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  • 特開-シリンダ錠 図1
  • 特開-シリンダ錠 図2
  • 特開-シリンダ錠 図3
  • 特開-シリンダ錠 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050661
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】シリンダ錠
(51)【国際特許分類】
   E05B 15/00 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
E05B15/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160881
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】秋山 史記
(72)【発明者】
【氏名】三橋 隆史
(57)【要約】
【課題】容易且つ安全に組立可能であり、かつ摺動面の好ましい摺動性、及び耐食性が得られるシリンダ錠を提供すること。
【解決手段】外筒と、外筒に回動可能に篏合する内筒と、を備え、外筒又は内筒のうち、少なくとも何れかの摺動面には、固体潤滑剤層が形成される、シリンダ錠。固体潤滑剤層が形成される摺動面は、内筒に形成されるピン孔の内周面を含むことが好ましい。内筒のキー挿入面を被覆する装飾部材を更に備えることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、前記外筒に回動可能に篏合する内筒と、を備え、
前記外筒又は前記内筒のうち、少なくとも何れかの摺動面には、固体潤滑剤層が形成される、シリンダ錠。
【請求項2】
前記固体潤滑剤層が形成される前記摺動面は、前記内筒に形成されるピン孔の内周面を含む、請求項1に記載のシリンダ錠。
【請求項3】
前記内筒のキー挿入面を被覆する装飾部材を更に備える、請求項1又は2に記載のシリンダ錠。
【請求項4】
前記固体潤滑剤層は、前記内筒の前記摺動面に形成される、請求項1~3のいずれかに記載のシリンダ錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリンダ錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等に用いられるシリンダ錠において、摺動性を向上させるため、内筒と外筒との間、タンブラーピン、及びドライバーピンとピン孔との間等の摺動面に、黒鉛等の固体潤滑剤を配置することが行われている。例えば、シリンダ錠の組み立て後に内筒と外筒との間に粉末状の固体潤滑剤を注入する技術が知られている。
【0003】
固体潤滑剤をシリンダ錠の摺動面に配置する技術としては、上記以外に、シリンダ錠の外筒の内周面に収納溝を形成し、収納溝に固体潤滑剤を含有した潤滑剤担体を収納する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-253928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シリンダ錠の組み立て後に内筒と外筒との間に粉末状の固体潤滑剤を注入する技術は、作業者が粉末状の固体潤滑剤を誤って吸い込むことで、作業者の健康を害する恐れがある。また、特許文献1に開示された技術は、外筒の内周面に複雑な構造の別部材を配置する必要が生じる上に、タンブラーピン、及びドライバーピンとピン孔との間等の摺動面には固体潤滑剤を配置することができない。
【0006】
そこで、例えばタンブラーピン、及びドライバーピンの表面や、内筒の外周面に固体潤滑剤層を形成することも考えられる。しかし、タンブラーピン、及びドライバーピンの表面に固体潤滑剤層を形成する場合、組み立て時にピンが滑りやすくなり、組立作業性が低下するという課題がある。上記に加えて、内筒には意匠性及び耐食性も求められるため、ニッケルメッキやクロムメッキが施されることが通常であるが、メッキ層の上に固体潤滑剤層を形成する場合、部品の寸法管理が非常に困難になるという課題があった。
【0007】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、容易且つ安全に組立可能であり、かつ摺動面の好ましい摺動性、及び耐食性が得られるシリンダ錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、外筒と、前記外筒に回動可能に篏合する内筒と、を備え、前記外筒又は前記内筒のうち、少なくとも何れかの摺動面には、固体潤滑剤層が形成される、シリンダ錠に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るシリンダ錠の構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態に係る内筒と外筒を示す分解斜視図である。
