(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050812
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】スカム回収装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20230101AFI20230404BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C02F1/40 B
B23Q11/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161107
(22)【出願日】2021-09-30
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和2年11月20日にユシロ化学工業株式会社福山営業所に販売
(71)【出願人】
【識別番号】592248363
【氏名又は名称】ユキエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】山本 清美
(72)【発明者】
【氏名】梅田 康一
【テーマコード(参考)】
3C011
4D051
【Fターム(参考)】
3C011BB31
3C011BB33
4D051AA01
4D051AA04
4D051AB02
4D051BA09
4D051DC02
4D051DC14
4D051DD25
(57)【要約】
【課題】クーラントの液面に浮上したスカムをクーラントから効率よく分離して回収することが可能なスカム回収装置を提供する。
【解決手段】本発明のスカム回収装置1は、スカム排出口2aが上部に設けられるとともにスカム供給口2b及びクーラント排出口2cが下部に設けられたスカム分離槽2と、クーラント排出口2cに接続されたスカムオーバーフローレベル調整機構3と、スカム11aとともにクーラント11bが貯留されたクーラントタンク5と、クーラントタンク5の内部に設置されたフロートサクション6と、スカム排出口2aに設置されたオーバーフローシャッター機構4と、スカム供給口2bに一端が接続されるとともに他端がフロートサクション6の吸込口6aに接続されたスカム吸引管7aを備えている。スカム吸引管7aにはフィルタ8及びエア駆動式ダイヤフラムポンプ9が介装され、スカム排出口2aの下方にはスカムタンク10が設置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械において加工部分の潤滑や冷却に用いられるクーラントからスカムを分離して回収するスカム回収装置であって、
前記スカムとともに前記クーラントが貯留されたクーラントタンクと、
前記クーラントよりも比重の小さい部材からなるフロートが取り付けられ、前記クーラントの液面を浮遊する前記スカムが内部へ流入するように前記クーラントの前記液面に浮かべられるようにして前記クーラントタンク内に設置されたフロートサクションと、
スカム排出口、スカム供給口及びクーラント排出口を有するスカム分離槽と、
このスカム分離槽の前記スカム供給口に一端が接続されるとともに他端が前記フロートサクションの吸込口に接続されたスカム吸引管と、
このスカム吸引管を介して前記フロートサクションから前記スカム分離槽に前記スカムを送出するポンプと、を備えており、
前記スカム排出口及び前記スカム供給口がそれぞれ前記スカム分離槽の上部と下部に設けられるとともに前記クーラント排出口が前記スカム排出口よりも低い位置に設けられていることを特徴とするスカム回収装置。
【請求項2】
薄板からなり、前記スカム排出口が設けられた前記スカム分離槽の側板に沿って上下方向へ摺動可能、かつ、上端を前記スカム排出口の下面よりも上方へ突出可能に設置されたシャッターと、
このシャッターを所望の高さで前記スカム分離槽に固定する固定手段と、を備えていることを特徴とする請求項1に記載のスカム回収装置。
【請求項3】
前記スカム分離槽の前記クーラント排出口に一端が接続されたオーバーフロー管と、
このオーバーフロー管の長さを変化させる長さ調節手段と、を備えており、
この長さ調節手段を操作することによって前記オーバーフロー管の他端が前記スカム排出口の内面のうち最も低い箇所よりも低い位置又は高い位置に配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスカム回収装置。
【請求項4】
少なくとも上部が円筒状をなし、前記上部の開口部と繋がるように吸込口が下部に設けられたサクションカップと、
円筒状をなして前記サクションカップの前記上部に対し、互いの円筒軸が一致するとともに前記円筒軸を中心として回転可能に外挿されたシャッターリングと、を備え、
前記サクションカップ及び前記シャッターリングは、各上端面から前記円筒軸と平行な方向へ所望の深さを有するとともに円周方向へ所望の幅を有する切り欠きがそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のスカム回収装置。
【請求項5】
前記シャッターリングに代えて、前記サクションカップに内挿される円筒体と、この円筒体に取り付けられ前記クーラントよりも比重の小さい部材からなる浮上補助具と、を備え、
前記円筒体は、上端が前記サクションカップの前記切り欠きよりも上方へ突出可能に、前記サクションカップに対し上下方向へ移動可能な状態に設置されていることを特徴とする請求項4に記載のスカム回収装置。
【請求項6】
前記フロートサクションの前記吸込口が前記サクションカップの下部側面に設けられ、
回転軸が前記円筒軸に直交するように前記サクションカップに設置された回転継手を介して前記スカム吸引管の前記他端が前記吸込口に接続されていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のスカム回収装置。
【請求項7】
一端が前記スカム供給口に接続されたスカム導入管を備え、
このスカム導入管は、前記スカム分離槽に前記スカム排出口が設けられた箇所と対向する箇所に他端を向けた状態で前記スカム分離槽内に設置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のスカム回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械加工中にクーラント(冷却液)の液中へ混入するスカム(泡状の浮きカス)を回収する装置に係り、特に、液面に浮上したスカムをクーラントから効率良く分離して回収することが可能なスカム回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造や圧造などの機械加工では、加工対象物の表面にボンデ処理(リン酸塩被膜処理によって対象物の表面に潤滑被膜を生成させる処理)などが施されるが、加工対象物の表面に形成された潤滑被膜は研削仕上げの際に剥がれてクーラントの液中に混入する。そして、この潤滑被膜が摺動面油やクーラントなどと化学反応することにより大量のスカムが発生する。従来、クーラントの液中に発生したスカムは人手により回収されていたが、作業効率が悪く、スカムの回収に多くの時間と労力を要するという課題があった。
【0003】
このような課題に対処するものとして、例えば、特許文献1には「浮上油、浮上スラッジの回収装置およびその方法」という名称で、液面の浮上油やスラッジ等の浮上物を回収する装置とその方法に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された回収装置は、浮上油(水に浮く比重の軽い油)やスラッジ(自動車のエンジンなどの内燃機関において発生し、燃焼室内にこびりつく粘性の高い汚れ)などの混合液が貯留されたタンクと、混合液の流入口を有し、タンク内に設置されたフレキシブルホースと、流入口がタンク液面に配置されるようにフレキシブルホースに取り付けられた2個以上のフロートと、このフロートを固定するとともに低水位水中ポンプ又はクーラントポンプの浸漬を囲むポンプケースを備えており、このポンプケースはフレキシブルホースに接続された混合液落下口から大気圧で混合液が流れ込むように混合液落下口がポンプケース内の水位より高い位置に保持されるように設けられていることを特徴とする。
このような構造の回収装置によれば、液面変動に追従して液面上に浮遊するオイルやスラッジを効率良く吸引することが可能であり、しかも当該効果を極めて安価な設備によって発揮させることができる。
【0004】
また、特許文献2には「クーラント液浄化装置」という名称で、工作機械の加工部分の潤滑や冷却に用いられるクーラントに含まれるスラッジを外部に取り出すための装置に関する考案が開示されている。
