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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050534
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】レンズ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/20 20060101AFI20230404BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230404BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20230404BHJP
   G02B 13/18 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
G02B15/20
G03B21/00 D
G03B21/14 D
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160687
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】391044915
【氏名又は名称】株式会社コシナ
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】山浦 義樹
(72)【発明者】
【氏名】今室 苗穂都
【テーマコード(参考)】
2H087
2K203
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087KA06
2H087KA07
2H087MA13
2H087PA14
2H087PA15
2H087PA19
2H087PA20
2H087PB17
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA22
2H087QA26
2H087QA32
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA41
2H087RA45
2H087SA57
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA66
2H087SA72
2H087SB04
2H087SB14
2H087SB23
2H087SB33
2H087SB47
2K203FA22
2K203FA32
2K203FA62
2K203GC03
2K203HA67
2K203HA68
2K203HA73
2K203HB15
2K203MA07
2K203MA27
2K203MA32
2K203MA35
(57)【要約】
【課題】 バックフォーカスを最適な長さに設定し、十分な光学性能を確保しつつ、高いズーム比、更には広画角化を実現する。
【解決手段】 前レンズ群Gfを、全体に負の屈折力を有する第1レンズ群G1,全体に正の屈折力を有する第2レンズ群G2,及び第3レンズ群G3により構成するとともに、後レンズ群Grを、全体に正の屈折力を有する第4レンズ群G4,少なくとも二枚の正レンズL10…を有する第5レンズ群G5,及び全体に正の屈折力を有する第6レンズ群G6により構成し、ズーミング調整時に、G1及びG6を不動とし、G2群乃至G5を独立して光軸Dc方向へ移動させ、フォーカシング調整時に、G2を光軸Dc方向へ移動させる光学調整系100を備えるとともに、bfをバックフォーカスとし、fwを広角側における全系G10の焦点距離としたとき、2.3<〔bf/fw〕<3.8の[条件式]を満たす。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、前レンズ群,後レンズ群を備えるレンズ装置において、前記前レンズ群を、物体側から像側へ順に、全体に負の屈折力を有する第1レンズ群,全体に正の屈折力を有する第2レンズ群,及び第3レンズ群により構成するとともに、前記後レンズ群を、物体側から像側へ順に、全体に正の屈折力を有する第4レンズ群,少なくとも二枚の正レンズを有する第5レンズ群,及び全体に正の屈折力を有する第6レンズ群により構成し、ズーミング調整時に、前記第1レンズ群及び第6レンズ群を不動とし、前記第2レンズ群乃至第5レンズ群を独立して光軸方向へ移動させ、フォーカシング調整時に、前記第2レンズ群を光軸方向へ移動させる光学調整系を備えるとともに、bfをバックフォーカスとし、fwを広角側における全系の焦点距離としたとき、以下の[条件式]を満たす光学系を備えることを特徴とするレンズ装置。
2.3<〔bf/fw〕<3.8 … [条件式]
【請求項2】
前記第1レンズ群は、最も物体側に、光軸方向へ移動させて像面補正を行う像面補正レンズを備えることを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
【請求項3】
前記像面補正レンズは、非球面レンズを用いることを特徴とする請求項2記載のレンズ装置。
【請求項4】
