(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050830
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20230404BHJP
【FI】
G16H20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161134
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】牧 秀行
(72)【発明者】
【氏名】新関 亮太
(72)【発明者】
【氏名】田中 伸之輔
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】対象者の性格や気質を用いて行動介入のための施策を決定し、ひいてはより効果的な行動介入を実行する。
【解決手段】情報処理装置は、目的行動を実行させる対象者の性格又は気質に基づく基礎的特性を示す基礎的特性情報と、対象者の目的行動の履歴に基づく行動特性を示す行動特性情報と、基礎的特性と行動特性とに基づいて、対象者に対して目的行動を実行させるための施策を選択するための選択ルールと、を保持し、選択ルールを参照して、基礎的特性情報が示す基礎的特性と、行動特性情報が示す行動特性と、に基づいて施策を選択し、選択した施策に基づく表示画面を表示装置に出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置であって、
プロセッサとメモリとを含み、
表示装置に接続され、
前記メモリは、
目的行動を実行させる対象者の性格又は気質に基づく基礎的特性を示す基礎的特性情報と、
前記対象者の前記目的行動の履歴に基づく行動特性を示す行動特性情報と、
前記基礎的特性と前記行動特性とに基づいて、前記対象者に対して前記目的行動を実行させるための施策を選択するための選択ルールと、を保持し、
前記プロセッサは、
前記選択ルールを参照して、前記基礎的特性情報が示す基礎的特性と、前記行動特性情報が示す行動特性と、に基づいて施策を選択し、
前記選択した施策に基づく表示画面を前記表示装置に出力する、情報処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記選択ルールは、前記基礎的特性に基づいて前記対象者に対する行動の介入方針を選択するための第1ルールと、前記行動特性に基づいて前記介入方針に含まれる施策を選択するための第2ルールと、を含み、
前記プロセッサは、
前記第1ルールを参照して、前記基礎的特性情報が示す基礎的特性に基づいて、介入方針を選択し、
前記第2ルールを参照して、前記行動特性情報が示す行動特性に基づいて、前記選択した介入方針に含まれる施策を選択する、情報処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記メモリは、前記対象者の現在のスケジュールを示すスケジュール情報を保持し、
前記プロセッサは、前記スケジュール情報を参照して、前記対象者の現在のスケジュールが所定のスケジュールであると判定した場合、前記選択した施策の前記表示装置への出力を延期する、情報処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記プロセッサは、
所定のアルゴリズムに基づいて、前記対象者の現在の感情をセンシングし、
前記対象者の感情が所定の感情であると判定した場合、前記選択した施策の前記表示装置への出力を延期する、情報処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の情報処理装置であって、
前記メモリは、前記対象者の前記目的行動の履歴を示す目的行動記録情報を保持し、
前記プロセッサは、前記目的行動記録情報が示す前記履歴に基づいて、前記行動特性情報における行動特性を更新する、情報処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の情報処理装置であって、
前記プロセッサは、前記目的行動記録情報が示す履歴に基づいて、前記基礎的特性情報における前記基礎的特性を更新する、情報処理装置。
【請求項7】
請求項5に記載の情報処理装置であって、
前記表示画面は、
前記選択した施策に基づくメッセージと、
前記行動特性情報が示す行動特性を示す表示と、を含む、情報処理装置。
【請求項8】
情報処理装置による情報処理方法であって、
前記情報処理装置は、
プロセッサとメモリとを含み、
表示装置に接続され、
前記メモリは、
目的行動を実行させる対象者の性格又は気質に基づく基礎的特性を示す基礎的特性情報と、
前記対象者の前記目的行動の実績に基づく行動特性を示す行動特性情報と、
