(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050630
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】識別装置及び情報提供システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20230404BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20230404BHJP
G08G 1/13 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
G08G1/16 D
G08G1/09 F
G08G1/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160821
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】田坂 駿
(72)【発明者】
【氏名】畑崎 由季子
(72)【発明者】
【氏名】松本 嵩寛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇史
(72)【発明者】
【氏名】木下 康太
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA21
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF05
5H181LL06
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】車両と他の物体との識別を確実に行える識別装置及び識別装置を備える情報提供システムを提供すること。
【解決手段】識別装置IEは、監視領域DDに存在する物体を検知して存在位置を示す物体位置情報を取得する物体情報取得部MRと、車両(自動運転車両VE)から送信される自己位置情報を受け付ける車両情報受付部VRと、物体位置情報と自己位置情報とを時刻同期して、位置を照合する照合部83と、照合部83での照合結果に基づき監視領域DDにおいて自動運転車両VEを他の物体から識別する識別部84とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域に存在する物体を検知して存在位置を示す物体位置情報を取得する物体情報取得部と、
車両から送信される自己位置情報を受け付ける車両情報受付部と、
前記物体位置情報と前記自己位置情報とを時刻同期して、位置を照合する照合部と、
前記照合部での照合結果に基づき前記監視領域において前記車両を他の物体から識別する識別部と
を備える識別装置。
【請求項2】
前記照合部は、時刻同期した前記物体位置情報と前記自己位置情報とにおいて、空間座標を比較して、前記監視領域における前記車両の存在位置を特定する、請求項1に記載の識別装置。
【請求項3】
前記物体情報取得部及び前記車両は、GNSS受信機を有し、
前記照合部は、前記物体位置情報と前記自己位置情報とに含まれる衛星時刻情報に基づいて時刻同期する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の識別装置。
【請求項4】
前記車両は、自動運転車両であり、
前記車両情報受付部は、前記自動運転車両の将来位置情報を、前記自己位置情報として受け付ける、請求項1~3のいずれか一項に記載の識別装置。
【請求項5】
前記物体情報取得部は、前記監視領域についてセンシングして前記物体位置情報を取得するセンサー部を備え、前記センサー部からの前記物体位置情報に基づき前記監視領域に存在する移動体を抽出し、
前記識別部は、前記物体情報取得部において抽出された移動体の中から前記車両を特定する、請求項1~4のいずれか一項に記載の識別装置。
【請求項6】
前記識別部での識別結果に基づいて、前記車両と前記車両以外の他の移動体との衝突判定を行う判定部を備える、請求項5に記載の識別装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の識別装置を備え、
前記識別部による識別を含む前記物体位置情報に関する解析結果を、前記車両に送信する、情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に沿って設けられた設備側(路側)において対象の車両と他の物体とを識別する識別装置及び識別装置を備える情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特定の領域を走行する複数の車両の進路を統括的に予測し、走行支援を行う走行支援装置として、設置したカメラ等での画像について画像解析することにより形状的特徴を捉え、過去のデータ等を参照すること等によって、車両を認識しているものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、設置したカメラ等で取得した情報からのみでは、例えば検出した際に、同じ位置あるいはほぼ同じ位置に自己の車両と他の車両とが存在しているような場合に、これらを識別することが困難となる可能性があり、例えば上記特許文献1における過去のデータのような事前の情報がないと、自己の車両を正しく特定できず、誤認識してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、車両と他の物体との識別を確実に行える識別装置及び識別装置を備える情報提供システムを提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための識別装置は、監視領域に存在する物体を検知して存在位置を示す物体位置情報を取得する物体情報取得部と、車両から送信される自己位置情報を受け付ける車両情報受付部と、物体位置情報と自己位置情報とを時刻同期して、位置を照合する照合部と、照合部での照合結果に基づき監視領域において車両を他の物体から識別する識別部とを備える。
【0007】
上記識別装置では、監視領域についての物体位置情報と車両からの自己位置情報とを時刻同期した上で、これらの間での位置照合を行う、すなわち車両側からの情報と路側からの情報とで、時刻同期を行った上で位置照合を行うことで、監視領域における車両と他の物体との識別を確実に行える。
【0008】
本発明の具体的な側面では、照合部は、時刻同期した物体位置情報と自己位置情報とにおいて、空間座標を比較して、監視領域における車両の存在位置を特定する。この場合、時刻同期により高い精度で空間座標の一致又は近似した状態での比較が可能になるので、的確な識別が可能となる。
【0009】