特許文献2に開示されたクーラント液浄化装置は、外部から供給されたクーラントを貯留し、周壁が円筒状に形成された水槽と、この水槽の中央部に設置されてクーラントを吸引する吸込管と、クーラントに浸漬された状態でクーラントを周壁の壁面に向けて噴出可能に水槽内に設置された噴射用ノズルを備えており、この噴射用ノズルから噴出されたクーラント液噴流が周壁の周方向に沿って一方向のみに流れるような角度で周壁に衝突するように上記噴射ノズルが配置されたことを特徴とする。
このような構造のクーラント液浄化装置においては、水槽内に発生するクーラントの旋回流と円環状の上下対流によってクーラントの上部と下部で水槽の半径方向への強力な上下の対流が生じ、水槽の底面に堆積しようとするスラッジが中心部に集まる。そのため、吸込管でスラッジ等を確実に外部へ取出すことができる。これにより、水槽内でのスラッジの堆積発生が無くなるため、スラッジ等の取出しの手間が省かれるとともに、加工機械を停止させる必要もなくなる。
【0005】
さらに、特許文献3には「圧延クーラントオイルタンクにおけるスカム除去装置」という名称で、スカムを捕集するトラフがタンク内に設置された装置に関する考案が開示されている。
特許文献3に開示されたスカム除去装置は、圧延クーラントオイルタン内に設置され液面に浮遊した状態でスカムを捕集するトラフと、このトラフに固着された主フロート及び補助フロートと、圧延クーラントオイルタンクの外部に一端部が連通するとともに他端部がトラフの底部に連結され液面の変動に追随して変位可能なスカム排出管と、トラフの内面に散水して泡状のスカムを破壊する散水ノズルを備えており、補助フロートが給排気可能でトラフのスカム捕集レベルを調節可能に構成されていることを特徴とする。
このような構造のスカム除去装置においては、補助フロートの作用によってクーラントタンクの液面レベルの変動に応じてトラフの捕集レベルが自動的に追随するため、常に最適なスカム除去を行うことができる。また、トラフに捕集された泡状のスカムが散水によって破壊されるため、当該スカムを装置の外部へ円滑に排出することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-230458号公報
【特許文献2】実用新案登録第3129588号公報
【特許文献3】実開昭57-148486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された回収装置では、混合液が混合液落下口から大気圧でポンプケース内に流れ込むように、低水位水中ポンプ又はクーラントポンプを稼働させて混合液落下口をポンプ内の水位より高い位置に維持しなければならないため、操作性が悪いという課題があった。また、上記回収装置では、フレキシブルホースにフロートが設置されており、タンク内液面が変動した場合でもフレキシブルホースの混合液流入口がその変動に追随して上下に移動する構造となっているものの、タンク内液面が下方へ移動し、フレキシブルホースの混合液流入口と混合液落下口の落差距離が十分に確保されなくなると、混合液流入口への混合液の流入が停止してしまうという課題があった。さらに、タンク内液面と混合液流入口の浸漬間隔が1mm~5mmの範囲から外れると、空気と浮上物が混合液とともに渦巻きを生じながら混合液流入口に流入するという効果が十分に発揮されないという課題があった。
特許文献2に開示されたクーラント液浄化装置では、噴射ノズルから噴射したクーラント液噴流によって水槽内にクーラントの旋回流と円環状の上下対流が発生し、この水流が水槽の底面に堆積しようとするスラッジを中心部に集めるように作用するため、吸込管でスラッジ等を確実に外部へ取り出すことが可能である。しかしながら、特許文献2に開示された考案は水槽内におけるスラッジの堆積を防ぐことを目的としており、スラッジをクーラントから分離する機能を有していないため、下流に濾過処理装置を設けなければならないという課題があった。なお、特許文献2には濾過処理装置について詳細な記載がないため、その具体的な構造は不明である。
特許文献3に開示されたスカム除去装置では、トラフとオイルタンクの液面との高さの調整が容易でないため、作業性が悪いという課題があった。また、上記スカム除去装置では、クーラントの液面が波打っていると、スカムと一緒に大量のクーラントがトラフ内に流れ込んでしまうおそれがあるため、クーラントからスカムを分離する作業を効率よく行うことができないという課題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、クーラントの液面に浮上したスカムをクーラントから効率よく分離して回収することが可能なスカム回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、第1の発明は、工作機械において加工部分の潤滑や冷却に用いられるクーラントからスカムを分離して回収するスカム回収装置であって、スカムとともにクーラントが貯留されたクーラントタンクと、クーラントよりも比重の小さい部材からなるフロートが取り付けられ、クーラントの液面を浮遊するスカムが内部へ流入するようにクーラントの液面に浮かべられるようにしてクーラントタンク内に設置されたフロートサクションと、スカム排出口、スカム供給口及びクーラント排出口を有するスカム分離槽と、このスカム分離槽のスカム供給口に一端が接続されるとともに他端がフロートサクションの吸込口に接続されたスカム吸引管と、このスカム吸引管を介してフロートサクションからスカム分離槽にスカムを送出するポンプと、を備えており、スカム排出口及びスカム供給口がそれぞれスカム分離槽の上部と下部に設けられるとともにクーラント排出口がスカム排出口よりも低い位置に設けられていることを特徴とする。
第1の発明においては、スカム供給口からスカム分離槽の内部に供給されたスカムがクーラント中を浮上し、クーラントの液面上に所定の厚さの泡の層を形成するため、スカム排出口よりも低い位置に設けられたクーラント排出口から排出されるクーラントにはスカムが混ざり難いという作用を有する。また、スカム排出口の高さに達したスカムのみがスカム分離槽から溢出する構成となっていることから、スカム排出口からスカムとともにスカム分離槽の外へ排出されるクーラントの量が少なく抑えられるという作用を有する。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、薄板からなり、スカム排出口が設けられたスカム分離槽の側板に沿って上下方向へ摺動可能、かつ、上端をスカム排出口の下面よりも上方へ突出可能に設置されたシャッターと、このシャッターを所望の高さでスカム分離槽に固定する固定手段を備えていることを特徴とする。
ボンデ処理によって加工対象物の表面に形成された潤滑被膜に起因するスカムでは対象物の加工方法や加工設備によって表面張力が異なる。特に、スカム排出口の下面に側面視円弧状をなす曲面部が加工されている場合や溶接層部が存在する場合には、スカムの表面張力の差が顕著に表れるため、それらの部分においてスカムの流動性に差が生じる。その結果、スカム排出口からスカムを円滑に排出することが困難になる。これに対し、第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、薄板からなるシャッターの上端ではスカムの表面張力の差が表れ難いことから、表面張力の影響によってスカムの流動性に差が生じるという上記問題が緩和されるという作用を有する。また、シャッターの上端を超えるスカムのみがスカム排出口から排出されることから、シャッターにより、スカム排出口から排出可能なスカムのレベル(高さ)が規定されるという作用を有する。
【0011】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、スカム分離槽のクーラント排出口に一端が接続されたオーバーフロー管と、このオーバーフロー管の長さを変化させる長さ調節手段と、を備えており、この長さ調節手段を操作することによってオーバーフロー管の他端がスカム排出口の内面のうち最も低い箇所よりも低い位置又は高い位置に配置されることを特徴とする。
第3の発明では、スカム分離槽に貯留されたクーラントの液面がオーバーフロー管内において所定の高さに達した時点でクーラントが開口端から溢出し始める。その結果、スカム分離槽内のクーラントの液面はオーバーフロー管内の上記所定の高さに保たれる。したがって、第3の発明においては、第1の発明又は第2の発明の作用に加え、長さ調節手段を操作することによりスカム分離槽内のクーラントの液面がスカム排出口の内面のうち最も低い箇所よりも高くなったり、低くなったりするという作用を有する。