前記第2レンズ群は、物体側から像側へ順に、正レンズを用いた単レンズ,負レンズを用いた単レンズ,及び正レンズを用いた単レンズにより構成するとともに、焦点距離を80〔mm〕未満に設定することを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
【請求項5】
前記第5レンズ群は、最も物体側に、物体側に位置する負レンズと像側に位置する正レンズを接合した接合レンズを備えることを特徴とする請求項1記載のレンズ装置。
【請求項6】
前記第5レンズ群は、前記接合レンズを構成する負レンズのd線に対する屈折率を1.85以上に設定することを特徴とする請求項5記載のレンズ装置。
【請求項7】
前記第5レンズ群は、当該第5レンズ群における少なくとも二枚の正レンズのd線に対するアッベ数を70以上に設定することを特徴とする請求項1,5又は6記載のレンズ装置。
【請求項8】
前記光学系は、ズーム比を1.4倍以上とし、かつ広角側における全画角を70゜以上に設定することを特徴とする請求項1-7のいずれかに記載のレンズ装置。
【請求項9】
前記光学系は、投射光学系に適用することを特徴とする請求項1-8のいずれかに記載のレンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ等に備える投射光学系に用いて好適なレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタからスクリーン等に投射する際に発生する像面湾曲を補正することを目的としたレンズ装置は知られており、この種のレンズ装置は、投射光学系として、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載される投射光学系は、簡易な構成で、適切な像面湾曲を調整可能な投射光学系の提供を目的としたものであり、具体的には、投射光学系を構成するに際し、光軸上のパワーと最周辺部の子午断面のパワーとが互いに異なる第1レンズと、第1レンズに隣接する第2レンズと、軸外主光線と光軸とが交わる位置に配置された絞りとを有し、第1レンズと第2レンズとの光軸方向における間隔の変化により、投射像の像面湾曲を調整することが可能に構成するとともに、さらに、所定の条件式を満たすように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-126036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1に開示される従来のレンズ装置は、次のような課題も存在した。
【0006】
第一に、プロジェクタ等の投射光学系は、投射装置本体側の光学系にプリズムを備えるため、この種の投射装置に用いるレンズ装置(交換レンズ)では、広角側における全系の焦点距離が短い場合、バックフォーカスを長くとることが困難になり、プリズムの配設スペースを確保できなくなる。一方、プリズムの配設スペースを確保するため、バックフォーカスを長くとった場合には、レンズ装置側における後玉レンズの大径化を招くとともに、光学性能の低下を招く虞れがあり、このような用途におけるレンズ装置では、十分な光学性能を確保しつつ、高いズーム比を実現し、かつ広画角化を実現することが容易でない難点があった。
【0007】
第二に、投射光学系の前レンズ群に、非球面レンズにより構成した光軸方向に移動する像面補正レンズを配設するとともに、フォーカシング調整機構、即ち、光軸方向へ移動させるフォーカスレンズ又はフォーカスレンズ群を配設して構成するため、レンズ間の干渉により、像面補正が悪影響を受ける問題が発生する。具体的には、フォーカシング調整時に、像面湾曲が変動し、像面補正レンズの移動によっては像面湾曲に対する補正を十分に行うことができず、結果的に、投射画像全体の画像品質の低下を招く難点があった。しかも、光学系の配設スペースが限られる場合、フォーカシング調整機構と像面補正機構がより近接した位置に配設されることになり、レンズ装置における機構上の煩雑化を招くとともに、レンズ装置全体の小型化、更には低コスト化を図る上でのネックになるなど、更なる解決すべき課題も存在した。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したレンズ装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、物体OBJ側から像IMG側へ順に、前レンズ群Gf,後レンズ群Grを備えるレンズ装置1を構成するに際して、前レンズ群Gfを、物体OBJ側から像IMG側へ順に、全体に負の屈折力を有する第1レンズ群G1,全体に正の屈折力を有する第2レンズ群G2,及び第3レンズ群G3により構成するとともに、後レンズ群Grを、物体OBJ側から像IMG側へ順に、全体に正の屈折力を有する第4レンズ群G4,少なくとも二枚の正レンズL10…を有する第5レンズ群G5,及び全体に正の屈折力を有する第6レンズ群G6により構成し、ズーミング調整時に、第1レンズ群G1及び第6レンズ群G6を不動とし、第2レンズG2群乃至第5レンズ群G5を独立して光軸Dc方向へ移動させ、フォーカシング調整時に、第2レンズ群G2を光軸Dc方向へ移動させる光学調整系100を備えるとともに、bfをバックフォーカスとし、fwを広角側における全系G10の焦点距離としたとき、2.3<〔bf/fw〕<3.8の[条件式]を満たす光学系Gを備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、第1レンズ群G1には、最も物体OBJ側に、光軸Dc方向へ移動させて像面補正を行う像面補正レンズLsを設けることができるとともに、この像面補正レンズLsには、非球面レンズを用いることができる。