図3】本実施形態に係るシリンダ錠の正面図である。
図4】本実施形態に係るシリンダ錠の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《施錠装置》
本実施形態に係る施錠装置1は、図1に示すように、シリンダ錠10と、シリンダ錠10の鍵穴21に挿入することで、シリンダ錠10を施解錠可能な解錠鍵5と、を有する。
【0011】
<シリンダ錠>
シリンダ錠10は、図1及び図2に示すように、内筒2と、外筒3と、装飾部材4と、ドライバーピン61と、タンブラーピン62と、を有する。内筒2と、外筒3とは、回動可能に篏合する。
【0012】
(内筒)
内筒2は、図2に示すように、外筒3の内部に回動可能に篏合する略円筒状部材である。内筒2の材質は特に限定されないが、例えば、真鍮等の金属により構成される。内筒2は、摺動面である外周面20が、外筒3の内周面30に当接して外筒3と篏合する。内筒2には、内筒2の軸方向に沿って、解錠鍵5が挿入可能な鍵穴21が形成される。内筒2の外周面には、鍵穴21に連通するピン孔22が複数形成される。複数のピン孔22は、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62が挿脱可能な孔である。
【0013】
内筒2の摺動面である外周面20には、固体潤滑剤層が形成されることが好ましい。固体潤滑剤層は、内筒に直接固体潤滑剤を焼き付けることで形成される、内筒2と一体の層である。上記固体潤滑剤層が形成されることによって、従来の粉体の固体潤滑剤を用いる場合と比較して、作業者がシリンダ錠10の組立時に粉体の固体潤滑剤を吸い込む恐れが無く、組立時の安全性を確保できる。上記に加えて、固体潤滑剤層が形成されることで、固体潤滑剤層が形成される表面の摺動性が向上するだけでなく、耐食性を向上させることができる。
【0014】
[固体潤滑剤層]
固体潤滑剤層を構成する固体潤滑剤としては、特に限定されるものではなく、黒鉛系、ケイ素系、フッ素系、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、金属酸化物等の公知の固体潤滑剤を使用できる。上記固体潤滑剤は1種又は複数を組み合わせて用いることができる。
【0015】
固体潤滑剤を用いて摺動面に固体潤滑剤層を形成する固体潤滑処理方法としても、特に限定されず、公知の方法を使用できる。例えば、摺動面に対して脱脂処理、化成処理、サンドブラスト等の前処理を行う工程と、上記前処理を行った後に、摺動面を乾燥させる工程と、上記固体潤滑剤を有機樹脂等の溶媒に分散させて調製した塗料を、スプレー塗装、タンブラー塗装、ディップ塗装等の塗装方法により摺動面に塗装する工程と、摺動面の表面に塗装された塗料を、焼付や自然乾燥等により硬化させ、固体潤滑剤層を形成する工程と、を有する固体潤滑処理方法を適用できる。
【0016】
内筒2の表面には、意匠性及び耐食性を確保するためのニッケルメッキ、クロムメッキ等のメッキが施されていないことが好ましい。これによって、内筒2の表面には上記固体潤滑剤層のみが形成されるため、内筒2の寸法管理が容易になる。
【0017】
内筒2の上記固体潤滑剤層が形成される摺動面には、外周面20に加えて、ピン孔22の内周面22aが含まれることが好ましい。これによって、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の摺動性を向上できると共に、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の表面に固体潤滑剤を配置することが不要になるため、組立時にドライバーピン61、及びタンブラーピン62が滑ることを抑制でき、シリンダ錠10の組立性を向上できる。ピン孔22の内周面22aに対して固体潤滑剤層を形成する方法としては特に限定されないが、内筒2の外周面20に上記の方法で固体潤滑剤層を形成する際に、内周面22aに対しても同時に固体潤滑剤を有機樹脂等の溶媒に分散させて調製した塗料を塗装し、固体潤滑剤層を形成することが好ましい。
【0018】
(外筒)
