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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005066
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】小型輸送システム、及び管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20230111BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20230111BHJP
   B61L 23/16 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G08G1/09 A
G08G1/00 X
B61L23/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106758
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 達二己
【テーマコード(参考)】
5H161
5H181
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161AA02
5H161BB02
5H161DD01
5H161DD21
5H161EE20
5H181AA27
5H181BB04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複数の異なる交通システムに、それらそれぞれの走行状態をまとめて管理する中央制御装置を用いることなく走行領域を共用させる。
【解決手段】PRT車両に、いずれかの一部区間を走行する必要がある、と判断する場合、プロセッサは、そのPRT車両が走行する予定の一部区間を指定して、その指定区間の利用権の貸与を鉄道管理装置に要求する。指定区間の利用権が貸与された、と判断する場合、プロセッサは、PRT車両に、この指定区間への進入を許可する。PRT車両が指定区間から退出した、と判断する場合、プロセッサは、全てのPRT車両に対して、上述した指定区間への進入を禁止する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道を管理する管理システムに前記軌道の一部区間の利用権の貸与を要求し、前記管理システムから前記利用権を貸与された場合に前記一部区間への車両の進入を許可し、前記車両が前記一部区間から退出したときに前記利用権を前記管理システムに返却する
小型輸送システム。
【請求項2】
前記利用権を貸与された場合に複数の前記車両に前記一部区間を隊列走行させ、
複数の前記車両の全てが前記一部区間から退出したときに前記利用権を前記管理システムに返却する
請求項1に記載の小型輸送システム。
【請求項3】
前記車両が前記一部区間から退出し、かつ、該一部区間が貸与前の状態に復元したときに前記利用権を前記管理システムに返却する
請求項1に記載の小型輸送システム。
【請求項4】
貸与された利用権に期限があり、かつ、該期限までに該利用権を返却できない場合にその旨を前記管理システムに通知する
請求項1から3のいずれか1項に記載の小型輸送システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の管理システムであって、前記小型輸送システムに前記利用権を貸与した後、前記利用権が返却されるまでの間、管理下にある車両の前記一部区間への進入を禁じる
管理システム。
【請求項6】
利用権が返却されていない前記一部区間に管理下にある車両を走行させる必要がある場合に、該利用権の返却を前記小型輸送システムに要求する
請求項5に記載の管理システム。
【請求項7】
返却されていない利用権に期限があり、かつ、該期限までに該利用権が返却されていない場合に、該利用権の返却を前記小型輸送システムに要求する
請求項5又は6に記載の管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型輸送システム、及び管理システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道、及びバスといった複数の異なる交通システムが走行領域を共用する場合に、それら交通システムを衝突させない仕組みが検討されている。
【0003】
特許文献1は、鉄道車両と、ゴムタイヤシステムの車両と、に排他的に軌道を走行させる制御装置、を開示している。
【0004】