また、第2レンズ群G2は、物体OBJ側から像IMG側へ順に、単レンズを用いた正レンズL4,単レンズを用いた負レンズL5,及び単レンズを用いた正レンズL6により構成するとともに、第2レンズ群G2の焦点距離fg2を80〔mm〕未満に設定することができる。一方、第5レンズ群G5には、最も物体OBJ側に、物体OBJ側に位置する負レンズLn9(Ln10)と像IMG側に位置する正レンズLp9(Lp10)を接合した接合レンズJ9(J10)を設けることができ、この際、負レンズLn9(Ln10)におけるd線に対する屈折率を1.85以上に設定するとともに、第5レンズ群G5における少なくとも二枚の正レンズL10…におけるd線に対するアッベ数を70以上に設定することが望ましい。なお、光学系Gは、ズーム比を1.4倍以上とし、かつ広角側における全画角を70゜以上に設定するとともに、投射光学系に適用することが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係るレンズ装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) 前レンズ群Gfを、物体OBJ側から像IMG側へ順に、全体に負の屈折力を有する第1レンズ群G1,全体に正の屈折力を有する第2レンズ群G2,及び第3レンズ群G3により構成するとともに、後レンズ群Grを、物体OBJ側から像IMG側へ順に、全体に正の屈折力を有する第4レンズ群G4,少なくとも二枚の正レンズL10,L12を有する第5レンズ群G5,及び全体に正の屈折力を有する第6レンズ群G6により構成し、ズーミング調整時に、第1レンズ群G1及び第6レンズ群G6を不動とし、第2レンズG2群乃至第5レンズ群G5を独立して光軸Dc方向へ移動させ、フォーカシング調整時に、第2レンズ群G2を光軸Dc方向へ移動させる光学調整系100を備えるとともに、bfをバックフォーカスとし、fwを広角側における全系G10の焦点距離としたとき、2.3<〔bf/fw〕<3.8の[条件式]を満たす光学系Gを備えるため、バックフォーカスを最適な長さに設定することができる。これにより、十分な光学性能を確保しつつ、高いズーム比(1.4倍以上)、更には広画角化(全画角70゜以上)を実現することができる。
【0013】
(2) 好適な態様により、第1レンズ群G1に、最も物体OBJ側に、光軸Dc方向へ移動させて像面補正を行う像面補正レンズLsを設ければ、フォーカシング調整時に移動する第2レンズ群G2と像面補正レンズLsは、光学的及び機構的に干渉が抑制されるため、特に、フォーカシング調整時に発生する像面湾曲を有効に解消できるなど、十分な像面補正を行うことができ、画像全体の品質向上を図ることができる。加えて、フォーカシング調整機構と像面補正機構の設計自由度を高めることができるため、レンズ装置1における機構上の簡略化、レンズ装置1全体の小型コンパクト化、更には低コスト化を実現することができる。
【0014】
(3) 好適な態様により、像面補正レンズLsに、非球面レンズを用いれば、非球面レンズにおける光軸Dc上のパワーと最周辺のパワーのパワー比率を良好な範囲に設定可能になるため、パワー比率を最適化することにより像面湾曲を良好に解消することができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、第2レンズ群G2を構成するに際し、物体OBJ側から像IMG側へ順に、単レンズを用いた正レンズL4,単レンズを用いた負レンズL5,及び単レンズを用いた正レンズL6により構成するとともに、第2レンズ群G2の焦点距離を80〔mm〕未満に設定すれば、コマ収差,非点収差,像面湾曲等の諸収差をバランス良く補正できるとともに、特に、フォーカシング調整時のレンズ群の移動量を少なくすることができるため、レンズ装置1の全長をより短くすることができる。
【0016】
(5) 好適な態様により、第5レンズ群G5を構成するに際し、最も物体OBJ側に、物体OBJ側に位置する負レンズLn9(Ln10)と像IMG側に位置する正レンズLp9(Lp10)を接合した接合レンズJ9(J10)を設ければ、最適な光学特性を得る観点から、第5レンズ群G5を含む光学系G全体の望ましいレンズ構成を構築することができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、第5レンズ群G5における接合レンズJ9の負レンズLn9のd線に対する屈折率を1.85以上に設定すれば、球面収差,コマ収差及び非点収差を良好に補正することができるとともに、加えて、軸上色収差及び倍率色収差を補正することができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、第5レンズ群G5における少なくとも二枚の正レンズL10…のd線に対するアッベ数を70以上に設定すれば、特に、軸上色収差及び倍率色収差を良好に補正することができる。
