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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050762
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】中央装置及び通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 29/28 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
B61L29/28 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161034
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】岡部 栄治
(72)【発明者】
【氏名】山中 淳
(72)【発明者】
【氏名】水野 健司
(72)【発明者】
【氏名】寺戸 愛吉
(72)【発明者】
【氏名】近藤 博志
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161MM02
5H161MM14
5H161NN00
5H161PP15
(57)【要約】
【課題】中央装置と踏切制御装置との間で行う踏切制御通信の頻度を、踏切の安全を確保しつつ、変更可能とする技術を提供すること。
【解決手段】踏切制御装置13との間で無線を介した踏切制御通信を周期的に行う中央装置3は、進路制御装置5から取得した列車7に係る設定進路情報や当該列車7の走行位置情報に基づいて、踏切制御装置13の制御対象の踏切11に対して当該列車7が接近していることを示す所定の列車接近条件を満たすか否かを判定し、満たすと判定した場合に、踏切制御装置13との通信周期を所定の高頻度通信周期とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
踏切制御装置との間で無線を介した踏切制御通信を周期的に行う中央装置であって、
1)列車の進路を制御する進路制御装置から取得可能な当該列車に係る設定進路情報、及び/又は、2)当該列車の走行位置情報、に基づいて、前記踏切制御装置の制御対象の踏切に対して当該列車が接近していることを示す所定の列車接近条件を満たすか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記踏切制御通信の通信周期を変更する通信周期制御手段と、
を備える中央装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記設定進路情報に基づき、当該列車の設定進路上に前記踏切制御装置の制御対象の踏切があること、を前記列車接近条件として前記判定を行う、
請求項1に記載の中央装置。
【請求項3】
前記通信周期制御手段は、前記判定手段により満たすと判定された場合に、前記通信周期を所定の高頻度通信周期とする、
請求項1又は2に記載の中央装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記設定進路情報に基づき、当該列車の設定進路上に前記踏切制御装置の制御対象の踏切があり、且つ、前記走行位置情報に基づき、当該踏切を含む所定の警報範囲を少なくとも含む所定の高頻度通信範囲に当該列車が位置すること、を前記列車接近条件として前記判定を行う、
請求項3に記載の中央装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記走行位置情報及び当該列車の最高速度に基づいて前記高頻度通信範囲に当該列車が到達する到達予想時刻を予測し、当該到達予想時刻の到来をもって、前記高頻度通信範囲に当該列車が位置すると判定する、
請求項4に記載の中央装置。
【請求項6】
前記判定手段は、各列車について前記列車接近条件を満たすか否かを判定し、
前記通信周期制御手段は、1台以上の前記列車について前記列車接近条件を満たすと判定した場合には前記通信周期を前記高頻度通信周期とする、
請求項3~5の何れか一項に記載の中央装置。
【請求項7】
前記走行位置情報に基づいて、当該列車が当該踏切を通過したことを示す所定の警報終止条件を満たすか否かを判定する警報終止条件判定手段、
を更に備え、
前記通信周期制御手段は、前記警報終止条件判定手段の判定結果に基づいて、前記高頻度通信周期としていた前記通信周期を、前記高頻度通信周期より周期の長い低頻度通信周期に変更する、
請求項3~6の何れか一項に記載の中央装置。
【請求項8】
当該踏切を通過する当該列車の続行列車について前記列車接近条件を満たすと予測される時点までの到来予測時間を予測する予測手段、
を更に備え、
前記通信周期制御手段は、前記警報終止条件判定手段により満たすと判定され、且つ、前記到来予測時間が所定の短時間条件を満たす場合には、前記高頻度通信周期としていた前記通信周期を維持する、
請求項7に記載の中央装置。
【請求項9】
前記通信周期制御手段は、前記踏切制御装置に係る前記踏切制御通信の通信周期と、前記踏切制御装置の制御対象の踏切に対して所定の近接条件を満たす近接踏切を制御対象とする近接踏切制御装置に係る前記踏切制御通信の通信周期とを、併せて変更する、
請求項1~8の何れか一項に記載の中央装置。
【請求項10】
踏切制御装置との間で無線を介した踏切制御通信を周期的に行う中央装置による通信制御方法であって、
1)列車の進路を制御する進路制御装置から取得可能な当該列車に係る設定進路情報、及び/又は、2)当該列車の走行位置情報、に基づいて、前記踏切制御装置の制御対象の踏切に対して当該列車が接近していることを示す所定の列車接近条件を満たすか否かを判定する判定ステップと、
前記判定ステップの判定結果に基づいて、前記踏切制御通信の通信周期を変更する通信周期制御ステップと、
