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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050626
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】画像形成ユニットおよび画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20230404BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G03G15/08 229
G03G15/08 235
G03G9/097 375
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160817
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123375
【弁理士】
【氏名又は名称】半田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 淳一
【テーマコード(参考)】
2H077
2H500
【Fターム(参考)】
2H077AA02
2H077AA35
2H077AB03
2H077AB14
2H077AB18
2H077AC04
2H077AD06
2H077AD13
2H077AD17
2H077AD23
2H077AE03
2H077BA03
2H077EA15
2H077FA01
2H077FA13
2H077FA16
2H077FA22
2H500AA09
2H500CB12
2H500EA43A
(57)【要約】
【課題】カスレ等の印刷不良の発生を抑制することを目的とする。
【解決手段】画像形成ユニット10は、静電潜像を担持する感光体ドラム(像担持体)11と、感光体ドラム11に接触し、静電潜像を現像剤により現像する現像ローラ(現像剤担持体)12とを備える。感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力は1.0[N]以上であり、現像ローラ12の表面自由エネルギーは48[mN/m]以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像を担持する像担持体と、
前記像担持体に接触し、前記静電潜像を現像剤により現像する現像剤担持体と
を備え、
前記像担持体と前記現像剤担持体とによる搬送力は1.0[N]以上であり、
前記現像剤担持体の表面自由エネルギーは48[mN/m]以下である
ことを特徴とする画像形成ユニット。
【請求項2】
前記現像剤担持体の表面自由エネルギーは、26[mN/m]以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成ユニット。
【請求項3】
前記現像剤担持体の表面自由エネルギーγ[mN/m]と、前記現像剤担持体の十点平均粗さRz[μm]とが、
3≦Rz≦-0.115γ+8.514
を満足する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成ユニット。
【請求項4】
前記現像剤担持体の十点平均粗さRzは、5.5[μm]以下である
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の画像形成ユニット。
【請求項5】
前記現像剤担持体の十点平均粗さRzは、3.0[μm]以上である
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の画像形成ユニット。
【請求項6】
エネルギー分散型X線分析法を用いた元素分析により測定される、前記現像剤におけるSiの含有量が、0.98~1.28[重量%]である
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の画像形成ユニット。
【請求項7】
前記搬送力は、前記像担持体と前記現像剤担持体との間に挿入された物体が前記像担持体および前記現像剤担持体に引っ張られる力を測定することで求められる
ことを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の画像形成ユニット。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の画像形成ユニットと、
前記画像形成ユニットで形成された現像剤像を媒体に転写する転写部と、
前記現像剤像を前記媒体に定着する定着ユニットと
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、媒体に画像を形成する画像形成ユニット、および画像形成ユニットを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を用いたプリンタ等の画像形成装置では、感光体ドラム(像担持体)の表面に形成した潜像を、現像ローラ(現像剤担持体)に付着した現像剤で現像する。画像品質を向上するため、感光体ドラムと現像ローラとの間の圧力を調整する技術も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-15111号公報(要約参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、印刷不良(例えば白抜け等)を抑制するために、感光体ドラムと現像ローラとの間の圧力を高くする場合がある。しかしながら、感光体ドラムと現像ローラとの間の圧力を高くすると、現像ローラから感光体ドラムに移動したトナーの一部が現像ローラによって掻き取られ、別の印刷不良(例えばカスレ等)が発生する可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、カスレ等の印刷不良の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の画像形成ユニットは、静電潜像を担持する像担持体と、像担持体に接触し、静電潜像を現像剤により現像する現像剤担持体とを備える。像担持体と現像剤担持体とによる搬送力は1.0[N]以上であり、現像剤担持体の表面自由エネルギーは48[mN/m]以下である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、現像剤担持体から像担持体に十分な量の現像剤を移動させることができ、カスレ等の印刷不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態の画像形成装置の構成を示す図である。
図2】実施の形態の画像形成装置の制御系を示すブロック図である。
図3】実施の形態の感光体ドラムの断面構造を示す図である。
図4】実施の形態の現像ローラの断面構造を示す図(A)および供給ローラの断面構造を示す図(B)である。
図5】現像ローラの導電性の測定方法を示す模式図(A),(B)である。
図6】実施の形態の感光体ドラムおよび現像ローラの支持構造を示す斜視図である。
図7】感光体ドラムと現像ローラとによる搬送力の測定方法を示す模式図(A),(B)である。
図8図7の搬送力の測定位置を示す模式図である。
図9】印刷試験に用いる印刷パターンを示す模式図(A),(B)である。
図10】感光体ドラムと現像ローラとによる搬送力およびトナーのSi含有量(検出量)と、カスレの評価結果との関係を示すグラフである。
図11】感光体ドラムと現像ローラとの間のトナーの移動状態を示す模式図である。
図12】トナー母粒子と外添剤とを示す模式図(A),(B)である。
図13】搬送力が不足している場合(A)と搬送力が大きすぎる場合(B)の印刷不良の例を示す図である。
図14】印刷試験に用いたハーフトーン画像を示す図である。
図15】現像ローラの表面粗さによるトナー保持力の違いを説明するための模式図(A),(B)である。
図16】現像ローラの表面自由エネルギーおよび表面粗さと、カスレの評価結果との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<画像形成装置の構成>
図1は、実施の形態の画像形成装置1を示す図である。画像形成装置1は、電子写真法を用いて画像を形成するプリンタである。画像形成装置1は、媒体供給部40と、画像形成ユニット10と、定着ユニット50と、媒体排出部60とを備える。これらの構成要素は、筐体1Aに収容されている。
