(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023005086
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】磁歪素子
(51)【国際特許分類】
H10N 35/00 20230101AFI20230111BHJP
H02N 2/18 20060101ALI20230111BHJP
H10N 35/01 20230101ALI20230111BHJP
【FI】
H01L41/12
H02N2/18
H01L41/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021106784
(22)【出願日】2021-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】大塚 努
【テーマコード(参考)】
5H681
【Fターム(参考)】
5H681AA06
5H681BB08
5H681DD30
5H681DD83
(57)【要約】
【課題】全体的に発電効率が高い磁歪素子を提供する。
【解決手段】磁歪素子1は、長手形状を有し、長手方向に対する交差方向に振動させて逆磁歪効果を発生させるものである。磁歪素子1は、長手形状の長手方向に沿って、少なくとも一部に、長手方向に対する交差方向に湾曲する湾曲形状1bが複数周期で形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手形状を有し、長手方向に対する交差方向に振動させて逆磁歪効果を発生させる磁歪素子であって、
前記長手形状の長手方向に沿って、少なくとも一部に、前記交差方向に湾曲する湾曲形状が複数周期で形成されていることを特徴とする磁歪素子。
【請求項2】
前記湾曲形状は、前記長手方向及び前記交差方向に直交する方向から見て波形に形成されている請求項1に記載の磁歪素子。
【請求項3】
他の装置への固定部を有し、
前記固定部の近傍にある第1位置における前記湾曲形状の振幅は、前記第1位置よりも前記固定部から離間した第2位置における前記湾曲形状の振幅よりも大きい請求項2に記載の磁歪素子。
【請求項4】
前記磁歪素子は、U字型に屈曲して形成されており、固定端部と、自由端部と、前記固定端部と前記自由端部とに接続された折返し部と、を有し、
前記波形は、前記自由端部が形成されている側に形成されている請求項2又は3に記載の磁歪素子。
【請求項5】
前記波形は、前記折返し部にも形成されている請求項4に記載の磁歪素子。
【請求項6】
他の装置への固定部を有し、
前記固定部の近傍にある第1位置における前記湾曲形状の周期は、前記第1位置よりも前記固定部から離間した第2位置における前記湾曲形状の周期よりも大きい請求項2から5のいずれか一項に記載の磁歪素子。
【請求項7】
前記湾曲形状は、コイル状に形成されている請求項1に記載の磁歪素子。
【請求項8】
前記湾曲形状は、前記長手方向を巻き軸方向とする螺旋状に形成されている請求項1に記載の磁歪素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁歪素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から磁歪素子を発電素子として用いることが知られている。磁歪素子(磁歪板又は磁歪棒)は、片持ち梁又は両持ち梁として固定され、ストレート状に形成され、その周りに、電力を取り出すためのコイルが配置されて、磁歪発電素子を構成することが一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、U字型のフレーム(同文献には、フレームヨークと記載。)と、フレームに取り付けられたストレート状の磁歪素子(同文献には、磁歪板と記載。)と、フレーム及び磁歪素子の周囲に巻回されたコイルと、を備える磁歪発電素子が開示されている。
この磁歪発電素子は、フレームの先端に錘等の振動時の共振周波数を調整可能な部品を備える。この磁歪発電素子に外力が加わることによって振動が生じた場合に、錘が上下に振動し、鉄ガリウム合金又は鉄コバルト合金で形成された磁歪素子が設けられたU字型のフレームの根本部分(U字の底部)が撓むと同時に、フレームの先端の振幅が大きくなり、周囲の磁場を変化させる。その変化した磁場によって、コイル内に電流が誘起されて発電がなされることになる。
