(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050887
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20230404BHJP
E03D 11/08 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
E03D11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161232
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 博
(72)【発明者】
【氏名】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】浦田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】安井 一成
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC02
2D039AD04
2D039DB00
(57)【要約】
【課題】便器本体の壺部内における汚物の滞留を抑制し、汚物排出性能を向上させることができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明による水洗大便器1は、汚物受け面14と、壺部12と、を備えたボウル部6と、壺部の下方に接続された入口30を備え、ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部8と、を有し、壺部は、排水トラップ部の入口の上方且つ前方に形成された底壁32と、排水トラップ部の入口の後方側に設けられた後壁34と、底壁の周囲を取り囲むように形成された側壁36,38と、を備えており、排水トラップ部の入口は、壺部の後壁の下端に接合された後端30aと、壺部の底壁における左右中央の後端56cに接合された前端30bと、を備えており、排水トラップ部の入口の前端30bは、排水トラップ部の入口の後端30aよりも低い位置に設けられている。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、
ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の下方に設けられて貯留した溜水により溜水部を形成する壺部と、を備えたボウル部と、
上記壺部の下方に接続された入口を備え、上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を有し、
上記壺部は、上記排水トラップ部の入口の上方且つ前方に形成された底壁と、上記排水トラップ部の入口の後方側に設けられた後壁と、上記底壁の周囲を取り囲むように形成された側壁と、を備えており、
上記排水トラップ部の入口は、上記壺部の後壁の下端に接合された後端と、上記壺部の底壁における左右中央の後端に接合された前端と、を備えており、
上記排水トラップ部の入口の前端は、上記排水トラップ部の入口の後端よりも低い位置に設けられていることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記底壁は、その底面が、側面断面視において、上記底壁の後端から上記底面上に沿って前後方向に延びる第1接線と、この第1接線を上記後端から後方側に延長させた第1接線延長部と、を含み、
上記第1接線延長部は、側面断面視において、上記排水トラップ部の入口の後端に対して同一の前後方向位置では、上記排水トラップ部の入口の後端の高さ位置よりも下方の高さ位置を通過するように設定されている請求項1記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記汚物受け面は、側面断面視において、この汚物受け面上に沿って前後方向に延びる第2接線と、この第2接線を上記汚物受け面の下縁から後方側に延長させた第2接線延長部と、を含み、
上記第1接線延長部及び上記第2接線延長部は、側面断面視において、互いにほぼ平行になるように設定されている請求項2記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記排水トラップ部は、側面断面視において、その入口の後端上方に設けられて前方に向かって突出する突出部と、この突出部から後方且つ下方の最下端部まで延びた後、この最下端部から後方且つ上方に延びるトラップ管路と、を備えており、
上記排水トラップ部の上記突出部から上記最下端部までの上記トラップ管路内では、その側面断面視における上面形状がほぼ平面形状に形成されている請求項1乃至3の何れか1項に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記ボウル部は、さらに、上記壺部の側壁の上縁と上記汚物受け面の下縁とを曲率を有する面で接合する接合部を備えており、この接合部の側面断面視における上下方向の幅は、後方側から前方側に向かうにつれて小さくなるように設定されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器として、例えば、特許文献1に記載されているように、便器本体が、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の下方に設けられて貯留した溜水により溜水部を形成する壺部と、を備えたボウル部を有するものが知られている。
また、このような従来の水洗大便器においては、便器本体が、壺部の下方に接続された入口部を備えた排水トラップ部を有し、ボウル部内の汚物を排水トラップ部から排出することができるようになっている。
さらに、便器本体の壺部は、左右方向に延びる後壁部と、この後壁部の左右両端から前方に向かって左右外側に広がるように設けられた後方側壁部と、この後方側壁部の左右前端から前方に向かって左右内側に窄まるように設けられて互いの前端が接合される前方側壁部と、を備えており、平面視において、概ね五角形形状を形成している。このように、壺部が、平面視において、概ね五角形形状を形成していることにより、壺部の後方領域の容積を大きく確保することができるため、溜水部の溜水量を多く確保することができ、ボウル部の封水切れが発生し難い構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されている従来の水洗大便器では、汚物受け面上を旋回した洗浄水が壺部の前方側から壺部内に流入した後、この洗浄水の一部が壺部の底壁部の底面に沿って前方側に流れることにより、排水トラップ部の入口部の前端部側から後端部側に流れるようになっている。
