(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050801
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】自着性粘着テープロール体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230404BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230404BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/04
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161091
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】小出 真輝
(72)【発明者】
【氏名】角坂 実保
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AB01
4J004CA04
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB01
4J004EA01
4J004EA06
4J004FA08
4J040CA081
4J040CA111
4J040DB051
4J040DM011
4J040HA196
4J040HA306
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA42
4J040LA03
4J040NA06
4J040PA23
(57)【要約】
【課題】 高い自着結束性、低いタック、低い差し込み抵抗を兼ね備える自着性粘着テープロール体を提供することを課題とする。
【解決手段】 テープ状基材と、テープ状基材の片面に直接又は他の層を介して設けられた粘着剤層と、を有する粘着テープ部材をロール状に巻回した自着性粘着テープロール体であって、前記粘着剤層が充填剤を含み、前記充填剤の全量を基準として、粒子径45μm以上の充填剤が0.5質量%である自着性粘着テープロール体によって課題を解決する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ状基材と、テープ状基材の片面に直接又は他の層を介して設けられた粘着剤層と、を有する粘着テープ部材をロール状に巻回した自着性粘着テープロール体であって、
前記粘着剤層が充填剤を含み、
前記充填剤の全量を基準として、粒子径45μm以上の充填剤が0.5質量%以上である
ことを特徴とする、自着性粘着テープロール体。
【請求項2】
前記充填剤の平均粒子径が、0.1~100μmである、請求項1記載の自着性粘着テープロール体。
【請求項3】
前記充填剤が、シリカ粒子及び炭酸カルシウム粒子を含む、請求項1又は2記載の自着性粘着テープロール体。
【請求項4】
前記粘着剤層の塗布量が25~35g/m2である、請求項1~3のいずれかに記載の自着性粘着テープロール体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自着性粘着テープロール体に関する。
【背景技術】
【0002】
自着性粘着テープは、通常の粘着テープと同様に粘着剤層と基材層とを有する粘着テープであり、例えば、生野菜類、生花類、書類、新聞、雑誌等の各種物品を結束することに特化した粘着テープである(例えば、特許文献1等)。
【0003】
自着性粘着テープの使用方法は、通常、以下の通りである。自着性粘着テープの自着面(粘着剤層面)が結束する物品(被結束物)を向くように自着性粘着テープで被結束物の外周を覆い、その後粘着テープの自着面同士を合掌貼りすることで、被結束物の結束を行う。
【0004】
自着性粘着テープは、被結束物への糊残り等の影響を小さくし、且つ、十分な結束性を達成するために、粘着剤面同士の粘着力(自着力)が高く、タック性が低い、という粘着特性を有することが求められる。
【0005】
また、自着性粘着テープは、通常、長尺の自着性粘着テープを巻き取り形成された自着性粘着テープロール体として販売されている。更に、このような自着性粘着テープロール体の使用を補助するための専用の器具も検討されている(例えば、特許文献2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-161962号公報
【特許文献2】特許第6226880号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自着性粘着テープにおいては、対象とする被結束物の種類によって必要とする自着結束性(自着力及び自着保持力)が異なることから、様々な用途に対応するためには、より低いタック性とより高い自着結束性の両方を達成する必要がある。