【0004】
また、特許文献2には、両持ち梁状態で固定された磁歪素子(同文献には、磁歪棒と記載。)を有する発電装置が開示されている。この発電装置には、ストレート棒状の磁歪素子の両端が固定され、その周囲にコイルが巻回されている。そのため、振動を受けた場合、磁歪素子の固定されている部分があまり曲がらないが、中心部分の移動距離が大きくなり、周囲の磁場を変化させる。このため、コイル内に電流が誘起される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-78237号公報
【特許文献2】国際公開第2015/178053号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の磁歪素子に関して、U字型、片持ち、両持ちなどの構造においては、外部から振動を受けたときに、固定箇所近傍、又は不動部分近傍に、大きな荷重がかかることになる。そして、構造力学上、せん断力は、固定箇所からの距離が離れるにつれ、二次関数的に単純減少する。
【0007】
つまり、固定箇所近傍においては、磁歪材料のせん断ひずみが大きく、固定箇所から離れれば離れるほど、磁歪材料の変位は大きくなるが、せん断ひずみが小さくなる。言い換えれば、固定箇所から離れるほど、磁場変化への寄与が少なくなり、発電量及び効率が小さくなるともいえる。
すなわち、長手方向に延在する磁歪素子において、その固定部位又は不動部位の近傍ほど発電力が高いが、離間するほど発電力が弱くなるという問題があった。
【0008】
特許文献1においては、ストレート状の磁歪素子が振動する際、自由端のせん断ひずみは屈曲箇所よりはるかに小さく、発電に寄与する分も小さくなる。
特許文献2においては、ストレート棒状の磁歪素子が外部から振動を受ける際、磁歪素子の両端部のせん断ひずみは大きいが、その中心の位置におけるせん断ひずみは相対的に小さくなる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、全体的に発電効率が高い磁歪素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る磁歪素子は、長手形状を有し、長手方向に対する交差方向に振動させて逆磁歪効果を発生させる磁歪素子であって、
前記長手形状の長手方向に沿って、少なくとも一部に、前記交差方向に湾曲する湾曲形状が複数周期で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、全体的に発電効率が高い磁歪素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る片持ち梁状の磁歪素子を示す側面図である。
【
図2】片持ち梁状の磁歪素子が振動したときのイメージ図である。
【
図4】両持ち梁状の磁歪素子が振動したときのイメージ図である。
【
図5】一方の面のみ波形に形成された磁歪素子を示す側面図である。
【
図7】螺旋状の帯形状の磁歪素子を示す側面図である。
【
図8】U字型に形成された磁歪素子を示す側面図である。
【
図9】自由端部側において一方の面のみ波形に形成された磁歪素子を示す側面図である。
【
図10】折返し部にも波形に形成されている磁歪素子を示す側面図である。
【
図11】螺旋溝が形成された磁歪素子を示す側面図である。
【
図12】振幅の異なる片持ち梁状の磁歪素子を示す側面図である。
【
図13】振幅の異なる両持ち梁状の磁歪素子を示す側面図である。
【
図14】周期の異なる片持ち梁状の磁歪素子を示す側面図である。
【
図15】周期の異なる両持ち梁状の磁歪素子を示す側面図である。
【
図16】波形の他の例に係る磁歪素子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る磁歪素子について説明する。
なお、本実施形態で用いる図面は、本発明の磁歪素子の構成、形状、磁歪素子を構成する各部材の配置を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
また、図面は、磁歪素子の長さ、幅、高さといった寸法比を必ずしも正確に表すものではない。
また、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
