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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050560
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】クレセント錠
(51)【国際特許分類】
   E05B 9/08 20060101AFI20230404BHJP
   E05C 3/04 20060101ALI20230404BHJP
   E05B 65/08 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
E05B9/08 H
E05C3/04 H
E05B65/08 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160725
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 智利
(72)【発明者】
【氏名】▲節▼ 世名
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆之
(57)【要約】
【課題】一対のネジ取付部材の位置合わせを容易に行うことができる。
【解決手段】框に固定される台座部3と、それぞれ台座部3に対して移動可能であり台座部3の所望の位置に配置されて台座部3を框に固定するネジが取り付けられる第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7(一対のネジ取付部材)と、第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7それぞれの台座部3に対する移動を相反する方向にリンクさせるリンク部8と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
框に固定される台座部と、
それぞれ前記台座部に対して移動可能であり前記台座部の所望の位置に配置されて前記台座部を前記框に固定するネジが取り付けられる一対のネジ取付部材と、
前記一対のネジ取付部材それぞれの前記台座部に対する移動を相反する方向にリンクさせるリンク部と、を有するクレセント錠。
【請求項2】
前記台座部は、クレセント本体を回転可能に支持する回転軸部を有し、
前記一対のネジ取付部材は、前記回転軸部が前記一対のネジ取付部材の間の中央に位置するように配置され、
前記リンク部は、前記一対のネジ取付部材を相反する方向に等量移動させる請求項1に記載のクレセント錠。
【請求項3】
前記リンク部は、
前記一対のネジ取付部材の一方のネジ取付部材に設けられ前記一方のネジ取付部材の移動方向に延びる第1ラック部と、
前記一対のネジ取付部材の他方のネジ取付部材に設けられ前記他方のネジ取付部材の移動方向に延び、前記ネジ取付部材の移動方向と交差する方向に前記第1ラック部と対向して配置される第2ラック部と、
前記第1ラック部と前記第2ラック部との間に配置され、前記第1ラック部および前記第2ラック部の移動方向に交差する軸線回りに回転可能なゴムリングと、を有し、
前記ゴムリングは、前記第1ラック部および前記第2ラック部それぞれと接触し、
前記第1ラック部および前記第2ラック部のいずれか一方のラック部が前記移動方向に移動すると前記ゴムリングが前記軸線回りに回転し、その回転力によって他方のラック部が前記一方のラック部と背反する方向に移動する請求項1又は2に記載のクレセント錠。
【請求項4】
前記リンク部は、
前記一対のネジ取付部材の一方のネジ取付部材に設けられ前記一方のネジ取付部材の移動方向に延びる第1ラック部と、
前記一対のネジ取付部材の他方のネジ取付部材に設けられ前記他方のネジ取付部材の移動方向に延び、前記ネジ取付部材の移動方向と交差する方向に前記第1ラック部と対向して配置される第2ラック部と、
前記第1ラック部と前記第2ラック部との間に配置され、前記第1ラック部および前記第2ラック部の移動方向に交差する軸線回りに回転可能なギアと、を有し、
前記ギアは、前記第1ラック部および前記第2ラック部それぞれと噛み合い、
前記第1ラック部および前記第2ラック部のいずれか一方のラック部が前記移動方向に移動すると前記ギアが前記軸線回りに回転し、その回転力によって他方のラック部が前記一方のラック部と背反する方向に移動する請求項1又は2に記載のクレセント錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クレセント錠に関する。
【背景技術】
【0002】
