(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050862
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型ニス組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 4/02 20060101AFI20230404BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230404BHJP
C09D 193/00 20060101ALI20230404BHJP
C09D 193/04 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D5/00 Z
C09D193/00
C09D193/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161201
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】下山 浩平
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 忠司
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 圭之郎
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038BA222
4J038BA232
4J038FA121
4J038FA251
4J038FA282
4J038GA16
4J038KA04
4J038MA15
4J038NA27
4J038PA17
4J038PB02
4J038PC02
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】オーバープリントニスとして優れた安定性、硬化性及び透明性を備えると共に、動植物油由来の構造を有する材料を使用することで、動植物油由来の材料をより多く配合でき、高いボタニカル性を達成すること。
【解決手段】下記(A)成分及び/又は下記(B)成分を含有し、さらに下記(C)成分を含有する活性エネルギー線硬化型ニス組成物。
(A)成分:動植物油変性(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:エチレン性不飽和結合を有さず、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が、9.0(cal/cm3)1/2以上、かつ11.0(cal/cm3)1/2未満の、ポリマー中に植物成分由来の構造を備えた樹脂
(C)成分:上記(A)成分以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分及び/又は下記(B)成分を含有し、さらに下記(C)成分を含有する活性エネルギー線硬化型ニス組成物。
(A)成分:動植物油変性(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:エチレン性不飽和結合を有さず、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が、9.0(cal/cm3)1/2以上、かつ11.0(cal/cm3)1/2未満の、ポリマー中に植物成分由来の構造を備えた樹脂
(C)成分:上記(A)成分以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物
【請求項2】
(A)成分及び/又は(B)成分の含有量の合計が、活性エネルギー線硬化型ニス組成物から非反応性溶媒を除いた不揮発分中0.1~50.0質量%である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型ニス組成物。
【請求項3】
(B)成分がロジン系樹脂である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型ニス組成物。
【請求項4】
アルミニウム蒸着紙用である請求項1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型ニス組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型ニス組成物を塗布して得られる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型ニス組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、ポリジメチルシロキサン、ロジン変性マレイン酸樹脂等の樹脂、エチレン性不飽和結合を有する化合物を含有し、耐スクラッチ性及び密着性に優れた電子線硬化型オーバープリントニスは公知である。
【0003】
特許文献2に記載のように、エチレン性不飽和結合を備えた化合物、特定のsp値を有する動植物成分由来の構造を備えた樹脂、及び動植物由来の油脂を含有し、安定性、硬化性及び光沢に優れた活性エネルギー線硬化型ニス組成物は公知である。
【0004】
さらに特許文献3に記載のように、動植物油変性(メタ)アクリレートモノマー、動植物油由来の成分を有しないバインダー樹脂及び植物油変性(メタ)アクリレートを含有するインキタックの温度依存性及び速度依存性を低減させた活性エネルギー線硬化型インキ組成物が記載されている。さらに、その活性エネルギー線硬化型インキ組成物が顔料を含有せず、透明なときにはオーバープリントニスになることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-147730号公報
【特許文献2】特開2020-169256号公報
【特許文献3】特開2015-193678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、オーバープリントニスとして優れた安定性、硬化性及び透明性を備えると共に、動植物油由来の構造を有する材料を使用することで、動植物油由来の材料をより多く配合でき、高いボタニカル性を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、下記の活性エネルギー線硬化型ニス組成物とすることにより、上記課題を解決しうることを見出し、以下の本発明とするに至った。
1.下記(A)成分及び/又は下記(B)成分を含有し、さらに下記(C)成分を含有する活性エネルギー線硬化型ニス組成物。
(A)成分:動植物油変性(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:エチレン性不飽和結合を有さず、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が、9.0(cal/cm3)1/2以上、かつ11.0(cal/cm3)1/2未満の、ポリマー中に植物成分由来の構造を備えた樹脂
(C)成分:上記(A)成分以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物
2.(A)成分及び/又は(B)成分の含有量の合計が、活性エネルギー線硬化型ニス組成物から非反応性溶媒を除いた不揮発分中0.1~50.0質量%である1に記載の活性エネルギー線硬化型ニス組成物。
3.(B)成分がロジン系樹脂である1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型ニス組成物。
4.アルミニウム蒸着紙用である1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型ニス組成物。
5.1~4のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型ニス組成物を塗布して得られる印刷物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高いボタニカル度を有すると同時に、安定性や硬化性に優れた活性エネルギー線硬化型ニス組成物、及び硬化後のニス組成物による被膜の透明性に優れた活性エネルギー線硬化型ニス組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、以下の事項を基礎とする発明であり、この活性エネルギー線硬化型ニス組成物は、従来の活性エネルギー線硬化型ニス組成物と同じ用途に使用される。なお、本願明細書において、本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物を、単に「ニス組成物」と記載するときがある。
本発明は、以下のとおりである。
下記(A)成分及び/又は下記(B)成分を含有し、さらに下記(C)成分を含有する活性エネルギー線硬化型ニス組成物。
(A)成分:動植物油変性(メタ)アクリレート化合物
(B)成分:エチレン性不飽和結合を持たず、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が、9.0(cal/cm3)1/2以上、かつ11.0(cal/cm3)1/2未満の、ポリマー中に植物成分由来の構造を備えた樹脂
(C)成分:上記(A)成分以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物
なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味し、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
【0010】
[(A)成分]
(A)成分の動植物油変性(メタ)アクリレート化合物として、植物油をエポキシ化して得たエポキシ化植物油を、(メタ)アクリル変性することにより得られるエポキシ化植物油アクリレートを採用できる。これは、不飽和植物油の二重結合に過酢酸、過安息香酸等の酸化剤でエポキシ化したエポキシ化植物油のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸を開環付加重合させた化合物である。この不飽和植物油とは、少なくとも1つの脂肪酸が炭素-炭素不飽和結合を少なくとも1つ有するトリグリセリドでも良く、グリセリドではなく不飽和植物油の部分構造のことでもよい。そして、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油等が例示される。植物油変性(メタ)アクリレート化合物は、植物油を由来とするので、ニス組成物におけるバイオマス成分量を増加させるのに役立つ。また、動物油により変性してなる(メタ)アクリレート化合物でもよい。さらにエポキシ化植物油(メタ)アクリレートは、各種のものが市販されているのでそれを用いてもよい。また、ロジン変性エポキシ(メタ)アクリレートを使用することもできる。
ニス組成物中に(A)成分を含有する場合には、ニス組成物中の非反応性溶媒を除いた不揮発分中の(A)成分の含有量としては、0.1質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、また、50.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以下がより好ましい。
【0011】
さらに植物油変性(メタ)アクリレート化合物の一種として、後述するカシューナッツシェルオイルの変性誘導体のうち、下記一般式(1)又は一般式(2)で表す、カシューナッツシェルオイルに含まれるアルケニル置換フェノール類のフェノール性水酸基にエチレン性不飽和結合を導入したものも挙げられる。これらの化合物は、エチレン性不飽和結合を有する化合物として扱われる。また、これらの化合物は、カシューナッツシェルオイルを由来とするのでニス組成物中のバイオマス含有量の増加に貢献する。
【0012】
【0013】
上記一般式(1)において、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は不飽和結合を0~3個含む、炭素数15~18の脂肪族炭化水素基である。上記一般式(2)において、R1は水素原子又はメチル基であり、R2は不飽和結合を0~3個含む、炭素数15~18の脂肪族炭化水素基である。
【0014】
また環境面を考慮して植物由来のジカルボン酸成分やジオール成分を使用して得たポリエステルポリオールを原料としたポリウレタンオリゴマー及び/又はポリウレタンポリウレアオリゴマーを採用することもできる。
植物油変性多官能ポリエステルアクリレートオリゴマーとしては、アクリレート基を分子内に2~6つ有する植物油変性ポリエステルアクリレートオリゴマーであれば制限なく用いることができる。
このうち、例えば、EBECRYL 450、452、820、1622や、トール油脂肪酸変性6官能ポリエステルアクリレート(例えば、AgiSyn 716等)からなる群より選ばれる1種以上を用いると、活性エネルギー線硬化型ニス組成物のバイオマス度を高くでき好ましい。
これらのオリゴマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
[(B)成分]
(B)成分は、エチレン性不飽和結合を持たず、濁点滴定法による溶解性パラメータsp値が、9.0(cal/cm3)1/2以上、かつ11.0(cal/cm3)1/2未満の、ポリマー中に植物成分由来の構造を備えた樹脂である。そして9.5(cal/cm3)1/2以上が好ましく、10.5(cal/cm3)1/2以下が好ましい。
このような樹脂として、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、重合ロジン、不均化ロジン等のロジン系樹脂、ポリアミド樹脂、テルペンフェノール樹脂、カシューポリマー等を挙げることができ、中でもロジン系樹脂が好ましい。これらの樹脂は、テルペンやロジン等といった植物成分を由来とするのでバイオマス含有量を確保するのに有用である。上記のように、ロジン変性フェノール樹脂やロジン変性マレイン酸樹脂では、それらを構成するロジンがバイオマス由来の成分となり、ロジン変性アルキッド樹脂では、ロジンに加えて長鎖脂肪酸もバイオマス由来の成分となる。このため、本発明のニス組成物は、これらの樹脂を含むことでさらに高いバイオマス含有量を有するものとなる。
上記テルペンフェノール樹脂、及びロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、重合ロジン、不均化ロジン等のロジン変性物等の樹脂として、市販のものを用いてもよいし、任意の手段で合成したものを用いてもよい。
【0016】
ニス組成物中の非反応性溶媒を除いた不揮発分中の(B)成分の含有量としては、0.1質量%以上が好ましく、3.0質量%以上がより好ましく、5.0質量%以上がさらに好ましい。また、50.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
(B)成分は、モノマーやオリゴマー及び/又は溶媒中で70~250℃程度に加温することにより溶解させてワニスとしてもよい。(B)成分は、こうしてワニスとされた状態でニス組成物の調製に用いられることが好ましい。
なお、本発明でいうsp値の求め方は以下のとおりである。
sp値は、溶解性パラメータであり、簡便な実測法である濁点滴定により測定することができ、下記のK.W.SUH,J.M.CORBETTの式に従い算出される値である。なお、この方法によるsp値の算出については、J.Appl.Polym.Sci.1968,12,2359を参考にすることができる。
式 sp値=(Vml
1/2・δH+Vmh
1/2・δD)/(Vml
1/2+Vmh
1/2)
濁点滴定では、試料0.5gを良溶媒であるトルエン10mL又はトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)10mLに溶解させた中に低sp値貧溶媒であるn-ヘキサンを加えていき、濁点での滴定量H(mL)を読み、同様にトルエン溶液中に高sp値貧溶媒であるエタノールを加えたときの濁点における滴定量D(mL)を読み、これらを下記式に適用し、Vml、Vmh、δH、及びδDを算出し、上記式へ代入すればよい。
【0018】
なお、上記の濁点滴定で用いた各溶剤の分子容やsp値は次の通りである。
良溶媒の分子容 φ0 トルエン:106.28mL/mol
TMPTA:279.55mL/mol
低sp値貧溶媒の分子容 φl n-ヘキサン:131.61mL/mol
高sp値貧溶媒の分子容 φh エタノール:58.39mL/mol
各溶剤のsp値 トルエン:9.14、TMPTA:9.88
n-ヘキサン:7.28、エタノール:12.58
【0019】
Vml=(φ0・φl)/{(1-VH)・φl+VH・φ0}
Vmh=(φ0・φh)/{(1-VD)・φh+VD・φ0}
VH=H/(M+H)
VD=D/(M+D)
δH=(δ0・M)/(M+H)+(δl・H)/(M+H)
δD=(δ0・M)/(M+D)+(δl・D)/(M+D)
δ0:良溶媒のsp値
δl:低sp値貧溶媒のsp値
δh:高sp値貧溶媒のsp値
H:低sp値貧溶媒の滴定量(mL)
D:高sp値貧溶媒の滴定量(mL)
M:良溶媒の量(mL)
VH:低sp値貧溶媒滴定量の体積分率(%)
VD:高sp値貧溶媒滴定量の体積分率(%)
【0020】
植物油という用語は、通常であればトリグリセリドを意味することが多いが、本発明における植物成分由来の構造とは、植物油の分子の部分構造でもよい。また、植物油由来の油脂や、植物油を加水分解してグリセリンを除いた植物油の変性物の構造を包含する。この植物油由来の油脂としては、sp値が上記の範囲であるか否かを問わない植物油に対して化学修飾を加えた結果、sp値が上記の範囲となるものも挙げることができる。このような変性物としてはヤシ油、ヒマシ油、トール油等といった高sp値を有するトリグリセリドの脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油、重合ヒマシ油、不飽和動植物油又はそれらの脂肪酸のエポキシ化物、カシューナッツシェルオイルの重合物、カシューナッツシェルオイル変性誘導体等を挙げることができる。なお、エチレン性不飽和結合を持たないとは、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等のような、ラジカルの存在下において急速に重合する性質の置換基を持たないという意味である。
【0021】