【0008】
また、特許文献2等で開示された器具を使用する場合、被結束物へ差し込む際の抵抗(差し込み抵抗)をより低くすることが求められる。
【0009】
そこで本発明は、高い自着結束性、低いタック、低い差し込み抵抗を兼ね備える自着性粘着テープロール体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、自着性粘着テープに含まれる粒子を特定のものとすることで、上記課題を解決可能なことを見出した。即ち、本発明は以下の通りである。
【0011】
本発明は、
テープ状基材と、テープ状基材の片面に直接又は他の層を介して設けられた粘着剤層と、を有する粘着テープ部材をロール状に巻回した自着性粘着テープロール体であって、
前記粘着剤層が充填剤を含み、
前記充填剤の全量を基準として、粒子径45μm以上の充填剤が0.5質量%以上である
ことを特徴とする、自着性粘着テープロール体である。
前記充填剤の平均粒子径が、0.1~100μmであることが好ましい。
前記充填剤が、シリカ粒子及び炭酸カルシウム粒子を含むことが好ましい。
前記粘着剤層の塗布量が25~35g/m2であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高い自着結束性、低いタック、低い差し込み抵抗を兼ね備える自着性粘着テープロール体を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る自着性粘着テープロール体100の概念側面図を示す。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る粘着テープ部材110の概念側面図を示す。
【
図3】
図3は、本実施例に係る自着保持力の試験方法の概念図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、テープ基材をロール状に巻回した自着性粘着テープロール体であり、特に植物誘引用テープロール体として好適に使用される。
【0015】
以下、本発明に係る自着性粘着テープロール体100の、構成、製造方法、用途について説明する。以下において、上限値と下限値が別々に記載されている場合、これらを自由に組み合わせた全ての数値範囲が実質的に記載されているものとする。
【0016】
<<<<自着性粘着テープロール体100>>>>
自着性粘着テープロール体100は、粘着テープ部材110を、軸芯120を芯としてロール状に巻回して形成されている(
図1)。
【0017】
自着性粘着テープロール体100において、ロール径や粘着テープ部材110の巻き数等は適宜変更可能である。
【0018】
軸芯120の材料及び形状は、特に限定されず、自着性粘着テープロール体100の用途等に応じて適宜変更可能である。更には、自着性粘着テープロール体100は、軸芯120を有さないロール体(いわゆる芯無しタイプ)であってもよい。
【0019】
以下、粘着テープ部材110について詳述する。
【0020】
<<<粘着テープ部材110>>>
粘着テープ部材110は、テープ基材111と、テープ基材111の片面に設けられた粘着剤層114と、を有する積層体である。
【0021】
更に、
図2に示されるように、テープ基材111と粘着剤層114との間には、別の層が介在されていてもよい。この別の層として、インク層112及びプライマー層113であることが好ましい。より詳細には、粘着テープ部材110は、
図2に示されるように、テープ基材111と、インク層112と、プライマー層113と、粘着剤層114とがこの順番で積層された積層体であることが好ましい。
【0022】
<<テープ基材111>>
テープ基材111としては、粘着テープ部材の基材として使用される、従来公知の基材を使用可能である。テープ基材111は、例えば、フィルム、織布、不織布等とすることができる。
【0023】
ここで、テープ基材111の、粘着剤層114が設けられている面の反対側の面(
図2におけるテープ基材表面111a)には、微細凹凸構造が設けられていてもよい。
【0024】
自着性粘着テープロール体100においては、テープ基材表面111aと、粘着剤層114の表面(粘着剤層表面114a)と、が接触するように巻回されている。その結果、テープ基材表面111aに設けられた微細凹凸構造が粘着剤層表面114aに転写される。即ち、自着性粘着テープロール体100から引き出された粘着テープ部材110も、同様の微細凹凸構造を有することとなる。粘着剤層表面114aに所定の微細凹凸構造を転写させることによって、所定の成分を有する粘着剤層114の被着体への接触面積が低減され、低タック性が実現されるとともに、粘着剤層114同士が圧着された際には凹凸構造が潰れるため、粘着剤層114を形成する粘着剤由来の強い粘着力(自着性)が発揮される。
