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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050884
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
E03D11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161229
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】篠原 祐紀
(72)【発明者】
【氏名】坂場 勇
(72)【発明者】
【氏名】山崎 聖
(72)【発明者】
【氏名】岡田 茂
(72)【発明者】
【氏名】坪根 雄一
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC03
2D039AD01
(57)【要約】
【課題】溜水部の溜水域全体をある程度大きく確保したとしても、重量負荷が大きい溜水部を含む壺部に対する支持強度を向上させることができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明による水洗大便器1は、床置き式の陶器製の便器本体2を有し、この便器本体は、汚物受け面14及び壺部12を備えたボウル部6と、排水トラップ部8と、便器本体の外郭を形成する外側壁44と、この外側壁よりも内側に設けられて壺部を支持する内側支持壁46と、を備えており、壺部は、底壁32と、側壁36,38と、底壁の外縁32bと側壁の下縁36c,38cとを曲率を有する面C1で接合する接合部40と、を備えており、内側支持壁は、壺部の前側領域の側面視において、水平面に対して45度から90度までの範囲で床面A1から上方に延びる縦壁部48を備えており、この縦壁部48の上端48aは、壺部の接合部に対して直接的に又は間接的に接合されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
床面に配置される床置き式の陶器製の便器本体を有し、
この便器本体は、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の下方に設けられて貯留した溜水により溜水部を形成する壺部と、を備えたボウル部と、
上記壺部の下方に接続された入口を備え、上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、
上記ボウル部及び上記排水トラップ部の外側に設けられて上記便器本体の外郭を形成する外側壁と、
この外側壁よりも内側に設けられ、その上端が上記壺部に接合されて上記壺部を支持する内側支持壁と、を備えており、
上記壺部は、上記排水トラップ部の入口の上方且つ前方に形成された底壁と、この底壁の周囲を取り囲むように形成された側壁と、上記底壁の外縁と上記側壁の下縁とを曲率を有する面で接合する接合部と、を備えており、
上記内側支持壁は、上記壺部の前側領域において、側面視の水平面に対して45度から90度までの範囲で上記床面から上方に延びる縦壁部を備えており、この縦壁部の上端は、上記壺部の上記接合部に対して直接的に又は間接的に接合されていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記内側支持壁は、その縦壁部の上端が上記壺部の前端における上記接合部に対して直接的に接合されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記内側支持壁は、さらに、上記縦壁部の上端に接合されて横方向に延びる横壁部を備えており、この横壁部は、上記縦壁部の上端に接合される外側端部と、上記壺部の前端よりも左右両側の側方部における上記接合部に接合される内側端部と、を備えており、上記縦壁部の上端は、上記壺部の前端よりも左右両側の側方部における上記接合部に対して上記横壁部を介して間接的に接合されている請求項2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記横壁部は、上記外側端部から上記内側端部までの左右方向の長さが前方側から後方側に向かうにつれて長くなるように形成されている請求項3記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1に記載されているように、床面に配置される床置き式の陶器製の便器本体を有するものが知られている。