不飽和植物油又はそれらの脂肪酸のエポキシ化物(以下、「エポキシ化油脂」と適宜省略する。)は、少なくとも1つのエポキシ基を有する脂肪酸とアルコールとのエステルである。このようなエポキシ化油脂としては、エポキシ基を有するトリグリセリドのみならず、エポキシ基を有する脂肪酸とアルコール(モノアルコール又はポリアルコールであることを問わない。)とのエステルを挙げることができる。このようなアルコールとしては、グリセリン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、2-エチルヘキサノール等の炭素数1~14のアルコールが例示されるが特に限定されない。グリセリン等のような多価アルコールの場合、当該多価アルコールには、少なくとも1つのエポキシ基を有する脂肪酸が少なくとも1つ縮合(すなわちエステル結合を形成)していればよく、少なくとも1つのエポキシ基を有する脂肪酸が複数個縮合していてもよい。この場合、それぞれの脂肪酸は互いに独立に選択されてもよい。エポキシ化油脂は、分子中にエポキシ基が存在することにより高いsp値を示すので、もともと低いsp値の各種動植物油やその脂肪酸エステル等を原料としてこれをエポキシ化したものであってもよい。
【0022】
エポキシ基は、酸素原子が、既に互いに結合している2個の炭素原子のそれぞれに結合している、3員環状エーテル(オキシラン又はアルキレンオキシドとも呼ばれる)である。エポキシ化油脂としては、エポキシ化大豆油(ESO)、エポキシ化トウモロコシ油、エポキシ化ヒマワリ油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化カノーラ油、エポキシ化菜種油、エポキシ化ベニバナ油、エポキシ化トール油、エポキシ化桐油、エポキシ化魚油、エポキシ化牛脂油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化ステアリン酸メチル、エポキシ化ステアリン酸ブチル、エポキシ化2-エチルヘキシルステアレート、エポキシ化ステアリン酸ステアリル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートエポキシ化大豆油、エポキシ化プロピレングリコールジオレエート、エポキシ化パーム油、エポキシ化脂肪酸メチルエステル等が例示される。
【0023】
エポキシ化油脂は、多様な方法で調製することができる。例えば、トリグリセリドを母骨格とするエポキシ化油脂は、脂肪酸部分に不飽和結合を備えた植物油又は動物油を適切な酸化剤や過酸化物により酸化することで得られる。また、トリグリセリドでない脂肪酸エステルを母骨格とするエポキシ化油脂は、不飽和結合を備えた、動植物油由来の脂肪酸をアルコール(モノオール又はポリオールであることを問わない。)と反応させてエステ
ル化、エステル交換又はエステル置換反応をさせることにより脂肪酸エステルを得て、さらにこれらの脂肪酸エステルを適切な酸化剤や過酸化物により酸化することで得られる。なお、これらの調製方法は一例であり、その他の調製方法を採用することもできるし、市販のエポキシ化油脂を購入して用いてもよい。
【0024】
カシューナッツシェルオイルは、カシューナッツシェルリキッドとも呼ばれ、食用として使用される天然のカシューナッツの実を採取する際、副生物として得られるカシューナッツの殻に含まれる油状の液体であり、アナカルド酸、カルドール、2-メチルカルドール、カルダノール等を含む。これらのうち、カルダノール及びカルドールは芳香環にヒドロキシル基及び直鎖状炭化水素基が結合した化合物であり、2-メチルカルダノールはカルダノールの芳香環にメチル基が結合した化合物であり、カルダノール酸はカルダノールの芳香環にカルボキシル基が結合した化合物で、これらはいずれもアルケニル置換フェノール類ということができる。ここに含まれるアルケニル基は、炭素数が15~18の脂肪族炭化水素基であり、その鎖中に1~3個の不飽和結合を含む。なお、このアルケニル基に含まれる不飽和結合は、直鎖状の炭化水素基の途中に含まれるものであり、エチレン性不飽和結合とは異なる。カシューナッツシェルオイルは、様々なグレードのものが各種市販されているので、そのような市販品を本発明に用いてもよい。このような製品は、カルダノールの純度、色、臭気等に応じていくつかのラインナップがある。このようなラインナップとしては、Cardolite社製のCardolite(登録商標)NX-2021、NX-2022、NX-2023D、NX-2023、UltraLITE2023、NX-2024、NX-2025、NX-2026等や、東北化工株式会社製のCNSL、LB-7000、LB-7250等が挙げられる。
【0025】
カシューナッツシェルオイルの変性誘導体としては、カシューナッツシェルオイルに含まれるアルケニル置換フェノール類のフェノール性水酸基に各種の基を導入したものや、アルケニル基の不飽和結合に各種の置換基を導入したものや、アルケニル基の不飽和結合を酸化してエポキシ化したもの等が挙げられる。このような変性誘導体は各種のものが市販されているので、そのような市販品を本発明に用いてもよい。
【0026】
このような変性誘導体の中でも、下記一般式(3)~一般式(6)のいずれかで表される化合物が好ましく挙げられる。
【0027】
【0028】
上記一般式(3)中、R1は水素原子、グリシジル基、-(CH2)mOH(mは1~3の整数である。)、-(C2H4O)p-H(pは1~15の整数である。)、-(CH2CH(CH3)O)q-H(qは1~15の整数である。)であり、R2は不飽和結合を0~3個含む、炭素数15~18の脂肪族炭化水素基、又はその脂肪族炭化水素に含まれる不飽和結合の一部若しくは全部が酸化されてエポキシ環を形成した基であり、各R3はそれぞれ独立にOR1、炭素数1~3のアルキル基又はカルボキシル基であり、nは0~4の整数である。
【0029】
上記一般式(3)で表す化合物の市販品としては、例えば、Cardolite社製のCardolite(登録商標)LITE2020やCardolite(登録商標)NC-513、NC-510、GX-5166、GX-5167、GX-5170、GX-5248、GX-5190、GX-5191、GX-2551等が挙げられる。これらのうちLITE2020は、R1が-CH2CH2OHでR2が炭素数15のアルケニル基でnが0のアルケニル置換フェニルエーテル化合物であり、NC-513は、R1がグリシジル基でR2が炭素数15のアルケニル基でnが0のアルケニル置換フェニルグリシジルエーテルであり、NC-510は、R1が水素原子でR2が炭素数15のアルケニル基でnが0のアルケニル置換フェノールであり、GX-5166、5167及び5170は、R1が-(C2H4O)p-Hで、R2が炭素数15のアルケニル基でnが0のアルケニル置換フェニルエチルオキシレートであって、GX-5166がp=7、GX-5167がp=9、GX-5170がp=12であり、GX-5243、5190及び5191は、R1が-(CH2CH(CH3)O)q-Hで、R2が炭素数15のアルケニル基でnが0のアルケニル置換フェニルプロピルオキシレートであって、GX-5243がq=1、GX-5190がq=7、GX-5191がq=9である。GX-2551は、下記化学式(1)、(2)及び(3)で表す化合物の混合物であり、上記一般式(3)において、R1がグリシジル基で、R2が炭素数15のアルケニル基に含まれる不飽和結合の1又は複数が酸化されてエポキシ環となった基で、nが0である、エポキシ化カルダノールである。
【0030】
【0031】
上記一般式(4)中、Xは不飽和結合を0~3個含む、炭素数15-18の直鎖又は分岐状の脂肪族炭化水素基である。上記一般式(4)で表す化合物の市販品としては、Cardolite社製のCardolite(登録商標)NC-514が挙げられる。
【0032】
上記一般式(5)中、R2、R3及びnは、上記一般式(1)におけるものと同じであり、rは、1~5の整数である。上記一般式(5)で表す化合物の市販品としては、Cardolite社製のCardolite(登録商標)GX-2520が挙げられる。
【0033】
上記一般式(6)中、R2、R3及びnは、上記一般式(3)におけるものと同じであり、R4は、水素原子又は水酸基であり、R5は、水素原子又は-C2H4OHである。上記一般式(6)で表す化合物の市販品としては、Cardolite社製のCardolite(登録商標)GX-9301及びGX-9302が挙げられる。
【0034】
カシューナッツシェルオイルの重合体としては、カシューナッツシェルオイル及び/又はその変性誘導体のホルムアルデヒドによる縮合物が好ましく例示される。このような縮合物の一例として、下記一般式(7)で表すものを挙げることができる。
【0035】
【0036】
上記一般式(7)中、各R1はそれぞれ独立に水素原子、-(CH2)mOH又はグリ
シジル基でmは1~3の整数であり、各R2はそれぞれ独立に不飽和結合を0~3個含む、炭素数15~18の脂肪族炭化水素基であり、nは1以上の整数である。
【0037】
上記一般式(7)で表す市販品としては、例えば、Cardolite社製のCardolite(登録商標)NC-547及びNX-4000シリーズが挙げられる。NC-547は、下記一般式(8)で例示する構造を備えた、カルダノールとカルダノール変性誘導体とのホルムアルデヒドによる縮合物である。NX-4000シリーズは、下記一般式(9)で例示する構造を備えた、カルダノールのホルムアルデヒドによる縮合物である。
【0038】
【0039】
上記一般式(8)及び(9)において、各R2はそれぞれ独立に不飽和結合を0~3個含む、炭素数15~18の脂肪族炭化水素基である。
【0040】