前記基礎的特性と前記行動特性とに基づいて、前記対象者に対して前記目的行動を実行させるための施策を選択するための選択ルールと、を保持し、
前記情報処理方法は、
前記プロセッサが、前記選択ルールを参照して、前記基礎的特性情報が示す基礎的特性と、前記行動特性情報が示す行動特性と、に基づいて施策を選択し、
前記プロセッサが、前記選択した施策を前記表示装置に出力する、情報処理方法。
【請求項9】
情報処理装置に情報処理を実行させるプログラムであって、
前記情報処理装置は、
プロセッサとメモリとを含み、
表示装置に接続され、
前記メモリは、
目的行動を実行させる対象者の性格又は気質に基づく基礎的特性を示す基礎的特性情報と、
前記対象者の前記目的行動の実績に基づく行動特性を示す行動特性情報と、
前記基礎的特性と前記行動特性とに基づいて、前記対象者に対して前記目的行動を実行させるための施策を選択するための選択ルールと、を保持し、
前記プログラムは、
前記選択ルールを参照して、前記基礎的特性情報が示す基礎的特性と、前記行動特性情報が示す行動特性と、に基づいて施策を選択する処理と、
前記選択した施策を前記表示装置に出力する処理と、を前記プロセッサに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2021-26556号公報(特許文献1)がある。この公報には、「生活習慣改善支援装置としてのサーバ50は、対象者の複数の健康行動それぞれに関する関心度を判定する関心度判定部53と、対象者の行動を特徴付ける行動特性を判定する行動特性判定部54と、関心度判定部53及び行動特性判定部54の判定結果に基づいて対象者の生活習慣改善を支援する支援情報を対象者の対象者装置へ提供する提供部とを備える。」と記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術は、対象者の健康行動に関する関心度と、対象者の行動特性と、を用いて対象者の生活習慣改善を支援する支援情報を提供しているが、このような関心度と行動特性には、対象者の性格や気質等が反映されていない。そこで、本発明の一態様は、対象者の性格や気質を用いて行動介入のための施策を決定し、ひいてはより効果的な行動介入を実行する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は以下の構成を採用する。情報処理装置は、プロセッサとメモリとを含み、表示装置に接続され、前記メモリは、目的行動を実行させる対象者の性格又は気質に基づく基礎的特性を示す基礎的特性情報と、前記対象者の前記目的行動の履歴に基づく行動特性を示す行動特性情報と、前記基礎的特性と前記行動特性とに基づいて、前記対象者に対して前記目的行動を実行させるための施策を選択するための選択ルールと、を保持し、前記プロセッサは、前記選択ルールを参照して、前記基礎的特性情報が示す基礎的特性と、前記行動特性情報が示す行動特性と、に基づいて施策を選択し、前記選択した施策に基づく表示画面を前記表示装置に出力する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、本発明の一態様は、対象者の性格や気質を用いて行動介入のための施策を決定し、ひいてはより効果的な行動介入を可能とする。
【0007】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1における行動介入システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施例1における基礎的特性データの一例である。
【
図3】実施例1における行動特性データの一例である。
【
図4】実施例1における目的行動記録データの一例である。
【
図5】実施例1におけるアンケート・ヒヤリングデータの一例である。
【
図6】実施例1における関連行動記録データの一例である。
【
図7】実施例1における介入施策データの一例である。
【
図8】実施例1における施策選択ルールの一例である。
【
図9】実施例1における施策選択データの一例である。
【
図10】実施例1における行動介入装置による全体処理の概要の一例を示す説明図である。
【
図11】実施例1における施策選択処理の一例を示すフローチャートである。
【
図12】実施例1における行動特性分析処理の一例を示すフローチャートである。
【
図13】実施例1における施策実行処理の一例を示すフローチャートである。
【
図14】実施例1における対象者の状態判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図15】実施例1における対象者端末に表示されるメッセージ表示画面の一例である。
【
