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特開2023-50568アルコール感増強剤、及びアルコール感が増強されたアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050568
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】アルコール感増強剤、及びアルコール感が増強されたアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/055 20190101AFI20230404BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20230404BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20230404BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C12G3/055
C12G3/04
A23L2/52
A23L2/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160737
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 千尋
【テーマコード(参考)】
4B115
4B117
【Fターム(参考)】
4B115LG02
4B115LG03
4B115LH01
4B115LH11
4B117LC03
4B117LG01
4B117LG24
4B117LK06
4B117LL02
4B117LP01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料に対してアルコール感を増強するための技術を提供する。
【解決手段】ブラックジンジャー抽出物を有効成分とする、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料に対するアルコール感増強剤。ブラックジンジャー抽出物を含有するアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラックジンジャー抽出物を有効成分とする、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料に対するアルコール感増強剤。
【請求項2】
ブラックジンジャー抽出物を含有するアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料。
【請求項3】
ブラックジンジャー抽出物を、ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボンの量に換算して0.04~80ppmの割合で含有する、請求項2に記載するアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料。
【請求項4】
さらに ラカンカ抽出物、またはラカンカ抽出物とステビア抽出物、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、及びネオテームから選択される少なくとも1種とを含有する、請求項2または3に記載するアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料。
【請求項5】
アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料のアルコール感を増強するための製法であって、ブラックジンジャー抽出物を添加する工程を有することを特徴とする、前記製造方法。
【請求項6】
アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料のアルコール感を増強する方法であって、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料にブラックジンジャー抽出物を配合することを特徴とする、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール飲料、またはアルコールを含まないもののアルコールテイストを有する飲料(アルコールテイスト飲料)に対するアルコール感増強剤に関する。また、アルコール感増強剤を含むアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料に関する。より詳細には、アルコール感増強剤を含むことでアルコール感が増強されたアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料、及びその製造方法に関する。また本発明は、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料について、それらが有するアルコール感を増強する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりの中でアルコール摂取量を自己管理する消費者が増加している。また、飲酒運転に対する罰則の強化やコロナ感染蔓延防止策のため、アルコールテイスト飲料の需要が増えている。このような中で、実際のアルコール濃度よりも、またアルコールテイスト飲料でありながらも、より強くアルコール感が感じられる飲料の需要が一段と高まっている。
【0003】
