IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人 関西大学の特許一覧 ▶ NTN株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-発電機能付軸受装置 図1
  • 特開-発電機能付軸受装置 図2
  • 特開-発電機能付軸受装置 図3
  • 特開-発電機能付軸受装置 図4
  • 特開-発電機能付軸受装置 図5A
  • 特開-発電機能付軸受装置 図5B
  • 特開-発電機能付軸受装置 図5C
  • 特開-発電機能付軸受装置 図5D
  • 特開-発電機能付軸受装置 図6
  • 特開-発電機能付軸受装置 図7
  • 特開-発電機能付軸受装置 図8
  • 特開-発電機能付軸受装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050833
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】発電機能付軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20230404BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20230404BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C33/66 Z
F16C33/78 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161140
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷 弘詞
(72)【発明者】
【氏名】豊口 陽亮
【テーマコード(参考)】
3J216
3J217
3J701
【Fターム(参考)】
3J216AA02
3J216AA12
3J216AB01
3J216AB31
3J216BA30
3J216CA01
3J216CA04
3J216CA05
3J216CA06
3J216CB03
3J216CB07
3J216CB12
3J216CB13
3J216CC17
3J216CC24
3J216CC33
3J216CC35
3J216CC46
3J216CC68
3J216DA01
3J216EA05
3J217JA37
3J217JB70
3J217JC10
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701EA63
3J701FA60
(57)【要約】
【課題】発電機による発電及び転がり軸受の潤滑のそれぞれに適した潤滑剤を用いることが可能な発電機能付軸受装置を提供する。
【解決手段】発電機能付軸受装置は、転がり軸受と、発電機と、隔壁とを備える。転がり軸受は、第1対向面を含む静止輪と、第1対向面に対向している第2対向面を含む回転輪と、第1対向面と第2対向面との間に配置されている複数の転動体とを有している。発電機は、静止輪に対する位置が固定されている第1電極及び第2電極と、回転輪に対する位置が固定されている第3電極と、第1電極及び第2電極の表面に形成されている絶縁膜とを有しており、かつ第1対向面と第2対向面との間の空間である軸受空間内に配置されておいる。第3電極は、第1電極との間の距離である第1距離及び第2電極との間の距離である第2距離が回転輪の静止輪に対する回転に伴って変化するように配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
転がり軸受と、
発電機と、
隔壁とを備え、
前記転がり軸受は、第1対向面を含む静止輪と、前記第1対向面に対向している第2対向面を含む回転輪と、前記第1対向面と前記第2対向面との間に配置されている複数の転動体とを有し、
前記発電機は、前記静止輪に対する位置が固定されている第1電極及び第2電極と、前記回転輪に対する位置が固定されている第3電極と、前記第1電極及び前記第2電極の表面に形成されている絶縁膜とを有し、かつ前記第1対向面と前記第2対向面との間の空間である軸受空間内に配置されており、
前記第3電極は、前記第1電極との間の距離である第1距離及び前記第2電極との間の距離である第2距離が前記回転輪の前記静止輪に対する回転に伴って変化するように配置されており、
前記第1距離の時間変化の位相は、前記第2距離の時間変化の位相とずれており、