外筒3は、図2に示すように、内部に内筒2が篏合可能な略円筒状部材である。外筒3の材質は特に限定されないが、例えば、内筒2と同様に、真鍮等の金属により構成される。外筒3は、摺動面である内周面30が、内筒2の外周面20に当接して内筒2と篏合する。外筒3には、外筒3の軸方向に沿って、内筒が篏合可能な孔部31が形成される。外筒3の外周面には、孔部31に連通するピン孔32が複数形成される。複数のピン孔32は、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62が挿脱可能な孔である。複数のピン孔22と、複数のピン孔32とは、内筒2を外筒3に対して回動させ、所定の位置とした際に、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62が挿脱可能であるように互いに連通する。
【0019】
外筒3の摺動面である、孔部31の内周面30には、上記固体潤滑剤層が形成されることが好ましい。これによって、内筒2の摺動面である、外周面20に上記固体潤滑剤層を形成した場合と同様の効果が得られる。孔部31の内周面30に上記固体潤滑剤層を形成する方法としても、外周面20に上記固体潤滑剤層を形成する方法と同様の方法を採用できる。
【0020】
外筒3の上記固体潤滑剤層が形成される摺動面には、内周面30に加えて、ピン孔32の内周面32aが含まれていてもよい。これによって、ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の摺動性を向上できる。
【0021】
上記固体潤滑剤層は、内筒2の外周面20、及び外筒3の内周面30のうち、少なくとも何れかに形成される。上記固体潤滑剤層が、内筒2の外周面20、及び外筒3の内周面30のうち、いずれか一方に形成される場合、上記固体潤滑剤層は、内筒2の外周面20に形成されることが好ましい。上述の通り、内筒2の外周面20に上記固体潤滑剤層を形成する際に、ピン孔22の内周面22aに対して併せて上記固体潤滑剤層を形成することができるためである。
【0022】
(装飾部材)
装飾部材4は、図3及び図4に示すように、シリンダ錠10の正面である、内筒2及び外筒3の鍵穴21側の面を被覆して装飾する部材である。装飾部材4は、鍵穴21と連通するように配置される孔部41を有する。装飾部材4は、特に限定されないが、金属等により構成される。装飾部材4の表面には、意匠性を高めるためのメッキ層等が形成されていてもよい。装飾部材4により、内筒2及び外筒3は殆ど外部から視認不能になる。
【0023】
内筒2や外筒3の摺動面に固体潤滑剤層を形成した場合、固体潤滑剤層が視認可能な位置に配置されると、シリンダ錠10の好ましい外観が得られない。一方で、内筒2及び外筒3の表面に、意匠性を高めるためのメッキ層及び固体潤滑剤層を形成した二層構造とした場合、各部材の寸法管理が困難になる。このため、外部から視認可能なシリンダ錠10の正面である鍵穴21側の面を装飾部材4で被覆することで、内筒2及び外筒3に対しては意匠性が要求されない。従って、内筒2や外筒3の摺動面に固体潤滑剤層のみが形成された構成にすることができる。これによって、内筒2と外筒3の摺動面の好ましい摺動性及び耐食性が得られると共に、シリンダ錠10の好ましい意匠性が得られる。
【0024】
ドライバーピン61、及びタンブラーピン62は、ピン孔22及びピン孔32に摺動可能に収容される。ドライバーピン61、及びタンブラーピン62は、複数組存在し、複数組のピン孔22及びピン孔32に収容される。ドライバーピン61、及びタンブラーピン62は、鍵穴21側に向けて付勢部材(図示せず)により付勢されている。鍵穴21に解錠鍵5が挿入されていない場合には、ドライバーピン61は内筒2と外筒3との間に位置しており、内筒2の回動が規制される。鍵穴21に解錠鍵5を挿入した場合、ドライバーピン61とタンブラーピン62との境界が内筒2と外筒3との境界と一致し、内筒2が回転可能な状態となる。この状態で解錠鍵5を回転させることで、内筒2を回転させることができる。これによって、シリンダ錠10の施解錠を行うことができる。上記ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の構成としては、特に限定されず、シリンダ錠に用いられる公知のドライバーピン、及びタンブラーピンの構成を適用できる。
【0025】
(ドライバーピン、タンブラーピン)
ドライバーピン61、及びタンブラーピン62の表面には、上記固体潤滑剤層の形成等による、固体潤滑剤が配置されないことが好ましい。これによって、シリンダ錠10の組立性を向上できる。ドライバーピン61、及びタンブラーピン62と、ピン孔22及びピン孔32との間の摺動性は、少なくともピン孔22の内周面22aに固体潤滑剤層が形成されることにより確保できる。
【0026】
以上、本開示の各実施形態に係るシリンダ錠について説明した。しかし、本開示は上記の実施形態に限定されず、適宜変更が可能である。
図1
図2
図3
図4