アルコール(エタノール)の風味印象を増強する方法として、特定のアルコキシル化フラボンをアルコール飲料に配合する方法(特許文献1)が知られている。またアルコールを含まないアルコールテイスト飲料にアルコール感を付与する方法として、酸味付与物質と苦味付与物質を配合する方法(特許文献2)、及び辛味付与物質と苦味付与物質を配合する方法(特許文献3)が知られている。さらにアルコールを含まない非アルコール飲料またはアルコールを2V/V%以下で含む低アルコール飲料に、ラカンカ抽出物等の高甘味度甘味料を配合することで、アルコールに起因して感じる口腔内での軽快感または/および口腔から鼻腔に抜ける清涼感が増加し、前記飲料についてアルコール濃度が増加したように感じさせる方法(特許文献4)が知られている。
【0004】
ところで、最近、タイを原産とするショウガ科の多年草「ブラックジンジャー」が種々の生理作用を有することで注目されている。具体的には、ブラックジンジャーの抽出物には、優れた抗酸化作用、抗老化作用、抗炎症作用、育毛作用、抗肥満作用、美白作用(例えば、特許文献5参照)や、肥満解消作用(例えば、特許文献6参照)、筋肉持久力向上作用(例えば、特許文献7参照)、脳の機能改善作用(例えば、特許文献8参照)などがあることが知られている。
しかし、ブラックジンジャー抽出物に、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料が有するアルコール感を増強する作用があることは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-148268号公報
【特許文献2】特開2011-254731号公報
【特許文献3】特開2013-128451号公報
【特許文献4】特開2021-040622号公報
【特許文献5】特開2009-051790号公報
【特許文献6】特開2013-224326号公報
【特許文献7】特開2016-008180号公報
【特許文献8】特開2018-177654号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Azuma T et al., Phytochemistry 2008; 69: 2743-2748
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、アルコール感増強剤、アルコール感が増強されたアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料、及びその製造方法を提供することを課題とする。また本発明は、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料が有するアルコール感を増強する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねていたところ、アルコール飲料にブラックジンジャー抽出物を添加することで、実際よりも多くのアルコールが含まれているかの如く、アルコール感が増強されることを見出した。また、アルコールを含まないアルコールテイスト飲料にブラックジンジャー抽出物を添加することで、アルコールテイスト飲料が有するアルコール感がより強く感じられるようになることを見出した。これらの知見から、ブラックジンジャー抽出物は、アルコール飲料およびアルコールテイスト飲料におけるアルコール感を増強する作用を有するとして、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
本発明は下記の実施形態を有する。
【0009】
(I)アルコール感増強剤
(I-1)ブラックジンジャー抽出物を有効成分とする、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料に対するアルコール感増強剤。
(I-2)ブラックジンジャー抽出物を、ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボンの量に換算して0.04~80ppm、好ましくは0.4~4ppmの割合でアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料に配合して用いられる、(I-1)に記載するアルコール感増強剤。
【0010】
(II)アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料
(II―1)ブラックジンジャー抽出物を含有するアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料。
(II-2)ブラックジンジャー抽出物を、ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボンの量に換算して0.04~80ppm、好ましくは0.4~4ppmの割合で含有する、(II-1)に記載するアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料。
(II-3)ラカンカ抽出物、またはラカンカ抽出物とステビア抽出物、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、及びネオテームから選択される少なくとも1種とを含有する、(II-1)または(II-2)に記載するアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料。
(II-4)前記アルコール飲料は、アルコール度数が0.05質量%より多く2.00質量%以下の低アルコール飲料である、(II-3)に記載するアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料。
【0011】
(III)アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料の製造方法