また、このような床置き式の陶器製の便器本体は、ボウル部と、このボウル部の下方に入口部が接続された排水トラップ部と、を備えている。また、ボウル部は、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の下方に設けられて貯留した所定量の溜水により溜水部を形成する壺部と、を備えている。
さらに、このような便器本体は、陶器製であるため、比較的重量が大きい。特に、便器本体を床面に配置した状態では、ボウル部の壺部においては、この壺部自体の重量や溜水部の洗浄水量の重量が作用していることに加えて、その上方側から汚物受け面等の重量が作用し、さらに、下方側からは壺部の下方に入口部が接続されている排水トラップ部の重量も作用しているため、重量負荷が大きい部分となっている。
そこで、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器の便器本体においては、特に、重量負荷が大きい溜水部を含む壺部を支持するための構造として、便器本体の外郭を形成する外側壁部と、便器本体の内部に設けられた内側支持壁部と、を備えている。また、内側支持壁部は、外側壁部の上下方向の途中部分から、その内側かつ上方の壺部に向かって上方に延びた後、側方に延びて壺部の側壁部に接合されており、比較的重量負荷が大きい溜水部を含む壺部の側壁部を外側から支持することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-28262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器では、溜水部の溜水域の大きさを大きく設計する程、その分、溜水部に貯留される溜水量も大きくなることに加えて、溜水部を含む陶器製の壺部の範囲も大きくなるため、溜水部を含む壺部全体の重量についても大きくなる。
これらの結果、壺部の側壁部を側方から支持する便器本体の内側支持壁部等に破損や変形が生じ易くなるため、重量負荷が大きい溜水部を含む壺部に対する支持強度をいかに向上させるかが、近年要請されている課題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や近年要請されている課題を解決するためになされたものであり、溜水部の溜水域全体をある程度大きく確保したとしても、重量負荷が大きい溜水部を含む壺部に対する支持強度を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、床面に配置される床置き式の陶器製の便器本体を有し、この便器本体は、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の下方に設けられて貯留した溜水により溜水部を形成する壺部と、を備えたボウル部と、上記壺部の下方に接続された入口を備え、上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、上記ボウル部及び上記排水トラップ部の外側に設けられて上記便器本体の外郭を形成する外側壁と、この外側壁よりも内側に設けられ、その上端が上記壺部に接合されて上記壺部を支持する内側支持壁と、を備えており、上記壺部は、上記排水トラップ部の入口の上方且つ前方に形成された底壁と、この底壁の周囲を取り囲むように形成された側壁と、上記底壁の外縁と上記側壁の下縁とを曲率を有する面で接合する接合部と、を備えており、上記内側支持壁は、上記壺部の前側領域において、側面視の水平面に対して45度から90度までの範囲で上記床面から上方に延びる縦壁部を備えており、この縦壁部の上端は、上記壺部の上記接合部に対して直接的に又は間接的に接合されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、床置き式の陶器製の便器本体は比較的重量が大きい。
また、床置き式の陶器製の便器本体を床面に配置した状態では、特に、ボウル部の壺部においては、この壺部自体の重量や溜水部の洗浄水量の重量が作用していることに加えて、その上方側から汚物受け面等の重量が作用し、さらに、下方側からは壺部の下方に入口が接続されている排水トラップ部の重量も作用しているため、重量負荷が大きい部分となっている。
さらに、溜水部の重量は、この溜水部の溜水領域が大きい程大きくなるため、その分、溜水部を含む壺部全体の重量についても大きくなる。
そこで、本発明においては、便器本体の外郭を形成する外側壁よりも内側に設けられた内側支持壁について、壺部の前側領域において、水平面に対して45度から90度までの範囲で床面から上方に延びる縦壁部を設けることにより、この縦壁部の上端について、壺部の底壁の外縁と側壁の下縁と曲率を有する面で接合する接合部に対して直接的に又は間接的に接合させることができた。