を含む通信制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切制御装置と無線を介した踏切制御通信を行う中央装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道において、無線通信を利用した踏切制御システムが知られている。係るシステムの一例として、特許文献1には、踏切警報機(踏切制御装置)が、列車に搭載される車上装置と無線通信を行うことで列車の走行位置を取得し、取得した走行位置をもとに踏切の警報の開始や終了等の踏切制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-076563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
踏切制御装置と車上装置とが直接通信を行うシステムの他、地上装置である中央装置が各踏切の踏切制御装置それぞれと無線通信を行うことで複数の踏切を集中制御するシステムも知られている。従来、中央装置と各踏切制御装置との無線通信は固定の通信周期で行っていた。このため、複数の踏切を集中制御する従来のシステムでは、中央装置が制御できる踏切の数に上限が発生する可能性があった。また、通信周期を固定とする方式では、通信を行う重要性が高まったために高頻度に通信したいといった場合や、通信を行う重要性が低下したために通信頻度を低下させたいといった場合など、柔軟性のある適応的な運用が困難であった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、中央装置と踏切制御装置との間で行う踏切制御通信の頻度を、踏切の安全を確保しつつ、変更可能とする技術を提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、
踏切制御装置との間で無線を介した踏切制御通信を周期的に行う中央装置であって、
1)列車の進路を制御する進路制御装置から取得可能な当該列車に係る設定進路情報、及び/又は、2)当該列車の走行位置情報、に基づいて、前記踏切制御装置の制御対象の踏切に対して当該列車が接近していることを示す所定の列車接近条件を満たすか否かを判定する判定手段(例えば、図7の列車接近条件判定部208A,図15の列車接近条件判定部208B)と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記踏切制御通信の通信周期を変更する通信周期制御手段(例えば、図7図15の通信周期制御部212)と、
を備える中央装置である。
【0007】
他の発明として、
踏切制御装置との間で無線を介した踏切制御通信を周期的に行う中央装置による通信制御方法であって、
1)列車の進路を制御する進路制御装置から取得可能な当該列車に係る設定進路情報、及び/又は、2)当該列車の走行位置情報、に基づいて、前記踏切制御装置の制御対象の踏切に対して当該列車が接近していることを示す所定の列車接近条件を満たすか否かを判定する判定ステップ(例えば、図9のステップS1)と、
前記判定ステップの判定結果に基づいて、前記踏切制御通信の通信周期を変更する通信周期制御ステップ(例えば、図9のステップS3)と、
を含む通信制御方法を構成してもよい。
【0008】
第1の発明等によれば、中央装置と踏切制御装置との間で踏切制御のために行う無線通信である踏切制御通信の頻度を変更することができる。つまり、列車が接近していることを示す列車接近条件を満たす場合とは、間もなくその踏切の警報を開始する場合であり、警報の開始タイミングを制御するために高頻度の通信を行う必要がある。このため、例えば、列車接近条件を満たす場合には踏切制御通信の通信周期を短くして通信頻度を高くし、列車接近条件を満たさない場合には踏切制御通信の通信周期を長くして通信頻度を低くする制御を行う。踏切に列車が接近しているか否か、つまり、間もなく警報を開始するか否かに応じて踏切制御通信の通信周期を変更することで、踏切の安全を確保しつつ、中央装置と踏切制御装置との踏切制御通信の頻度を適応的に変更することができる。その結果、例えば、中央装置が集中制御することができる踏切制御装置の数を増やすことが可能となる。また、踏切制御通信の頻度の低減は、無線通信に要するコストの削減にもつながる。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、
前記判定手段は、前記設定進路情報に基づき、当該列車の設定進路上に前記踏切制御装置の制御対象の踏切があること、を前記列車接近条件として前記判定を行う、
中央装置である。
【0010】
列車の設定進路上にある踏切とは当該列車が通過可能な踏切である。また、進路が設定されていることは、当該列車に当該進路の走行が許可されたことを意味し、当該列車が当該進路を進行しつつあることを意味する。このため、第2の発明のように、列車の設定進路上に踏切制御装置の制御対象の踏切があること、を列車接近条件とすることで、踏切制御通信の通信周期を変更すべき踏切制御装置を適切に判定することができる。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記通信周期制御手段は、前記判定手段により満たすと判定された場合に、前記通信周期を所定の高頻度通信周期とする、
中央装置である。
【0012】
列車接近条件を満たす場合とは、その踏切が間もなく警報を開始する場合である。このため、第3の発明のように、列車接近条件を満たす場合に踏切制御通信の通信周期を高頻度通信周期として通信頻度を高くすることで、踏切の安全を確保しつつ、踏切制御通信の頻度を低減することができる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、
前記判定手段は、前記設定進路情報に基づき、当該列車の設定進路上に前記踏切制御装置の制御対象の踏切があり、且つ、前記走行位置情報に基づき、当該踏切を含む所定の警報範囲を少なくとも含む所定の高頻度通信範囲に当該列車が位置すること、を前記列車接近条件として前記判定を行う、
