
特許文献1の送水車両では、可搬型のベースユニットが車両本体に搭載されている。このベースユニットは、送水または排水の機能を有する送排水コンテナであり、駆動用エンジンと、駆動用エンジンにより駆動される油圧ポンプと、当該油圧ポンプから外部の水中ポンプへ作動油を供給するための油圧ホースを収納するホースリールとが、1つの収容箱に設けられている。送排水コンテナの使用時には、車両本体から送排水コンテナが降ろされる。
【0005】
特許文献1のような送排水コンテナを搭載した従来の送水車両では、車両本体に対する送排水コンテナの積み降ろしは、車両本体に搭載されたクレーンを使用して行っていた。また、車両本体に対して送排水コンテナを容易に積み降ろし可能にするために、車両本体に脱着装置を設ける場合もあった。脱着装置としては、例えば、特許文献2のような、先端にフック部を有して車両前後方向に回動自在な荷役アームを設けたものが知られており、送排水コンテナに設けた被係合部に荷役アームのフック部を係合させて荷役アームを回動させることにより車両本体に対する送排水コンテナの積み降ろしが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7-185031号公報
【特許文献2】特開平10-100779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のような荷役アーム式の脱着装置を備えた車両では、車両本体の走行部分である車台上に、大掛かりな装置を取り付ける必要があり、最大積載量が少なくなるという問題があった。そのため、送排水のためのシステムが大容量のもので積荷となる送排水コンテナが大型になる場合には、送排水のためのシステム全体を車両本体に搭載できないという問題があった。また、特許文献2のような車両では、送排水コンテナの車両搭載時には、車台と送排水コンテナとの間にL字型の荷役アームの水平部分が挟み込まれるような状態となるので、送排水コンテナの車両本体に対する搭載位置が高くなり、車両走行時の走行安定性が悪くなるという問題があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、大型であっても車両搭載時の最大積載量や走行安定性を確保できる送排水コンテナ、当該送排水コンテナを搭載する防災用車両、および当該防災用車両の運用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、第1の発明は、駆動用エンジンと、前記駆動用エンジンにより駆動されるブースト水ポンプと、前記駆動用エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータを有するとともに外部の取水源に投入可能な水中ポンプとを、1つの収容箱に備え、前記収容箱を車両本体に対して着脱自在に構成した送排水コンテナであって、前記収容箱には、前記収容箱を前記車両本体から降ろしたときに自立させるとともに、前記車両本体に対する前記収容箱の積み降ろしの際に前記収容箱の荷重伝達底面とコンテナ接地面との間に前記車両本体のコンテナ載置部を進退自在にするための支持脚が備えられていることを特徴とする。
【0010】
第1の発明によれば、ブースト水ポンプや水中ポンプ等の送排水のためのシステムを、1つの収容箱に備えた送排水コンテナとすることで、送排水のためのシステム部分を車両本体の積荷にすることができる。そのため、車台にブースト水ポンプ等の送排水のためのシステムを直接取り付ける場合と比較して、最大安定傾斜角を確保することができる。また、送排水のためのシステムを収容した収容箱に、車両本体に対する収容箱の積み降ろしの際に収容箱の荷重伝達底面とコンテナ接地面との間に車両本体のコンテナ載置部を進退自在にするための支持脚を設けたことによって、荷役アーム式の大掛かりな脱着装置を必要とすることなく、車両本体に対して容易に送排水コンテナを積み降ろしすることが可能となる。これにより、大掛かりな脱着装置を車両本体に設けない分、車両の最大積載量を確保することができるので、送排水のためのシステムに大容量のものを採用して送排水コンテナが大型となっても、十分にシステム全体を車両本体に搭載することができる。また、送排水コンテナを車両本体に搭載した状態において、車台と送排水コンテナとの間には、荷役アーム式の脱着車両のようなL字型の荷役アームの水平部分が挟み込まれることがない。これにより、送排水コンテナの車両本体に対する搭載位置を低くすることができ、車両走行時の走行安定性に優れたものにできる。