特許文献2は、閉そくの機能を持たないバス等の車両に鉄道の軌道を走行させる際に、その車両の進入の可否を指示する路側制御装置、を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4393960号
【特許文献2】特開2007-87245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術は、鉄道及びゴムタイヤシステム車両による走行路の排他的利用を中央の制御装置によって行うため、各交通システムをそれぞれ個別に発展させ難い。
特許文献2に記載の技術は、車両の進入の可否をその車両の運転手に向けて指示するため、ゲートや表示機等の地上設備が必要になり、初期コストが大きい。
【0007】
本発明の目的の一つは、複数の異なる交通システムに、それらそれぞれの走行状態をまとめて管理する中央制御装置を用いることなく走行領域を共用させること、である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軌道を管理する管理システムに前記軌道の一部区間の利用権の貸与を要求し、前記管理システムから前記利用権を貸与された場合に前記一部区間への車両の進入を許可し、前記車両が前記一部区間から退出したときに前記利用権を前記管理システムに返却する小型輸送システム、を第1の態様として提供する。
【0009】
第1の態様の小型輸送システムによれば、自システムで管理する車両と、管理システムに管理され、軌道を共用する車両と、の各走行状態をまとめて管理する中央制御装置が不要である。
【0010】
第1の態様の小型輸送システムにおいて、前記利用権を貸与された場合に複数の前記車両に前記一部区間を隊列走行させ、複数の前記車両の全てが前記一部区間から退出したときに前記利用権を前記管理システムに返却する、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0011】
第2の態様の小型輸送システムによれば、自システムで管理する複数の車両が一部区間を走行するときに、隊列走行させない場合に比べてそれらの管理が容易になる。
【0012】
第1の態様の小型輸送システムにおいて、前記車両が前記一部区間から退出し、かつ、該一部区間が貸与前の状態に復元したときに前記利用権を前記管理システムに返却する、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0013】
第3の態様の小型輸送システムによれば、利用権を返却するときに、軌道の状態がその利用権を貸与されたときの状態に復元される。
【0014】
第1から第3のいずれか1の態様の小型輸送システムにおいて、貸与された利用権に期限があり、かつ、該期限までに該利用権を返却できない場合にその旨を前記管理システムに通知する、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0015】
第4の態様の小型輸送システムによれば、軌道を貸与する管理システムに、利用権の期限が切れたこと、又はその期限が切れると予測されることが通知される。
【0016】
本発明は、第1から第4のいずれかの態様における管理システムであって、前記小型輸送システムに前記利用権を貸与した後、前記利用権が返却されるまでの間、管理下にある車両の前記一部区間への進入を禁じる管理システム、を第5の態様として提供する。
【0017】
第5の態様の管理システムによれば、自システムの管理下の車両を小型輸送システムで管理される車両と接触させないことができる。
【0018】
第5の態様の管理システムにおいて、利用権が返却されていない前記一部区間に管理下にある車両を走行させる必要がある場合に、該利用権の返却を前記小型輸送システムに要求する、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0019】
第6の態様の管理システムによれば、管理下にある車両を走行させる必要に応じて、軌道の一部区間の利用権の返却を要求することができる。
【0020】
第5又は6の態様の管理システムにおいて、返却されていない利用権に期限があり、かつ、該期限までに該利用権が返却されていない場合に、該利用権の返却を前記小型輸送システムに要求する、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0021】
第7の態様の管理システムによれば、返却期限が切れた利用権の返却を要求することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係る管理システム1、及び小型輸送システム2の全体構成の例を示す図。
