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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050658
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】リアクタ及びリアクタシステム
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20230404BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20230404BHJP
   C07C 1/12 20060101ALN20230404BHJP
   C07C 9/04 20060101ALN20230404BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230404BHJP
【FI】
B01J19/24 A
B01J35/04 301E
B01J35/04 301Z
C07C1/12
C07C9/04
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160877
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 淳史
(72)【発明者】
【氏名】菅 博史
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和希
【テーマコード(参考)】
4G075
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G075AA03
4G075AA63
4G075BA01
4G075CA02
4G075CA03
4G075CA54
4G075DA02
4G075EA07
4G075EB21
4G075EE33
4G075EE34
4G075FA03
4G075FA14
4G075FB02
4G075FB03
4G075FC11
4G169AA01
4G169AA03
4G169BA08A
4G169BA13A
4G169BA17
4G169BB01A
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC74A
4G169BD04A
4G169BD05A
4G169CC22
4G169DA06
4G169EA09
4G169EA12
4G169EA13
4G169EA14
4G169EA18
4G169EA25
4G169EA27
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC29
4H006BA21
4H006BA22
4H006BA23
4H006BA55
4H006BC13
4H006BE20
4H006BE41
4H039CA99
4H039CL25
(57)【要約】
【課題】化学反応の場で発生する熱を除去し、又は、化学反応の場に必要とされる熱を供給する簡便な構造のリアクタ及びリアクタシステムを提供する。
【解決手段】リアクタ10は、第1端面S1から第2端面S2まで延びる複数のセル30を規定する隔壁20を備える。隔壁20は、第1端面S1の平面視において第1方向に沿って延びる複数の第1隔壁21と、第1端面S1の平面視において第2方向に沿って延びる複数の第2隔壁22とを含む。各第1隔壁21は、熱伝導材料が充填された細孔を含む。各第2隔壁は、空洞の細孔を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁と、
前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを規定する隔壁と、
を備え、
前記隔壁は、
前記第1端面の平面視において第1方向に沿って延びる複数の第1隔壁と、
前記第1端面の平面視において第2方向に沿って延びる複数の第2隔壁と、
を含み、
前記複数の第1隔壁それぞれは、熱伝導材料が充填された細孔を含み、
前記複数の第2隔壁それぞれは、空洞の細孔を含む、
リアクタ。
【請求項2】
前記複数の第1隔壁の平均壁厚は、前記複数の第2隔壁の平均壁厚より厚い、
請求項1に記載のリアクタ。
【請求項3】
前記複数のセルは、前記第1方向に並んだ4つのセルからなるセルセットの繰り返しパターンで配列されており、
前記セルセットは、
触媒含有材料が内部に配置された第1触媒セルと、
前記第1端面側が開口し、前記第2端面側が閉口した流入セルと、
前記触媒含有材料が内部に配置された第2触媒セルと、
前記第1端面側が閉口し、前記第2端面側が開口した流出セルと、
をこの順で含む、
請求項1又は2に記載のリアクタ。