【0011】
第2の発明では、第1の発明の送排水コンテナを車両本体のコンテナ載置部に着脱自在に搭載する防災用車両であって、前記車両本体は、エアサスペンションを備え、前記エアサスペンションによって前記コンテナ載置部を下降させた状態では、前記コンテナ載置部が、前記支持脚で自立状態の前記送排水コンテナの前記荷重伝達底面よりも下方に位置し、前記エアサスペンションによって前記コンテナ載置部を上昇させた状態では、前記コンテナ載置部が、前記荷重伝達底面に当接するとともに自立状態の前記送排水コンテナを持ち上げるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明によれば、車両本体に当初から備わっているエアサスペンションの車高調整機能を有効活用することにより、支持脚によって自立状態の送排水コンテナから車両本体を離脱させることができる。また、支持脚によって自立状態の送排水コンテナを持ち上げて支持脚を収納して送排水コンテナを車両本体に搭載することができる。これにより、送排水コンテナを積み降ろしするための専用の昇降装置を車両本体や送排水コンテナに設ける必要がないので、その分、防災用車両の最大積載量を増大させることができる。その結果、大容量で大型の送排水コンテナを容易に運搬することができる。
【0013】
第3の発明では、第2の発明において、前記送排水コンテナの荷重伝達底面の近傍には、前後方向に延びるガイドレール部が設けられ、前記車両本体の前記コンテナ載置部には、前記送排水コンテナの前記車両本体に対する着脱の際に前記ガイドレール部に当接して前記送排水コンテナの前記車両本体に対する左右方向の位置ずれを防止するためのガイドローラが設けられていることを特徴とする。
【0014】
第3の発明によれば、車両本体に対して送排水コンテナを積み降ろしする際、自立状態の送排水コンテナに対して車両本体の左右方向の位置合わせを運転者が慎重に行う必要がなく、車両本体のガイドローラを送排水コンテナのガイドレール部に当接させながら車両本体を進退させることにより、自動的に左右方向の位置ずれが防止される。これにより、車両本体が支持脚に当たって支持脚が損傷するようなことがなく、作業性がよい。また、車両本体が支持脚に当たることを想定して必要以上に支持脚を頑丈にして支持脚の重量を大きくする必要がないので、結果として送排水コンテナの収容箱内に搭載する機器の積載量を増大させることができる。
【0015】
第4の発明では、第2または第3の発明において、前記収容箱の底部には、左右方向を軸心とする支持筒部が設けられ、前記支持脚は、前記支持筒部に対して回転自在かつ前記軸心の延びる方向にスライド自在に挿入される回転軸部を基端部に有することを特徴とする。
【0016】
第4の発明によれば、送排水コンテナの支持脚を、簡単な構造で収納形態と使用形態とを容易に切換可能なものにすることができる。これにより、例えば支持脚を油圧シリンダで伸縮自在に構成するもの等と比較して支持脚の重量を軽減することができる。その結果、送排水コンテナの収容箱内に搭載する機器の積載量を増大させることができる。
【0017】
第5の発明は、駆動用エンジンと、前記駆動用エンジンにより駆動されるブースト水ポンプと、前記駆動用エンジンにより駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプにより駆動される油圧モータを有するとともに外部の取水源に投入可能な水中ポンプとを、1つの収容箱に備え、前記収容箱に支持脚を設けた送排水コンテナを、エアサスペンションを備えた車両本体に対して着脱自在に構成した防災用車両の運用方法であって、前記送排水コンテナを搭載した前記防災用車両を取水源付近の設置ポイントにおいて前記エアサスペンションを使用して前記車両本体のコンテナ載置部を上昇させ、前記送排水コンテナの前記支持脚を、先端部がコンテナ接地面を向いた使用形態にし、前記エアサスペンションを使用して前記車両本体の前記コンテナ載