動植物性油脂は、非可食油脂又はその変性物であることが好ましい。ここでいう非可食油脂とは、食用でない油脂全般を指すものである。なお、sp値が9.0(cal/cm3)1/2未満の油脂であっても、その油脂に対してエポキシ化等の化学変性を加えた結果、その変性物のsp値が9.0(cal/cm3)1/2以上となるならば、その変性物は本発明における特定液体成分として扱う。
【0041】
これら特定液体成分の中でも、ヒマシ油、ヤシ油、カシューナッツシェルオイル及びトール油並びにそれらの変性物、並びにエポキシ化植物油からなる群より選択される少なくとも1つが好ましく挙げられる。
【0042】
[(A)成分及び(B)成分の含有量の関係]
本発明のニス組成物が、(A)成分と(B)成分の一方のみを含有する場合には、上記の(A)成分と(B)成分のそれぞれの含有量となるように含有する。そして本発明のニス組成物が、(A)成分と(B)成分の両方を含有する場合には、上記の(A)成分と(B)成分の合計の含有量は、ニス組成物中の非反応性溶媒を除いた不揮発分中の(A)成分と(B)成分は、合計で0.1質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましく、また、50.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以下がより好ましい。
また、本発明のニス組成物が、(A)成分と(B)成分の両方を含有する場合には、質量の比で、(A)成分/(B)成分が1/4~4/1となるように含有することが好ましい。
【0043】
[(C)成分]
本発明における(C)成分は、(A)成分以外のエチレン性不飽和結合を有する化合物であって、モノマー、オリゴマー及びポリマーの1種以上からなり、活性エネルギー線により反応して硬化する成分である。
下記の1官能以上のモノマーから、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ニス組成物中の非反応性溶媒を除いた不揮発分中の(C)成分の含有量の含有量は30.0質量%以上が好ましく、40.0質量%以上がより好ましく、50.0質量%以上がさらに好ましく、55.0質量%以上が最も好ましい。また、95.0質量%以下が好ましく、90.0質量%以下がより好ましく、85.0質量%以下がさらに好ましい。
また(C)成分の中でも、2官能もの及び/又は3官能のものを使用することが好ましく、さらにポリオキシアルキレン変性のものが好ましい。
【0044】
(モノマー)
モノマーは、エチレン性不飽和結合を有し、光重合性成分として重合して高分子量化する成分であるが、重合する前の状態では比較的低分子量の液体成分であることが多い。モノマーは別に配合した樹脂成分を溶解させる反応性溶媒としたり、ニス組成物の粘度を調節したりする目的にも用いられる。
このようなモノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ備える単官能モノマーや、分子内にエチレン性不飽和結合を2つ以上備える2官能以上のモノマーが挙げられる。2官能以上のモノマーは、ニス組成物が硬化するのに際して分子と分子とを架橋することができるので、硬化速度を速めたり、強固な皮膜を形成させたりするのに寄与する。単官能のモノマーは、上記のような架橋能力を持たない反面、架橋に伴う硬化収縮を低減させるのに寄与する。これらのモノマーは、必要に応じて各種のものを組み合わせて用いることができる。
【0045】
単官能モノマーとしては、不飽和カルボン酸系化合物、アルキル(メタ)アクリレート系化合物、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物、ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物、エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物、カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物、その他の(メタ)アクリレート系化合物、スチレン系化合物、N-ビニル系化合物、アリレート系化合物、その他のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物を使用できる。
【0046】
-不飽和カルボン酸系化合物-
不飽和カルボン酸系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、それらの塩及びそれらの酸無水物等が挙げられる。
【0047】
-アルキル(メタ)アクリレート系化合物-
アルキル(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、1-アダマンチル(メタ)アクリレート、3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
-ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-クロロプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アリルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-エチルヘキシルEO変性(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールEO変性アクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール変性(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0049】
-ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物-
ハロゲン含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H-ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ブチルフェニル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6-トリブロモフェノール3EO(エチレンオキサイド)付加(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0050】
-エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
エーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、1,3-ブチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、クレジルポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)エチル、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、p-ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ-ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテルモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(EO繰返し単位数400、700等)、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アルコキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート(エトキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート等)、アルコキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート(エトキシ化(4)ノニルフェノールアクリレート等)、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、エトキシ化コハク酸(メタ)アクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート等のアルコキシ系及び又はフェノキシ系(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0051】
-カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
カルボキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート等が挙げられる。
【0052】
-その他の(メタ)アクリレート系化合物-