【請求項4】
前記複数のセルは、前記第1方向に並んだ3つのセルからなるセルセットの繰り返しパターンで配列されており、
前記セルセットは、
前記第1端面側が開口し、前記第2端面側が閉口した流入セルと、
触媒含有材料が内部に配置された触媒セルと、
前記第1端面側が閉口し、前記第2端面側が開口した流出セルと、
をこの順で含む、
請求項1又は2に記載のリアクタ。
【請求項5】
前記繰り返しパターンで配列された前記複数のセルにおいて、前記流入セルと前記流出セルとが前記第2方向において隣接する、
請求項3又は4に記載のリアクタ。
【請求項6】
前記触媒含有材料は、炭化ケイ素、炭素及び金属のうちいずれかによって構成される基材と、前記基材に付着した触媒とを含む、
請求項3乃至5のいずれかに記載のリアクタ。
【請求項7】
前記触媒は、ニッケル、ルテニウム及びイリジウムのうち少なくとも1つを含む、
請求項6に記載のリアクタ。
【請求項8】
前記基材は、網目状、繊維状、針状、球状、変形球状、或いは、多面体状に形成される、
請求項6又は7に記載のリアクタ。
【請求項9】
前記触媒含有材料は、ニッケル、ルテニウム及びイリジウムのうち少なくとも1つである、
請求項3乃至5のいずれかに記載のリアクタ。
【請求項10】
前記第2隔壁は、触媒を有する、
請求項1又は2に記載のリアクタ。
【請求項11】
前記触媒は、ニッケル、ルテニウム及びイリジウムのうち少なくとも1つである、
請求項10に記載のリアクタ。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の前記リアクタと、
前記リアクタを温度調整する温度調整装置と、
を備え、
前記リアクタは、前記第1端面の平面視において、前記第1方向と交差する側面を有し、
前記温度調整部は、前記側面を冷却又は加熱する、
リアクタシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクタ及びリアクタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水素(H)及び二酸化炭素(CO)からメタン(CH)を合成するメタネーション反応に用いられるリアクタとして、触媒をコーティングしたハニカム構造体を用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-537532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メタネーション反応のような発熱反応によって所望物質を合成する場合には、化学反応の場で発生した熱により触媒が過熱して失活することを防止するために、熱を迅速に系外に除去する必要がある。
【0005】
また、吸熱反応によって所望物質を合成する場合には、化学反応の場に必要な熱を外部から迅速に供給する必要がある。
【0006】
本発明は、化学反応の場で発生する熱を除去し、又は、化学反応の場に必要とされる熱を供給する簡便な構造のリアクタ及びリアクタシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るリアクタは、外周壁と隔壁とを備える。隔壁は、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを規定する。隔壁は、第1端面の平面視において第1方向に沿って延びる複数の第1隔壁と、第1端面の平面視において第2方向に沿って延びる複数の第2隔壁とを含む。複数の第1隔壁それぞれは、熱伝導材料が充填された細孔を含む。複数の第2隔壁それぞれは、空洞の細孔を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、化学反応の場で発生する熱を除去し、又は、化学反応の場に必要とされる熱を供給する簡便な構造のリアクタ及びリアクタシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るリアクタを第1端面側から見た斜視図
図2】実施形態に係るリアクタを第2端面側から見た斜視図
図3図1のA-A断面図
図4】変形例5に係るリアクタの平面図
図5】変形例6に係るリアクタの平面図
図6】変形例7に係るリアクタの平面図
図7】変形例7に係るリアクタの平面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(リアクタ10の構成)
図1は、実施形態に係るリアクタ10を第1端面S1側から見た斜視図である。図2は、実施形態に係るリアクタ10を第2端面S2側から見た斜視図である。
【0011】
