(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050892
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】サムターン装置
(51)【国際特許分類】
E05B 47/00 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
E05B47/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161243
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】391020322
【氏名又は名称】東海理研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明広
(72)【発明者】
【氏名】梅村 正美
(72)【発明者】
【氏名】瀬木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】坂上 晃一
(57)【要約】
【課題】モータを駆動してサムターンを回転させるサムターン装置において、簡単な構造でサムターンの手動操作性を向上させること。
【解決手段】
サムターン3とサムターン軸11とを回転カム12を介して一体的に連結し、モータ18に連結するウォームホイール14に回転カム12を回転可能に挿通する。回転カム12に設けた収容穴12fにクラッチボール16,16とクラッチばね15を収容し、ウォームホイール14に設けた係合溝141a~141dに係合するようにクラッチボール16,16をクラッチばね15によりウォームホイール14側へ付勢する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サムターンと、
サムターン軸と、
前記サムターンと前記サムターン軸とを一体的に回転するように連結する中間軸と、
モータと、
前記中間軸が回動可能に挿通される中空穴を有し、前記モータの駆動に応じて回転するサムターン連結体と、
前記中間軸と前記サムターン連結体との間に配設されるクラッチボールと、
前記クラッチボールをサムターン連結体側に付勢する付勢部材と、
前記中間軸に設けられ、前記クラッチボールと前記付勢部材を収容可能な収容凹部と、
前記サムターン連結体の前記中空穴の内周面に設けられ、前記クラッチボールと係合する係合部と、
を有すること、
を特徴とするサムターン装置。
【請求項2】
請求項1に記載するサムターン装置において、
前記付勢部材の付勢力は、前記モータが駆動して前記サムターン連結体を回転させる場合、前記クラッチボールを前記収容凹部から突出させて前記係合部に係合させる一方、前記モータが駆動せず、前記サムターン連結体を回転させない場合、前記中間軸の回転に応じて前記クラッチボールを前記収容凹部内へ後退させ、前記係合部との係合を解除させるように設定されていること、
を特徴とするサムターン装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載するサムターン装置において、
前記モータに電力を供給する電池を有する
ことを特徴とするサムターン装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1つに記載するサムターン装置において、
第1オンオフスイッチと、第2オンオフスイッチと、第3オンオフスイッチとを有し、
前記サムターン連結体は、自身の回転に応じて前記第1オンオフスイッチを操作する第1操作部を有し、
前記中間軸は、前記第2オンオフスイッチと前記第2オンオフスイッチを操作する第2操作部を有すること、
を特徴とするサムターン装置。
【請求項5】
請求項4に記載するサムターン装置において、
制御部を有し、
前記制御部は、
前記モータを駆動して施錠または解錠する場合に、前記第1オンオフスイッチと、前記第2オンオフスイッチと、前記第3オンオフスイッチの少なくとも1つが、オンオフ状態を切り替えられない場合に、前記モータを駆動時と逆方向に回転させた後、モータを駆動時と同一方向に回転させるリトライ処理を実行すること、
を特徴とするサムターン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータによりサムターンを回転させるサムターン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、近年、防犯性や利便性の観点より、モータによりサムターンを回転させるサムターン装置が住宅の扉などに使用されている。例えば特許文献1に記載するサムターン装置は、サムターンがサムターン本体部材を介してサムターン軸と一体的に連結されている。サムターン本体部材は、モータに連結されるサムターン連結体に回動可能に挿通され、カムを介してサムターン連結体に係合されている。サムターン装置は、モータでサムターンを回転させる場合、サムターン本体部材とサムターン連結体がカムを介して係合し、モータによって一体的に回転する。その後、モータが逆回転してサムターン連結体を回転直前の位置に戻し、サムターン本体部材とサムターン連結体との係合を解除する。