(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050891
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】深部体温推定装置および深部体温推定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20230404BHJP
A61B 5/26 20210101ALI20230404BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20230404BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20230404BHJP
A61H 33/00 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
A61B5/01 250
A61B5/26 100
A61B5/352
A61B5/33 200
A61H33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161242
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】橋本 衛
【テーマコード(参考)】
4C094
4C117
4C127
【Fターム(参考)】
4C094AA01
4C094BC30
4C094CC17
4C094FF17
4C094GG12
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC05
4C117XD21
4C117XD31
4C117XE13
4C117XE17
4C117XE23
4C127AA02
4C127GG02
(57)【要約】
【課題】入浴時の深部体温の推定精度を向上することができる技術を提供する。
【解決手段】深部体温推定装置100は、第1温度算出部31、第2温度算出部32および判定部33を備える。第1温度算出部31は、全身浴における熱量を計算する身体モデルに基づき深部体温を算出する。第2温度算出部32は、心拍数に基づいて深部体温を算出する。判定部33は、第1温度算出部31および第2温度算出部32によって算出した深部体温のうち低い方を深部体温の推定値と判定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全身浴における熱量を計算する身体モデルに基づき深部体温を算出する第1温度算出部と、
心拍数に基づいて深部体温を算出する第2温度算出部と、
前記第1温度算出部および前記第2温度算出部によって算出した深部体温のうち低い方を深部体温の推定値と判定する判定部と、
を備える深部体温推定装置。
【請求項2】
前記第2温度算出部は、心拍数を変数として含む関数によって皮膚血流量を算出しており、前記関数における全血流量に対する皮膚血流量の関係係数を変化させる請求項1に記載の深部体温推定装置。
【請求項3】
前記第2温度算出部は、出浴時における全血流量に対する皮膚血流量の関係係数を調整する請求項2に記載の深部体温推定装置。
【請求項4】
計時部を更に備え、
前記計時部により計測した時間が、出浴後に所定時間を経過した場合に前記第1温度算出部および前記第2温度算出部での算出を初期化する請求項1から3のいずれか1項に記載の深部体温推定装置。
【請求項5】
前記判定部により推定した深部体温が所定値以上となったことを外部へ報知する報知部を更に備える請求項1から4のいずれか1項に記載の深部体温推定装置。
【請求項6】
心拍数に基づいて算出した深部体温と、全身浴における熱量を計算する身体モデルに基づき算出した深部体温のうち低い方を深部体温の推定値と判定することをコンピュータに実行させるための深部体温推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、深部体温推定装置および深部体温推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、入浴中のユーザの体温を計測し、入浴時間などを管理することによって、ユーザが浴室での入浴をより健康的に行えるようにするための工夫がなされている。
【0003】