引き違いサッシなどに使用されるクレセント錠は、框に固定される台座部にハンドルおよびスプーンが回転可能に取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。一般的に、ハンドルおよびスプーンを回転可能に支持する回転軸部は、台座部の長さ方向の中央に設けられている。台座部は、回転軸部を挟んだ長さ方向に間隔をあけた2箇所で框にネジ固定される。
【0003】
クレセント錠を交換する際に使用されるクレセント錠として、既設のクレセント錠が固定されていた框の2つのネジ孔の位置それぞれにネジ固定位置を対応させることができる交換用のクレセント錠が知られている。このようなクレセント錠の台座部には、ネジの径よりも大きい孔部が形成されるとともに、それぞれ台座部とは別部材となる一対のネジ取付部材を有している。一対のネジ取付部材それぞれには、ネジを挿入可能な孔部が形成されている。台座部を框に固定するには、台座部を框の取り付け位置に配置し、一対のネジ取付部材をそれぞれの孔部が框のネジ孔と重なる位置に移動させて台座部に重ねて、一対のネジ取付部材で台座部を押さえる。一対のネジ取付部材のそれぞれ孔部、台座部の孔部に挿入されたネジを框のネジ孔に固定することで、台座部が框に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-070826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような交換用のクレセント錠では、一対のネジ取付部材それぞれが台座部に対して移動するため、一対のネジ取付部材の一方を押さえながら他方の位置を調整すると、一方のネジ取付部材がずれてしまい、一対のネジ取付部材の位置合わせに手間がかかることがある。
【0006】
本開示は、一対のネジ取付部材の位置合わせを容易に行うことができるクレセント錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示に係るクレセント錠は、框に固定される台座部と、それぞれ前記台座部に対して移動可能であり前記台座部の所望の位置に配置されて前記台座部を前記框に固定するネジが取り付けられる一対のネジ取付部材と、前記一対のネジ取付部材それぞれの前記台座部に対する移動を相反する方向にリンクさせるリンク部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態のクレセント錠の正面図である。
図2】クレセント錠の側面図である。
図3】クレセント錠の分解斜視図である。
図4図2のA-A線断面図である。
図5図4に対応する斜視図である。
図6】第1実施形態のリンク部の斜視図である。
図7】ネジ取付部材が移動した様子を示す断面図である。
図8】ネジ取付部材が移動した他の様子を示す断面図である。
図9】第2実施形態によるクレセント錠の断面図である。
図10】第2実施形態のリンク部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1図2に示すように、クレセント錠1は、例えば、内障子の召合せ框11と外障子の召合せ框とが室内外方向に重なる引き違いサッシの召合せ部に取り付けられる。クレセント錠1は、内障子の召合せ框11の側面12に取り付けられている。内障子の召合せ框11の側面12とは、内障子が開口部を開口した際に縦枠と対向する面である。クレセント錠1の受け部材は、外障子の召合せ框に取り付けられる。以下では、内障子の召合せ框11を框11と表記する。
【0010】
クレセント錠1は、既設のクレセント錠を交換する際に、新設されるクレセント錠である。既設のクレセント錠1は、框11に2つのネジで取り付けられている。框11には、ネジを固定する2つのネジ孔13,14が設けられている。新設のクレセント錠1は、2つのネジ21,22で框11に固定される。この2つのネジ21,22は、既設のクレセント錠を固定するネジが固定されていたネジ孔13,14に固定される。2つのネジ孔13,14のうちの一方を第1ネジ孔13と表記し、他方を第2ネジ孔14と表記する。
【0011】
以下のクレセント錠1の説明では、框11の側面12に取り付けられたクレセント錠1における框11の側面12に沿った互いに直交する2方向を幅方向(図面の矢印Xの方向)および長さ方向(図面の矢印Yの方向)と表記し、框11の側面12に直交する方向を厚さ方向(図面の矢印Zの方向)とする。クレセント錠1は、幅方向の寸法よりも長さ方向の寸法が長い長尺形状である。
【0012】
図1図3に示すように、クレセント錠1は、框11(図1図2参照)に固定される台座部3と、台座部3に取り付けられるクレセント本体4と、台座部3に取り付けられる補助ロック5(図1図3参照)と、台座部3を框11に固定するネジ21,22が取り付けられる第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7(一対のネジ取付部材、図3参照)と、台座部3に対する第1ネジ取付部材6の移動と第2ネジ取付部材7の移動とをリンクさせるリンク部8(図3参照)と、を有している。