(III-1)アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料のアルコール感を増強するための製法であって、ブラックジンジャー抽出物を添加する工程を有することを特徴とする、前記製造方法。
(III-2)ブラックジンジャー抽出物の含有量が、ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボンの量に換算して0.04~80ppm、好ましくは0.4~4ppmとなるように添加する、(III-1)に記載する製造方法。
【0012】
(IV)アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料のアルコール感増強方法
(IV-1)アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料のアルコール感を増強する方法であって、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料にブラックジンジャー抽出物を配合することを特徴とする、前記方法。
(IV-2)ブラックジンジャー抽出物の含有量が、ブラックジンジャー由来ポリメトキシフラボンの量に換算して0.04~80ppm、好ましくは0.4~4ppmとなるように配合する、(IV-1)に記載する方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料が有するアルコール感を増強することができるアルコール感増強剤が提供できる。かかるアルコール感増強剤によれば、実際のアルコール濃度よりも強くアルコール感を感じることができるアルコール飲料を調製し、提供することができる。また、本発明のアルコール感増強剤によれば、アルコール含量0%のアルコールテイスト飲料が有するアルコール感をより増強することができ、アルコール飲料を飲んでいる感覚に似た感覚を得ることができるアルコールテイスト飲料を調製し、提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(I)用語の説明
アルコール感とは、アルコール飲料を口腔内に入れて嚥下する際に感じるアルコール特有の感覚をいう。本発明が対象とする「アルコール感」は、前記のアルコール感のうち、アルコールの揮発に伴い鼻に抜けて感じる清涼感や爽快感ではなく、好ましくは、舌や喉の奥に低く染み渡る刺激であり重たい感覚である。本発明が対象とするアルコール感には、前記アルコール特有の感覚に加えて、アルコール特有の感覚に擬似した感覚(アルコール様の感覚)が含まれる。以下、本発明では、これらを総称して「アルコール感」と称する。
【0015】
本発明において「アルコール飲料」とは、食用アルコールであるエタノールを含有する飲料であり、アルコール濃度が0.05質量%よりも多く2質量%以下の低アルコール飲料も含まれる。これに対して、本発明でいう「アルコールテイスト飲料」とは、食用アルコールであるエタノールを実質的に含有しない飲料を意味する。具体的にはアルコール度数が0.00質量%から、果物の天然果汁にごく微量に含まれるアルコール分とほぼ同じとされる0.05質量%以下の飲料が含まれる。但し、アルコールテイストの飲料である点で、ソフトドリンクとは異なる飲料である。つまり、アルコールテイスト飲料とは、アルコールを配合することなく、アルコール飲料に似せた風味または味を有する飲料である。言い換えると、アルコールを実質的に含んでいないにもかかわらずアルコール飲料を飲用したかのような擬似的感覚(アルコールに擬似した刺激感)を飲用者に与えることができる飲料である。
【0016】
本発明において「アルコール感が増強された飲料」とは、アルコール飲料については、本来含有するアルコール濃度以上のアルコールが含まれているかのような感覚を飲用者に与えることができる飲料である。また、アルコールテイスト飲料については、その飲料が有するアルコールが含まれているかのような擬似的感覚が、より増強されることで、アルコールが含まれているかのような感覚をテイスト面から飲用者に与えることができる飲料である。
【0017】
(II)アルコール感増強剤
本発明のアルコール感増強剤は、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料に対して、各々のアルコール感を増強する効果を有し、専らその目的で使用されるものである。当該アルコール感増強剤は、ブラックジンジャー抽出物を有効成分とすることを特徴とする。
【0018】
(ブラックジンジャー抽出物)
ブラックジンジャー抽出物の抽出原料として使用されるブラックジンジャー(黒ショウガ)は、ショウガ科(Zingiberaceae)バンウコン属(Kaempferia)に属する植物である。学名は、ケンペリア・パルウィフローラ(Kaempferia parviflora)であり、東南アジアのタイ等に分布しており、この地域から容易に入手可能である。ブラックジンジャーの入手方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、自然界から採取してもよいし、市販品を用いてもよい。
【0019】
前記ブラックジンジャー抽出物の製造方法としては、本発明の効果を損なわないことを限度として特に制限はなく、植物の抽出に一般的に用いられる方法が挙げられる。例えば、抽出溶媒を満たした処理槽に前記抽出原料として使用するブラックジンジャーを浸漬し、必要に応じて適宜攪拌しながら可溶性成分を溶出した後、濾過して抽出残渣を除き、ブラックジンジャー抽出物を得る方法などが挙げられる。前記ブラックジンジャー抽出物には、ブラックジンジャーの抽出液、該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0020】