これにより、便器本体の内側支持壁の縦壁部が、重量負荷が大きい壺部に対して、その底壁の外縁と側壁の下縁とを接合する接合部を支点として直接的又は間接的に支持することができるため、重量負荷が大きい壺部を含む便器本体の強度を高めることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記内側支持壁は、その縦壁部の上端が上記壺部の前端における上記接合部に対して直接的に接合されている。
このように構成された本発明においては、壺部における底壁の外縁と側壁の下縁とを接合する接合部の中でも、特に、壺部の前端における接合部については、応力集中が発生しやすい部分の1つである。
そこで、本発明においては、鉛直成分が大きい内側支持壁の縦壁部の上端を壺部の前端における接合部に対して直接的に接合させることにより、応力集中が発生しやすい壺部の前端における接合部について、縦壁部により下方側から確実に支持することができる。
したがって、内側支持壁の縦壁部が壺部を支持している状態における支持構造を複雑な構造にすることなく、支持強度についても確保することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記内側支持壁は、さらに、上記縦壁部の上端に接合されて横方向に延びる横壁部を備えており、この横壁部は、上記縦壁部の上端に接合される外側端部と、上記壺部の前端よりも左右両側の側方部における上記接合部に接合される内側端部と、を備えており、上記縦壁部の上端は、上記壺部の前端よりも左右両側の側方部における上記接合部に対して上記横壁部を介して間接的に接合されている。
このように構成された本発明においては、内側支持壁の縦壁部の上端が、壺部の前端よりも左右両側の側方部における接合部に対して横壁部を介して間接的に接合されているため、壺部の前端については、縦壁部のみで直接的に支持しながら、壺部の前端部よりも左右両側の側方部については、縦壁部が横壁部を介して間接的に支持することができる。
したがって、内側支持壁の縦壁部及び横壁部により、壺部の接合部に対して前方及び左右側方の外側から強固に保持することができる。
また、横壁部が壺部の接合部の左右側方の外側から支持した状態では、横壁部の下方に内部スペースが形成されるため、便器本体の内部空間を確保することができる。これにより、便器本体の設置状況に応じて、便器本体の内部空間を適宜有効活用することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記横壁部は、上記外側端部から上記内側端部までの左右方向の長さが前方側から後方側に向かうにつれて長くなるように形成されている。
このように形成された本発明においては、横壁部における外側端部から内側端部までの左右方向の長さが、前方側から後方側に向かうにつれて長くなるように形成されているため、横壁部の下方の内部スペースが前方側から後方側に向かうにつれて大きくなり、便器本体の内部空間をより大きく確保することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水洗大便器によれば、溜水部の溜水域全体をある程度大きく確保したとしても、重量負荷が大きい溜水部を含む壺部に対する支持強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器の概略平面図である。
図2図1のII-II線に沿った側面断面図である。
図3図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の側面断面図において、便器本体の壺部の前方部分を拡大した拡大側面断面図である。
図4図2のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図2のV-V線に沿った断面図である。
図6図2のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図2のVII-VII線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図7を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器の概略平面図である。また、図2は、図1のII-II線に沿った側面断面図である。
図1及び図2に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、床面A1に配置される床置き式の陶器製の便器本体2を備えている。
この便器本体2は、上流側から下流側に向かって、導水路4と、ボウル形状のボウル部6と、排水トラップ部8とを備えている。
これにより、本発明の一実施形態による水洗大便器1については、サイホン作用を利用してボウル部6内の汚物を吸い込んで排水トラップ部8から一気に外部に排出する、いわゆる、「サイホン式の水洗大便器」となっている。