リアクタ10は、水素(H)及び二酸化炭素(CO)からメタン(CH)を合成するメタネーション反応に用いられる。メタネーション反応は発熱反応であるため、反応熱により触媒が過熱して失活することを防止するために、化学反応の場で発生する熱を迅速に系外に除去する必要がある。そこで、リアクタ10では、後述するように反応熱を第1方向に纏めて伝えることによって熱の除去が図られている。
【0012】
なお、リアクタ10は、メタネーション反応以外の種々の合成反応に利用することができる。リアクタ10は、発熱を伴う化学反応だけでなく、放熱の代わりに熱供給を行う意味において、吸熱を伴う化学反応にも好適である。
【0013】
リアクタ10は、隔壁20と、外壁23とを備える。本実施形態において、リアクタ10の外形は直方体状である。
【0014】
1.隔壁20
隔壁20は、ハニカム構造を成す。ハニカム構造とは、複数のセルを複数の隔壁で仕切った構造を意味する。
【0015】
隔壁20は、第1端面S1及び第2端面S2を有する。本実施形態では、第1端面S1側から原料ガス(H及びCO)が流入し、第2端面S2側から生成ガス(主にCH)が流出することが想定されている。
【0016】
第1端面S1は、第2端面S2の反対側に設けられる。本実施形態において、第1端面S1及び第2端面S2それぞれの平面視形状は正方形である。
【0017】
隔壁20は、複数の第1隔壁21と、複数の第2隔壁22とを含む。
【0018】
複数の第1隔壁21それぞれは、第1端面S1の平面視において第1方向に沿って延びる。複数の第1隔壁21は、互いに平行に配置される。複数の第1隔壁21それぞれは、互いに対向する。なお、本明細書において「平行」とは、2部材間の角度が厳密に0度である場合だけでなく、2部材間の角度が数度(例えば10度未満)程度に収まる場合をも含む概念である。
【0019】
複数の第2隔壁22それぞれは、第1端面S1の平面視において第2方向に沿って延びる。本実施形態において、複数の第2隔壁22は、互いに平行に配置される。複数の第2隔壁22それぞれは、互いに対向する。各第2隔壁22は、各第1隔壁21と交差する。
【0020】
なお、本実施形態において、第2方向は第1方向に直交しており、第1端面S1の平面視において第1方向に対する第2方向の角度は90度である。なお、本明細書において「直交」とは、2部材が厳密に90度で交差する場合だけでなく、2部材が90度から数度(例えば10度未満)ずれて交差する場合をも含む概念である。
【0021】
ただし、第2方向は第1方向に交差していればよく、第1端面S1の平面視において第2方向は第1方向に直交していなくてもよい。例えば、第1端面S1の平面視において第1方向に対する第2方向の角度は45度未満とすることができる。
【0022】
隔壁20は、例えば多孔質セラミック材料によって構成される。多孔質セラミック材料としては、例えば、コージェライト、ムライト、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、炭化珪素、珪素-炭化珪素複合材(例:Si結合SiC)、コージェライト-炭化珪素複合体、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア、窒化珪素、或いは、これらの混合物が挙げられる。
【0023】
ここで、各第1隔壁21は、内部に細孔を有する。各第1隔壁21の細孔には、熱伝導材料が充填されている。これによって、各第1隔壁21を介して反応熱を第1方向に纏めて伝えることができるため、第1方向と交差する第1側面S31及び第3側面S33に熱を集中させることができる。よって、第1側面S31及び第3側面S33を集中的に冷却することによって熱を除去できるため、簡便な構造で熱の除去を実現できる。
【0024】
熱伝導材料としては、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉛(Pb)、錫(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、鉄(Fe)、及びこれらのうち少なくとも一つを含む合金などを用いることができる。熱伝導材料は、各第1隔壁21の全ての細孔に完全に充填されている必要はなく、各第1隔壁21が非通気性を有する程度に充填されていればよい。具体的には、JIS R 1634に従って測定される第1隔壁21の開気孔率は、1%未満とすることができる。
【0025】
また、各第2隔壁22は、内部に細孔を有する。各第2隔壁22の細孔は、空洞である。すなわち、各第2隔壁22の細孔には熱伝導材料が充填されていない部分が含まれる。このように、各第2隔壁22は、通気性を有しており、原料ガス及び生成ガスを透過させることができる。よって、上記の通り各第1隔壁21を非通気性としても、メタネーション反応を維持することができる。
【0026】