【0019】
(8) 好適な態様により、光学系Gとして、投射光学系に適用すれば、特に、スクリーンに投射するプロジェクタ等の十分な光学性能を確保しつつ、高いズーム比、更には広画角化を実現できるとともに、フォーカシングにより発生する像面湾曲を有効に解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の好適実施形態に係る実施例1のレンズ装置のレンズ構成図、
図2】同実施例1のレンズ装置における光学調整系の機能説明図、
図3】同実施例1のレンズ装置の光路図、
図4】同実施例1のレンズ装置のワイド側における基準距離時の縦収差図、
図5】同実施例1のレンズ装置のテレ側における基準距離時の縦収差図、
図6】同実施例1のレンズ装置のワイド側における近距離時の縦収差図、
図7】同実施例1のレンズ装置のテレ側における近距離時の縦収差図、
図8】同実施例1のレンズ装置のワイド側における遠距離時の縦収差図、
図9】同実施例1のレンズ装置のテレ側における遠距離時の縦収差図、
図10】同実施例2のレンズ装置のレンズ構成図、
図11】同実施例2のレンズ装置における光学調整系の機能説明図、
図12】同実施例2のレンズ装置の光路図、
図13】同実施例2のレンズ装置のワイド側における基準距離時の縦収差図、
図14】同実施例2のレンズ装置のテレ側における基準距離時の縦収差図、
図15】同実施例2のレンズ装置のワイド側における近距離時の縦収差図、
図16】同実施例2のレンズ装置のテレ側における近距離時の縦収差図、
図17】同実施例2のレンズ装置のワイド側における遠距離時の縦収差図、
図18】同実施例2のレンズ装置のテレ側における遠距離時の縦収差図、
図19】同レンズ装置における各条件及び条件式の一覧表、
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る好適実施形態である実施例1,2を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【実施例0022】
まず、本実施形態に係る実施例1のレンズ装置1について、図1図9及び図19を参照して具体的に説明する。
【0023】
最初に、図1を参照して、本実施形態(実施例1)に係るレンズ装置1について説明する。なお、このレンズ装置1は、プロジェクタに用いる投射レンズ(ズームレンズ)、即ち、光学系Gとして、投射光学系、特に、投射ズーム光学系に適用することを想定している。このように、光学系Gとして、投射光学系(投射ズーム光学系)に適用すれば、特に、スクリーンに投射するプロジェクタ等の十分な光学性能を確保しつつ、高いズーム比、更には広画角化を実現できるとともに、フォーカシングにより発生する像面湾曲を有効に解消することができる。図1中、OBJはスクリーン等の物体を示し、IMGは液晶パネル等の画像表示素子となる像を示している。したがって、物体OBJ側が光軸Dc方向の前方となり、像IMG側が光軸Dc方向の後方となる。なお、図1中、Pbは模式的に描いたプリズムを示す。
【0024】
実施例1に係るレンズ装置1は、図1に示すように、光学系Gを備え、G10は光学系Gにおける全系を示す。この全系G10は、基本的な構成として、物体OBJ側から像IMG側へ順に、前レンズ群Gf,後レンズ群Grを備える。そして、前レンズ群Gfは、物体OBJ側から像IMG側へ順に、全体に負の屈折力を有する第1レンズ群G1,全体に正の屈折力を有する第2レンズ群G2,及び第3レンズ群G3により構成する。
【0025】
この場合、第1レンズ群G1は、三枚の単レンズにより構成し、物体OBJ側から像IMG側へ順に、第1レンズL1,第2レンズL2,第3レンズL3を備える。
【0026】
最も物体OBJ側に配する第1レンズL1は、光軸Dc方向に移動することにより像面補正を行う像面補正レンズLsとして機能し、この像面補正レンズLsには、物体OBJ側に凸面を有する非球面のメニスカスレンズを用いる。
【0027】
このように、第1レンズ群G1における最も物体OBJ側に、光軸Dc方向へ移動させて像面補正を行う像面補正レンズLsを設ければ、フォーカシング調整時に移動する後述の第2レンズ群G2との光学的及び機構的に干渉が抑制されるため、特に、フォーカシング調整時に発生する像面湾曲を有効に解消できるなど、十分な像面補正を行うことができ、画像全体の品質向上を図ることができる。加えて、フォーカシング調整機構と像面補正機構の設計自由度を高めることができるため、レンズ装置1における機構上の簡略化、レンズ装置1全体の小型コンパクト化、更には低コスト化を実現することができる。さらに、像面補正レンズLsに、非球面レンズを用いれば、非球面レンズにおける光軸Dc上のパワーと最周辺のパワーのパワー比率を良好な範囲に設定可能になるため、パワー比率を最適化することにより像面湾曲を良好に解消することができる。