例えば特許文献1には、ユーザの深部体温を推定して入浴法を提示する入浴ナビゲーションシステムが開示されている。入浴ナビゲーションシステムは、入浴状態を検出する検出手段と、この検出手段によって検出した入浴状態のデータに基づいて、入浴者の現在の深部体温である核心温の変化量または核心温を推定する。入浴ナビゲーションシステムは、推定した核心温変化量または核心温に基づいて、快適な入浴法を入浴者に提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、身体モデルによる熱量計算による深部体温、および心拍数に基づく深部体温の推定において、例えば入浴中に身体を動かすなどユーザの入浴状態に応じて推定誤差が生じることから、深部体温の推定精度を改善するうえで、特許文献1の開示技術に改良の余地があるとの認識を得た。
【0006】
本開示の目的の1つは、入浴時の深部体温の推定精度を向上することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の深部体温推定装置は、全身浴における熱量を計算する身体モデルに基づき深部体温を算出する第1温度算出部と、心拍数に基づいて深部体温を算出する第2温度算出部と、前記第1温度算出部および前記第2温度算出部によって算出した深部体温のうち低い方を深部体温の推定値と判定する判定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る深部体温推定装置の全体構成を表す模式図である。
【
図2】深部体温推定装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】全身浴における熱量計算の身体モデルを説明するための模式図である。
【
図6】全血流量に対する皮膚血流量の関係係数を表すグラフである。
【
図7】第2温度算出部により算出した深部体温の一例を表すグラフである。
【
図8】推定された深部体温の一例を表すグラフである。
【
図9】深部体温の推定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】出浴時に調整した全血流量に対する皮膚血流量の関係係数を表すグラフである。
【
図11】関係係数を調整した場合に推定された深部体温の一例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素の一部を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書で言及する構造及び形状には、言及している形状に厳密に一致する構造及び形状のみでなく、寸法誤差及び製造誤差等の誤差の分だけずれた構造及び形状も含まれる。本明細書での「接続」、「固定」、「取り付け」、「支持」とは、特に明示がない限り、言及している条件を二者が直接的に満たす場合の他に、他の部材を介して満たす場合も含む。
【0010】
(実施形態)
図1を参照する。深部体温推定装置100は、例えば浴槽8で入浴するユーザによって使用される。深部体温推定装置100は、浴槽8内に配置された湯温センサ11および心電センサ12からの計測データに基づいて入浴中のユーザの深部体温を推定する。湯温センサ11は、浴槽8内に溜められた湯の温度を計測する。深部体温推定装置100は、湯温センサ11での計測データを用い、全身浴における熱量を計算する身体モデルに基づき深部体温を算出する。
【0011】
心電センサ12は、浴槽8内で入浴するユーザの心電を計測し、ユーザの心拍数を出力する。心電センサ12は、例えば浴槽8内に複数の電極を配置して心電を検出する方式等を用いることができ、ユーザが入浴中かどうかを検出するためのセンサも兼ねることができる。深部体温推定装置100は、心電センサ12での計測データに基づいて深部体温を算出する。
【0012】
図2を参照する。深部体温推定装置100は、インタフェース部(以下、I/F部と表記する。)21、報知部22、計時部23、および制御部30を備える。深部体温推定装置100における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現される。ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0013】
I/F部21は、接続される湯温センサ11および心電センサ12からの信号入力を受け取り、制御部30へ入力する。計時部23は、制御部30からの指示に基づいて時間を計測する。
【0014】
報知部22は、表示部22aおよび音声出力部22bを有する。表示部22aは、例えば液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)ディスプレイ等で構成されている。表示部22aは、ユーザの心拍数、湯温および深部体温などの情報を表示する。表示部22aは、深部体温推定装置100により推定したユーザの深部体温が所定値以上である場合に、外部へ深部体温が上昇し過ぎている旨の警告を表示するようにしてもよい。