前記抽出原料として使用するブラックジンジャーの部位としては、本発明の効果を損なわないことを限度として特に制限はない。例えば、花、蕾、種子、種皮、茎、葉、枝、枝葉等の地上部;根、根茎等の地下部などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、好ましくは根、または根茎等の地下部である。
【0021】
ブラックジンジャーは抽出処理に供する前に、粉砕及び/又は乾燥した状態に調製することができる。また、ブラックジンジャーは、ヘキサン、ベンゼン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出処理に供してもよい。前記脱脂等の前処理を行うことにより、ブラックジンジャーの極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0022】
前記抽出に用いる抽出溶媒としては、本発明の効果を損なわないことを限度として特に制限はない。例えば、水、親水性溶媒、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる。ここで親水性溶媒としては、特に制限されないものの、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。親水性溶媒として好ましくはエタノールであり、抽出溶媒として好ましくはエタノール等の低級アルコールと水との混合溶媒である。
前記含水エタノールを抽出溶媒として用いる場合のエタノールの濃度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50容量%以上であることが好ましく、60容量%以上であることがより好ましい。
【0023】
抽出条件(抽出時間、抽出温度、圧力等の雰囲気条件など)としては、本発明の効果を損なわないことを限度として特に制限はない。例えば、抽出溶媒として水を用いた場合には、通常50℃~95℃にて1時間~4時間程度であり、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、通常40℃~80℃にて30分間~4時間程度である。
【0024】
斯くして調製されるブラックジンジャー抽出物は、抽出液の状態で用いることもできるが、濃縮物または乾燥物の状態であってもよい。またさらに粗精製処理若しくは精製処理されたものであってもよい。なお、濃縮、乾燥、精製等の処理の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0025】
本発明のアルコール感増強剤は、前記方法で調製されるブラックジンジャーの抽出物のみからなるものでもよいし、ブラックジンジャーの抽出物を含有する組成物を製剤化したものでもよい。製剤化は、本発明の効果を損なわないことを限度として、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。流通性及び取り扱い性の点から錠剤、粉末剤または顆粒剤等の固形製剤の形態を有することが好ましい。
【0026】
本発明のアルコール感増強剤は、前述する方法で調製されたブラックジンジャーの抽出物を原料として製剤化したものであってもよいし、また市販されているブラックジンジャーの抽出物を製剤化したものであってもよいし、さらに市販のブラックジンジャーの抽出物製剤を用いたものであってもよい。制限されないものの、ブラックジンジャーの抽出物を含有する製剤として、丸善製薬(株)製のブラックジンジャーの抽出物を例示することができる。
【0027】
本発明のアルコール感増強剤は、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料の製造に際して原料の一つとして用いることができる。または、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料を飲用する際に、これらの飲料に添加して用いることができる。
こうすることで、アルコール飲料については、それが有するアルコール感が増強され、本来含有するアルコール濃度よりも高濃度のアルコールを含むかの感覚を飲用者に与えることができるアルコール飲料を調製することができる。またアルコールテイスト飲料については、それが有するアルコール擬似感(アルコール感)がより増強されることで、よりアルコールに近い感覚を飲用者に与えることができるアルコールテイスト飲料を調製することができる。
【0028】
アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料への配合量としては、アルコール感増強剤の有効成分であるブラックジンジャー抽出物に特異的に含まれるポリメトキシフラボンの量(総量)に換算して、0.04~80ppm(質量百万分率濃度、以下同じ。)の範囲を挙げることができる。好ましくは0.04~4ppm、より好ましくは0.4~4ppmである。
【0029】
なお、ブラックジンジャー抽出物由来のポリメトキシフラボンとしては、下記を挙げることができる(非特許文献1参照):
1)5,7-ジメトキシフラボン
2)5,7,4’-トリメトキシフラボン
3)3,5,7-トリメトキシフラボン
4)3,5,7,4’-テトラメトキシフラボン
5)5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン
6)3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン。
【0030】
また、ブラックジンジャー抽出物に含まれるこれらの各ポリメトキシフラボンの量は、液体クロマトグラフィーを用いて測定することができる。詳細には後述する実施例の欄に記載するように、液体クロマトグラフィーで測定される各ポリメトキシフラボンのピーク面積を、対応するポリメトキシフラボンの標準品のピーク面積と対比することで定量することができる。