前記隔壁は、前記軸受空間を、前記発電機が配置されている第1空間と前記複数の転動体が配置されている第2空間とに区分している、発電機能付軸受装置。
【請求項2】
前記第1空間に封入されている第1潤滑剤と、
前記第2空間に封入されている第2潤滑剤とをさらに備え、
前記第1潤滑剤及び前記第2潤滑剤は、互いに異なる潤滑剤である、請求項1に記載の発電機能付軸受装置。
【請求項3】
前記第1潤滑剤の誘電率は、前記第2潤滑剤の誘電率よりも大きい、請求項2に記載の発電機能付軸受装置。
【請求項4】
前記隔壁は、環状であり、
前記静止輪及び前記回転輪は、それぞれ外輪及び内輪であり、
前記隔壁の外周縁は、前記第1対向面に固定されている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の発電機能付軸受装置。
【請求項5】
前記隔壁の内周縁は、前記第2対向面と接触している、請求項4に記載の発電機能付軸受装置。
【請求項6】
前記隔壁の内周縁は、前記第2対向面と離間している、請求項4に記載の発電機能付軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機能付軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-148342号公報(特許文献1)には、発電機能付軸受装置が記載されている。特許文献1に記載の発電機能付軸受装置は、転がり軸受と、第1電極、第2電極及び第3電極と、絶縁膜とを有している。
【0003】
転がり軸受は、静止輪と、回転輪と、複数の転動体とを有している。回転輪は、静止輪に対して回転する。静止輪は第1対向面を有しており、回転輪は第1対向面に対向している第2対向面を有している。複数の転動体は、第1対向面と第2対向面との間に配置されている。
【0004】
第1電極及び第2電極は、静止輪に対する位置が固定されている。第3電極は、回転輪に対する位置が固定されている。絶縁膜は、第1電極及び第2電極の表面に形成されている。第3電極と第1電極との間の距離を、第1距離とする。第3電極と第2電極との間の距離を、第2距離とする。第1距離及び第2距離は、静止輪に対する回転輪の回転に伴って変化する。第1距離の時間変化の位相は、第2距離の時間変化の位相とずれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-148342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発電機能付軸受装置では、静止輪に対する回転輪の回転に伴って第3電極が潤滑剤を介して絶縁膜と摺動することにより、第1電極と第2電極との間に起電力が発生する。特許文献1に記載の発電機能付軸受装置では、上記の起電力を大きくするために、潤滑剤として、誘電率が高い材料が用いられる。しかしながら、上記の起電力を大きくするために好適な潤滑剤が、転がり軸受の潤滑にも好適であるとは限らない。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、発電機による発電及び転がり軸受の潤滑のそれぞれに適した潤滑剤を用いることが可能な発電機能付軸受装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発電機能付軸受装置は、転がり軸受と、発電機と、隔壁とを備えている。転がり軸受は、第1対向面を含む静止輪と、第1対向面に対向している第2対向面を含む回転輪と、第1対向面と第2対向面との間に配置されている複数の転動体とを有している。発電機は、静止輪に対する位置が固定されている第1電極及び第2電極と、回転輪に対する位置が固定されている第3電極と、第1電極及び第2電極の表面に形成されている絶縁膜とを有しており、かつ第1対向面と第2対向面との間の空間である軸受空間内に配置されている。第3電極は、第1電極との間の距離である第1距離及び第2電極との間の距離である第2距離が回転輪の静止輪に対する回転に伴って変化するように配置されている。第1距離の時間変化の位相は、第2距離の時間変化の位相とずれている。隔壁は、軸受空間を、発電機が配置されている第1空間と複数の転動体が配置されている第2空間とに区分している。
【0009】
上記の発電機能付軸受装置は、第1空間に封入されている第1潤滑剤と、第2空間に封入されている第2潤滑剤とをさらに備えていてもよい。第1潤滑剤及び第2潤滑剤は、互いに異なる潤滑剤であってもよい。上記の発電機能付軸受では、第1潤滑剤の誘電率が、第2潤滑剤の誘電率よりも大きくてもよい。