本発明の別の側面では、物体情報取得部及び車両は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機を有し、照合部は、物体位置情報と自己位置情報とに含まれる衛星時刻情報に基づいて時刻同期する。この場合、衛星時刻情報を基準とした時刻同期が可能となる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、車両は、自動運転車両であり、車両情報受付部は、自動運転車両の将来位置情報を、自己位置情報として受け付ける。この場合、将来位置情報に基づき、路側から種々の判断や情報の提供が可能になる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、物体情報取得部は、監視領域についてセンシングして物体位置情報を取得するセンサー部を備え、センサー部からの物体位置情報に基づき監視領域に存在する移動体を抽出し、識別部は、物体情報取得部において抽出された移動体の中から車両を特定する。この場合、センサー部によるセンシングに基づき、抽出すべき車両を特定できる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、識別部での識別結果に基づいて、車両と車両以外の他の移動体との衝突判定を行う判定部を備える。この場合、衝突判定に対してこれを回避するための運転支援を路側から行うことが可能となる。
【0013】
上記目的を達成するための情報提供システムは、上記いずれかの識別装置を備え、識別部による識別を含む物体位置情報に関する解析結果を、車両に送信する。
【0014】
上記情報提供システムでは、識別装置を備えることにより、監視領域についての物体位置情報と車両からの自己位置情報とを時刻同期した上で、これらの間での位置照合を行う、すなわち車両側からの情報と路側からの情報とで、時刻同期を行った上で位置照合を行うことで、監視領域における車両と他の物体との識別を確実に行うことができ、識別した結果についての情報を、車両に伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態に係る識別装置及びこれを備える情報提供システムについて概要説明をするための概念図である。
【
図2】識別装置及び情報提供システムにおける監視領域についての検知の様子を示す概念図である。
【
図3】情報提供システムの全体概要についての一構成例を示すブロック図である。
【
図4】情報提供システムの詳細についての一構成例を示すブロック図である。
【
図5】(A)及び(B)は、監視領域の検知結果としての物標情報の概要について一例を示すデータ図である。
【
図6】(A)及び(B)は、通信内容の概要について一例を示すデータ図である。
【
図7】(A)~(D)は、将来位置情報について説明するための概念図である。
【
図8】(A)は、時間同期や、位置照合について説明するための概念図であり、(B)は、識別に基づくデータ図の処理について一例を示す概念図である。
【
図9】情報提供システムにおける一連の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図10】識別装置及び情報提供システムの概要を示す概念図である。
【
図11】第2実施形態に係る識別装置及び情報提供システムについて概要説明をするための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、
図1等を参照して、第1実施形態に係る識別装置及び情報提供システムについて、一例を説明する。
図1は、本実施形態に係る識別装置IE及びこれを備える情報提供システム100を導入した所定の交通領域としての横断歩道CW及びその周辺の様子について示す概念図である。なお、図示の一例では、横断歩道CWは、無信号の領域に設けられている。また、
図2は、
図1に対応する図であり、識別装置IE又は情報提供システム100における監視領域DDについての検知の様子を示す概念図である。
図3は、情報提供システム100の全体概要の一構成例について示すブロック図であり、
図4は、情報提供システム100の詳細の一構成例について示すブロック図である。
【0017】
本実施形態に係る識別装置IE及び情報提供システム100は、
図1及び
図2に一例を示すように、路側に設置される設備において自動運転車両VEと継続的に通信をして、自動運転車両VEの挙動を把握する(
図1において実線で示すハッチングした自動運転車両VEの今後の予定走行態様を破線で示している)とともに、横断歩道CW及びその周辺を含む監視領域DDに存在する移動体MBについて検知し、検知結果に基づく衝突予測等を行い、予測結果に応じた各種情報の提供を自動運転車両VEに対して行うものとなっている。
【0018】
ここで、上記のような衝突予測等を行うに際しては、インフラ側(路側)において、自動運転車両VE自身の存在位置(自己の位置)と他の移動体(他の車両等)との識別がなされていることが前提となる。しかしながら、例えば、図示のように、自動運転車両VEの近隣を他の移動体MBである車両GMが並走したり自動運転車両VEに後続する車両GMが存在したりしている、といった場合には、路側において自動運転車両VEを正しく特定できるとは限らず、誤認識してしまうおそれがある。
【0019】
そこで、本実施形態では、識別装置IEあるいはこれを備える情報提供システム100において、識別装置IE側すなわち路側と自動運転車両VE側すなわち車両側との間で通信される情報について、時刻同期を行い、その上で車両の位置確認を行うことで、自動運転車両VEを他の物体から確実に識別(区別)できるようにしている。本実施形態では、特に、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星STを利用した衛星時刻情報に基づいて時刻同期を行うことで、より精度の高い自他の識別を可能にしている。
【0020】
上記のような識別や識別結果に基づく情報の提供を可能とすべく、情報提供システム100は、本体部である運転支援装置SSと、監視部であるセンサー部10とを路側の設備として備えており、これらのうち一部が、上記識別を行うための識別装置IEとして機能するものとなっている。運転支援装置SSには、通信部30と、主制御部50と、GNSS受信機(GPS受信機)REsとが設けられている。なお、以上のように、情報提供システム100は、横断歩道CW及びその周辺に設けられた路側装置で構成されていることになる。
【0021】
以上のような構成において、情報提供システム100は、