【0010】
媒体供給部40は、印刷用紙等の媒体Pを収容する媒体トレイ41と、媒体トレイ41の媒体Pを一枚ずつ搬送路に送り出す給紙ローラ42と、搬送路に送り出された媒体Pを画像形成ユニット10に搬送する搬送ローラ43と、給紙ローラ42から搬送ローラ43まで媒体Pを案内する媒体ガイド44を有する。
【0011】
画像形成ユニット10の感光体ドラム11(後述)に対向するように、露光装置としての露光ヘッド30が配置されている。露光ヘッド30は、発光素子としてのLED(発光ダイオード)を配列したLEDアレイとレンズアレイとを有し、感光体ドラム11の表面に光を照射する。なお、露光ヘッド30は、筐体1Aの上部を覆うトップカバー1Bに懸架されて支持されている。
【0012】
画像形成ユニット10は、像担持体としての感光体ドラム11と、帯電部材としての帯電ローラ15と、現像剤担持体としての現像ローラ12と、供給部材としての供給ローラ13と、層規制部材としての規制ブレード14と、現像剤収容体としてのトナーカートリッジ16と、クリーニング部材17と、廃トナー搬送部18と、これらを収容するユニット筐体20とを有する。
【0013】
なお、画像形成ユニット10は、上記構成要素を全て有している必要はなく、少なくとも、像担持体としての感光体ドラム11と、現像剤担持体としての現像ローラ12とを有していればよい。加えて、帯電部材としての帯電ローラ15と、供給部材としての供給ローラ13と、層規制部材としての規制ブレード14とを有していてもよい。さらに、現像剤収容体としてのトナーカートリッジ16と、クリーニング部材17と、廃トナー搬送部18と、これらを収容するユニット筐体20とを有していても良い。
【0014】
感光体ドラム11は、導電性支持体の表面に感光層を形成した円筒状の部材であり、図中時計回りに回転する。感光体ドラム11は、その表面に静電潜像を担持する。感光体ドラム11の構成の詳細については、後述する。
【0015】
帯電ローラ15は、感光体ドラム11に接触するように配置され、感光体ドラム11に追従して回転する。帯電ローラ15は、帯電電圧電源105(図2)から帯電電圧を印加され、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる。
【0016】
現像ローラ12は、感光体ドラム11の表面に接触するように配置され、感光体ドラム11とは逆方向(接触部での表面の移動方向が順方向となる方向)に回転する。現像ローラ12は、現像電圧電源106(図2)から現像電圧を印加され、感光体ドラム11の表面の静電潜像をトナー(現像剤)により現像する。
【0017】
供給ローラ13は、現像ローラ12の表面に接触するように配置され、現像ローラ12と同方向(接触部での表面の移動方向が逆方向となる方向)に回転する。供給ローラ13は、供給電圧電源107(図2)から供給電圧を印加され、現像ローラ12にトナーを供給する。
【0018】
規制ブレード14は、現像ローラ12の表面に接触するように配置されたブレードである。規制ブレード14は、ブレード電圧電源108(図2)からブレード電圧を印加され、現像ローラ12の表面のトナー層を一定の厚さに規制する。
【0019】
トナーカートリッジ16は、現像剤としてのトナー(符号9で示す)を収容する容器である。トナーは、例えばブラックトナーであるが、これに限定されるものではない。トナーカートリッジ16は、ユニット筐体20の上部に着脱可能に取り付けられ、現像ローラ12および供給ローラ13にトナー9を供給する。
【0020】
ユニット筐体20内において現像ローラ12および供給ローラ13の上方には、トナーカートリッジ16から供給されたトナー9を貯蔵するスペースであるトナー貯蔵部が形成される。トナー貯蔵部には、クランク状の撹拌バー25,26,27が配置されている。撹拌バー25,26,27は矢印で示す方向に回転し、トナー9を撹拌・搬送する。現像ローラ12の下方には、トナー漏れを防止するためのシール部材28が設けられている。
【0021】
クリーニング部材17は、感光体ドラム11の表面に接触するように配置されたブレードまたはローラであり、感光体ドラム11の表面に残存するトナー9を掻き取る。廃トナー搬送部18は図示しないスクリューを有し、クリーニング部材17によって掻き取られた廃トナーを廃トナー回収部に搬送する。
【0022】
なお、画像形成ユニット10は、イメージドラムユニット(IDユニット)、プロセスユニット、あるいは現像装置とも称される。
【0023】
感光体ドラム11の表面に接触するように、転写部(転写部材)としての転写ローラ19が配置されている。転写ローラ19は、転写電圧電源109(図2)から転写電圧を印加される。この転写電圧により、感光体ドラム11の表面のトナー像が、感光体ドラム11と転写ローラ19との間を通過する媒体Pに転写される。
【0024】
画像形成装置1は、画像形成ユニット10により例えばブラックの単色画像を形成するが、このような構成例に限定されるものではない。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の複数の画像形成ユニットを媒体Pの搬送方向に配列し、カラー画像を形成するように構成してもよい。
【0025】
定着ユニット50は、トナー像を媒体Pに定着するものである。定着ユニット50は、定着ローラ51と加圧ローラ52とを有する。定着ローラ51は、ハロゲンランプ等のヒータを内蔵する。加圧ローラ52は定着ローラ51に圧接され、定着ニップを形成する。定着ローラ51および加圧ローラ52は、定着ニップを通過する媒体Pに熱と圧力を加え、トナー像を媒体Pに定着させる。
【0026】
媒体排出部60は、定着ユニット50を通過した媒体Pを搬送し、排出口から筐体1Aの外部に排出するものである。媒体排出部60は、媒体Pを排出口から排出する排出ローラ61と、定着ユニット50から排出ローラ61まで媒体Pを案内する媒体ガイド62と有する。トップカバー1Bには、排出された媒体Pを載置するスタッカ63が形成されている。
【0027】
図1において、感光体ドラム11の軸方向を、X方向とする。X方向は、画像形成装置1内の各ローラの軸方向であり、搬送される媒体Pの幅方向でもある。媒体Pが画像形成ユニット10を通過するときの媒体Pの移動方向を、Y方向とする。X方向とY方向に直交する方向を、Z方向とする。ここでは、Z方向は上下方向である。
【0028】
Y方向については、媒体Pが画像形成ユニット10を通過するときの搬送方向を+Y方向とし、その反対方向を-Y方向とする。X方向については、+Y方向を向いて右手方向を+X方向とし、左手方向を-X方向とする。Z方向については、図1の上方向を+Z方向とし、下方向を-Z方向とする。
【0029】
<画像形成装置の制御系>
図2は、画像形成装置1の制御系を示すブロック図である。画像形成装置1は、制御装置100と、I/F(インタフェース)制御部101と、受信メモリ102と、画像データ編集メモリ103と、電圧制御部104と、ヘッド制御部110と、駆動制御部111と、定着制御部112と、定着駆動制御部113と、給紙搬送制御部114とを有する。
【0030】
制御装置100は、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポート、タイマ等を有する。制御装置100は、上位装置からI/F制御部101を介して印刷データおよび制御コマンドを受信し、画像形成装置1の印刷動作を実行する。
【0031】
制御装置100には、操作パネル121からの操作信号、および画像形成装置1の状態を検知するセンサ群122からの検知信号が入力される。センサ群122は、例えば、媒体Pの搬送路上の位置を検知する媒体センサ、および温湿度を検出する温湿度センサ等である。
【0032】
受信メモリ102は、上位装置からI/F制御部101を介して入力された印刷データを一時的に記憶する。画像データ編集メモリ103は、受信メモリ102に記憶した印刷データを受け取ると共に、その印刷データを編集処理することによって形成された画像データ、すなわちイメージデータを記録する。
【0033】
電圧制御部104は、帯電電圧電源105から帯電ローラ15に印加される帯電電圧と、現像電圧電源106から現像ローラ12に印加される現像電圧と、供給電圧電源107から供給ローラ13に印加される供給電圧と、ブレード電圧電源108から規制ブレード14に印加されるブレード電圧と、転写電圧電源109から転写ローラ19に印加される転写電圧とを制御する。
【0034】