中央装置である。
【0014】
列車の設定進路が長い場合、進路の着点付近の踏切については、進路設定から警報を開始するまである程度の時間を要する。このため、第4の発明のように、列車の設定進路上に制御対象の踏切があり、且つ、当該踏切を含む所定の警報範囲を少なくとも含む所定の高頻度通信範囲に当該列車が位置すること、を列車接近条件とすることで、踏切の安全を確保しつつ、踏切制御通信の通信頻度を適応的に高頻度通信周期に変更することが可能となる。
【0015】
第5の発明は、第4の発明において、
前記判定手段は、前記走行位置情報及び当該列車の最高速度に基づいて前記高頻度通信範囲に当該列車が到達する到達予想時刻を予測し、当該到達予想時刻の到来をもって、前記高頻度通信範囲に当該列車が位置すると判定する、
中央装置である。
【0016】
第5の発明によれば、高頻度通信範囲に列車が位置することを、到達予想時刻の到来をもって判定することができる。
【0017】
第6の発明は、第3~第5の何れかの発明において、
前記判定手段は、各列車について前記列車接近条件を満たすか否かを判定し、
前記通信周期制御手段は、1台以上の前記列車について前記列車接近条件を満たすと判定した場合には前記通信周期を前記高頻度通信周期とする、
中央装置である。
【0018】
例えば複線の線路では、上り方向の列車の進路と下り方向の列車の進路とは互いに競合しないため、別々に設定される。上り方向の列車の進路と下り方向の列車の進路とが、同じ踏切を通過する進路として同時に設定されることがあるのである。このため、第6の発明のように、1台以上の列車について列車接近条件を満たす場合に、その踏切制御装置との踏切制御通信の通信周期を高頻度通信周期とすることで、踏切の安全を確保しつつ、踏切制御通信の頻度を適応的に変更することができる。
【0019】
第7の発明は、第3~第6の何れかの発明において、
前記走行位置情報に基づいて、当該列車が当該踏切を通過したことを示す所定の警報終止条件を満たすか否かを判定する警報終止条件判定手段(例えば、図7図15の警報終止条件判定部210)、
を更に備え、
前記通信周期制御手段は、前記警報終止条件判定手段の判定結果に基づいて、前記高頻度通信周期としていた前記通信周期を、前記高頻度通信周期より周期の長い低頻度通信周期に変更する、
中央装置である。
【0020】
第7の発明によれば、列車が踏切を通過して警報を終止してから次の列車によって列車接近条件を満たすまでの間は、踏切制御通信の通信周期を低頻度通信周期として通信頻度を低くすることができる。これにより、踏切の安全を確保しつつ、中央装置と踏切制御装置との踏切制御通信の頻度を適応的に変更することができる。
【0021】
第8の発明は、第7の発明において、
当該踏切を通過する当該列車の続行列車について前記列車接近条件を満たすと予測される時点までの到来予測時間を予測する予測手段、
を更に備え、
前記通信周期制御手段は、前記警報終止条件判定手段により満たすと判定され、且つ、前記到来予測時間が所定の短時間条件を満たす場合には、前記高頻度通信周期としていた前記通信周期を維持する、
中央装置である。
【0022】
例えば列車の走行間隔が比較的短い場合には、踏切を先行列車が通過してから続行列車が接近して踏切接近条件を満たすまでの時間が短い。この短い時間についても踏切制御通信の通信周期を低頻度通信周期とすることは通信周期の頻繁な変更となり、中央装置の処理負荷の増加につながりかねない。このため、第8の発明のように、警報終止条件を満たし、且つ、続行列車について列車接近条件を満たすと予測される時点までの到来予測時間が短時間条件を満たす場合には、高頻度通信周期としていた通信周期を維持することで、踏切制御通信の通信周期の頻繁な変更を回避し、中央装置の処理負荷の増加を抑制することが可能となる。
【0023】
第9の発明は、第1~第8の何れかの発明において、
前記通信周期制御手段は、前記踏切制御装置に係る前記踏切制御通信の通信周期と、前記踏切制御装置の制御対象の踏切に対して所定の近接条件を満たす近接踏切を制御対象とする近接踏切制御装置に係る前記踏切制御通信の通信周期とを、併せて変更する、
中央装置である。
【0024】
近接する踏切では、列車接近条件を満たすタイミングが近くなる。このため、第9の発明のように、ある踏切制御装置との踏切制御通信の通信周期の変更と併せて、近接する他の踏切の踏切制御装置との踏切制御通信の通信周期を変更することで、中央装置の処理負荷の軽減が可能となる。例えば、近接する複数の踏切を1つのグループとし、グループ単位で列車接近条件を満たすかを判定して踏切制御通信の通信周期を変更する。この場合、踏切毎に列車接近条件を満たすかを判定して踏切制御通信の通信周期を頻繁に変更する場合に比較して、通信周期の頻繁な切り替えに伴う中央装置の処理負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】踏切制御システムの構成例。
図2】踏切制御に係る警報範囲の説明図。
図3】第1実施例における踏切制御通信の通信周期の変更の説明図。
図4】第1実施例における踏切制御通信の通信周期の変更の説明図。
図5】第1実施例における踏切制御通信の通信周期の変更の説明図。
図6】第1実施例における踏切制御通信の通信周期の変更の説明図。
図7】第1実施例における中央装置の機能構成例。
図8】第1実施例における踏切管理情報の一例。
図9】第1実施例における通信制御処理のフローチャート。
図10】第2実施例における高頻度通信範囲の説明図。
図11】第2実施例における踏切制御通信の通信周期の変更の説明図。
図12】第2実施例における踏切制御通信の通信周期の変更の説明図。
図13】第2実施例における踏切制御通信の通信周期の変更の説明図。
図14】第2実施例における踏切制御通信の通信周期の変更の説明図。
図15】第2実施例における中央装置の機能構成例。