【0013】
クレセント本体4は、使用者が把持するハンドル41と、外障子の召合せ框に取り付けられた受け部材に引っ掛けられるスプーン42と、を有している。クレセント本体4は、台座部3に設けられた回転軸部43(図3参照)に回転可能に支持されている。回転軸部43の軸線は、厚さ方向に延びている。内障子および外障子が閉じた状態で、スプーン42が受け部材に引っ掛けられることで、内障子および外障子の移動が規制される。補助ロック5は、スプーン42が受け部材に引っ掛けられた状態で、スプーン42およびハンドル41の回転を規制可能である。
【0014】
台座部3は、台座部本体31と、カバー部32,32と、を有している。台座部本体31は、幅方向の寸法よりも長さ方向の寸法が長い長尺形状である。図3図5に示すように、台座部本体31は、底板部33と、側板部34と、クレセント本体支持部35(図5参照)と、を有している。底板部33は、板面が長尺の長方形の平板状である。底板部33は、一方の面が框11の側面12(図1図2参照)に沿って取り付けられる。側板部34は、底板部33の縁部全体から厚さ方向の一方側(框11の側面12と離れる側)に突出している。厚さ方向の一方側とは、框11の側面12と離れる側を示す。側板部34のうちの長さ方向の一方側に位置し幅方向に延びる側板部34を第1側板部341と表記し、長さ方向の他方側に位置し幅方向に延びる側板部34を第2側板部342と表記し、幅方向の一方側に位置し長さ方向に延びる側板部34を第3側板部343と表記し、幅方向の他方側に位置し長さ方向に延びる側板部34を第4側板部344と表記する。
【0015】
クレセント本体支持部35は、底板部33の幅方向の中央部分(以下、底板中央部分331と表記する)の厚さ方向の一方側に重なって配置されている。クレセント本体支持部35の幅方向の一方側の縁部は第3側板部343と接続されている。クレセント本体支持部35の幅方向の他方側の縁部は第4側板部344と接続されている。クレセント本体4の回転軸部43は、底板中央部分331およびクレセント本体支持部35に取り付けられている。
【0016】
底板中央部分331とクレセント本体支持部35との間には、長さ方向に貫通するリンク貫通部36が設けられている。図4図5に示すように、リンク貫通部36には、リンク部8のゴムリング81を回転可能に支持するゴムリング取付軸部37が設けられている。リンク貫通部36には、リンク部8が配置される。
【0017】
図3に示すように、クレセント本体支持部35の厚さ方向の一方側の面には、回転軸部43の軸線回りに回転するスプーン42をガイドするガイド部351が設けられている。
【0018】
図4図5に示すように、底板部33における底板中央部分331の長さ方向の一方側の部分332には、底板部33を厚さ方向に貫通する第1底板孔部333が形成されている。底板中央部分331の長さ方向の他方側の部分334には、底板部33を厚さ方向に貫通する第2底板孔部335が形成されている。第1底板孔部333および第2底板孔部335は、それぞれ厚さ方向(貫通方向)から見た形状が長方形である。第1底板孔部333および第2底板孔部335は、それぞれネジ21,22(図1図3参照)の径よりも長さ方向および幅方向に大きく形成されて、ネジ21,22が貫通可能である。
【0019】
図3に示すように、カバー部32,32は、台座部本体31におけるクレセント本体支持部35の長さ方向の一方側の部分311および、長さ方向の他方側の部分312を厚さ方向の一方から覆うように取り付けられる。台座部本体31にカバー部32,32が取り付けられることで、底板部33および底板部33に重なって配置される第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7は、外部から見えない。台座部本体31の側板部34には、カバー部32,32を取り付けるための爪部38が設けられている。
【0020】
図4図6に示すように、リンク部8は、ゴムリング81と、それぞれゴムリング81の外周面と接触して移動する第1ラック部82および第2ラック部83と、を有している。
【0021】
第1ネジ取付部材6は、第1ネジ取付部61と、リンク部8の第1ラック部82とが一体化した部材である。第2ネジ取付部材7は、第2ネジ取付部71と、リンク部8の第2ラック部83とが一体化した部材である。第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7は、それぞれ平板状に形成される。第1ネジ取付部61および第2ネジ取付部71は、それぞれ板面が略長方形となる平板状である。第1ネジ取付部61は、底板部33における底板中央部分331の長さ方向の一方側の部分332に重なって配置される。第2ネジ取付部71は、底板部33における底板中央部分331よりも長さ方向の他方側の部分334に重なって配置される。
