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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050693
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】タブリード及び非水電解質デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/571 20210101AFI20230404BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20230404BHJP
   H01M 50/178 20210101ALI20230404BHJP
   H01G 11/06 20130101ALI20230404BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20230404BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20230404BHJP
【FI】
H01M50/571
H01M50/534
H01M50/178
H01G11/06
H01G11/74
H01M50/562
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021160930
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】中山 文豪
(72)【発明者】
【氏名】近藤 里駆
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃
【テーマコード(参考)】
5E078
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5E078AA05
5E078AA08
5E078AB06
5E078AB12
5E078HA02
5E078KA05
5E078KA06
5H011EE04
5H043AA07
5H043BA17
5H043CA08
5H043CA13
5H043DA13
5H043DA15
5H043EA15
5H043EA16
5H043EA18
5H043HA23D
5H043HA23E
5H043KA06D
5H043KA06E
5H043KA07D
5H043KA07E
5H043KA08D
5H043KA08E
5H043KA09D
5H043KA09E
5H043KA14D
5H043KA14E
5H043LA00D
5H043LA00E
5H043LA02D
5H043LA02E
5H043LA04D
5H043LA04E
(57)【要約】
【課題】 リード材の耐久性を高めてタブリードの長寿命化及び高信頼性を図る。
【解決手段】 ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに設けられ、金属材料によって形成され両端部がそれぞれ電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される端子接続部として設けられたリード材と、リード材の表面を覆うニッケルめっきと、ニッケルめっきの表面を覆う被膜と、被膜に両側から密着される一対のシール部とを備え、ニッケルめっきは原子間力顕微鏡によって測定した算術平均粗さが5.0nm以上にされX線回析法によって測定した半値幅が0.5度以下にされた。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに設けられるタブリードであって、
金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される端子接続部として設けられたリード材と、
前記リード材の表面を覆うニッケルめっきと、
前記ニッケルめっきの表面を覆う被膜と、
前記被膜に両側から密着される一対のシール部とを備え、
前記ニッケルめっきは原子間力顕微鏡によって測定した算術平均粗さが5.0nm以上にされX線回析法によって測定した半値幅が0.5度以下にされた
タブリード。
【請求項2】
前記リード材がアルミニウム又は銅によって形成された
請求項1に記載のタブリード。
【請求項3】
前記被膜がクロム塩又はジルコニウム塩によって形成された
請求項1又は請求項2に記載のタブリード。
【請求項4】
前記被膜の厚さが20nm以上にされた
請求項1、請求項2又は請求項3に記載のタブリード。
【請求項5】
前記ニッケルめっきの厚さが1μm以上にされた
請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4に記載のタブリード。
【請求項6】
ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されタブリードが設けられたラミネート型の非水電解質デバイスであって、
前記タブリードは、
金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される端子接続部として設けられたリード材と、