置部を下降させることにより、前記コンテナ載置部を、前記支持脚によって自立した前記送排水コンテナの荷重伝達底面よりも下方に位置させ、前記車両本体を前進させて、前記コンテナ載置部を前記送排水コンテナの前記収容箱の下方から離脱させ、前記水中ポンプの送水口と前記ブースト水ポンプの吸入口とを第1送水ホースで接続し、前記水中ポンプを前記取水源に投入し、前記ブースト水ポンプの吐出口と水送り先とを第2送水ホースで接続し、前記駆動用エンジンの動力に基づいて前記水中ポンプと前記ブースト水ポンプとを駆動させて、前記取水源から前記水送り先まで水を供給することを特徴とする防災用車両の運用方法である。
【0018】
第5の発明によれば、車台上に荷役アーム式の大掛かりな脱着装置を必要とすることなく、車両本体に対して送排水コンテナを積み降ろしできるので、送排水コンテナの車両本体に対する搭載位置を低くした状態で、大型の送排水コンテナを運搬することができる。これにより、設置ポイントまでが悪路であったとしても、防災用車両の走行安定性を保った状態で容易に大型の送排水コンテナを運搬することができる。
【0019】
また、送排水コンテナの使用時には、送水または排水の作業に必要な部分のみを取水源近くの設置ポイントに残し、車両本体は、設置ポイントから移動させ、別の種類のコンテナを運ぶ等の別の仕事をさせることができる。これにより、駆動用エンジンやブースト水ポンプや水中ポンプ等の送排水のためのシステムを車台に直接取り付けた防災用車両と比較して、車両本体の稼働率を向上させることができる。
【0020】
また、送排水コンテナを取水源近くの設置ポイントに設置した状態において、送排水コンテナを支持脚によって自立させることにより、駆動用エンジンやブースト水ポンプ等を収容した収容箱の床面の位置をコンテナ接地面より高い位置に配置することができる。これにより、仮に大雨の水害で排水のために送排水コンテナを使用する際、大雨が続いて設置ポイントまで水に浸かった場合であっても、水に浸かるのは送排水コンテナの支持脚だけにして、駆動用エンジンまで水に浸からないようにできる。その結果、作業中に駆動用エンジンが停止する等のトラブルを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる送排水コンテナおよび防災用車両によれば、荷役アーム式の大掛かりな脱着装置を必要とすることなく、車両本体に対して容易に送排水コンテナを積み降ろしすることが可能となる。これにより、車両の最大積載量を確保することができるので、送排水のためのシステムに大容量のものを採用して送排水コンテナが大型となっても、十分にシステム全体を車両本体に搭載することができる。また、送排水コンテナの車両本体に対する搭載位置を低くすることができ、車両走行時の走行安定性に優れたものにできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる防水用車両の側面図である。
【
図2】本実施形態にかかる送排水コンテナの側面図である。
【
図3】本実施形態にかかる送排水コンテナを着脱自在に搭載する車両本体の側面図である。
【
図4】本実施形態にかかる送排水コンテナの使用状態を示す概要図である。
【
図5】本実施形態にかかる防災用車両の運用の説明図である。
【
図6】本実施形態にかかる防災用車両において車両本体に対し送排水コンテナを着脱させる際の動作説明図であって、(a)は、車両本体のエアサスペンションによりコンテナ載置部を最高位置まで上昇させたときの説明図、(b)は、車両本体のエアサスペンションによりコンテナ載置部を最低位置まで下降させたときの説明図である。
【
図7】本発明の一実施形態にかかる防災用車両の運用方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態にかかる送排水コンテナおよび防災用車両について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1には、本発明の実施形態にかかる防災用車両1が示されている。この防災用車両1は、車両本体30と、車両本体30に対して着脱自在な送排水コンテナ10とから構成されている。
【0025】
送排水コンテナ10は、
図2および