【0012】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明において、少なくとも上部が円筒状をなし、上部の開口部と繋がるように吸込口が下部に設けられたサクションカップと、円筒状をなしてサクションカップの上部に対し、互いの円筒軸が一致するとともに円筒軸を中心として回転可能に外挿されたシャッターリングと、を備え、サクションカップ及びシャッターリングは、各上端面から円筒軸と平行な方向へ所望の深さを有するとともに円周方向へ所望の幅を有する切り欠きがそれぞれ設けられていることを特徴とする。
第4の発明においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加え、シャッターリングを側面視した場合にサクションカップの切り欠きとシャッターリングの切り欠きの重複部分を通ってサクションカップ内にスカムが流入し、かつ、サクションカップに対して円筒軸を中心としてシャッターリングを回転させると、上記重複部分の大きさが変化することによってサクションカップ内へのスカムの流入量が変化するという作用を有する。また、サクションカップに対して円筒軸方向と平行にシャッターリングを移動させることにより、上記重複部分の下面の高さがクーラントタンク内のクーラントの液面よりも高くなったり、低くなったりするという作用を有する。
【0013】
第5の発明は、第4の発明において、シャッターリングに代えて、サクションカップに内挿される円筒体と、この円筒体に取り付けられクーラントよりも比重の小さい部材からなる浮上補助具と、を備え、円筒体は、上端がサクションカップの切り欠きよりも上方へ突出可能に、サクションカップに対し上下方向へ移動可能な状態に設置されていることを特徴とする。
第5の発明では、サクションカップ内にクーラントが流入して溜まると、浮上補助材に浮力が発生するため、円筒体が浮上補助材とともにサクションカップ内を上方へ移動する。そして、この円筒体の移動量は浮上補助材に発生する浮力の大きさによって決まることから、サクションカップ内に溜まっているクーラントの量に影響される。すなわち、第5の発明においては、サクションカップ内に溜まっているクーラントの量に応じて、円筒体の上端がサクションカップの切り欠きの上方へ突出する長さが変化するという作用を有する。
【0014】
第6の発明は、第4の発明又は第5の発明において、フロートサクションの吸込口がサクションカップの下部側面に設けられ、回転軸が円筒軸に直交するようにサクションカップに設置された回転継手を介してスカム吸引管の他端が吸込口に接続されていることを特徴とする。
クーラントタンク内でクーラント中に浮いた状態となっているフロートサクションはクーラントの液位の低下とともに下降するが、フロートサクションの吸込口がサクションカップの底面に設けられていると、吸込口に接続されたスカム吸引管がフロートサクションの下降時の障害となる。また、フロートサクションの下降に伴ってスカム吸引管の一部がクーラントタンクの底面に接触すると、スカム吸引管にクーラントタンクから作用する力がスカム吸引管を介してサクションカップに伝達される結果、サクションカップが傾いて、大量のクーラントがサクションカップ内に流入するという事態を招くおそれがある。これに対し、第6の発明においては、フロートサクションの吸込口がサクションカップの下部側面に設けられていることに加え、スカム吸引管の吸込口に接続された箇所が回転継手の回転軸を中心として回転するため、第4の発明又は第5の発明の作用に加え、吸込口に接続されたスカム吸引管がフロートサクションの下降時の障害にならないという作用を有する。また、スカム吸引管の吸込口に接続された箇所が回転継手の回転軸を中心として回転することで、フロートサクションが下降してスカム吸引管の一部がクーラントタンクの底面に接触した場合でも、クーラントタンクの底面からスカム吸引管が受ける力が小さいため、その力によってサクションカップが傾いてしまうという事態は起こり難い。
【0015】
第7の発明は、第1の発明乃至第6の発明のいずれかの発明において、一端がスカム供給口に接続されたスカム導入管を備え、このスカム導入管は、スカム分離槽にスカム排出口が設けられた箇所と対向する箇所に他端を向けた状態でスカム分離槽内に設置されていることを特徴とする。
第7の発明では、スカム供給口からスカム分離槽内に供給されたスカムがスカム導入管によってスカム排出口から離れた場所に吐出されるため、スカム分離槽に供給されるスカムの影響により、スカム排出口の近傍においてクーラントの液面が変動するという事態が起こり難い。したがって、第7の発明においては、スカム排出口からスカムとともにスカム分離槽の外へ排出されるクーラントの量が少なく抑えられるという第1の発明の作用がより確実に発揮される。また、スカム排出口が設けられた箇所と対向する箇所にスカム導入管から新たに吐出されたスカムは既に吐出されたスカムを下から押し上げつつ、スカム排出口に向かって押しやるように作用する。これにより、滞留に伴うスカムの固形化が阻止されるとともに、スカム排出口の近傍においてスカムが密の状態になるため、単位時間当たりにスカム排出口から排出されるスカムの量が増加する一方、スカム排出口からスカムとともに排出されるクーラントの量は減少する。さらに、スカム導入管からスカムが吐出される範囲が限定されるため、クーラント排出口から排出されるクーラントにスカムが混ざり難いという第1の発明の作用がより一層発揮される。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明では、スカム排出口からスカムが排出される際にクーラントが排出され難く、かつ、クーラント排出口からクーラントが排出される際にスカムが排出され難いことから、クーラントから分離されるスカムの割合が高まる。したがって、第1の発明によれば、スカムをクーラントから効率よく分離して回収することが可能である。
【0017】
第2の発明によれば、シャッターを操作してスカム排出口から排出可能なスカムのレベル(高さ)を微調整することで、スカム排出口からのクーラントの排出を防ぐことができる。加えて、スカム排出口の下面に側面視円弧状をなす曲面部が加工されている場合や溶接層部が存在する場合であっても表面張力の影響によってスカムの流動性に差が生じるという現象が発生し難いため、スカムをクーラントから効率よく分離して回収できるという第1の発明の効果が同様に発揮される。
【0018】
スカム分離槽内のクーラントの液面がスカム排出口の内面のうち最も低い箇所よりも高くなると、スカム排出口からスカムとともにクーラントが排出されてしまう。しかしながら、第3の発明では、長さ調節手段を操作してオーバーフロー管の長さを変化させることでスカム分離槽内のクーラントの液面をスカム排出口の内面のうち最も低い箇所よりも低くすることができる。この場合、スカム排出口からクーラントが排出されるおそれがない。すなわち、第3の発明によれば、第1の発明又は第2の発明の効果に加え、クーラントの液面の微調整ができるため、スカム排出口からのクーラントの排出を防いでスカムをスカム分離槽から効率よく排出することができるという効果を奏する。
【0019】
第4の発明によれば、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の効果に加え、サクションカップに対して円筒軸を中心としてシャッターリングを回転させることによって、サクションカップに流入するスカム量を調整できるという効果を奏する。また、クーラントタンク内のクーラントの液面がサクションカップの切り欠きとシャッターリングの切り欠きの重複部分の下面よりも高くなると、当該重複部分を通ってサクションカップ内に流入するクーラントの量が格段に増加することになるが、第4の発明によれば、サクションカップに対して円筒軸方向と平行にシャッターリングを移動させて、当該重複部分の下面の高さをクーラントタンク内のクーラントの液面よりも高くすることで、サクションカップ内へのクーラントの流入を抑制することができる。さらに、サクションカップへのスカムの流入量を適切に制御することにより、ポンプの吐出能力を最小限に抑える事が可能である。これにより、スカム分離槽におけるスカムの滞留時間が長くなるため、スカム分離能力が増加する。
【0020】