【0028】
また、第2レンズL2には、物体OBJ側に凸面を有する負メニスカスレンズを使用するとともに、第3レンズL3には、両凹レンズを使用する。これにより、第1レンズ群G1は、全体として負の屈折力を有する。
【0029】
一方、第2レンズ群G2は、三枚の単レンズにより構成し、物体OBJ側から像IMG側へ順に、両凸レンズを用いた正レンズL4,両凹レンズを用いた負レンズL5,及び両凸レンズを用いた正レンズL6を備え、これにより、第2レンズ群G2は、全体として、正の屈折力を有する。また、第2レンズ群G2の焦点距離は80〔mm〕未満に設定する。このような条件に設定することにより、コマ収差,非点収差,像面湾曲等の諸収差をバランス良く補正できるとともに、特に、フォーカシング調整時のレンズ群の移動量を少なくすることができるため、レンズ装置1の全長をより短くすることができる。
【0030】
さらに、第3レンズ群G3は、物体OBJ側の両凸レンズと像IMG側の両凹レンズを接合した接合レンズJ7を用いて構成する。これにより、第3レンズ群G3は、全体として、負の屈折力を有するように構成する。
【0031】
他方、後レンズ群Grは、物体OBJ側から像IMG側へ順に、全体に正の屈折力を有する第4レンズ群G4,少なくとも二枚の正レンズ(実施例1は三枚の正レンズLp9,L10,L12)を有する第5レンズ群G5,及び全体に正の屈折力を有する第6レンズ群G6により構成する。
【0032】
この場合、第4レンズ群G4は、物体OBJ側に位置する物体OBJ側に凸面を有する負メニスカスレンズと像IMG側に位置する両凸レンズを接合した接合レンズJ8を用いて構成し、全体として正の屈折力を有する。
【0033】
また、第5レンズ群G5は、一つの接合レンズJ9と四枚の単レンズにより構成する。第5レンズ群G5は、最も物体OBJ側に、物体OBJ側に位置する負メニスカスレンズを用いた負レンズLn9と像IMG側に位置する両凸レンズを用いた正レンズLp9を接合した接合レンズJ9を備える。このような接合レンズJ9を設ければ、最適な光学特性を得る観点から、第5レンズ群G5を含む光学系G全体の望ましいレンズ構成を構築することができる。
【0034】
この接合レンズJ9は、負レンズLn9におけるd線に対する屈折率を1.85以上に設定する。このような条件に設定すれば、球面収差,コマ収差及び非点収差を良好に補正できるとともに、加えて、軸上色収差及び倍率色収差を補正できる利点がある。また、第5レンズ群G5における少なくとも二枚(実施例1は三枚)の正レンズLp9,L10及びL12のd線に対するアッベ数を70以上に設定する。このように設定すれば、特に、軸上色収差及び倍率色収差を良好に補正することができる。
【0035】
一方、この接合レンズJ9に対して、像IMG側には、両凸レンズを用いた正レンズL10,像IMG側に凸面を有する負メニスカスレンズL11,像IMG側に凸面を有する正メニスカスレンズを用いた正レンズL12,像IMG側に凸面を有する負メニスカスレンズL13を順次配して構成する。これにより、少なくとも二枚の正レンズ(実施例1は三枚の正レンズLp9,L10,L12)を有する第5レンズ群G5が構成され、第5レンズ群G5は、全体として正の屈折力を有する。
【0036】
さらに、第6レンズ群G6は、一枚の単レンズによる両凸レンズを用いた正レンズL14により構成する。
【0037】
また、bfをバックフォーカスとし、fwを広角側における全系G10の焦点距離としたとき、次の条件式を満たすように設定する。
2.3<〔bf/fw〕<3.8 … [条件式]
これにより、最適なバックフォーカスの長さを設定することができる。この場合、〔bf/fw〕が2.3を下回れば、バックフォーカスが短かすぎてしまい、投射装置本体側におけるプリズムの配設スペースを確保できなくなるとともに、〔bf/fw〕が3.8を上回れば、バックフォーカスが長すぎてしまい、後玉のレンズ外径が大きくなり性能面での低下を招いてしまう。
【0038】
一方、図2は、光学調整系100の機能説明図、即ち、光学系Gのズーミング調整時及びフォーカシング調整時に光軸Dc方向へ移動するレンズ及びレンズ群を説明するための機能説明図を示す。光学調整系100は、像面補正機能,ズーミング調整機能,及びフォーカス調整機能を備える。この場合、第1レンズ群G1における最も物体OBJ側に配した像面補正レンズLsは、不図示の像面補正リングを回し操作することにより光軸Dc方向へ移動させて像面補正を行うことができる。また、ズーミング調整時には、不図示のレンズ鏡筒に配したズーム調整リングを回し操作することにより、第1レンズ群G1及び第6レンズ群G6が不動となり、第2レンズ群G2,第3レンズ群G3,第4レンズ群G4,第5レンズ群G5をそれぞれ独立して光軸Dc方向へ移動させることができる。さらに、フォーカシング調整時には、不図示のレンズ鏡筒に配したフォーカス調整リングを回し操作することにより、第2レンズ群G2を光軸Dc方向へ移動させることができ、他のレンズ群G1,G3-G6は不動となる。
【0039】