ヘッド制御部110は、画像データ編集メモリ103に記録されたイメージデータに基づき、露光ヘッド30の各LEDを発光制御する。
【0035】
駆動制御部111は、感光体ドラム11を回転駆動する駆動モータ(ドラムモータ)115の回転を制御する。なお、感光体ドラム11の回転は、現像ローラ12および供給ローラ13にも伝達される。
【0036】
定着制御部112は温度調節回路を有し、定着ユニット50に設けられたサーミスタ等の温度センサの出力信号に基づき、定着ローラ51のヒータ53に電流を供給する。定着駆動制御部113は、定着ローラ51を回転駆動する定着モータ116の回転を制御する。なお、排出ローラ61は、定着モータ116からの回転伝達によって回転する。
【0037】
給紙搬送制御部114は、給紙ローラ42を駆動する給紙モータ117、および搬送ローラ43を駆動する搬送モータ118の回転を制御する。
【0038】
<画像形成装置の基本動作>
次に、画像形成装置1の基本動作について、図1および図2を参照して説明する。制御装置100は、上位装置からI/F制御部101を介して印刷コマンドと印刷データを受信すると、画像形成(印刷)動作を開始する。
【0039】
制御装置100は、上位装置から受信した印刷データを受信メモリ102に一時的に記録し、記録した印刷データを編集処理してイメージデータを生成し、画像データ編集メモリ103に記録する。
【0040】
また、定着駆動制御部113が定着モータ116を駆動し、定着ローラ51および加圧ローラ52が回転を開始する。また、定着制御部112がヒータ53に通電し、定着ローラ51が所定の定着温度まで加熱される。
【0041】
また、給紙搬送制御部114が給紙モータ117を駆動し、給紙ローラ42が媒体トレイ41内の媒体Pを矢印A1で示すように搬送路に送り出す。また、搬送モータ118により搬送ローラ43が回転し、媒体Pを矢印A2で示すように画像形成ユニット10に搬送する。
【0042】
また、電圧制御部104が各電圧電源105~108から帯電ローラ15、現像ローラ12、供給ローラ13、規制ブレード14に帯電電圧、現像電圧、供給電圧およびブレード電圧を印加する。
【0043】
また、駆動制御部111が駆動モータ115を駆動し、感光体ドラム11が回転する。感光体ドラム11の回転に伴って、帯電ローラ15、現像ローラ12および供給ローラ13も回転する。帯電ローラ15は、感光体ドラム11の表面を一様に帯電させる。
【0044】
また、ヘッド制御部110が露光ヘッド30を駆動し、感光体ドラム11の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム11の表面には静電潜像が形成される。
【0045】
感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像は、現像ローラ12に付着したトナー9によって現像され、感光体ドラム11の表面にトナー像が形成される。さらに、電圧制御部104が転写電圧電源109から転写ローラ19に転写電圧を印加する。
【0046】
この転写電圧により、感光体ドラム11の表面のトナー像が、感光体ドラム11と転写ローラ19との間を通過する媒体Pに転写される。媒体Pに転写されなかったトナーは、クリーニング部材17によって掻き取られる。
【0047】
定着ユニット50では、定着ローラ51と加圧ローラ52との間の定着ニップに搬送された媒体Pに熱および圧力が印加され、トナー像が媒体Pに定着される。トナー像が定着した媒体Pは、矢印A3で示すように媒体排出部60に送られる。
【0048】
媒体排出部60では、排出ローラ61が媒体Pを矢印A4で示すように排出口から排出する。排出された媒体Pは、スタッカ63上に積載される。これにより、媒体Pへの画像の形成が完了する。
【0049】
<画像形成ユニットの各構成要素の構成>
次に、画像形成ユニット10の各構成要素の構成について、詳細に説明する。
【0050】
<トナー>
まず、トナー9について説明する。トナー9は、非磁性一成分の負帯電性トナーであり、少なくとも結着樹脂を含有するトナー母粒子に、無機微粉体または有機微粉体等の外部添加剤(外添剤)を添加したものである。
【0051】
結着樹脂としては、ポリエステル系樹脂、スチレン-アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、またはスチレン-ブタジエン系樹脂が好ましい。結着樹脂には、離型剤、着色剤等を添加してもよく、さらに帯電制御剤、導電性調整剤、流動性向上剤またはクリーニング性向上剤等の添加剤を添加してもよい。また、複数種類の結着樹脂を混合してもよい。ここでは、二種類以上の非晶性ポリエステル樹脂と、結晶構造を持った結晶性ポリエステル樹脂とを混合したものを用いる。
【0052】
トナー9の平均粒径は約7.0[μm]であり、円形度は約0.93である。平均粒径の測定には、コールター株式会社製「マルチサイザー3」を使用する。円形度の測定には、シスメックス株式会社製「フロー式粒子像分析装置FPIA-3000」を使用する。
【0053】
外添剤にはシリカ(SiO)を用いる。本実施の形態では、外添剤の量を評価するため、トナー9におけるSi(ケイ素)の含有量(検出量)[重量%]を、エネルギー分散型X線分析法(EDX)による元素分析によって測定する。元素分析には、島津製作所株式会社製のエネルギー分散型蛍光X線分析装置「EDX-800HS」を用いる。測定環境はヘリウム(He)ガス雰囲気とし、X線管電圧は15[kV],50[kV]とする。本実施の形態のトナー9におけるSiの含有量は0.98~1.28[重量%]である。
【0054】
一般に、X線を試料に照射すると、試料に含まれる原子固有のX線である蛍光X線が発生して試料から放出される。蛍光X線は各元素特有の波長(エネルギー)を有するため、蛍光X線の波長を調べることにより、定性分析を行うことができる。また、蛍光X線の強度は、濃度の関数となる。このため、元素特有の波長ごとにX線量を測定することにより、定量分析を行うことができる。
【0055】
本実施の形態では、エネルギー分散型蛍光X線分析装置のX線管から放射されたX線をトナーに照射し、トナーの外添剤に含まれるSi原子から放出される蛍光X線に基づき、Siの含有量を測定する。なお、エネルギー分散型蛍光X線分析装置では、試料室内の雰囲気をヘリウム(He)ガスに置換し、電圧を15[kV]、電流を100[μA]としてX線を照射する。
【0056】
<感光体ドラム>
次に、感光体ドラム11について説明する。図3は、感光体ドラム11の断面構造を示す図である。感光体ドラム11は、円筒状の導電性支持体11bと、導電性支持体11bの表面に形成された感光層11cとを有する。導電性支持体11bと感光層11cとの間に、下引き層を形成してもよい。
【0057】
感光層11cを構成する感光体としては、一般の電子写真感光体に適用可能な感光体が使用可能である。具体例としては、単層型感光体あるいは積層型感光体を用いることができる。単層型感光体は、光導電性材料をバインダ樹脂中に溶解または分散させた単層の感光層(すなわち単層型感光層)を有する。積層型感光体は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層とを積層したものである。一般に、感光体は、単層型および積層型のいずれであっても同等の性能を発揮することが知られている。
【0058】
本実施の形態の感光層11cは、機械的物性、電気特性、および製造安定性等を総合的に勘案して、積層型感光層が好ましい。その中でも、導電性支持体11b上に電荷発生層と電荷輸送層とをこの順に積層した順積層型感光体が特に好ましい。なお、積層型感光体は、電荷発生層と電荷輸送層が電荷の生成と輸送を分担しているため、機能分離型感光体とも称する。
【0059】
機能分離型感光体の電荷輸送層を形成する際、および単層型感光体の感光層を形成する際には、膜強度確保のため、化合物(電荷輸送物質等)をバインダ樹脂(結着樹脂)に分散させるのが一般的である。機能分離型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質とバインダ樹脂とを溶剤に溶解あるいは分散して得られる塗布液を、塗布し、乾燥することで形成される。また、単層型感光体は、電荷発生物質、電荷輸送物質および各種バインダ樹脂を溶剤に溶解あるいは分散して得られる塗布液を、塗布し、乾燥することで形成される。
【0060】