この際、壺部の底壁部における左右中央の後端に設けられた排水トラップ部の入口部の前端部と、壺部の後壁部の下端に設けられた排水トラップ部の入口部の後端部とが、互いにほぼ同一高さ位置に設けられている。
これにより、壺部の底壁部の底面に沿って前方側に流れた洗浄水の一部は、排水トラップ部の入口部に流入することなく、壺部の後壁部に衝突して跳ね返り、壺部内に滞留することになるため、汚物排出性能(排出力)を低下させるという問題がある。
したがって、壺部内における汚物の滞留を抑制し、汚物を排水トラップ部にスムーズに導くことにより、いかに汚物排出性能を向上させるかが近年要請されている課題となっている。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題や近年要請されている課題を解決するためになされたものであり、便器本体の壺部内における汚物の滞留を抑制し、汚物排出性能を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、洗浄水により洗浄されて汚物を排出する水洗大便器であって、ボウル形状の汚物受け面と、この汚物受け面の下方に設けられて貯留した溜水により溜水部を形成する壺部と、を備えたボウル部と、上記壺部の下方に接続された入口を備え、上記ボウル部内の汚物を排出する排水トラップ部と、を有し、上記壺部は、上記排水トラップ部の入口の上方且つ前方に形成された底壁と、上記排水トラップ部の入口の後方側に設けられた後壁と、上記底壁の周囲を取り囲むように形成された側壁と、を備えており、上記排水トラップ部の入口は、上記壺部の後壁の下端に接合された後端と、上記壺部の底壁における左右中央の後端に接合された前端と、を備えており、
上記排水トラップ部の入口の前端は、上記排水トラップ部の入口の後端よりも低い位置に設けられていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、吐水部からボウル部内に吐水された洗浄水は、汚物受け面から壺部内に流れ込む。
この際、壺部の上方かつ前方の汚物受け面から壺部内の前方領域に流れ込んだ洗浄水は、壺部内の前方領域から壺部の底壁の底面に沿って、その左右中央の後端に接合された排水トラップ部の入口の前端側に向かって誘導される。
このとき、排水トラップ部の入口の前端が排水トラップ部の入口の後端よりも低い位置に設けられているため、排水トラップ部の入口において前側が低く、後側が高い高低差を有する構造にすることができる。
したがって、壺部内の前方領域から排水トラップ部の入口の前端付近に流れる汚物を含む洗浄水は、その後方側の排水トラップ部に向かって流れる際に、排水トラップ部の入口の後端において停滞することなくスムーズに通過することができ、排水トラップ部内にスムーズに流入することができる。
よって、ボウル部内の汚物を排水トラップ部にスムーズに導くことができるため、水洗大便器における汚物排出性能(排出力)を向上させることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記底壁は、その底面が、側面断面視において、上記底壁の後端から上記底面上に沿って前後方向に延びる第1接線と、この第1接線を上記後端から後方側に延長させた第1接線延長部と、を含み、上記第1接線延長部は、側面断面視において、上記排水トラップ部の入口の後端に対して同一の前後方向位置では、上記排水トラップ部の入口の後端の高さ位置よりも下方の高さ位置を通過するように設定されている。
このように構成された本発明においては、壺部内の前方領域から底壁の底面に沿って排水トラップ部の入口の前端付近に流れる汚物を含む洗浄水は、その後方側の排水トラップ部に向かって流れる。
この際に、壺部の底壁の底面における第1接線の第1接線延長部が、側面断面視において、排水トラップ部の入口の後端に対して同一の前後方向位置では、排水トラップ部の入口の後端の高さ位置よりも下方の高さ位置を通過するように設定されているため、排水トラップ部の入口の後端において停滞することなくスムーズに通過し、排水トラップ部内にスムーズに流入することができる。
よって、ボウル部内の汚物を排水トラップ部にスムーズに導くことができるため、水洗大便器における汚物排出性能(排出力)を向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記汚物受け面は、側面断面視において、この汚物受け面上に沿って前後方向に延びる第2接線と、この第2接線を上記汚物受け面の下縁から後方側に延長させた第2接線延長部と、を含み、上記第1接線延長部及び上記第2接線延長部は、側面断面視において、互いにほぼ平行になるように設定されている。
このように構成された本発明においては、吐水部からボウル部内に吐水された洗浄水は、汚物受け面から壺部内に流入する。
この際、壺部の底壁における底面の第1接線延長部と汚物受け面における第2接線延長部とが、側面断面視において、互いにほぼ平行になるように設定されているため、特に、壺部の前方かつ上方の汚物受け面から壺部内の前方領域に流入した洗浄水は、壺部内の前方領域から底壁の底面に沿って排水トラップ部の入口の前端付近を流れる汚物を含む洗浄水に合流することができる。
これにより、壺部内の前方領域から底壁の底面に沿って後方側の排水トラップ部の入口に向かって流れる洗浄水は、水勢を増した状態で排水トラップ部の入口から排水トラップ部内に直接的に流入することができる。
これらの結果、ボウル部内の汚物を含む洗浄水を汚物受け面から壺部を経て排水トラップ部にスムーズに導くことができるため、水洗大便器における洗浄性能(洗浄力)と汚物排出性能(排出力)の双方を向上させることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、上記排水トラップ部は、側面断面視において、その入口の後端上方に設けられて前方に向かって突出する突出部と、この突出部から後方且つ下方の最下端部まで延びた後、この最下端部から後方且つ上方に延びるトラップ管路と、を備えており、上記排水トラップ部の上記突出部から上記最下端部までの上記トラップ管路内では、その側面断面視における上面形状がほぼ平面形状に形成されている。