図16】実施例2における行動介入装置による全体処理の概要の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態において、同一の構成には原則として同一の符号を付け、繰り返しの説明は省略する。なお、本実施形態は本発明を実現するための一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに注意すべきである。
【実施例0010】
図1は、行動介入システムの構成例を示すブロック図である。行動介入システムは、例えば、インターネット等のネットワーク400で接続された、行動介入装置100、対象者端末200、及び業務システム300を含む。行動介入装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)110、メモリ120、補助記憶装置130、通信装置140、入力装置150、及び表示装置160を有する計算機によって構成される。
【0011】
CPU110は、プロセッサを含み、メモリ120に格納されたプログラムを実行する。メモリ120は、不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)及び揮発性の記憶素子であるRAM(Random Access Memory)を含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS(Basic Input/Output System))などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、CPU101が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。
【0012】
補助記憶装置130は、例えば、磁気記憶装置(HDD(Hard Disk Drive))、フラッシュメモリ(SSD(Solid State Drive))等の大容量かつ不揮発性の記憶装置であり、CPU110が実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを格納する。すなわち、プログラムは、補助記憶装置130から読み出されて、メモリ120にロードされて、CPU110によって実行される。
【0013】
入力装置150は、キーボードやマウスなどの、オペレータからの入力を受ける装置である。表示装置160は、ディスプレイやプリンタなどの、プログラムの実行結果をオペレータが視認可能な形式で出力する装置である。
【0014】
通信装置140は、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。また、通信装置140は、例えば、USB(Universal Serial Bus)等のシリアルインターフェースを含んでもよい。
【0015】
CPU110が実行するプログラムは、リムーバブルメディア(CD-ROM、フラッシュメモリなど)又はネットワーク400を介して行動介入装置100に提供され、非一時的記憶媒体である不揮発性の補助記憶装置130に格納される。このため、行動介入装置100は、リムーバブルメディアからデータを読み込むインターフェースを有するとよい。
【0016】
行動介入装置100は、物理的に一つの計算機上で、又は、論理的又は物理的に構成された複数の計算機上で構成される計算機システムであり、同一の計算機上で別個のスレッドで動作してもよく、複数の物理的計算機資源上に構築された仮想計算機上で動作してもよい。これは、対象者端末200及び業務システム300についても同様である。
【0017】
CPU110は、例えば、施策選択部111、行動特性分析部112、対象者状態判定部113、及び施策実行部114を含む。施策選択部111は、対象者端末200のユーザである対象者が目的行動(行動介入の対象である行動)を実行するための行動介入の施策(行動を変容を促す施策)を選択する。なお、本実施形態では、対象者の目的行動が日報の提出である例を説明する。
【0018】
行動特性分析部112は、対象者の行動特性を分析する。行動特性は、対象者の目的行動についての客観的なデータが示す特性であり、対象者が行動することによって変化する特性である。対象者状態判定部113は、対象者に対して行動介入の施策が実行できる状態かを判定する。施策実行部114は、施策選択部111が選択した施策を対象者に対して実行する。
【0019】
例えば、CPU110は、メモリ120にロードされた施策選択プログラムに従って動作することで、施策選択部111として機能し、メモリ120にロードされた行動特性分析プログラムに従って動作することで、行動特性分析部112として機能する。CPU110に含まれる他の機能部についても、プログラムと機能部の関係は同様である。
【0020】
