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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050676
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】液体塗布具
(51)【国際特許分類】
   B05C 17/00 20060101AFI20230404BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
B05C17/00
B65D83/00 J
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160903
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000227331
【氏名又は名称】株式会社ソフト99コーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【弁理士】
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】溝口 亮
(72)【発明者】
【氏名】高田 学
(72)【発明者】
【氏名】濱野 貴史
【テーマコード(参考)】
3E014
4F042
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
3E014PC03
3E014PE25
3E014PF08
4F042AA09
4F042AB00
4F042BA12
4F042FA22
4F042FA26
4F042FA30
4F042FA43
(57)【要約】
【課題】容器のノズルに対して塗布材を相対的に首振り揺動させることができるような構成を採用することによって、湾曲したガラス面やほぼ垂直なガラス面に液体を塗布する作業での手首への負担を少なくし、作業性を改善する。
【解決手段】
容器10に取付け固定した基体50に塗布材保持体40を首振り揺動可能に取り付ける。塗布材保持体40に保持させた塗布材30に孔部32を設け、この孔部32に、容器10のノズル20を配備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手持ち可能でかつ液体を吐出するノズルを有する容器と、液体浸透性を有する塗布材と、容器に装備される塗布材保持体と、を備える液体塗布具であって、
塗布材保持体が、容器に、当該容器の横断方向に延びる軸線周りで首振り揺動可能に装備されていると共に、容器の上記ノズルが、塗布材保持体に保持された塗布材に設けられている孔部内に配備されていることを特徴とする液体塗布具。
【請求項2】
塗布材保持体が、容器に取付け固定された基体に、上記容器の横断方向に延びる軸線周りで首振り揺動可能に取り付けられ、上記基体に上記ノズルが挿通する貫通孔部が設けられ、上記基体及び上記塗布材保持体の両方の上面に対して重なり状に配備された塗布材の上記孔部内に基体の上記貫通孔部を挿通した上記ノズルが配備され、このノズルが上記孔部の周壁により間隔を隔てて取り囲まれている請求項1に記載した液体塗布具。
【請求項3】
上記基体及び上記塗布材保持体の両方に対して重なり状に配備される上記塗布材が、上記塗布材保持体にのみ固定されている請求項2に記載した液体塗布具。
【請求項4】
上記塗布材保持体は、その上面が上記基体の上面と面一になる中立位置とこの中立位置の片側又は他側になる傾斜位置との間で上記容器の横断方向に延びる軸線周りに首振り揺動可能であり、かつ、中立位置では塗布材保持体と上記基体との間の隙間の広さが、上記基体に対する上記塗布材保持体の揺動を許容し得る程度に可及的狭く定められている請求項2又は請求項3に記載した液体塗布具。
【請求項5】
上記基体に、上記塗布材保持体に設けられた受部に当接して当該塗布材保持体の首振り揺動範囲を制限する係合部が設けられている請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載した液体塗布具。
【請求項6】