【0010】
上記の発電機能付軸受装置では、隔壁が、環状であってもよい。静止輪及び回転輪は、それぞれ外輪及び内輪であってもよい。隔壁の外周縁は、第1対向面に固定されていてもよい。
【0011】
上記の発電機能付軸受装置では、隔壁の内周縁が、第2対向面と接触していてもよい。上記の発電機能付軸受装置では、隔壁の内周縁が、第2対向面と離間していてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の発電機能付軸受装置によると、発電機による発電及び転がり軸受の潤滑のそれぞれに適した潤滑剤を用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】軸受装置100の模式的な断面図である。
図2】基材21の斜視図である。
図3】環状部材26の斜視図である。
図4】軸受装置100の拡大断面図である。
図5A】軸受装置100の動作を説明するための第1説明図である。
図5B】軸受装置100の動作を説明するための第2説明図である。
図5C】軸受装置100の動作を説明するための第3説明図である。
図5D】軸受装置100の動作を説明するための第4説明図である。
図6】軸受装置100Aの拡大断面図である。
図7】軸受装置100Bの模式的な断面図である。
図8】基材27の斜視図である。
図9】環状部材28の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0015】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態に係る発電機能付軸受装置を説明する。第1実施形態に係る発電機能付軸受装置を、軸受装置100とする。
【0016】
以下に、軸受装置100の構成を説明する。
【0017】
図1は、軸受装置100の模式的な断面図である。図1に示されるように、軸受装置100は、転がり軸受10と、発電機20と、隔壁30とを有している。
【0018】
転がり軸受10は、外輪11と、内輪12と、複数の転動体13と、保持器14と、シール部材15とを有している。転がり軸受10は、例えば、深溝玉軸受である。但し、転がり軸受10は、これに限られない。
【0019】
外輪11は、転がり軸受10の静止輪である。外輪11は、リング状である。外輪11の中心軸を、中心軸Aとする。中心軸Aに沿う方向を、軸方向とする。中心軸Aを通り、かつ中心軸Aに直交している方向を、径方向とする。中心軸Aを中心とする円周に沿う方向を、周方向とする。外輪11は、第1幅面11aと、第2幅面11bと、内周面11cと、外周面11dとを有している。
【0020】
第1幅面11a及び第2幅面11bは、軸方向における外輪11の端面である。第2幅面11bは、第1幅面11aの反対面である。
【0021】
内周面11cは、周方向に延在している。内周面11cは、中心軸A側を向いている。内周面11cの軸方向における一方端は第1幅面11aに連なっており、内周面11cの軸方向における他方端は第2幅面11bに連なっている。
【0022】
内周面11cは、軌道面11caを有している。軌道面11caは、転動体13に接触する内周面11cの部分である。軌道面11caは、例えば、内周面11cの軸方向における中央にある。軌道面11caは、周方向に延在している。内周面11cは、軌道面11caにおいて、外周面11d側に窪んでいる。軌道面11caは、断面視において、部分円弧状である。
【0023】
外周面11dは、周方向に延在している。外周面11dは、中心軸Aとは反対側を向いている。すなわち、外周面11dは、径方向における内周面11cの反対面である。外周面11dの軸方向における一方端は第1幅面11aに連なっており、外周面11dの軸方向における他方端は第2幅面11bに連なっている。外輪11は、外周面11dにおいてハウジング(図示せず)に嵌め合わされる。
【0024】
内輪12は、転がり軸受10の回転輪である。すなわち、内輪12は、外輪11に対して回転する。内輪12は、リング状である。内輪12は、外輪11の径方向内側に配置されている。内輪12は、第1幅面12aと、第2幅面12bと、内周面12cと、外周面12dとを有している。
【0025】
第1幅面12a及び第2幅面12bは、軸方向における内輪12の端面である。第2幅面12bは、第1幅面12aの反対面である。第1幅面12aは、軸方向において、第1幅面11aと同一側にある。第2幅面12bは、軸方向において、第2幅面11bと同一側にある。