機能分離型感光体の電荷発生層に一般に用いられるバインダ樹脂は、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールあるいはアセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼイン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アルキッド樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂、および、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性樹脂の中から選択することができる。但し、これらの樹脂に限定されるものではない。また、これらバインダ樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率および組み合わせで用いてもよい。
【0061】
電荷輸送層に用いられるバインダ樹脂は、例えば、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼイン、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アルキッド樹脂、シリコーン-アルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂および有機光導電性樹脂等である。塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体は、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、および塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体等である。有機光導電性樹脂は、例えば、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセンおよびポリビニルペリレン等である。
【0062】
電荷輸送層に含まれる化合物は、例えば、1種類または2種類以上の電荷輸送物質を含む。電荷輸送物質の種類は特に限定されないが、例えば、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、アニリン誘導体およびエナミン誘導体等である。電荷輸送物質は、例えば、上記した芳香族アミン誘導体のうちのいずれか1種類または2種類以上が結合された化合物でもよい。また、電荷輸送物質は、例えば、上記した芳香族アミン誘導体等からなる基を主鎖または側鎖として有する重合体(電子供与性材料)等でもよい。特に、電荷輸送物質は、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体、エナミン誘導体およびそれらのうちのいずれか1種類または2種類以上が結合された化合物であることが好ましく、芳香族アミン誘導体とエナミン誘導体とが結合された化合物であることがより好ましい。
【0063】
感光体ドラム11の感光層11cは、一般に、各層を構成する材料を含有する塗布液を、導電性支持体11b上に公知の塗布方法を用いて塗布し、乾燥するという工程を各層毎に繰り返すことで形成される。塗布液の作製時にバインダ樹脂を溶解させる溶媒、分散媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、4-メトキシ-4-メチル-2-ペンタノン等の鎖状、分岐および環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状および環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n-ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、または水等であり、上述した下引き層を溶解しないものが好ましい。なお、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率および組み合わせで用いてもよい。
【0064】
塗布液の塗布方法としては、例えば浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他のコーティング法を用いてもよい。なお、これらの方法は、1種を単独で利用してもよく、2種以上を任意に組み合わせて利用してもよい。塗布液の乾燥は室温(通常25[℃])での指触乾燥後、30~190[℃]の温度範囲で、1[分]~2[時間]の乾燥時間に亘って、無風または送風下で加熱乾燥させるのが好ましい。また加熱温度は一定としてもよく、加熱温度を変更しながら乾燥してもよい。
【0065】
順積層型感光体の電荷輸送層の膜厚の範囲は、一般に5~50[μm]であるが、長寿命化および画像安定性の観点からは、10~45[μm]であることが好ましい。さらに解像度向上の観点からは、10~30[μm]であることがより好ましい。また、本実施の形態の感光体ドラム11の外径は、30.0[mm]である。
【0066】
<現像ローラ>
次に、現像ローラ12について説明する。図4(A)は、現像ローラ12の断面構造を示す図である。現像ローラ12は、導電性の芯金(シャフト)12aと、芯金12aの表面に形成された弾性層12bと、弾性層12bの表面を覆う表面層12cとを備える。
【0067】
弾性層12bは、シリコーンゴム、ウレタン等の一般的なゴム材料で形成することができる。ゴム材料としてポリウレタンを用いる場合には、ポリエーテル系ポリオールを主体とするポリウレタン(エーテル系ポリウレタン)が好ましい。エーテル系ポリウレタンは、ポリエーテル系ポリオールを主体とするポリオールとポリイソシアネートとを反応することにより得られる、いわゆる注型タイプのポリウレタンである。これは、圧縮永久ひずみを小さくするためである。一方、エステル系ポリウレタンは、加水分解特性が低いため、長期に亘る安定した使用が難しい。
【0068】
弾性層12bは、上述したゴム材料からなるゴム基材にカーボンブラックを添加し、カーボンブラックの分散状態を保持したまま加熱硬化させて形成する。
【0069】
表面層12cは、弾性層12bの表層部に表面処理液を含浸させることにより形成される。表面処理液は、有機溶媒にエーテル系ポリウレタンおよびイソシアネートを溶解させたもの、あるいは有機溶媒にアクリル系樹脂およびウレタン系樹脂を溶解させたものである。表面処理液には、さらに、導電性付与材として、アセチレンブラック等のカーボンブラックを添加してもよい。
【0070】
表面処理液に弾性層12bを浸漬することにより、表面処理液が弾性層12bの表層部に含浸される。その後、弾性層12bを乾燥し、硬化させることにより、弾性層12bの表層部が表面層12cとなる。
【0071】
現像ローラ12のローラ部分(後述する軸端部12eを除く部分)は、外径が一定のストレート形状であってもよく、外径が軸方向中央部と端部とで異なる形状(例えばクラウン形状)であってもよい。現像ローラ12と、感光体ドラム11、供給ローラ13および規制ブレード14との間の接触圧力がそれぞれ軸方向に均一になる形状が望ましい。ここでは、現像ローラ12のローラ部分はストレート形状を有し、外径は12.0[mm]である。
【0072】
弾性層12bのゴム硬度(アスカーC硬度)は、55~85[度]であることが好ましい。弾性層12bのアスカーC硬度が55[度]より低い場合、画像形成ユニット10が長期間に亘って停止した場合に、現像ローラ12と感光体ドラム11あるいは規制ブレード14との当接部に凹みが発生し、画像に横スジが発生する可能性がある。弾性層12bのアスカーC硬度が85[度]より高い場合、現像ローラ12にかかる機械的負荷が増加し、現像ローラ12の表面でトナーの付着(フィルミングと称する)が発生しやすくなる。ここでは、弾性層12bのアスカーC硬度は82[度]である。
【0073】
現像ローラ12の表面粗さRz(十点平均粗さ:JIS_B0601-1994)は、2.0~7.0[μm]であることが望ましい。表面粗さRzが2.0[μm]未満の場合、現像ローラ12の表面のトナー層が薄くなり、トナー9の粒子1個当たりに加わるストレスが大きくなる。そのため、トナー9から離脱する外添剤が増加し、その外添剤が現像ローラ12と規制ブレード14との間に詰まり、規制ブレード14の表面でフィルミングが発生する可能性がある。また、表面粗さRzが7.0[μm]を超える場合、現像ローラ12の表面のトナー層が厚くなり、供給ローラ13によるトナー9の掻き取りが不十分になって現像ローラ12の表面でフィルミングが発生し、また、必要量以上のトナーが感光体ドラム11に移動して画像の汚れが発生する可能性がある。