前記リード材の表面を覆うニッケルめっきと、
前記ニッケルめっきの表面を覆う被膜と、
前記被膜に両側から密着される一対のシール部とを備え、
前記ニッケルめっきは原子間力顕微鏡によって測定した算術平均粗さが5.0nm以上にされX線回析法によって測定した半値幅が0.5度以下にされた
非水電解質デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極と外部機器に接続されるリード材を有するタブリード及びこれを備えた非水電解質デバイスについての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
非水電解質デバイスには、例えば、リチウムイオン電池やリチウムイオンキャパシタ等が存在する。リチウムイオン電池は正極と負極の間をリチウムイオンが移動することにより充電や放電を行う機能を有し、リチウムイオンキャパシタは電気二重層の正極とリチウムイオンの吸着が可能な炭素系の材料を使用する負極とが設けられた構造において充電や放電を行う機能を有する。
【0003】
このような非水電解質デバイスには、例えば、車載用の電池や蓄電池等として使用され、袋状にされたラミネート材の内部に電極と電解液又は固体電解質が封入されたラミネート型がある。ラミネート型の非水電解質デバイスにおいてはタブリードによって電力の取り出しが行われる。
【0004】
タブリードは電力を取り出すための端子部材として機能する金属製のリード材を有している。リード材は一端部がラミネート材の内部に配置された電極に接続され他端部がラミネート材の外部に露出されて外部機器の接続端子であるバスバー等に接続される。
【0005】
このようなタブリードにおいては、リード材の表面にニッケルめっきが施されると共にニッケルめっきの表面に被膜(表面処理層)が施されることにより、リード材の保護が行われ、リード材の酸化や電解液等によるエッチングが防止される(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-186914号公報
【特許文献2】特開2014-220129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、タブリードにおいては、上記したように、ニッケルめっきによってリード材が保護されるが、ニッケルめっきに含まれる不純物の量等によってはニッケルめっきの電解液に対する耐食性が低下し、ニッケルめっきが電解液と水分の反応により発生するフッ酸によってエッチングされ、リード材の酸化やエッチングが生じてリード材の保護が不十分になり、リード材の耐久性が低下しタブリードの寿命の低下を来してしまう。
【0008】
そこで、本発明は、リード材の耐久性を高めてタブリードの長寿命化及び高信頼性を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るタブリードは、ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されたラミネート型の非水電解質デバイスに設けられるタブリードであって、金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される端子接続部として設けられたリード材と、前記リード材の表面を覆うニッケルめっきと、前記ニッケルめっきの表面を覆う被膜と、前記被膜に両側から密着される一対のシール部とを備え、前記ニッケルめっきは原子間力顕微鏡によって測定した算術平均粗さが5.0nm以上にされX線回析法によって測定した半値幅が0.5度以下にされたものである。
【0010】
これにより、ニッケルめっきに含有される不純物の量が少なくなりニッケルめっきの電解液に対する耐食性が高くなる。
【0011】
本発明に係る非水電解質デバイスは、ラミネート材の内部に少なくとも電極と電解液又は固体電解質とが封入されタブリードが設けられたラミネート型の非水電解質デバイスであって、前記タブリードは、金属材料によって形成され両端部がそれぞれ前記電極に接続される電極接続部と外部機器に接続される端子接続部として設けられたリード材と、前記リード材の表面を覆うニッケルめっきと、前記ニッケルめっきの表面を覆う被膜と、前記被膜に両側から密着される一対のシール部とを備え、前記ニッケルめっきは原子間力顕微鏡によって測定した算術平均粗さが5.0nm以上にされX線回析法によって測定した半値幅が0.5度以下にされたものである。
【0012】
これにより、タブリードにおいて、ニッケルめっきに含有される不純物の量が少なくなりニッケルめっきの電解液に対する耐食性が高くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタブリード及び非水電解質デバイスによれば、ニッケルめっきに含有される不純物の量が少なくなりニッケルめっきの電解液に対する耐食性が高くなるため、リード材の酸化の防止を図ることができると共に電解液と水分の反応によって発生するフッ酸によるエッチングを防止することができ、リード材の耐久性を高めてタブリードの長寿命化及び高信頼性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図2乃至図6と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、非水電解質デバイスの正面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】タブリードの斜視図である。