クーラントタンク内のクーラントの液面がサクションカップの切り欠きの下面よりも高くなると、当該切り欠きを通ってサクションカップ内に流入するクーラントの量が格段に増加することになるが、第5の発明において、円筒体の上端がサクションカップの切り欠きの上方へ突出している場合、クーラントタンク内のクーラントの液面がこの円筒体の上端を超えない限り、サクションカップ内に流入するクーラントの量が格段に増加することはない。そして、既に述べたように、円筒体の上端がサクションカップの切り欠きの上方へ突出する長さはサクションカップ内に溜まっているクーラントの量に応じて変化する。すなわち、第5の発明によれば、第4の発明の効果に加え、サクションカップ内に流入するクーラントの量が増えると、円筒体の上端がサクションカップの切り欠きの下面よりも上方へ突出するため、サクションカップ内へのクーラントの流入が抑制されるという効果を奏する。
【0021】
第6の発明によれば、第4の発明又は第5の発明の効果に加え、スカム吸引管がフロートサクションの下降時の障害とならないため、クーラントタンク内のクーラントの液位が、フロートサクションの吸込口がサクションカップの底面に設けられている場合よりも低い位置まで下がったときでもフロートサクションが機能し得るという効果を奏する。また、フロートサクションが下降した場合でもクーラントタンクからスカム吸引管が受けた力が作用してサクションカップが傾いてしまい、大量のクーラントがサクションカップ内に流入するとい事態を防ぐことができる。
【0022】
第7の発明によれば、スカム分離槽にスカムが供給される際にスカム排出口の近傍においてクーラントの液面が変動し難いことに加え、単位時間当たりにスカム排出口から排出されるスカムの割合が高まるとともに、スカム排出口からスカムとともに排出されるクーラントの量がより少なくなる。さらに、スカムの流動性が悪化し難いことに加え、クーラント排出口から排出されるクーラントにスカムが混ざり難いことから、スカムをクーラントから効率よく分離して回収することができるという第1の発明の効果がより一層発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態に係るスカム回収装置の模式図であり、(b)は同図(a)におけるスカムオーバーフローレベル調整機構の外観図である。
【
図2】(a)は
図1(a)に示したスカム分離槽の外観斜視図であり、(b)は
図1(a)に示したスカム分離槽の模式図である。
【
図3】(a)はオーバーフローシャッター機構の外観斜視図であり、(b)及び(c)はそれぞれシャッター及び固定具の外観斜視図であり、(d)及び(e)は同図(b)に示したシャッターの変形例に係るシャッターの正面図である。
【
図4】(a)は
図2(a)においてスカム排出口の周辺を拡大したスカム分離槽の側面図であり、(b)は
図2(a)におけるA-A線矢視断面図である。
【
図5】(a)は従来技術に係る浮上油回収装置の模式図であり、(b)は同図(a)における浮上油オーバーフローレベル調整機構の外観図である。
【
図6】(a)及び(b)はそれぞれ
図1(a)に示したフロートサクションの平面図及び側面図であり、(c)は同図(a)及び(b)に示したフロートサクションにおけるスカム流入量調整機構の外観斜視図であり、(d)及び(e)はそれぞれ同図(c)に示したシャッターリング及びサクションカップの外観斜視図である。
【
図7】(a)は
図6(c)におけるC-C線矢視断面図であり、(b)は同図(a)においてシャッターリングがサクションカップに対して上方向へ移動した状態を示した図である。
【
図8】(a)及び(b)は
図7(a)及び
図7(b)においてサクションカップ内にスカムが流入する様子を模式的に示した図である。
【
図9】(a)は
図6(c)におけるD方向矢視図であり、(b)は同図(a)においてシャッターリングがサクションカップに対して円周方向へ移動した状態を示した図である。
【
図10】(a)及び(b)はそれぞれ
図6(a)及び
図6(b)に示したフロートサクションの変形例の平面図及び側面図であり、(c)は同図(a)及び同図(b)に示したサクションカップの外観斜視図であり、(d)は同図(c)におけるE-E線矢視断面図である。
【
図11】(a)は
図6(a)においてフロートサクションにスカム吸引管が回転継手を用いて接続された状態を示した平面図であり、(b)は同図(a)におけるF方向矢視図である。
【
図12】(a)及び(b)はそれぞれ
図11(a)におけるG-G線矢視断面図及び
図11(b)におけるH方向矢視図である。
【
図13】(a)は
図10(b)においてフロートサクションにスカム吸引管が直に接続された状態を示した図であり、(b)は
図12(b)においてスカム吸引管を回転させた状態を示した図である。
【
図14】(a)は本発明の第2の実施の形態に係るスカム回収装置におけるフロートサクションへのスカム流入量調整機構の外観斜視図であり、(b)乃至(d)は同図(a)に示したフロートサクションを構成するサクションカップ、フロートシャッター及び浮上補助具の外観斜視図であり、(e)及び(f)はそれぞれ同図(b)におけるJ-J線矢視断面図及び同図(c)におけるK-K線矢視断面図である。
【
図15】(a)は
図14(a)におけるI-I線矢視断面図であり、(b)は同図(a)においてフロートシャッター及び浮上補助具がサクションカップに対して上方向へ移動した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明のスカム回収装置について
図1乃至
図15を用いて具体的に説明する。なお、以下の説明では、スカム回収装置が実際に使用されている状態、すなわち、スカム分離槽やクーラントタンクが水平な場所に置かれている状態を想定して、「上面」や「下面」あるいは「上端」や「下端」などの表現を用いている。
【実施例0025】
図1(a)は本発明の第1の実施の形態に係るスカム回収装置の構成を模式的に示した図であり、
図1(b)は
図1(a)におけるスカムオーバーフローレベル調整機構の外観を示した図である。なお、
図1(a)ではスカム分離槽内のスカムの図示を省略するとともに、スカム分離槽内のクーラントの液面の位置を破線Xで示している。
図2(a)は
図1(a)におけるスカム分離槽の外観を示した斜視図であり、
図2(b)は
図1(a)に示したスカム分離槽の構造を模式的に示した図である。なお、
図2(b)では、
図2(a)に示したボルトの図示を省略している。また、
図2(b)に示した実線の矢印Bは、スカム導入管7bからスカム分離槽2に供給されたスカムの流れを模式的に表したものである。
図3(a)はオーバーフローシャッター機構の外観斜視図であり、
図3(b)及び
図3(c)はそれぞれシャッター及び固定具の外観斜視図である。また、
図3(d)及び
図3(e)は
図3(b)に示したシャッターの変形例に係るシャッターの正面図である。
図4(a)は
図2(a)においてスカム排出口の周辺を拡大したスカム分離槽の側面図であり、
図4(b)は
図2(a)におけるA-A線矢視断面図である。なお、
図4(a)ではボルトの図示を省略している。
【0026】
図1(a)に示すように、本発明のスカム回収装置1は、スカム排出口2aが上部に設けられるとともにスカム供給口2b及びクーラント排出口2cが下部に設けられたスカム分離槽2と、クーラント排出口2cに接続されたスカムオーバーフローレベル調整機構3と、スカム11aとともにクーラント11bが貯留されたクーラントタンク5と、クーラント11bの液面に浮遊した状態のスカム11aが内部へ流入するようにクーラント11bの液面に浮かべられるようにしてクーラントタンク5の内部に設置されたフロートサクション6と、スカム分離槽2のスカム排出口2aに設置されたオーバーフローシャッター機構4と、スカム分離槽2のスカム供給口2bに一端が接続されるとともに他端がフロートサクション6の吸込口6aに接続され、金属製やプラスチック製のホースの他、変形が容易なフレキシブルホースからなるスカム吸引管7aを備えており、このスカム吸引管7aにはフィルタ8及びエア駆動式ダイヤフラムポンプ9が介装されている。また、スカム回収装置1の必須の構成要素ではないが、スカム排出口2aの下方には、スカム分離槽2から排出されたスカム11aを貯留するためのスカムタンク10が設置されている。なお、クーラント排出口2cは必ずしもスカム分離槽2の下部に設けられていなくとも良いが、少なくともスカム排出口2aよりも低い位置に設けられていることが必要である。
【0027】
上記構造を備えたスカム回収装置1においては、クーラントタンク5に貯留されたクーラント11bの液面上に浮遊しているスカム11aの一部がフロートサクション6によって捕集され、スカム吸引管7aに介装されたエア駆動式ダイヤフラムポンプ9の作用によってスカム供給口2bからスカム分離槽2に供給される。なお、フロートサクション6によってスカム11aのみを捕集することは困難であるため、クーラントタンク5からスカム分離槽2にスカム11aを供給する際にクーラント11bの一部もスカム分離槽2に供給されるが、後述するように、フロートサクション6はスカム11aとともにスカム分離槽2に供給されるクーラント11bの量が少なく抑えられる構造となっている。