図2に例示するように、監視部としてのセンサー部10を介して、横断歩道CW及びその周辺を含む監視領域(検知範囲)DDについて監視を行い、監視領域(検知範囲)DDに存在する移動体MB(自動運転車両VEを含む)の検知を示すものとなっている物標情報を取得する。つまり、物標情報は、監視領域DDに存在する物体(移動体MB)を検知した場合において、当該物体の存在位置を示す物体位置情報となっている。
【0022】
また、この場合、運転支援装置SS及びセンサー部10、あるいはこれらの一部は、監視領域DDに存在する物体を検知して、存在位置を示す物体位置情報としての物標情報を取得する物体情報取得部MRとして機能している、とも言え、また、物体情報取得部MRは、監視領域DDについてセンシングして物体位置情報(物標情報)を取得するものとして、センサー部10を備え、センサー部10からの物体位置情報(物標情報)に基づき監視領域DDに存在する移動体MBを抽出している、とも言える。
【0023】
また一方で、情報提供システム100は、
図1に例示するように、通信部30を介して横断歩道CWを通過する予定の自動運転車両VEと通信して、自動運転車両VEの将来位置情報(自己の将来位置を示す情報)を取得する。なお、将来位置情報は、前提として、自動運転車両VEの現在位置の情報を含み、当該現在位置を基準として構成されている。すなわち、将来位置情報は、自動運転車両VEから送信される情報であって、自動運転車両VEの自己位置を示す自己位置情報となっている。なお、この場合、通信部30は、自動運転車両VEから送信される将来位置情報を、自己位置情報として受け付け、車両情報受付部VRとして機能している。
【0024】
以上のように、運転支援装置SSの主制御部50は、横断歩道CW及びその周辺の様子について把握するとともに、自動運転車両VEの挙動を把握する。さらに、主制御部50は、取得した上記各種情報に基づいて、すなわち、横断歩道CW及び横断歩道CWの周辺の状況と、自動運転車両VEの挙動(将来位置情報から把握される走行予定)とに対応して、例えば移動体MBの存在位置の情報や、横断歩道CWの手前で自動運転車両VEを一時停止すべきか否かの判定結果等を、自動運転車両VEに提供する。主制御部50は、例えば自動運転車両VEを一時停止すべきと判定した場合には、
図1に例示するように、仮想停止線VLの位置を示す情報を自動運転車両VEに対して送信する。なお、見方を変えると、主制御部50は、情報提供システム100を構成するもののうち、各種情報処理を行う情報処理部IPとして機能する。
【0025】
ここで、上記のような判定等を行うためにも、前提として、自動運転車両VEと他の移動体MBとの相対的な位置関係が的確に捉えられていること、すなわち自他の識別が適正になされていることが重要となる。そこで、本実施形態では、
図3として一構成例を示すブロック図に示すように、情報提供システム100と自動運転車両VEとの双方が、時間的な絶対的基準としてGNSSを用いて時刻同期を行う態様としている。具体的には、まず、情報提供システム100において、運転支援装置SSは、センサー部10で取得した物標情報(物体位置情報)に、GNSS衛星STを利用した時刻情報を紐づけて、記録管理をする。一方、自動運転車両VEは、将来位置情報(自己位置情報)についてGNSS衛星STを利用した時刻情報を含んだ状態で、情報提供システム100に対して送信する。端的には、自動運転車両VEは、将来位置情報を算出するための前提となる現在位置情報を構成する位置と時刻の情報を、GNSSに基づいて生成する(取得する)ものとなっている。運転支援装置SSは、自動運転車両VEからの将来位置情報に含まれる時刻情報と、物標情報に紐づけされた時刻情報とに基づいて、これらの情報の間での時刻同期を行った上で、両者に含まれる空間的情報(例えば座標データ)を比較して自動運転車両VEの物標情報における位置を特定することで、例えば近い位置に複数の車両が検知されているような場合であっても、これらの中から自動運転車両VEを的確に識別できるものとなっている。
【0026】
なお、既述のように、
図1では、自動運転車両VEが、横断歩道CWを通過する予定となっていることを、ハッチングで示す位置を現在位置として、その後の挙動(未来の予定動作)を、破線によって示している。すなわち、自動運転車両VEは、ハッチングで示す現在位置において自身の今後の予定が破線で示すものである旨を示す最初の将来位置情報を、運転支援装置SSに送信し、これを契機として、自動運転車両VEと運転支援装置SSとの間で通信が開始される。なお、自動運転車両VEは、自己の将来位置情報を、例えば一定の間隔で継続的に更新して送信し続ける。すなわち、インフラ側は、継続的に新たな将来位置情報を、自動運転車両VEから受け取る。この通信は、例えば自動運転車両VEが横断歩道CWを通過完了するまで、あるいは監視領域DDを通過するまで継続される。
【0027】
運転支援装置SSは、継続的に更新される将来位置情報を加味しつつ、自動運転車両VEの走行先である横断歩道CW及び横断歩道CWの周辺の状況が走行継続可能であるか否かを確認し、確認結果を、自動運転車両VEに対して提供する。すなわち、運転支援装置SSは、インフラ側から車両側へ情報を提供するI2V(Infrastructure to Vehicle)制御モジュールIMであるとも言える。図示の一例では、センサー部10での検知結果(
図2参照)から、横断歩道CWの手前で自動運転車両VEを停止させる必要があると運転支援装置SSが判定し、仮想停止線VLの位置情報、すなわち自動運転車両VEがどこで停止をすべきかについての情報を送信する場合について示している。
【0028】
仮想停止線VLは、情報提供側であるインフラ側によって設定された位置を線分として示すものであるが、実際に路面上に引かれているものではなく、位置データである。仮想停止線VLの位置データ(位置情報)は、必要に応じて、路側から自動運転車両VEに対して提供される。例えば、インフラ側において、必要に応じて仮想停止線VLの位置を設定した上で、設定された仮想停止線VLの位置情報を、自動運転車両VEに対して送信する態様とすることが考えられる。
【0029】
以下、
図4として示すブロック図を参照して、情報提供システム100あるいはこれを構成する識別装置IEのより具体的な一構成例について説明する。図示のように、また、既述のように、情報提供システム100は、運転支援装置SSと、センサー部10とを備え、運転支援装置SSは、通信部30と、主制御部50と、GNSS受信機(GPS受信機)REsとを有する。さらに、図示の一例において、主制御部50は、各種回路基板やCPU、ストレージデバイス等で構成され、機能面で見た場合に、画像処理を行って車両等の識別をする識別ユニット80と、画像処理の結果等の各種情報を利用して自動運転車両VEを停止させるべきか否か等の各種判定を行う判定ユニットJUと、センサー部10と接続するためのセンサーインターフェース(情報取得部)SEiとで構成されている。主制御部50では、これらの各部で種々の処理がなされるとともに、必要な情報(データ)の入出力が各部の間で適宜なされるものとなっている。