【0025】
より詳細には、テープ基材表面111aには、JIS B 0601-2013に基づく表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で0.5~5.0μm(又は0.5超5.0μm未満)の微細凹凸構造が設けられている。微細凹凸構造の粗さをこの範囲とすることにより、本発明の効果を実現することが可能である。本発明の効果をより高めるためには、JIS B 0601-2013に基づく表面粗さが、算術平均粗さ(Ra)で1.0~4.0μm(又は1.0μm超4.0μm未満)であることが好ましい。更には、JIS B 0601-2013に基づく表面粗さが、十点平均粗さ(Rz)で10~50μmであることが好ましく、十点平均粗さ(Rz)で20~40μmであることがより好ましい。この表面粗さは、より具体的には、以下の方法によって測定できる。
小坂研究所製のSurfcoder ET4000Aを用いて、以下の条件で片方の面を測定する。
測定力:30μN
Xピッチ:4.00μm
Yピッチ:4μm
Z測定倍率:10000
X送り速さ:0.5mm/sec
低域カット:0.8mm
高域カット:R+W
レベリング:最小二乗法
【0026】
微細凹凸構造は、公知の加工方法、例えば、梨地加工、サンドブラスト加工及びヘアーライン加工等によって形成することが可能であるが、緻密な凹凸構造を形成可能という点で、微細凹凸構造を梨地加工によって形成することが好ましい。
【0027】
テープ基材111の材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂等で形成した樹脂フィルム、クレープ紙、和紙、不織布等が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。また、テープ基材111は、複数の層からなる積層体であってもよい(例えば、樹脂フィルムに紙類を積層した複合基材)。更に、テープ基材111が複数の層からなる積層体である場合、粘着剤や接着剤からなる層が介在されていてもよい。
【0028】
テープ基材111の材料としては、樹脂フィルムであることが好ましい。
【0029】
テープ基材111は、酸化促進剤を含有してもよい。
【0030】
酸化促進剤としては、不飽和脂肪酸、脂肪族モノカルボン酸及びそれら塩から選択される少なくとも1種を挙げることができる。
【0031】
このように、テープ基材111が酸化促進剤を含有することにより、粘着テープ部材110で誘引された植物の収獲作業を行う際にはテープ基材111の酸化(劣化)が生じており、鋏等の用具を用いなくても、手により容易に切断可能となる。
【0032】
酸化促進剤は、テープ基材の全質量を基準として、0.03質量%以上であることが好適である。上限値は、特に限定されないが、例えば、1質量%、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%である。
【0033】
ここで、当該含有量は、植物の生育期間と対応したものとすることが好適である。具体的には、(1)植物を支柱等にテープ固定した後、植物を収穫するまでの期間、植物/支柱の固定状態を維持するのに十分な強度を維持する一方、(2)収穫のタイミングにおいては手でテープ基材が切断できる強度まで低下する、という性質をテープ基材に付与する量の酸化促進剤を添加することが好適である。例えば、トマトの場合、露地栽培では成育期間が約3~6か月である。したがって、約3か月の間、トマトの茎が支柱に固定されており、且つ、約6か月後にはテープ基材が切断できる強度まで低下するような酸化促進剤の量であることが好適である。
【0034】
テープ基材111の厚みは、特に限定されないが、例えば、50~100μm、好ましくは60~80μmとすればよい。
【0035】
また、テープ基材111は、テープ基材111の背面(テープ基材表面111a)側に、背面処理剤が適用されたものであってもよい。このような背面処理剤としては、公知慣例のものを使用可能であり、例えば、長鎖アルキル系の背面処理剤等が挙げられる。
【0036】
<<インク層112>>
インク層112は、通常、テープ基材111表面(テープ基材111の粘着剤層114側の表面)に直接着色(印字等を含む。)されることで形成された層であるが、所定の着色剤によって着色されたフィルム等で形成されていてもよい。
【0037】
<<プライマー層113>>
プライマー層113は、例えば、国際公開第2014/126158号に記載されたものとすることができる。
【0038】
<<粘着剤層114>>
粘着剤層114は、エラストマー成分と、充填剤とを含み、通常、粘着付与樹脂を更に含む。
【0039】