図2】鉄道管理装置11の構成の一例を示す図。
図3】鉄道管理装置11の動作の流れの例を示す図。
図4】小型輸送管理装置21の動作の流れの例を示す図。
図5】指定区間の状態の復元を確認する動作の流れの例を示す図。
図6】期限までに利用権を返却できない旨を通知する動作の流れの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施形態>
<管理システム、小型輸送システムの全体構成>
図1は、本発明の実施形態に係る管理システム1、及び小型輸送システム2の全体構成の例を示す図である。管理システム1、及び小型輸送システム2は、通信線3によって通信可能に接続されている。
【0024】
図1に示す管理システム1は、鉄道車両10、鉄道管理装置11、鉄道駅12a、12b、軌道13、信号機14a、14b、踏切15a、15bを有する。
【0025】
軌道13は、軌条(レール)、枕木、道床等からなる道である。鉄道車両10は、軌道13の上のみを走行することができる車両である。鉄道駅12a、12b(区別しない場合は「鉄道駅12」という)は、軌道13に沿って配置され、鉄道車両10が停車して旅客を乗降させる場所、又は建造物である。
【0026】
信号機14a、14b(区別しない場合は「信号機14」という)は、軌道13に含まれる区間の少なくとも一端に設けられ、その区間へ鉄道車両10が進入することの是非を、鉄道車両10の運転手等に現示するものである。信号機14の現示は、停止のほか、例えば、進行、注意等がある。信号機14は、鉄道管理装置11により制御される。図1に示す信号機14a、14bは、軌道13の一部の区間(一部区間という)である区間Rの両端に設けられている。この場合、信号機14a、14bが停止現示であると、鉄道車両10は、区間Rに進入することができない。
【0027】
踏切15a、15b(区別しない場合は「踏切15」という)は、軌道13が一般の道路と平面交差する箇所に設けられ、その箇所を鉄道車両10が通過する際に、その道路を遮断する遮断機と、その道路を通る自動車の運転手や歩行者等に警報する警報機等を備える。踏切15は、鉄道管理装置11により制御される。
【0028】
鉄道管理装置11は、上述した信号機14、及び踏切15を制御する装置であり、例えばコンピュータである。鉄道管理装置11は、通信線3により、小型輸送システム2の小型輸送管理装置21と通信可能に接続する。また、通信線3は、パラレル通信を行う通信線である。
【0029】
なお、通信線3は、シリアル通信を行う通信線であってもよい。この場合、通信線3は、例えばLAN(Local Area Network)のほか、WAN(Wide Area Network)であってもよいし、インターネットであってもよいし、これらの組合せであってもよい。また、通信線3は、公衆交換通信網(PSTN:Public Switched Telephone Networks)やサービス統合デジタル網(ISDN:Integrated Services Digital Network)等を含むものでもよい。
【0030】
図2は、鉄道管理装置11の構成の一例を示す図である。図2に示す鉄道管理装置11は、プロセッサ111、メモリ112、及びインタフェース113を有する。これらの構成は、例えばバスで、互いに通信可能に接続されている。
【0031】
プロセッサ111は、メモリ112に記憶されているコンピュータプログラム(以下、単にプログラムという)を読出して実行することにより鉄道管理装置11の各部を制御する。プロセッサ111は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。
【0032】
メモリ112は、プロセッサ111に読み込まれるオペレーティングシステム、各種のプログラム、データ等を記憶する記憶手段である。メモリ112は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)を有する。なお、メモリ112は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等を有してもよい。
【0033】
インタフェース113は、有線又は無線により鉄道管理装置11を、他の装置に通信可能に接続する通信回路である。図2に示すインタフェース113は、図1に示した通り、通信線3を経由して鉄道管理装置11を小型輸送管理装置21に接続する。
【0034】