【0030】
まず、センサー部10は、カメラ部11と、測距部12とで構成される路側センサーであり、監視の対象となる所定範囲としての監視領域DDに存在する移動体MBや障害物等を検知するための各種データを取得する。なお、移動体MBについては、道路上に存在する車両のほか、道路脇や歩道等に存在する自転車や歩行者、さらには障害物等が想定される。カメラ部(インフラカメラ)11は、横断歩道CWを含む前後の道路上に加え、道路脇に延在する歩道等を監視領域DDとし、監視領域DDについて監視すべく、撮像を行って画像データを生成する。また、測距部12については、例えばLiDARのほか、ミリ波センサーや、レーダーを採用することが考えられ、測距を行って測距データを生成することで、移動体MBの位置等を取得可能にする。なお、図中では、1つのセンサー部10のみ示しているが、横断歩道CW及びその周辺について隈なく監視を行うべく、複数のカメラ等を場内に設置する構成にできる。また、ここでは、監視領域DDを一例として示しているが、情報を提供する対象となる自動運転車両VEの進行方向によって監視領域DDが変更される場合には、これに応じて、使用するカメラ等を適宜選択する等も可能である。ここで、センサー部10により取得される検知結果であり、監視領域DDに存在する移動体MBに関する画像データや測距データ等の各種情報を、物標情報とする。すなわち、物標情報には、監視領域DDに存在する各種車両や歩行者等の動作状況のほか、障害物の存在等についての情報が含まれている。
【0031】
GNSS受信機(GPS受信機)REsは、GNSS衛星STを用いた時刻情報の取得が可能となっており、特にここでは、後述する主制御部50のセンサーインターフェース(情報取得部)SEiにおいて、センサー部10からの物標情報にGNSS受信機REsで取得される時刻情報が付与されるものとなっている。
【0032】
通信部30は、自動運転車両VEと無線通信を行うための無線部である。ここで、通信相手である自動運転車両VEについては、既述のように、運転支援装置SSに対して、運転支援を受けるためのデータとして、自己の将来位置を示す将来位置情報を送信するものとなっている。より具体的に説明すると、まず、自動運転車両VEは、自動運転を行うための各種制御を行うべく、自動運転プログラムAOの将来位置情報生成部FGにおいて、自動運転車両VE自身についての現在位置や現在位置に基づく今後の進路予定の情報等で構成される将来位置情報を生成する。この将来位置情報には、自動運転車両VEの現在位置(現在時刻における位置)や、これに基づき作成される将来位置(到達予測時刻を含む)のほか、これらの各時刻(予定時刻)における速度や方位(方位角)等の情報が含まれている。したがって、運転支援装置SSは、自動運転車両VEから将来位置情報を受け付けることで、例えば自動運転車両VEの横断歩道CWへの到達予測時刻や、横断歩道CWの通過所要時間等を把握できる。特に、本実施形態では、自動運転車両VEは、GNSS衛星STを用いた現在位置情報及び時刻情報の取得を可能とすべく、GNSS受信機(GPS受信機)REvを有している。つまり、将来位置情報の生成に際しての現在位置(現在時刻における位置)については、GNSS受信機REvで取得されるものを適用している。
【0033】
主制御部50のうち、センサーインターフェース(情報取得部)SEiは、監視部であるセンサー部10で取得された情報すなわち物標情報を取り込んで、識別ユニット80に出力する。すなわち、情報取得部SEiは、所定範囲としての監視領域DDについての物標情報を取得するためのものである。また、特に、本実施形態では、情報取得部SEiは、タイムスタンプTSとしても機能し、取り込んだ物標情報に対して、GNSS受信機REsを利用した時刻情報を付与するものとなっている。例えば、図中においてかっこ書きで示すように、物標情報としての画像データに対して、タイムスタンプTSにおいてGNSSに準拠した時刻情報を画像データの取得時刻t
k(k≧1)として付与して、時刻付画像データとなったものが、識別ユニット80への物標情報として出力される。なお、画像データについては、例えば連続撮像された複数のものとすることが考えられ、これらについて、順次の取得時刻t
k(k≧1;t
k+1≧t
k)がナンバリングされていく(後述する
図5参照)。
【0034】
主制御部50のうち、識別ユニット80は、画像解析部81と、解析データ格納部82と、照合部83と、識別部84とを有する。さらに、照合部83は、時刻同期部83aと、位置照合部83bとで構成されている。
【0035】
画像解析部81は、画像データ等で構成される物標情報についての画像解析を行う。具体的には、例えば画像データに含まれる車両や人等の移動体MBの部分画像(オブジェクト画像)を抽出して、これらを種類ごとに分類するとともに、各移動体MBの位置(座標データ)や形状、色等を、必要に応じて抽出する。また、画像データとして取得された連続画像間における同一の移動体MBの変位等から移動速度(速度)を抽出する。また、以上のような解析の結果得られた各種データ(解析データ)は、解析データ格納部82に蓄積される。特に、ここでは、既述のように、情報取得部SEiにおいて、時刻情報が付与されており、上記解析結果とともに、対応する物標情報(画像データ)に付随する情報として当該時刻情報が併せて格納される。以上のように、画像解析部81は、物体情報取得部MRとして、センサー部10からの物体位置情報(物標情報)に基づき監視領域DDに存在する移動体MBを抽出している。
【0036】
照合部83のうち、時刻同期部83aは、路側の情報と車両側の情報との間での時刻同期を行う。より具体的には、上記解析データ格納部82に格納された物標情報(画像データ)ごとに付与された時刻情報と、通信部30を介して取得した将来位置情報に含まれる現在時刻とに基づいて時刻同期する。この場合において、物体情報取得部MR(運転支援装置SS)及び自動運転車両VEが、GNSS受信機REs,REvをそれぞれ有することで、照合部83は、物標情報(物体位置情報)と将来位置情報(自己位置情報)とに含まれる衛星時刻情報に基づいて時刻同期するものとなっている。
【0037】
照合部83のうち、位置照合部83bは、時刻同期がなされた物標情報(物体位置情報)と将来位置情報(自己位置情報)とについて、位置情報(座標データ)に関する比較をすることで、物標情報(物体位置情報)の中から自動運転車両VEを特定する。すなわち、照合部83は、時刻同期した物標情報(物体位置情報)と将来位置情報(自己位置情報)とにおいて、空間座標を比較して、監視領域DDにおける自動運転車両VEの存在位置を特定する。