上記塗布材は、上記孔部の近傍箇所に、上記塗布材保持体の揺動に伴う上記基体との衝突を回避する逃がし孔を有する請求項2ないし請求項5のいずれか1項に記載した液体塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体塗布具、詳しくは、自動車のフロントガラスやサイドガラスなどに撥水処理液などの液体を塗布することに用いられる液体塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の液体塗布具として、手持ち可能でかつ液体を吐出するノズルを有する容器と、液体浸透性を有する塗布材と、容器に取り付けられる塗布材保持体と、を備えたものが知られていた。この液体塗布具は、基本的に、上面にフェルトやスポンジなどの素材で作られた「塗布材を固定してなる塗布材保持体」が、ノズルが突出された容器の肩部に取り付けられていて、塗布材保持体に設けられている貫通孔部及び塗布材に設けられている孔部に上記ノズルが挿通されてこのノズルが塗布材側の上記孔部内に臨まされていた。
【0003】
一方、先行例(たとえば特許文献1参照)では、ガラス面やボディなどの被塗布面に塗布される撥水剤、洗浄剤、艶出し剤などの液体を収納する容器において、液体を収納する容器本体の首部に、塗布体を、容器本体の側面側方向に回動可能に取り付けた液体塗布具が提案されている。この液体塗布具では、容器本体の首部の開口を閉塞する中栓に液体吐出管が一体に設けられており、液体吐出管の先端が台座に固定した塗布体内に配されていて、液体吐出管を通して容器本体内の液体が塗布体に供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-189260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来例に係る液体塗布具は、容器に対して塗布材を備えた塗布材保持体が動かないように一体に固定された構造になっているため、自動車のフロントガラスのような湾曲したガラス面に液体を塗布する作業では、塗布体の全面を湾曲したガラス面に押し当てて擦り付けるときに、容器を湾曲したガラス面に合わせて傾けることが必要になり、そのために、容器を持った手の手首に大きな負担がかかったり、作業途中で塗布体の全面をガラス面に押し当てられなくなったりしてその一部がガラス面から離れて作業性が低下したりすることがあった。
【0006】
また、自動車のサイドガラスやミニバンのリアガラスなどでは、平坦なガラス面が垂直又はほぼ垂直になっているものがあり、このようなガラス面に液体を塗布する作業では、容器内の液体の液面がノズルの吐出口よりも下になってしまって液体がノズルから出なくなってしまうという事態が起こり得る。このような事態が起こると、塗布作業を続けにくくなるばかりか、液面をノズルの吐出口よりも上に位置させるために容器を持ち上げると、塗布体がガラス面から離れてしまって、ノズルから出た液体が塗布体で受け止められないまま垂れて自動車のボディーなどに付着し、ボディーなどを傷めるという懸念があった。
【0007】
一方、上記した特許文献1に係る液体塗布具は、容器本体の首部の開口を閉塞する中栓に一体に設けられている液体吐出管の先端が、台座に固定した塗布体内に配されていて、塗布体が回動するのに伴って液体吐出管もそれに追従して曲がり変形するようになっている。このため、塗布体に容器本体内の液体を補給するのに必要な構成が複雑になることを避けられない。
【0008】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたもので、ノズルを有する容器の上記ノズルに対して塗布体を相対的に首振り揺動させることができるような構成を採用することによって、自動車のフロントガラスのような湾曲したガラス面に液体を塗布する作業では、液体を塗りやすくなり、手首への負担が軽減されて作業性が改善される液体塗布具を提供することを目的としている。併せて、自動車のサイドガラスやミニバンのリアガラスのような垂直又はほぼ垂直なガラス面での液体の塗布作業に際しても、液体がスムーズにノズルから出て塗布体で受け止められるようになる液体塗布具を提供することを目的としている。
【0009】