粘着剤層114は、必要に応じてその他の成分を含んでいてもよい。
【0040】
エラストマー成分としては、スチレン系エラストマーが好ましく使用される。以下においては、エラストマー成分がスチレン系エラストマーである形態について説明するが、エラストマー成分は、スチレン系エラストマー以外のエラストマー成分により構成されている乃至はスチレン系エラストマー以外のエラストマー成分を含んでいてもよい。
【0041】
ここで、粘着剤層114は、粘着剤の塗布量(揮発成分を除いた固形分としての、単位面積当たりの質量)が、10~50g/m2となる厚みであることが好ましく、15~45g/m2となる厚みであることがより好ましく、20g/m2超40g/m2未満となる厚みであることが更に好ましく、25~35g/m2となる厚みであることが特に好ましい。後述する充填剤を含む粘着剤層114の塗布量をこのような範囲とすることで、粘着剤層114中の厚み方向の充填剤の分布が適切なものとなり、本発明の効果をより高めることが可能となる。
【0042】
<スチレン系エラストマー>
スチレン系エラストマーとしては、特に限定されず、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレンエチレンプロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン-ブテン-スチレンブロック共重合体(SBBS)等が挙げられる。また、これらは一部が変性されていてもよい。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0043】
スチレン系エラストマーとしては、スチレン含有量が20質量%超である高スチレン含有エラストマーのみを含む形態、スチレン含有量が20質量%以下である低スチレン含有エラストマーのみを含む形態、高スチレン含有エラストマー及び低スチレン含有エラストマーを含む形態、のいずれであってもよいが、高スチレン含有エラストマー及び低スチレン含有エラストマーを含む形態であることが好ましい。
【0044】
高スチレン含有エラストマーのスチレン含有量は、20質量%超40質量%以下であることが好ましく、20質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0045】
低スチレン含有エラストマーのスチレン含有量は、12質量%~20質量%であることが好ましく、15質量%~18質量%であることがより好ましい。
【0046】
粘着剤層114中の、低スチレン含有エラストマーの含有量(El)と高スチレン含有エラストマーの含有量(Eh)との比(El/Eh)が、2.0以下であることが好ましく、1.5以下であることがより好ましく、1.0以下であることが特に好ましい。El/Ehの下限値は特に限定されないが、例えば、0.1、0.2、0.3又は0.5とすることができる。
【0047】
粘着剤層114中のスチレン系エラストマーの含有量は、20~80質量%であることが好ましく、30~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることがより好ましい。
【0048】
<充填剤>
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、亜鉛華(酸化亜鉛)、けい酸アルミニウム、シリカ、タルク、けい藻土、けい砂、軽石粉、スレート粉、雲母粉、アルミニウムゾル、アルミナホワイト、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、リトポン、硫酸カルシウム、二硫化モリブデン、グラファイト、ガラス繊維、ガラス球、単結晶チタン酸カリ、カーボン繊維、活性亜鉛華、炭酸亜鉛、酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、リサージ、鉛丹、鉛白、水酸化カルシウム、活性化水酸化カルシウム、酸化チタン、黒鉛等が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0049】
充填剤としては、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を含むことが好ましい。
【0050】
充填剤中のシリカ粒子及び炭酸カルシウムの合計の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0051】
シリカ粒子と炭酸カルシウム粒子との含有量比(シリカ粒子の含有量/炭酸カルシウム粒子の含有量)は、0.10~0.50であることが好ましく、0.15~0.40であることがより好ましい。
【0052】