<概要>
まず、本実施形態に係る磁歪素子1の概要について主に
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る片持ち梁状の磁歪素子1を示す側面図、
図2は、片持ち梁状の磁歪素子1が振動したときのイメージ図である。
【0014】
本実施形態に係る磁歪素子1は、長手形状を有し、長手方向に対する交差方向に振動させて逆磁歪効果を発生させるものである。
磁歪素子1は、長手形状の長手方向に沿って、少なくとも一部に、長手方向に対する交差方向に湾曲する湾曲形状1bが複数周期で形成されている。
本書における「湾曲」は、緩やかに曲がった形状の他に、鋭角に曲がった「屈曲」を含むものとする。
磁歪素子1が板状の場合においては、交差方向は面直方向であり、ワイヤ状の場合においては、交差方向は長手方向に交差する任意方向をいうものとする。さらに、面直方向は、磁歪素子1の長手方向及び幅方向の両方に対して直交する方向をいうものとする。
「複数周期」とは、「複数の同じ周期」と「複数の異なる周期」とを含む。
【0015】
上記構成によれば、長手方向に撓みやすくなるポイントを周期的に複数設けることで、逆磁歪効果による発電効率を高めることができる。
なお、磁歪素子1に振動を付与する振動源としては、使用者が直に先端を押す方法や、乗り物の振動を利用するものであってもよい。
【0016】
<片持ち梁状の構成>
磁歪素子1に形成された湾曲形状1bは、
図1及び
図2に示すように、長手方向及び交差方向に直交する方向から見て波形に形成されている。
本実施形態に係る磁歪素子1においては、水平方向を長手方向としており、その交差方向は鉛直方向であり、これらに直交する方向はから見ることは、側面視においてという意味である。
しかし、このような構成に限定されず、他の構成であってもよい。
【0017】
上記構成の磁歪素子1は、従来のストレート形状の磁歪素子に比べて、他の装置90への固定箇所(固定部1a)から離れる(右側にある)先端でも、長手方向を沿って伸びながら、振幅方向において大きく変形することができる。そのため、素子全体の発電力を高めることを実現できる。
つまり、湾曲形状1bが波形に形成されていることで、波の各屈曲部分で縦ひずみ及びせん断ひずみを生じさせやすくすることができ、全体としての逆磁歪効果による発電効率を高めることができる。
【0018】
<両持ち梁状の構成>
次に、両持ち梁状の磁歪素子1について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、両持ち梁状の磁歪素子1を示す側面図、
図4は、両持ち梁状の磁歪素子1が振動したときのイメージ図である。
図4に示すように、磁歪素子1が振動すると、波形を構成する山頂部分と山底部分の節部分で折れ曲がりやすくなる。
また、
図3及び
図4に示すように、両持ち梁状の構成である場合、磁歪素子1が他の装置90への両端部の固定箇所(固定部1a)から中心位置に向けて大きく伸びながら上下方向に変形している。このため、従来の磁歪素子に比べて、固定箇所から最も離れる中心位置も大きく変形させることができ、発電効率を高めることもできる。
【0019】
<一方の面のみ波形である構成>
次に、一方の面のみ波形である磁歪素子10について、
図5を参照して説明する。
図5は、一方の面のみ波形(湾曲形状10b)に形成された磁歪素子10を示す側面図である。
磁歪素子10は、一方の面(上面)のみ波打つように湾曲形状10bとなっており、他方の面(下面)は、平面10aである。
つまり、磁歪素子10は、長手方向の異なる位置で、厚みが異なることで、波形に形成されている。
【0020】
磁歪素子1、10の湾曲形状1b、10bが波形に形成されていることによって、外力が付与されたときに波形の湾曲部分にひずみを生じさせやすくなる。そのため、従来のストレート形状の磁歪材料に比べて、逆磁歪効果による発電効率を高くすることができる。
【0021】
また、上記のように、湾曲形状1b、10bが円弧状の波形であるため、外力を受ける際、円心方向の成分と接線方向の成分に外力を分解することができる。このため、外力が付与されたときに振動する自由端においては、外力の接線方向の成分により磁歪素子1及び磁歪素子10が伸張しやすくなる。
すなわち、本実施形態に係る磁歪素子1及び磁歪素子10においては、従来のストレート形状の磁歪素子に比べて小さな力でも長尺方向に変形させやすくなる。