図4に示すように、駆動用エンジン11と、駆動用エンジン11の燃料を貯留する燃料タンク15と、駆動用エンジン11により駆動されるブースト水ポンプ12と、駆動用エンジン11により駆動される油圧ポンプ13と、油圧ポンプ13により駆動される油圧モータ14aを有するとともに外部の取水源Wに投入可能な水中ポンプ14と、ホースリール16とを、1つの収容箱21に備えている。
【0026】
収容箱21は、側面側に側面扉27を有し、後面側に後面扉28を有している。また、収容箱21の天面側には、駆動用エンジン11から出た排気ガスを外部に逃がすための排気口29が設けられている。
【0027】
ブースト水ポンプ12は、水中ポンプ14だけでは水を送れないような遠距離の水送り先に対し水を送ることを可能にするものである。ブースト水ポンプ12は、収容箱21の前部に配置されており、吸入口12aと吐出口12bとを有している。収容箱21の側面扉27を開くと、吸入口12aと吐出口12bとが外部に露出されるようになっている。吸入口12aは、水中ポンプ14の送水口と第1送水ホース51で接続されるようになっている。また、吐出口12bは、水送り先と第2送水ホース52で接続されるようになっている。コンテナ本体10には、操作盤18が設けられている。
【0028】
駆動用エンジン11は、燃料タンク15とともに収容箱21の中央部に配置されている。燃料タンク15は、駆動用エンジン11を駆動させることにより内部の燃料が少なくなっていくが、燃料の多い少ないにかかわらず、送排水コンテナ10の前後の重量バランスが大きく変わらないようになっている。
【0029】
水中ポンプ14は、収容箱21の後面扉28を通じて外部に出されるようになっている。本実施形態では、水中ポンプ14は、2個備えられている。水中ポンプ14は、フロートを有しており、取水源Wに投入されると水面付近に浮いた状態が維持される。また、水中ポンプ14は、油圧モータ14aによって回転駆動されるインペラーを有している。
【0030】
ホースリール16は、油圧ポンプ13からの作動油を水中ポンプ14の油圧モータ14aに供給するための油圧ホース17を収納するものである。水中ポンプ14が取水源Wに投入される際には、ホースリール16から油圧ホース17が引き出されるようになっている。
【0031】
収容箱21の底部は、天面側より前後方向に延びたベースフレーム部24となっている。ベースフレーム部24には、左右一対で前後方向に延びる縦フレーム25と、前部と後部に左右一対ずつ設けられた被係合部26とが設けられている。
【0032】
縦フレーム25は、
図6に示すように、車両前後方向から見て開口部が車両左右外側を向いたコの字断面となっており、その底面が収容箱21の荷重伝達底面25aとなっている。また、縦フレーム25の車両左右内側面がガイドレール部25bとなっている。前後方向に延びるガイドレール部25bが荷重伝達底面25aの近傍に設けられている。
【0033】
また、ベースフレーム部24には、収容箱21を車両本体30から降ろしたときに自立させるとともに、車両本体30に対する収容箱21の積み降ろしの際に、収容箱21の荷重伝達底面25aとコンテナ接地面Gとの間に車両本体30のコンテナ載置部33を進退自在にするための支持脚22が備えられている。
【0034】
支持脚22は、
図1に示すように、ベースフレーム部24の前部と中央部と後部に左右一対ずつ、合計6本設けられている。前部の支持脚22は、先端側をコンテナ接地面Gに向けた使用形態と使用形態から車両後方側(
図1の矢印A方向)に約90度回動させた収納形態とに切換自在となっている。また、中央部と後部の支持脚22は、先端側をコンテナ接地面Gに向けた使用形態と使用形態から車両前方側(
図1の矢印B方向)に約90度回動させた収納形態とに切換自在となっている。
【0035】
より具体的に、支持脚22の回動機構について説明する。
図6(a)に示すように、ベースフレーム部24には、左右方向を軸心Oとする支持筒部23が設けられている。支持脚22は、支持筒部23に対して回転自在かつ軸心Oの延びる方向にスライド自在に挿入される回転軸部22aを基端部に有している。支持脚22を収納形態から使用形態にするには、支持筒部23から支持脚22を左右方向外側に引き出した後、回転軸部22aをコンテナ接地面Gに向けて回動させるように構成されている。