図16】複数の各列車について列車接近条件を判定する例。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものではない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0027】
[システム構成]
図1は、本実施形態の踏切制御システム1の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態の踏切制御システム1は、例えば中央指令室に設置される中央装置3と、列車7に搭載される車上装置9と、踏切11に設置される踏切制御装置13とを備える。中央装置3と、車上装置9及び踏切制御装置13とは、無線通信網Nを介した無線通信が可能となっている。無線通信網Nは、通信事業者が運営する汎用無線通信網であり、例えば携帯無線通信網である。なお、図1では、それぞれ1台の車上装置9及び踏切制御装置13を図示しているが、それぞれ複数台の車上装置9及び踏切制御装置13を踏切制御システム1が備えるとしてもよいのは勿論である。
【0028】
中央装置3は、車上装置9と無線を介した通信を行って、列車7の走行位置の情報である走行位置情報を取得する。そして、走行位置情報に基づく列車7の走行位置等により定められた制御条件に従って、警報の開始や終止等の警報制御の指示を踏切制御装置13へ送信する踏切制御通信を周期的に行って、各踏切の警報を集中制御する。警報の開始タイミングは、例えば、a)走行位置情報に基づく列車7の走行位置及び当該列車7の種別や路線に応じて定められる最高速度から予測される、踏切11に定められた警報開始点への到達時刻である警報開始予定時刻となったときや、あるいは、b)列車7の走行位置が踏切11に定められた警報開始点を通過したとき、とすることができる。警報開始点を、後述する高頻度通信範囲内に定めれば(例えば、高頻度通信範囲の始点や、高頻度通信範囲内の警報範囲の始点など)、警報開始点は、高頻度通信範囲に列車が到達したことを示す位置となる。その場合、警報開始点は、高頻度通信範囲に当該列車が到達する予想時刻である到達予想時刻ということができる。また、警報の終止タイミングは、列車7の走行位置が踏切11に定められた警報終止点を通過したとき、とすることができる。なお、走行位置情報は、同じく中央指令室等に設置された運行管理装置等の他の装置から取得してもよい。
【0029】
踏切制御装置13は、制御対象の踏切11の近傍の器具箱内に設置され、踏切警報機や踏切遮断機等の踏切保安設備15を制御する。踏切制御装置13は、無線通信機能を有しており、踏切制御通信による中央装置3からの警報制御の指示に従って、踏切警報機の鳴動の開始や終了、踏切遮断機の降下や上昇といった踏切11の警報制御を行う。
【0030】
また、中央装置3は、列車7の進路を制御する進路制御装置5から列車7の設定進路情報を取得する。そして、取得した設定進路情報及び/又は走行位置情報に基づいて、踏切制御装置13の制御対象の踏切11に対して、列車7が接近していることを示す列車接近条件を満たすかを判定し、判定結果に基づいて、踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を変更する。以下、列車接近条件についての2つの実施例を説明する。
【0031】
[第1実施例]
第1実施例では、列車7の設定進路上に踏切制御装置13の制御対象の踏切11があること、を列車接近条件とする。
【0032】
中央装置3は、列車接近条件を満たすと判定した場合に、踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を、高頻度通信周期(例えば、1秒)に変更する。列車7の設定進路は、設定進路情報に基づいて判断できる。また、列車7が踏切11を通過したことを示す警報終止条件を満たすかを判定し、満たすと判定した場合に、踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を、高頻度通信周期より周期の長い低頻度通信周期(例えば、60秒)に変更する。
【0033】
警報終止条件を満たすかは、走行位置情報に基づいて判定できる。つまり、図2に示すように、踏切11には、踏切11の手前の警報開始点から踏切11を通過した先の警報終止点までの範囲が、警報を行う警報範囲として定められる。中央装置3は、走行位置情報に基づく列車7が警報終止点を通過したことによって、警報終止条件を満たすと判定する。したがって、第1実施例における高頻度通信範囲は、警報範囲を含む範囲であると言える。
【0034】
図3図6は、第1実施例における中央装置3Aと踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期の変更を説明する図である。図3図6では、列車7が単線区間であるA駅~B駅間を走行する例を示している。また、A駅~B駅間には、3箇所の踏切11a~11cが設けられ、踏切11a~11cそれぞれを制御対象とする3台の踏切制御装置13(不図示)が設置されている。
【0035】
先ず、図3の状態は、列車7がA駅(発駅)に停車中であり、進路は設定されていない(未設定)。この状態では、列車7の進路が設定されていないため、踏切11a~11cは、何れも列車接近条件を満たしておらず、踏切11a~11cそれぞれの踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期は低頻度通信周期である。
【0036】
次いで、図4に示すように、列車7の進路としてA駅の出発進路が設定されると、踏切11a~11cは、何れも設定進路上にあるため、列車接近条件を満たす。図4の網掛け部分が列車接近条件を満たす範囲に相当する。従って、踏切11a~11cの踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期が低頻度通信周期から高頻度通信周期に変更される。
【0037】