なお、本発明の一実施形態による水洗大便器1については、サイホン式の水洗大便器の形態に限られず、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、「洗い落し式の水洗大便器」の形態についても適用可能である。
【0013】
また、図1及び図2に示す本実施形態の水洗大便器1では、その便器本体2の上面において、便座(図示せず)及び便蓋(図示せず)等が設けられているが、従来の水洗大便器の構造と同様であるため、具体的な説明については省略する。
さらに、便器本体2の上面における便座(図示せず)及び便蓋(図示せず)の後方側には、使用者の局部を洗浄する衛生洗浄部(図示せず)や便器本体2への給水機能に関与する給水系機能部等の機能部(図示せず)等が設けられていてもよいが、これらについても、従来の水洗大便器の構造と同様であるため、具体的な説明については省略する。
【0014】
つぎに、図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、便器洗浄に使用される洗浄水を貯水して便器本体2へ給水する洗浄水源である重力給水式の貯水タンク10を備えている。
ここで、本実施形態では、便器本体2へ洗浄水を供給する洗浄水源としては、上述した重力給水式の貯水タンク10のようなタンク式の形態に限定されず、他の形態でも適用可能である。すなわち、便器本体2へ洗浄水を供給する洗浄水源として、水道水の給水圧を直接利用した水道直圧式の形態やフラッシュバルブ式の形態であってもよいし、或いは、ポンプの補圧を利用して洗浄水を供給する形態であってもよい。
【0015】
つぎに、図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1においては、便器本体2のボウル部6の平面視において、このボウル部6の左右中央に設けられた壺部12に対し、前後方向に二等分するように水平左右方向に延びる中心軸線を符号「X」で示す。
また、図1に示す便器本体2のボウル部6の平面視において、このボウル部6を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線を符号「Y」で示している。
さらに、図1に示す便器本体2のボウル部6の平面視において、各中心軸線X,Yの互いの交点を平面視のボウル部6の中心Oとし、この中心Oを通る鉛直方向に延びる中心軸線を図1及び図2に符号「Z」で示している。
また、図1に示すように、水洗大便器1の前後左右の方向については、「前」、「後」、「左」、「右」でそれぞれ示している。
【0016】
さらに、図1及び図2に示すように、本実施形態の水洗大便器1においては、ボウル部6内の領域について、中心軸線Xよりも前方側の領域を「ボウル部6の前方領域F」と定義する。また、このボウル部6の前方領域Fにおいて、ボウル部6の水平前後方向の中心軸線Yに対して左側領域L、右側領域Rのそれぞれを「ボウル部6の左前方領域LF」、「ボウル部6の右前方領域RF」と定義する。
同様に、ボウル部6内の領域について、中心軸線Xよりも後方側の領域を「ボウル部6の後方領域B」と定義する。また、このボウル部6の後方領域Bにおいて、ボウル部6の水平前後方向の中心軸線Yに対して左側領域L、右側領域Rのそれぞれを「ボウル部6の左後方領域LB」、「ボウル部6の右後方領域RB」と定義する。
【0017】
つぎに、図1に示すように、便器本体2の上流側に位置する導水路4は、ボウル部6の後方側に形成され、貯水タンク10から供給された洗浄水をボウル部6に導くようになっている。
また、図1及び図2に示すように、便器本体2の導水路4の下流側に位置するボウル部6は、下方から上方に向かって、詳細は後述する壺部12、汚物受け面14、棚部16、及び、リム部18を備えている。
さらに、ボウル部6の左後方領域LBのリム部18の前方側には、第1リム吐水口20が設けられており、ボウル部6の右後方領域RBのリム部18の後方側には、第2リム吐水口22が設けられている。
【0018】
つぎに、図1及び図2に示すように、導水路4は、共通導水路24と、第1リム導水路26と、第2リム導水路28とを備えている。
まず、共通導水路24は、貯水タンク10に接続される後方の入口4aから前方のボウル部6の背面側近傍まで延びるようにボウル部6の後方側の便器本体2の内部に形成されている。
また、第1リム導水路26は、ボウル部6の背面側近傍で共通導水路24からボウル部6の左側方に分岐した後、ボウル部6の外周面を迂回しながら前方側の第1リム吐水口20まで延びるようにボウル部6の左後方領域LBのリム部18の内部に形成されている。