【0022】
<コイル状の構成>
次に、コイル状の磁歪素子20について、
図6を主に参照して説明する。
図6は、コイル状の磁歪素子20を示す側面図である。
【0023】
磁歪素子20の湾曲形状20aは、コイル状に形成されている。本実施形態に係る磁歪素子20においては、すべてが湾曲形状20aで形成されている(コイル状に形成されている)ものである。なお、磁歪素子20は、一部のみコイル状に形成されているものであってもよい。
特に、磁歪素子20は、コイル状に形成可能な例えばアモルファス合金で形成されている。
上記構成によれば、磁歪素子20がコイル状に形成されていることで、振動が付与された際に長手方向の縦ひずみ及びせん断ひずみを大きくすることができ、発電効率を高めることができる。
【0024】
<螺旋状の帯形状の構成>
次に、螺旋状の磁歪素子30について、
図7を主に参照して説明する。
図7は、螺旋状の帯形状の磁歪素子30を示す側面図である。
【0025】
本実施形態に係る磁歪素子30の湾曲形状30bは、長手方向を巻き軸方向とする螺旋状(の帯形状)に形成されている。本実施形態に係る磁歪素子30においては、すべてが湾曲形状30bで形成されている(螺旋状の帯形状に形成されている)ものである。なお、磁歪素子30は、一部のみ螺旋状(の帯形状)に形成されているものであってもよい。
上記構成によれば、磁歪素子30が振動したときに、螺旋状であることで長手方向に伸縮することで、長手方向のひずみを大きくすることができ、発電効率を高めることができる。
【0026】
<U字型の構成>
次に、U字型の磁歪素子40、41、42について、
図8から
図10を主に参照して説明する。
図8は、U字型に形成された磁歪素子40を示す側面図、
図9は、自由端部40d側において一方の面のみ波形に形成された磁歪素子41を示す側面図、
図10は折返し部40eも波形に形成されている磁歪素子42を示す側面図である。
【0027】
本実施形態に係る磁歪素子40は、U字型に屈曲して形成されており、固定端部40cと、自由端部40dと、固定端部40cと自由端部40dとに接続された折返し部40eと、を有する。
波形(湾曲形状40b)は、自由端部40dが形成されている側に形成されている。
具体的には湾曲形状40bは、固定端部40cに近接又は離間する方向(上下方向)に波打つように形成されている。
【0028】
上記構成によれば、自由端部40d側に波形(湾曲形状40b)が形成されていることで、振動時に波形部分を振動させることができ、波の各屈曲部分で縦ひずみ及びせん断ひずみを生じさせやすくすることができ、効率的に発電することができる。
【0029】
図9に示す磁歪素子41においては、波形の湾曲形状41bが、自由端部40dにおける固定端部40cとの対向面側にのみ形成されている。
このような構成であっても、自由端部40dにおける肉厚を軸線方向の位置で異ならせることができる。このため、磁歪素子40と同様に、振動時に波形部分を振動させることができ、波の各屈曲部分で縦ひずみ及びせん断ひずみを生じさせやすくすることができ、効率的に発電することができる。
【0030】
図10に示す磁歪素子42においては、波形(湾曲形状42b)は、折返し部40eにも形成されている。
上記構成によれば、折返し部40eに生じるひずみを大きくして、発電効率を高めることができる。
【0031】
なお、
図10に示す磁歪素子42においては、折返し部40eにおける波形の周期が、自由端部40dにおける波形の周期よりも短い。
このような構成によれば、湾曲していることによって振動時にせん断応力が生じる方向が細かく変わる折返し部40eに合わせて、せん断ひずみを生じさせやすくすることができ、効率的に発電することができる。
しかしながら、このような構成に限定されず、自由端部40dにおける波形の周期と折返し部40eにおける波形の周期とは同じ周期で形成されていてもよい。
【0032】
<螺旋溝を有する構成>
次に、螺旋溝50cを有する磁歪素子50について、
図11を主に参照して説明する。
図11は、螺旋溝50cが形成された磁歪素子50を示す側面図である。
【0033】
磁歪素子50において、湾曲形状50bは、長手方向を巻き軸方向とする螺旋状の溝(螺旋溝50c)によって形成されている。