続いて、図5に示すように、列車7がA駅を出発して設定進路の走行を開始すると、A駅の出発信号機が赤現示となる。そして、列車7が1つ目の踏切11aを通過し、警報終止条件を満たして踏切11aの警報が終了すると、踏切11aの踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期が高頻度通信周期から低頻度通信周期に変更される。
【0038】
次いで、図6に示すように、列車7が更に走行し、2つ目の踏切11bを通過し、警報終止条件を満たして踏切11bの警報が終了すると、踏切11bの踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期が高頻度通信周期から低頻度通信周期に変更される。図示を省略するが、3つ目の踏切11cについても同様である。
【0039】
図7は、第1実施例における中央装置3Aの機能構成を示す図であり、第1実施例に係る機能部を示している。図7によれば、中央装置3Aは、操作部102と、表示部104と、通信部106と、処理部200と、記憶部300とを備え、一種のコンピュータシステムとして構成される。
【0040】
操作部102は、例えばボタンスイッチやタッチパネル、キーボード等の入力装置で実現され、なされた操作に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やタッチパネル等の表示装置で実現され、処理部200からの表示信号に応じた各種表示を行う。通信部106は、有線又は無線の通信装置で実現され、無線通信網Nを介して、踏切制御装置13や車上装置9といった外部装置との無線を介した通信を行う。
【0041】
処理部200は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置で実現され、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、中央装置3Aを構成する各部への指示やデータ転送を行い、中央装置3Aの全体制御を行う。また、処理部200は、本実施形態に係る機能部として、走行位置情報取得部202と、設定進路情報取得部204と、踏切制御部206と、列車接近条件判定部208Aと、警報終止条件判定部210と、通信周期制御部212とを有する。但し、これらの機能部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によってそれぞれ独立した演算回路として構成することも可能である。
【0042】
走行位置情報取得部202は、列車7の走行位置に係る走行位置情報302を取得する。走行位置情報302は、列車7の車上装置9と無線を介した通信を行うことで取得するが、在線情報を管理する運行管理装置等の他の装置から取得するようにしてもよい。取得した走行位置情報302は、記憶部300に随時更新記憶される。
【0043】
設定進路情報取得部204は、列車7の進路を制御する進路制御装置5から、列車7の設定進路に係る設定進路情報304を取得する。取得した設定進路情報304は、記憶部300に随時更新記憶される。
【0044】
踏切制御部206は、踏切制御装置13との間で無線を介した踏切制御通信を周期的に行う。具体的には、踏切制御部206は、警報の開始タイミングの指示として、走行位置情報302に基づく列車7の走行位置、及び、当該列車7の種別や路線に応じて定められる最高速度に基づき、踏切11に定められた警報開始点への到達時刻を予測し、予測した時刻を警報開始予定時刻として当該踏切11を制御対象とする踏切制御装置13へ送信する。この送信が踏切制御通信である。あるいは、警報の開始タイミングの指示として、走行位置情報302に基づく列車7の走行位置が踏切11に定められた警報開始点を通過して警報範囲に進入したことを、踏切制御装置13へ送信するようにしてもよい。この送信も踏切制御通信である。その後、警報の終止タイミングの指示として、走行位置情報302に基づく列車7の走行位置が警報終止点を通過して警報範囲から進出したこととを、踏切制御装置13へ送信する(図2参照)。この送信も踏切制御通信である。踏切11の警報範囲(警報開始点や警報終止点)は、踏切管理情報306として定められている。
【0045】
列車接近条件判定部208Aは、1)列車7の進路を制御する進路制御装置5から取得可能な当該列車7に係る設定進路情報304、及び/又は、2)当該列車7の走行位置情報302、に基づいて、踏切制御装置13の制御対象の踏切11に対して当該列車7が接近していることを示す所定の列車接近条件を満たすか否かを判定する。
【0046】
第1実施例では、列車接近条件判定部208Aは、設定進路情報304に基づき、当該列車7の設定進路上に踏切制御装置13の制御対象の踏切11があること、を列車接近条件として判定を行う。具体的には、設定進路情報304に基づく列車7の設定進路上にある踏切11を、列車接近条件を満たすと判定する。踏切11の設置位置は、踏切管理情報306として定められている。第1実施例における列車接近条件は、列車接近条件情報308Aとして定められている。
【0047】
警報終止条件判定部210は、走行位置情報302に基づいて、当該列車7が当該踏切11を通過したことを示す所定の警報終止条件を満たすか否かを判定する。具体的には、走行位置情報302に基づく列車7の走行位置が踏切11に定められた警報終止点を通過したことを、警報終止条件を満たしたと判定する(図2参照)。
【0048】
通信周期制御部212は、列車接近条件判定部208Aの判定結果に基づいて、踏切制御通信の通信周期を変更する。例えば、列車接近条件判定部208Aにより列車接近条件を満たすと判定された場合に、通信周期を所定の高頻度通信周期とする。また、警報終止条件判定部210の判定結果に基づいて、高頻度通信周期としていた通信周期を、高頻度通信周期より周期の長い低頻度通信周期に変更する。
【0049】