これにより、共通導水路24から第1リム導水路26に供給された洗浄水は、第1リム吐水口20からその前方側の棚部16に向けて第1リム吐水として前方へ吐水された後、ボウル部6内の左前方領域LFから右前方領域RFを経て右後方領域RBへと旋回する旋回流を形成するようになっている。
【0019】
さらに、第2リム導水路28は、ボウル部6の背面側近傍で共通導水路24からボウル部6の右側方に分岐した後、便器本体2の右側方部付近で左側方の第2リム吐水口22に向けて屈曲(Uターン)し、第2リム吐水口22まで延びるようにボウル部6の右後方領域RBのリム部18の後方側の内部に形成されている。
これにより、共通導水路24から第2リム導水路28に供給された洗浄水は、第2リム吐水口22からその後方側の棚部16に向けて第2リム吐水として後方へ吐水された後、ボウル部6内の右後方領域RBから左後方領域LBを経て左前方領域LF領域へと旋回した後、この左前方領域LF領域から壺部12内の前方領域に流入するようになっている。
また、第2リム吐水口22から吐水された第2リム吐水の一部は、ボウル部6の壺部12よりも後方領域の汚物受け面14から壺部12内の後方領域に流入するようにもなっている。
なお、本実施形態では、ボウル部6の棚部16が汚物受け面14の外縁とリム部18の下端との間に設けられている形態について説明するが、必ずしも棚部16が設けられる必要はなく、この棚部16を省略し、第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれから吐水される第1リム吐水及び第2リム吐水が、棚部16を経由せずに汚物受け面14の上縁部に直接的に吐水されても良い。
【0020】
つぎに、図1図7を参照して、ボウル部6の壺部12及びその周辺部分の詳細について説明する。
まず、図3は、図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の側面断面図において、便器本体の壺部の前方部分を拡大した拡大側面断面図である。
また、図4図7は、図2のIV-IV線、図2のV-V線、図2のVI-VI線、及び、図2のVII-VII線のそれぞれに沿った断面図である。
【0021】
まず、図2に示すように、ボウル部6の壺部12は、汚物受け面14の下方に設けられており、貯留した溜水により溜水部W0を形成している。
ここで、図2及び図4図7では、便器洗浄が行われる前の待機状態(封水状態)のボウル部6の壺部12の溜水部W0の溜水面の水位、すなわち、封水面の水位(封水水位)を符号「WL」で示している。
つぎに、図2図7に示すように、壺部12は、排水トラップ部8の入口30の上方且つ前方に設けられて壺部12の底面32aを形成する底壁32を備えている。
また、壺部12は、排水トラップ部8の入口30の後方側に設けられた後壁34(左側後壁34a、右側後壁34b)を備えている。
さらに、壺部12は、後壁34の左右両端(左側後壁34aの左側端部及び右側後壁34bの右側端部)から前方に向かって左右外側に広がるように設けられた側壁36(後方側壁36、後方左側壁36a、後方右側壁36b)を備えている。
また、壺部12は、後方側壁36の左右前端(後方左側壁36a及び後方右側壁36bのそれぞれの前端)から前方に向かって左右内側に窄まるように設けられていると共に、互いの前端が接合される側壁38(前方側壁38、前方左側壁38a、前方右側壁38b)を備えている。
【0022】
つぎに、図3に示すように、壺部12は、さらに、その底壁32の底面32aの外縁32bと側壁36,38の下縁36c,38cとを曲率を有する面(曲がり面C1)で接合する下側接合部40を備えている。
また、図3の側面断面視において、下側接合部40の下縁40aと上縁40bとの間の区間の曲がり面C1の曲率は、下側接合部40の下縁40a(曲がり面C1の下縁40a)と底壁32の底面32aの外縁32bとを接合する下側接合点P1における底面32aを含む接平面C2の曲率よりも大きく設定されている。
同様に、図3の側面断面視において、下側接合部40の曲がり面C1の曲率は、下側接合部40の上縁40b(曲がり面C1の上縁40b)と側壁36,38の下縁36c,38cとを接合する上側接合点P2における側壁36,38の壁面を含む接平面C3の曲率よりも大きく設定されている。
【0023】
つぎに、図3に示すように、壺部12は、さらに、その側壁36,38の上縁36d,38dと汚物受け面14の下縁14aとを曲率を有する面(曲がり面C4)で接合する上側接合部42を備えている。
また、図3の側面断面視において、上側接合部42の下縁42aと上縁42bとの間の区間の曲がり面C4の曲率は、上側接合部42の下縁42a(曲がり面C4の下縁42a)と側壁36,38の上縁36d,38dとを接合する下側接合点P3における側壁36,38の壁面を含む接平面C5の曲率よりも大きく設定されている。