具体的には、磁歪素子50は、磁歪材料からなる丸棒の外周面に対して、周回するように螺旋溝50cを加工することによって形成されている。
上記構成によれば、磁歪素子50の肉厚を局所的、かつ、長手方向に均等に薄くすることができ、長手方向のひずみを大きくすることができ、発電効率を高めることができる。
【0034】
また、上記の実施形態においては、磁歪素子42を除いて、磁歪素子1、10、20、30、40、41の湾曲形状1b、10b、20a、30b、40b、41bそれぞれの振幅及び周期がすべて均一である。
しかしながら、本発明はこのような構成に限定されない。
【0035】
<振幅が異なる構成>
磁歪素子において、長手方向において満遍なく発電させる(ひずみを生じさせて磁束を変化させる)ためには、根本部分(固定箇所)に比べて、根本から離れる箇所でひずみが生じやすい形状にすると好適である。換言すると、素子全体で満遍なく発電させるために、大きな応力が加わる箇所で変形しにくくし、小さな応力が加わる箇所で変形しやすくする構造であると好適である。
【0036】
この点を踏まえ、異なる振幅の湾曲形状を有する磁歪素子60、61について、
図12及び
図13を主に参照して説明する。
図12は、振幅の異なる片持ち梁状の磁歪素子60を示す側面図、
図13は、振幅の異なる両持ち梁状の磁歪素子61を示す側面図である。
【0037】
図12に示す片持ち梁状の磁歪素子60は、他の装置への固定部60aを一方の端部に有する。固定部60aの近傍にある第1位置における湾曲形状の振幅A1は、第1位置よりも固定部60aから長手方向に離間した第2位置における湾曲形状の振幅A2よりも大きい。
同様に、
図13に示す両持ち梁状の磁歪素子61は、他の装置への固定部61aを両端部に有する。固定部61aの近傍にある第1位置における湾曲形状の振幅A3は、第1位置よりも固定部61aから長手方向に離間した第2位置における湾曲形状の振幅A4よりも大きい。
【0038】
このように、磁歪素子60、61は、同じ周期の下で、固定箇所(又は不動部位)から離れる部位において、振幅が小さくなる形状となっている。
ここで、「周期」とは、波形形状の周期をいい、振動時の振れの時間である振動周期とは異なる。ここで、「振幅」とは、波形形状の振幅をいい、振動時の振れの大きさである振動振幅とは異なる。
【0039】
上記構成によれば、固定部60a、61a近傍でせん断ひずみが大きくなる第1位置が第2位置の振幅よりも大きな振幅の形状とすることで、第2位置でせん断ひずみ及び縦ひずみが生じやすくなり、逆磁歪効果により全体としての発電効率を高めることができる。
なお、両持ち梁状の磁歪素子61においては、中央部に波の腹が位置する、換言すると中央部で波形の振幅が最大となると、外部から振動が加わったときに大きな振れが生じることになり好適である。
【0040】
<周期が異なる構成>
本実施形態に係る磁歪素子70、71は、上記の振幅が異なる構成の磁歪素子60、61と目的は同じであり、素子全体で満遍なく発電可能とするための異なる周期の湾曲形状を有するものである。
磁歪素子70、71について、
図14及び
図15を主に参照して説明する。
図14は、周期の異なる片持ち梁状の磁歪素子70を示す側面図、
図15は、周期の異なる両持ち梁状の磁歪素子71を示す側面図である。
【0041】
図14に示す片持ち梁状の磁歪素子70は、他の装置への固定部70aを一方の端部に有する。固定部70aの近傍にある第1位置における湾曲形状の周期T1は、第1位置よりも固定部から離間した第2位置における湾曲形状の周期T2よりも大きい。
同様に、
図15に示す両持ち梁状の磁歪素子71は、他の装置への固定部71aを両方の端部に有する。固定部71aの近傍にある第1位置における湾曲形状の周期T3は、第1位置よりも固定部71aから離間した第2位置における湾曲形状の周期T4よりも大きい。
【0042】
上記構成によれば、固定部70a、71a近傍でひずみが大きくなる第1位置の湾曲形状に対して第2位置の湾曲形状を小さな周期T2、T4とすることで、ひずみが生じやすくなり、全体としての発電効率を高めることができる。
【0043】
なお、両持ち梁状の磁歪素子71においては、中央部に波の腹が位置する、換言すると中央部で波形の振幅が最大となると、外部から振動が加わったときに大きな振れが生じることになり好適である。
【0044】
<波形についての他の構成>