具体的には、列車接近条件を満たすと判定された踏切11の踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を、高頻度通信周期に変更する。また、警報終止条件を満たすと判定された踏切11の踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を、低頻度通信周期に変更する(図3図6参照)。
【0050】
記憶部300は、ハードディスクやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置で実現され、処理部200が中央装置3を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部300は処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が各種プログラムに従って実行した演算結果や、操作部102や通信部106を介した入力データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部300には、走行位置情報302と、設定進路情報304と、踏切管理情報306と、列車接近条件情報308Aとが記憶される。
【0051】
図8は、踏切管理情報306の一例を示す図である。図8に示すように、踏切管理情報306は、踏切11毎に生成され、踏切IDに対応付けて、設置位置と、警報開始点及び警報終止点を含む警報範囲と、警報開始予定時刻と、当該踏切11を制御対象とする踏切制御装置13の踏切制御装置IDと、当該踏切制御装置13との踏切制御通信の現在の通信周期とを格納している。警報開始予定時刻は、列車7の走行位置、及び、当該列車7の種別や路線に応じて定められる最高速度に基づいて予測された、当該踏切11に定められた警報開始点への到達時刻である。
【0052】
図9は、第1実施例における中央装置3Aが行う通信制御処理の流れを説明するフローチャートである。
【0053】
先ず、列車接近条件判定部208Aが、設定進路情報304に基づき、列車接近条件を満たす踏切11を判定する(ステップS1)。第1実施例では、列車7の設定進路上に踏切制御装置13の制御対象の踏切11があること、が列車接近条件であるので、列車7の設定進路上にある踏切11を、列車接近条件を満たすと判定する。そして、通信周期制御部212が、列車接近条件を満たすと判定された踏切11を制御対象とする踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を、高頻度通信周期に変更する(ステップS3)。
【0054】
また、警報終止条件判定部210が、走行位置情報302に基づき、警報終止条件を満たす踏切11を判定する(ステップS5)。そして、通信周期制御部212が、警報終止条件を満たすと判定された踏切11を制御対象とする踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を、低頻度通信周期に変更する(ステップS7)。以上の処理を行うと、ステップS1に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0055】
[第2実施例]
次に、第2実施例を説明する。なお、第2実施例において、上述の第1実施例と同一要素については同一符号を付して詳細な説明を省略又は簡略する。第2実施例では、列車7の設定進路上に踏切制御装置13の制御対象の踏切11があり、且つ、当該踏切11を含む所定の警報範囲を少なくとも含む所定の高頻度通信範囲に当該列車7が位置すること、を列車接近条件とする。
【0056】
図10は、高頻度通信範囲を説明するための図である。図10に示すように、踏切11には図2に示される警報範囲と同様の警報範囲が定められる。高頻度通信範囲は、踏切11の警報を開始する前に踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を高頻度通信周期に変更するために、この踏切11の警報範囲を含む範囲として定められる。高頻度通信範囲は、踏切11を基準とした範囲である。第2実施例では、高頻度通信範囲内に列車7が位置するか否かを判定するために、列車7の走行位置を基準とした当該列車7の前方の所定距離の範囲である内方所定距離を定める。そして、踏切11が、列車7の設定進路上にあり、且つ、当該列車7の内方所定距離内にあること、を判定することで、当該踏切11が列車接近条件を満たすか否かを判定する。列車7と踏切11との位置関係は相対的なものであるため、列車7を基準として判定する方法ではなく、踏切11を基準として判定してもよい。例えば、踏切11それぞれについてその高頻度通信範囲内に列車7が位置するか否かを判定するようにしてもよい。しかし、第2実施例では、列車7の設定進路上にある踏切11のうち、設定進路に沿って列車7の内方所定距離内にある踏切11を抽出することで、列車接近条件を満たす踏切11を判定することとする。
【0057】
中央装置3Bは、第1実施例と同様に、列車接近条件を満たすと判定した場合に、踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を、高頻度通信周期(例えば、1秒)に変更する。また、列車7が踏切11を通過したことを示す警報終止条件を満たすかを判定し、満たすと判定した場合に、踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を、高頻度通信周期より周期の長い低頻度通信周期(例えば、60秒)に変更する。
【0058】
図11図14は、第2実施例における中央装置3Bと踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期の変更を説明する図である。第1実施例(図3図6参照)と同様に、列車7が単線区間であるA駅~B駅間を走行する例を示している。また、A駅~B駅間には、3箇所の踏切11a~11cが設けられ、踏切11a~11cそれぞれには、当該踏切11を制御対象とする踏切制御装置13(不図示)が設置されている。
【0059】