【0022】
第1ネジ取付部61における長さ方向の他方側に位置し幅方向に延びる縁部を第1縁部611と表記し、長さ方向の一方側に位置し幅方向に延びる縁部を第2縁部612と表記する。第1ネジ取付部61における幅方向の一方側に位置し長さ方向に延びる縁部を第3縁部613と表記し、幅方向の他方側に位置し長さ方向に延びる縁部を第4縁部614と表記する。第2ネジ取付部71は、第1ネジ取付部61と長さ方向に略対称となる形状である。第2ネジ取付部71における長さ方向の一方側に位置し幅方向に延びる縁部を第1縁部711と表記し、長さ方向の他方側に位置し幅方向に延びる縁部を第2縁部712と表記する。第2ネジ取付部71における幅方向の一方側に位置し長さ方向に延びる縁部を第3縁部713と表記し、幅方向の他方側に位置し長さ方向に延びる縁部を第4縁部714と表記する。
【0023】
第1ネジ取付部61の長さ方向の寸法は、第1側板部341と底板中央部分331との間隔よりも小さい。第1ネジ取付部61の幅方向の寸法は、第3側板部343と第4側板部344との間隔と略同じである。第1ネジ取付部61は、第1側板部341と底板中央部分331との間を長さ方向に移動可能である。第3側板部343および第4側板部344は、第1ネジ取付部61の長さ方向の移動をガイドしている。
【0024】
第2ネジ取付部71の長さ方向の寸法は、第2側板部342と底板中央部分331との間隔よりも小さい。第2ネジ取付部71の幅方向の寸法は、第3側板部343と第4側板部344との間隔と略同じである。第1ネジ取付部61は、第2側板部342と底板中央部分331との間を長さ方向に移動可能である。第3側板部343および第4側板部344は、第2ネジ取付部71の長さ方向の移動をガイドしている。
【0025】
第1ネジ取付部61および第2ネジ取付部71には、それぞれ幅方向に延びる長孔が形成されている。第1ネジ取付部61の長孔(以下、第1長孔62と表記する)は、底板部33の第1底板孔部333と重なる位置に配置される。第2ネジ取付部71の長孔(以下、第2長孔72と表記する)は、底板部33の第2底板孔部335と重なる位置に配置される。第1長孔62および第2長孔72にはネジ21,22を挿入可能である。第1長孔62および第2長孔72に挿入されたネジ21,22は、幅方向に移動可能である。
【0026】
第1ラック部82は、長尺の平板状である。第1ラック部82は、長さ方向に延びる向きで第1ネジ取付部61の第1縁部611の幅方向の一方側の端部近傍から長さ方向の他方側に突出している。第1ラック部82の幅方向の他方側の縁部は、長さ方向に歯が連なった波形に形成されている。第1ラック部82の幅方向の他方側の縁部における波形の部分を波形部84と表記する。第2ラック部83は、長尺の平板状である。第2ラック部83は、長さ方向に延びる向きで第2ネジ取付部71の第1縁部611の幅方向の中間部から長さ方向の一方側に突出している。第2ラック部83の幅方向の一方側の縁部は、長さ方向に歯が連なった波形に形成されている。第2ラック部83の幅方向の一方側の縁部における波形の部分を波形部85と表記する。第1ラック部82の波形部84と第2ラック部83の波形部85は、互いに同じ形状で歯の形状やピッチが同じである。
【0027】
第1ネジ取付部材6の第1ネジ取付部61は、底板部33における底板中央部分331の長さ方向の一方側の部分332に重なる。第1ネジ取付部材6の第1ラック部82は、リンク貫通部36に長さ方向の一方側から挿入される。第2ネジ取付部材7の第2ネジ取付部71は、底板部33における底板中央部分331の長さ方向の他方側の部分334に重なる。第2ネジ取付部材7の第2ラック部83は、リンク貫通部36に長さ方向の他方側から挿入される。リンク貫通部36の内部において、第1ラック部82は、第2ラック部83よりも幅方向の他方側に配置される。第1ラック部82の波形部84と第2ラック部83の波形部85とは幅方向に間隔をあけて対向する。
【0028】
第1ラック部82と第2ラック部83との間には、ゴムリング81が配置される。ゴムリング81は、軸線方向が厚さ方向となる向きに配置される。ゴムリング81は、リンク貫通部36に設けられたゴムリング取付軸部37に厚さ方向に延びる軸線回りに回転可能に支持されている。ゴムリング81の外周面には、第1ラック部82の波形部84および第2ラック部83の波形部85それぞれが接触している。ゴムリング81およびゴムリング取付軸部37は、回転軸部43の幅方向の他方側、かつ台座部本体31における長さ方向の中央に配置される。