【0074】
現像ローラ12の表面粗さRzは、株式会社小坂研究所製の表面粗さ測定機「サーフコーダSEF3500」を用いて測定することができる。表面粗さ測定機の触針半径は2[μm]、触針圧は0.7[mN]であり、触針を現像ローラ12の軸方向に速度0.1[mm/秒]で距離4.0[mm]だけ移動させて測定を行う。カットオフ値は0.8[mm]である。
【0075】
なお、現像ローラ12の表面粗さRz(十点平均粗さ)は、後述するカスレの発生を抑制するためには3.0~5.5[μm]がより望ましいが、これについては後述する。
【0076】
現像ローラ12の抵抗値は、4.0~7.0[logΩ]が望ましい。ここでは、抵抗値が5.5[logΩ]の現像ローラ12を用いる。
【0077】
図5(A),(B)は、現像ローラ12の抵抗値の測定方法を示す模式図である。測定装置70としては、ヒューレット・パッカード株式会社製の「ハイレジスタンスメータ」(型番:4339B)を用いる。図5(A)に示すように、現像ローラ12の芯金12aの両端の軸端部12eにW=500[g]の荷重を加え、現像ローラ12の表面を金属ローラ71の表面に接触させる。金属ローラ71はステンレス鋼(SUS)で形成され、ローラ部の外径は30[mm]である。
【0078】
図5(B)に示すように、金属ローラ71を速度50[rpm]で回転させ、金属ローラ71の軸部72に対して現像ローラ12の軸端部12eに-200[V]の直流電圧を印加する。この状態で両ローラの軸部間を流れる電流から、現像ローラ12の抵抗値を求める。測定環境は温度20[℃]、相対湿度50[%]である。
【0079】
<供給ローラ>
次に、供給ローラ13について説明する。図4(B)は、供給ローラ13を示す断面図である。供給ローラ13は、導電性の芯金13a(シャフト)と、芯金13aの表面に形成された発泡弾性層13bとを有する。芯金13aは、良好な導電性を有するものであればよく、一般に、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等が用いられる。
【0080】
発泡弾性層13bを形成するゴム組成物は、ゴムと発泡剤と導電性付与剤とを含有し、さらに必要に応じて添加剤を含有する。ゴムは、耐熱性および帯電特性に優れるシリコーンゴムもしくはシリコーン変性ゴムが好ましい。発泡剤は、発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよい。無機系発泡剤としては、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられる。有機系発泡剤としては、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物が挙げられる。発泡弾性層13bに連続セルを形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立セルを形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。添加剤は、例えば、充填剤、着色剤、離型剤等である。
【0081】
供給ローラ13のローラ部分は、外径が一定のストレート形状であってもよく、外径が軸方向中央部と端部とで異なる形状(例えばクラウン形状)であってもよい。供給ローラ13と現像ローラ12との間の接触圧力が軸方向に均一になる形状が望ましい。ここでは、供給ローラ13のローラ部分は、ローラ部分の軸方向中央部の外径が16.2[mm]、端部の外径が15.8[mm]となるクラウン形状を有する。
【0082】
供給ローラ13の芯金13aの外径は、例えば6.0[mm]である。弾性発泡層の平均セル径は、200~500[μm]であることが好ましいが、この範囲に限定するものではない。弾性発泡層の硬度は、アスカーF硬度で50~65[度]程度であることが好ましく、ここでは58[度]のものを使用している。
【0083】
供給ローラ13の抵抗値は、3.5~7.5[logΩ]であることが好ましい。ここでは、抵抗値が5.5[logΩ]の供給ローラ13を用いる。供給ローラ13の抵抗値の測定方法は、現像ローラ12の抵抗値の測定方法と同様であり、図5(A),(B)を参照して説明した通りである。
【0084】
供給ローラ13の芯金13aの両端にW=200[g]の荷重を加え、供給ローラ13の表面を金属ローラ71に接触させる。金属ローラ71を速度63[rpm]で回転させ、金属ローラ71の軸部72に対して供給ローラ13の芯金13aの軸端部に-300[V]の直流電圧を印加する。測定環境は温度20[℃]、相対湿度50[%]である。
【0085】
供給ローラ13は、有機溶剤等で洗浄して油分を除去した芯金13aと、導電性シリコーンゴム発泡体とを押し出し成形機で一体成形し、次いで赤外線オーブン等で発泡体を発泡させ、硬化させる。その後、約180~225[℃]の温度で5~10[時間]程度の2次加硫処理を行い、研磨機で発泡弾性体の表面を研磨して所望の外径を得る。
【0086】
<規制ブレード>
規制ブレード14は、ステンレス鋼で構成された板状部材であり、板厚は例えば0.08[mm]である。規制ブレード14は、現像ローラ12との当接部に曲げ加工が施されており、曲げ部の曲率半径は、約0.15~0.35[mm]である。規制ブレード14と現像ローラ12との間の圧力(線圧)は、約25~50[gf/cm]である。
【0087】
<感光体ドラムと現像ローラの支持構造>
図6は、画像形成ユニット10における感光体ドラム11および現像ローラ12の支持構造を示す模式図である。感光体ドラム11および現像ローラ12の軸方向は、X方向である。
【0088】
画像形成ユニット10のユニット筐体20は、感光体ドラム11および現像ローラ12のX方向両側に、サイドフレーム21,22を有する。感光体ドラム11および現像ローラ12は、サイドフレーム21,22によって支持されている。なお、供給ローラ13および規制ブレード14(図1)もサイドフレーム21,22によって支持されているが、図6では省略されている。
【0089】
感光体ドラム11は、導電性支持体11b(図3)を軸方向に貫通するシャフト11aを有する。シャフト11aの両端部11eは、サイドフレーム21,22に形成された穴部21a,22aに嵌合している。これにより、シャフト11aはサイドフレーム21,22に固定される。なお、シャフト11aは、それ自体は回転しない。
【0090】
感光体ドラム11の導電性支持体11b(図3)は、その内周側に設けられた図示しない軸受により、シャフト11aに対して回転可能に支持されている。感光体ドラム11の-X方向(サイドフレーム21側)の端部にはドラムフランジ11fが設けられ、+X方向(サイドフレーム22側)の端部にはドラムギア11gが設けられている。
【0091】
ドラムフランジ11fおよびドラムギア11gは、感光層11cに対してX方向の両側に位置する。ドラムギア11gは、駆動モータ115(図2)からの回転が伝達される図示しないギアと噛み合っており、これにより感光体ドラム11が回転する。
【0092】
現像ローラ12は、芯金12a(図4(A))のX方向両端の軸端部12eが、サイドフレーム21,22の穴部21b,22bに配置された軸受により支持されている。これにより、現像ローラ12はサイドフレーム21,22に回転可能に支持される。
【0093】
現像ローラ12の+X方向の軸端部12eには、ドラムギア11gと噛み合うローラギア12gが固定されている。感光体ドラム11が回転すると、ドラムギア11gとローラギア12gとの噛み合いにより、現像ローラ12も回転する。
【0094】
感光体ドラム11の感光層11cと、現像ローラ12の表面層12cとは、互いに接触している。感光体ドラム11と現像ローラ12との中心間の距離L1は、サイドフレーム21の穴部21a,21bの中心間距離(すなわちサイドフレーム22の穴部22a,22bの中心間距離)で決まる。この距離L1によって、感光体ドラム11と現像ローラ12との間の接触圧力が決まる。
【0095】
次に、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力について説明する。搬送力とは、感光体ドラム11と現像ローラ12との間に挿入された物体(ここではフィルム)が、回転する感光体ドラム11および現像ローラ12に引っ張られる力である。そのため、搬送力は、引き抜き力、あるいはフィード力とも称する。