なお、鉄道管理装置11は、各種の指示をするための操作ボタン、キーボード、タッチパネル、マウス等の操作子を備え、操作を受付けてその操作内容に応じた信号をプロセッサ111に送る操作部を有してもよい。また、鉄道管理装置11は、プロセッサ111の制御の下、画像を表示する液晶ディスプレイ等の表示画面を有してもよい。
【0035】
図1に示す小型輸送システム2は、PRT車両20、小型輸送管理装置21、乗降場22a、22b、22c、22d、22e、PRT走行路23を有する。ここで「PRT」とは、小型輸送の一種である個人用高速輸送(Personal Rapid Transit)の略称であり、個人、又は5人程度を定員とする少人数の移動に用いられる交通手段を示す。
【0036】
PRT走行路23は、軌道13の一部区間を含む走行路である。PRT車両20は、PRT走行路23を走行する車両であり、例えば、ゴムタイヤでPRT走行路23を走行する車両である。PRT車両20は、無線又は有線により小型輸送管理装置21に接続しており、小型輸送管理装置21からの制御信号、及び自身に備えられたセンサ等(図示せず)の検出信号等に応じて、自動運転を行う。PRT車両20は自動運転されるため、運転手が不要であり、運転手に気づかせるための表示器やゲートが不要である。
【0037】
また、PRT車両20は、走行速度の積算値や衛星測位システム等からの信号等に基づいて自装置の位置を特定し、例えば所定間隔で、又はいずれかのきっかけが生じたときに、小型輸送管理装置21にその位置を通知してもよい。また、PRT車両20の運行時間は予め決められていてもよいが、利用者の要求に応じて決められてもよい(デマンド運行という)。
【0038】
なお、PRT車両20は、軌条のみに沿って走行する車両でもよいが、列車等が走るための軌道と自動車等が走るための道路の双方を走行できるように構成された、いわゆるデュアル・モード・ビークル(Dual Mode Vehicle, DMV)でもよい。
【0039】
乗降場22a、22b、22c、22d、22e(区別しない場合は「乗降場22」という)は、PRT走行路23に沿って配置され、PRT車両20が停車して旅客を乗降させる場所、又は建造物である。乗降場22は、PRT車両20のドアに応じたホームドア開口を備えていてもよい。
【0040】
小型輸送管理装置21は、PRT車両20を遠隔で操作するほか、通信線3を経由して鉄道管理装置11と情報のやり取りをして、PRT車両20の運行を管理する。小型輸送管理装置21は、例えば、コンピュータである。小型輸送管理装置21は、軌道13に含まれるいずれかの一部区間を指定して、その指定した一部区間(指定区間ともいう)の利用権を鉄道管理装置11に要求する。そして、通信線3を介して鉄道管理装置11から、要求したその利用権を貸与されると、PRT車両20に上述した指定区間への進入を許可する。
【0041】
図1に示す小型輸送管理装置21は、プロセッサ211、メモリ212、及びインタフェース213を有する。プロセッサ211はプロセッサ111に、メモリ212はメモリ112に、インタフェース213はインタフェース113に、それぞれ共通した構成を有するため、図示及び説明を省く。
【0042】
<鉄道管理装置の動作>
図3は、鉄道管理装置11の動作の流れの例を示す図である。鉄道管理装置11のプロセッサ111は、小型輸送管理装置21から指定区間の利用権を要求されたか否かを判断する(ステップS101)。
【0043】
指定区間の利用権を要求されていない、と判断する間(ステップS101;NO)、プロセッサ111は、この判断ステップを継続する。一方、指定区間の利用権を要求された、と判断する場合(ステップS101;YES)、プロセッサ111は、鉄道車両10の運行状態を参照して、この指定区間の利用権を貸与可能であるか否かを判断する(ステップS102)。
【0044】
例えば、図1に示す管理システム1において、鉄道管理装置11のプロセッサ111は、小型輸送管理装置21から、区間Rを指定して、その利用権の貸与を要求されると、区間Rにおける鉄道車両10の運行状態を参照する。この運行状態は、例えば、メモリ112に記憶された、鉄道車両10の現在位置を示す情報、及び、鉄道車両10の運行予定表等である。そして、プロセッサ111は、例えば、区間Rに鉄道車両10が存在しないことを確認し、さらに、運行予定に基づいて、例えば15分等の、予め定めた閾値以上の運転間合いが現時点から利用できるか否かを判断する。区間Rの利用権の貸与を要求されたときに、区間Rに鉄道車両10が存在せず、かつ、決められた運転間合いが利用できると判断したとき、プロセッサ111は、この利用権を貸与可能である、と判断する。
【0045】