このように形成された本発明においては、排水トラップ部における入口の後端上方に設けられた突出部からその後方且つ下方の最下端部までトラップ管路内の上面形状がほぼ平面形状に形成されているため、壺部内の前方領域から底壁の底面に沿って後方側に流れた洗浄水は、排水トラップ部の入口からトラップ管路内に流入した際、排水トラップ部の入口の後端上方の突出部からトラップ管路の最下端部までのトラップ管路内に沿って下流側にスムーズに導かれる。
このとき、突出部から後方且つ下方の最下端部までトラップ管路内を流れる洗浄水は、トラップ管路の側面断面視においてほぼ平面形状の上面に沿ってスムーズに流れることにより、洗浄水が突出部から後方且つ下方の最下端部までトラップ管路内の上面に衝突することによる圧力損失を抑制することができる。
これらの結果、ボウル部内の汚物を排水トラップ部からスムーズに排出することができるため、水洗大便器における汚物排出性能(排出力)を向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、上記ボウル部は、さらに、上記壺部の側壁の上縁と上記汚物受け面の下縁とを曲率を有する面で接合する接合部を備えており、この接合部の側面断面視における上下方向の幅は、後方側から前方側に向かうにつれて小さくなるように設定されている。
このように形成された本発明においては、壺部の側壁の上縁と汚物受け面の下縁とを曲率を有する面で接合する接合部の側面断面視における上下方向の幅が、後方側から前方側に向かうにつれて小さくなるように設定されているため、壺部と汚物受け面とを後方側から前方側に向かうにつれて互いに上下方向に近接させることができる。
したがって、特に、汚物受け面上の前方領域における汚物について、吐水部から汚物受け面上に吐水された洗浄水が壺部内の前方領域に効率よく搬送することができるため、水洗大便器における洗浄性能(洗浄力)と汚物排出性能(排出力)の双方を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水洗大便器によれば、便器本体の壺部内における汚物の滞留を抑制し、汚物排出性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による水洗大便器の概略平面図である。
【
図2】
図1のII-II線に沿った側面断面図である。
【
図3A】
図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の側面断面図において、便器本体の壺部の部分を拡大した拡大側面断面図である。
【
図3B】
図3Aに示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体の壺部の前方部分を拡大した拡大側面断面図である。
【
図4A】
図2のIVA-IVA線に沿った断面図である。
【
図4B】
図2のIVB-IVB線に沿った断面図である。
【
図4C】
図2のIVC-IVC線に沿った断面図である。
【
図5A】
図2のVA-VA線に沿った断面図である。
【
図5B】
図5Aに示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体において、ボウル部の壺部の部分を拡大した断面図である。
【
図6A】
図2のVIA-VIA線に沿った断面図である。
【
図6B】
図6Aに示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体において、ボウル部の壺部の部分を拡大した断面図である。
【
図7A】
図2のVIIA-VIIA線に沿った断面図である。
【
図7B】
図7Aに示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体において、ボウル部の壺部の部分を拡大した断面図である。
【
図8A】
図2のVIIIA-VIIIA線に沿った断面図である。
【
図8B】
図8Aに示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体において、ボウル部の壺部の部分を拡大した断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部内における第2リム吐水口から吐水された洗浄水がボウル部の後方側から前方側に旋回した後、前方側から壺部内に流入した状態の洗浄水の流れを概略的に説明した概略平面図である。
【
図10】本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部内における第2リム吐水口から吐水された洗浄水がボウル部の後方側から前方側に旋回した後、前方側から壺部内に流入した状態の洗浄水の流れを概略的に説明した概略側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図10を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器について説明する。
まず、
図1は、本発明の一実施形態による水洗大便器の概略平面図である。また、
図2は、
図1のII-II線に沿った側面断面図である。
図1及び
図2に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2を備えている。
この便器本体2は、上流側から下流側に向かって、導水路4と、ボウル形状のボウル部6と、排水トラップ部8とを備えている。
これにより、本発明の一実施形態による水洗大便器1については、サイホン作用を利用してボウル部6内の汚物を吸い込んで排水トラップ部8から一気に外部に排出する、いわゆる、「サイホン式の水洗大便器」となっている。
なお、本発明の一実施形態による水洗大便器1については、サイホン式の水洗大便器の形態に限られず、ボウル部内の水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる、「洗い落し式の水洗大便器」の形態についても適用可能である。
【0014】
また、
図1及び
図2に示す本実施形態の水洗大便器1では、その便器本体2の上面において、便座(図示せず)及び便蓋(図示せず)等が設けられているが、従来の水洗大便器の構造と同様であるため、具体的な説明については省略する。