先ず、図11の状態は、列車7がA駅(発駅)に停車中であり、進路は設定されていない(未設定)。この状態では、列車7の進路が設定されていないため、踏切11a~11cは、何れも列車接近条件を満たしておらず、踏切11a~11cそれぞれの踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期は低頻度通信周期である。
【0060】
次いで、図12に示すように、列車7の進路としてA駅の出発進路が設定されると、設定進路上にある踏切11a~11cのうち、列車7の内方所定距離内にある踏切11a,11bが列車接近条件を満たす。図12の網掛け部分が内方所定距離に相当する範囲である。従って、踏切11a,11bの踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期が低頻度通信周期から高頻度通信周期に変更される。踏切11cは列車7の内方所定距離外にあるので列車接近条件を満たさず、踏切11cの踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期は低頻度通信周期のままである。
【0061】
続いて、図13に示すように、列車7がA駅を出発して設定進路の走行を開始すると、A駅の出発信号機は赤現示となる。また、列車7の走行に伴って内方所定距離が前方に移動することになり、踏切11cが、列車7の内方所定距離内となって列車接近条件を満たすと、踏切11cの踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期が低頻度通信周期から高頻度通信周期に変更される。
【0062】
そして、図14に示すように、列車7が1つ目の踏切11aを通過し、警報終止条件を満たして踏切11aの警報が終了すると、踏切11aの踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期が高頻度通信周期から低頻度通信周期に変更される。図示を省略するが、踏切11b,11cについても同様である。
【0063】
図15は、第2実施例における中央装置3Bの機能構成を示す図であり、第2実施例に係る機能部を示している。第2実施例における中央装置3Bの機能構成は、第1実施例における中央装置3Aの機能構成(図7参照)とほぼ同様であり、第1実施例と異なる機能部について説明する。
【0064】
列車接近条件判定部208Bは、第2実施例では、設定進路情報304に基づき、当該列車7の設定進路上に踏切制御装置13の制御対象の踏切11があり、且つ、走行位置情報302に基づき、当該踏切11を含む所定の警報範囲を少なくとも含む所定の高頻度通信範囲に当該列車7が位置すること、を列車接近条件として判定を行う。
【0065】
具体的には、設定進路情報304に基づく列車7の設定進路上にある踏切11のうち、列車7の内方所定距離内の踏切11を、列車接近条件を満たすと判定する。第2実施例における列車接近条件は、列車接近条件情報308Bとして定められており、列車7の内方所定距離は、この列車接近条件情報308Bに含まれている。列車7の内方所定距離は、全ての列車7について共通としてもよいし、列車7の種別や路線に応じて定めるようにしてもよい。
【0066】
第2実施例における中央装置3Bが行う通信制御処理は、第1実施例における中央装置3Aが行う通信制御処理(図9参照)とほぼ同様である。第1実施例と異なるステップは、ステップS1において、列車接近条件判定部208Bが、列車接近条件情報308Bで定められる列車接近条件を満たす踏切を判定する、ことである、
【0067】
[作用効果]
以上2つの実施例を説明したが、本実施形態によれば、中央装置3と踏切制御装置13との間で踏切制御のために行う無線通信である踏切制御通信の頻度を変更することができる。つまり、列車7が接近していることを示す列車接近条件を満たす場合とは、間もなく踏切11の警報を開始する場合であり、警報の開始タイミングを制御するために高頻度の通信を行う必要がある。このため、列車接近条件を満たす場合には踏切制御通信の通信周期を短くして通信頻度を高くし、列車接近条件を満たさない場合には踏切制御通信の通信周期を長くして通信頻度を低くする制御を行う。踏切11に列車7が接近しているか否か、つまり、間もなく警報を開始するか否かに応じて踏切制御通信の通信周期を変更することで、踏切11の安全を確保しつつ、中央装置3と踏切制御装置13との踏切制御通信の頻度を適応的に変更することができる。その結果、例えば、中央装置3が集中制御することができる踏切制御装置13の数を増やすことが可能となる。また、踏切制御通信の頻度の低減は、無線通信に要するコストの削減にもつながる。
【0068】
第1実施例では、列車7の設定進路上に踏切制御装置13の制御対象の踏切11があること、を列車接近条件としている。進路が設定されていることは、当該列車に当該進路の走行が許可されたことを意味し、当該列車が当該進路を進行しつつあることを意味する。列車7の設定進路上にある踏切11とは当該列車7が通過可能な踏切11であるから、踏切制御通信の通信周期を変更すべき踏切制御装置13を適切に判定することができる。
【0069】
また、第2実施例では、列車7の設定進路上に制御対象の踏切11があり、且つ、当該踏切11を含む所定の警報範囲を少なくとも含む所定の高頻度通信範囲に当該列車7が位置すること、を列車接近条件としている。列車7の設定進路が長い場合、進路の着点付近の踏切11については、進路設定から警報を開始するまである程度の時間を要する。このような場合にも適応的な踏切制御通信の頻度変更を実現することができる。
【0070】
[変形例]
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0071】
(A)第2実施例の列車接近条件