クーラントタンク5からスカム分離槽2に供給されたスカム11aとクーラント11bのうち、スカム11aはクーラント11bの液中を浮上し、クーラント11bの液面上に所定の厚さの泡の層を形成する。一方、クーラント11bはクーラント排出口2cからスカム分離槽2の外部に排出されることになるが、クーラント排出口2cがスカム排出口2aよりも低い位置に設けられているため、クーラント排出口2cから排出されるクーラント11bにはスカム11aが混ざり難い。また、スカム回収装置1では、クーラント11bの液面上に浮遊しているスカム11aのうち、スカム排出口2aの高さに達したスカム11aのみがスカム分離槽2から溢出してスカムタンク10に貯留されるように構成されていることからスカム排出口2aからスカム11aとともに排出されるクーラント11bの量が少なく抑えられる。なお、クーラント排出口2cからスカム分離槽2の外部に排出されたクーラント11bはクーラントタンク5に戻される。
このように、スカム回収装置1では、スカム排出口2aからスカム11aが排出される際にクーラント11bが排出され難く、かつ、クーラント排出口2cからクーラント11bが排出される際にスカム11aが排出され難いため、クーラント11bから分離されるスカム11aの割合を高めることができる。したがって、スカム回収装置1によれば、スカム11aをクーラント11bから効率よく分離して回収することが可能である。
【0028】
図1(b)に示すように、スカムオーバーフローレベル調整機構3は、スカム分離槽2のクーラント排出口2cに一端が接続され、他端にナット13aが設けられたクーラント排出管12aと、一端にナット13bが設けられたクーラント排出管12bと、クーラント排出管12a、12bを連結する円筒状のジョイント14を備えている。クーラント排出管12a、12bの端部はナット13a、13bよりも突出しており、一端が閉塞されているナット13a、13bは、上述したクーラント排出管12a、12bの突出した端部側に開口部を向けた状態で、クーラント排出管12a、12bに対してそれぞれ互いの円筒軸が一致するようにそれらの外周面に取り付けられている。ジョイント14は、外周面にナット13a、13bの雌ネジ部に螺合する雄ネジ部14a、14aが外周面に設けられた両端を、クーラント排出管12aとナット13aの間及びクーラント排出管12bとナット13bの間にそれぞれ螺入可能な構造となっている。
雄ネジ部14a、14aは、クーラント排出管12aとナット13aの間及びクーラント排出管12bとナット13bの間に両端がそれぞれ螺入された状態でジョイント14を一方向に回転させると、クーラント排出管12a及びナット13a並びにクーラント排出管12b及びナット13bが同時にジョイント14から遠ざかる方向へ移動するとともに、ジョイント14を他の方向に回転させると、クーラント排出管12a及びナット13a並びにクーラント排出管12b及びナット13bが同時にジョイント14に近づく方向へ移動する向きに形成されている。
また、ナット13a、13bの内部にはクーラント排出管12a、12bに外挿されるようにしてシールパッキン15がそれぞれ設置されている。
さらに、クーラント排出管12bの上端(ジョイント14に連結されていない側の端部)には、接続具16を介してクーラント排出管12cが接続されている。なお、クーラント排出管12aは鉛直方向と平行をなすようにクーラント排出口2cの近傍から垂直に立ち上がり、ジョイント14を介してクーラント排出管12aに連結されたクーラント排出管12bも鉛直方向と平行をなしている。そして、L字状をなすクーラント排出管12cは、開口端を下方に向けた状態で接続具16に基端が接続されている。
【0029】
スカムオーバーフローレベル調整機構3は、クーラント排出管12bが上下方向へ移動可能であって、かつ、クーラント排出管12bが上下方向へ移動することにより、クーラント排出管12cの内面のうち最も低い箇所の高さとスカム分離槽2のスカム排出口2aの下面(内面のうち最も低い箇所)の高さの関係が変化する構造となっている。なお、クーラント排出管12cの内面のうち最も低い箇所を超えるクーラント11bはクーラント排出管12bの開口端から排出されることから、クーラント排出管12cの内面のうち最も低い上述の箇所はスカム分離槽2に貯留されたクーラント11bの液面(
図1(a)に示す破線X)の高さと一致する。すなわち、スカムオーバーフローレベル調整機構3において、クーラント排出管12a~12cはオーバーフロー管を構成し、ジョイント14は回転によってクーラント排出管12bを上下方向へ移動させることで、オーバーフロー管の長さを変化させる長さ調節手段を構成している。そして、スカムオーバーフローレベル調整機構3は、オーバーフロー管の長さを調節することによりスカム分離槽2に貯留されたクーラント11bの液面の高さを変化させるという機能を有している。
スカム分離槽2におけるクーラント11bの液面がスカム排出口2aの内面のうち最も低い箇所よりも高くなると、スカム排出口2aからスカム11aとともにクーラント11bが排出されてしまうおそれがあるが、スカム回収装置1では、ジョイント14を回転させてクーラント排出管12a~12cからなるオーバーフロー管の長さを変化させることでスカム分離槽2におけるクーラント11bの液面をスカム排出口2aの内面のうち最も低い箇所よりも低くすることができる。これにより、スカム排出口2aからのクーラント11bの排出が阻止される。すなわち、スカム回収装置1によれば、スカムオーバーフローレベル調整機構3の簡単な操作によって、クーラント11bの液面の微調整ができるため、スカム排出口2aからのクーラント11bの排出を防いでスカム11aをスカム分離槽2から効率よく排出することが可能である。
【0030】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、スカム分離槽2は上部が開口した略直方体をなし、側板2dの上端に設けられた矩形状の開口部17a(
図2(b)参照)と、この開口部17aの縁から斜め下方へ延設された囲い17b(
図2(b)参照)によってスカム排出口2aが形成されている。
側板2dに直交する一対の側板2e、2eには、オーバーフローシャッター機構4を固定するためのボルト18の挿通孔2h(
図4(a)参照)が2個ずつ設けられている。また、底板2gに設けられたスカム供給口2bに下端が接続されたスカム導入管7bは、上端が側板2dと平行な側板2fに向けられた状態でスカム分離槽2の内部に設置されている。すなわち、スカム導入管7bは、スカム吸引管7a及びスカム供給口2bを介してフロートサクション6から供給されたスカム11aをスカム排出口2aが設けられた側板2dと対向する側板2fの上部へ吐出する機能を有している。
このように、スカム回収装置1では、スカム供給口2bからスカム分離槽2に供給されたスカム11aがスカム導入管7bによってスカム排出口2aから離れた場所に吐出されるため、スカム分離槽2に供給されるスカム11aの影響により、スカム排出口2aの近傍においてクーラント11bの液面が変動するという事態が起こり難い。これにより、スカム排出口2aからスカム11aとともにスカム分離槽2の外へ排出されるクーラント11bの量が少なく抑えられるという作用がより確実に発揮される。また、スカム排出口2aが設けられた箇所と対向する箇所にスカム導入管7bから新たに吐出されたスカム11aは
図2(b)に矢印Bで示すように、既に吐出されたスカム11aを下から押し上げつつ、スカム排出口2aに向かって押しやるように作用する。スカム11aはスカム分離槽2の内部に長時間滞留することで化学反応により固形化する性質がある。そして、固形化したスカム11aは流動性が悪いため、スカム排出口2aから排出され難くなる。しかしながら、スカム回収装置1では上述のとおり、スカム導入管7bから吐出されたスカム11aがクーラント11bの液面で浮遊しているスカム11aを強制的にスカム排出口2aへ移動させるように作用する。これにより、スカム11aの固形化が阻止されるとともに、スカム排出口2aの近傍においてスカム11aが密の状態になるため、単位時間当たりにスカム排出口2aから排出されるスカム11aの量が増加する一方、スカム排出口2aからスカム11aとともに排出されるクーラント11bの量は減少する。さらに、スカム導入管7bからスカム11aが吐出される範囲が限定されるため、クーラント排出口2cから排出されるクーラント11bにスカム11aが混ざり難いという前述の作用がより一層発揮される。