したがって、前述したように、像面補正レンズLsは、第1レンズ群G1における最も物体OBJ側に配したため、フォーカシング調整時に移動する第2レンズ群G2と像面補正レンズLs間の光学的及び機構的な干渉は抑制される。この結果、特に、フォーカシング調整時に発生する像面湾曲を有効に解消できるなど、十分な像面補正を行うことができ、画像全体の品質向上を図ることができる。また、フォーカシング調整機構と像面補正機構の設計自由度を高めることができるため、レンズ装置1における機構上の簡略化、レンズ装置1全体の小型コンパクト化、更には低コスト化を実現することができる。なお、図3には、実施例1におけるレンズ装置1の光線図を示す。
【0040】
さらに、表1a,表1bは実施例1のレンズ装置1におけるレンズ全系のレンズデータを示し、表1aは面データ、表1bは像面補正レンズLsの非球面データ(非球面係数)をそれぞれ示す。基準距離における投射時のレンズ全系は、ズーム比:1.406,ワイド側のFナンバ:1.86,テレ側のFナンバ:2.20,ワイド側の全画角:90.4〔゜〕,像高:11.80〔mm〕である。
【0041】
【表1a】
【0042】
【表1b】
【0043】
表1aの面データは、物体OBJ側から数えたレンズ面の面番号をiで示し、この面番号iは、図1に示した符号(数字)に一致する。これに対応して、レンズ面の曲率半径R(i)、軸上面間隔D(i)、レンズの屈折率nd(i)、レンズのアッベ数νd(i)、レンズ面の有効半径Re(i)をそれぞれ示す。nd(i)及びνd(i)はd線(587.56〔nm〕)に対する数値である。軸上面間隔D(i)は相対向する面と面間のレンズ厚或いは空気空間を示す。なお、曲率半径R(i)と面間隔D(i)の単位は〔mm〕である。面番号のOBJは物体、IMGは像の位置を示す。曲率半径R(i)のINFINITYは平面である。屈折率nd(i)とアッベ数νd(i)の空欄は空気であることを示す。
【0044】
表1bにおいて、非球面係数は、面の中心を原点とし、光軸Dc方向をZとした直交座標系(X,Y,Z)において、S1(i=1),S2(i=2)を非球面の面番号としたとき、Zは数1により表される。数1において、Rは中心曲率半径、A4,A6,A8,A10,A12,A14は、それぞれ4次,6次,8次,10次,12次,14次の非球面係数、Hは光軸上の原点からの距離である。なお、表1bにおいて、「E」は「10のべき乗」を意味する。
【0045】
【数1】
【0046】
図19に示すように、実施例1のレンズ装置1において、バックフォーカスbfは、40.58〔mm〕,広角側における全系G10の焦点距離fwは、11.76〔mm〕であるため、bf/fwは「3.45」となり、[条件式]の「2.3<〔bf/fw〕<3.8」を満たしている。
【0047】
また、第2レンズ群G2の焦点距離fg2は72.29〔mm〕であり、80〔mm〕未満を満たし、第5レンズ群G5の最も物体OBJ側に位置する接合レンズJ9における負レンズLn9のd線の屈折率ndは1.95375であり、1.85以上を満たし、第5レンズ群G5を構成する少なくとも二枚以上(実施例1は三枚)の正レンズLp9,L10及びL12のd線に対するアッベ数νdは、それぞれ「81.730」,「81,730」,「95.1036」であり、いずれも70以上を持たす。さらに、前述したように、望ましいレンズ装置1となるズーム比は1.406であり、1.4倍以上を確保するとともに、広角側における全画角は90.4〔゜〕であり、70゜以上を確保する。
【0048】
図4図9に、実施例1のレンズ装置1における像面補正後の縦収差図を示す。図4は基準距離(WIDE側,OBJ=1730mm)の縦収差図、図5は基準距離(TELE側,OBJ=1730mm)の縦収差図、図6は近距離(WIDE側,OBJ=1030mm)の縦収差図、図7は近距離(TELE側,OBJ=1460mm)の縦収差図、図8は遠距離(WIDE側,OBJ=10800mm)の縦収差図、図9は遠距離(TELE側,OBJ=15200mm)の縦収差図をそれぞれ示す。各縦収差図は、左側から、球面収差(610nm,550nm,460nm),非点収差(550nm),歪曲収差(550nm)を示す。各スケール目盛は、±0.10mm,±0.10mm,±1.0%である。
【0049】
実施例1のレンズ装置1は、図4図9に示すように、いずれの縦収差も、大きな乱れがなく良好な収差特性、即ち、像面補正が行われた撮像性能(光学性能)が得られていることを確認できる。
【実施例0050】
次に、本実施形態に係る実施例2のレンズ装置1について、図10図19を参照して説明する。
【0051】
実施例2に係るレンズ装置1は、図10に示すように、光学系Gを備え、G10は光学系Gにおける全系を示す。この全系G10は、基本的な構成として、物体OBJ側から像IMG側へ順に、前レンズ群Gf,後レンズ群Grを備える。そして、前レンズ群Gfは、物体OBJ側から像IMG側へ順に、全体に負の屈折力を有する第1レンズ群G1,全体に正の屈折力を有する第2レンズ群G2,及び第3レンズ群G3により構成する。なお、図10中、OBJは、スクリーン等の物体,IMGは、像,Pbは、プリズムをそれぞれ示す。
【0052】