【0096】
図7(A)は、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力を測定するための測定治具80を示す模式図である。図7(B)は、搬送力の測定方法を示す模式図である。
【0097】
図7(A)に示す測定治具80は、長尺状のフィルム82と、支持板83と、フック85と、フォースゲージ81とを有する。
【0098】
フィルム82は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)で形成されている。フィルム82の長さは95mmであり、幅は5mmであり、厚さは1mmである。フィルム82の幅方向はX方向である。
【0099】
支持板83は、例えばアクリル板であり、フィルム82の長手方向の一端部に固定されている。支持板83の長さは20mmであり、幅は12mmである。支持板83には、穴部84が形成されている。
【0100】
フック85は、その一端がフォースゲージ81と連結されており、他端が支持板83の穴部84に引っ掛けられている。
【0101】
図7(B)に示すように、フィルム82は、感光体ドラム11と現像ローラ12との間に挿入される。フィルム82の長手方向は、感光体ドラム11と現像ローラ12との接触部(符号Nで示す)における感光体ドラム11の表面の接線方向である。フィルム82の幅方向は、X方向である。
【0102】
フィルム82を感光体ドラム11と現像ローラ12との間に挿入した状態で、感光体ドラム11および現像ローラ12をそれぞれ回転させる。感光体ドラム11の回転速度(周速)は、例えば234.0[mm/秒]である。また、現像ローラ12の周速は、感光体ドラム11の周速の1.26倍である。
【0103】
なお、感光体ドラム11と現像ローラ12との周速比(ここでは1.26)は、感光体ドラム11と現像ローラ12との外径比と、図6に示したドラムギア11gとローラギア12gとの歯数比によって決まる。
【0104】
感光体ドラム11および現像ローラ12を上記のように回転させた状態で、フォースゲージ81の値[N]を読み取る。フォースゲージ81は、ここではデジタルフォースゲージであり、測定値がパーソナルコンピュータに出力される。
【0105】
図8は、搬送力の測定位置を示す模式図である。感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力は、感光体ドラム11のX方向中央である位置P1と、位置P1から-X方向に所定距離だけ離れた位置P2と、位置P1から+X方向に同距離だけ離れた位置P3との合計3か所で測定する。
【0106】
位置P1,P2,P3のそれぞれにおいて、サンプリング間隔を10[m秒]としてフォースゲージ81の出力値を記録し、5[秒]間の平均値を算出する。これにより、位置P1,P2,P3のそれぞれにおける搬送力[N]を得る。そして、位置P1,P2,P3における搬送力の最大値を、搬送力[N]とする。
【0107】
なお、ここでは位置P1,P2,P3における搬送力の最大値を用いるが、これに限定されるものではなく、例えば位置P1,P2,P3における搬送力の平均値を用いてもよい。あるいは、位置P1に対してX方向両側の位置P2,P3の引き抜き力が高くなる傾向があるため、位置P2,P3における搬送力の平均値を用いても良い。
【0108】
また、ここでは幅が5mmで厚さが1mmのフィルム82を感光体ドラム11と現像ローラ12との間に挿入したが、幅および厚さが異なるフィルム82を用いた場合、搬送力の測定精度が低下する可能性がある。例えば、感光体ドラム11と現像ローラ12との間の圧力はX方向位置によって変化するため、フィルム82の幅が広過ぎると正確な測定が難しくなる。そのため、上記のように幅が5mm、厚さが1mmのフィルム82を用いることが望ましい。
【0109】
<表面自由エネルギー>
次に、現像ローラ12の表面自由エネルギーの測定について説明する。測定機は、協和界面化学株式会社製「接触角計システム」を用いる。測定環境は、温度25[℃]、相対湿度50[%]である。
【0110】
現像ローラ12の表面に、3種類の液体試料である水(H0)、ジヨードメタン(CH)およびドデカン(C1226)を滴下して、現像ローラ12の表面における各液体試料の液滴の接触角を測定する。液体試料の滴下量は、0.22×10-3[ml]~0.27×10-3[ml](=0.22[mm]~0.27[mm])とする。
【0111】
これら3種類の液体試料の表面自由エネルギーγtotal[mN/m]と、その分散成分γd[mN/m]、極性成分γp[mN/m]および水素結合成分γh[mN/m])は、表1の通りである。
【0112】
【表1】
【0113】
現像ローラ12の表面における各液滴の接触角の測定結果に基づいて、北崎・畑理論の式およびヤング・デュプレの式を用いて、現像ローラ12の表面自由エネルギーγを算出する。
【0114】
<印刷試験>
次に、印刷試験について説明する。現像ローラ12から感光体ドラム11へのトナー移動が不十分な場合、画像の濃度が部分的に低下する、カスレと呼ばれる印刷不良が発生する。特に、連続印刷によって感光体ドラム11の温度が上昇すると、カスレが発生しやすい。そこで、連続印刷後のカスレの発生状況を調べるための印刷試験を行う。
【0115】
図9(A)は、連続印刷に用いる媒体M1を示す図である。図9(B)は、連続印刷後の評価印刷に用いる媒体M2を示す図である。また、図9(A),(B)には、媒体M1,M2上に形成する画像R1,R2を(R2はドットのハッチングで)示している。媒体M1,M2は坪量が68~75[g/cm]の普通紙であり、媒体M1はA4サイズ、媒体M2はA3サイズである。
【0116】
画像形成装置1としては、沖電気工業株式会社製のモノクロLEDプリンタ「B820」を用いる。A4サイズの媒体M1は、横送りで202.5[mm/秒]の搬送速度(線速)で搬送される。A3サイズの媒体M2は、縦送りで202.5[mm/秒]の搬送速度(線速)で搬送される。
【0117】
印刷環境は、温度28[℃]、相対湿度80[%]とする。温度を常温(25[℃])よりも高温に設定したのは、より早く感光体ドラム11の温度を高くするためである。
【0118】
帯電ローラ15に印加する帯電電圧は-1050Vとし、現像ローラ12に印加する現像電圧は-200Vとし、供給ローラ13に印加する供給電圧は-350Vとし、規制ブレード14に印加するブレード電圧は-350Vとし、転写ローラ19に印加する転写電圧は+1500Vとする。
【0119】
連続印刷では、300枚の媒体M1に、デューティ比が1.25%の画像R1を、コピーモードで両面印刷する(そのため、印刷ページ総数は600ページとなる)。デューティ比が1.25%(すなわち印刷画像密度1.25%)の画像R1とは、図9(A)に示すようなライン状のベタ画像である。
【0120】
なお、デューティ比は、印刷画像密度とも呼ばれ、以下のように定義される。
印刷画像密度(デューティ比)=〔Cm(i)/(Cd×C0)〕×100
Cm(i)は、感光体ドラム11がCd回転する間に発光した露光ヘッド30のドットの数である。C0は、感光体ドラム11が1回転する間に発光可能な露光ヘッド30のドット数である。Cd×C0は、感光体ドラム11がCd回転する間に発光可能な露光ヘッド30のドット数である。
【0121】
すなわち、媒体M1の印刷可能領域の全面にベタ画像を印刷した場合に、印刷画像密度が100[%]となる。この印刷画像密度100[%]に対して、面積が1[%]となる画像を印刷した場合には、印刷画像密度が1[%]となる。
【0122】
媒体M1の連続印刷の完了後、1枚の媒体M2にデューティ比が100%の画像R2(ベタ画像)を印刷する。印刷後の画像R2を目視で観察し、カスレの有無を評価する。
【0123】
具体的には、画像にカスレが明確に観察された場合をレベル1とし、カスレが全く観察されない場合をレベル10とし、レベル1~10の10段階で評価する。レベル8以上を「〇」(良)とし、レベル7を「△」(可)とし、レベル1~6を「×」(不可)とする。
【0124】
図10は、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力およびトナー9におけるSiの含有量と、カスレの評価結果との関係を示すグラフである。トナー9におけるSiの含有量は、上記の通り、エネルギー分散型X線分析法を用いた元素分析によって検出した値[重量%]である。