第2実施例では、列車7の設定進路上に踏切制御装置13の制御対象の踏切11があり、且つ、当該踏切11を含む所定の警報範囲を少なくとも含む所定の高頻度通信範囲に当該列車7が位置すること、を列車接近条件とした。この“高頻度通信範囲に当該列車7が位置する”ことを“走行位置情報及び当該列車7の最高速度に基づいて高頻度通信範囲に当該列車7が到達する到達予想時刻を予測し、当該到達予想時刻の到来をもって判定する”こととしてもよい。
【0072】
(B)複線
各列車7について列車接近条件を満たすか否かを判定し、1台以上の列車7について列車接近条件を満たすと判定した場合には、踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を高頻度通信周期とする、ようにしてもよい。例えば複線の線路では、上り方向の列車7の進路と、下り方向の列車7の進路とは互いに競合しないため、別々に設定される。上り方向の列車7の進路と下り方向の列車7の進路とが、同じ踏切11を通過する進路として同時に設定されることがある。
【0073】
図16の例では、上り列車7aの設定進路上には、3つの踏切11d~11fがあり、下り列車7bの設定進路上には、2つの踏切11d,11eがある。第1実施例や第2実施例における列車接近条件(列車7の設定進路上に踏切制御装置13の制御対象の踏切11があること)とすると、踏切11d,11eについては、2台の列車7a,7bについて列車接近条件を満たし、踏切11fについては、1台の列車7aについて列車接近条件を満たしている。従って、踏切11d~11fの全てについて、踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期が高頻度通信周期に変更される。第2実施例の列車接近条件とした場合も同様に適用することができる。
【0074】
(C)続行列車との間隔
また、中央装置3A,3Bは、踏切11を通過する列車7の続行列車について列車接近条件を満たすと予測される時点までの到来予測時間を予測し、警報終止条件を満たすと判定され、且つ、到来予測時間が所定の短時間条件を満たす場合には、高頻度通信周期としていた当該踏切11の踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を維持する、ようにしてもよい。続行列車が列車接近条件を満たすと予測される時点とは、例えば、続行列車の進路が設定されると予測される時点(第1実施例の場合)や、続行列車の進路が設定された後に、続行列車の列車位置や最高速度等から求められる当該続行列車の内方所定距離内に当該踏切11があると予測される時点(第2実施例の場合)である。予測そのものは、過去1ヶ月間の、同じ列車番号の列車に関する進路設定を行った時刻の記録や、内方所定距離に当該踏切11が位置した時刻の記録に基づいて当該時点を予測するなど、適宜従来技術を適用して実現することができる。
【0075】
(D)近接する踏切のグループ化
また、踏切制御装置13に係る踏切制御通信の通信周期と、踏切制御装置13の制御対象の踏切11に対して所定の近接条件を満たす近接踏切を制御対象とする近接踏切制御装置に係る踏切制御通信の通信周期とを、併せて変更する、ようにしてもよい。例えば、設置位置が近接する複数の踏切11を1つのグループとし、グループ単位で列車接近条件を満たすかを判定して踏切制御通信の通信周期を変更する。列車接近条件や警報終止条件を満たすかの判定は、グループに含まれる1つの踏切11を代表として判定してもよいし、列車接近条件については列車7から見て最も近い(手前の)踏切11について判定し、警報終止条件については列車7から見て最も遠い(奥の)踏切11について判定する、ようにしてもよい。
【0076】
(E)踏切制御通信の通信周期
また、踏切制御装置13に係る踏切制御通信の通信周期は、高頻度通信周期及び低頻度通信周期の2段階に限定されることはなく、3段階以上としても良い。例えば、高頻度通信周期及び低頻度通信周期に、高頻度通信周期よりは長いが低頻度通信周期よりも短い周期の中頻度通信周期を加えた3段階とすることができる。
【0077】
この例を第2実施例に適用した場合、列車接近条件を満たす踏切11の踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を高頻度通信周期とするのは同じであるが、間もなく列車接近条件を満たすことになるであろう踏切11の踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を中頻度通信周期とすることができる。具体的には、図12に示したように列車7の進路としてA駅の出発進路が設定されると、設定進路上にある踏切11a~11cのうち、列車7の内方所定距離内にある踏切11a,11bについては、列車接近条件を満たすから、踏切11a,11bの踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を低頻度通信から高頻度通信周期に変更する。列車7の内方所定距離外にある踏切11cについては、現時点では列車接近条件を満たしていないが、列車7の進行によって間もなく内方所定距離内に進入して列車接近条件を満たすことになるから、踏切11cの踏切制御装置13との踏切制御通信の通信周期を低頻度通信から中頻度通信周期に変更する、といったことができる。
【符号の説明】
【0078】
1…踏切制御システム
3A,3B…中央装置
200…処理部
202…走行位置情報取得部
204…設定進路情報取得部
206…踏切制御部
208A,208B…列車接近条件判定部
210…警報終止条件判定部
212…通信周期制御部
300…記憶部
302…走行位置情報
304…設定進路情報
306…踏切管理情報
308A,308B…列車接近条件情報
5…進路制御装置
7…列車
9…車上装置
11…踏切
13…踏切制御装置
15…踏切保安設備
N…無線通信網
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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