なお、CPU110に含まれる機能部による機能の一部又は全部が、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0021】
補助記憶装置130は、例えば、基礎的特性データ131、行動特性データ132、目的行動記録データ133、アンケート・ヒヤリングデータ134、関連行動記録データ135、介入施策データ136、施策選択ルール137、及び施策選択データ138を保持する。なお、補助記憶装置130に格納されている一部又は全部の情報は、メモリ120に格納されていてもよいし、行動介入装置100に接続されているデータベースに格納されていてもよい。
【0022】
基礎的特性データ131は、対象者の基礎的特性を示す情報を保持する。基礎的特性とは、対象者の性格や気質を示す特性である。行動特性データ132は、目的行動記録データ133を分析して得られ、対象者の目的行動に関する特性を示す情報を保持する。目的行動記録データ133は、対象者の目的行動に関する記録を示す情報を保持する。アンケート・ヒヤリングデータ134は、予め用意されたアンケート及び/又はヒヤリングの設問に対する、対象者の回答を示す情報を保持する。
【0023】
関連行動記録データ135は、対象者の関連行動の記録を示す情報を保持する。関連行動とは、目的行動に関連する行動であり、かつ基礎的特性(例えば対象者の性格や気質)と関係がある行動である。介入施策データ136は、選択候補の行動介入の施策の内容を示す情報を保持する。施策選択ルール137は、対象者に対する行動介入の施策を選択するためのルールである。施策選択データ138は、対象者ごとに、選択された介入施策を示す情報を保持する。
【0024】
なお、本実施形態において、行動介入システムが使用する情報は、データ構造に依存せずどのようなデータ構造で表現されていてもよい。本実施形態ではテーブル形式で情報が表現されているが、例えば、リスト、データベース又はキューから適切に選択したデータ構造体が、情報を格納することができる。
【0025】
対象者端末200は、行動介入の対象者であるユーザが有する端末である。対象者端末200は、例えば、CPU210、メモリ220、補助記憶装置230、通信装置240、入力装置250、及び表示装置260を有する計算機によって構成される。CPU210、メモリ220、補助記憶装置230、通信装置240、入力装置250、及び表示装置260のハードウェアとしての説明は、CPU110、メモリ120、補助記憶装置130、通信装置140、入力装置150、及び表示装置160の説明と同様であるため省略する。
【0026】
業務システム300は、対象者の目的行動である日報の提出管理や、その他、対象者の業務を管理するシステムである。業務システム300は、対象者端末200に入力された、対象者のスケジュール情報を取得して保持する。業務システム300は、対象者端末200から日報を取得して、保持する。
【0027】
図2は、基礎的特性データ131の一例である。基礎的特性データ131は、例えば、対象者欄1311、先延ばし欄1312、規則軽視欄1313、及び忘れがち欄1314を含む。対象者欄1311は、対象者を識別する対象者IDを保持する。先延ばし欄1312、規則軽視欄1313、及び忘れがち欄1314は、対象者の物事に対する考え方及び態度などを示す特性である基礎的特性が点数化された値を保持する。
【0028】
先延ばし欄1312は、対象者がやらなければならないことを先延ばしにしがちであるかを示す点数を保持する。規則軽視欄1313は、対象者が規則を軽視しがちであるかを示す点数を保持する。忘れがち欄1314は、対象者が物事を忘れがちであるかを示す点数を保持する。
図2の例では、基礎的特性データ131は、基礎的特性として、先延ばし傾向、規則軽視傾向、及び忘れがち傾向を示す情報を含んでいるが、対象者の性格、気質、物事に対する考え方、又は態度などを示す特性であればこれに限られない。
【0029】
図3は、行動特性データ132の一例である。行動特性データ132は、例えば、対象者欄1321、提出日数率欄1322、及び連続提出日数欄1323を含む。対象者欄1321は、対象者を識別する対象者IDを保持する。提出日数率欄1322、前月までの日報を提出しなければならない日数の合計に占める当該対象者の提出実績日数の割合を示す情報を保持する。連続提出日数欄1323は、当該対象者が連続して日報を提出中の日数(日報を提出した最高連続日数でもよい)を示す情報を保持する。
【0030】
なお、提出日数率欄1322及び連続提出日数欄1323は、目的行動の実績から得られる行動特性を示す欄であれば、他の欄であってもよい。また、本実施形態では目的行動が日報の提出である例を説明しているため、行動特性データ132に提出日数率欄1322及び連続提出日数欄1323という日報の提出に関する欄が含まれる例を説明しているものであり、行動特性データ132に含まれる欄は目的行動の種類に依存する。