【0125】
図10では、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力を0.9~1.4[N]の範囲で変化させ、トナー9におけるSiの含有量を0.98~3.0[重量%]の範囲で変化させている。現像ローラ12の表面自由エネルギーは66[mN/m]で一定にし、現像ローラ12の表面粗さRzは6.0[μm]で一定にしている。
【0126】
図10から、トナー9におけるSiの含有量が3.0[重量%]のときには、搬送力が0.9~1.4[N]の全範囲でカスレが見られない。一方、Si量が1.28[重量%]のときには、搬送力が1.2~1.4[N]の範囲でカスレが見られる。また、Si量が1.08[重量%]のときには、搬送力が1.0~1.4[N]の範囲でカスレが見られる。さらに、Si量が0.98[重量%]のときには、搬送力が0.9~1.4[N]の全範囲でカスレが見られる。
【0127】
すなわち、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力が大きいほどカスレが発生しやすく、また、トナー9におけるSiの含有量が少ないほどカスレが発生しやすい。
【0128】
図11は、感光体ドラム11と現像ローラ12との間のトナー9の移動状態を示す模式図である。搬送力が大きいほどカスレが発生しやすいのは、現像ローラ12から感光体ドラム11に移動したトナー9が、感光体ドラム11と現像ローラ12との間の高い圧力によって現像ローラ12に掻き取られてしまうためである。
【0129】
感光体ドラム11および現像ローラ12はいずれも軸方向両端で支持されるため(図6参照)、感光体ドラム11と現像ローラ12との間の圧力は軸方向中央部よりも両端で高い。そのため、図9(B)に符号Bで示したように、画像R2の幅方向両端でカスレが発生しやすい。
【0130】
また、トナー9の外添剤の量が少ないほどカスレが発生しやすいのは、次のような理由による。図12(A),(B)は、トナー9のトナー母粒子90と外添剤91とを示す模式図である。図12(A)に示すように、トナー母粒子90に外添される外添剤91が多い場合には、トナー母粒子90の表面の大半が外添剤91によって覆われるため、トナー母粒子90同士が吸着しにくくなる。その結果、トナー9が現像ローラ12の表面から離れやすくなり、感光体ドラム11に十分な量のトナー9が移動して静電潜像を現像する。
【0131】
一方、図12(B)に示すように、トナー母粒子90に外添される外添剤91が少ない場合には、トナー母粒子90の表面の大半が露出するため、トナー母粒子90同士が吸着しやすくなる。その結果、トナー9が現像ローラ12の表面から離れにくくなり、感光体ドラム11に移動して静電潜像を現像するトナー9が減少し、カスレが生じる。
【0132】
図10に示したように、トナー9におけるSiの含有量を3[重量%]とすれば、カスレの発生を抑制することはできる。しかしながら、トナー9の外添剤の量を多くすると、感光体ドラム11と現像ローラ12との間でトナー9に加わる圧力により、外添剤がトナー母粒子から脱落し、トナー9の帯電不良の原因となる。そのため、ここではトナー9におけるSiの含有量を0.98~1.28[重量%]の範囲としている。
【0133】
図13(A)は、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力を1.0[N]未満(例えば0.9[N])に設定して印刷したベタ画像Sを示す図である。図示の便宜上、ベタ画像Sはドットのハッチングで示している。
【0134】
図13(A)に示すように、搬送力が1.0[N]未満の場合には、ベタ画像Sの幅方向両端に白抜けが発生する。これは、感光体ドラム11と現像ローラ12との間の圧力不足のため、トナー9が感光体ドラム11に十分に移動しなかったことによるものである。
【0135】
図13(B)は、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力が1.4[N]を超える値(例えば1.5[N])に設定して印刷したハーフトーン画像Hを示す図である。図示の便宜上、ハーフトーン画像Hはドットのハッチングで示している。
【0136】
図13(B)に示すように、搬送力が1.4[N]を超える場合には、ハーフトーン画像Hに幅方向の横白スジ(符号Tで示す)が発生する。横白スジは、現像ローラ12から低分子成分のゴム材料が滲み出る現象(ブリード)によって生じるものであり、現像ローラ12の周長に対応する周期で発生する。
【0137】
なお、ハーフトーン画像Hは、図14に示す2×2パターンである。2×2パターンは、縦方向の4ドットおよび横方向の4ドットで形成される16マスのうち、縦方向の2ドットおよび横方向の2ドットで4マスのドットを形成するものである。
【0138】
図13(A),(B)に示した印刷不良は、現像ローラ12の表面自由エネルギーγおよび表面粗さRzに関わらず発生する。本実施の形態では、これらの印刷不良を抑制するために、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力を1.0~1.4[N]の範囲内とする。これは、一般的な画像形成装置における感光体ドラムと現像ローラとによる搬送力よりも高い。
【0139】
このように搬送力が高くなると、感光体ドラム11と現像ローラ12との間の摩擦が大きくなるため、連続印刷によって画像形成ユニット10の内部の温度が高くなり、これによりトナーの温度が上昇する。その結果、感光体ドラム11と現像ローラ12との間の現像効率(現像ローラ12から感光体ドラム11へのトナーの移動し易さ)が低下し、図9(B)に示したカスレが発生し易くなる。
【0140】
そこで、本実施の形態では、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力、並びに、現像ローラ12の表面自由エネルギーγおよび表面粗さRzに着目し、カスレの低減を図る。
【0141】
なお、感光体ドラム11の表面自由エネルギーγは現像ローラ12の表面自由エネルギーγと比較して非常に小さい。そのため、感光体ドラム11と現像ローラ12との間のトナー移動に関しては、現像ローラ12の表面自由エネルギーγの方が支配的と考えることができる。同様に、表面粗さRzについても、現像ローラ12の表面粗さRzの方が支配的と考えることができる。
【0142】
<現像ローラの表面粗さとカスレとの関係>
現像ローラ12の表面粗さは、JIS_B0601-1994に準拠する十点平均粗さRzにより評価する。測定装置としては、株式会社小坂製作所の「表面粗さ・輪郭形状測定機」を用いる。測定環境は、温度25[℃]、相対湿度50[%]とする。1つのサンプル(現像ローラ12)につき表面粗さを3回測定し、平均値を算出する。
【0143】
現像ローラ12の表面粗さRzは、現像ローラ12の形成時の研磨条件によって調整することができる。研磨条件は、例えば、研磨ペーパの粒度、研磨時間、研磨角度、研磨時に付加する圧力等である。
【0144】
感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力を0.9~1.4[N]の範囲で変化させ、現像ローラ12の表面粗さRzを3.0~6.0[μm]の範囲で変化させた場合のカスレの評価結果を、表2に示す。
【0145】
なお、いずれの条件においても、現像ローラ12の表面自由エネルギーγは66[mN/m]で一定であり、トナー9におけるSiの含有量は0.98[重量%]で一定である。
【0146】
【表2】
【0147】
表2から、現像ローラ12の表面粗さRzが大きいほど、カスレの発生を抑制できる搬送力の範囲が狭くなり、表面粗さRzが小さいほど、カスレの発生を抑制できる搬送力の範囲が広がっていることが分かる。そのため、現像ローラ12の表面粗さRzは、できるだけ小さい(特に5.5[μm]以下)であることが望ましい。
【0148】
これは、図15(A)に示すように、現像ローラ12の表面粗さRzが大きいほど、現像ローラ12の表面(すなわち表面層12c)に形成される凹部12hが大きくなり、トナー9が凹部12hに保持されて感光体ドラム11に移動しにくくなるためである。
【0149】
また、図15(B)に示すように、現像ローラ12の表面の凹部12hが小さいほど、現像ローラ12の表面に形成される凹部12hが小さくなり、トナー9が凹部12hに保持されにくくなる(すなわち感光体ドラム11に移動しやすくなる)ためである。以上から、現像ローラ12の表面粗さRzは、できるだけ小さい(特に5.5[μm]以下である)ことが望ましい。