【0036】
次に、車両本体30は、
図3に示すように、前後方向に延びるシャシフレーム31を有し、シャシフレーム31の前部には運転室32が設けられている。シャシフレーム31上で運転室32の後側には、サブフレーム34が取り付けられている。
【0037】
サブフレーム34の前部には、クレーン41が設けられている。また、サブフレーム34には、前部と後部の2箇所に、左右方向に延びるボルスタ36が設けられている(
図6参照)。ボルスタ36の左右両端部には、ツイストロック部37が設けられている。
【0038】
サブフレーム34の上面側で、クレーン41の位置よりも後方には、コンテナ載置部33が設けられている。コンテナ載置部33の前端部には、コンテナストッパ38が設けられている。また、コンテナ載置部33には、サブフレーム34の上面よりも上方に突出するガイドローラ35が設けられている。
【0039】
ガイドローラ35は、送排水コンテナ10の車両本体30に対する着脱の際にガイドレール部25bに当接して送排水コンテナ10の車両本体30に対する左右方向の位置ずれを補正するために設けられている。
【0040】
ガイドローラ35は、コンテナ載置部33の中央部と後部と後端部に、左右一対ずつ設けられており、合計6個となっている。各ガイドローラ35は、左右一対のサブフレーム34を連結するクロスメンバ上に立設されており、基端側の支柱部と、先端側に設けられて鉛直軸心周りに回転自在なローラ部とを有している。
図6に示すように、左右に隣り合う2個のガイドローラ35,35の左右方向端部間距離は、送排水コンテナ10の左右一対の縦フレーム25,25のガイドレール部25b,25b間寸法に略一致している。
【0041】
車両本体30は、
図3に示すように、エアサスペンション39を有している。エアサスペンション39は、車両本体30の車輪42とシャシフレーム31との間に介設されており、コンテナ載置部33の高さ位置を調整できるようになっている。
図6(b)に示すように、エアサスペンション39によってコンテナ載置部33を下降させた状態では、コンテナ載置部33が、支持脚22で自立状態の送排水コンテナ10の荷重伝達底面25aよりも下方に位置するようになっている。また、
図6(a)に示すように、エアサスペンション39によってコンテナ載置部33を上昇させた状態では、コンテナ載置部33が、送排水コンテナ10の荷重伝達底面25aに当接するとともに自立状態の送排水コンテナ10を持ち上げるように構成されている。
【0042】
エアサスペンション39によってコンテナ載置部33を昇降させる際には、車両本体30のガイドローラ35は、送排水コンテナ10のガイドレール部25bに沿って動くようになっている。
【0043】
また、車両本体30のコンテナ載置部33が送排水コンテナ10の荷重伝達底面25aに当接した状態では、ツイストロック部37の係合部を車両本体30の被係合部26に係合させることができるようになっている。ツイストロック部37の係合部と車両本体30の被係合部26との前後方向の位置合わせは、車両本体30のベースフレーム部24をコンテナストッパ38に当接させることにより、容易に行えるようになっている。
【0044】
次に、
図4~
図7を参照して、本実施形態にかかる防災用車両1の作業者等のユーザによる運用方法について説明する。
【0045】
まず、車両本体30を搭載した防災用車両1を取水源W付近の設置ポイントPまで走行させる(
図7のステップS01)。
【0046】
次に、設置ポイントPにおいて、エアサスペンション39を使用して車両本体30のコンテナ載置部33を上昇させる(
図7のステップS02)。
【0047】
次に、車両本体30のツイストロック部37の係合部を送排水コンテナ10の被係合部26から外す(
図7のステップS03)。
【0048】
次に、送排水コンテナ10の支持脚22を、先端部22bがコンテナ接地面Gを向いた使用形態にする(
図7のステップS04)。この際、
図6(a)に示すように、支持筒部23から支持脚22を左右方向外側(矢印C方向)に引き出した後、回転軸部22aをコンテナ接地面Gに向けて回動させるようにする。支持筒部23から支持脚22を左右方向外側に引き出すことにより、左右に隣り合う支持脚22,22の距離を車両本体30の車幅よりも十分大きくとることが可能になり、送排水コンテナ10の着脱作業が容易になる。