【0015】
音声出力部22bは、音声信号を生成してスピーカ等の出力機器から音声出力する。音声出力部22bは、ユーザの心拍数、湯温および深部体温などの情報を音声によって外部へ出力する。音声出力部22bは、表示部22aと同様に、ユーザの深部体温が所定値以上である場合に、外部へ深部体温が上昇し過ぎている旨の警告を音声によって出力するようにしてもよい。
【0016】
制御部30は、第1温度算出部31、第2温度算出部32、判定部33および動作処理部34を有する。第1温度算出部31は、全身浴における熱量を計算する身体モデルに基づき深部体温を算出する。
図3を参照する。身体モデルは、例えば深部層および皮膚層の2つのノードで構成されている。
図3に示すように、皮膚層は、全身浴において湯に浸かっている部分と空気に接している部分とがあり、湯との間での熱伝達、および空気との間での熱伝達を考慮する。
【0017】
身体モデルにおいて、皮膚層と深部層との間では血流による熱伝達があり、深部層では代謝によって熱量が生じる。第1温度算出部31は、皮膚層の外部から伝達する熱量、皮膚層と深部層との間の血流による熱伝達、および深部層での代謝を計算することによって深部体温を算出する。第1温度算出部31は、後述する皮膚血流量に基づく熱の移動量を用いるようにしてもよい。
【0018】
第2温度算出部32は、心電センサ12からユーザの心拍数を取得し、心拍数と深部体温について予め決められた関係式に基づいてユーザの深部体温を算出する。心拍数と深部体温との間には相関関係があり、例えば統計的な手法により心拍数と深部体温とについて回帰直線を得ることができる。また心拍数と深部体温との関係を曲線で近似するようにしてもよい。第2温度算出部32は、例えば回帰直線に基づいて心拍数に対応する深部体温を算出する。
【0019】
第2温度算出部32は、心拍数と深部体温の関係式を季節に応じて変えてもよい。第2温度算出部32は、心拍数と深部体温の関係式を居間、浴室等の室温に応じて変えてもよい。第2温度算出部32は、心拍数の低いユーザの深部体温の推定値が低くなりすぎないように深部体温を高めに算出する関係式を用いてもよい。
【0020】
上記の身体モデルにおいて皮膚血流量をVbf、深部体温の初期値をTo、深部体温Tc、血管拡張係数をPb、定数をCとすると、次式の関係がある。
Vbf=C+Pb×(Tc-To) ・・・(1)
血管拡張係数Pbは、定数としてもよいし、湯温の関数(一次関数等による近似関数)で算出してもよい。定数Cは、使用する単位系に応じて、例えば6.3(L/m2/h)などの値を用いる。
【0021】
第2温度算出部32は、上述の式(1)における皮膚血流量Vbfを、心拍数の変化、心拍一回当たりの血流量、全血流量に対する皮膚血流量の関係係数(皮膚層への分配量を示す係数)、湯温および時間等を変数とする関数によって算出し、式(1)を利用して深部体温を算出することもできる。第2温度算出部32で計算される皮膚血流量Vbfは、例えば、身体における全血流量に対する皮膚血流量の関係係数(皮膚層への分配量を示す係数)を入浴期間中および出浴期間中で変化させることによって、よりユーザの入浴状況に合った結果が算出される。
【0022】
判定部33は、第1温度算出部31および第2温度算出部32によって算出された深部体温のうち低い方を深部体温の推定値と判定する。動作処理部34は、例えば心電データを取得したか否かを判定し、計時部23により時間を計測することによってユーザの入浴時間および出浴時間を計測する。動作処理部34は、ユーザの入浴時間および出浴時間に基づき、深部体温の推定を継続させるか、初期化するかの動作等を決定する処理を行う。
【0023】
図4および
図5を参照する。
図4では、ユーザが湯温41℃で浴槽に18分間浸かって入浴し、5分間出浴し、再び5分間入浴した場合の湯温の変化を表している。湯温は、ユーザが浴槽8の湯に浸かっている期間には徐々に低くなり、ユーザが出浴する手前で給湯器による追い炊きが行われたため徐々に高くなる。このように入浴中は湯温の変化が起きるため、深部体温の推定には湯温の変化を考慮するのが望ましい。
図5に示すように、入浴および出浴によって、ユーザの心拍数が変化する。出浴期間中は、ユーザの心拍数は概ね一定であるとしている。
【0024】
図6、
図7および
図8を参照する。
図6に示す全血流量に対する皮膚血流量の関係係数は、
図4のような湯温の変化の影響も加味して入浴開始から徐々に増加するものとしている。