【0038】
識別部84は、照合部83において上記のようにしてなされた照合結果に基づいて、監視領域DDにおいて自動運転車両VEを他の物体(移動体MB)から識別する。実体的には、識別部84は、物体情報取得部MRを構成する画像解析部81において画像データから抽出された移動体MBの中から自動運転車両VEに相当するものを特定している。
【0039】
主制御部50のうち、判定ユニットJUは、報知部70において自動運転車両VEの停止指令を行うか否かを判定する停止判定部52aと、算出部52bとを有する。さらに、停止判定部52aは、横断者判定部JDpと、停止指令部SIsとで構成されている。
【0040】
停止判定部52aのうち、横断者判定部JDpは、センサー部10による検知結果としての物標情報に基づき、横断歩道CWの横断者CRの存否について、すなわち横断歩道CWを渡ろうとする歩行者PEあるいは現に渡り始めている歩行者PEの存否について判定する。例えば、センサー部10による検知結果として、予め定めた横断歩道CWから所定範囲内(例えば2m~3m以内)に、所定の時間(例えば数秒程度)以上滞在し続けている人物が検知された場合、この人物を横断者CRと判定する。このような横断者CRの存在が認められている場合において、仮に横断歩道CWに向かう自動運転車両VEから将来位置情報として横断歩道CWの通過を予定する旨の情報が含まれていた場合には、停止判定部52aのうち、停止指令部SIsが、自動運転車両VEに対して、所定の仮想停止線VLにおいて停止(一時停止)することを推奨するあるいは指令する旨の信号送信を、通信部30を介して行う。なお、停止判定部52aは、上記一例のような横断者CRの存否に基づく判定以外にも、種々の物体と自動運転車両VEとの衝突を回避すべく、上記と同様の判定処理を行う。つまり、停止判定部52aは、衝突を回避すべく予測としての衝突判定を行う判定部として機能する。
【0041】
算出部52bは、仮想停止線VLで停止している自動運転車両VEが、仮想停止線VLから発進可能となる出発可能時間(出発可能時刻)を算出する。出発可能時間の算出について、典型的には、監視領域DDについての監視の結果、横断歩道CWやその近隣において道路を渡ろうとする移動体MBが存在しないこと、あるいは存在しなくなることが確認されることで、算出可能となる。なお、出発可能時間については、例えば定められた時刻(何時何分何秒から何時何分何秒までの間出発可能)で示したり、時間の長さ(現在を起点として何秒後から何秒後までの間出発可能)で示したりすることが想定される。
【0042】
通信部30は、以上のようにして、算出部52bにおいて算出された出発可能時間の情報を、自動運転車両VEに対して送信する。
【0043】
以下、
図5を参照して、物標情報について解析した内容について一例を説明する。
図5(A)及び
図5(B)は、監視領域DDの検知結果としての物標情報の概要について一例を示すデータ図である、上記の一例では、物標情報については、画像解析部81において画像データを解析した結果が、解析データ格納部82に格納されている様子を示している。
図5(A)は、解析データ格納部82に格納された各画像データの処理結果についての一覧をデータ図として示している。つまり、図中において、各画像データD
k(k≧1)は、情報取得部SEiを経て受け取った画像データ(連続画像)を意味しており、画像解析部81により、各画像データD
kから移動体等を抽出した結果としての解析データと、タイムスタンプTSにより付与された時刻情報を示す取得時刻t
k(k≧1)とが紐付けされている。なお、各解析データについての詳細は、
図5(B)に例示するように、移動体MBの種別と位置情報とに関するデータで構成されており、これらが解析データ格納部82に格納されている。なお、位置情報に含まれるパラメーターの1つとしての位置座標については、例えば3次元空間上の点座標で示すものとすることができる。例えば、画像データ中から車両の画像を矩形の枠状に切り出した範囲のうち、予め定めた基準点に相当する点を当該車両の位置を示す代表点とすることが考えられる。このほか、位置情報には、速度の情報等も含まれている。
【0044】
一方、
図6(A)及び
図6(B)は、上記のような態様における車両側と路側との間での通信内容について、概要を一例として示すデータ図であり、
図6(A)は、車両側から路側に対して送信される情報であり、
図6(B)は、路側から車両側に対して送信される情報であり、IDにより特定をしている。つまり、路側については、判定ユニットIDが定められており、車両側については、自動運転車両VEを特定するための車両IDが採用されている。
【0045】
まず、
図6(A)に示すように、車両側からは、各種IDやデータ作成日時Tに加え、自動運転車両VEの位置情報(現在位置)及び将来位置情報が、路側に対して送信され、路側に設置された運転支援装置SSは、これらの情報を受け付ける。ここで、データ作成日時T及び自動運転車両VEの位置情報(現在位置)については、既述のように、GNSS受信機(GPS受信機)REvを利用して取得した情報となっている。なお、位置情報(現在位置)については、自動運転車両VEの速度(走行速度)や方位(方位角)の情報が含まれている。これに対して、将来位置情報については、位置情報(現在位置)の場合と同様の情報に加えて、位置情報(現在位置)からのオフセット(距離)についての情報がさらに付加されている。将来位置情報については、現在時刻から一定時間経過ごと(例えば1秒経過ごと)の予測値が複数個(n個)含まれている。つまり、路側の設備は、例えばn秒後までの自動運転車両VEの進行予定ルートを把握できることになる。上記のような構成から、各情報は、位置情報(現在位置)を起点として、生成されており、本実施形態では、これをGNSS受信機(GPS受信機)REvからの情報に基づくものとすることで、時間に対する位置精度が高い情報となっている。
【0046】
一方、
図6(B)に示すように、路側すなわち運転支援装置SS側からは、各種IDや作成日時に加え、仮想停止線VLの情報や、出発可能時刻(出発可能時間)の情報といったものが、車両側に対して送信される。なお、図示の一例では、仮想停止線VLに関しては、その位置を線(線分)として示すべく、両端の位置を示す始点と終点の座標(緯度、経度)の情報が提供されるものとしている。出発可能時間については、文字通り時刻の情報を提供することも考えられるが、例えば出発開始可能となった時点でその旨を伝達する、という態様、つまり出発可能信号を自動運転車両VEに向けて発信するという態様についても、出発可能時間に相当する情報の提供と捉えることもできる。さらに、図示の一例では、運転支援装置SS側から車両側に対して物標情報が送信される。この際、物標情報については、例えば自動運転車両VE自身の位置情報が除かれ他の移動体(車両等)のみについての情報が含まれたものとすることができる。