その他の(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、ベンジルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、トリメチルシロキシエチル(メタ)アクリレート、ジフェニル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、カプロラクトン変性-2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシ-1-(メタ)アクリロキシ-3-メタクリロキシプロパン、アクリロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、トリシクロデカンモノメチロール(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトールアクリレート、エチルジグリコールアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、1-(メタ)アクリロイルピペリジン-2-オン、2-(メタ)アクリル酸-1,4-ジオキサスピロ[4,5]デシ-2-イルメチル、N-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、γ-ブチロラクトン(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、イミドアクリレート、(メタ)アクリル酸ビニル、マレイミド等が挙げられる。
【0053】
-スチレン系化合物-
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、p-ヒドロキシスチレン、p-クロロスチレン、p-ブロモスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-t-ブトキシスチレン、p-t-ブトキシカルボニルスチレン、p-t-ブトキシカルボニルオキシスチレン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0054】
-N-ビニル系化合物-
N-ビニル系化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニルカルバゾール、ビニルメチルオキサゾリジノン等が挙げられる。
【0055】
-アリレート系化合物-
アリレート系化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、イソシアヌル酸トリアリレート等が挙げられる。
【0056】
-その他のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物-
エチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物として、前記化合物以外の「その他のエチレン性不飽和結合を1つ備えた化合物」を用いることができる。
そのような化合物としては、例えば、酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバル酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、三員環化合物類(例えば、ビニルシクロプロパン類、1-フェニル-2-ビニルシクロプロパン類、2-フェニル-3-ビニルオキシラン類、2,3-ジビニルオキシラン類等)、環状ケテンアセタール類(例えば、2-メチレン-1,3-ジオキセパン、ポジオキソラン類、2-メチレン-4-フェニル-1,3-ジオキセパン、4,7-ジメチル-2-メチレン-1,3-ジオキセパン、5,6-ベンゾ-2-メチレン-1,3-ジオセパン等)等が挙げられる。
【0057】
多官能モノマー(エチレン性不飽和結合を2つ以上備えた化合物)としては、公知のエチレン性不飽和結合を2つ以上備えた、例えば下記の多官能(メタ)アクリレート系化合物やビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物等を用いることができる。
また、これらのポリアルキレンオキサイド変性物、例えば、3EO(エチレンオキサイド)変性物、6EO変性物、9EO変性物(3EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3EO変性トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレト、3EO変性トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート等)等が挙げられる。
【0058】
-多官能(メタ)アクリレート系化合物-
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート(4EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート)、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート等、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリスリトール等の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー;
【0059】
グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー;及びこれらのポリアルキレンオキサイド変性物、例えば、3EO(エチレンオキサイド)変性物、6EO変性物、9EO変性物(3EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3EO変性トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、3EO変性トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート等)トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマー;等を挙げることができる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA;3官能)、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DITMPTA;4官能)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA;6官能)、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA;2官能)等を好ましく挙げることができる。
【0060】
-ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物-
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸-2-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-m-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-o-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル等が挙げられる。
【0061】
これらの多官能モノマーの中でも、2官能モノマーの4EO変性物や3官能モノマーの3EO変性物が好ましく、3EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート及び1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート(4EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート)を含有することがより好ましい。
【0062】
(オリゴマー)
オリゴマーは、分子内に有するエチレン性不飽和結合が重合して高分子量化する成分である。もともと比較的高分子量の成分であるので、ニス組成物に適度な粘性や弾性を付与する目的にも用いられる。また、オリゴマーは比較的極性が高く、硬化後のニス組成物に非吸収性媒体への接着性を付与する効果も期待できる。
このオリゴマーとしては、エポキシ樹脂等といったエポキシ化合物に含まれるエポキシ基を酸や塩基で開環させた後に生じる水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるエポキシ変性(メタ)アクリレート、二塩基酸とジオールとの縮重合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエステル変性(メタ)アクリレート、ポリエーテル化合物の末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるポリエーテル変性(メタ)アクリレート、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との縮合物における末端水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステルに例示されるウレタン変性(メタ)アクリレート、アミン変性オリゴマー等を挙げることができる。
【0063】