さらに、便器本体2の上面における便座(図示せず)及び便蓋(図示せず)の後方側には、使用者の局部を洗浄する衛生洗浄部(図示せず)や便器本体2への給水機能に関与する給水系機能部等の機能部(図示せず)等が設けられていてもよいが、これらについても、従来の水洗大便器の構造と同様であるため、具体的な説明については省略する。
【0015】
つぎに、
図1に示すように、本発明の一実施形態による水洗大便器1は、便器洗浄に使用される洗浄水を貯水して便器本体2へ給水する洗浄水源である重力給水式の貯水タンク10を備えている。
ここで、本実施形態では、便器本体2へ洗浄水を供給する洗浄水源としては、上述した重力給水式の貯水タンク10のようなタンク式の形態に限定されず、他の形態でも適用可能である。すなわち、便器本体2へ洗浄水を供給する洗浄水源として、水道水の給水圧を直接利用した水道直圧式の形態やフラッシュバルブ式の形態であってもよいし、或いは、ポンプの補圧を利用して洗浄水を供給する形態であってもよい。
【0016】
つぎに、
図1に示す本発明の一実施形態による水洗大便器1においては、便器本体2のボウル部6の平面視において、このボウル部6の左右中央に設けられた壺部12に対し、前後方向に二等分するように水平左右方向に延びる中心軸線を符号「X」で示す。
また、
図1に示す便器本体2のボウル部6の平面視において、このボウル部6を左右方向に二等分するように水平前後方向に延びる中心軸線を符号「Y」で示している。
さらに、
図1に示す便器本体2のボウル部6の平面視において、各中心軸線X,Yの互いの交点を平面視のボウル部6の中心Oとし、この中心Oを通る鉛直方向に延びる中心軸線を
図1及び
図2に符号「Z」で示している。
また、
図1に示すように、水洗大便器1の前後左右の方向については、「前」、「後」、「左」、「右」でそれぞれ示している。
【0017】
さらに、
図1及び
図2に示すように、本実施形態の水洗大便器1においては、ボウル部6内の領域について、中心軸線Xよりも前方側の領域を「ボウル部6の前方領域F」と定義する。また、このボウル部6の前方領域Fにおいて、ボウル部6の水平前後方向の中心軸線Yに対して左側領域L、右側領域Rのそれぞれを「ボウル部6の左前方領域LF」、「ボウル部6の右前方領域RF」と定義する。
同様に、ボウル部6内の領域について、中心軸線Xよりも後方側の領域を「ボウル部6の後方領域B」と定義する。また、このボウル部6の後方領域Bにおいて、ボウル部6の水平前後方向の中心軸線Yに対して左側領域L、右側領域Rのそれぞれを「ボウル部6の左後方領域LB」、「ボウル部6の右後方領域RB」と定義する。
【0018】
つぎに、
図1に示すように、便器本体2の上流側に位置する導水路4は、ボウル部6の後方側に形成され、貯水タンク10から供給された洗浄水をボウル部6に導くようになっている。
また、
図1及び
図2に示すように、便器本体2の導水路4の下流側に位置するボウル部6は、下方から上方に向かって、詳細は後述する壺部12、汚物受け面14、棚部16、及び、リム部18を備えている。
さらに、ボウル部6の左後方領域LBのリム部18の前方側には、第1リム吐水口20が設けられており、ボウル部6の右後方領域RBのリム部18の後方側には、第2リム吐水口22が設けられている。
【0019】
つぎに、
図1及び
図2に示すように、導水路4は、共通導水路24と、第1リム導水路26と、第2リム導水路28とを備えている。
まず、共通導水路24は、貯水タンク10に接続される後方の入口4aから前方のボウル部6の背面側近傍まで延びるようにボウル部6の後方側の便器本体2の内部に形成されている。
また、第1リム導水路26は、ボウル部6の背面側近傍で共通導水路24からボウル部6の左側方に分岐した後、ボウル部6の外周面を迂回しながら前方側の第1リム吐水口20まで延びるようにボウル部6の左後方領域LBのリム部18の内部に形成されている。
これにより、共通導水路24から第1リム導水路26に供給された洗浄水は、第1リム吐水口20からその前方側の棚部16に向けて第1リム吐水として前方へ吐水された後、ボウル部6内の左前方領域LFから右前方領域RFを経て右後方領域RBへと旋回する旋回流を形成するようになっている。
【0020】
さらに、第2リム導水路28は、ボウル部6の背面側近傍で共通導水路24からボウル部6の右側方に分岐した後、便器本体2の右側方部付近で左側方の第2リム吐水口22に向けて屈曲(Uターン)し、第2リム吐水口22まで延びるようにボウル部6の右後方領域RBのリム部18の後方側の内部に形成されている。
これにより、共通導水路24から第2リム導水路28に供給された洗浄水は、第2リム吐水口22からその後方側の棚部16に向けて第2リム吐水として後方へ吐水された後、ボウル部6内の右後方領域RBから左後方領域LBを経て左前方領域LF領域へと旋回した後、この左前方領域LF領域から壺部12内の前方領域に流入するようになっている。
また、第2リム吐水口22から吐水された第2リム吐水の一部は、ボウル部6の壺部12よりも後方領域の汚物受け面14から壺部12内の後方領域に流入するようにもなっている。
なお、本実施形態では、ボウル部6の棚部16が汚物受け面14の外縁とリム部18の下端との間に設けられている形態について説明するが、必ずしも棚部16が設けられる必要はなく、この棚部16を省略し、第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれから吐水される第1リム吐水及び第2リム吐水が、棚部16を経由せずに汚物受け面14の上縁部に直接的に吐水されても良い。
【0021】
つぎに、
図1~
図8Bを参照して、ボウル部6の壺部12及びその周辺部分の詳細について説明する。
まず、
図3Aは、
図2に示す本発明の一実施形態による水洗大便器の側面断面図において、便器本体の壺部の部分を拡大した拡大側面断面図である。また、
図3Bは、
図3Aに示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体の壺部の前方部分を拡大した拡大側面断面図である。
つぎに、
図4A~
図4Cは、
図2のIVA-IVA線、
図2のIVB-IVB線、及び、
図2のIVC-IVC線のそれぞれに沿った断面図である。
また、
図5Aは、
図2のVA-VA線に沿った断面図であり、
図5Bは、
図5Aに示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体において、ボウル部の壺部の部分を拡大した断面図である。
さらに、
図6Aは、