【0047】
以下、
図7を参照して将来位置情報について概念的に説明する。
図7(A)~
図7(D)のうち、まず、
図7(A)は、自動運転車両VEから運転支援装置SSに対して送信される最初の将来位置情報について示している。自動運転車両VEが描かれている位置を現在位置として、Z方向に沿って示されている点FP1~FP4は、自動運転車両VEの将来位置を示している。より具体的には、現在位置(現時点)における時刻を0として、点FP1が、現時点からt秒後における自動運転車両VEの位置を示している。同様に、点FP2が、現時点から2t秒後における自動運転車両VEの位置を示し、点FP3が、現時点から3t秒後における自動運転車両VEの位置を示し、点FP4が、現時点から4t秒後における自動運転車両VEの位置を示している。
【0048】
次に、
図7(B)は、
図7(A)の状態からt秒後において、自動運転車両VEから運転支援装置SSに対して送信される2回目の将来位置情報について示している。この場合、
図7(A)の状態からt秒経過していることで、自動運転車両VEは、
図7(A)における点FP1に相当する位置まで進行していることになる。この上で、自動運転車両VEは、自身の新たな将来位置情報について、すなわち新たな点FP1~FP4の情報について、運転支援装置SSに対して送信する。以下、同様にして、
図7(C)に示すように、さらにt秒後に、3回目の将来位置情報(点FP1~FP4の情報)が送信される。
【0049】
一方、自動運転車両VEが走行を継続している最中において、運転支援装置SSから仮想停止線VLの情報が送信された場合、自動運転車両VEは、該当する仮想停止線VLの位置で減速しつつ停止すべく、自動運転における走行の状態を変更する。この場合、
図7(D)に一例を示すように、将来位置情報についても変更されることになる。
【0050】
なお、以上の場合、点FP1~FP4における各点間の距離は、物理的な移動距離を示すとともに、速度の変化の様子を示すものともなっている。また、各点を結んだ線(軌跡)は、自動運転車両VEの経路や方位(方位角)を示すものとなっている。
【0051】
なお、図示では、点FP4の場合についてまでしか示しておらず、点FP4より先については、省略しているが、さらに先の将来位置についての情報まで含まれる態様としてもよい。
【0052】
運転支援装置SSの主制御部50において、判定ユニットJUは、上記のような自動運転車両VEの予定走行ルートの情報と、横断歩道CW及びその周辺の情報とを勘案して、衝突予測を行っている。
【0053】
以下、
図8として示す概念図を参照して、照合部83(
図4参照)における時間同期や、位置照合等について説明する。例えば、
図8(A)として示すように、解析データ格納部82に格納されているデータのうちから、将来位置情報VD1(
図6(A)から一部を抜粋)におけるデータ作成日時T(単に時刻Tともする。)の値に対応する取得時刻t
kが選択される。取得時刻t
k(k≧1)のうち、例えば時刻Tに最も近い時刻となっているデータSSD1(図示では、取得時刻t
kとしている)が、対応するものとして選択される。以上のようにして、時間同期がなされる。なお、選択されるデータSSD1については、1つの将来位置情報VD1にたいして、1つとは限らず、2以上が選択されてもよい。
【0054】
次に、位置照合がなされる。具体的には、データSSD1中の解析データと将来位置情報VD1の位置情報(現在位置)とが比較され、解析データのうちどのデータが、対象の自動運転車両VEに相当するものであるかの判定、すなわち自動運転車両VEの特定が行われる。具体的には、
図8(B)として示すように、まず、状態α1として示すように、データSSD1の解析データの中から、ハッチングで示す車両のオブジェクトのみが選択され、さらに、これらの中から位置情報(座標データ)を比較することで、状態α2として示すように、一の車両(図示の例では車両B)が、自動運転車両VEに相当するものとして抽出される。なお、この場合、例えば時刻Tと取得時刻t
kとの差異や、速度の大きさといった他の要因で生じうる誤差を加味して、座標データについての一致性判断において、ある程度の許容範囲を設け、要件を満たすもの(図示の例では車両B)を、自動運転車両VEとして取り扱う、といった態様とすることが考えられる。なお、要件を満たすもの(図示の例では車両B)が決定すると、状態α3として示すように、当該データを削除したデータが生成される。つまり、監視領域DDについての監視結果としての移動体MBに関する情報から自動運転車両VE自身の情報を取り除いたデータSSD2が生成される。このデータSSD2が、例えば自動運転車両VEの周囲の状況を示すデータとして、自動運転車両VEに対して送信されたり、自動運転車両VEと他の移動体MBとの衝突予測を行う際の情報として運転支援装置SS内で使用されたりする。つまり、自動運転車両VEが他の物体から識別される。言い換えると、
図8(B)として示す概念図は、識別に基づくデータ図の処理について一例を示すものとなっている。
【0055】
以下、
図9として示すフローチャートを参照して、情報提供システム100における一連の動作について、一例を説明する。なお、情報提供システム100において、監視領域DDの監視については、種々の態様としておくことができるが、例えば当該監視は常時なされており、物標情報は、必要に応じて常時蓄積されていく態様になっているものとすることができる。
【0056】
まず、路側装置である運転支援装置SSにおいて、主制御部50は、運転支援対象となるべき自動運転車両VEから、通信開始のためのトリガーとなる最初の将来位置情報を受信(取得)したか否かの確認動作を、確認がなされるまで(ステップS101:Yes)継続する。
【0057】
ステップS101において、最初の将来位置情報の取得が確認されると(ステップS101:Yes)、主制御部50は、物標情報(画像データ)を取得する(ステップS102)。なお、物標情報の取得については、上記トリガーに応じて取得を開始するものとしてもよいが、上記のように、継続的に取得されている物標情報から適宜選択をするような態様となっていること等も考えられる。
【0058】
次に、主制御部50は、識別ユニット80として、ステップS101及びステップS102で取得した情報についての時刻同期を行い、この際、物標情報から対応する一のデータあるいは複数のデータが選択される(ステップS103)。ステップS103における時刻同期の後、さらに選択されたデータと将来位置情報とにおける位置座標の比較を行う(ステップS104)。