なお、各第2隔壁22には、壁厚が極端に薄くなっている部分や、完全に貫通している部分があってもよいが、当該部分の第3方向における長さは、ガスの偏流を避ける意味で、第1隔壁21で区画される第2隔壁22の第3方向における長さの1/5以下にすることが好ましい。
【0027】
複数の第1隔壁21の平均壁厚は特に制限されないが、例えば10μm以上10mm以下とすることができる。複数の第2隔壁22の平均壁厚は特に制限されないが、例えば10μm以上1mm以下とすることができる。複数の第1隔壁21の平均壁厚は、複数の第2隔壁22の平均壁厚より厚いことが好ましい。これによって、メタネーション反応によって生じる反応熱をより効率的に第1方向に伝えることができる。
【0028】
複数の第1隔壁21の平均壁厚は、第3方向の中央部における各第1隔壁21の壁厚の算術平均値である。各第1隔壁21の壁厚は、第3方向の中央部における断面において、各第1隔壁21の厚さを無作為に選択した3か所で測定し、3つの測定値を算術平均することによって求められる。各第1隔壁21の厚さは、光学顕微鏡で観察することによって測定することができる。
【0029】
複数の第2隔壁22の平均壁厚は、第3方向の中央部における各第2隔壁22の壁厚の算術平均値である。各第2隔壁22の壁厚は、第3方向の中央部における断面において、各第2隔壁22の厚さを無作為に選択した3か所で測定し、3つの測定値を算術平均することによって求められる。各第2隔壁22の壁厚は、光学顕微鏡で観察することによって測定することができる。
【0030】
複数のセル30は、複数の第1隔壁21及び複数の第2隔壁22によって形成される格子構造によって仕切られた空間である。各セル30は、第1端面S1から第2端面S2まで延びる。本実施形態では、後述するように各セル30の少なくとも一端面側が閉口しているが、「第1端面S1から第2端面S2まで延びる」とは、少なくとも一端面側が閉口している場合も含む概念である。
【0031】
本実施形態では、第1及び第2方向それぞれに7列ずつセル30が配列されている。ただし、第1及び第2方向それぞれにおけるセル30の列数は適宜変更することができる。
【0032】
図1及び図2に示すように、複数のセル30には、複数の触媒セル31、複数の流入セル32及び複数の流出セル33が含まれる。触媒セル31は、図1及び図2において破線〇印で示されている。流入セル32は、図1では白抜きで示され、図2では破線×印で示されている。流出セル33は、図1では破線×印で示され、図2では白抜きで示されている。本実施形態において、各セル30の第3方向に垂直な断面は正方形である。第3方向とは、第1及び第2方向に直交する奥行き方向である。
【0033】
複数のセル30は、第1方向に並んだ4つのセル30からなるセルセットCSの繰り返しパターンで配列されている。セルセットCSには、触媒セル31(第1触媒セルの一例)、流入セル32、触媒セル31(第2触媒セルの一例)及び流出セル33が含まれる。1つのセルセットCSにおいて、触媒セル31、流入セル32、触媒セル31及び流出セル33は、この順で第1方向に並んでいる。
【0034】
第1方向に沿った1つの列には、7つのセル30が並んでいる。これら7つのセル30のうち4つのセル30が1つのセルセットCSを形成しており、残りの3つのセル30は、セルセットCSの繰り返しパターンに従って配置される。例えば、図1の最上列では、セルセットCSの左側に流入セル32、触媒セル31及び流出セル33がこの順で配置されているが、これはセルセットCSに含まれる先頭の触媒セル31が欠落した形態である。このように、セルセットCSの繰り返しパターンとは、セルセットCSが完全な形態で繰り返し設けられることを意味するのではなく、第1方向におけるセル30の順序がセルセットCSによって規定されることを意味する。
【0035】
このように、第1方向におけるセル30の順序はセルセットCSによって規定されるが、第2方向におけるセル30の順序はセルセットCSによって規定されない。第2方向におけるセル30の順序は特に制限されないが、図1に示すように、流入セル32と流出セル33とが第2方向において隣接することが好ましい。第2方向に並んだ流入セル32と流出セル33との間には第1隔壁21が存在するため、流入セル32と流出セル33との間でガスの流通はないが、流出セル33内の生成ガスの熱を流入セル32内の原料ガスに供給することができる。このように、第1隔壁21を利用して原料ガスを予め加熱しておけるため、メタネーション反応を促進させることができる。
【0036】
ここで、図3は、図1のA-A断面図である。
【0037】
触媒セル31の内部には、触媒含有材料40が配置される。触媒含有材料40は、触媒セル31の内部に充填されていることが好ましい。
【0038】