指定区間の利用権を貸与可能でない、と判断する間(ステップS102;NO)、プロセッサ111は、この判断ステップを継続する。一方、指定区間の利用権を貸与可能である、と判断する場合(ステップS102;YES)、プロセッサ111は、指定区間の両端の信号機14を停止現示にする(ステップS103)。
【0046】
ステップS103において停止現示にされた信号機14は、現示が変更できない制限(現示制限ともいう)を課される。これにより、利用権が貸与され、PRT車両20が運行している期間にわたって、鉄道側は指定区間を線路閉鎖扱いとする。
【0047】
そして、プロセッサ111は、指定区間の利用権を小型輸送管理装置21に貸与する(ステップS104)。この貸与は、例えばプロセッサ111が、インタフェース113、及び通信線3を経由して小型輸送管理装置21に、利用権を示す信号を送信することにより成される。
【0048】
利用権を貸与した後、プロセッサ111は、小型輸送管理装置21から、上述した指定区間の利用権が返却されたか否かを判断する(ステップS105)。
【0049】
指定区間の利用権が返却されていない、と判断する間(ステップS105;NO)、プロセッサ111は、この判断ステップを継続する。一方、指定区間の利用権が返却された、と判断する場合(ステップS105;YES)、この指定区間の両端の信号機14の現示制限を解除する(ステップS106)。これにより、これら信号機14の現示は、プロセッサ111の管理下に置かれる。
【0050】
すなわち、この鉄道管理装置11を有する管理システム1は、小型輸送システムに軌道の一部区間の利用権を貸与した後、その利用権が返却されるまでの間、管理下にある車両の、その一部区間への進入を禁じる管理システム、の例である。
【0051】
プロセッサ111は、ステップS106の後、処理を上述したステップS101に戻す。
【0052】
<小型輸送管理装置の動作>
図4は、小型輸送管理装置21の動作の流れの例を示す図である。小型輸送管理装置21のプロセッサ211は、PRT車両20から送信される運行情報に基づいて、このPRT車両20が、軌道13に含まれるいずれかの一部区間を走行する必要があるか否かを判断する(ステップS201)。
【0053】
PRT車両20に、いずれかの一部区間を走行する必要がない、と判断する間(ステップS201;NO)、プロセッサ211は、この判断ステップを継続する。一方、PRT車両20に、いずれかの一部区間を走行する必要がある、と判断する場合(ステップS201;YES)、プロセッサ211は、そのPRT車両20が走行する予定の一部区間を指定して、その区間(つまり指定区間)の利用権の貸与を鉄道管理装置11に要求する(ステップS202)。
【0054】
そして、プロセッサ211は、鉄道管理装置11から指定区間の利用権が貸与されたか否かを判断する(ステップS203)。
【0055】
指定区間の利用権が貸与されていない、と判断する間(ステップS203;NO)、プロセッサ211は、この判断ステップを継続する。一方、指定区間の利用権が貸与された、と判断する場合(ステップS203;YES)、プロセッサ211は、PRT車両20に、この指定区間への進入を許可する(ステップS204)。
【0056】
なお、PRT車両20に指定区間への進入を許可したとき、指定区間に存在する踏切15は、小型輸送管理装置21の制御下に置かれてもよい。この場合、踏切15は、利用権の移譲に応じて、制御が切り替わるように改造されていればよい。そして、PRT車両20が、踏切15を通過する際に、踏切15の遮断機を下降させ、道路からの自動車等の進入を阻止すればよい。
【0057】
また、踏切15は、PRT車両20に指定区間への進入を許可している間、遮断機を上昇させ、道路に向けて徐行を促す警告を提示させてもよい。この場合、PRT車両20が踏切15を通過するときに、小型輸送管理装置21は、そのPRT車両20に備えられたカメラにより撮影された画像を解析して、物体検知を行い、道路を通行する自動車等との接触を回避するように、PRT車両20の運行を制御するとよい。
【0058】
次に、プロセッサ211は、進入を許可したPRT車両20が指定区間から退出したか否かを判断する(ステップS205)。
【0059】
PRT車両20が指定区間から退出していない、と判断する間(ステップS205;NO)、プロセッサ211は、この判断ステップを継続する。一方、PRT車両20が指定区間から退出した、と判断する場合(ステップS205;YES)、プロセッサ211は、全てのPRT車両20に対して、上述した指定区間への進入を禁止する(ステップS206)。
【0060】