また、第1レンズ群G1は、三枚の単レンズにより構成し、物体OBJ側から像IMG側へ順に、第1レンズL1,第2レンズL2,第3レンズL3を備える。最も物体OBJ側に配する第1レンズL1は、光軸Dc方向に移動することにより像面補正を行う像面補正レンズLsとして機能し、この像面補正レンズLsには、物体OBJ側に凸面を有する非球面のメニスカスレンズを用いる。したがって、実施例2の第1レンズ群G1は、レンズ特性やレンズ間隔を除いて基本的なレンズ構成は、実施例1と同じである。
【0053】
一方、第2レンズ群G2は、三枚の単レンズにより構成する。即ち、物体OBJ側から像IMG側へ順に、両凸レンズを用いた正レンズL4、物体OBJ側に凸面を有する負メニスカスレンズを用いた負レンズL5、物体OBJ側に凸面を有する正メニスカスレンズを用いた正レンズL6を備える。これにより、実施例2の第2レンズ群G2は実施例1の第2レンズ群G2と同様に、全体として、正の屈折力を有するとともに、第2レンズ群G2の焦点距離は80〔mm〕未満に設定する。したがって、実施例2の第2レンズ群G2は、レンズの種類,レンズ特性及びレンズ間隔を除いて基本的なレンズ構成は、実施例1と同じになる。
【0054】
さらに、第3レンズ群G3は、二枚の単レンズにより構成する。即ち、物体OBJ側に位置し、かつ物体OBJ側に凸面を有する正メニスカスレンズを用いた正レンズL7と、像IMG側に位置し、かつ物体OBJ側に凸面を有する負メニスカスレンズを用いた負レンズL8により構成し、全体として、負の屈折力を有する。実施例1の第3レンズ群G3は、接合レンズJ7を用いたが、実施例2の第3レンズ群G3は、二枚の単レンズを用いて構成した点が実施例1と異なる。
【0055】
他方、後レンズ群Grは、物体OBJ側から像IMG側へ順に、全体に正の屈折力を有する第4レンズ群G4,少なくとも二枚の正レンズ(実施例2は三枚の正レンズLp10,L11,L13)を有する第5レンズ群G5,及び全体に正の屈折力を有する第6レンズ群G6により構成する。
【0056】
第4レンズ群G4は、物体OBJ側に位置し、かつ物体OBJ側に凸面を有する負メニスカスレンズと、像IMG側に位置する両凸レンズとを接合した接合レンズJ9を用い、全体として正の屈折力を有するように構成する。また、第5レンズ群G5は、一つの接合レンズJ9と四枚の単レンズにより構成する。即ち、物体OBJ側から像IMG側へ順に、物体OBJ側に位置する両凹レンズを用いた負レンズLn10と像IMG側に位置する両凸レンズを用いた正レンズLp10を接合した接合レンズJ10,両凸レンズを用いた正レンズL11,像IMG側に凸面を有する負メニスカスレンズL12,両凸レンズを用いた正レンズL13,像IMG側に凸面を有する負メニスカスレンズL14を順次配して構成する。これにより、少なくとも二枚の正レンズL11,L13…を有する第5レンズ群G5が構成され、第5レンズ群G5は、全体として正の屈折力を有する。さらに、第6レンズ群G6は、一枚の単レンズによる像IMG側に凸面を有する正メニスカスレンズを用いた正レンズL15を備える。
【0057】
この場合、第5レンズ群G5を構成する接合レンズJ10における負レンズLn10のd線に対する屈折率を1.85以上に設定するとともに、第5レンズ群G5における少なくとも二枚(実施例2は三枚)の正レンズLp10,L11及びL13のd線に対するアッベ数を70以上に設定する。したがって、実施例2の後レンズ群Grは、レンズの種類,レンズ特性及びレンズ間隔を除いて基本的なレンズ構成は、実施例1と同じになる。なお、Pbは実施例1と同様の平行平面板を示す。
【0058】
また、bfをバックフォーカスとし、fwを広角側における全系G10の焦点距離としたとき、[条件式]、即ち、「2.3<〔bf/fw〕<3.8」の条件式を満たす点も実施例1と同様に構成する。図11は、光学調整系100の機能説明図、即ち、光学系Gのズーミング調整時及びフォーカシング調整時に光軸Dc方向へ移動するレンズ及びレンズ群を説明するための機能説明図を示し、像面補正レンズLsを用いた像面補正機能,ズーミング調整機能,及びフォーカシング調整機能は、図2に示した実施例1の光学調整系100と同じになる。図12は、実施例2におけるレンズ装置1の光線図を示す。
【0059】
さらに、表2a,表2bは実施例2のレンズ装置1におけるレンズ全系のレンズデータを示し、表2aは面データ、表2bは像面補正レンズLsの非球面データ(非球面係数)をそれぞれ示す。基準距離における投射時のレンズ全系は、ズーム比:1.490,ワイド側のFナンバ:1.86,テレ側のFナンバ:2.18,ワイド側の全画角:72.2〔゜〕,像高:11.80〔mm〕である。
【0060】
【表2a】
【0061】
【表2b】
【0062】
一方、図19に示すように、実施例2のレンズ装置1において、バックフォーカスbfは、41.53〔mm〕,広角側における全系G10の焦点距離fwは、16.20〔mm〕であるため、bf/fwは「2.56」となり、[条件式]の「2.3<〔bf/fw〕<3.8」を満たしている。
【0063】