【0031】
(III)アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料、及びその製造方法
本発明が対象とするアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料は、前述する本発明のアルコール感増強剤またはその有効成分であるブラックジンジャー抽出物を含有するものである。
【0032】
これらの飲料は、その製造工程で、他の原料とともに、本発明のアルコール感増強剤またはブラックジンジャー抽出物を添加配合することで製造することができる。また、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料を飲用する前に、本発明のアルコール感増強剤またはブラックジンジャー抽出物を添加配合することでも調製することができる。その添加配合割合としては、最終飲料100質量%に対して、ブラックジンジャー抽出物由来のポリメトキシフラボンの量(総量)に換算して、0.04~80ppmの範囲を挙げることができる。好ましくは0.04~4ppm、より好ましくは0.4~4ppmである。
なお、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料の製造は、当業界に公知の製造技術を用いて行うことができる。
【0033】
本発明が対象とするアルコール飲料は、エタノールを含有する飲料であり、そのエタノール濃度は制限されないものの、0.05質量%より多く40質量%以下の範囲が含まれる。好ましくは0.1~9質量%、より好ましくは0.5~7質量%を例示することができる。また、低アルコール飲料のエタノール濃度は、0.05質量%より多く2質量%以下であり、好ましくは2.00質量%未満、より好ましくは1.00質量%以下である。
【0034】
なお、飲料中のアルコール含有量は、国税庁所定分析法(昭和36年1月11日 国税庁訓令第1号,改正平19国税庁訓令第6号)に記載される方法に従って測定することができる。具体的には、ショ糖などの糖類を添加したものと添加していないもののそれぞれについて、例えば特許文献4の段落[0042]~[0044]に記載する方法で測定することができる。なお、飲料中のアルコールの含有量が国税庁所定分析法で定量できない程度の極めて少量である場合は、ガスクロマトグラフィーを用いて分析することができる。
【0035】
アルコール飲料には、制限されないものの、ビール、発泡酒、及びその他の発泡性酒類(ビール及び発泡酒以外の酒類のうち、アルコール分が10度未満で発泡性を有するもの)等の発泡性酒類;清酒、果実酒、その他の醸造酒などの醸造酒類;連続式蒸留焼酎、単式蒸留焼酎、ウイスキー、ブランデー、スピリッツなどの蒸留酒類;甘味果実酒、リキュール等の混成酒類;及びこれらをベースとして果汁、フレーバー、炭酸ガス、飲用水、または炭酸ガス入り飲用水などを加えて調製される各種のアルコール飲料(例えば、カクテル、フィズ、水割り、炭酸割り、お茶割り、各種の果実テイスト飲料)が含まれる。
【0036】
アルコールテイスト飲料には、制限されないものの、上記アルコール飲料に擬似したアルコールテイストを有しながらも、エタノール濃度が0.05質量%未満の飲料が含まれる。制限されないものの、アルコールテイスト飲料には、例えば、ビールテイスト飲料(ノンアルコールビール)、発泡酒テイスト飲料、ワインテイスト飲料(ノンアルコールワイン、ノンアルコールスパークリングワイン)、果実酒テイスト飲料、酎ハイテイスト飲料(ノンアルコール酎ハイ)、酎ハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料(ノンアルコールカクテル)、日本酒テイスト飲料(ノンアルコール日本酒、ノンアルコールスパークリング日本酒)、焼酎テイスト飲料(ノンアルコール焼酎)、梅酒テイスト飲料(ノンアルコール梅酒)等のアルコール飲料との代替性がある飲料のほか、シャンメリー、甘酒などが含まれる。
【0037】
本発明の飲料が、本発明のアルコール感増強剤またはその有効成分であるブラックジンジャー抽出物を含有することでアルコール感が増強されているか否かは、その飲料と、本発明のアルコール感増強剤またはその有効成分であるブラックジンジャー抽出物を配合しない以外は同じ飲料(対照飲料)とを飲み比べることで評価することができる。その詳細は、後述する実験例の記載を参照することができ、それに基づいて実施することができる。対照飲料と比較して、アルコール感が増強されていれば、当該飲料は本発明のアルコール感増強剤またはその有効成分であるブラックジンジャー抽出物を含有することでアルコール感が増強されていると判断することができる。
【0038】
本発明のアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料には、本発明のアルコール感増強剤またはその有効成分であるブラックジンジャー抽出物と組み合わせて、他のアルコール感増強剤を配合することもできる。他のアルコール感増強剤には、特許文献1~4に記載のものが含まれるが、好ましくは特許文献4に記載されているアルコール感増強剤またはその有効成分であるラカンカ抽出物である。当該アルコール感増強剤またはラカンカ抽出物をアルコールテイスト飲料に配合することで、アルコールを添加または増量することなく、アルコールに起因して感じる口腔内及び口腔から鼻腔にかけて感じる感覚、具体的には口腔内での軽快感または/および口腔から鼻腔に抜ける清涼感を付与または増強することができ、飲用者にアルコール含有飲料を飲んでいるかのよう飲み心地を与えることができる。