【0059】
主制御部50は、ステップS104での処理に基づき、物標情報から対象となるべき自動運転車両VEを特定する(ステップS105)と、物標情報から自動運転車両VEに相当する情報を除外し(ステップS106)、自動運転車両VEに相当する情報が除外された物標情報に基づく衝突判定結果を自動運転車両VEに対して送信する(ステップS107)。
【0060】
その後、主制御部50は、自動運転車両VEが監視領域DDを通過したか否かを確認し(ステップS108)、通過が確認されない場合(ステップS108:No)、主制御部50は、次の将来位置情報の取得についての確認動作を、確認がなされるまで(ステップS109:Yes)継続する。
【0061】
ステップS109において、次の将来位置情報の取得が確認されると(ステップS109:Yes)、主制御部50は、ステップS102からの動作を繰り返す。結果的に、次の将来位置情報の取得を待つ動作から再開し、最終的に自動運転車両VEが監視領域DDを通過するまで(ステップS108:Yes)上記一連の動作を継続するものとなっている。
【0062】
一方、ステップS108において、自動運転車両VEが監視領域DDを通過したことが確認されれば(ステップS108:Yes)、主制御部50は、一連の動作を終了し、ステップS101からの動作に戻る、すなわち、新たな車両の検出を開始する。
【0063】
なお、上記のうち、ステップS107において、衝突判定結果とともに、自動運転車両VEに相当する情報が除外された物標情報すなわち照合済みの物票情報も、併せて自動運転車VEに送信する態様としてもよい。
【0064】
また、上記の一変形態様として、ステップS105において、物標情報から対象となるべき自動運転車両VEの特定がされない場合には、次の将来位置情報の取得を待って、再度、自動運転車両VEの特定を行う態様としてもよい。
【0065】
以下、
図10として示す概念図を参照して、識別装置IE及び情報提供システム100の概要について説明する。ここで、上記のような識別を行う識別装置IEについては、情報提供システム100のうちの一部により構成されるものと考えることができるが、識別を可能とするための機能面で考えると、例えば、図示のように、識別装置IEは、物体情報取得部MRと、車両情報受付部VRと、照合部83と、識別部84とで構成されていると捉えることができる。
【0066】
まず、物体情報取得部MRは、監視領域DDに存在する物体を検知して存在位置を示す物体位置情報を取得する。つまり、物体情報取得部MRは、監視領域DDに存在する車両(一般車両)GMや自動運転車両VEあるいはその他の物体を検知する。なお、物体情報取得部MRは、センサー部10に加え、運転支援装置SSのうち、物体位置情報としての物標情報を取り扱う情報取得部SEiや画像解析部81、さらにはGNSS受信機REs等により構成されると考えることができる。
【0067】
一方、車両情報受付部VRは、情報提供を受ける対象となるべき車両から送信される自己位置情報を受け付ける。上記一例では、自己位置情報としての将来位置情報を、対象となるべき車両としての自動運転車両VEから受け付けるものとなっており、通信部30が、車両情報受付部VRとして機能している。
【0068】
次に、照合部83は、物体情報取得部MRで取得した物体位置情報(物標情報)と、車両情報受付部VRで受け付けた自己位置情報(将来位置情報)とを時刻同期して、位置を照合する。特に、本実施形態では、時刻同期に際して、GNSSに準拠した時刻情報を絶対的基準として利用することで、路車間で高精度な同期を行った上で位置照合をしている。
【0069】
最後に、識別部84は、照合部83での照合結果に基づき監視領域DDにおいて自動運転車両VEを他の物体から識別する。
【0070】
以上のように、本実施形態に係る識別装置IEは、監視領域DDに存在する物体を検知して存在位置を示す物体位置情報を取得する物体情報取得部MRと、車両(自動運転車両VE)から送信される自己位置情報を受け付ける車両情報受付部VRと、物体位置情報と自己位置情報とを時刻同期して、位置を照合する照合部83と、照合部83での照合結果に基づき監視領域DDにおいて自動運転車両VEを他の物体から識別する識別部84とを備える。上記識別装置IEでは、監視領域DDについての物体位置情報と車両(自動運転車両VE)からの自己位置情報とを時刻同期した上で、これらの間での位置照合を行う、すなわち車両側からの情報と路側からの情報とで、時刻同期を行った上で位置照合を行うことで、監視領域DDにおける車両(自動運転車両VE)と他の物体との識別を確実に行える。
【0071】
また、本実施形態に係る情報提供システム100は、上記識別装置IEを備え、識別部84による識別を含む物体位置情報に関する解析結果を、自動運転車両VEに送信する。上記情報提供システム100では、識別装置IEを備えることにより、監視領域DDにおける車両(自動運転車両VE)と他の物体との識別を確実に行うことができ、識別した結果についての情報を、車両(自動運転車両VE)に伝達できる。
【0072】
〔第2実施形態〕
以下、
図11を参照して、第2実施形態に係る情報提供システムについて一例を説明する。
図11は、本実施形態に係る情報提供システム100を設けた交差点CSにおける一動作例について概要説明をするための概念図であり、
図1等に対応する図である。
【0073】
第1実施形態では、交差点CSに情報提供システム100を設置した場合における情報提供(運転支援)に関して特に言及していなかった。これに対して、本実施形態では、一例として、交差点CSにおいて、自動運転車両VEが右折しようとしている場合について示している。なお、上記点を除き、第1実施形態の場合と同様であるので、情報提供システム100の全体構成等については、説明を省略し、必要に応じて上記対応関係にある図等の他の図を適宜援用するものとする。
【0074】
以下、図示の態様についてさらに説明すると、まず、ハッチングで示す自動運転車両VEは、矢印AA1に示すように、交差点CSにおいて右折をしようといている。これに対して、自動運転車両VEが走行する車線の対向車線から、対向車GMが、白抜きの矢印BB1に示すように、同じ交差点CSに向かっており、対向車GMがこのまま直進する予定であるならば、自動運転車両VEは、交差点CS内において、停止(一時停止)をする必要がある。これに対して、情報提供システム100は、対向車GMが通過することが想定される想定通過領域ILの直近手前の位置に仮想停止線VLを予め設定しておき、設定しておいた仮想停止線VLの位置情報、すなわち自動運転車両VEがどこで停止をすべきかについての情報を自動運転車両VEに送信する。この場合も、識別部84での識別結果に基づいて(つまり、当該識別結果の利用を前提として)、自動運転車両VEと自動運転車両VE以外の他の移動体としての対向車GMとの衝突判定が判定部としての判定ユニットJUにおいて行われていることになる。