触媒含有材料40は、基材と触媒とによって構成することができる。基材としては、各種酸化物、炭化ケイ素、炭素及び金属のうちいずれかを用いることができる。触媒としては、ニッケル、ルテニウム及びイリジウムのうち少なくとも1つを用いることができる。また、これらの触媒は触媒単独ではなく、酸化物(活性アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、セリア、YSZ等とすることができる)などの担体に担持して使用することができる。ただし、触媒含有材料40は、少なくとも触媒を含んでいればよく、基材を含んでいなくてもよい。従って、触媒含有材料40は、上記触媒そのものであってよいし、担体に担持された触媒であってもよい。
【0039】
本実施形態において、触媒セル31の第1端面S1側は第1封止部50によって閉口しており、触媒セル31の第2端面S2側は第2封止部60によって閉口している。ただし、触媒セル31の第2端面S2側は開口していてもよい。
【0040】
流入セル32の第1端面S1側は開口しており、流入セル32の第2端面S2側は第2封止部60によって閉口している。
【0041】
流出セル33の第1端面S1側は第1封止部50によって閉口しており、流出セル33の第2端面S2側は開口している。
【0042】
図3に示すように、流入セル32の第1端面S1側の開口から流入セル32の内部に流入した原料ガス(H及びCO)は、第2隔壁22を透過して触媒セル31に流入する。触媒セル31内では、触媒の作用によってメタネーション反応が進行して原料ガスから生成ガス(主にCH)が生成される。生成ガスは、流出セル33側の第2隔壁22を透過して流出セル33に流出した後、流出セル33の第2端面S2側の開口から流出する。
【0043】
2.外壁23
外壁23は、複数の第1隔壁21及び複数の第2隔壁22それぞれと交差するように配置される。外壁23は、複数の第1隔壁21及び複数の第2隔壁22によって構成される格子構造を取り囲む。
【0044】
外壁23の外表面は、第1乃至第4側面S31~S34である。第1乃至第4側面S31~S34は、リアクタ10の側面である。第1乃至第4側面S31~S34それぞれは、隔壁20の第1端面S1及び第2端面S2それぞれの外縁に繋がる。第1側面S31は、第3側面S33の反対側に設けられる。第2側面S32は、第4側面S34の反対側に設けられる。本実施形態において、第1乃至第4側面S31~S34それぞれの平面視形状は矩形である。
【0045】
外壁23は、上述した多孔質セラミック材料によって構成することができる。外壁23を構成する多孔質セラミック材料は、隔壁20を構成する多孔質セラミック材料と同じであってもよいし異なっていてもよい。
【0046】
(リアクタ10の製造方法)
まず、隔壁20及び外壁23の構成材料(例えば、多孔質セラミック材料)を準備する。
【0047】
次に、隔壁20及び外壁23の構成材料をハニカム形状に成形することによって、複数の貫通孔を有するハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体の成形方法は特に限られず、押出成形、射出成形、プレス成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。
【0048】
次に、ハニカム成形体が有する複数の貫通孔のうち触媒セル31及び流出セル33に対応する貫通孔において、第1端面S1側の開口を目封止する。続いて、ハニカム成形体が有する複数の貫通孔のうち触媒セル31に対応する貫通孔において、第2端面S2側の開口を目封止する。目封止方法は特に限られないが、例えば、隔壁20の構成材料に水及びバインダを加えたスラリーを第1端面S1側の開口から所定深さまで充填する方法を用いることができる。
【0049】
次に、ハニカム成形体を焼成する。焼成温度は、例えば1300℃以上1450℃以下とすることができ、焼成時間は2時間以上8時間以下とすることができる。
【0050】
次に、ハニカム成形体が有する複数の貫通孔それぞれにおいて、第1隔壁21となる部分の表面上に熱伝導材料を配置して、当該熱伝導材料の融点以上に加熱する。これによって、溶融した熱伝導材料が第1隔壁21の細孔に充填される。
【0051】
最後に、触媒含有材料を触媒セルに対応する孔に充填し、必要に応じて触媒含有材料を入れた側の開口部を目封じすることによって、リアクタ10が完成する。
【0052】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0053】
(変形例1)
上記実施形態では、本発明に係るリアクタをメタネーション反応に適用する場合について説明したが、本発明に係るリアクタはメタネーション反応以外の発熱反応にも適用できるし、吸熱反応にも適用できる。