図4】端子部の層構成を示す断面図である。
図5】端子部に関する測定結果を示すグラフ図である。
図6】端子部に関する別の測定結果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明のタブリード及び非水電解質デバイスを実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。
【0016】
<非水電解質デバイスの概略構成>
先ず、ラミネート型の非水電解質デバイスの例としてリチウムイオン電池の概略構成について説明する(図1及び図2参照)。尚、本発明の非水電解質デバイスの適用範囲はリチウムイオン電池に限られることはなく、本発明はラミネート型のリチウムイオンキャパシタ等の他の非水電解質デバイスにも適用することが可能である。
【0017】
非水電解質デバイスは内部に電解質等が封入されたラミネート材とラミネート材から一部が外部に突出されたタブリードとを有し、以下の説明にあっては、ラミネート材からタブリードが突出される方向を上方とし、前後上下左右の方向を示すものとする。但し、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0018】
非水電解質デバイス100は袋状にされたラミネート材101とラミネート材101の内部に封入された各部と一部がラミネート材101から突出されたタブリード1、1とを有している(図1参照)。
【0019】
ラミネート材101は上端部が封止部102として形成された袋状にされている。ラミネート材101は、例えば、三層構造にされ、それぞれ樹脂材料によって形成された外面層101aと内面層101bが金属層101cの両側に積層されている(図2参照)。外面層101aとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートが用いられ、内面層101bとしては、例えば、ポリプロピレン又はポリエチレンが用いられ、金属層101cとしては、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼が用いられている。
【0020】
ラミネート材101の内部には、電解液103が封入されると共に正極104と負極105とセパレータ106が配置されている。正極104と負極105は電解液103に浸されており、セパレータ106によって正極104が配置された空間と負極105が配置された空間とが仕切られている。正極104としては、例えば、アルミニウムが用いられ、負極105としては、例えば、ニッケル又は銅若しくはこれらの合金が用いられている。尚、電解液103に代えて固体電解質が用いられていてもよい。
【0021】
<タブリードの構成>
次に、タブリード1の構成について説明する(図2乃至図4参照)。尚、タブリード1は一対設けられており、正極104に接続される一方のタブリード1が非水電解質デバイス100における正極として機能し、負極105に接続される他方のタブリード1が非水電解質デバイス100における負極として機能する。
【0022】
タブリード1は、薄板状の端子部2と、端子部2に両側から密着された一対のシール部3、3とを有している(図2及び図3参照)。タブリード1は、外周面の一部が封止部102に密着された状態にされ、上端側の部分がラミネート材101から上方に突出されている。
【0023】
端子部2は、厚さが、例えば、50μmから3000μmにされた薄板状に形成されている。端子部2の下端部は電極接続部2aとして設けられ、正極104又は負極105に、例えば、溶接等によって接続されている。端子部2の上端部はラミネート材101から外部に露出された端子接続部2bとして設けられ、外部機器の図示しない接続端子(バスバー)に、例えば、溶接等によって接続される。
【0024】
シール部3、3は端子部2に両側から密着されると共にラミネート材101の封止部102の内面にも密着されてラミネート材101を封止し、ラミネート材101の内部に封入された電解液103等の液漏れを防止する機能を有している。また、シール部3、3は端子部2とラミネート材101の間に介在され、端子部2とラミネート材101の間の絶縁性を確保する機能をも有している。
【0025】
シール部3、3は端子部2の長手方向に対して直交する方向に延びる形状に形成され、端子部2の厚み方向における両面に両側から密着されている。シール部3は厚さが、例えば、75μmから300μmにされ、長手方向における中央の部分が端子部2に密着されている。シール部3は単層にされていてもよく、複数層にされていてもよい。シール部3は、例えば、熱圧着されることにより端子部2とラミネート材101の封止部102とに密着される。