【0049】
次に、車両本体30のエアサスペンション39を使用して車両本体30のコンテナ載置部33を下降させることにより、支持脚22の回転軸部22aをコンテナ接地面Gに接地させる。この際、支持脚22の先端部22bとコンテナ接地面Gとの間に支持脚ベース70を介在させてもよい。そして、コンテナ載置部33をさらに下降させることにより、コンテナ載置部33を支持脚22によって自立した送排水コンテナ10の荷重伝達底面25aよりも下方に位置させる(
図7のステップS05)。
【0050】
次に、車両本体30を前進させて(
図5の矢印D方向)、コンテナ載置部33を送排水コンテナ10の収容箱21の下方から離脱させる(
図7のステップS06)。この際、車両本体30が送排水コンテナ10に対して左右方向(車幅方向)に位置ずれしようとすれば、送排水コンテナ10のガイドレール部25bに車両本体30のガイドローラ35が当接し、それ以上、車両本体30が送排水コンテナ10の支持脚22に近づくことができなくなるので、車両本体30が支持脚22に当たることが規制される。
【0051】
次に、送排水コンテナ10の後面扉28を開き、そこから水中ポンプ14を収容箱21の外に出す。この際、ホースリール16に収納されていた油圧ホース17が水中ポンプ14とともに引き出される。
【0052】
次に、送排水コンテナ10の側面扉27を開き、水中ポンプ14の送水口と、ブースト水ポンプ12の吸入口12aとを第1送水ホース51で接続する(
図7のステップS07)。第1送水ホース51には、水中ポンプ接続ホース51aとメインホース51cとがある。本実施形態では、2個の水中ポンプ14を収容箱21に収納しているが、1個の水中ポンプ14ではブースト水ポンプ12への水の供給量が足りない場合には、各水中ポンプ14の送水口に水中ポンプ接続ホース51aの一端を接続し、2本の水中ポンプ接続ホース51aの他端を管継手51bで集合させる。そして、メインホース51cの一端を管継手51bに接続し、メインホース51cの他端をブースト水ポンプ12の吸入口12aに接続する。
【0053】
次に、水中ポンプ14を河川等の取水源Wに投入する(
図7のステップS08)。この際、車両本体30に設けたクレーン41を使用することができる。水中ポンプ14は、油圧ホース17によって送排水コンテナ10の収容箱21と繋がれた状態となっているが、クレーン41は、車両本体30を移動させることによって送排水コンテナ10に対して自由に位置を変えることができる。これにより、水中ポンプ14の取水源Wへの投入作業が容易となっている。
【0054】
次に、ブースト水ポンプ12の吐出口12bと水送り先とを第2送水ホース52で接続する(
図7のステップS09)。送排水コンテナ10の設置ポイントPから水送り先まで第2送水ホース52を延ばす作業は、防災用車両1とともに行動するホース延長車60が行う。
【0055】
次に、操作盤18を操作し、送排水コンテナ10の収容箱21に搭載された駆動用エンジン11を駆動させる。そして、駆動用エンジン11の動力に基づいて水中ポンプ14とブースト水ポンプ12とを駆動させて、取水源Wから水送り先まで水を供給する(
図7のステップS10)。この際、水中ポンプ14の駆動には、エンジン11によって駆動される油圧ポンプ13からの油圧が使用される。
【0056】
取水源Wから水送り先まで水の供給が始まれば、車両本体30は、送排水コンテナ10の傍にいる必要はなく、別の場所に移動して別のコンテナを運搬する等を行って稼働率を向上させることができる。
【0057】
また、送排水コンテナ10は、取水源W近くの設置ポイントPで送水または排水の作業を行うが、支持脚22によって、駆動用エンジン11等を収容した収容箱21の床面の位置をコンテナ接地面Gより高い位置に配置することができる。これにより、仮に取水源Wから溢れ出た水により設置ポイントPが水に浸かった場合であっても、ブースト水ポンプ12まで水に浸かるのを抑制することができる。
【0058】