そして、プロセッサ211は、貸与されている、上述した指定区間の利用権を鉄道管理装置11へ返却する(ステップS207)。この返却は、例えばプロセッサ211が、インタフェース213、及び通信線3を経由して鉄道管理装置11に、利用権を示す信号を送信することにより成される。
【0061】
すなわち、この小型輸送管理装置21を有する小型輸送システム2は、軌道を管理する管理システムにその軌道の一部区間の利用権の貸与を要求し、管理システムからその利用権を貸与された場合に、その一部区間への車両の進入を許可し、その車両が一部区間から退出したときに利用権を管理システムに返却する小型輸送システム、の例である。
【0062】
プロセッサ211は、ステップS207の後、処理を上述したステップS201に戻す。
【0063】
以上、説明した動作により、管理システム1、及び小型輸送システム2は、鉄道車両10、及びPRT車両20のそれぞれの走行状態をまとめて管理する中央制御装置を用いることなく、相互に軌道13の一部区間を走行領域として排他的に利用することにより、共用することができる。
【0064】
これら管理システム1、及び小型輸送システム2によれば、例えば、3キロメートル以上等、比較的長い駅間を有する都市近郊の鉄道区間や、貨物専用線の鉄道区間等を、双方に属する車両をまとめて管理する中央制御装置を置くことなく、鉄道車両10とPRT車両20とに共有させることができる。また、これらのシステムによれば、鉄道廃線を、市街区間の交通システムに再活用することも可能である。
【0065】
以上の実施形態で説明された構成、形状、大きさ及び配置関係については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎない。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【0066】
<変形例>
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例は組み合わされてもよい。
【0067】
<1>
上述した実施形態において、一部区間を走行する必要があるPRT車両20の台数について言及していないが、これが複数である場合、プロセッサ211は、これら複数のPRT車両20のうち、一部区間に進入した全てが退出するまで、利用権を返却しないようにしてもよい。
【0068】
また、複数のPRT車両20が、1つの一部区間を走行する必要がある場合、プロセッサ211は、これら複数のPRT車両20を、隊列走行させるように制御してもよい。ここで隊列走行とは、PRT車両20を、進行方向に所定間隔で並んで走行させることをいう。これにより、一部区間を走行する複数のPRT車両20は、互いに衝突することがなく、まとまった位置、範囲に所在して移動し続けるため、運行管理が容易になる。
【0069】
つまり、この場合、プロセッサ211を有する小型輸送管理装置21を備えた小型輸送システム2は、利用権を貸与された場合に複数の車両に一部区間を隊列走行させ、複数の車両の全てが一部区間から退出したときに利用権を管理システムに返却する小型輸送システム、の例である。
【0070】
<2>
上述した実施形態において、プロセッサ211は、ステップS205で進入を許可したPRT車両20が指定区間から退出したか否かを判断し、PRT車両20が指定区間から退出した、と判断する場合に、指定区間の利用権を鉄道管理装置11へ返却していたが、指定区間の利用権を返却する前に、その指定区間の状態が利用権の貸与前の状態に復元されているか否かを判断してもよい。ここで、指定区間の状態とは、例えば、指定区間に属する信号や、軌道分岐の状態等である。そして、プロセッサ211は、指定区間の状態が利用権の貸与前の状態に復元されている、と判断するときにのみ、その利用権を返却してもよい。
【0071】
図5は、指定区間の状態の復元を確認する動作の流れの例を示す図である。ステップS205を除くステップは、図4と共通であるため説明を省く。図5に示す通り、PRT車両20が指定区間から退出した、と判断する場合(ステップS205;YES)、プロセッサ211は、指定区間が貸与前の状態に復元したか否かを判断する(ステップS211)。
【0072】
指定区間が貸与前の状態に復元していない、と判断する間(ステップS211;NO)、プロセッサ211は、この判断ステップを継続する。一方、指定区間が貸与前の状態に復元した、と判断する場合(ステップS211;YES)、プロセッサ211は、処理を図4に示すステップS206に進める。これにより、プロセッサ211は、PRT車両20が一部区間から退出し、かつ、この一部区間が利用権の貸与前の状態に復元したときに、利用権を管理システム1に返却する。
【0073】