同様に、図3の側面断面視において、上側接合部42の曲がり面C4の曲率は、上側接合部42の上縁42b(曲がり面C4の上縁42b)と汚物受け面14の下縁14aとを接合する上側接合点P4における汚物受け面14の壁面を含む接平面C6の曲率よりも大きく設定されている。
【0024】
つぎに、図2図7に示すように、本実施形態の水洗大便器1の便器本体2は、さらに、ボウル部6及び排水トラップ部8の外側に設けられた外側壁44を備えている。この外側壁44は、便器本体2の外郭(いわゆる、便器本体2の袴部又はスカート部)を形成する外側壁44を備えている。
また、便器本体2は、さらに、外側壁44よりも内側に設けられた内側支持壁46を備えている。この内側支持壁46は、その上端が壺部12に接合されて壺部12を下側から支持している。
【0025】
つぎに、図2図7に示すように、内側支持壁46は、縦壁部48及び横壁部50を備えている。
まず、内側支持壁46の縦壁部48は、図2の側面断面視において、水平面(床面A1)に対して傾斜角度αで床面A1から上方に延びるように形成されている。
また、内側支持壁46の縦壁部48は、その上端が壺部12の前側領域の下側接合部40の外面に直接的に接合されている(図3参照)。
ここで、縦壁部48の傾斜角度αについて、45度から90度までの範囲で設定されていることが好ましく、45度から88度に設定されていることがより好ましい。
【0026】
つぎに、図4図7に示すように、内側支持壁46の横壁部50は、縦壁部48の上端48aに接合されて横方向に延びるように形成されている。
また、横壁部50は、外側端部50a及び内側端部50bを備えている。この横壁部50の外側端部50aは、縦壁部48の上端48aに接合されている。
さらに、横壁部50の内側端部50bは、壺部12の前端Tよりも左右両側の側方部における下側接合部40に接合されている。
これらにより、図4図7に示すように、縦壁部48の上端48aは、壺部12の前端Tよりも左右両側の側方部における下側接合部40に対して横壁部50を介して間接的に接合されている。
また、図4図7に示すように、横壁部50は、その外側端部50aから内側端部50bまでの左右方向の長さL1が前方側から後方側に向かうにつれて長くなるように形成されている。
【0027】
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、床置き式の陶器製の便器本体2は比較的重量が大きい。
また、床置き式の陶器製の便器本体2を床面A1に配置した状態では、特に、ボウル部6の壺部12においては、この壺部12自体の重量や溜水部W0の洗浄水量の重量が作用していることに加えて、その上方側から汚物受け面14等の重量が作用し、さらに、下方側からは壺部12の下方に入口30が接続されている排水トラップ部8の重量も作用しているため、重量負荷が大きい部分となっている。
さらに、溜水部W0の重量は、この溜水部W0の溜水領域が大きい程大きくなるため、その分、溜水部W0を含む壺部12全体の重量についても大きくなる。
そこで、本実施形態の水洗大便器1においては、便器本体2の外郭を形成する外側壁44よりも内側に設けられた内側支持壁46について、壺部12の前側領域において、水平面(床面A1)に対して45度から90度までの範囲で床面A1から上方に延びる縦壁部48を設けた。
これにより、この縦壁部48の上端48aについて、壺部12の底壁32の外縁32bと側壁36,38の下縁36c,38cと曲率を有する面C1で接合する下側接合部40に対して直接的に又は間接的に接合させることができた。
したがって、便器本体2の内側支持壁46の縦壁部48が、重量負荷が大きい壺部12に対して、その底壁32の外縁32bと側壁36,38の下縁36c,38cとを接合する下側接合部40を支点として直接的又は間接的に支持することができるため、重量負荷が大きい壺部12を含む便器本体2の強度を高めることができる。
【0028】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、壺部12における底壁32の外縁32bと側壁36,38の下縁36c,38cとを接合する下側接合部40の中でも、特に、壺部12の前端Tにおける下側接合部40(図3参照)については、応力集中が発生しやすい部分の1つである。
そこで、本実施形態の水洗大便器1においては、鉛直成分が大きい内側支持壁46の縦壁部48の上端48aを壺部12の前端Tにおける下側接合部40に対して直接的に接合させることにより、応力集中が発生しやすい壺部12の前端Tにおける下側接合部40について、縦壁部48により下方側から確実に支持することができる。