さらに、本発明は、塗布体に容器内の液体を補給するのに必要な構成を簡素化することによって、既存のノズルを有する容器に設けられているところの「塗布材を固定してなる塗布材保持体」を、首振り型式の塗布材保持体に容易に交換して使用することのできる液体塗布具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る液体塗布具は、手持ち可能でかつ液体を吐出するノズルを有する容器と、液体浸透性を有する塗布材と、容器に装備される塗布材保持体と、を備える液体塗布具であって、塗布材保持体が、容器に、当該容器の横断方向に延びる軸線周りで首振り揺動可能に装備されていると共に、容器の上記ノズルが、塗布材保持体に保持された塗布材に設けられている孔部内に配備されている、というものである。
【0011】
このように構成されている液体塗布具によると、液体を湾曲したガラス面に塗布するときには、ガラス面に押し当てて擦り付けられた塗布材が塗布材保持体と一体となって湾曲したガラス面に追従して首振り揺動するために、 ガラス面等の被塗布面に対する塗布材の押え圧が均一となり、液体をガラス面等の被塗布面にムラ無く塗布することが可能となる。また、容器を掴んでいる手の手首に負担がかかりにくくなって塗布作業が容易になる。さらに、ほぼ垂直の面に液体を塗布するときには、垂直な面に塗布材の全面を当接させたまま容器を後上がりに傾斜させて容器内の液面をノズルのノズル孔よりも上に保つことができるので、そうすることにより、液体がスムーズにノズルから出て塗布材で受け止められるようになる。これらの作用に併せて、塗布材に容器内の液体を補給するのに必要な構成が簡素化されるために、既存のノズルを有する容器に設けられている上記した「塗布材を固定してなる塗布材保持体」を、首振り型式の当該塗布材保持体に容易に交換して使用することができるようになるという作用も発揮される。
【0012】
本発明では、塗布材保持体が、容器に取付け固定された基体に、上記容器の横断方向に延びる軸線周りで首振り揺動可能に取り付けられ、上記基体に上記ノズルが挿通する貫通孔部が設けられ、上記基体及び上記塗布材保持体の両方の上面に対して重なり状に配備された塗布材の上記孔部内に基体の上記貫通孔部を挿通した上記ノズルが配備され、このノズルが上記孔部の周壁により間隔を隔てて取り囲まれている、という構成を採用することが可能である。この構成を採用すると、塗布材が塗布材保持体と共に首振り揺動しても、ノズルから出た液体が塗布材で受け止められる。また、基体と塗布材保持体とをユニット化することが容易であり、そうすることによって、既存のノズルを有する容器に設けられている上記した「塗布材を固定してなる塗布材保持体」を、首振り型式の当該塗布材保持体に容易に交換して使用することができるようになるという作用が発揮されやすくなる。
【0013】
本発明では、上記基体及び上記塗布材保持体の両方に対して重なり状に配備される上記塗布材が、上記塗布材保持体にのみ固定されていることが望ましい。これによれば、塗布材が塗布材保持体の首振り揺動に無理なく追従する。
【0014】
本発明では、上記塗布材保持体は、その上面が上記基体の上面と面一になる中立位置とこの中立位置の片側又は他側になる傾斜位置との間で上記容器の横断方向に延びる軸線周りに首振り揺動可能であり、かつ、中立位置では塗布材保持体と上記基体との間の隙間の広さが、上記基体に対する上記塗布材保持体の揺動を許容し得る程度に可及的狭く定められている、という構成を採用することが望ましい。これによれば、中立位置の塗布材保持体の上面と基体の上面とが面一になり、かつ、塗布材保持体及び基体の上面同士の相互間の隙間をほぼ無くすることができるために、基体及び塗布材保持体の両方に対して重なり状に配備される塗布材に浸透している液体が上記隙間からの蒸散することを抑制しやすくなる。
【0015】
本発明では、上記基体に、上記塗布材保持体に設けられた受部に当接して当該塗布材保持体の首振り揺動範囲を制限する係合部が設けられている、という構成を採用することが可能である。これによれば、塗布材の孔部内に位置しているノズルが孔部の周壁に当接しないように塗布材保持体の首振り揺動範囲を制限して、ノズルから液体を常時スムーズに吐出させることができるようになる。
【0016】