なお、送排水コンテナ10による送水または排水の作業が完了すると、上記ステップS01~S10の流れを概ね逆にした流れで、撤収作業が行われる。この撤収作業において、送排水コンテナ10は、車両本体30に搭載されることになる。この際、車両本体30は、エアサスペンション39を使用して車両本体30のコンテナ載置部33を下降させて、支持脚22で自立状態の送排水コンテナ10に向けて後退させるが、車両本体30が支持脚22に当たらないように、左右方向の位置合わせをする必要がある。本実施形態では、この左右方向の位置合わせ(位置補正)は、車両本体30のガイドローラ35を送排水コンテナ10のガイドレール部25bに当接させながら車両本体30を後退させることにより、車両本体30が支持脚22に近づかないように自動的に行われる。車両本体30を前進させる場合と比較して後退させることは難しいので、車両本体30を運転する作業者にとって作業性がよい。
【0059】
以上のとおり、本実施形態にかかる防災用車両1によれば、ブースト水ポンプ12や水中ポンプ14等の送排水のためのシステムを、1つの収容箱21に備えた送排水コンテナ10とすることで、送排水のためのシステム部分を車両本体30の積荷にすることができる。そのため、車台にブースト水ポンプ12等の送排水のためのシステムを直接取り付ける場合と比較して、最大安定傾斜角を確保することができる。また、送排水のためのシステムを収容した収容箱21に、車両本体30に対する積み降ろしの際に車両本体30の荷重伝達底面25aとコンテナ接地面Gとの間に車両本体30のコンテナ載置部33を進退自在にするための支持脚22を設けたことによって、荷役アーム式の大掛かりな脱着装置を必要とすることなく、車両本体30に対して容易に送排水コンテナ10を積み降ろしすることが可能となっている。これにより、大掛かりな脱着装置を車両本体30に設けない分、車両の最大積載量を確保することができるので、送排水のためのシステムに大容量のものを採用して送排水コンテナ10が大型となっても、十分にシステム全体を車両本体30に搭載することができる。また、送排水コンテナ10を車両本体30に搭載した状態において、車台と送排水コンテナ10との間には、荷役アーム式の脱着車両のようなL字型の荷役アームの水平部分が挟み込まれることがない。これにより、送排水コンテナ10の車両本体30に対する搭載位置を低くすることができ、車両走行時の走行安定性に優れたものにできる。
【0060】
また、車両本体30に当初から備わっているエアサスペンション39の車高調整機能を有効活用することにより、送排水コンテナ10を積み降ろしするための専用の昇降装置を車両本体30や送排水コンテナ10に設ける必要がないので、その分、防災用車両1の最大積載量を増大させることができる。その結果、大容量で大型の送排水コンテナ10を容易に運搬することができる。
【0061】
今回、開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。本発明の技術的範囲は、前記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、本発明の技術的範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0062】
1 防災用車両
10 送排水コンテナ
11 駆動用エンジン
12 ブースト水ポンプ
12a 吸入口
12b 吐出口
13 油圧ポンプ
14 水中ポンプ
14a 油圧モータ
15 燃料タンク
16 ホースリール
17 油圧ホース
18 操作盤
21 収容箱
22 支持脚
22a 回転軸部
22b 先端部
23 支持筒部
24 ベースフレーム部
25 縦フレーム
25a 荷重伝達底面
25b ガイドレール部
26 被係合部
27 側面扉
28 後面扉
29 排気口
30 車両本体
31 シャシフレーム
32 運転室
33 コンテナ載置部
34 サブフレーム
35 ガイドローラ
36 ボルスタ
37 ツイストロック部
38 コンテナストッパ
39 エアサスペンション
41 クレーン
42 車輪
51 第1送水ホース
51a 水中ポンプ接続ホース
51b 管継手
51c メインホース
52 第2送水ホース
60 ホース延長車
70 支持脚ベース
G コンテナ接地面
O 軸心
P 設置ポイント
W 取水源