【0026】
端子部2は、ベース材として設けられたリード材4とリード材4の表面を覆うニッケルめっき5とニッケルめっき5の表面を覆う被膜6とによって構成されている(図4参照)。
【0027】
リード材4は金属材料、例えば、アルミニウム又は銅によって形成されている。リード材4は厚みの薄い、例えば、矩形状に形成されている。
【0028】
ニッケルめっき5は電解液103に対する耐食性に優れ、リード材4を保護する機能を有し、厚さが、例えば、1μm以上にされている。ニッケルめっき5はリード材4を保護することにより、リード材4の酸化を防止すると共にリード材4の電解液103と水分の反応によって発生するフッ酸によるエッチングを防止する機能を有している。ニッケルめっき5としては、無光沢のタイプ又は半光沢のタイプが用いられる。
【0029】
ニッケルめっき5として無光沢のタイプ又は半光沢のタイプが用いられることにより、ニッケルめっき5における不純物の含有量が少なくなり、電解液103に対する高い耐食性が確保される。従って、ニッケルめっき5は可能な限り不純物の含有量が少ない無光沢又は無光沢に近い材料によって形成されることが望ましい。
【0030】
このようにニッケルめっき5は不純物の含有量が少ない無光沢又は無光沢に近い半光沢のタイプとして形成されており、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)によって測定した算術平均粗さが5.0nm以上にされX線回析法によって測定した半値幅が0.5度以下にされている。算術平均粗さによってニッケルめっき5の表面凹凸の程度が規定され、半値幅によってニッケルめっき5の結晶性が規定される。
【0031】
原子間力顕微鏡は走査型プローブ顕微鏡の一種であり、試料の表面と探針の原子間に働く力を検出して画像を得る顕微鏡である。原子間力顕微鏡による算術平均粗さの測定範囲としては、例えば、2μm角の範囲が設定される。算術平均粗さの値が小さい値である程、光沢の程度が高い。
【0032】
X線回折法(θ/2θ)はX線が結晶格子で回折を示すことを利用して物質の結晶構造を調べる方法である。X線回折法によってニッケルめっき5の結晶構造を調べることによりニッケルめっき5における不純物の含有量を測定することが可能であり、半値幅が小さい値である程、ニッケルめっき5における不純物の含有量が少ない。
【0033】
被膜6は電解液103に対する耐食性の高い材料、例えば、クロム塩又はジルコニウム塩によってニッケルめっき5の凹凸を埋めるようにして形成されている。被膜6は、例えば、厚さが20nm以上にされている。
【0034】
<端子部に関する測定結果>
以下に、端子部に関する測定結果について説明する(図5及び図6参照)。
【0035】
図5は、光沢の程度が異なる3種類の端子部に関し、ニッケルめっきの残存率を測定した結果である。尚、図5に示す測定において使用した端子部(試料)は何れもリード材の表面にニッケルめっきが施されているが、被膜は施されていない。
【0036】
データAは無光沢のニッケルめっきが形成された端子部、データBは半光沢のニッケルめっきが形成された端子部、データCは光沢のニッケルめっきが形成された端子部についての測定結果である。データAとデータBとデータCのエッチングレート、算術平均粗さ及び半値幅は表に示す通りである。データAとデータBとデータCの各値は2μm四方の所定の各面について測定した値である。
【0037】
横軸は電解液に端子部を浸した時間を示している。縦軸はニッケルめっきの残存率を示し、電解液に端子部を浸した時間が0時間のときのニッケルめっきの残存率を100%としている。電解液には水分を添加しており、電解液に対する水分の添加量が多くなるに従ってフッ酸の発生量が増加しニッケルめっきがエッチングされ易くなる。電解液への水分の添加量は10000ppmである。尚、本測定において電解液に添加した水分の添加量は一例であり、電解液への水分の添加量は、例えば、1000ppmにされていてもよく、この場合には、最長で試験時間が720時間にされる。
【0038】
本測定において、無光沢のニッケルめっきが形成された端子部と半光沢のニッケルめっきが形成された端子部は、光沢のニッケルめっきが形成された端子部に対してニッケルめっきの残存率が高く、特に、無光沢のニッケルめっきが形成された端子部は、光沢のニッケルめっきが形成された端子部に対してニッケルめっきの残存率が極めて高いと言う結果が得られた。
【0039】
従って、ニッケルめっきが無光沢又は半光沢にされている場合には、ニッケルめっきの電解液に対する高い耐食性が確保され、リード材の酸化の防止を図ることができると共に電解液と水分の反応によって発生するフッ酸によるエッチングを防止することができることが解る。特に、ニッケルめっきが無光沢にされている場合には、ニッケルめっきの電解液に対する極めて高い耐食性が確保され、リード材の酸化の防止効果及びリード材の電解液と水分の反応によって発生するフッ酸によるエッチングの防止効果が一層高くなることが解る。
【0040】