図2のVIA-VIA線に沿った断面図であり、
図6Bは、
図6Aに示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体において、ボウル部の壺部の部分を拡大した断面図である。
また、
図7Aは、
図2のVIIA-VIIA線に沿った断面図であり、
図7Bは、
図7Aに示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体において、ボウル部の壺部の部分を拡大した断面図である。
さらに、
図8Aは、
図2のVIIIA-VIIIA線に沿った断面図であり、
図8Bは、
図8Aに示す本発明の一実施形態による水洗大便器の便器本体において、ボウル部の壺部の部分を拡大した断面図である。
【0022】
まず、
図2及び
図3Aに示すように、ボウル部6の壺部12は、汚物受け面14の下方に設けられており、貯留した溜水により溜水部W0を形成している。
ここで、
図2及び
図3Aでは、便器洗浄が行われる前の待機状態(封水状態)のボウル部6の壺部12の溜水部W0の溜水面の水位(封水水位)を符号「WL」で示している。
つぎに、
図3A~
図8Bに示すように、壺部12は、排水トラップ部8の入口30の上方且つ前方に設けられて壺部12の底面32aを形成する底壁32を備えている。
また、壺部12は、排水トラップ部8の入口30の後方側に設けられた後壁34(左側後壁34a、右側後壁34b)を備えている。
さらに、壺部12は、後壁34の左右両端(左側後壁34aの左側端部及び右側後壁34bの右側端部)から前方に向かって左右外側に広がるように設けられた側壁36(後方側壁36、後方左側壁36a、後方右側壁36b)を備えている。
また、壺部12は、後方側壁36の左右前端(後方左側壁36a及び後方右側壁36bのそれぞれの前端)から前方に向かって左右内側に窄まるように設けられていると共に、互いの前端が接合される側壁38(前方側壁38、前方左側壁38a、前方右側壁38b)を備えている。
【0023】
つぎに、
図3A、
図3B、
図5B、
図6B、
図7B、及び、
図8Bに示すように、壺部12は、さらに、その底壁32の底面32aの外縁32bと側壁36,38の下縁36c,38cとを曲率を有する面(曲がり面C1)で接合する下側接合部40を備えている。
また、
図3A及び
図3Bの側面断面視、並びに、
図5B、
図6B、
図7B及び
図8Bの正面断面視において、下側接合部40の下縁40aと上縁40bとの間の区間の曲がり面C1の曲率は、下側接合部40の下縁40a(曲がり面C1の下縁40a)と底壁32の底面32aの外縁32bとを接合する下側接合点P1における底面32aを含む接平面C2の曲率よりも大きく設定されている。
同様に、
図3A及び
図3Bの側面断面視、並びに、
図5B、
図6B、
図7B及び
図8Bの正面断面視において、下側接合部40の曲がり面C1の曲率は、下側接合部40の上縁40b(曲がり面C1の上縁40b)と側壁36,38の下縁36c,38cとを接合する上側接合点P2における側壁36,38の壁面を含む接平面C3の曲率よりも大きく設定されている。
【0024】
つぎに、
図3A、
図3B、
図5B、
図6B、
図7B、及び、
図8Bに示すように、壺部12は、さらに、その側壁36,38の上縁36d,38dと汚物受け面14の下縁14aとを曲率を有する面(曲がり面C4)で接合する上側接合部42を備えている。
また、
図3A及び
図3Bの側面断面視、並びに、
図5B、
図6B、
図7B及び
図8Bの正面断面視において、上側接合部42の下縁42aと上縁42bとの間の区間の曲がり面C4の曲率は、上側接合部42の下縁42a(曲がり面C4の下縁42a)と側壁36,38の上縁36d,38dとを接合する下側接合点P3における側壁36,38の壁面を含む接平面C5の曲率よりも大きく設定されている。
同様に、
図3A及び
図3Bの側面断面視、並びに、
図5B、
図6B、
図7B及び
図8Bの正面断面視において、上側接合部42の曲がり面C4の曲率は、上側接合部42の上縁42b(曲がり面C4の上縁42b)と汚物受け面14の下縁14aとを接合する上側接合点P4における汚物受け面14の壁面を含む接平面C6の曲率よりも大きく設定されている。
【0025】
ここで、
図1~
図4Cに示す本実施形態の水洗大便器1においては、壺部12の底壁32の外縁32b及び下側接合部40の下縁40aに相当する、壺部12の底壁32と下側接合部40との境界線を符号「L1」で示している。
また、壺部12の下側接合部40の上縁40b及び側壁36,38の下縁36c,38cに相当する、壺部12の下側接合部40と側壁36,38との境界線を符号「L2」で示している。
さらに、壺部12の側壁36,38の上縁36d,38d及び上側接合部42の下縁42aに相当する、壺部12の側壁36,38と上側接合部42との境界線を符号「L3」で示している。
また、壺部12の上側接合部42の上縁42b及び汚物受け面14の下縁14aに相当する、壺部12の上側接合部42と汚物受け面14との境界線を符号「L4」で示している。
【0026】
さらに、
図3A及び
図3Bに示すように、壺部12と汚物受け面14との互いの上下方向の距離(
図3Aに示す境界線L3と境界線L4との上下方向の距離)は、上側接合部42の側面視における下縁42aから上縁42bまでの上下方向の幅H1に相当し、この上下方向の幅H1は、壺部12の後方側から前方側に向かうにつれて小さくなるように設定されている。
これにより、壺部12と汚物受け面14とを後方側から前方側に向かうにつれて互いに上下方向に近接させることができるようになっている。
【0027】
つぎに、
図6B、
図7B、及び、
図8Bに示すように、壺部12の底壁32は、正面断面視において、その左右の中心軸線Zに対して左右に亘って下方に凹むように形成された凹部44を備えている。
また、
図4A~
図4C、
図6B、
図7B、及び、
図8Bに示すように、壺部12の底壁32において、下側接合部40と左右内側の凹部44との間の領域には、下側接合部40側から凹部44に向かって底壁32の形状が遷移する遷移領域46が設けられている。
この遷移領域46は、下側接合部40側から左右内側に向かうにつれて平面状から上方に突出するように凸状に形成された後、凹部44の凹状に遷移するように形成されている。
さらに、
図4A~
図4Cに示すように、凹部44は、平面視において、その左右方向の幅が後方の排水トラップ部8の入口30側に向かうにつれて広がるように扇状に形成されている。