本発明では、上記塗布材は、上記孔部の近傍箇所に、上記塗布材保持体の揺動に伴う上記基体との衝突を回避する逃がし孔を有することが望ましい。これによれば、塗布材によって塗布材保持体の揺動が制限されにくくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る液体塗布具によれば、容器のノズルに対して塗布材が相対的に首振り揺動可能であるために、自動車のフロントガラスのような湾曲したガラス面に液体を塗布する作業では、ガラス面等の被塗布面に対する塗布材の押え圧が均一となり、液体をガラス面等の被塗布面にムラ無く塗布することが可能となる。また、手首への負担が軽減されて作業性が改善される。さらに、自動車のサイドガラスやミニバンのリアガラスのような平坦で垂直又はほぼ垂直なガラス面での液体の塗布作業に際しても、ノズルから出た液体が垂れるという事態が抑制されて作業性が改善される。そのほか、塗布材に容器内の液体を補給するのに必要な構成が簡素化されるために、既存のノズルを有する容器に設けられている塗布材保持体を、首振り型式の塗布材保持体に容易に交換して使用することができるようになるという利便性がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る液体塗布具の一部を破断して示した側面図である。
図2図1のII部拡大図である。
図3】基体と塗布材保持体とを下から見て示した一部破断下面図である。
図4】塗布材の平面図である。
図5】使用状態説明図である。
図6】他の使用状態説明図である。
図7】キャップが装着された液体塗布具の一部破断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本発明の実施形態に係る液体塗布具100の一部を破断して示した側面図、図2図1のII部拡大図、図3は基体と塗布材保持体とを下から見て示した一部破断下面図、図4は塗布材の平面図であり、図5及び図6はそれぞれ使用状態説明図である。
【0020】
液体塗布具100は、縦長のグリップとしての機能を有する手持ち可能な樹脂製の容器10と、フェルトやスポンジなどの液体浸透性を有する素材で製作された塗布材30と、容器10に装備される塗布材保持体40と、を備えている。
【0021】
容器10の上端部には平面視長円形状の肩部11が段付き状に形成されていると共に、この肩部11の中央部に円筒状のノズル20が突出状に一体形成されていて、容器10内の液体がこのノズル20の内部通路を通ってノズル孔21から吐出されるようになっている。
【0022】
この実施形態においては、塗布材保持体40が容器10に取付け固定された基体50と共にユニット化されている。図1及び図2、又は、図3に示したように、基体50は、長円板状に形成されていて、その外縁部に、容器10の肩部11に嵌合される環状のリブでなる縁枠部51を有し、かつ、中央部には短い円形の貫通孔部52を形成している筒部53が設けられていて、この筒部53の下端に内向きに突出するリング状の突部54が形成されている。符号55は基体50の裏面に設けられた補強リブを示している。これに対し、塗布材保持体40は、基体50が嵌め込まれた長円形状の開口41を有する長円板状の板体によって形成されている。そして、長円形状の開口41の短径方向での対向箇所に一対の軸受け43,43が一体に設けられていて、これらの軸受け43,43の軸受け孔44,44に、基体50の短径方向での対向箇所に設けられた一対の短軸56,56が各別に回動可能に嵌合保持されている。この実施形態では、短軸56,56を、基体50に設けた台座57から突出させていて、この台座57を軸受け43に当接させることによって基体50に対する塗布材保持体40のがたつきを抑制すると共に、塗布材保持体40の円滑な揺動を可能にしている。
【0023】
このようにユニット化された塗布材保持体40及び基体50にあっては、基体50を容器10に取付け固定することによって、塗布材保持体40が容器10に装備される。容器10に対する基体50の取付け箇所では、図1又は図2のように、容器10の肩部11に設けられた鍔形の取付け台25に基体50の貫通孔部52が嵌合され、かつ、基体50側の上記突部54が、取付け台25の外周に環状に形成されている凹入部26に係合していることに加え、基体50の縁枠部51が容器10の肩部11に嵌合している。こうして容器10に装備された塗布材保持体40は、上記短軸56の周りで回動可能である。この短軸56の軸線は容器10の横断方向に延びる軸線に一致しているので、塗布材保持体40は、容器10の横断方向に延びる軸線周りに首振り揺動可能であるということが云える。