このようなエチレン性不飽和結合を備えたオリゴマーとしては、例えば、ポリジアリルフタレート、ネオペンチルグリコールオリゴ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールオリゴ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンオリゴ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールオリゴ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエーテル(メタ)アクリレート、未反応の不飽和基を備えたアクリル系樹脂、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ポリウレタン、アクリル変性フェノール系樹脂、アクリル化アミン化合物のオリゴマー等が挙げられる。
【0064】
このようなオリゴマーは市販されており、例えば、サートマー社の「CN」、「SR」シリーズ、東亜合成社の「アロニックスM-6000」シリーズ、「7000」シリーズ、「8000」シリーズ、「アロニックスM-1100」、「アロニックスM-1200」、「アロニックスM-1600」、新中村化学工業社の「NKエステル」、「NKオリゴ」、共栄社化学工業社の「ライトアクリレート」、「ライトエステル」、「エポキシエステル」、「ウレタンアクリレート」及び「高機能性オリゴマー」シリーズ、大阪有機化学工業社の「特殊アクリルモノマー」シリーズ、三菱レイヨン社の「アクリエステル」及び「ダイヤビームオリゴマー」シリーズ、日本化薬社の「カヤラッド」及び「カヤマー」シリーズ、日本触媒社の「(メタ)アクリル酸/メタクリル酸エステルモノマー」シリーズ、日本合成化学工業社の「NICHIGO-UV紫光ウレタンアクリレートオリゴマー」シリーズ、信越酢酸ビニル社の「カルボン酸ビニルエステルモノマー」シリーズ、興人社の「機能性モノマー」シリーズ、ダイセル・オルネクス社の「EBECRYL」、「ACA」、「KRM」、「IRR」、「RDX」及び「OTA」シリーズ、BASF社「Laromer」シリーズ、コグニス社「フォトマー」シリーズ、根上工業社「アートレジン」シリーズ、日油化学社の「ブレンマー」シリーズ、第一工業製薬社の「ニューフロンティア」シリーズ、MIWON社の「Miramer」シリーズ、DSM社の「AgiSyn」シリーズ等の商品名で入手することができる。
【0065】
アミン変性オリゴマーとしては、分子中に、少なくとも1つのアミノ基と、少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基又は少なくとも2つの(メタ)アクリロイル基を有するアミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーであれば特に制限されない。
アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーは、所望のモノマーを重合した合成品であってもよく、市販品であってもよい。例えば、GENOMER5161、GENOMER5275(RAHN社)、CN371、CN371NS、CN373、CN383、CN384、CN386、CN501、CN503、CN550、CN551(サートマー社)、EBECRYL80、EBECRYL81、EBECRYL83、EBECRYL7100、EBECRYL84、EBECRYLP115(ダイセル・オルネクス社)、LAROMER PO 83F、LAROMER PO 84F、Laromer LR8946、Laromer LR8956、Laromer LR8996、Laromer LR8894(BASF社)、AgiSyn001、AgiSyn002、Agisyn003、Agisyn008(DSM Coating Resin社)、Photomer4771、Photomer4775、Photomer4967、Photomer5096、Photomer5662、Photomer5930(コグニス社)、DoublecureEPD、DoublecureOPD、Doublecure115、Doublecure225、Doublecure645、PolyQ222、PolyQ226、PolyQ224、PolyQ101(DoubleBondChemicals社)が挙げられる。
【0066】
(ポリマー)
エチレン性不飽和結合を備えた硬化性樹脂としてのポリマーは、上述のモノマーやオリゴマーとともに高分子量化する成分であり、活性エネルギー線が照射される前から大きな分子量を備えているので、ニス組成物の粘弾性の向上に役立つ成分である。このようなポリマーは、例えば、低粘度の液体であるモノマー中に溶解又は分散された状態で用いられる。エチレン性不飽和結合を備えたポリマーとしては、ポリジアリルフタレート、未反応の不飽和基を備えたアクリル樹脂、アクリル変性フェノール樹脂等を挙げることができる。これらの中でも、ポリジアリルフタレートは、上記モノマーやオリゴマーとの相溶性が特に優れているので好ましく用いることができる。
また、エチレン性不飽和結合を備えたポリマーを含有しなくてもよいが、含有する場合には、光重合性成分全体に対するエチレン性不飽和結合を備えたポリマーの含有量としては、0~50.0質量%が好ましく、0~30.0質量%がより好ましく、0~20.0質量%がさらに好ましい。
【0067】
[動植物由来の油脂]
上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分以外に、本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物に含有させてもよい動植物由来の油脂としては、本発明による効果を毀損しない範囲で、エチレン性不飽和結合を有さず、上記の濁点滴定法における溶解性パラメータsp値が9.0(cal/cm3)1/2未満、又は11.0(cal/cm3)1/2以上の動植物由来の油脂又はその変性物を含有できる。このようなsp値を有する動植物由来の油脂は、上記(B)成分の樹脂を得るために、上記(B)成分の欄に記載された、樹脂に導入される植物成分由来の油脂である。
このような樹脂として、アサ実油、亜麻仁油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、桐油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、椿油、トウモロコシ油、菜種油、ニガー油、ぬか油、パーム油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、落花生油、脱水ヒマシ油、落花生油、精製アボカド油、ククイナッツ油、グレープシード油、スイートアルモンド油、トウモロコシ胚芽油、ピスタチオナッツ油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、メドウホーム油、ローズヒップ油等が挙げられる。
そのような動植物由来の油脂は、その多くが非可食であり、飢餓問題を生じることなくバイオマス含有量を確保できるので有用である。なお、動植物由来の油脂は重合性を備えたものではないため、下記のように25℃で液状であれば、特にレベリング性向上効果を発揮でき、良好な光沢を得ることもできる。この動植物由来の油脂によるニス組成物の硬化性への影響は殆ど問題にならない程度であるばかりか、動植物由来の油脂を含有する本発明のニス組成物を用いてコーティングを行うと、理由は不明であるが、さらに良好な光沢を備えた印刷物が得られる可能性がある。
【0068】
動植物由来の油脂はモノマーやオリゴマーとの相溶性が良好なので、これを含有させる場合には、相溶性という観点からはニス組成物に対するその添加量に上限はないが、硬化性などの特性を維持するとの観点から、本発明ではニス組成物への特定液体成分の添加量としては50.0質量%以下が好ましく、30.0質量%以下がより好ましい。動植物由来の油脂は25℃で液状を呈することが好ましい。
【0069】
[光重合開始剤]
光重合開始剤は、紫外線の照射を受けてラジカルを発生させる成分であり、生じたラジカルが上記エチレン性不飽和結合を備えた化合物を重合させ、ニス組成物を硬化させる。光重合開始剤としては、活性エネルギー線が照射された際にラジカルを生じさせるものであれば特に限定されない。なお、電子線を活性エネルギー線として用いて本発明のニス組成物を硬化させる場合には、本発明のニス組成物に光重合開始剤を添加しなくともよい
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤などが挙げられる。これらの中でも、発光ダイオード(LED)光に対する硬化性が良好である観点から、トリアジン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。前記光重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0070】
このような光重合開始剤としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。このような光重合開始剤は市販されており、例えばIGM RESINS B.V.社からOmnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 184、Omnirad 379、Omnirad 819、Omnirad TPO H等の商品名で入手できる。これらの光重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