また、低アルコール飲料については、アルコールを増量することなく、アルコール特有の軽快感または/および清涼感を増強することができ、飲用者により高濃度のアルコール飲料を飲んでいるかのような飲み心地を付与することができる。さらに、炭酸ガス入りのアルコールテイスト飲料または低アルコール飲料については、シュワッと口腔内で弾けるような感覚(発泡感)を増強することもできる。こうした感覚は、アルコール飲料を口腔内に入れて嚥下する際に感じるアルコール特有の感覚であるものの、ブラックジンジャー抽出物によって得られるアルコール感とは異なる感覚である。このため、これをブラックジンジャー抽出物と併用することで、アルコールテイスト飲料及び低アルコール飲料に対して、総合的にアルコール特有の感覚を付与することが可能になる。なお、ラカンカ抽出物と組み合わせて、さらにステビア抽出物、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、及びネオテームから選択される少なくとも1種を配合することもできる。
【0039】
ラカンカ抽出物、ステビア抽出物、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、及びネオテームの詳細は、特許文献4に記載されている通りであり、その記載はここに援用することができる。これらのアルコールテイスト飲料及び低アルコール飲料に対する配合量としては、下記の範囲を例示することができる。
(1)ラカンカ抽出物:
飲料中のモグロシドV(以下、MogVと略記する)含有量が0.00002~0.004質量%の範囲になる割合、好ましくは0.0001~0.004質量%、より好ましくは0.0001~0.0025質量%。
(2)ステビア抽出物:
ステビア抽出物に含まれるレバウディオサイドA(以下、RebAと略記する)とラカンカ抽出物に含まれるMogVとの配合比(質量比)が99:1~50:50、好ましくは99:1~60:40、より好ましくは98:2~70:30になる割合。
(3)アセスルファムカリウム:
MogVとアセスルファムカリウムとの配合比(質量比)が99.9:0.1~80:20、好ましくは99.9:0.1~85:15、より好ましくは99.9:0.1~90:10となる割合。
(4)スクラロース:
MogVとスクラロースとの配合比(質量比)が99.9:0.1~50:50、好ましくは99.1:0.1~60:40、より好ましくは99.9:0.1~70:30となる割合。
(5)アスパルテーム:
MogVとアスパルテームとの配合比(質量比)が、好ましくは99.9:0.1~50:50になる割合。
(6)ネオテーム:
MogVとネオテームとの配合比(質量比)が、好ましくは99.9:0.1~50:50になる割合。
【0040】
本発明による飲料は、好ましくは、容器詰飲料として提供される。本発明による飲料に使用される容器は、飲料の充填に通常使用される容器であればよく、例えば、金属缶、樽容器、プラスチック製ボトル( 例えば、PETボトル、カップ)、紙容器、瓶、パウチ容器等が挙げられるが、好ましくは、金属缶・樽容器、プラスチック製ボトル、瓶である。
【0041】
(IV)アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料のアルコール感増強方法
本発明は、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料のアルコール感を増強する方法である。当該方法は、アルコール飲料またはアルコールテイスト飲料に本発明のアルコール感増強剤またはその有効成分であるブラックジンジャー抽出物を配合することで実施することができる。
アルコール飲料、アルコールテイスト飲料、アルコール感、本発明のアルコール感増強剤、及びブラックジンジャー抽出物の説明は前述した通りであり、前記記載は、ここに援用することができる。またアルコール飲料またはアルコールテイスト飲料への本発明のアルコール感増強剤またはブラックジンジャー抽出物の配合するタイミングやその配合量についても、前述した通りであり、前記記載は、ここに援用することができる。
【0042】
以上、本明細書において、「含む」及び「含有する」の用語には、「からなる」及び「から実質的になる」という意味が含まれる。
【実施例0043】
以下、本発明の構成及び効果について、その理解を助けるために、実験例を用いて本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実験例によって何ら制限を受けるものではない。
以下の実験は、特に言及しない限り、室温(25±5℃)、及び大気圧条件下で実施した。なお、特に言及しない限り、以下に記載する「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0044】
また、各実験例で採用したパネルはいずれも、飲食品の風味やフレーバーの官能評価に従事し訓練して社内試験に合格した官能評価適格者である。各パネルは各実験にあたり、被験対象の飲料のうち、コントロール飲料を飲用し、各飲料のアルコール感(口腔内及び嚥下した際に感じるアルコール様の感覚、具体的には舌や喉の奥に低く染み渡る刺激)を確認し、パネル間同士でその感覚とその程度を確認しあった後、評価基準を摺り合わせて、各自の内的基準が互いに等しくなるように調整した。
【0045】
以下の実験例で使用した原料は下記の通りである。なお、後述する表1及び16には、原料(製品)の配合量とともに、括弧書きで原料(製品)に含まれている成分(ブラックジンジャー抽出物:ブラックジンジャー由来のポリメトキシフラボン、サンフィックスナリンギン:ナリンギン)の換算値を併記する。
(1)ブラックジンジャー抽出物:丸善製薬株式会社製