これにより、サムターンを手動回転させる場合に、サムターン連結体に作用する力がカムを介してサムターン本体部材に作用せず、サムターンを小さい力で回転させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載のサムターン装置は、サムターンを小さい力で回転させるために、サムターン本体部材とサムターン連結体との間にカムを設け、モータを所定方向に回転させた後に逆回転させることでカムによる係合を解除する必要があり、構造が複雑であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、モータを駆動してサムターンを回転させるサムターン装置において、簡単な構造でサムターンの手動操作性を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、(1)サムターンと、サムターン軸と、前記サムターンと前記サムターン軸とを一体的に回転するように連結する中間軸と、モータと、前記中間軸が回動可能に挿通される中空穴を有し、前記モータの駆動に応じて回転するサムターン連結体と、前記中間軸と前記サムターン連結体との間に配設されるクラッチボールと、前記クラッチボールをサムターン連結体側に付勢する付勢部材と、前記中間軸に設けられ、前記クラッチボールと前記付勢部材を収容可能な収容凹部と、前記サムターン連結体の前記中空穴の内周面に設けられ、前記クラッチボールと係合する係合部と、を有すること、を特徴とするサムターン装置である。
【0007】
上記構成のサムターン装置は、モータを駆動してサムターンを回転させる場合、クラッチボールが付勢部材によってサムターン連結体側に付勢されて係合部に係合し、中間軸とサムターン連結体が一体的に回転する。また、サムターン装置は、モータを駆動せずにサムターンを手動で回転させる場合、クラッチボールが付勢部材に抗して収容凹部内に移動して係合部との係合を解除する。これにより、サムターン連結体に作用する力が中間軸に作用しなくなり、サムターンを小さい力で回転させることができる。よって、上記構成のサムターン装置は、付勢部材の付勢力を利用してクラッチボールを進退させる簡単な構造で、サムターンの手動操作性を向上させることができる。
【0008】
(2)(1)に記載するサムターン装置において、前記付勢部材の付勢力は、前記モータが駆動して前記サムターン連結体を回転させる場合、前記クラッチボールを前記収容凹部から突出させて前記係合部に係合させる一方、前記モータが駆動せず、前記サムターン連結体を回転させない場合、前記中間軸の回転に応じて前記クラッチボールを前記収容凹部内へ後退させ、前記係合部との係合を解除させるように設定されていること、が好ましい。
【0009】
上記構成のサムターン装置は、サムターンを手動で回転させる力でクラッチボールを収容凹部に後退させるので、電力を用いずに中間軸とサムターン連結体との係合を簡単に解除できる。
【0010】
(3)(1)又は(2)に記載するサムターン装置において、前記モータに電力を供給する電池を有すること、が好ましい。
【0011】
上記構成のサムターン装置は、モータでサムターンを回転させた後にモータを逆回転させなくても、サムターンを小さい力で回転させることができるので、モータの通電頻度を減らし、電池の消耗を抑制できる。
【0012】
(4)(1)から(3)の何れか1つに記載するサムターン装置において、第1オンオフスイッチと、第2オンオフスイッチと、第3オンオフスイッチとを有し、前記サムターン連結体は、自身の回転に応じて前記第1オンオフスイッチを操作する第1操作部を有し、前記中間軸は、前記第2オンオフスイッチと前記第2オンオフスイッチを操作する第2操作部を有すること、が好ましい。
【0013】
上記構成のサムターン装置は、サムターン連結体に設けた第1操作部によりサムターン連結体の回転に応じて第1オンオフスイッチをオンオフする。また、回転カムに設けた第2操作部により回転カムの回転に応じて第2オンオフスイッチと第3オンオフスイッチをオンオフする。よって、上記構成のサムターン装置によれば、コンパクトな構造でサムターン連結体と中間軸の位置を検出できる。
【0014】
(5)(4)に記載するサムターン装置において、制御部を有し、前記制御部は、前記モータを駆動して施錠または解錠する場合に、前記第1オンオフスイッチと、前記第2オンオフスイッチと、前記第3オンオフスイッチの少なくとも1つが、オンオフ状態を切り替えられない場合に、前記モータを駆動時と逆方向に回転させた後、モータを駆動時と同一方向に回転させるリトライ処理を実行すること、が好ましい。
【0015】
上記構成のサムターン装置は、モータを駆動してサムターンを回転させる場合に、第1~第3オンオフスイッチの何れかがオンオフ状態を切り替えられないとき、モータを駆動時と逆方向に回転させた後、モータを駆動時と同一方向に回転させる。これにより、クラッチボールの動作不良を自動的に改善し、電動でサムターンを正常に回転させることができる。
【発明の効果】
【0016】
従って、本発明によれば、モータを駆動してサムターンを回転させるサムターン装置において、簡単な構造でサムターンの手動操作性を向上させることができる技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るサムターン装置の外観斜視図である。