【0031】
図3(a)乃至
図3(c)に示すように、オーバーフローシャッター機構4は、厚さが0.5mm程度の薄板からなるシャッター19と、細長い板材からなる固定具20によって構成されている。
シャッター19は薄板の両側が同じ方向へ直角に折り曲げられるようにして、平面視長方形状をなすとともに互いに平行な一対の取付部19a、19aと、平面視略矩形状をなす平板部19bが形成されている。取付部19aには、ボルト18を挿通可能な一対の長孔19c、19cが長手方向と平行に細長く形成されており、平板部19bは上端19dが平面視V字をなすように形成されている。
固定具20は細長い板材の両端が同じ方向へ直角に折り曲げられるようにして、互いに平行をなす一対の曲折部20a、20aと、この一対の曲折部20a、20aを繋ぐ接続部20bが形成されており、一対の曲折部20a、20aは接続部20bと平行な補強部20cによって互いに連結されている。また、曲折部20a、20aには、ボルト18が螺入される一対のボルト孔20d、20dが形成されている。さらに、一対の曲折部20a、20aの外面間の距離は一対の取付部19a、19aの内面間の距離よりも短く、固定具20は一対の取付部19a、19aに一対の曲折部20a、20aが平行をなした状態で、一対の取付部19a、19aの間に配置可能な構造となっている(
図3(a)参照)。そして、一対のボルト孔20d、20dは固定具20がシャッター19の内側に配置された際に、一対の長孔19c、19cにそれぞれ挿通された2本のボルト18を同時に螺入可能な箇所に形成されている。
なお、シャッター19は
図3(a)及び
図3(b)に示した構造に限定されるものではない。例えば、シャッター19は平板部19bを平面視した場合に上端19dが
図3(d)及び
図3(e)に示すように円弧状又は直線状をなすような構造であっても良い。
【0032】
シャッター19において、一対の取付部19a、19aの外面間の距離はスカム分離槽2の一対の側板2e、2eの内面間の距離よりも短いため、
図4(a)又は
図4(b)に示すようにシャッター19は一対の側板2e、2eの間に配置可能な構造となっている。したがって、長孔19cに挿通されるとともに固定具20のボルト孔20dに螺入されたボルト18を締め付けると、取付部19aは固定具20の曲折部20aとスカム分離槽2の側板2eによって両側から挟み付けられるようにして、その位置が保持される。このように、シャッター19はボルト18と固定具20を用いてスカム分離槽2に固定されることになるが、このとき、シャッター19の平板部19bがスカム分離槽2の側板2dの内面に接触した状態となるように、ボルト18の挿通孔2hがスカム分離槽2の側板2eに設けられている。そして、
図4(b)に示した状態において、ボルト18を緩めると、シャッター19は長孔19cの内部をボルト18が移動できる範囲で、上下方向へ移動可能となり、シャッター19を最も上方まで移動させると、上端19dがスカム排出口2aの下面よりも突出した状態となる。すなわち、シャッター19は側板2dに沿って上下方向へ摺動可能、かつ、上端19dをスカム排出口2aの下面よりも上方へ突出可能に設置された構造となっている。このとき、ボルト18及び固定具20はシャッター19を所望の高さでスカム分離槽2に固定する固定手段として機能する。
【0033】
スカム11aがボンデ処理によって加工対象物の表面に形成された潤滑被膜に起因するものである場合、その表面張力は対象物の加工方法や加工設備によって異なる。特に、スカム排出口2aの下面に側面視円弧状をなす曲面部が加工されている場合や溶接層部が存在する場合には、スカム11aの表面張力の差が顕著に表れるため、上記曲面部や溶接層部においてスカム11aの流動性に差が生じる。その結果、スカム11aをスカム排出口2aからスカム分離槽2の外部へ円滑に排出することが困難になる。これに対し、オーバーフローシャッター機構4を備えたスカム回収装置1では、薄板からなるシャッター19の上端19dにおいてスカム11aの表面力の差が表れ難いことから、表面張力の影響によってスカム11aの流動性に差が生じるという現象が発生し難い。
また、シャッター19の上端19dを超えるスカム11aのみがスカム排出口2aから排出されることから、スカム排出口2aから排出可能なスカム11aのレベル(高さ)はシャッター19によって規定される。
このように、スカム回収装置1では、シャッター19を操作してスカム排出口2aから排出可能なスカム11aのレベル(高さ)を微調整することで、スカム排出口2aからのクーラント11bの排出を防ぐことができる。加えて、スカム回収装置1によれば、スカム排出口2aの下面に側面視円弧状をなす曲面部が加工されている場合や溶接層部が存在する場合であってもスカム11aの流動性に差が生じ難いため、スカム11aをスカム排出口2aからスカム分離槽2の外部へ円滑に排出することが可能である。
【0034】
ここで、クーラントの液中に混入し、液面に浮上した油(浮上油)を回収する装置について
図5を用いて説明する。なお、
図5(a)は従来技術に係る浮上油回収装置の模式図であり、
図5(b)は
図5(a)における浮上油オーバーフローレベル調整機構の外観図である。
図5(a)に示すように、浮上油回収装置50は、浮上油排出管52aが接続された浮上油排出口51a及びクーラント排出管52cが接続されたクーラント排出口51cが上部に設けられるとともに、鉛直方向と平行に設置された浮上油導入管52dの下端が接続された浮上油供給口51bが底板51dに設けられた浮上油分離槽51を備えている。浮上油分離槽51には、浮上油排出口51aが設けられた一次槽とクーラント排出口51cが設けられた二次槽を隔てるように仕切り板51eが設置されており、浮上油排出口51aに一端が接続された浮上油排出管52bの他端には浮上油オーバーフローレベル調整機構53が接続されている。
図5(b)に示すように、浮上油オーバーフローレベル調整機構53は、上端に雄ネジ部54aが設けられた浮上油排出管52bと、雄ネジ部54aに螺合する雌ネジ部54bが内周面に形成された円筒状のアジャストソケット55からなる。なお、浮上油排出管52bはアジャストソケット55の円筒軸が鉛直方向と平行になるように浮上油分離槽51の内部に設置されている。
【0035】
上記構造を備えた浮上油回収装置50においては、浮上油供給口51bから浮上油導入管52dを通って浮上油分離槽51の内部に供給された浮上油11cとクーラント11bのうち、浮上油11cは一次槽内においてクーラント11bの液中を浮上した後、クーラント11bの液面上に溜まるのに対し、クーラント11bの一部は仕切り板51eの下方を通って一次槽側から二次槽側へ移動する。一次槽内でクーラント11bの液面上に溜まった浮上油11cのうち、アジャストソケット55の内部に流入した浮上油11cは、浮上油排出口51aから浮上油排出管52aを通って浮上油分離槽51の外部に排出される。なお、クーラント11bの液面がアジャストソケット55の上端55aの高さを超えた場合、液面がアジャストソケット55の上端55aの高さに一致するまで、クーラント11bがアジャストソケット55に流入する。そして、アジャストソケット55に流入したクーラント11bは、浮上油排出管52bと浮上油排出口51a及び浮上油排出管52aを経由して浮上油分離槽51の外部へ排出される。このように、浮上油分離槽51ではクーラント11bの液面がアジャストソケット55の上端55aの高さに維持されるが、アジャストソケット55の雌ネジ部54bと浮上油排出管52bの雄ネジ部54aが螺合しているため、アジャストソケット55を回転させると、上端55aの高さが変化する。すなわち、浮上油オーバーフローレベル調整機構53では、アジャストソケット55を回転させて上端55aの高さを変化させることにより、浮上油分離槽51の内部におけるクーラント11bの液面の高さの調節が可能となっている。なお、二次槽内においてクーラント11bの液面がクーラント排出口51cの高さを超えた場合、そのクーラント11bの液面がクーラント排出口51cの高さに一致するまでクーラント11bがクーラント排出口51cからクーラント排出管52cの方へ溢出する。
【0036】
上記構造の浮上油回収装置50において、浮上油分離槽51に浮上油11cの代わりにスカム11aを供給した場合、スカム11aの層内に手を差し込んでアジャストソケット55を回転することは容易でないため、浮上油オーバーフローレベル調整機構53の機能が発揮されないおそれがある。また、アジャストソケット55では流入したスカム11aで内部がすぐに満たされるため、スカム11aを効率よく排出することは困難である。したがって、従来、周知の構造を備えた浮上油回収装置50をスカム11aの回収装置として用いたとしても、本発明のスカム回収装置1のようにスカム11aを効率よくクーラント11bから分離して回収することは困難であると考えられる。