充填剤全量を基準として、粒子径45μm以上の充填剤の割合が、0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましい。なお、粒子径50μm以上の充填剤の割合の上限値は特に限定されないが、例えば、25質量%、10質量%又は5質量%である。
【0053】
充填剤全量を基準として、粒子径150μm以上の充填剤の割合が、1質量%以下、0.1質量%以下又は0.01質量%以下であることが好ましい。また、充填剤全量を基準として、粒子径100μm以上の充填剤の割合が、1質量%以下、0.1質量%以下又は0.01質量%以下であることがより好ましい。
【0054】
充填剤全体の平均粒子径が、0.1μm以上、1μm以上、2μm以上又は5μm以上であることが好ましく、また、100μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下又は10μm以下とであることが好ましい。ここで、平均粒子径は、質量基準分布における中心の径(50%径)である。
【0055】
ここで、充填剤が炭酸カルシウム粒子及びシリカ粒子を含み、炭酸カルシウム粒子の平均粒子径が1~10μmであり、シリカ粒子の平均粒子径が10μm超50μm以下である形態が最も好ましい。
【0056】
平均粒子径の異なる複数の充填剤を混合することで、充填剤の粒子径の分布を調整することができる。
【0057】
本発明の効果をより高めるという点から、粘着剤層114中の充填剤の配合量は、5~30質量%であることが好ましく、7~25質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることが特に好ましい。
【0058】
充填剤としてこのような粒子を使用することで、粘着剤表面付近の凹凸が適切になり、被結束物との粘着発現低減に効果的に寄与する。また、充填剤粒子径分布を調整することで充填剤配合量を(既存品)より少なくすることが可能となり、自着性を阻害せずに、差し込み抵抗を下げることが可能になると推測される。
【0059】
<粘着付与樹脂>
粘着付与樹脂としては、特に限定されず、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等を挙げることができる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0060】
本発明の効果を高めるために、粘着付与樹脂は、脂環族飽和炭化水素系樹脂、テルペン系樹脂、及び、スチレン系樹脂のいずれか一種以上を含むことが好ましく、これらの内の2種以上を含むことがより好ましく、これらを全て含むことが更に好ましい。
【0061】
脂環族飽和炭化水素系樹脂は、軟化点が、90~140℃であることが好ましく、120~140℃であることがより好ましい。
【0062】
テルペン系樹脂は、軟化点が、80~130℃であることが好ましく、110~120℃であることがより好ましい。
【0063】
スチレン系樹脂は、軟化点が、100~140℃であることが好ましく、110~130℃であることがより好ましい。
【0064】
粘着付与樹脂全体に対する脂環族飽和炭化水素系樹脂の含有量が、30~80質量%であることが好ましく、35~70質量%であることがより好ましく、40~60質量%であることが特に好ましい。
【0065】
粘着付与樹脂全体に対するテルペン系樹脂の含有量が、10~50質量%であることが好ましく、15~45質量%であることがより好ましく、20~40質量%であることが特に好ましい。
【0066】
粘着付与樹脂全体に対するスチレン系樹脂の含有量が、1~40質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましく、10~25質量%であることが特に好ましい。
【0067】
粘着剤層114中の粘着付与樹脂の含有量は、30~70質量%であることが好ましく、40~60質量%であることがより好ましい。
【0068】
<その他の成分>
その他の成分としては、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、着色剤、軟化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、老化防止剤等が挙げられる。また、その他の成分として、スチレン系エラストマー以外の粘着成分(例えば、スチレン系エラストマー以外のゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等)を含んでいてもよい。
【0069】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄等が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0070】
(着色剤)