【0031】
図4は、目的行動記録データ133の一例である。目的行動記録データ133は、例えば、対象者欄1331及び記録欄1332を保持する。対象者欄1331は、対象者を識別する対象者IDを保持する。記録欄1332は、前月の各日において対象者が日報を提出したかを示す情報(つまり目的行動の実績を示す情報)を保持する。記録欄1332の各日において、「〇」が記録されていれば日報が提出されたことを、「×」が記録されていれば日報が提出されていないことを示す。
【0032】
図5は、アンケート・ヒヤリングデータ134の一例である。アンケート・ヒヤリングデータ134は、例えば、対象者欄1341、設問1欄1342、設問2欄1343、及び設問3欄1344を含む。対象者欄1341は、対象者を識別する対象者IDを保持する。設問1欄1342、設問2欄1343、及び設問3欄1344は、それぞれ、事前のアンケート又はヒヤリングにおける設問1、設問2、及び設問3に対する対象者の回答を示す情報を保持する。
【0033】
図6は、関連行動記録データ135の一例である。関連行動記録データ135は、例えば、対象者欄1351、期限までの平均日数欄1352、期限遵守率欄1353、及び督促回数欄1354を含む。
【0034】
対象者欄1351は、対象者を識別する対象者IDを保持する。期限までの平均日数欄1352は、対象者が出張旅費の精算申請を提出したとき(目的行動である日報の提出とは異なるものの、日報の提出と関係がある行動)の、提出期限までの平均日数を示す情報を保持する。期限遵守率欄1353は、対象者が出張旅費の精算申請の提出期限を遵守する割合を示す情報を保持する。督促回数欄1354は、対象者が出張旅費の精算申請の提出の督促を受けた回数を示す情報を保持する。
【0035】
図7は、介入施策データ136の一例である。介入施策データ136は、例えば、介入方針欄1361、施策番号欄1362、及び施策内容欄1363を保持する。介入方針欄1361は、対象者の行動に対する介入方針を識別するIDを保持する。施策番号欄1362は、当該介入方針中の施策を識別する番号を保持する。施策内容欄1363は、施策の内容を示す情報を保持する。
【0036】
図7の例における介入方針Aは、「連続提出記録を伸ばす」、「提出する時間を決めて、そのとおり実行する」のように、対象者に実行してほしい行動を具体的に提示する方針である。
図7の例における介入方針Bは、「提出できたことを承認する」、「関係者が困っていることを伝える」のように、対象者の行動による、周囲の人間に与える影響又は周囲の人間から対象者への影響を具体的に提示する方針である。
【0037】
図8は、施策選択ルール137の一例である。施策選択ルール137は、例えば、基礎的特性関連ルール1371及び行動特性関連ルール1375を含む。基礎的特性関連ルール1371は、例えば、介入方針欄1372及び条件欄1373を含む。介入方針欄1372は、介入方針を識別するIDを保持する。条件欄1373は、介入方針を選択するための基礎的特性に関する条件を示す情報を保持する。
【0038】
行動特性関連ルール1375は、介入方針欄1376、施策番号欄1377、及び条件欄1378を含む。介入方針欄1376は、介入方針を識別するIDを保持する。施策番号欄1377は、施策を識別するIDを保持する。条件欄1378は、施策を選択するための行動特性に関する条件を示す情報を保持する。
【0039】
図8の例では、先延ばし傾向が強い(>3)ものの規則軽視傾向が強くない(<3)対象者に対しては
図7に示した介入方針Aが選択され、規則軽視傾向が強い(>=3)対象者に対しては
図7に示した介入方針Bが選択される。また、介入方針Aが選択された対象者のうち提出日数率が高い(>=0.6)対象者には
図7に示した介入方針Aの施策番号1が選択され、提出日数率が低い(<0.6)対象者には介入方針Aの施策番号2が選択される。また、介入方針Bが選択された対象者のうち提出日数率が高い(>=0.4)対象者には
図7に示した介入方針Bの施策番号1が選択され、提出日数率が低い(<0.4)対象者には介入方針Bの施策番号2が選択される。
【0040】
図8の施策選択ルール137が示すように、本実施形態では、基礎的特性から介入方針が決定され、行動特性から当該介入方針に含まれる施策が決定される。基礎的特性は、対象者の性格や気質などを示す特性であり変化しにくいものであるため、基礎的特性から介入方針が決定されることで、介入方針が変化しにくく、当該性格や気質に合った介入方針に含まれる施策を安定的に対象者に実行することができる。また、行動特性は、対象者の目的行動に対する行動によって変化しやすいものであり、行動特性によって介入方針中の施策を選択することにより、対象者の行動によって介入方針は変化しにくいものの施策を柔軟に変化させることができる。