【0029】
図4に示す状態から作業者が第1ネジ取付部材6を長さ方向の一方側に移動させると、第1ラック部82の波形部84がゴムリング81の外周面と接触した状態で長さ方向の一方側に移動し、この直線移動によってゴムリング81を軸線回りの一方側に回転させる。ゴムリング81が軸線方向の一方側に回転することによって、ゴムリング81の外周面と接触している第2ラック部83が長さ方向の他方側に移動する。上述しているように、第1ラック部82の波形部84と第2ラック部83の波形部85は、互いに同じ形状で歯の形状やピッチが同じである。このため、図7に示すように、第1ラック部82と第2ラック部83とは、ゴムリング取付軸部37を中心に、長さ方向の反対側となる方向に同じ距離を移動する。第1ネジ取付部材6を長さ方向の他方側に移動させた場合や、第2ネジ取付部材7を長さ方向に移動させた場合も、移動させていないネジ取付部材が移動させたネジ取付部の移動方向と反対側となる方向に同じ距離を移動する。
【0030】
クレセント錠1を框11に取り付ける前の初期状態において、第1長孔62とゴムリング81との間隔と、第2長孔72とゴムリング81との間隔とが同じ寸法となるように、第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7の位置を調整する。これによって、第1長孔62と回転軸部43との間隔と、第2長孔72と回転軸部43との間隔とが同じ寸法となり、回転軸部43が第1長孔62と第2長孔72の間の中央に配置される。
【0031】
この状態で、第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7のいずれか一方のネジ取付部材を長さ方向に移動させると、他方のネジ取付部材は、一方のネジ取付部材が移動した方向と反対側の方向に同じ距離だけ移動する。このため、回転軸部43は、常に第1長孔62と第2長孔72の間の中央に配置される。回転軸部43が第1長孔62と第2長孔72の間の中央に配置されるように第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7が配置されている状態を、中心配置状態と表記する。
【0032】
第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7のいずれか一方のネジ取付部材のみを長さ方向に移動させたい場合には、他方のネジ取付部材を長さ方向に移動しないように押さえながら一方のネジ取付部材を移動させる。図8に示すように、ゴムリング81の回転力は、他方のネジ取付部材のラック部に伝達するが、他方のネジ取付部材は、押えられているため、移動しない。この場合、ゴムリング81および回転軸部43は、第1長孔62と第2長孔72との間隔の中央から外れた位置に配置される。
【0033】
図3に示すように、側板部34には、底板部33に沿って移動する第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7が底板部33から外れないように厚さ方向の移動を規制する突起部345が設けられている。突起部345は側板部34の内側に突出している。側板部34には、突起部345に代わって、第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7の第3縁部613,713および第4縁部614,714が挿入されて、第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7の長さ方向の移動をガイドするガイド溝部が形成されていてもよい。
【0034】
クレセント錠1を框11に取り付ける方法について説明する。台座部3を框11に沿って配置する。第1ネジ取付部材6の第1長孔62が框11の第1ネジ孔13と重なり、第2ネジ取付部材7の第2長孔72が框11の第1ネジ孔13と重なるように、第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7のいずれか一方を把持して、または工具を使用して移動させる。第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7が中心配置状態の場合、第1ネジ取付部材6と第2ネジ取付部材7とは、長さ方向の相反する方向に等量移動する。このため、第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7のいずれか一方の移動距離にかかわらず、回転軸部43が第1長孔62と第2長孔72の間の中央に配置される。
【0035】