【0026】
内周面12cは、周方向に延在している。内周面12cは、中心軸A側を向いている。内周面12cの軸方向における一方端は第1幅面12aに連なっており、内周面12cの軸方向における他方端は第2幅面12bに連なっている。内輪12は、内周面12cにおいて軸(図示せず)に嵌め合わされている。
【0027】
外周面12dは、周方向に延在している。外周面12dは、中心軸Aとは反対側を向いている。すなわち、外周面12dは、径方向における内周面12cの反対面である。外周面12dは、径方向において内周面11cと対向している。外周面12dの軸方向における一方端は第1幅面12aに連なっており、外周面12dの軸方向における他方端は第2幅面12bに連なっている。
【0028】
外周面12dは、軌道面12daを有している。軌道面12daは、転動体13に接触する外周面12dの部分である。軌道面12daは、例えば、外周面12dの軸方向における中央にある。軌道面12daは、周方向に延在している。外周面12dは、軌道面12daにおいて、内周面12c側に窪んでいる。軌道面12daは、断面視において、部分円弧状である。軌道面12daは、径方向において軌道面11caに対向している。
【0029】
転動体13は、例えば、玉である(球状である)。転動体13は、内周面11cと外周面12dとの間に配置されている。より具体的には、転動体13は、軌道面11caと軌道面12daとの間に配置されている。複数の転動体13は、保持器14により保持されている。隣り合っている2つの転動体13の間の距離は、保持器14により一定範囲内に保たれている。
【0030】
内周面11cと外周面12dとの間の空間を、軸受空間とする。第1幅面11a側にある内周面11cの端部には、溝11cbが形成されている。第1幅面12a側にある外周面12dの端部には、溝12dbが形成されている。溝11cb及び溝12dbは、周方向に延在している。シール部材15の外周縁は、溝11cbに圧入されることにより、外輪11に固定されている。シール部材15の内周縁は、溝12dbに接触している。これにより、軸受空間の第1幅面11a(第1幅面12a)側がシール部材15により閉塞されている。
【0031】
シール部材15は、第1面15aと、第2面15bとを有している(図4参照)。第1面15aは、軸受空間の内部側に向いている面である。第2面15bは、軸方向における第1面15aの反対面である。軸受空間の第2幅面11b(第2幅面12b)側は、シール部材16(図示せず)により閉塞されていてもよい。
【0032】
発電機20は、基材21と、複数の第1電極22及び第2電極23と、絶縁膜24とを有している。図2は、基材21の斜視図である。図2に示されるように、基材21は、第1面21aと、第2面21bとを有している。第1面21a及び第2面21bは、軸方向における基材21の端面である。第2面21bは、第1面21aの反対面である。基材21は、例えば絶縁材料により形成されている。基材21は、第2面21bが第1面15aと対向するように、シール部材15上に配置されている。
【0033】
第1電極22及び第2電極23は、第1面21a上に配置されている。複数の第1電極22は周方向において間隔を空けて配置されており、複数の第2電極23は周方向において間隔を空けて配置されている。隣り合っている2つの第1電極22の間の周方向における距離及び隣り合っている2つの第2電極23の間の周方向における距離は、例えば一定である。第1電極22及び第2電極23は、周方向において交互に配置されている。
【0034】
複数の第1電極22は互いに電気的に接続されており、複数の第2電極23は互いに電気的に接続されている。第1電極22及び第2電極23は、導電材料により形成されている。第1電極22及び第2電極23は、例えば銅箔により形成されている。
【0035】
第1電極22には、引き出し線22aが接続されている。第2電極23には、引き出し線23aが接続されている。引き出し線22a及び引き出し線23aは、基材21に形成されている貫通穴及びシール部材15に形成されている貫通穴を通って軸受空間の外部に引き出されている。
【0036】
基材21は、シール部材15に固定されている。上記のとおり、シール部材15は、外輪11に固定されている。そのため、基材21上に配置されている第1電極22及び第2電極23は、外輪11に対する位置が固定されている。
【0037】