【0041】
図9は、施策選択データ138の一例である。施策選択データ138は、例えば、対象者欄1381、介入方針欄1382、及び施策番号欄1383を保持する。対象者欄1381は、対象者を識別する対象者IDを保持する。介入方針欄1382及び施策番号欄1383は、それぞれ、当該対象者に対して選択された介入方針を示すIDと施策番号を示すIDとを保持する。
【0042】
図10は、行動介入装置100による全体処理の概要の一例を示す説明図である。基礎的特性データ131が予め用意されている。具体的には、例えば、定性的な主観調査であるアンケートやヒヤリングの結果であるアンケート・ヒヤリングデータ134に基づく定性分析と、客観的なデータである関連行動記録データ135に基づく基礎的特性を測るデータ分析と、によって、基礎的特性データ131における各対象者の基礎的特性が決定されている。
【0043】
また、行動特性データ132も予め用意されている。具体的には、例えば、目的行動記録データ133に対するデータ分析によって、行動特性データ132における各対象者の行動特性が決定されている。
【0044】
なお、目的行動記録データ133に対するデータ分析の結果は、定性的な主観調査であるアンケートやヒヤリングの結果であるアンケート・ヒヤリングデータ134に基づく定性分析の結果よりも変化しやすいため、行動特性データ132が更新される頻度は、基礎的特性データ131が更新される頻度より高いことが望ましい。
【0045】
なお、関連行動記録データ135と、目的行動記録データ133と、は対象者の行動に基づくものであり、対象者の定性的な主観調査の結果を示すアンケート・ヒヤリングデータ134より、変化しやすいものであるため、基礎的特性を測るデータ分析と、目的行動記録データ133に対するデータ分析と、が定期的に行われて、基礎的特性データ131と行動特性データ132とが定期的に更新されることが望ましい。
【0046】
施策選択部111は、基礎的特性データ131と、施策選択ルール137の基礎的特性関連ルール1371と、を参照して、各対象者の介入方針を選択する。さらに、施策選択部111は、選択した介入方針から、行動特性データ132と、施策選択ルール137の行動特性関連ルール1375と、を参照して、施策を選択する。
【0047】
対象者状態判定部113は、対象者の感情や状態をセンシングする。施策実行部114は、対象者の感情や状態が、施策を実行できる状態であると判定すれば、選択された施策を実行する。
【0048】
図11は、施策選択処理の一例を示すフローチャートである。施策選択部111は、全ての対象者(例えば、基礎的特性データ131に含まれる全ての対象者)について施策選択が終了したかを判定する(S1101)。施策選択部111は、全ての対象者について施策選択が終了したと判定した場合(S1101:YES)、施策選択処理を終了する。施策選択部111は、施策選択が終了していない対象者がいると判定した場合(S1101:NO)、施策選択が終了していない対象者を1人選択する(S1102)。
【0049】
施策選択部111は、基礎的特性データ131と、施策選択ルール137の基礎的特性関連ルール1371と、を参照して、条件欄1373が示す条件のうちステップS1102で選択した対象者の基礎的特性が満たすものに対応する介入方針を選択する(S1103)。
【0050】
施策選択部111は、行動特性データ132と、施策選択ルール137の行動特性関連ルール1375と、を参照して、ステップS1103で選択した介入方針と、条件欄1378が示す条件のうちステップS1102で選択した対象者の行動特性が満たす条件と、に対応する施策番号を選択する(S1104)。施策選択部111は、ステップS1102で選択した対象者と、ステップS1103で選択した介入方針と、ステップS1104で選択した施策番号と、を施策選択データ138に格納して、ステップS1101に戻る。
【0051】
図12は、行動特性分析処理の一例を示すフローチャートである。行動特性分析処理は、定期的に(例えば、月に1回)行われることが望ましい。行動特性分析部112は、全ての対象者(例えば、行動特性データ132に含まれる全ての対象者)について行動特性分析が終了したかを判定する(S1201)。行動特性分析部112は、全ての対象者について行動特性分析が終了したと判定した場合(S1201:YES)、行動特性分析処理を終了する。行動特性分析部112は、行動特性分析が終了していない対象者がいると判定した場合(S1201:NO)、行動特性分析が終了していない対象者を1人選択する(S1202)。