回転軸部43を第1長孔62と第2長孔72との長さ方向の中央からずれた位置に配置する場合には、第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7のいずれか一方を移動しないように押さえ付けて、他方のネジ取付部材を移動させる。他方のネジ取付部材が移動しても一方の取付部材は移動しない。第1ネジ取付部材6の移動と第2ネジ取付部材7の移動とをリンクさせない。
【0036】
第1ネジ21を第1長孔62および第1底板孔部333に挿入し、框11の第1ネジ孔13に固定する。第2ネジ22を第2長孔72および第2底板孔部335に挿入し、框11の第2ネジ孔14に固定する。これによって、台座部3が框11にネジ固定される。框11に固定された台座部本体31にカバー部32,32を取り付ける。クレセント本体支持部35にクレセント本体4を設置して、クレセント本体4を回転軸部43に接続する。このようにしてクレセント錠1が框11に取り付けられる。
【0037】
クレセント錠1は、第1ネジ取付部材6と第2ネジ取付部材7それぞれの台座部3に対する移動をリンクさせるリンク部8を有する。このため、第1ネジ取付部61および第2ネジ取付部71のいずれか一方のネジ取付部を移動させることで他方のネジ取付部も長さ方向の反対方向に移動させることができる。2つのネジ取付部材の位置合わせを容易に行うことができる。
【0038】
第1ネジ取付部材6と第2ネジ取付部材7は、これらの間の中央に回転軸部43が位置するように配置される。リンク部8は、第1ネジ取付部材6と第2ネジ取付部材7を相反する方向に等量移動させる。このため、回転軸部43を常に第1ネジ取付部61と第2ネジ取付部71との中央に配置できる。このように、第1実施形態の構成によれば、クレセント錠1の框11への取付時に2つのネジ孔13、14間の中心に回転軸部43を容易に位置合わせできるため、従来の交換用のクレセントに比べて調整作業の負荷が少なくて済む。
【0039】
リンク部8は、ゴムリング81を介して第1ラック部82の移動と第2ラック部83の移動とをリンクさせている。第1ネジ取付部材6および第2ネジ取付部材7のいずれか一方のネジ取付部材を移動させる際に他方のネジ取付部材の移動を拘束して、リンクさせないようにできる。これによって、第1ネジ取付部61および第2ネジ取付部71を任意の位置に設置できる。
【0040】
(第2実施形態)
第1実施形態と同一又は同様な部材、部分には同一の符号を用いて説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。図9および図10に示すように、第2実施形態によるクレセント錠1Bのリンク部8Bは、第1実施形態のクレセント錠1のリンク部8のゴムリング81に代わって、円形のギア86が設けられている。ギア86の歯861は、第1ラック部82の波形部84の歯841および第2ラック部83の波形部85の歯851と噛み合う。第1ラック部82および第2ラック部83のいずれか一方のラック部が長さ方向に移動すると、ギア86を介して他方のラック部が長さ方向の他方側に移動する。
【0041】
第2実施形態によるクレセント錠1Bでは、第1ラック部82と、第2ラック部83との間にギア86が設けられている。このため、第1ラック部82および第2ラック部83と、ギア86とが確実に噛み合い、第1ラック部82の移動と第2ラック部83の移動とが確実にリンクする。第1ラック部82の移動距離と第2ラック部83の移動距離とが等しくなる。
【0042】
本開示は上記の実施形態に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、回転軸部43は、第1ネジ取付部61と第2ネジ取付部71との間の中央以外に配置されてもよい。上記の実施形態では、リンク部8,8Bのゴムリング81やギア86は、回転軸部43と幅方向に並んで配置されている。リンク部8,8Bのゴムリング81やギア86は、回転軸部43と厚さ方向に配置され、回転軸部43と同軸に配置されてもよい。
【0043】
リンク部8,8Bのゴムリング81やギア86の軸部をドライバーなどの工具で回転させることで、ゴムリング81やギア86が回転し、第1ネジ取付部61と第2ネジ取付部71とが相反する方向に移動してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,1B…クレセント錠、3…台座部、4…クレセント本体、6…第1ネジ取付部材(ネジ取付部材)、7…第2ネジ取付部材(ネジ取付部材)8,8B…リンク部、11…框、21,22…ネジ、22…ネジ、43…回転軸部、81…ゴムリング、82…第1ラック部、83…第2ラック部、86…ギア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10