図7に示すように、第1温度算出部31によって算出した深部体温は、浴槽8の湯から受ける熱量によって時間の経過とともに高くなる。
図8では、第2温度算出部32によって算出した心拍数に基づく深部体温、判定部33によって推定された深部体温、および深部体温の測定値が表されている。上述のように、判定部33は、時々刻々に第1温度算出部31および第2温度算出部32によって算出された深部体温のうち低い方を深部体温の推定値としている。第2温度算出部32は、ある時点において判定部33によって推定された深部体温に基づいて、次の時点における深部体温を算出している。
【0025】
次に
図9を参照し、深部体温推定装置100による深部体温推定の動作を説明する。深部体温推定装置100の動作処理部34は、心電センサ12から心拍数のデータを取得したか否かを判定する(S1)。動作処理部34は、ステップS1において、心拍数のデータを取得していないと判定した場合(S1:NO)、ステップS1を繰り返す。動作処理部34は、ステップS1において、ユーザの心拍数のデータを取得したと判定した場合(S1:YES)、入浴時間の計測を開始する(S2)。
【0026】
第1温度算出部31は、心電センサ12から心拍数、湯温センサ11から湯温の各データを取得する(S3)。第2温度算出部32は、例えば回帰直線などを用いて、心拍数に基づいてユーザの深部体温を算出する。判定部33は、第2温度算出部32によって算出された心拍数に基づく深部体温を初期値(To)として設定する(S4)。
【0027】
深部体温推定装置100は、引き続き心拍数および湯温のデータを取得する(S5)。第1温度算出部31は、身体モデルの熱量計算による深部体温変化の推定値Tcaを算出する(S6)。第2温度算出部32は、心拍数に基づく深部体温変化の推定値Tcbを算出する(S7)。ステップS7では、第2温度算出部32は、全血流量に対する皮膚血流量の関係係数などを用い、式(1)に基づき深部体温変化の推定値Tcbを算出している。上述の判定部33は、推定値Tcaが推定値Tcbよりも大きいか否かを判定する(S8)。
【0028】
判定部33は、ステップS8において、推定値Tcaが推定値Tcbよりも大きいと判定した場合(S8:YES)、深部体温をTo+Tcbと推定する(S9)。判定部33は、ステップS8において否と判定した場合(S8:NO)、深部体温をTo+Tcaと推定する(S10)。ステップS9およびステップS10の後、動作処理部34は、心電センサ12から心拍数のデータを取得したか否かを判定する(S11)。動作処理部34は、ステップS11において心拍数のデータを取得したと判定した場合(S11:YES)、入浴時間の計測を継続し(S12)、ステップS5に戻って処理を繰り返す。
【0029】
動作処理部34は、ステップS11において心拍数のデータを取得していないと判定した場合(S11:NO)、入浴時間の計測を停止し(S13)、出浴時間の計測を開始する(S14)。動作処理部34は、出浴時間が所定時間以上であるか否かを判定する(S15)。所定時間は例えば20分などとする。
【0030】
動作処理部34は、出浴時間が所定時間以上ではないと判定した場合(S13:NO)、ステップS11へ戻って処理を繰り返す。動作処理部34は、出浴時間が所定時間以上であると判定した場合(S13:YES)、深部体温の推定処理を終了する。ステップS6からステップS10の処理では、第1温度算出部31および第2温度算出部32によって深部体温の推定値To+TcaおよびTo+Tcbを算出して比較し、判定部33によって低い方を深部体温の推定値とする処理としてもよい。第1温度算出部31および第2温度算出部32によって深部体温を算出して低い方を深部体温であると判定することと、深部体温変化の推定値を求めて比較し低い方に基づいて深部体温を算出することは、同等である。
【0031】
動作処理部34は、深部体温の推定処理が終了した後、深部体温の推定処理を再開し、心電センサ12から心拍数のデータを取得したか否かを判定する(S1)。深部体温推定装置100は、第1温度算出部31および第2温度算出部32による深部体温の算出を初期化し、心拍数によって算出される深部体温を初期値として設定し、その後の処理を実行する。
【0032】