【0028】
つぎに、
図3A、
図6B、
図7B、及び、
図8Bに示すように、凹部44は、側面断面視において、その底面44aが前後方向に亘って下方に突出しており、かつ、後方の排水トラップ部8の入口30側に向かうにつれて下方に傾斜している。
また、
図3A、
図4A~
図4C、及び、
図5Bに示すように、凹部44の前方における下側接合部40と凹部44との間の領域には、この領域に流入した洗浄水が凹部44に流入し過ぎることを抑制するように、平面状又は上方に突出して凸状に形成されたガイド部48が設けられている。
さらに、
図6B、
図7B、及び、
図8Bに示すように、凹部44は、正面断面視又は側面断面視において、遷移領域46における凸状に形成された部分の頂点位置P5から凹部44の最低底面位置P6までの上下方向の凹み量d1が、後方の排水トラップ部8の入口30側に向かうにつれて大きくなるように設定されている。
【0029】
つぎに、
図3A及び
図4A~
図4Cに示すように、壺部12の凹部44は、その底面44aが排水トラップ部8の入口30に接続される後端44bを備えている。
また、壺部12の凹部44は、
図3Aの側面断面視において、その後端44bから底面44a上に沿って前後方向に延びる第1接線T1と、この第1接線T1を後端44bから後方側に延長させた第1接線延長部T2とを備えている。
さらに、排水トラップ部8は、
図3Aの側面断面視において、その入口30から後方且つ下方の最下端部50まで延びた後、この最下端部50から後方且つ上方に延びるトラップ管路52を形成している。
また、第1接線延長部T2は、
図3Aの側面断面視において、排水トラップ部8の入口30の後端30aに対して同一の前後方向位置では、排水トラップ部8の入口30の後端30aの高さ位置よりも下方の高さ位置を通過するように設定されている。
さらに、第1接線延長部T2は、
図3Aの側面断面視において、排水トラップ部8の入口30から最下端部50までのトラップ管路52内の上面52aよりも下方の高さ位置を通過するようにトラップ管路52内に位置している。
ここで、
図3Aに示すように、排水トラップ部8の入口30の後端30aにおける突出部54の下端から排水トラップ部8の最下端部50までのトラップ管路52内では、その側面断面視における上面52aの形状がほぼ平面形状に形成されている。
【0030】
つぎに、汚物受け面14は、
図3Aの側面断面視において、この汚物受け面14上に沿って前後方向に延びる第2接線T3と、この第2接線T3を汚物受け面14の下縁14aから後方側に延長させた第2接線延長部T4と含む。
そして、上述した第1接線延長部T2及び第2接線延長部T4は、
図3Aの側面断面視において、互いにほぼ平行になるように設定されている。
【0031】
つぎに、
図4A~
図4Cに示すように、壺部12の後方側壁36は、平面視における左右の側壁36a,36bの壁面が上方から下方に向かうにつれて壺部12の内側に位置するように形成されている。
また、
図3A及び
図4A~
図4Cに示すように、壺部12の後壁34a,34bの下方領域における排水トラップ部8の入口30の後端30a上方には、前方に向かって突出する突出部54が設けられている。
【0032】
つぎに、
図3A及び
図4A~
図4Cに示すように、壺部12の底壁32は、壺部12の前後方向の中心Oの位置を含む中央底面56と、この中央底面56の左右の周縁56aに形成された周底面58と、を備えている。
まず、中央底面56は、その中央領域が周囲よりも下方に凹む凹部44を形成しており、その後方の排水トラップ部8の入口30側に向かうにつれて下方に位置している。
また、中央底面56の左右方向の幅は、
図4A~
図4Cの平面視において、中央底面56の前端56bから後端56c(後方の排水トラップ部8の入口30の前端30bに相当)に向かうにつれて広がるように扇状に形成されている。
つぎに、周底面58は、中央底面56の左右の周縁56aと下側接合部40の下縁40a(
図4A~
図4Cの平面視においては下側接合部40の内縁に相当)とを接合しており、実質的には、壺部12の底壁32の遷移領域46を形成する面となっている。
また、
図3Aに示すように、周底面58は、中央底面56よりも高い位置に形成されており、その後端58aが突出部54に接合されている。
これにより、周底面58は、
図3Aの側面断面視において、突出部54に接合される後方側から前方側に向かうにつれて上方に位置している。
【0033】
つぎに、
図4A~
図4Cに示すように、突出部54は、壺部12の後壁34の下端に設けられていると共に、排水トラップ部8の入口30の後端30aにおける左右幅方向の全域に設けられている。
また、
図4A~
図4Cに示すように、突出部54は、その平面視における前端54aが後方に向かって凸湾曲状に形成されている。
【0034】
つぎに、
図3Aに示すように、排水トラップ部8の入口30は、壺部12の後壁34の下端に接合された後端30aと、壺部12の底壁32の中央底面56における左右中央の後端56cに接合された前端30bとを備えている。
また、
図3Aに示すように、排水トラップ部8の入口30の前端30bは、排水トラップ部8の入口30の後端30aよりも低い位置に設けられている。
【0035】
つぎに、
図1~
図10を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器1における便器洗浄時のボウル部6内の洗浄水の流れについて説明する。
図9は、本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部内における第2リム吐水口から吐水された洗浄水がボウル部の後方側から前方側に旋回した後、前方側から壺部内に流入した状態の洗浄水の流れを概略的に説明した概略平面図である。
また、
図10は、本発明の一実施形態による水洗大便器のボウル部内における第2リム吐水口から吐水された洗浄水がボウル部の後方側から前方側に旋回した後、前方側から壺部内に流入した状態の洗浄水の流れを概略的に説明した概略側面断面図である。
まず、
図9に示すように、本実施形態の水洗大便器1において、便器洗浄が開始されると、貯水タンク10内の洗浄水Wが便器本体2の導水路4の入口4aから共通導水路24に供給される。この共通導水路24内の洗浄水Wは、第1洗浄水W1及び第2洗浄水W2のそれぞれとして第1リム導水路26及び第2リム導水路28のそれぞれに分岐する。