着色剤としては、無機系、有機系何れでもよく、これらは、目的とする発色となるように添加されればよい。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0071】
(軟化剤)
軟化剤としては、石油系軟化剤、植物系軟化剤、液状ゴム、液状粘着付与樹脂、合成可塑剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0072】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物等がある。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0073】
(老化防止剤)
老化防止剤としては、ナフチルアミン系化合物、ジフェニルアミン系化合物、p-フェニレンジアミン系化合物、その他のアミン系化合物、アミン化合物混合物、キノリン系化合物、ヒドロキノン誘導体、モノフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、トリスフェノール系化合物、ポリフェノール系化合物、チオビスフェノール系化合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用されてもよいし、2種以上を併用されてもよい。
【0074】
<<<自着性粘着テープロール体の製造方法>>>
自着性粘着テープロール体100の製造方法としては特に限定されず、公知の手法により製造可能である。自着性粘着テープロール体100の製造方法の一例を以下に述べる。
【0075】
先ず、粘着剤層114を構成する原料に、必要に応じて有機溶媒等を加えて調製された粘着液と、少なくとも片面に微細凹凸構造が設けられたテープ基材111と、を準備する。
【0076】
次に、テープ基材111の微細凹凸構造が設けられた面とは反対の面に、印刷処理、プライマー処理を順次行い、インク層112及びプライマー層113を形成する。
【0077】
次に、プライマー層113の上に、アプリケーター等を用いて粘着液を塗布する。その後、例えば100℃で3分間の乾燥を行って、プライマー層113上に粘着剤層114が設けられた粘着テープ部材110を得る。
【0078】
最後に、この粘着テープ部材110を、軸芯120の外周に沿って巻回させていき、自着性粘着テープロール体100を製造することができる。
【0079】
<<<自着性粘着テープロール体100の用途>>>
自着性粘着テープロール体100は、低いタック性、高い自着結束性、低い巻戻し性を有するため、種々の用途に使用することができる。例えば、生野菜類、生花類、書類、新聞、雑誌等の各種物品を結束するための粘着テープとして用いることができる。また、該粘着剤を布等を基材として含浸塗布、或いは両面にスプレー塗布等して乾燥、巻き取り、裁断してテープロール状にし、粘着包帯、スポーツ用固定テープ、スポーツ用滑り止めテープ等としても用いることができる。
【0080】
自着性粘着テープロール体100は、低いタック性を有するため野菜の成長を阻害しないため野菜の誘引用として好ましく使用することができる。更には、自着性粘着テープロール体100は、高い自着結束性を有するため、高荷重が求められる結束用として好ましく使用することもできる。例えば、野菜の誘引用とした中でも、キュウリやブドウ等の誘引の他に、トマト等の誘引用とすることも可能である。
【0081】
また、自着性粘着テープロール体100は、低タック性、低い差し込み抵抗を有するため、特許第6226880号等に開示された自着性粘着テープ専用の器具にセットする自着性粘着テープロール体として好ましく使用することができる。
【実施例0082】
以下に示す実施例及び比較例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下には限定されない。
【0083】
<<原料>>
<スチレン系エラストマー>
・低スチレンSIS(スチレン含有量:16質量%、日本ゼオン社製クインタック3433N)
・高スチレンSBBS(スチレン含有量:25質量%、旭化成社製アサプレンATN521)
<粘着付与樹脂>
・テルペン樹脂(ヤスハラケミカル社製:YSレジンPX1150N)
・脂環族飽和炭化水素樹脂(荒川化学工業社製:アルコンP140)
・スチレン樹脂(三井化学社製:FTR2120)
<充填剤>
・炭酸カルシウム(平均粒子径1.5μm、丸尾カルシウム社製:スーパー#1500)
・シリカ粒子1(平均粒子径13~15μm、東ソー・シリカ社製:NIPGEL BY-001)
・シリカ粒子2(平均粒子径30~40μm、東ソー・シリカ社製:Nipsil VN3#100)
<その他の成分>
・酸化防止剤(精工化学社製:ノンフレックスEBP)
【0084】