【0024】
図1又は図2によって類推できるように、塗布材保持体40は、その上面45が基体50の上面58と面一になる中立位置(図1又は図2に実線で示した位置)とこの中立位置の片側又は他側になる傾斜位置(図1には片側の傾斜位置を仮想線で例示してある)との間で、上記短軸56周りに首振り揺動可能である。そして、塗布材保持体40の中立位置では、塗布材保持体40と基体50との間の隙間Sの広さが、基体50に対する塗布材保持体40の揺動を許容し得る程度に可及的狭く定められている。
【0025】
塗布材30は、基体50及び塗布材保持体40の両方に対して重なり状に配備されている。また、塗布材30は塗布材保持体40にのみ固定されている。すなわち、図1のように、塗布材30と塗布材保持体40との固定箇所は、首振り揺動可能な塗布材保持体40の2箇所の自由端部にそれぞれ設けられていて、それらの固定箇所では、塗布材保持体40に設けられた突出片46が塗布材30に形成された切り目31に差し込まれていて、突出片46に備わっている係合爪47が塗布材30に係合している。
【0026】
図1のように、塗布材30は、ユニット化されている基体50及び塗布材保持体40の両方の上面58,45を覆う大きさを有している。また、図1又は図4のように、その中央部に孔部32が貫通して設けられていることに加え、孔部32を挟む両側の孔部32の近傍箇所に、塗布材保持体40の首振り揺動に伴う基体50との衝突を回避する逃がし孔34,34が設けられている。
【0027】
塗布材30を基体50及び塗布材保持体40の両方に対して重なり状に配備した状態では、塗布材30の孔部32が基体50の貫通孔部52に連通し、かつ、基体50との対向箇所に逃がし孔34,34が位置している。そして、塗布材30の孔部32内には、基体50の貫通孔部52を挿通したノズル20が配備されている。孔部32の内径はノズル20の外径よりも十分に大きくなっている。このため、孔部32内に配備されているノズル20は、孔部32の周壁33により十分に広い間隔を隔てて取り囲まれている。ノズル20が孔部32の周壁33により十分に広い間隔を隔てて取り囲まれているのは、ノズル20から出た液体が塗布材30に効率よく供給されるようにするためと、塗布材保持体40と共に塗布材30が首振り揺動したときにノズル20が孔部32の周壁33に当接して液体の吐出が妨げられないようにするためである。しかしながら、塗布材保持体40と共に首振り揺動される塗布材30の揺動幅が無制限に許容されていると、ノズル20と孔部32の周壁33との間隔の広さによっては、塗布材30が首振り揺動したときにノズル20が孔部32の周壁33に当接してしまう。そこで、この実施形態では、塗布材保持体40と共に首振り揺動される塗布材30の揺動範囲を制限するための対策として、基体50の縁枠部51における180度隔てた2箇所に横向きに突出する係合部61,61を設ける一方で、塗布材保持体40には、その裏面側に、それぞれの係合部61,61に対応する受部62,62を設けている。こうしておくと、塗布材保持体40に設けられた受部62,62が基体50側の係合部61,61に当接して塗布材保持体の首振り揺動範囲が制限されるため、塗布材30が首振り揺動したときにノズル20が孔部32の周壁33に当接してしまうという事態を回避することができ、ノズル20が孔部32の周壁33に当接して液体の吐出が妨げられるという事態が起こらなくなる。
【0028】
以上説明した実施形態に係る液体塗布具100を使用して液体を自動車のフロントガラスのような湾曲したガラス面に塗布するときには、図5のように、手持ちした容器10を倒立姿勢又は後上がりの傾斜姿勢にして、たとえば矢印Aのように動かしつつ、塗布材30を湾曲した垂らす面G1に押し当てて擦り付ける。このようにすると、容器10の姿勢をそれほど変化させなくても湾曲したガラス面G1の形状に追従して塗布材30が塗布材保持体40と一体となって自然に首振り揺動するため、容器10内の液体がノズル20(図1又は図2参照)から出て塗布材30に供給されたりガラス面G1に直接供給されたりする。このことにより、ガラス面G1に対する塗布材30の押え圧が均一となり、液体をガラス面G1にムラ無く塗布することが可能となり、作業途中で塗布材30の一部がガラス面G1から離れて作業性が低下したりするという事態が起こりにくくなる。また、容器10を掴んでいる手の手首にそれほど負担をかけずに液体をガラス面G1に塗布することができるようになる。