【0054】
(変形例2)
上記実施形態では、第1側面S31及び第3側面S33を冷却する手法について特に触れていないが、例えばポンプやブロワやポンプ等を使って流体(液体又は気体)を駆動させ、これら流体を冷却する冷却器やヒーター等を組み合わせることで、リアクタ温度を調整可能なリアクタシステムを構成することができる。
【0055】
(変形例3)
上記実施形態では、隔壁20の外形が直方体状であることとしたが、隔壁20の外形は特に限られず、例えば円柱状や三角以上の多角柱状であってもよい。
【0056】
隔壁20の第1端面S1及び第2端面S2の形状は、隔壁20の外形に応じて適宜変更される。
【0057】
また、上記実施形態では、隔壁20が第1乃至第4側面S31~S34を有することとしたが、側面の数及び形状も、隔壁20の外形に応じて適宜変更される。例えば、隔壁20の外形が円柱状である場合には円柱の周面が側面となるが、この周面のうち第1方向と交差する領域から集中的に熱を除去することができる。
【0058】
(変形例4)
上記実施形態では、セル30の第3方向に垂直な断面が正方形であることとしたが、これに限られない。セル30の第3方向に垂直な断面は、例えば円形や矩形であってもよい。特に、第1方向における幅を第2方向における高さより大きくすることによって、各第1隔壁21を介した熱の除去効率をより向上させることができる。
【0059】
(変形例5)
上記実施形態において、複数のセル30は、複数の触媒セル31を含むこととしたが、触媒セル31を含んでいなくてもよい。この場合には、触媒セル31に代えて、第2隔壁22自体が触媒を含有していればよい。
【0060】
例えば、図4に示すように、第1方向において流入セル32と流出セル33とが第2隔壁22aを介して交互に配置されていてもよい。第2隔壁22aは、内部に空洞の細孔を有し、構成材料として触媒を含有している。触媒としては、ニッケル、ルテニウム及びイリジウムのうち少なくとも1つを用いることができる。また、これらの触媒は触媒単独ではなく、酸化物(活性アルミナ、ゼオライト、ジルコニア、セリア、YSZ等とすることができる)などの担体に担持して使用することができる。なお、流入セル32と流出セル33との配列パターンは、図4に示すパターンに限られない。
【0061】
(変形例6)
上記実施形態において、セルセットCSの繰り返しパターンで配列された複数のセル30において、流入セル32と流出セル33とが第2方向において隣接することとしたが、これに限られない。
【0062】
例えば、図5に示すように、第2方向において同じ種類のセル30が隣接していてもよい。
【0063】
(変形例7)
上記実施形態において、複数のセル30は、第1方向に並んだ4つのセル30からなるセルセットCSの繰り返しパターンで配列されることとしたが、セル30の配列はこれに限られない。複数のセル30の配列は、第1方向において、流入セル32と流出セル33の間に触媒セル31が介在している限り適宜変更できる。
【0064】
例えば、図6及び図7に示すように、複数のセル30の配列は、第1方向に並んだ3つのセル30からなるセルセットCSによって構成することができる。各セルセットCSは、流入セル32、触媒セル31及び流出セル33をこの順で含んでいる。1つのセルセットCSにおいて、触媒セル31は中央に位置し、触媒セル31の両側に流入セル32及び流出セル33が配置される。流入セル32及び流出セル33の配置は、セルセットCSごとに異なっていてもよい。
【0065】
複数のセル30を3つのセル30からなるセルセットCSに従って配列する場合、図6及び図7に示すように、流入セル32同士が並んで配置される場合や流出セル33同士が並んで配置される場合がある。この場合には、流入セル32同士の間に位置する第2隔壁22や流出セル33同士の間に位置する第2隔壁22の壁厚を厚くすることによって、流入セル32から流入セル32へ、或いは、流出セル33から流出セル33へのガス流を抑えることができ、これによって構造体としての強度を高めることもできる。或いは、流入セル32同士の間に位置する第2隔壁22や流出セル33同士の間に位置する第2隔壁22の細孔に上述した熱伝導材料を充填することによっても、流入セル32から流入セル32へ、或いは、流出セル33から流出セル33へのガス流を抑えることができる。
【符号の説明】
【0066】
10 リアクタ
20 隔壁
21 第1隔壁
22 第2隔壁
23 外壁
30 セル
31 触媒セル
32 流入セル
33 流出セル
40 触媒含有材料
S1 第1端面
S2 第2端面
S31 第1側面
S32 第2側面
S33 第3側面
S34 第4側面
CS セルセット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7