【0037】
図6(a)及び
図6(b)はそれぞれ
図1(a)に示したフロートサクションの平面図及び側面図であり、
図6(c)は
図6(a)及び
図6(b)に示したフロートサクションにおけるスカム流入量調整機構の外観斜視図である。また、
図6(d)及び
図6(e)はそれぞれ
図6(c)に示したシャッターリング及びサクションカップの外観斜視図である。
図7(a)は
図6(c)におけるC-C線矢視断面図であり、
図7(b)は
図7(a)においてシャッターリングがサクションカップに対して上方向へ移動した状態を示した図である。
図8(a)及び
図8(b)は
図7(a)及び
図7(b)においてサクションカップ内にスカムが流入する様子を模式的に示した図である。
図9(a)は
図6(c)におけるD方向矢視図であり、
図9(b)は
図9(a)においてシャッターリングがサクションカップに対して円周方向へ移動した状態を示した図である。
図10(a)及び
図10(b)はそれぞれ
図6(a)及び
図6(b)に示したフロートサクションの変形例の平面図及び側面図であり、
図10(c)は
図10(a)及び
図10(b)に示したサクションカップの外観斜視図であり、
図10(d)は
図10(c)におけるE-E線矢視断面図である。
なお、
図6(c)乃至
図6(e)ではシャッターリング及びサクションカップを
図6(a)及び
図6(b)に示した状態よりも拡大した状態で示しており、
図7乃至
図9ではシャッターリング及びサクションカップを
図6(c)乃至
図6(e)に示した状態よりもさらに拡大した状態で示している。また、
図6(a)、
図9(b)及び
図9(b)では、切り欠きが設けられている部分と切り欠きが設けられていない部分の識別を容易にするため、切り欠きが設けられていない部分にハッチングを施している。さらに、
図8(a)及び
図8(b)ではスカムを
図2(b)に示した場合よりも拡大した状態で模式的に示している。そして、
図10(c)及び
図10(d)ではサクションカップを
図10(a)及び
図10(b)に示した状態よりも拡大した状態で示しており、
図10(a)では、切り欠きが設けられている部分と切り欠きが設けられていない部分の識別を容易にするため、切り欠きが設けられていない部分にハッチングを施している。
図6(a)及び
図6(b)に示すように、フロートサクション6は底面21aに吸込口6aが設けられた円筒状のサクションカップ21と、内径と外径が一定であり、サクションカップ21の上部に設置されたシャッターリング22と、サクションカップ21の上部を覆うように設置されたメッシュ状の防塵カバー23と、4本のアーム部24aが設けられて平面視略十字状をなす平板材からなり、中央部がサクションカップ21の底面21aに固定された連結具24と、円柱状をなし、フロート固定ボルト26の挿通孔が同軸上に設けられるとともにアーム部24aの先端に立設されたスペーサ25と、このスペーサ25の上端部に設置され、ボルト孔が設けられた取付部27aを有し、アーム部24aの先端に設けられた挿通孔とスペーサ25の挿通孔に連通するフロート固定ボルト26を取付部27aのボルト孔に螺入することによって連結具24に固定されたフロート27を備えている。
【0038】
図6(c)乃至
図6(e)並びに
図7(a)及び
図7(b)に示すように、サクションカップ21は、Oリング28が内部に設置される環状溝21dが外周面に設けられた小径部21bと大径部21cからなる段付き構造をなしており、小径部21bには端面21eから円筒軸方向へ所望の深さを有するとともに円周方向へ所望の幅を有する4つの切り欠き21fが円周方向へ略等間隔に設けられている。また、サクションカップ21の内部は、端面21e側に大径部21gが設けられるとともに底面21a側に小径部21hが設けられており、大径部21gから小径部21hに向かうに従って内径が漸次小さくなるように形成されている。
一方、シャッターリング22は、内径がサクションカップ21の小径部21bよりも大きく、外径がサクションカップ21の大径部21cと略等しい円筒体であって、端面22aから円筒軸方向へ所望の深さを有するとともに円周方向へ所望の幅を有する4つの切り欠き22bが円周方向へ略等間隔に設けられている。すなわち、シャッターリング22はサクションカップ21の小径部21bに外挿可能な構造となっている(
図6(c)参照)。なお、シャッターリング22をサクションカップ21に取り付けていない状態でOリング28が環状溝21dからサクションカップ21の半径方向の外側へ向かってが突出している長さは、シャッターリング22の内径とサクションカップ21の小径部21bの外径との差の1/2よりも長い。すなわち、環状溝21dにOリング28が設置された状態でシャッターリング22をサクションカップ21の小径部21bに外挿すると、Oリング28はシャッターリング22によってサクションカップ21の半径方向の内側へ向かって押しつぶされた状態となるため、Oリング28とシャッターリング22の内面の間に大きな摩擦力が発生する。すなわち、フロートサクション6では、シャッターリング22がサクションカップ21に対して上下方向及び円周方向へ移動可能となっているが、シャッターリング22とOリング28の間に発生する摩擦力により、シャッターリング22はサクションカップ21に対する位置が保持される構造となっている。
すなわち、Oリング28はサクションカップ21の外面とシャッターリング22の内面との隙間を塞ぐとともに、シャッターリング22がサクションカップ21に対して不用意に移動しないように保持する機能を有している。なお、サクションカップ21の外面とシャッターリング22の内面との隙間が小さく、サクションカップ21とシャッターリング22の間の摩擦力のみで、シャッターリング22がサクションカップ21に保持される場合及び当該隙間からスカム11aが流れ出す可能性が低い場合にはOリング28の設置を省略することもできる。また、サクションカップ21は全体が円筒形をなしている必要はなく、少なくともシャッターリング22が外挿される上部が円筒形をなしていれば良い。
【0039】
フロートサクション6では、シャッターリング22を側面視した場合にサクションカップ21の切り欠き21fとシャッターリング22の切り欠き22bの重複部分を通ってスカム11aがサクションカップ21の内部に流入する。
図8(a)に示すようにクーラントタンク5のクーラント11bの液面Lが上記重複部分の下面よりも高くなると、スカム11aとともにサクションカップ21に流入するクーラント11bの量が格段に増加する。そのため、フロートサクション6では、フロート27の大きさや材質を変えたり、スペーサ25の長さを変更したりすることにより、上述のクーラント11bの液面Lが上記重複部分の下面を超えないように調整している。しかしながら、スカム11aの種類やクーラントタンク5の内部におけるスカム11aの貯留量によって上述のクーラント11bの液面Lと上記重複部分の下面の高さ関係は容易に変化する。
フロートサクション6では、サクションカップ21に対して円筒軸方向と平行にシャッターリング22を移動させることにより、上記重複部分の下面の高さがクーラントタンク5のクーラント11bの液面Lよりも高くなったり、低くなったりする。したがって、このような構造を備えたフロートサクション6によれば、
図8(b)に示すようにサクションカップ21に対して円筒軸方向と平行にシャッターリング22を移動させて、上記重複部分の下面の高さをクーラントタンク5のクーラント11bの液面Lよりも高くすることで、サクションカップ21へのクーラント11bの流入を抑制することができる。
【0040】
既に述べたように、フロートサクション6ではシャッターリング22を側面視した場合にサクションカップ21の切り欠き21fとシャッターリング22の切り欠き22bの重複部分を通ってスカム11aがサクションカップ21に流入する。そして、この重複部分の大きさ(
図9(a)及び
図9(b)に矢印sで示す範囲)は、サクションカップ21に対して円筒軸を中心としてシャッターリング22を回転させることによって変化する。この場合、サクションカップ21へのスカム11aの流入量は、上記重複部分が大きくなるに従って増加し、小さくなるに従って減少する。したがって、フロートサクション6を備えたスカム回収装置1によれば、シャッターリング22を操作することによって、サクションカップ21に対するスカム11aの流入量を容易に調整することが可能である。