【0052】
行動特性分析部112は、目的行動記録データ133における、ステップS1202で選択した対象者の前月までの目的行動記録(各日において日報が提出されたか否か)を読み出す(S1203)。行動特性分析部112は、ステップS1203で読み出した前月までの目的行動記録から、ステップS1202で選択した対象者の日報の提出日数率、及び日報の連続提出日数を算出する(S1204)。
【0053】
行動特性分析部112は、ステップS1202で選択した対象者と、ステップS1204で算出した提出日数率及び連続提出日数と、を対応付けて、行動特性データ132を更新して(S1205)、ステップS1202に戻る。
【0054】
図13は、施策実行処理の一例を示すフローチャートである。施策実行処理は、定期的に(例えば、1日に1回)実行されることが望ましい。施策実行部114は、施策選択データ138に含まれる全ての対象者の、実行済みフラグ及び実行保留フラグをリセットする(S1301)。実行済みフラグは、対象者に対して施策を実行済みであることを示すフラグである。実行保留フラグは、対象者に対して施策を実行できない状態であることを示すフラグである。
【0055】
施策実行部114は、施策選択データ138に含まれる全ての対象者に対して、施策を実行済みであるか(つまり全ての対象者に実行済みフラグがセットされているか)を判定する(S1302)。施策実行部114は、施策選択データ138に含まれる全ての対象者に対して、施策を実行済みであると判定した場合(S1302:YES)、施策実行処理を終了する。
【0056】
施策実行部114は、施策選択データ138に含まれる対象者であって、施策を実行済みでない対象者がいると判定した場合(S1302:NO)、施策を実行済みでない(つまり実行済みフラグがセットされていない)対象者を1人選択する(S1303)。但し、施策実行部114は、ステップ1303において、施策を実行済みでない(つまり実行済みフラグがセットされていない)、かつ実行保留フラグがセットされていない対象者がいると判定した場合には、当該対象者を実行保留フラグがセットされている対象者に優先して選択する。
【0057】
施策実行部114は、ステップS1303で選択した対象者に対して施策を実行可能な状態であるかを判定する(S1304)。ステップS1304の詳細については
図14を用いて後述する。
【0058】
施策実行部114は、ステップS1303で選択した対象者に対して施策を実行可能な状態でないと判定した場合(S1304:NO)、当該対象者に実行保留フラグをセットして(S1305)、ステップS1302に戻る。なお、施策実行部114は、ステップS1304で取得したスケジュールが当該所定のスケジュールに該当すると判定した場合、当該取得したスケジュールの終了時刻を業務システム300から取得し、当該終了時刻に当該対象者の実行保留フラグをリセットしてもよいし、定期的に当該対象者の現在時刻におけるスケジュールを業務システム300から取得し、取得したスケジュールが当該所定のスケジュールに該当しないと判定した場合に当該対象者の実行保留フラグをリセットしてもよい。
【0059】
施策実行部114は、ステップS1303で選択した対象者に対して施策を実行可能な状態であると判定した場合(S1304:YES)、施策選択データ138を参照して、当該対象者に対応する介入方針及び施策番号を特定し、介入施策データ136を参照して、特定した介入方針及び施策番号に対応する施策内容を取得する(S1306)。
【0060】
施策実行部114は、ステップS1306で取得した施策内容に応じたメッセージを含むメッセージ表示画面を表示するための情報を生成する(S1307)。メッセージ表示画面の例については、
図15を用いて後述する。施策実行部114は、施策を実行して(S1308)、ステップS1302に戻る。具体的には、例えば、ステップS1308において施策実行部114は、ステップS1307で生成したメッセージを対象者端末200に送信して、表示装置260に表示させる。
【0061】
なお、
図8の施策選択ルール137及び
図13の処理では、基礎的特性から介入方針が決定され、行動特性から当該介入方針に含まれる施策が決定されているが、行動特性から介入方針が決定され、基礎的特性から当該介入方針に含まれる施策が決定されるようにしてもよい。また、
図8の施策選択ルール137及び
図13の処理において、基礎的特性又は行動特性の一方から、介入方針及び当該介入方針に含まれる施策が決定されるようにしてもよい。
【0062】
図14は、ステップS1304における対象者の状態判定処理の一例を示すフローチャートである。施策実行部114は、業務システム300から、ステップS1303で選択した対象者の本日のスケジュールを取得する(S1401)。このスケジュールには、当該対象者の予定と、当該対象者によって設定可能な当該対象者が取り込み中であることを示すフラグと、が含まれ得る。