つまり、この場合、プロセッサ211を有する小型輸送管理装置21を備えた小型輸送システム2は、車両が利用権の貸与された一部区間から退出し、かつ、その一部区間が貸与前の状態に復元したときに利用権を管理システムに返却する小型輸送システム、の例である。
【0074】
これにより、管理システム1は、指定区間の利用権を貸与したときの状態で、その指定区間の利用を再開することができる。
【0075】
<3>
上述した実施形態において、利用権の期限は言及していないが、利用権に期限がある場合に、プロセッサ211は、その期限までに利用権を返却できるか否かを判断してもよい。そして、プロセッサ211は、期限までに利用権を返却できない場合に、管理システム1にその旨を通知してもよい。
【0076】
図6は、期限までに利用権を返却できない旨を通知する動作の流れの例を示す図である。ステップS205を除くステップは、図4と共通であるため説明を省く。図6に示す通り、PRT車両20が指定区間から退出していない、と判断する場合(ステップS205;NO)、プロセッサ211は、貸与された利用権の期限までに、その利用権を管理システム1に返却できるか否かを判断する(ステップS221)。この判断は、例えば、指定区間を走行するPRT車両20の位置や走行速度、事故が発生している場合には、その事故の状況等、各種の検知結果に基づいて行われる。
【0077】
期限までに利用権を返却できる、と判断する場合(ステップS221;YES)、プロセッサ211は、処理をステップS205に戻す。一方、期限までに利用権を返却できない、と判断する場合(ステップS221;NO)、プロセッサ211は、期限までに利用権を返却できない旨を管理システム1に通知し(ステップS222)、処理をステップS205に戻す。
【0078】
つまり、この場合、プロセッサ211を有する小型輸送管理装置21を備えた小型輸送システム2は、貸与された利用権に期限があり、かつ、その期限までにその利用権を返却できない場合にその旨を管理システムに通知する小型輸送システム、の例である。
【0079】
これにより、管理システム1は、貸与した利用権が返却されない場合、又は返却されないことが予想される場合に、その旨の通知を小型輸送システム2から受取ることができる。
【0080】
<4>
上述した実施形態において、プロセッサ111は、貸与した利用権の返却を小型輸送システム2に要求していないが、これを要求してもよい。例えば、プロセッサ111は、運行予定にない要請が発生して鉄道車両10を軌道13のいずれかの一部区間に走行させる必要が生じたときに、その一部区間に利用権を貸与している区間が存在していた場合、貸与先の小型輸送システム2に向けて、その利用権の返却を要求してもよい。
【0081】
つまり、この場合、プロセッサ111を有する鉄道管理装置11を備えた管理システム1は、利用権が返却されていない一部区間に管理下にある車両を走行させる必要がある場合に、その利用権の返却を小型輸送システムに要求する管理システム、の例である。
【0082】
これにより、管理システム1は、管理下にある鉄道車両10を走行させる必要に応じて、軌道13の一部区間の利用権の返却を小型輸送システム2に要求することができる。
【0083】
<5>
上述した変形例において、プロセッサ111は、軌道13のうち、利用権を貸与中の一部区間に鉄道車両10を走行させる必要が生じたときに、その利用権の返却を要求していたが、期限までに利用権が返却されていない場合に、その利用権の返却を要求してもよい。
【0084】
つまり、この場合、プロセッサ111を有する鉄道管理装置11を備えた管理システム1は、返却されていない利用権に期限があり、かつ、その期限までにその利用権が返却されていない場合に、その利用権の返却を小型輸送システムに要求する管理システム、の例である。
【0085】
これにより、管理システム1は、返却期限が切れた利用権の返却を小型輸送システム2に要求することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…管理システム、10…鉄道車両、11…鉄道管理装置、111…プロセッサ、112…メモリ、113…インタフェース、12、12a、12b…鉄道駅、13…軌道、14、14a、14b…信号機、15、15a、15b…踏切、2…小型輸送システム、20…PRT車両、21…小型輸送管理装置、211…プロセッサ、212…メモリ、213…インタフェース、22、22a、22b、22c、22d、22e…乗降場、23…PRT走行路、3…通信線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6