このように、フロートサクション6は、サクションカップ21に対してシャッターリング22を上下させたり、回転させたりすることにより、サクションカップ21内へのスカム11aの流入量を簡単に制御可能な構造となっている。なお、クーラントタンク5内のクーラント11bの液面からサクションカップ21内のスカム11aの最上部との間には、15mm以上の落差が形成されることが望ましい。
【0041】
図10(a)及び
図10(b)に示すように、フロートサクション29はフロートサクション6において、サクションカップ21、シャッターリング22、連結具24、スペーサ25及びOリング28の代わりに底面30aに吸込口6aが設けられた円筒状のサクションカップ30、浮力調整ウエイト31、連結具32及び緩み止めナット33を備えたことを特徴とする。なお、
図10(a)及び
図10(b)には防塵カバー23が図示されていないが、フロートサクション29は防塵カバー23を備えた構造であっても良い。
3本のアーム部32aが設けられた平板材からなる連結具32は、中央部がサクションカップ30の底面30aに固定されており、アーム部32aの先端にはフロート固定ボルト26のボルト孔が設けられている。フロート27は、このボルト孔に螺入されたフロート固定ボルト26を取付部27aのボルト孔に螺入することによって連結具32に固定されている。また、フロート固定ボルト26には取付部27aの下端に当接するように緩み止めナット33が取り付けられており、円環状をなす浮力調整ウエイト31はサクションカップ30が内部に配置されるように連結具32の上面に設置されている。
図10(c)及び
図10(d)に示すように、サクションカップ30には端面30bから円筒軸方向へ所望の深さを有するとともに円周方向へ所望の幅を有する3つの切り欠き30cが円周方向へ略等間隔に設けられている。また、サクションカップ30の内部は、端面30b側に大径部30dが設けられるとともに底面30a側に小径部30eが設けられており、大径部30dから小径部30eに向かうに従って内径が漸次小さくなるように形成されている。
【0042】
このような構造のフロートサクション29では、サクションカップ30の切り欠き30cを通ってクーラントタンク5に貯留されているスカム11aがサクションカップ30に流入する。そこで、フロート27の取付部27aに螺入されるフロート固定ボルト26の長さや浮力調整ウエイト31の重量を変えることによって、切り欠き30cの下面の高さをクーラントタンク5のクーラント11bの液面L(
図8(a)を参照)よりも高くするような設定が行われる。しかしながら、3本のフロート固定ボルト26のそれぞれについて、フロート27の取付部27aへの螺入長さを調節する方法では、フロートサクション29を水平に保つことが難しい。また、浮力調整ウエイト31の重量は微調整が難しい。そのため、フロートサクション29ではサクションカップ30へのスカム11aの流入量の調整が容易でない。
これに対し、フロートサクション6では、前述したようにシャッターリング22を操作することで、サクションカップ21へのスカム11aの流入量を容易に調整することが可能である。
【0043】
図11(a)は
図6(a)においてフロートサクションにスカム吸引管が回転継手を用いて接続された状態を示した平面図であり、
図11(b)は
図11(a)におけるF方向矢視図である。
図12(a)及び
図12(b)はそれぞれ
図11(a)におけるG-G線矢視断面図及び
図11(b)におけるH方向矢視図である。
図13(a)は
図10(b)においてフロートサクションにスカム吸引管が直に接続された状態を示した図であり、
図13(b)は
図12(b)においてスカム吸引管を回転させた状態を示した図である。なお、
図11(a)では、切り欠きが設けられている部分と切り欠きが設けられていない部分の識別を容易にするため、切り欠きが設けられていない部分にハッチングを施しており、
図12(a)では
図11(a)に示した場合より拡大した状態で示している。また、
図13(a)及び
図13(b)ではクーラントタンクの側板及び底板の一部に断面であることを表すハッチングを付した状態で示している。そして、
図6及び
図7に示した構成要素については同一の符号を付すことにより適宜その説明を省略する。
図11(a)及び
図11(b)並びに
図12(a)及び
図12(b)に示したフロートサクション6は、サクションカップ21の代わりにサクションカップ34を備えている。サクションカップ34は、サクションカップ21において底面21aにフロートサクション6の吸込口6aが設けられる代わりに、下部側面34aに一対の吸込口6a、6aが設けられた構造となっている(
図12(a)参照)。そして、スカム吸引管7aの代わりに、
図11(a)に示すように先端側がY型継手37を用いて2本に分岐されたスカム吸引管35が一対の吸込口6a、6aに対し、回転軸がサクションカップ34の円筒軸に直交するように設置された一対の回転継手36、36を介してそれぞれ接続されている。
【0044】
クーラントタンク5の内部でクーラント11bの中で浮いた状態となっているフロートサクション6はクーラント11bの液面L(
図13(b)を参照)の低下とともに下降する。このとき、
図13(a)に示すようにサクションカップ30の底面に設けられたフロートサクション29の吸込口6aにスカム吸引管7aが直に接続されている場合、スカム吸引管7aがフロートサクション29の下降時の障害となり、フロートサクション29が所定の高さまでしか下降することができない。また、フロートサクション29の下降に伴ってスカム吸引管7aの一部がクーラントタンク5の底面5aに接触すると、スカム吸引管7aにクーラントタンク5の底面5aから作用する力がスカム吸引管7aを介してサクションカップ30に伝達される。その結果、サクションカップ30が傾いて、大量のクーラント11bがサクションカップ30の内部に流入する。これに対し、
図11及び
図12に示したフロートサクション6では、フロートサクション6の吸込口6aがサクションカップ34の下部側面34aに設けられていることに加え、スカム吸引管35の吸込口6aに接続された箇所が回転継手36の回転軸を中心として回転するため、スカム吸引管35がフロートサクション6の下降時の障害にならない。また、スカム吸引管35の吸込口6aに接続された箇所が回転継手36の回転軸を中心として回転することで、フロートサクション6が下降してスカム吸引管35の一部がクーラントタンク5の底面5aに接触した場合でも、クーラントタンク5の底面5aからスカム吸引管35が受ける力が小さいため、その力によってサクションカップ34が傾いてしまうという事態は起こり難い。したがって、上記構造のフロートサクション6を備えたスカム回収装置1では、クーラントタンク5のクーラント11bの液面L(
図13(b)を参照)が、フロートサクション29の吸込口6aがサクションカップ30の底面に設けられている場合よりも低い位置まで下がったときでもフロートサクション6が機能し得る。また、フロートサクション6が下降した場合でもクーラントタンク5の底面5aからスカム吸引管7aが受けた力が作用してサクションカップ34が傾いてしまい、大量のクーラント11bがサクションカップ34の内部へ流入するという事態を防ぐことができる。さらに、サクションカップ34の下部中心において水平軸上であって、かつ、左右対称に設けられたフロートサクション6の吸込口6aに回転継手36を介してスカム吸引管35が接続されているため、液面変動によってサクションカップ34が移動する場合でも重心の位置は変わらず、常にクーラント11bの液面L(
図13(b)を参照)とサクションカップ34における全ての切り欠き21fの下面が平行に保たれる。すなわち、フロートサクション6ではクーラントタンク5内におけるクーラント11bの液面L(
図13(b)を参照)の変動にサクションカップ34が追従するため、サクションカップ34の全周面から効率よくスカム11aを回収することが可能となっている。
なお、既設の工作機械ではクーラントタンク5に相当するタンクが浅い場合が多いが、このような工作機械を24時間稼働させると、ワークに付着するクーラント11bの量が増加するため、タンク内のクーラント11bの液面L(
図13(b)を参照)が短時間で下降する場合がある。この場合、
図13(a)に示したフロートサクション29では、前述したようにスカム吸引管7aがタンクの底面に接触することになる。
本発明のスカム回収装置は実施例1や実施例2に示した構造に限定されるものではない。例えば、エア駆動式ダイヤフラムポンプ9の代わりに電動ポンプを用いることもできる。また、スカム供給口2b及びクーラント排出口2cはスカム分離槽2の側板2d~2fの下部又は底板2gのいずれに設けられていても良い。