【0150】
但し、現像ローラ12の表面粗さRzがさらに小さくなって3.0[μm]を下回ると、現像ローラ12の表面で保持されるトナー9の量が不足し、その結果、静電潜像の現像に必要な量のトナー9が感光体ドラム11に供給できずに、画像の濃度が全体的に薄くなる印刷不良が発生する可能性がある。この印刷不良は、図9(B)に示したカスレとは異なるため、供給カスレと称する。
【0151】
<現像ローラの表面自由エネルギーとカスレとの関係>
現像ローラ12の表面自由エネルギーの測定方法は、表1を参照して説明した通りである。現像ローラ12の表面自由エネルギーは、現像ローラ12の表面層12c(図4(A))の形成条件によって調整することができる。
【0152】
具体的には、表面層12cの構成材料であるポリウレタンを形成するポリオールとポリイソシアネートとの配合比を調整することにより、あるいはシリカ、フッ素等を添加することにより、現像ローラ12の表面自由エネルギーを調整することができる。
【0153】
感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力を0.9~1.4[N]の範囲で変化させ、現像ローラ12の表面自由エネルギーγを25~66[mN/m]の範囲で変化させた場合のカスレの評価結果を、表3に示す。
【0154】
なお、いずれの条件においても、現像ローラ12の表面粗さRzは6.0[μm]で一定であり、トナー9におけるSiの含有量は0.98[重量%]で一定である。
【0155】
【表3】
【0156】
表3から、現像ローラ12の表面自由エネルギーγが大きいほど、カスレの発生を抑制できる搬送力の範囲が狭くなり、表面自由エネルギーγが小さいほど、カスレの発生を抑制できる搬送力の範囲が広がっていることが分かる。
【0157】
これは、現像ローラ12の表面自由エネルギーγが大きいほど、現像ローラ12の表面へのトナー9の付着力が増加するためであり、現像ローラ12の表面自由エネルギーγが小さいほど、現像ローラ12の表面へのトナー9の付着力が減少する(従って感光体ドラム11に移動しやすくなる)ためである。
【0158】
但し、現像ローラ12の表面自由エネルギーγがさらに小さくなって26[mN/m]を下回ると、現像ローラ12の表面で保持されるトナー9の量が不足し、静電潜像の現像に必要な量のトナー9が感光体ドラム11に供給できなくなる。そのため、上述した表面粗さRzが3.0[μm]未満の場合と同様に、供給カスレが発生する。
【0159】
次に、表面自由エネルギーγと表面粗さRzをそれぞれ変化させ、カスレの発生状況を調べた。表4に、表面自由エネルギーγおよび表面粗さRzと、カスレの評価結果との関係を示す。なお、表4では、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力が1.4[N]で、トナー9におけるSi含有量が0.98[重量%]である場合の結果を示している。
【0160】
【表4】
【0161】
図16は、表4に示した結果を示すグラフである。横軸には現像ローラ12の表面自由エネルギーγを示し、縦軸には現像ローラ12の表面粗さRzを示す。
【0162】
図16から、カスレの評価結果が「〇」となるときの表面自由エネルギーγと表面粗さRzの範囲は、以下の式(1)および式(2)で表されることが分かる。
26[mN/m]≦γ≦48[mN/m] …(1)
3[μm]≦Rz≦-0.115E+8.514[μm] …(2)
【0163】
表4および図16では、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力が1.4[N]で、トナー9におけるSi含有量が0.98[重量%]である場合のカスレ評価結果を示しているが、これらの条件は、搬送力の範囲(1.0~1.4[N])およびSi含有量の範囲(0.98~1.28[重量%])において最もカスレが発生しやすい条件である。
【0164】
そのため、搬送力が1.0~1.4[N]の範囲にあり、トナー9のSi含有量が0.98~1.28[重量%]の範囲にあれば、上記の式(1),(2)によるカスレの抑制効果が顕著に得られることが分かる。
【0165】
言い換えると、感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力Bおよびトナー9におけるSi含有量Aが以下の式(3),(4)を満足する場合に、上記の式(1),(2)によるカスレの抑制効果が顕著に得られることが分かる。
0.98[重量%]≦A≦1.28[重量%] …(3)
1.0[N]≦B≦1.4[N] …(4)
【0166】
<実施の形態の効果>
以上説明したように、本実施の形態の画像形成装置1は、静電潜像を担持する感光体ドラム(像担持体)11と、感光体ドラム11に接触し、静電潜像を現像して現像剤像を形成する現像ローラ(現像剤担持体)12とを備える。感光体ドラム11と現像ローラ12とによる搬送力は1.0[N]以上であり、現像ローラ12の表面自由エネルギーは48[mN/m]以下である。
【0167】
搬送力を1.0[N]とすることにより、図13(A)に示したような白抜けの発生を抑制することができる。また、現像ローラ12の表面自由エネルギーγが48[mN/m]以下であるため、感光体ドラム11と現像ローラ12との摩擦の増大(それに伴う感光体ドラム11の温度上昇)が生じた場合であっても、図9(B)に示したようなカスレの発生を抑制することができる。
【0168】
また、現像ローラ12の表面自由エネルギーを26[mN/m]以上とすることにより、現像ローラ12の表面でのトナー9の保持力の低下に起因する供給カスレを抑制することができる。
【0169】
また、現像ローラ12の表面粗さ(十点平均粗さ)Rzを5.5[μm]以下とすることにより、現像ローラ12の表面からトナー9が離れやすくなる。これにより、感光体ドラム11に十分な量のトナー9を移動させ、図9(B)に示したようなカスレの発生を抑制することができる。
【0170】
また、現像ローラ12の表面粗さ(十点平均粗さ)Rzを3.0[μm]以上とすることにより、現像ローラ12の表面でのトナー9の保持力の低下に起因する供給カスレを抑制することができる。
【0171】
また、エネルギー分散型X線分析法を用いた元素分析により測定されるトナー9のSi含有量を0.98~1.28[重量%]とすることにより、Siを含む外添剤のトナー母粒子からの離脱を生じにくくし、トナー9の帯電不良に伴う印刷不良を低減することができる。
【0172】
また、現像ローラ12の表面自由エネルギーγとし、現像ローラ12の表面粗さ(十点平均粗さ)Rzとが、
26[mN/m]≦γ≦48[mN/m] …(1)
3[μm]≦Rz≦-0.115γ+8.514[μm] …(2)
を満足することにより、搬送力を高め、またトナーのSi含有量を0.98~1.28[重量%]とした場合において、カスレの発生を効果的に抑制することができる。
【0173】
本開示は、媒体に画像を形成するプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、MFP(Multi Function Peripheral)等の画像形成装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0174】
1 画像形成装置、 9 トナー、 10 画像形成ユニット(現像装置、プロセスユニット)、 11 感光体ドラム(像担持体)、 11a シャフト、 11b 導電性支持体、 11c 感光層、 12 現像ローラ(現像剤担持体)、 12a 芯金、 12b 弾性層、 12c 表面層、 12h 凹部、 13 供給ローラ(供給部材)、 13a 芯金、 13b 発泡弾性層、 14 規制ブレード(層規制部材)、 15 帯電ローラ(帯電部材)、 16 トナーカートリッジ(現像剤収容体)、 20 ユニット筐体、 21,22 サイドフレーム、 40 媒体供給部、 30 露光ヘッド、 50 定着ユニット、 60 媒体排出部、 80 治具、 81 フォースゲージ、 82 フィルム(物体)、 91 トナー母粒子、 92 外添剤、 100 制御装置、 B カスレ、 H ハーフトーン画像、 M1,M2 媒体、 R1,R2 画像、 S ベタ画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16