ブラックジンジャー(クラチャイダム)根茎部の乾燥物を含水エタノール抽出し、ろ過濃縮後にデキストリン及びシクロデキストリンを加え噴霧乾燥した粉末製剤。粉末製剤中にポリメトキシフラボンを8質量%の割合で含む。
(2)サンフィックスナリンギン:三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製
ナリンギンを15質量%の割合で含む製剤。
【0046】
参考実験例1 ブラックジンジャー抽出物由来のポリメトキシフラボンの定量方法
(1)標準溶液の調製
各ポリメトキシフラボン(5,7-ジメトキシフラボン;5,7,4’-トリメトキシフラボン;3,5,7-トリメトキシフラボン;3,5,7,4’-テトラメトキシフラボン;5,7,3’,4’-テトラメトキシフラボン;3,5,7,3’,4’-ペンタメトキシフラボン)の標準品1~2mgを正確に秤量し、メタノールに溶解して正確に20mLにする。本溶液を50容量%メタノールに段階希釈した溶液を調製し、標準溶液とする。
【0047】
(2)試験溶液の調製
対象のブラックジンジャー抽出物を、必要に応じて乳鉢で十分に粉砕した後、メスフラスコに20mg秤量し、これに50容量%メタノールを40mL加える。70℃の水浴で振盪し、十分に溶解する。50mLに定容し、0.45μmメンブランフィルターにて濾過したものを試験溶液とする。
【0048】
(3)測定
下記の高速液体クロマトグラフィー条件で、標準溶液及び試験溶液のクロマトグラムを得る。
[HPLC条件]
カラム:Ascentis Express C18 2.7μm,4.6×100 mm(SUPELCO)
移動相:MeO / H2O (0.1% TFA含有) = 60 / 40
カラム温度:40℃
注入量:20μL
流速:0.6 mL/min
検出条件;UV 265 nm
【0049】
(4)定量方法
標準溶液の測定結果に基づいて、前記6つの各ポリメトキシフラボンの濃度とピーク面積から作成した検量線を利用して、試験溶液中の各ポリメトキシフラボンの濃度を算出し、含有量を求める。各ポリメトキシフラボンの含有量の総量を、ブラックジンジャー抽出物由来のポリメトキシフラボンの含有量とする。
【0050】
実験例1 アルコール飲料のアルコール感増強効果の評価(No.1)
表1に記載する組成からなる被験試料(評価試料1-1及び1-2、コントロール試料1a及びb)を調製し、品温を10℃に調整した後、4名のパネルに、コントロール試料と各評価試料を摂取してもらい、評価試料のアルコール感の強さを、各コントロール試料のアルコール感の強さとの対比で評価してもらった。なお、評価試料1-2で使用するナリンギンは苦味成分である。
【0051】
【表1】
【0052】
評価試料のアルコール感の評価を、下記の基準に従って、各パネルにスコアを付けてもらった
[評価基準]
3点:コントロール試料bよりも強いアルコール感を有する。
2点:コントロール試料bと同程度のアルコール感を有する。
1点:コントロール試料aより強いがコントロール飲料bより弱いアルコール感を有する。
0点:コントロール試料aと同程度のアルコール感を有する。
【0053】
評価試料1-1及び1-2の評価結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示すように、ブラックジンジャー抽出物にエタノールそのものが有するアルコール感を増強する効果があることが確認された。一方、ブラックジンジャー抽出物と同様に苦味を有する成分であるナリンギンにはエタノールが有するアルコール感を増強する効果は認められなかった。このことから、ブラックジンジャー抽出物が有するアルコール感増強作用は、それが有する苦味によって招来する効果ではないことが確認された。
【0056】
実験例2 アルコール飲料のアルコール感増強効果の評価(No.2)
前記実験例1で用いた水に代えて、エタノール濃度0%のアルコールテイスト飲料A(酎ハイ、レモンサワーテイスト)を用いて、表3に記載する組成からなる被験試料(評価試料2-1及び2-2、コントロール試料2-1a~c及び1-2a~c)を調製し、品温を10℃に調整した後、実験例1と同様に、4名のパネルに、コントロール試料と各評価試料を摂取してもらい、評価試料のアルコール感の強さを、各コントロール試料のアルコール感の強さとの対比で評価してもらった。
【0057】
【表3】
【0058】
評価試料のアルコール感の評価を、下記の基準に従って、各パネルにスコアを付けてもらった
[評価基準]
5点:コントロール試料cよりも強いアルコール感を有する
4点:コントロール試料cと同程度のアルコール感を有する。
3点:コントロール試料bより強いがコントロール飲料cより弱いアルコール感を有する。
2点:コントロール試料bと同程度のアルコール感を有する。
1点:コントロール試料aより強いがコントロール飲料bより弱いアルコール感を有する。
0点:コントロール試料aと同程度のアルコール感を有する。
【0059】
評価試料2-1及び2-2の評価結果を表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
表4に示すように、アルコールテイストを有するアルコールテイスト飲料にエタノールを添加して調製したアルコール飲料に対して、ブラックジンジャー抽出物を配合することで、それが有するアルコール感を増強することが確認された。この効果は、エタノール濃度に拘わらず、エタノール濃度が2%のアルコール飲料(評価試料2-1)及びエタノール濃度が8%のアルコール飲料(評価試料2-1)の両方に認められたが、エタノール濃度が低いほうが、増感効果が高いことが確認された。
【0062】
実験例3 アルコール飲料のアルコール感増強効果の評価(No.3)