深部体温推定装置100は、第1温度算出部31および第2温度算出部32で算出した深部体温のうち低い方を深部体温の推定値とすることによって、ユーザの入浴状態に応じて生じる推定誤差を低減し、深部体温の推定精度を向上することができる。例えば、ユーザが手足を動かしたような場合、筋肉への血流が増え、体温上昇がなくても心拍数は上昇する。この場合、第2温度算出部32による心拍数変化に基づく深部体温の推定値よりも、第1温度算出部31による全身浴での熱量計算に基づく深部体温の推定値の方が低い値となる。深部体温推定装置100は、判定部33によって第1温度算出部31が算出した深部体温を推定値とすることで、深部体温の推定精度を向上させることができる。
【0033】
例えば半身浴によって湯からユーザの身体が出ている割合が多くなった場合、および複数回の入出浴を繰り返したような場合などにおいて、深部体温推定装置100は、深部体温の推定精度を向上させることができる。湯からユーザの身体が出ている割合が多くなった場合、および複数回の入出浴を繰り返したような場合には、体温が上がり難くなり、心拍数も上がり難くなる。第2温度算出部32によって算出する深部体温は、心拍数を反映しており、第1温度算出部31によって算出する深部体温よりも低くなるため、深部体温の推定精度が向上する。
【0034】
深部体温推定装置100の第2温度算出部32は、心拍数等を変数として含む関数によって皮膚血流量を算出している。第2温度算出部32は、
図6に示すように、皮膚血流量を算出する関数において、全血流量に対する皮膚血流量の関係係数を変化させることによって、入浴時における皮膚血流量の増加を反映することができ、深部体温の推定精度を向上することができる。
【0035】
深部体温推定装置100の動作処理部34は、計時部23によって計測した出浴時間が所定時間を経過した場合に、第1温度算出部31および第2温度算出部32での深部体温の算出を初期化する。深部体温推定装置100は、出浴後に所定時間を経過してユーザの体温が低下した場合に、再入浴時に心拍数に基づいて深部体温を推定して初期値を設定することによって、深部体温の推定を継続することができる。動作処理部34は、出浴後に所定時間を経過する前であれば第1温度算出部31および第2温度算出部32での深部体温の算出を継続する。
【0036】
深部体温推定装置100の報知部22は、判定部33により推定した深部体温が所定値以上となったことを外部へ報知するようにしてもよい。これにより、深部体温推定装置100は、例えば深部体温が上昇し過ぎていることをユーザに知らせることができる。
【0037】
(変形例)
図10および
図11を参照する。
図10および
図11では、上述の実施形態における
図4等と同様に、ユーザが湯温41℃で浴槽に18分間浸かって入浴し、5分間出浴し、再び5分間入浴した場合の各グラフを示している。
図10に示す全血流量に対する皮膚血流量の関係係数は、出浴期間中に関係係数が入浴前の状態に向かって低下していくことを想定したものとしている。入浴期間中における全血流量に対する皮膚血流量の関係係数の変化は、
図6において説明した関係係数と同様の変化を示すものとしている。
【0038】
図11に示すように、判定部33によって推定された深部体温は、出浴後の再度の5分間の入浴期間において、
図8で示した深部体温よりも低い値となっており、深部体温の測定値に近くなる。深部体温推定装置100は、出浴時における全血流量に対する皮膚血流量の関係係数を低く変化するように調整することによって、ユーザの深部体温の推定精度をより向上することができる。
【0039】
以上、実施形態及び変形例を説明した。実施形態及び変形例を抽象化した技術的思想を理解するにあたり、その技術的思想は実施形態及び変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。前述した実施形態及び変形例は、いずれも具体例を示したものにすぎず、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。実施形態では、このような設計変更(例えば心拍数はウェアラブルセンサで検出するなど)が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0040】
以上の構成要素の任意の組み合わせも、実施形態及び変形例を抽象化した技術的思想の態様として有効である。たとえば、実施形態に対して他の実施形態の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形例に対して実施形態及び他の変形例の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0041】
22…報知部、23…計時部、31…第1温度算出部、32…第1温度算出部、33…判定部、34…報知部、100…深部体温推定装置。