【0029】
また、実施形態に係る液体塗布具100を使用して液体を自動車のサイドガラスやミニバンのリアガラスのように垂直又はほぼ垂直になっている平坦なガラス面に塗布するときには、図6のように、手持ちした容器10を後上がりの傾斜姿勢にして、たとえば矢印Bのように動かしつつ、塗布材30を平坦なガラス面G1に押し当てて擦り付ける。このようにすると、ノズル20のノズル孔21(図1又は図2参照)が容器10内の液面よりも常に下になるので、液体がノズル20から出なくなってしまう、という事態が起こらない。また、塗布作業の途中で容器10内の液面をノズル20のノズル孔21よりも上に位置させるために容器10を持ち上げたりする必要もないので、ノズル20から出た液体が塗布材30で受け止められないまま液体が垂れて自動車のボディーなどに付着し、ボディーなどを傷めるという懸念も払拭されやすい。
【0030】
この実施形態では塗布材30に、フェルトやスポンジなどの弾力性を備えた素材が用いられている。このため、塗布作業後には、塗布材30の弾力性によって塗布材保持体40が図1又は図2に実線で示した中立位置に自然に復帰して、塗布材保持体40の上面45と基体50の上面58とが面一になる。その上、塗布材保持体40と基体50との間の隙間Sの広さが、基体50に対する塗布材保持体40の揺動を許容し得る程度に可及的狭く定められているために、塗布材30の裏面は塗布材保持体40の上面45と基体50の上面58とによってほぼ密閉されることになる。このため、塗布材30に浸み込んでいる液体が塗布材30の裏面から外部へ蒸散してしまうことが抑制されることになる。
【0031】
図7はキャップ70が装着された液体塗布具100の一部破断側面図である。同図のように、塗布作業の終了後に、塗布材30の側面及び上面を覆って密閉するキャップ70を塗布材30に装着するようにしておくと、このキャップ70と塗布材保持体40の上面45及び基体50の上面58とによって塗布材30がほぼ完全に密閉されるようになるために、塗布材30に浸み込んで液体が塗布材30から外部へ蒸散してしまうことが抑制されるという利点がある。なお、図示例のキャップ70は、容器10側のノズル20にねじ止めすることができるようになっている。符号71はねじ止めに際して操作されるハンドル、符号72はノズル20に嵌合される筒部である。
【0032】
また、この実施形態では、ノズル20が一体に設けられている容器10に塗布材保持体40が首振り揺動可能に装備されていて、ノズル20が塗布材保持体40に保持された塗布材30に設けられている孔部32内に配備されている、という構成を採用していることにより、塗布材30に容器10内の液体を補給するのに必要な構成が簡素化されている。このため、ノズル20を一体に有しかつ冒頭で説明した「塗布材を固定してなる塗布材保持体」を備える既存の容器10の塗布材保持体に替えて、首振り型式の塗布材保持体40を容易に装備させることができるようになるという作用が発揮される。この作用は、実施形態のように、塗布材保持体40を基体50と共にユニット化しておくことによっていっそう顕著に発揮される。
【0033】
この発明に係る液体塗布具100は、自動車のフロントウインドやサイドウインド、リヤウインドなどのガラスに撥水処理液や撥水膜除去液を塗布したりすることに好適に使用することができる。また、この発明に係る液体塗布具100は、前記の自動車の各ウインドウなどのガラスのほか、液体を塗布する用途において曲面を有する様々な対象物に好適に使用することができ、例えば自動車のボディー、自動車のライトやランプのレンズ、自動車のタイヤサイドウォール、カーブミラーなどにも適用することができる。
なお、図中では、説明の便宜上、同一又は相応する要素に同一符号を付してある。
【符号の説明】
【0034】
10 容器
20 ノズル
30 塗布材
32 孔部
33 孔部の周壁
34 逃がし孔
40 塗布材保持体
45 塗布材保持体の上面
56 短軸
50 基体
52 貫通孔部
58 基体の上面
61 係合部
62 受部
100 液体塗布具
S 塗布材保持体と基体との間の隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7