【0075】
本実施形態においても、監視領域DDにおける車両(自動運転車両VE)と他の物体との識別を確実に行うことができ、識別した結果についての情報としての仮想停止線VLの位置情報を、車両(自動運転車両VE)に伝達できる。特に、本実施形態では、交差点CSにおける安全性を高めることができる。
【0076】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0077】
まず、上記のうち、情報提供システム100を導入する箇所については、上記に限らず、自動運転車両VEが情報提供を要する種々の箇所において、情報提供システム100を適用することが可能である。
【0078】
また、上記では、情報提供システム100における情報提供の対象車両を、自動運転車両VEとしているが、情報提供システム100との通信可能でかつ高精度な同期が可能なものであれば、自動運転車両以外の車両であっても情報提供(運転支援)を受ける対象となり得る。
【0079】
また、上記では時刻同期の手段として、GNSSを利用したものについて説明したが、必要にたる精度の時刻同期が可能であれば、これ以外の手法を採用することも可能である。また、上記では、GNSSを利用することで、これを絶対的基準として同期を行っているが、例えば車両側と路側との間で相対的に同期を行う態様とすることも考えられる。また、複数の手段を組み合わせて適用することも考えられる。あるいは、情報提供システム100を構成する路側装置の設置個所に応じて適用する方式を変更するものとしてもよい。
【0080】
また、上記では、物体位置情報の一例として、物標情報を示し、自己位置情報の一例として、将来位置情報を示したが、物体位置情報や自己位置情報についても、これら以外の種々の態様が考えられる。また、物標情報については、代表して画像データについて解析を行う場合について説明したが、画像データに限らず、車両等を抽出・特定できる種々のデータについての利用が考えられ、例えば上記のうち測距データについても、画像データの場合と同様に取り扱うことが可能である。さらに、画像解析処理についても、上記では、識別ユニット80において行うものとしているが、これに限らず種々の態様が可能であり、また、必ずしも全ての物標情報に関して行うものに限らず、必要に応じて解析処理を行うものとする、といったことも考えられる。
【0081】
また、上記では支援対象たる一の自動運転車両VEに対して、情報提供システム100による情報提供(運転支援)をするものとして説明したが、同時に2以上の支援対象が存在する場合には、同時並行して対応することも可能である。この場合、例えば衝突予測等において、2以上の自動運転車両VEからの将来位置情報を総合的に勘案することができる。
【0082】
また、自動運転車両VEの基準位置の設定についても種々の態様とすることができる。例えば上記のように、現在位置をGNSS受信機REvで取得する場合、取得される位置は、自動運転車両VEにおけるGNSS受信機REvの設置位置ということになる。この場合、例えば将来位置情報に自動運転車両VEの形状やサイズの情報とともにGNSS受信機REvの設置位置の情報を含ませるようにすることも考えられる。あるいはGNSS受信機REvの設置位置を考慮した上で、自動運転車両VEの基準位置を示すものとなるように補正をかけた上で、送信する態様としてもよい。
【0083】
また、将来位置情報において設定されている自動運転車両VEの基準位置と、情報提供システム100側で定める画像データを解析した結果として得られる各移動体MBについての基準位置との設定に差がある場合には、これを加味して座標データの一致性についての許容範囲を定めるようにしてもよい。
【0084】
また、例えば、将来位置情報の送信があるものの、当該位置にあるはずの自動運転車両VEが他の車両の陰に隠れてしまってセンサー部10において捉えられない、というような場合であっても、状況から例えば該当する箇所に自動運転車両VEが存在できるスペースがあると判定されるような場合には、将来位置情報を信用して処理を行うようにすることも可能である。
【0085】
また、例えば仮想停止線VLや想定通過領域IL等については、雨や雪等の天候の状態を加味して、さらにバッファー量等が調整されるものとしてもよい。すなわち、天候に応じて、仮想停止線VLの位置設定が変更されるものとしてもよい。
【0086】
また、上記では、情報提供システム100を構成する運転支援装置SSを、現場付近に設置するものとしているが、これに限らず、例えば各種情報処理やデータ管理を担う箇所等については、遠隔した場所に管理センター(管理サーバ)等として設けたり、あるいは、クラウド上において、各種処理やデータ保管を行ったりすることも考えられる。
【0087】
また、上記一例では、センサー部10は、カメラ部11と、測距部12とで構成されるものとしているが、センサー部10の構成については、これに限らず、例えばカメラ部11と、測距部12とのうち、どちらか1つでセンサー部10が構成されているものとしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
10…センサー部、11…カメラ部、12…測距部、30…通信部、50…主制御部、52a…停止判定部、52b…算出部、70…報知部、80…識別ユニット、81…画像解析部、82…解析データ格納部、83…照合部、83a…時刻同期部、83b…位置照合部、84…識別部、100…情報提供システム、AA1…矢印、AO…自動運転プログラム、BB1…矢印、CR…横断者、CS…交差点、CW…横断歩道、DD…監視領域、Dk…画像データ、FG…将来位置情報生成部、FP1~FP4…点、GM…車両(一般車両,対向車)、IE…識別装置、IL…想定通過領域、IM…I2V制御モジュール、IP…情報処理部、JDp…横断者判定部、JU…判定ユニット(判定部)、MB…移動体、MR…物体情報取得部、PE…歩行者、REs…GNSS受信機(GPS受信機)、REv…GNSS受信機(GPS受信機)、SEi…センサーインターフェース(情報取得部)、SIs…停止指令部、SS…運転支援装置、SSD1,SSD2…データ、ST…GNSS衛星、T…データ作成日時(時刻)、TS…タイムスタンプ、VD1…将来位置情報、VE…自動運転車両、VL…仮想停止線、VR…車両情報受付部、tk…取得時刻、α1~α3…状態