図1に示されるように、絶縁膜24は、第1電極22及び第2電極23の表面に形成されている。絶縁膜24は、絶縁材料により形成されている。絶縁膜24は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜又はダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜である。但し、絶縁膜24は、これに限られない。
【0038】
発電機20は、環状部材26をさらに有している。図3は、環状部材26の斜視図である。図3に示されるように、環状部材26は、第1面26aと、第2面26bとを有している。第1面26a及び第2面26bは、軸方向における環状部材26の端面である。第1面26aは、絶縁膜24側を向いている(図1参照)。第2面26bは、第1面26aの反対面である。環状部材26は、導電材料により形成されている。環状部材26は、内周縁において、外周面12dに固定されている。
【0039】
環状部材26は、第1面26aに複数の凸部26cを有している。凸部26cは、第2面26bとは反対側に向かって突出している。複数の凸部26cは、周方向において間隔を空けて配置されている。凸部26cの数は、例えば、第1電極22の数及び第2電極23の数に等しい。隣り合っている2つの凸部26cの間の周方向における距離は、例えば一定である。
【0040】
凸部26cは、第3電極25を構成している。上記のとおり、第1面26aは絶縁膜24側を向いているため、凸部26c(第3電極25)は、絶縁膜24を介在させて第1電極22及び第23と対向している。上記のとおり、環状部材26は内周縁において内輪12に固定されているため、第3電極25は、内輪12に対する位置が固定されている。
【0041】
第3電極25(凸部26c)と第1電極22との間の軸方向における距離を、第1距離とする。第3電極25(凸部26c)と第2電極23との間の軸方向における距離を、第2距離とする。内輪12の外輪11の回転に伴い、第1距離及び第2距離は、変化する。
【0042】
上記のとおり、第1電極22及び第2電極23が周方向において交互に等間隔で配置され、第3電極25(凸部26c)が周方向において交互に等間隔で配置され、第3電極25(凸部26c)の数が第1電極22の数及び第2電極23の数に等しいため、第3電極25(凸部26c)は、内輪12の外輪11に対する回転に伴い、第1電極22及び第2電極23と交互に対向する。そのため、第1距離の時間変化の位相及び第2距離の時間変化の位相は、互いにずれている。
【0043】
軸受空間のうちの発電機20を含む空間を、第1空間とする。軸受空間のうちの複数の転動体13を含む空間を、第2空間とする。図1に示されるように、隔壁30は、軸方向において発電機20(環状部材26)と保持器14との間に配置されていることにより、軸受空間を第1空間と第2空間とに区分している。隔壁30は、環状である。
【0044】
図4は、軸受装置100の拡大断面図である。図4に示されるように、軌道面11caと溝11cbとの間にある内周面11cの部分には、溝11ccが形成されている。軌道面12daと溝12dbとの間にある外周面12dの部分には、溝12dcが形成されている。溝11cc及び溝12dcは、周方向に延在している。
【0045】
隔壁30は、外周縁が溝11ccに圧入されることにより、外輪11に対して固定されている。すなわち、隔壁30の外周縁は、溝11ccに対する圧入部になっている。隔壁30の内周縁は、溝12dcに接触している。すなわち、隔壁30の内周縁は、隔壁30のリップになっている。隔壁30の内周縁(リップ)は、内輪12の外輪11に対する回転に伴い、溝12dcと摺動する。隔壁30は、弾性部材により形成されていることが好ましい。隔壁30は、例えば、ニトリルゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等により形成されている。
【0046】
第1空間には、第1潤滑剤L1が封入されている。第2空間には、第2潤滑剤L2が封入されている。第2潤滑剤L2は、第1潤滑剤L1とは異なる潤滑剤である。第1潤滑剤L1は、発電機20の動作に適した潤滑剤である。第1潤滑剤L1の誘電率は、好ましくは、第2潤滑剤L2の誘電率よりも高い。第1潤滑剤L1は、例えばグリセリンである。第2潤滑剤L2は、転がり軸受10の潤滑に適した潤滑剤である。第2潤滑剤L2は、例えばリチウム石鹸基グリースである。
【0047】