実験例1及び2の結果を受けて、アルコール飲料の種類を代えて、ブラックジンジャー抽出物配合によるアルコール感の増強効果を確認した。増感効果の評価は、実験例2に記載する方法と評価基準に従って、パネル4名で実施した。
【0063】
(1)清酒ベースのアルコール飲料に対するアルコール感の増強
評価に使用した被験試料(評価試料とコントロール試料)を表5に、評価結果を表6に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
【0066】
表6に示すように、日本酒をベースとしたアルコール飲料に対しても、ブラックジンジャー抽出物はアルコール感を増強する効果が認められた。
【0067】
(2)ウイスキーベースのアルコール飲料に対するアルコール感の増強
評価に使用した被験試料(評価試料とコントロール試料)を表7に、評価結果を表7に示す。
【0068】
【表7】
【0069】
【表8】
【0070】
表8に示すように、ウイスキーをベースとしたアルコール飲料に対しても、ブラックジンジャー抽出物はアルコール感を増強する効果が認められた。
【0071】
(3)ワインベースのアルコール飲料に対するアルコール感の増強
評価に使用した被験試料(評価試料とコントロール試料)を表9に、評価結果を表10に示す。
【0072】
【表9】
【0073】
【表10】
【0074】
表10に示すように、ワインをベースとしたアルコール飲料に対しても、ブラックジンジャー抽出物はアルコール感を増強する効果が認められた。
【0075】
(4)酎ハイ(リキュール)ベースのアルコール飲料に対するアルコール感の増強
評価に使用した被験試料(評価試料とコントロール試料)を表11に、評価結果を表12に示す。
【0076】
【表11】
【0077】
【表12】
【0078】
表12に示すように、酎ハイ(リキュール)をベースとしたアルコール飲料に対しても、ブラックジンジャー抽出物はアルコール感を増強する効果が認められた。
以上のことから、ブラックジンジャー抽出物は、アルコール飲料の種類に関わらず、エタノールを含むアルコール飲料のアルコール感を増強することが確認された。
【0079】
実験例4 アルコール飲料のアルコール感増強効果の評価(No.4)
表13に記載する組成からなるウォッカベース(グレープフレーバー)の被験試料(評価試料4-1、コントロール試料4-1a及びb)を調製し、品温を10℃に調整した後、実験例2と同様に、4名のパネルに、コントロール試料と各評価試料を摂取してもらい、評価試料のアルコール感の強さを、各コントロール試料のアルコール感の強さとの対比で評価してもらった。
【0080】
【表13】
【0081】
評価試料のアルコール感の評価を、下記の基準に従って、各パネルにスコアを付けてもらった
[評価基準]
3点:コントロール試料bよりも強いアルコール感を有する。
2点:コントロール試料bと同程度のアルコール感を有する。
1点:コントロール試料aより強いがコントロール飲料bより弱いアルコール感を有する。
0点:コントロール試料aと同程度のアルコール感を有する。
【0082】
評価試料4-1の評価結果を表14に示す。
【0083】
【表14】
【0084】
表14に示すように、ウォッカをベースとしたグレープフレーバーを有するアルコール飲料に対しても、ブラックジンジャー抽出物はアルコール感を増強する効果が認められた。
【0085】
実験例5 アルコールテイスト飲料のアルコール感増強効果の評価(No.1)
表15に記載する組成からなる被験試料(評価試料5-1~5-8、コントロール試料5a~5c)を調製し、品温を10℃に調整した後、4名のパネルに、コントロール試料と各評価試料を摂取してもらい、評価試料のアルコール感の強さを、各コントロール試料のアルコール感の強さとの対比で評価してもらった。
【0086】
【表15】
【0087】
評価試料のアルコール感の評価を、実験例2に記載する評価基準に従って、各パネルにスコアを付けてもらった。結果を表16に示す。
【0088】
【表16】
【0089】
この結果から、ブラックジンジャー抽出物には、アルコールを含有しないアルコールテイスト飲料が有するアルコール感についても増強する作用があることが確認された。その効果は、ブラックジンジャー抽出物に含まれるポリメトキシフラボンの量に換算して0.04~80ppmの範囲で認められたが、特に0.4~4ppmの範囲で高い効果が認められた。ポリメトキシフラボンの量に換算して4ppmを超える量のブラックジンジャー抽出物を配合すると、アルコール感を増強する効果はあるものの、ブラックジンジャー抽出物そのものの苦みや渋味が生じ、アルコールテイスト飲料の味を損なう傾向が認められた。
【0090】
実験例6 アルコールテイスト飲料のアルコール感増強効果の評価(No.2)
実験例5の酎ハイ・レモンサワーテイスト飲料に代えて、ビールテイスト飲料を用いて、ブラックジンジャー抽出物の効果を確認した。
具体的には、表17に記載する組成からなる被験試料(評価試料6-1及び6-2、コントロール試料6a~6c)を調製し、品温を10℃に調整した後、実験例5と同様に、4名のパネルに、コントロール試料と各評価試料を摂取してもらい、評価試料のアルコール感の強さを、各コントロール試料のアルコール感の強さとの対比で評価してもらった。
【0091】
【表17】
【0092】
評価試料のアルコール感の評価を、実験例2に記載する評価基準に従って、各パネルにスコアを付けてもらった。結果を表18に示す。
【0093】
【表18】
【0094】
表18に示すように、ブラックジンジャー抽出物には、酎ハイテイストだけでなく、ビールテイストのノンルコール飲料が有するアルコール感についても増強作用があることが確認された。またこの増強作用は、苦味成分であるナリンギンには殆ど認められなかったことから、ブラックジンジャー抽出物の苦味によって招来する効果ではないことが確認された。