ニス組成物中における光重合開始剤の含有量としては、2.0~30.0質量%が好ましく挙げられ、3.0~15.0質量%がより好ましく挙げられ、5.0~13.0質量%がさらに好ましく挙げられる。ニス組成物中における光重合開始剤の含有量が上記の範囲であることにより、ニス組成物の十分な硬化性と、良好な内部硬化性やコストとを両立できるので好ましい。
【0072】
(その他の成分)
本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物は、その他の成分として、重合禁止剤、増感剤、顔料、顔料分散剤・顔料分散用樹脂、界面活性剤、有機溶剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、保存性向上剤、防黴剤、防錆剤、増粘剤、保湿剤、pH調整剤等の各種添加剤を含有してもよい。また、ビヒクルとして機能するが硬化性ではない樹脂を配合しても良く、配合しなくても良い。また、溶媒を含有させても良いが、含有しなくても良い。さらに、ポリエチレン系ワックス・オレフィン系ワックス・フィッシャートロプシュワックス等のワックス類等を配合できる。
【0073】
(重合禁止剤)
重合禁止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール化合物や、酢酸トコフェロール、ニトロソアミン、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン等を好ましく例示することができ、中でもブチルヒドロキシトルエンをより好ましく例示することができる。ニス組成物にこのような重合禁止剤が添加されることにより、保存時に重合反応が進行してニス組成物が増粘するのを抑制できる。ニス組成物中の重合禁止剤の含有量としては、0.01~1質量%程度を例示することができる。
【0074】
(増感剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物は、硬化性を向上させる観点から増感剤を含有する。前記増感剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0075】
増感剤としては、例えば、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセンなどのアントラセン系増感剤;2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系増感剤などが挙げられ、これらの中でも、少なくともチオキサントン系増感剤が使用される。前記増感剤の市販品としては、アントラセン系増感剤では、商品名「DBA」、「DEA」(川崎化成工業社)、チオキサントン系増感剤では、商品名「DETX」、「ITX」(Lambson社)などが挙げられる。
【0076】
過剰添加を防止する観点から、光重合性成分全体を100質量部としたときに、チオキサントン系増感剤を0.3~5.0質量部含有してもよい。さらに、1.0質量部以上含有することが好ましく、4.0質量部以下含有させることが好ましい。なお、本発明のように、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤を使用することが可能である。
本発明においては、光重合性成分全体を100質量部としたときに、光重合開始剤及び/又は増感剤を、合計で7.0~30.0質量部含有することが好ましい。
【0077】
[顔料]
本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物は得た被膜が透明であることが好ましい。しかしながら、被膜の透明性を毀損しない範囲において顔料を含有できる。そのような顔料は、例えば着色顔料、白色顔料、金属パウダー等が挙げられる。このような顔料としては、従来からニス組成物に使用されている例えば下記の有機及び/又は無機顔料を特に制限無く挙げることができる。
【0078】
顔料としては、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料及び各種無機顔料等が挙げられる。
これらの顔料の中でもジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー等のイエロー顔料、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド、キナクリドン等のマゼンタ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー等のシアン顔料、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料(白色、黒色等の無彩色の着色顔料も含める)アルミニウムペースト、ブロンズパウダー等の金属パウダー等が例示される。
【0079】
顔料を含有させるときの含有量としては、目的とする着色の程度に応じて、ニス組成物の全体に対して10.0質量%以下が例示されるが、特に限定されない。
【0080】
(顔料分散剤・顔料分散用樹脂)
本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物が着色剤として顔料を採用するとき、顔料分散剤及び/又は顔料分散用樹脂を配合してもよい。
顔料分散剤としては、公知のノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
界面活性剤としては、例えば、シリコン系界面活性剤(例えば、ポリエーテル変性シリコンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等)、フッ素系界面活性剤、オキシアルキレンエーテル系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、リン系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
また、顔料分散用樹脂として、高分子分散剤(例えば、カルボジイミド系、ポリエステル系、ポリアミン系、ポリエステルアミン系、ポリウレタン系、脂肪酸アミン系分散剤、ポリアクリレート系、ポリカプロラクトン系、ポリシロキサン系、多鎖型高分子非イオン系、高分子イオン系の分散剤等)等からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。
本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物が顔料分散剤や顔料分散用樹脂を含む場合には、使用する顔料の合計量を100質量部としたときに、1~200質量部含有することが好ましい。
【0081】
(界面活性剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物には、使用するニスジェットヘッドに応じて、レベリング剤として、活性エネルギー線硬化型の組成物に使用される公知の界面活性剤が特に制限なく使用でき、例えば、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサンなどのシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤などが挙げられる。前記界面活性剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0082】
前記シリコーン系界面活性剤としては、BYK-307、BYK-315N、BYK-331、BYK-333、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-345、BYK-377、BYK-378、BYK-3455(ビックケミー社)などが挙げられる。
【0083】
前記フッ素系界面活性剤としては、F-410、F-444、F-553(DIC社)、FS-65、FS-34、FS-35、FS-31、FS-30(デュポン社)などが挙げられる。
【0084】
前記アセチレン系界面活性剤としては、ダイノール607、ダイノール609、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020、オルフィンPD-001、オルフィンPD-002W、オルフィンPD-004、オルフィンPD-005、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123、オルフィンEXP.4300(日信化学社)、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG-50、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465(EVONIK社)などが挙げられる。
【0085】
本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物中、界面活性剤を必ずしも含有させなくてもよいが、含有させる場合の前記界面活性剤の割合は、ニス組成物の表面張力を低下させ、塗布性を高める観点から、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、そして、配合中に発生するニス組成物中の泡を抑制し、塗布性を高める観点から、1.5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。