以下に、軸受装置100の発電動作を説明する。
【0048】
図5Aは、軸受装置100の動作を説明するための第1説明図である。図5Bは、軸受装置100の動作を説明するための第2説明図である。図5Cは、軸受装置100の動作を説明するための第3説明図である。図5Dは、軸受装置100の動作を説明するための第4説明図である。
【0049】
軸受装置100が動作する際には、第1空間に第1潤滑剤L1が供給されている。そのため、図5Aに示されるように、内輪12の回転に伴って、第1電極22上にある絶縁膜24と第3電極25(凸部26c)とが第1潤滑剤L1を介して互いに摺動する。その結果、第1電極22に正の電荷が誘導されるとともに、第2電極23に負の電荷が誘導される。図5Aに示される状態から内輪12の相対的な回転が進むと、図5Bに示されるように、各電極に誘導された電荷に起因した起電力に基づいて、第1電極22から第2電極23へと電流が流れる。
【0050】
図5Bに示される状態から内輪12の回転が進むと、図5Cに示されるように、第2電極23上にある絶縁膜24と第3電極25(凸部26c)とが第1潤滑剤L1を介して互いに摺動する。その結果、第1電極22に負の電荷が誘導されるとともに、第2電極23に正の電荷が誘導される。
【0051】
図5Cに示される状態から内輪12の回転が進むと、図5Dに示されるように、各電極に誘導された電荷に起因した起電力に基づき、第2電極23から第1電極22へと電流が流れる。図5Dに示される状態から内輪12の回転が進むと、図5Aに示される状態に戻る。このように、軸受装置100においては、内輪12の回転に伴って、第1電極22及び第2電極23からパルス状の電流(電圧)が出力される。第1電極22及び第2電極23において発生した電力は、電気二重層キャパシタ、二次電池等に蓄電される。
【0052】
以下に、軸受装置100の効果を説明する。
【0053】
上記のとおり、軸受装置100では、第1電極22上及び第2電極23上にある絶縁膜24と第3電極25とが第1潤滑剤L1を介して互いに摺動することにより、発電が行われる。また、軸受装置100では、転動体13と軌道面11ca及び軌道面12daとが第2潤滑剤L2を介して互いに転がり運動する。
【0054】
転がり軸受10の軸受空間は、隔壁30により、第1空間と第2空間とに互いに区分されている。そのため、第1潤滑剤L1と第2潤滑剤L2とが互いに混入することが防止され、第1潤滑剤L1を第2潤滑剤L2と異なる潤滑剤にすること、すなわち、第1潤滑剤L1及び第2潤滑剤L2にそれぞれ発電機20による発電及び転がり軸受10の潤滑に適した潤滑剤を用いることが可能となる。その結果、軸受装置100では、発電機20における発電性能と転がり軸受10における回転性能とを両立することができる。
【0055】
隔壁30の外周縁を外輪11に固定する場合の隔壁30の内周縁における内輪12に対する周速は、隔壁30の内周縁を内輪12に固定する場合の隔壁30の外周縁における外輪11に対する周速よりも小さくなる。軸受装置100では、隔壁30の外周縁が外輪11に固定されているため、隔壁30の内周縁と内輪12との接触に伴う摩擦損失や隔壁30の内周縁における摩耗を抑制することができる。
【0056】
軸受装置100では、隔壁30の内周縁が内輪12に接触しているため、第1潤滑剤L1及び第2潤滑剤L2の粘度が低い場合であっても、隔壁30が第1潤滑剤L1及び第2潤滑剤L2をより確実にシールすることが可能となる。
【0057】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る発電機能付軸受装置の構成を説明する。第2実施形態に係る発電機能付軸受装置を、軸受装置100Aとする。ここでは、軸受装置100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0058】
軸受装置100Aは、転がり軸受10と、発電機20と、隔壁30とを有している。この点に関して、軸受装置100Aの構成は、軸受装置100の構成と共通している。
【0059】
図6は、軸受装置100Aの拡大断面図である。図6に示されるように、軸受装置100Aでは、隔壁30の内周縁が、溝12dcから離間している。すなわち、軸受装置100Aでは、隔壁30の内周縁が、ラビリンス部になっており、溝12dcとの間でラビリンス隙間を構成している。この点に関して、軸受装置100Aの構成は、軸受装置100の構成と異なっている。
【0060】