したがって、内側支持壁46の縦壁部48が壺部12を支持している状態における支持構造を複雑な構造にすることなく、支持強度についても確保することができる。
【0029】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、図4図7に示すように、内側支持壁46の縦壁部48の上端48aが、壺部12の前端Tよりも左右両側の側方部における下側接合部40に対して横壁部50を介して間接的に接合されている。
これにより、壺部12の前端Tについては、縦壁部48のみで直接的に支持しながら(図3参照)、壺部12の前端Tよりも左右両側の側方部については、縦壁部48が横壁部50を介して間接的に支持することができる(図4図7参照)。
したがって、内側支持壁46の縦壁部48及び横壁部50により、壺部12の下側接合部40に対して前方及び左右側方の外側から強固に保持することができる。
また、横壁部50が壺部12の下側接合部40の左右側方の外側から支持した状態では、横壁部50の下方に内部スペースが形成されるため、便器本体2の内部空間を確保することができる。これにより、便器本体2の設置状況に応じて、便器本体2の内部空間を適宜有効活用することができる。
【0030】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、図4図7に示すように、横壁部50における外側端部50aから内側端部50bまでの左右方向の長さL1が、前方側から後方側に向かうにつれて長くなるように形成されている。
これにより、横壁部50の下方の内部スペースが前方側から後方側に向かうにつれて大きくなり、便器本体2の内部空間をより大きく確保することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 導水路
4a 導水路の入口
6 ボウル部
8 排水トラップ部
10 貯水タンク
12 壺部
14 汚物受け面
14a 汚物受け面の下縁
16 棚部
18 リム部
20 第1リム吐水口
22 第2リム吐水口
24 共通導水路
26 第1リム導水路
28 第2リム導水路
30 排水トラップ部の入口
30a 排水トラップ部の入口の後端
30b 排水トラップ部の入口の前端
32 壺部の底壁
32a 壺部の底壁の底面
32b 壺部の底壁の外縁
34 壺部の後壁
34a 壺部の左側後壁
34b 壺部の右側後壁
36 壺部の後方側壁(壺部の側壁)
36a 壺部の後方左側壁(壺部の側壁)
36b 壺部の後方右側壁(壺部の側壁)
36c 壺部の後方側壁の下縁(壺部の側壁の下縁)
36d 壺部の後方側壁の上縁
38 壺部の前方側壁(壺部の側壁)
38a 壺部の前方左側壁(壺部の側壁)
38b 壺部の前方右側壁(壺部の側壁)
38c 壺部の前方側壁の下縁(壺部の側壁の下縁)
38d 壺部の後方側壁の上縁
40 下側接合部(壺部の接合部)
40a 下側接合部の下縁
40b 下側接合部の上縁
42 上側接合部
42a 上側接合部の下縁
42b 上側接合部の上縁
44 外側壁
44a 凹部の底面
44b 凹部の後端
46 内側支持壁
48 内側支持壁の縦壁部
48a 縦壁部の上端
50 内側支持壁の横壁部
A1 床面
B ボウル部の後方領域
C1 下側接合部の曲がり面(接合部の曲率を有する面)
C2 接平面
C3 接平面
C4 上側接合部の曲がり面(接合部の曲率を有する面)
C5 接平面
C6 接平面
d1 壺部の凹部の上下方向の凹み量
F ボウル部の前方領域
f1 洗浄水の流れ
f2 洗浄水の流れ(縦旋回流)
f3 洗浄水の流れ
f4 洗浄水の流れ
H1 上側接合部の側面視における上下方向の幅
L ボウル部の左側領域
LB ボウル部の左後方領域
LF ボウル部の左前方領域
L1 横壁部の外側端部から内側端部までの左右方向の長さ
O ボウル部の中心、壺部の前後方向の中心
P1 下側接合部の下縁と底壁の底面の外縁とを接合する下側接合点
P2 下側接合部の上縁と側壁の下縁とを接合する上側接合点
P3 上側接合部の下縁と側壁の上縁とを接合する下側接合点
P4 上側接合部の上縁と汚物受け面の下縁とを接合する上側接合点
P5 壺部の底壁の遷移部における凸状に形成された部分の頂点位置
P6 壺部の底壁の凹部の最低底面位置
R ボウル部の右側領域
RB ボウル部の右後方領域
RF ボウル部の右前方領域
T 壺部の前端
W0 溜水部
WL 封水水位
X ボウル部の水平左右方向の中心軸線
Y ボウル部の水平前後方向の中心軸線
Z ボウル部の中心を通る鉛直方向の中心軸線
α 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7