また、第2レンズ群G2の焦点距離fg2は77.62〔mm〕であり、80〔mm〕未満を満たし、第5レンズ群G5の最も物体OBJ側に位置する接合レンズJ10における負レンズLn10のd線の屈折率ndは1.87071であり、1.85以上を満たし、第5レンズ群G5を構成する少なくとも二枚以上(実施例2は三枚)の正レンズLp10,L11及びL13のd線に対するアッベ数νdは、それぞれ「81.6087」,「95,1036」,「81.6087」であり、いずれも70以上を持たす。さらに、前述したように、望ましいレンズ装置1となるズーム比は1.490であり、1.4倍以上を確保するとともに、広角側における全画角は72.2〔゜〕であり、70゜以上を確保する。
【0064】
図13図18に、実施例2のレンズ装置1における像面補正後の縦収差図を示す。図13は基準距離(WIDE側,OBJ=2490mm)の縦収差図、図14は基準距離(TELE側,OBJ=2490mm)の縦収差図、図15は近距離(WIDE側,OBJ=1520mm)の縦収差図、図16は近距離(TELE側,OBJ=2070mm)の縦収差図、図17は遠距離(WIDE側,OBJ=14900mm)の縦収差図、図18は遠距離(TELE側,OBJ=20980mm)の縦収差図をそれぞれ示す。各縦収差図は、左側から、球面収差(610nm,550nm,460nm),非点収差(550nm),歪曲収差(550nm)を示す。各スケール目盛は、±0.10mm,±0.10mm,±1.0%である。
【0065】
実施例2のレンズ装置1は、図13図18に示すように、いずれの縦収差も、大きな乱れがなく良好な収差特性、即ち、像面補正が行われた撮像性能(光学性能)が得られていることを確認できる。
【0066】
よって、このような本実施形態(実施例1,2)に係るレンズ装置1によれば、基本的な構成として、前レンズ群Gfを、物体OBJ側から像IMG側へ順に、全体に負の屈折力を有する第1レンズ群G1,全体に正の屈折力を有する第2レンズ群G2,及び第3レンズ群G3により構成するとともに、後レンズ群Grを、物体OBJ側から像IMG側へ順に、全体に正の屈折力を有する第4レンズ群G4,少なくとも二枚の正レンズL10…を有する第5レンズ群G5,及び全体に正の屈折力を有する第6レンズ群G6により構成し、ズーミング調整時に、第1レンズ群G1及び第6レンズ群G6を不動とし、第2レンズG2群乃至第5レンズ群G5を独立して光軸Dc方向へ移動させ、フォーカシング調整時に、第2レンズ群G2を光軸Dc方向へ移動させる光学調整系100を備えるとともに、bfをバックフォーカスとし、fwを広角側における全系G10の焦点距離としたとき、2.3<〔bf/fw〕<3.8の[条件式]を満たす光学系Gを備えるため、バックフォーカスを最適な長さに設定することができる。これにより、十分な光学性能を確保しつつ、高いズーム比(1.4倍以上)、更には広画角化(全画角70゜以上)を実現することができる。
【0067】
以上、実施例1,2を含む好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0068】
例えば、第1レンズ群G1における最も物体OBJ側に、光軸Dc方向へ移動させて像面補正を行う像面補正レンズLsを設けることが望ましいが必須の構成要素となるものではない。また、第2レンズ群G2を構成するに際し、物体OBJ側から像IMG側へ順に、単レンズを用いた正レンズL4,単レンズを用いた負レンズL5,及び単レンズを用いた正レンズL6により構成し、第2レンズ群G2の焦点距離fg2を80〔mm〕未満に設定することが望ましいが、他のレンズ構成及び他の条件を排除するものではない。一方、第5レンズ群G5における物体OBJ側に位置する負レンズLn9(Ln10)のd線に対する屈折率を1.85以上に設定することが望ましいが、必須の構成要素となるものではない。また、第5レンズ群G5における二枚以上の正レンズL10…として、三枚の正レンズを例示したが、いずれか二枚の正レンズL10…であってもよいし、四枚以上の正レンズL10…であってもよい。したがって、これらの場合には、二枚の正レンズL10…又は三枚以上の正レンズL10…におけるd線に対するアッベ数を70以上に設定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係るレンズ装置は、プロジェクタ等の各種光学機器における専用レンズ或いは交換レンズを含む投射レンズ(投射ズームレンズ)として利用できる。
【符号の説明】
【0070】
1:レンズ装置,100:光学調整系,OBJ:物体,IMG:像,Dc:光軸,G:光学系,G10:全系,Gf:前レンズ群,Gr:後レンズ群,G1:第1レンズ群,G2:第2レンズ群,G3:第3レンズ群,G4:第4レンズ群,G5:第5レンズ群,G6:第6レンズ群,L4:正レンズ,L5:負レンズ,L6:正レンズ,L10…:正レンズ,Ln9:負レンズ,Lp9:正レンズ,Ln10:負レンズ,Lp10:正レンズ,Ls:像面補正レンズ,J7:接合レンズ,J8:接合レンズ,J9:接合レンズ,J10:接合レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図17
図18
図19