軸受装置100Aでは、隔壁30の内周縁が、内輪12と接触していない。そのため、軸受装置100Aによると、隔壁30の内周縁と内輪12との接触に伴う摩擦損失や隔壁30の内周縁における摩耗を抑制することができる。なお、第1潤滑剤L1及び第2潤滑剤L2の粘度が高い場合には、隔壁30の内周縁と内輪12とが離間していても、第1潤滑剤L1及び第2潤滑剤L2が互いに混入することが抑制される。
【0061】
(第3実施形態)
以下に、第3実施形態に係る発電機能付軸受装置を説明する。第3実施形態に係る発電機能付軸受装置を、軸受装置100Bとする。ここでは、軸受装置100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0062】
図7は、軸受装置100Bの模式的な断面図である。図7に示されるように、軸受装置100Bは、転がり軸受10と、発電機20と、隔壁30とを有している。この点に関して、軸受装置100Bの構成は、軸受装置100の構成と共通している。しかしながら、軸受装置100Bの構成は、発電機20の詳細に関して、軸受装置100の構成と異なっている。
【0063】
軸受装置100Bでは、発電機20が、基材21に代えて基材27を有している。図8は、基材27の斜視図である。図8に示されるように、基材27は、内周面27aと、外周面27bとを有している。内周面27a及び外周面27bは、周方向に延在している。内周面27aは、中心軸A側を向いている。外周面27bは、中心軸Aとは反対側を向いている(径方向における内周面27aの反対面である)。基材27は、外周面27bにおいて、外輪11に固定されている。基材27は、絶縁材料により形成されている。第1電極22及び第2電極23は、内周面27a上に配置されている。
【0064】
軸受装置100Bでは、発電機20が、環状部材26に代えて環状部材28を有している。図9は、環状部材28の斜視図である。図9に示されるように、環状部材28は、内周面28aと、外周面28bとを有している。内周面28a及び外周面28bは、周方向に延在している。内周面28aは、中心軸A側を向いている。環状部材28は、内周面28aにおいて、内輪12に固定されている。外周面28bは、中心軸Aとは反対側を向いている(径方向における内周面28aの反対面である)。
【0065】
環状部材28は、外周面28bに、複数の凸部28cを有している。凸部28cは、内周面28aとは反対側に向かって外周面28bから突出している。複数の凸部28cは、周方向において等間隔で配置されている。凸部28cの数は、第1電極22の数及び第2電極23の数に等しい。凸部28cは、径方向において、第1電極22及び第2電極23の表面に形成されている絶縁膜24と対向している。凸部28cは、第3電極25を構成している。なお、軸受装置100Bでは、第1距離は第3電極25(凸部28c)と第1電極22との間の径方向における距離であり、第2距離は第3電極25(凸部28c)と第2電極23との間の径方向における距離である。
【0066】
軸受装置100Bでも、内輪12の外輪11に対する回転に伴い、第3電極25(凸部28c)が第1潤滑剤L1を介在させて絶縁膜24と摺動し、第1距離及び第2距離が互いに異なる位相で時間変化する。そのため、軸受装置100Bでも、軸受装置100と同様に、発電機20が発電動作を行う。
【0067】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0068】
100 軸受装置、100A 軸受装置、100B 軸受装置、10 転がり軸受、11 外輪、11a 第1幅面、11b 第2幅面、11c 内周面、11ca 軌道面、11cb 溝、11cc 溝、11d 外周面、12 内輪、12a 第1幅面、12b 第2幅面、12c 内周面、12d 外周面、12da 軌道面、12db,12dc 溝、13 転動体、14 保持器、15 シール部材、15a 第1面、15b 第2面、16 シール部材、20 発電機、21 基材、21a 第1面、21b 第2面、22 第1電極、22a 引き出し線、23 第2電極、23a 引き出し線、24 絶縁膜、25 第3電極、26 環状部材、26a 第1面、26b 第2面、26c 凸部、27 基材、27a 内周面、27b 外周面、28 環状部材、28a 内周面、28b 外周面、28c 凸部、30 隔壁、A 中心軸、L1 第1潤滑剤、L2 第2潤滑剤。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9