【0036】
つぎに、
図9及び
図10に示すように、第1リム導水路26の第1洗浄水W1は、下流側の第1リム吐水口20から前方に第1リム吐水W1として吐水される。この第1リム吐水W1は、ボウル部6内の左前方領域LFから右前方領域RFを経て右後方領域RBへと旋回する旋回流f1を形成する。
一方、
図9及び
図10に示すように、第2リム導水路28の第2洗浄水W2は、第2リム吐水口22から第2リム吐水W2として吐水される。この第2リム吐水W2は、ボウル部6内の右後方領域RBから左後方領域LBを経て左前方領域LF領域へと旋回した後、この左前方領域LF領域から壺部12内の前方領域に流入する流れf2を形成する。
また、第2リム吐水口22から吐水された第2リム吐水W2の一部は、ボウル部6の壺部12よりも後方領域の汚物受け面14から壺部12内の後方領域に流入する。
【0037】
つぎに、
図9及び
図10に示すように、壺部12内に流入した洗浄水W3においては、壺部12の底壁32の凹部44側(左右中央側)に集められることにより、壺部12の底壁32から排水トラップ部8の入口30に向かって収束した洗浄水の流れf3を形成し、汚物を排水トラップ部8内に強力に押し込む流れを形成する。
また、壺部12の下方に誘導された洗浄水W3の一部は、さらに、壺部12の後壁34a,34bの下方領域における排水トラップ部8の入口30の後端30aの上方に設けられた突出部54に対して上方から衝突する。
これにより、衝突後の洗浄水W3は、上方や前方等に向かって跳ね返ることにより、洗浄水W3の流れf3が全体的に上方に向かう流れf4に変更される。
そして、洗浄水の流れf4が縦方向に旋回する流れ(以下「縦旋回流f4」)を形成し、壺部12内の汚物が、壺部12に流入した洗浄水と溜水部W0の溜水と共に撹拌された後、排水トラップ部8の入口30から排水トラップ部8内に排出される。
【0038】
一方、壺部12の前方の汚物受け面14から壺部12内の前方側壁38(特に、
図9及び
図10の前方右側壁38b参照)に沿って後方側壁36(特に、
図9及び
図10の後方右側壁36b参照)に流れ込んだ洗浄水W3は、後方側壁36bの壁面に衝突した後、この後方側壁36bの壁面に沿って壺部12の下方かつ後方に向かって誘導され、壺部12の後壁34a,34bの下端及び排水トラップ部8の入口30の後端30a付近に流れ込む。
そして、壺部12の後壁34(34a,34b)の下端及び排水トラップ部8の入口30の後端30a付近に流れ込んだ洗浄水W3のうち、後方に向かうことなく下方に向かう流れのベクトルを有する洗浄水W3は、その流れf3のベクトルを維持した状態で排水トラップ部8の入口30から排水トラップ部8内に流れ込む。
【0039】
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、吐水部である第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれからボウル部6内に吐水された洗浄水W1,W2のうちの一部は、汚物受け面14上を壺部12の前方側まで旋回した後、壺部12の前方側から壺部12内に流れ込む(
図9及び
図10の洗浄水W1,W3の流れf1、参照)。
そして、壺部12の上方かつ前方の汚物受け面14から壺部12内の前方領域に流れ込んだ洗浄水W3は、壺部12内の前方領域から壺部12の底壁32の底面32a(凹部44の底面44a)に沿って、その左右中央の後端44bに接合された排水トラップ部8の入口30の前端30b側に向かって誘導される。
このとき、
図3Aに示すように、排水トラップ部8の入口30の前端30bが排水トラップ部8の入口30の後端30aよりも低い位置に設けられているため、排水トラップ部8の入口30において前側が低く、後側が高い高低差を有する構造にすることができる。
したがって、壺部12内の前方領域から排水トラップ部8の入口30の前端30b付近に流れる汚物を含む洗浄水W3は、その後方側の排水トラップ部8に向かって流れる際に、排水トラップ部8の入口30の後端30aにおいて停滞することなくスムーズに通過することができ、排水トラップ部8内にスムーズに流入することができる。
よって、ボウル部6内の汚物を排水トラップ部8にスムーズに導くことができるため、水洗大便器1における汚物排出性能(排出力)を向上させることができる。
【0040】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、壺部12内の前方領域から底壁32の底面32a(凹部44の底面44a)に沿って排水トラップ部8の入口30の前端30b付近に流れる汚物を含む洗浄水W3は、その後方側の排水トラップ部8に向かって流れる。
この際に、壺部12の底壁32の底面32a(凹部44の底面44a)における第1接線T1の第1接線延長部T2が、
図3Aの側面断面視において、排水トラップ部8の入口30の後端30aに対して同一の前後方向位置では、排水トラップ部8の入口30の後端30aの高さ位置よりも下方の高さ位置を通過するように設定されている。
これにより、排水トラップ部8の入口30の後端30aにおいて洗浄水W3が停滞することなくスムーズに通過し、排水トラップ部8内にスムーズに流入することができる。
したがって、ボウル部6内の汚物を排水トラップ部8にスムーズに導くことができるため、水洗大便器1における汚物排出性能(排出力)を向上させることができる。
【0041】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、吐水部である第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれからボウル部6内に吐水された洗浄水W1,W2のうちの一部は、汚物受け面14上を壺部12の前方側まで旋回した後、壺部12の前方側の汚物受け面14から壺部12内に流れ込む(
図9及び
図10の洗浄水W1,W2の流れf1,f2参照)。
この際、壺部12の底壁32の底面32a(凹部44の底面44a)における第1接線延長部T2と汚物受け面14における第2接線延長部T4とが、
図3Aの側面断面視において、互いにほぼ平行になるように設定されている。
これにより、特に、壺部12の前方かつ上方の汚物受け面14から壺部12内の前方領域に流入した洗浄水W1は、壺部12内の前方領域から底壁32の底面32a(凹部44の底面44a)に沿って排水トラップ部8の入口30の前端30b付近を流れる汚物を含む洗浄水W3に合流することができる。