【0063】
施策実行部114は、ステップS1303で選択した対象者の対象者端末200が起動しているかを確認する(S1402)。施策実行部114は、ステップS1303で選択した対象者の対象者端末200が起動していないと判定した場合(S1402:NO)、当該対象者に対して施策を実行できない状態であると判定して(S1403)、状態判定処理を終了する。
【0064】
施策実行部114は、ステップS1303で選択した対象者の対象者端末200が起動していると判定した場合(S1402:YES)、当該対象者が取り込み中であることを示すフラグがセットされているかを判定する(S1404)。施策実行部114は、当該対象者が取り込み中であることを示すフラグがセットされていると判定した場合(S1404:YES)、ステップS1403に遷移して、状態判定処理を終了する。
【0065】
施策実行部114は、当該対象者が取り込み中であることを示すフラグがセットされていないと判定した場合(S1404:NO)、当該対象者のスケジュールの現在時刻において会議の予定が入っているかを確認する(S1405)。なお、施策実行部114がステップS1405で確認する予定は、会議に限らず、出張、及び接待等の所定の予定であればよい。
【0066】
施策実行部114は、当該対象者のスケジュールの現在時刻において会議の予定が入っていると判定した場合(S1405:YES)、ステップS1403に遷移して、状態判定処理を終了する。施策実行部114は、当該対象者のスケジュールの現在時刻において会議の予定が入っていないと判定した場合(S1405:NO)、当該対象者に対して施策を実行できる状態であると判定して(S1406)、状態判定処理を終了する。上記した状態判定処理により、対象者が施策を受け入れやすいときに施策を実行することが可能となる。
【0067】
図15は、対象者端末200に表示されるメッセージ表示画面の一例である。メッセージ表示画面1500は、例えば、メッセージ表示領域1501、目的行動記録表示領域1502、ボタン1503、ボタン1504、及びボタン1505を含む。メッセージ表示領域1501には、ステップS1306で取得された施策内容を示すメッセージが表示される。なお、
図15のメッセージには、当該対象者の氏名が含まれているが、施策実行部114は、業務システム300から当該対象者の氏名を取得する。
【0068】
目的行動記録表示領域1502には、施策実行部114が、目的行動記録データ133における当該対象者の現在進行中の(例えば、今月の昨日時点までの)目的行動記録を集計した情報が表示されている。
図15の例では、目的行動記録表示領域1502には、当該対象者の昨日時点での日報を提出した連続日数と、当該対象者が連続して日報を提出したこれまでの最高日数と、が表示されている。
【0069】
ボタン1503が選択されると、対象者端末200は、当該対象者が本日の日報を後で提出することを示す通知を、業務システム300に対して送信し、メッセージ表示画面1500の表示が終了する。ボタン1504が選択されると、対象者端末200は、業務システム300から日報提出のための画面情報を取得し、表示装置260に日報提出のための画面が表示される。ボタン1504によって、メッセージによる介入施策をすぐに日報を提出していない対象者の行動に反映させることができる。
【0070】
ボタン1505が選択されると、対象者端末200は、当該対象者が本日の日報を提出済みであることを示す通知を、業務システム300に対して送信し、メッセージ表示画面1500の表示が終了する。
【0071】
以上、本実施例の行動介入システムは、対象者の行動特性のみならず基礎的特性に基づく施策選択ルール137を用いることで、対象者の物事に対する考え方や性格や気質等が考慮された施策を選択することができる。また、行動介入システムは、対象者が会議中であるときや取り込み中であるとき等を除いて施策を実行することで、対象者が施策を受け入れやすくなる。
【0072】
なお、施策選択部111は、ステップS1403及びステップS1406より前に、ステップS1303で選択された対象者の感情を所定のアルゴリズムでセンシングし、当該対象者の感情が所定の感情(例えば、怒り、悲しみ、又は焦り等)であると判定した場合には、ステップS1403に遷移してもよい。対象者がこのような感情であるときには、仮に施策が実行されても、施策が有効に働かないため(例えば、対象者はメッセージを聞き入れないため)、施策が実行可能でない状態と判定されている。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。