<<各実施例及び比較例に係る粘着テープロール体の製造>>
片面に微細凹凸構造(算術平均粗さ(Ra)2.9μm、十点平均粗さ(Rz)29.7μm、梨地加工面)を有する厚さ70μmのCPPフィルムを準備した。
次に、CPPフィルムの微細凹凸構造を有する面の反対側面に、インク層(着色層)、プライマー層を順次形成した。プライマー層の上に、各表に示す粘着剤を用いて、粘着剤塗布量が各表に示す数値となるように塗布して、幅11mmの粘着テープを作成した。
粘着剤層にフィルムの梨地加工面が触れるように巻取り、幅11mmの、各実施例及び比較例に係る粘着テープロール体を作成した。
【0085】
実施例1は、充填剤の全量を基準とした粒子径45μm以上の充填剤の割合が1質量%であった。
実施例2、4、5は、充填剤の全量を基準とした粒子径45μm以上の充填剤の割合が2質量%であった。
実施例3は、充填剤の全量を基準とした粒子径45μm以上の充填剤の割合が3質量%であった。
比較例1は、充填剤の全量を基準とした粒子径45μm以上の充填剤の割合が0質量%であった。
比較例2、3、5~7は、充填剤の全量を基準とした粒子径45μm以上の充填剤の割合が0.2質量%であった。
比較例4は、充填剤の全量を基準とした粒子径45μm以上の充填剤の割合が0.3質量%であった。
【0086】
実施例1、2、4、5は、粒子径100μm以上の充填剤の割合が0質量%であった。
実施例3は、粒子径100μm以上の充填剤の割合が0.1質量%であった。
【0087】
実施例1は、充填剤全体のメジアン径(質量基準)が5μmであった。
実施例2、4、5は、充填剤全体のメジアン径(質量基準)が6μmであった。
実施例3は、充填剤全体のメジアン径(質量基準)が7μmであった。
【0088】
<<評価>>
各実施例及び比較例に係る粘着テープロール体について、以下の方法に基づき、プローブタック、自着力、自着保持力、差し込み抵抗値を評価した。各評価結果を表に示す。
【0089】
<プローブタック試験>
23℃・50%RHの条件下、実施例のテープ(幅11mm)を試験片とし、ASTM D2979に準じて、プローブタック試験を行った。
具体的には、試験片をウエイトリングにたるみの無いようにはり付け、直径5mmの円柱プローブを試験片の粘着面に0.98±0.001N/cm2の荷重を接触速さ10±0.1mm/秒で、1.0±0.01秒間接触させた後、接触速さと同じ速度でプローブを粘着面から垂直方向に引き剥がすのに要する力(N/5mmφ)を測定した。
【0090】
<自着力試験>
採取した試験片(幅11mmの粘着テープ)を粘着剤面を内側として、試験片が伸びたり、気泡が入らないように粘着剤面同士を貼り合わせる。貼り合わせ長さは100mm以上とする。
次に試験片の上から、2kg圧着ローラーを用い、圧着速度毎分約300mmで一往復圧着し、20~40分間放置する。
その後、上記試験片をインストロン型引張り試験機に固定し、剥離速度300mm/minで試験片を剥離し、そのとき得られた剥離力(N/11mm)を測定した。
【0091】
<自着保持力試験>
採取した試験片(幅11mmの粘着テープ)を粘着剤面を内側として、試験片が伸びたり、気泡が入らないように粘着剤面同士を貼り合わせる。貼り合わせ長さは100mm以上とする。
次に試験片の上から、2kg圧着ローラーを用い、圧着速度毎分約300mmで一往復圧着し、20~40分間放置する。
その後、
図3に示すように、試験片の一端を固定し、他方の一端に分銅を掛ける。分銅を掛ける前には、貼り合わせ部分を約5mm引き剥がし、境界部分をマジック等で印を付ける。
規定時間後に分銅を掛けた状態で、ズレ距離(マジック等の印間)をノギスにより読み取る。
【0092】
<差し込み抵抗>
条件として、低温低湿条件:23℃・50%RH、高温高湿条件:40℃・75%RHの2つの条件にて、差し込み抵抗を測定した。具体的には、以下の通りである。
先ず、誘引結束機とめたつ(商標登録)TMA100(ニチバン株式会社製)の標準の使用方法に則って、各実施例及び比較例の粘着テープロール体(幅11mm)を、TMA100にセットする。この際、粘着テープロール体から引き出された粘着テープの先端部が、TMA100の端部に固定された状態となる。
次に、計測機器としてDSV-50N(株式会社イマダ製)を準備し、T字測定部(鋼管支柱10mmφを接続したアタッチメント)をセットする。
DSV-50NのT字測定部にTMA100に固定された粘着テープを押し付け、抵抗値(最大荷重)を測定し、差し込み抵抗とする。
差し込み抵抗は、実際に植物の誘引を行う際の、粘着テープロール体の解きほぐし性や、TMA100と粘着テープの粘着剤層との接触による摩擦等が複合的に関与すると考えられ、TMA100等の専用器具を使用する際の総合的な使用感に直結する評価であると考えられる。
【0093】
【0094】