図6は、被膜の形成の有無を変更した無光沢の端子部に関し、ニッケルめっきの残存厚さを測定した結果である。尚、図6に示す測定において使用した端子部(試料)は何れもリード材の表面にニッケルめっきが施されている。
【0041】
データDとデータEとデータFは何れも無光沢のニッケルめっきが形成された端子部についての測定結果であり、データDは被膜が形成されていない端子部、データEはクロム塩の被膜が形成された端子部、データFはジルコニウム塩の被膜が形成された端子部についての測定結果である。
【0042】
横軸は電解液に端子部を浸した時間を示している。縦軸はニッケルめっきの残存厚さを示し、電解液に端子部を浸す前の状態において各端子部のニッケルめっきの厚さが2.0μmにされている。電解液には水分を添加しており、電解液に対する水分の添加量が多くなるに従ってフッ酸の発生量が増加しニッケルめっきがエッチングされ易くなる。電解液への水分の添加量は10000ppmである。尚、本測定において電解液に添加した水分の添加量は一例であり、電解液への水分の添加量は、例えば、1000ppmにされていてもよく、この場合には、最長で試験時間が720時間にされる。
【0043】
本測定において、被膜が形成された端子部は、被膜が形成されていない端子部に対してニッケルめっきの残存厚さが厚く、特に、ジルコニウム塩の被膜が形成された端子部は、被膜が形成されていない端子部に対してニッケルめっきの残存厚さが極めて厚いと言う結果が得られた。
【0044】
従って、被膜が形成されることによりニッケルめっきが電解液と水分の反応により発生するフッ酸によってエッチングされ難く、ニッケルめっき及びリード材の酸化の防止を図ることができると共に電解液と水分の反応により発生するフッ酸によるエッチングを防止することができることが解る。特に、ジルコニウム塩の被膜は、ニッケルめっきの電解液と水分の反応により発生するフッ酸によるエッチングの防止効果が高く、ニッケルめっき及びリード材の酸化の防止効果及びリード材の電解液と水分の反応により発生するフッ酸によるエッチングの防止効果が一層高くなることが解る。
【0045】
<まとめ>
以上に記載した通り、タブリード1及びこれを備えた非水電解質デバイス100にあっては、両端部がそれぞれ電極接続部2aと端子接続部2bとして設けられたリード材4と、リード材4の表面を覆うニッケルめっき5と、ニッケルめっき5の表面を覆う被膜6と、被膜6に両側から密着される一対のシール部3とを備え、ニッケルめっき5は原子間力顕微鏡によって測定した算術平均粗さが5.0nm以上にされX線回析法によって測定した半値幅が0.5度以下にされている。
【0046】
従って、ニッケルめっき5に含有される不純物の量が少なくなりニッケルめっき5の電解液103に対する耐食性が高くなるため、リード材4の酸化の防止を図ることができると共に電解液103によるエッチングを防止することができ、リード材4の耐久性を高めてタブリード1の長寿命化及び高信頼性を図ることができる。
【0047】
また、リード材4の酸化が防止されてリード材4の表面に酸化皮膜が形成され難いため、端子部2が電極や外部機器の接続端子に溶接によって接続(固定)されるときに溶接強度の低下等が生じず、端子部2と電極及び接続端子との固定強度の向上を図ることができる。
【0048】
さらに、リード材4がアルミニウム又は銅によって形成されていることにより、リード材4が高い導通性を有する強度の高い金属材料によって形成されるため、タブリード1の電極と外部機器の接続端子とに対する良好な導通状態を確保することができると共に高い耐久性を確保することができる。
【0049】
さらにまた、被膜6がクロム塩又はジルコニウム塩によって形成されていることにより、被膜6によってニッケルめっき5が電解液103から保護されるため、被膜6が電解液103と水分の反応により発生するフッ酸によってエッチングされ難くリード材4の高い耐久性を確保することができる。
【0050】
また、被膜6の厚さが20nm以上にされていることにより、ニッケルめっき5を保護するための被膜6の十分な厚さが確保され、ニッケルめっき5が電解液103と水分の反応により発生するフッ酸によって一層エッチングされ難くなりリード材4の一層高い耐久性を確保することができる。
【0051】
加えて、ニッケルめっき5の厚さが1μm以上にされることにより、ニッケルめっき5が電解めっきとして生成される際にニッケルめっき5に孔が形成され難いため、ニッケルめっき5が電解液103と水分の反応により発生するフッ酸によってエッチングされ難くリード材4のより一層高い耐久性を確保することができる。
【0052】
<その他>
上記には、正極104又は負極105に接続されたタブリード1、1が何れもラミネート材101から同じ方向(上方)へ突出された例を示したが、非水電解質デバイス100においては、正極104又は負極105に接続されたタブリード1、1がラミネート材101から反対方向に突出されてもよい。
【符号の説明】
【0053】
100 非水電解質デバイス
101 ラミネート材
2 端子部
2a 電極接続部
2b 端子接続部
4 リード材
5 ニッケルめっき
6 被膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6