これにより、壺部12内の前方領域から底壁32の底面32a(凹部44の底面44a)に沿って後方側の排水トラップ部8の入口30に向かって流れる洗浄水W3は、水勢を増した流れf3となった状態で排水トラップ部8の入口30からトラップ管路52内に直接的に流入することができる。
これらの結果、ボウル部6内の汚物を含む洗浄水を汚物受け面14から壺部12を経て排水トラップ部8にスムーズに導くことができるため、水洗大便器1における洗浄性能(洗浄力)と汚物排出性能(排出力)の双方を向上させることができる。
【0042】
また、本実施形態による水洗大便器1によれば、排水トラップ部8における入口30の後端30a上方に設けられた突出部54から、その後方且つ下方の最下端部50までトラップ管路52内の上面52aの形状がほぼ平面形状に形成されている。
これにより、壺部12内の前方領域から底壁32の底面32a(凹部44の底面44a)に沿って後方側に流れた洗浄水W3は、排水トラップ部8の入口30からトラップ管路52内に流入した際、排水トラップ部8の入口30の後端30a上方の突出部54からトラップ管路52の最下端部50までのトラップ管路52内に沿って下流側にスムーズに導かれる。
このとき、突出部54から後方且つ下方の最下端部50までトラップ管路52内を流れる洗浄水W3は、
図3A及び
図10に示すトラップ管路52の側面断面視において、ほぼ平面形状の上面52aに沿ってスムーズに流れることにより、洗浄水W3が突出部54から後方且つ下方の最下端部50までトラップ管路52内の上面52aに衝突することによる圧力損失を抑制することができる。
これらの結果、ボウル部6内の汚物を排水トラップ部8からスムーズに排出することができるため、水洗大便器1における汚物排出性能(排出力)を向上させることができる。
【0043】
さらに、本実施形態による水洗大便器1によれば、
図3Aに示すように、壺部12の側壁36,38の上縁36d,38dと汚物受け面14の下縁14aとを曲率を有する面C1で接合する接合部42の側面断面視における上下方向の幅H1が、後方側から前方側に向かうにつれて小さくなるように設定されている。
これにより、壺部12と汚物受け面14とを後方側から前方側に向かうにつれて互いに上下方向に近接させることができる。
したがって、特に、汚物受け面14上の前方領域における汚物について、吐水部である第1リム吐水口20及び第2リム吐水口22のそれぞれから汚物受け面14上に吐水された洗浄水W1,W2の一部が、壺部12内の前方領域に効率よく搬送することができるため、水洗大便器1における洗浄性能(洗浄力)と汚物排出性能(排出力)の双方を向上させることができる。
【符号の説明】
【0044】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 導水路
4a 導水路の入口
6 ボウル部
8 排水トラップ部
10 貯水タンク(洗浄水源)
12 壺部
14 汚物受け面
14a 汚物受け面の下縁
16 棚部
18 リム部
20 第1リム吐水口(吐水部)
22 第2リム吐水口(吐水部)
24 共通導水路
26 第1リム導水路
28 第2リム導水路
30 排水トラップ部の入口
30a 排水トラップ部の入口の後端
30b 排水トラップ部の入口の前端
32 壺部の底壁
32a 壺部の底壁の底面
32b 壺部の底壁の外縁
34 壺部の後壁
34a 壺部の左側後壁
34b 壺部の右側後壁
36 壺部の後方側壁(壺部の側壁)
36a 壺部の後方左側壁(壺部の側壁)
36b 壺部の後方右側壁(壺部の側壁)
36c 壺部の後方側壁の下縁(壺部の側壁の下縁)
36d 壺部の後方側壁の上縁
38 壺部の前方側壁(壺部の側壁)
38a 壺部の前方左側壁(壺部の側壁)
38b 壺部の前方右側壁(壺部の側壁)
38c 壺部の前方側壁の下縁(壺部の側壁の下縁)
38d 壺部の後方側壁の上縁
40 下側接合部(壺部の接合部)
40a 下側接合部の下縁
40b 下側接合部の上縁
42 上側接合部
42a 上側接合部の下縁、内縁
42b 上側接合部の上縁
44 壺部の底壁の凹部
44a 凹部の底面
44b 凹部の後端
46 壺部の底壁の遷移領域
48 ガイド部
50 排水トラップ部の最下端部
52 トラップ管路
52a 排水トラップ部の入口から最下端部までのトラップ管路の上面
54 突出部
54a 突出部における前端
56 壺部の底壁の中央底面
56a 中央底面の周縁
56b 中央底面の前端
56c 中央底面の後端
58 壺部の底壁の周底面
58a 周底面の後端
B ボウル部の後方領域
C1 下側接合部の曲がり面(接合部の曲率を有する面)
C2 接平面
C3 接平面
C4 上側接合部の曲がり面(接合部の曲率を有する面)
C5 接平面
C6 接平面
d1 遷移領域における凸状に形成された部分の頂点位置から凹部の最低底面位置までの上下方向の凹み量
F ボウル部の前方領域
f1 洗浄水の流れ
f2 洗浄水の流れ
f3 洗浄水の流れ
f4 洗浄水の流れ(縦旋回流)
H1 上側接合部の側面視における上下方向の幅
L ボウル部の左側領域
LB ボウル部の左後方領域
LF ボウル部の左前方領域
L1 壺部の底壁と下側接合部との境界線
L2 壺部の下側接合部と側壁との境界線
L3 壺部の側壁と上側接合部との境界線
L4 壺部の上側接合部と汚物受け面との境界線
O ボウル部の中心、壺部の前後方向の中心
P1 下側接合部の下縁と底壁の底面の外縁とを接合する下側接合点
P2 下側接合部の上縁と側壁の下縁とを接合する上側接合点
P3 上側接合部の下縁と側壁の上縁とを接合する下側接合点
P4 上側接合部の上縁と汚物受け面の下縁とを接合する上側接合点
P5 壺部の底壁の遷移領域における凸状に形成された部分の頂点位置
P6 壺部の底壁の凹部の最低底面位置
R ボウル部の右側領域
RB ボウル部の右後方領域
RF ボウル部の右前方領域
T 壺部の先端部(壺部の前端)
T1 壺部の凹部の後端から底面上に沿って前後方向に延びる第1接線
T2 第1接線延長部
T3 壺部の凹部の後端から底面上に沿って前後方向に延びる第2接線
T4 第2接線延長部
W 洗浄水
W0 溜水部
W1 第1洗浄水、第1リム吐水
W2 第2洗浄水、第2リム吐水
W3 壺部内の洗浄水
WL 封水水位
X ボウル部の水平左右方向の中心軸線
Y ボウル部の水平前後方向の中心軸線
Z ボウル部の中心を通る鉛直方向の中心軸線