界面活性剤が含有される場合において、界面活性剤の含有量は特に限定されず、活性エネルギー線硬化型ニス組成物の表面張力が30.0~45.0mN/mとなる含有量であることが好ましく、活性エネルギー線硬化型ニス組成物中に0.10~1.50質量%であることがより好ましい。
【0086】
(有機溶剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物には、必要に応じ、有機溶剤を配合することができる。前記有機溶剤としては、エステル系有機溶剤、エーテル系有機溶剤、エーテルエステル系有機溶剤、ケトン系有機溶剤、芳香族炭化水素溶剤、含窒素系有機溶剤などが挙げられる。また、前記有機溶剤としては、1気圧下における沸点が150~220℃であるものが挙げられる。前記有機溶剤は、ニス組成物の硬化性、環境問題などの観点から、極力使用されないことが好ましい観点から、前記有機溶剤の割合は、ニス組成物中、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
【0087】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤等である。
【0088】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等である。
【0089】
(消泡剤)
消泡剤は、シリコーン系消泡剤、プルロニック(登録商標)系消泡剤等である。
【0090】
本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物の、25℃における粘度は、好ましくは15秒以上、より好ましくは20秒以上であり、好ましくは50秒以下、より好ましくは40秒以下、さらに好ましくは25秒以下である。ニス組成物には、必要に応じて粘度調整剤等が配合される。なお、本願明細書に記載の粘度は、ザーンカップ4号(離合社製)を用いて、25℃の条件で測定した粘度である。
また表面張力は30.0~45.0mN/mであることが好ましい。
【0091】
<活性エネルギー線硬化型ニス組成物の調製方法>
次に、これらの材料を用いて本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物を製造する方法について説明する。
製造方法としては、各成分を任意の順に混合して、液体状の活性エネルギー線硬化型ニス組成物を製造すればよい。
そのため、本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物は、例えば、湿式サーキュレーションミル、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、DCPミル、アジテータ、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー(マイクロフルイダイザー、ナノマイザー、アルティマイザー、ジーナスPY、DeBEE2000等)、パールミル等の分散機を使用して各成分を分散混合し、必要により活性エネルギー線硬化型ニス組成物の粘度を調整して得ることができる。なお、活性エネルギー線硬化型ニス組成物は、顔料と上記顔料分散剤及び上記光重合性モノマーを混合することにより、予めベース組成物を得て、そこに所望の組成となるよう上記の成分の残余の分を添加して調製してもよい。
上記の方法の中でも、(A)成分、(B)成分、又は(A)成分と(B)成分の混合物のいずれかを、25℃程度の温度のまま又は50~250℃の任意の温度に加熱したうえで、例えば常温で固体であることが通常である(B)成分を加えて、少なくとも(B)成分の溶解が終了するまで撹拌する方法を採用できる。
【0092】
<活性エネルギー線硬化型ニス組成物による印刷方法>
本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物を塗布する工程を含む印刷物の製造方法は、インキ組成物を用いて基材に予め印刷を行った後、その基材の表面に本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物を塗布するものである。基材の表面に活性エネルギー線硬化型ニス組成物を塗布する方法としては、公知のものを特に限定されずに挙げることができる。そのような方法の一例として、ロールコーター、チャンバーコーター等のフレキソコーター、グラビアコーター等を用いた塗布方法、オフセット印刷を用いた塗布方法等を挙げることができる。
【0093】
こうして、印刷物の表面に塗布されたニス組成物に対して活性エネルギー線の照射を行うことにより、未乾燥状態のニス組成物は瞬時に乾燥状態となる。活性エネルギー線としては、電子線や紫外線等公知のものを採用することができる。
また上記基材も従来公知の活性エネルギー線硬化型ニス組成物が適用可能な基材であれば特に限定されず、前記基材としては、例えば、プラスチック、紙、アルミニウム蒸着紙等の金属蒸着紙カプセル、ジェル、金属箔、ガラス、木材、布などが挙げられる。また、前記プラスチックとしては、その基材として、例えば、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)、セルロース系ポリマー(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアクリル系ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、塩化ビニル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィンポリマー、エチレン・プロピレン共重合体ポリマー等)、ポリアミド系ポリマー(例えば、ナイロン、芳香族ポリアミドポリマー等)、ポリスチレン系ポリマー(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体ポリマー等)、ポリイミド系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニルスルフィド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、ポリビニルブチラール系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、及びポリエポキシ系ポリマー、これらのポリマーのブレンド物等からなる群より選ばれる1種以上などが挙げられる。特に本発明の優れた透明性の観点から、アルミニウム蒸着紙に使用されるのが好ましい。
【実施例0094】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」「質量部」を意味するものである。また、表中の各材料の分量の数字についても「質量部」である。
下記表1に記載の各実施例及び各比較例の活性エネルギー線硬化型ニス組成物を調製し、それぞれの活性エネルギー線硬化型ニス組成物に関する試験結果性質を表1に記載した。
【0095】
(活性エネルギー線硬化型ニス組成物)
下記表1にて使用した成分は以下のとおり
♯3628 : ヒマシ油変性ウレタンアクリレート(伊藤製油社)
CN111 :大豆油変性アクリレート(サートマー社)
AGISYN 716 :トール油変性アクリレート(DSM社)
ワニス1 : ロジン変性アルキッド樹脂(sp値=10.0)50質量部をジプロピレングリコールジアクリレート50質量部に溶解したもの
ワニス2 : ロジンエステル(sp値=10.0、ハリマ化成製テスポール1107)50質量部をジプロピレングリコールジアクリレート50質量部に溶解したもの
なお、ジプロピレングリコールジアクリレートは反応性溶媒。
Omnirad 184 :(IGM RESINS B.V.社)
【0096】
(活性エネルギー線硬化型ニス組成物の調整)
表1の記載の配合組成(質量%)となるように各成分を配合し、撹拌混合して、実施例及び比較例の活性エネルギー線硬化型ニス組成物を得た。
【0097】
<評価方法>
(安定性)
各実施例及び比較例のニス組成物を褐色瓶に採り、密閉して25℃で24時間経過後、目視にて下記評価基準に従って評価した。
〇:製造直後のニス組成物と比較して同じ透明度のままであった。
×:析出物がある、もしくは製造直後のニス組成物と比較して白濁がみられた。
【0098】
(硬化性)
実施例、比較例のニス組成物0.3mlを、2分割RIテスターでアルミニウム蒸着紙のアルミニウム蒸着層側に展色し、評価用ピースとした。高圧水銀ランプを用いて120W/cm、130m/minの条件での紫外線照射を1パスとして、複数パス照射し、硬化するまでのパス回数を評価した。
〇:3パスで硬化した。
△:4~5パスで硬化した。
×:5パスでも未硬化だった。
【0099】
(透明性)
実施例、比較例のニス組成物をNo.4バーコーターでアルミニウム蒸着紙のアルミニウム蒸着層側に展色し、評価用ピースとした。高圧水銀ランプを用いて120W/cm、130m/minの条件での紫外線照射を2パス行った硬化塗膜を、目視にて下記評価基準に従って評価した。
〇:透明のままであった。
△:塗膜がわずかに濁っていた。
×:塗膜が明らかに白化していた。
【0100】
【0101】
本発明に沿ったニス組成物による実施例1~9によれば、本発明の活性エネルギー線硬化型ニス組成物が、優れた安定性、硬化性及び透明性を備えることがわかる。
これに対して、(A)成分及び(B)成分を含有しない比較例1~3によれば、透明性に劣っていた。