上記「波形」については、正弦波形に限らない。矩形波、三角波等であってもよい。特に、矩形波であると応力が集中する屈曲点が多く、プレス機で製造しやすいため好適である。また、波形が複数の鈍角で形成される台形形状から構成されるものであれば、折れにくく、耐久性の点で好適である。
例えば、
図16に示す磁歪素子80のように、振動方向において一部が張出し、他の一部が窪んでいる構成であってもよい。
【0045】
<その他>
上記の振幅が異なる構成、及び上記の周期が異なる構成を同時に採用することが可能である。すなわち、加工、取付、信頼性、又は製造コスト等の要因で、磁歪素子の振幅及び周期の変化を適宜に選択すると好適である。
また、
図12及び
図13の振幅を異ならせる構成、及び
図14及び
図15の周期を異ならせる構成については、
図5から
図11の構成においても同様に適用することが可能である。
【0046】
さらに、磁歪素子が振動発電機、又は振動発電素子に用いられる場合、それぞれの固有振動数を有するので、どちらかの固有振動数に合わせて上記波形状素子の周期や振幅を調整して共振するようにすると好適である。
共振周波数を調整して、振動振幅のピーク値を高めて発電効率を高めるために、磁歪素子の自由端部に錘をつけてもよい。
【0047】
また、磁歪素子において、固定部近傍の位置の断面積よりも固定部から離間する位置の断面積を大きくするようにしてもよい。このような構成によれば、振動振幅が大きい位置に錘が配設されるのと同様の効果になってひずみが全体的に大きくなる。かつ、自由端側で磁歪材が増えることになるので磁歪量も増える。
【0048】
また、上記実施形態に係る磁歪素子を用いる振動発電機(磁歪発電素子)においては、磁歪素子の周囲に直接コイルが巻回されるものであってもよい。しかしながら、磁歪素子の周囲に、コイルを巻回するための筒状の支持部材(例えばボビン)が設けられていると、磁歪素子の変形を阻害せず、またコイルを均一に巻回しやすくなるため好適である。
【0049】
なお、本発明の磁歪素子に係る各種構成要素は、個々に独立した存在である必要はない。複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等を許容する。
【0050】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)
長手形状を有し、長手方向に対する交差方向に振動させて逆磁歪効果を発生させる磁歪素子であって、
前記長手形状の長手方向に沿って、少なくとも一部に、前記交差方向に湾曲する湾曲形状が複数周期で形成されていることを特徴とする磁歪素子。
(2)
前記湾曲形状は、前記長手方向及び前記交差方向に直交する方向から見て波形に形成されている(1)に記載の磁歪素子。
(3)
他の装置への固定部を有し、
前記固定部の近傍にある第1位置における前記湾曲形状の振幅は、前記第1位置よりも前記固定部から離間した第2位置における前記湾曲形状の振幅よりも大きい(2)に記載の磁歪素子。
(4)
前記磁歪素子は、U字型に屈曲して形成されており、固定端部と、自由端部と、前記固定端部と前記自由端部とに接続された折返し部と、を有し、
前記波形は、前記自由端部が形成されている側に形成されている(2)又は(3)に記載の磁歪素子。
(5)
前記波形は、前記折返し部にも形成されている(4)に記載の磁歪素子。
(6)
他の装置への固定部を有し、
前記固定部の近傍にある第1位置における前記湾曲形状の周期は、前記第1位置よりも前記固定部から離間した第2位置における前記湾曲形状の周期よりも大きい(2)から(5)のいずれか一項に記載の磁歪素子。
(7)
前記湾曲形状は、コイル状に形成されている(1)に記載の磁歪素子。
(8)
前記湾曲形状は、前記長手方向を巻き軸方向とする螺旋状に形成されている(1)に記載の磁歪素子。
【符号の説明】
【0051】
1 磁歪素子
1a 固定部
1b 湾曲形状(波形)
10 磁歪素子
10a 平面
10b 湾曲形状(波形面)
20 磁歪素子
20a 湾曲形状
30 磁歪素子
30b 湾曲形状
40、41、42 磁歪素子
40b、41b、42b 湾曲形状(波形)
40c 固定端部
40d 自由端部
40e 折返し部
50 磁歪素子
50b 湾曲形状
50c 螺旋溝
60、61 磁歪素子
60a、61a 固定部
70、71 磁歪素子
70a、71a 固定部
80 磁歪素子
90 他の装置