【
図3】
図2に示すサムターン装置の内部構造を示す図である。
【
図4】サムターン回転構造を説明する分解斜視図である。
【
図8】各スイッチのオンオフ状態の切り替えを説明する図である。
【
図9】電動施錠(解錠)処理の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】異常時の電動施錠動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係るサムターン装置の一実施の形態について図面を参照して説明する。本形態では、一般家庭やオフィスの玄関扉や室内扉に取り付けられ、手動またはモータでサムターンを回転させることにより錠を開閉するサムターン装置について開示する。
【0019】
(サムターン装置1の外観構成)
図1は、サムターン装置1の外観斜視図である。サムターン装置1は、箱状のケース2にサムターン3が回転可能に設けられている。サムターン3の下方には、施錠指示または解錠指示を入力するための施解錠ボタン4が設けられている。
【0020】
(サムターン装置1の内部構成)
図2は、
図1に示すサムターン装置1の断面図である。
図3は、
図2に示すサムターン装置1の内部構造を示す図である。
図3は、サムターン装置1を背面側から見た図である。
図3は、内部構造の理解を容易にするため、適宜部材を省略している。
図4は、サムターン回転構造を説明する分解斜視図である。
【0021】
図2に示すように、サムターン3は、先端部に多角形形状(本形態では四角形状)の挿入部3aが設けられた軸部を、ケース2に開設された挿通穴2aに挿入した状態で、ストッパリング8を用いてケース2に回転可能に取り付けられている。
【0022】
図2及び
図3に示すように、ケース2には、サムターン3を自動で回転させるための回転機構6が内蔵されている。回転機構6は、回転カム12と、サムターン軸11と、サムターン軸ばね13と、取付マウント10と、ウォームホイール14と、クラッチばね15と、一対のクラッチボール16,16と、ウォームギヤ17と、モータ18と、ウォームホイール検出スイッチ(以下「WH検出スイッチ」とする)19と、解錠検出スイッチ20と、施錠検出スイッチ21と、制御基板22と、を備える。
【0023】
回転機構6は、電池5を電源として動作する。なお、電池5は、乾電池でも、充電式のバッテリでもよい。サムターン装置1は、電池5を内蔵せず、電力供給線を介して電力を供給されてもよい。
【0024】
図2に示すように、回転カム12は、挿入部12hと押さえ板2cにより両端部が回転可能に支持されている。回転カム12は、サムターン3側から順に、挿入部12hと、カム部12iと、クラッチ部12dと、挿通部12eとを備えている。回転カム12は、サムターン3とサムターン軸11とを一体的に回転するように連結している。回転カム12は「中間軸」の一例である。
【0025】
図2及び
図4に示すように、回転カム12は、挿入部12h側に設けられた第1嵌合孔12aに、サムターン3の挿入部3aがきっちり嵌め合わされている。サムターン軸11は、多角形状(本形態では四角形状)に設けられた挿入部11aを備える。回転カム12は、挿通部12e側に設けられた第2嵌合孔12bに、サムターン軸11の挿入部11aがきっちり嵌め合わされている。
【0026】
図2に示すように、ドアDは、図示しない取付ピンを用いて取付マウント10が取り付けられている。サムターン装置1は、サムターン軸11の連結部11bを取付マウント10に挿入した状態でドアDに固定される。連結部11bは、ドアDの図示しないデッドボルトに連結される。サムターン軸ばね13は、第2嵌合孔12b内に縮設され、連結部11bと図示しないデッドボルトとの連結状態を維持するようにサムターン軸11を付勢する。このようなサムターン装置1は、サムターン3の回転に応じて図示しないデッドボルトを操作し、ドアDの施解錠を行うことができる。
【0027】
図2及び
図4に示すように、ウォームホイール14は、回転カム12が回動可能に挿通される中空穴14bを備える。ウォームホイール14は、回転カム12のカム部12iとクラッチ部12dとの間の段差部分に突き当てられた状態で、クラッチ部12dの外周面に回動可能に取り付けられている。
【0028】
図3に示すように、ウォームホイール14は、外周面に設けられたギヤ14aがウォームギヤ17を介してモータ18に連結され、モータ18の駆動に従って回転する。すなわち、ウォームギヤ17は、モータ18が第1方向Kに回転すると、施錠方向(図中左回り)Lに回転し、モータ18が第1方向Kと反対の第2方向-Kに回転すると、解錠方向(図中右回り)-Lに回転する。ウォームホイール14は「サムターン連結体」の一例である。
【0029】
回転カム12のクラッチ部12dには、回転カム12の軸線方向に対して直交する方向に収容穴12fが貫通して形成されている。収容穴12fには、クラッチばね15と一対のクラッチボール16,16を収容している。収容穴12fは「収容凹部」の一例である。クラッチばね15は「付勢部材」の一例である。収容穴12fは、クラッチボール16の直径とほぼ同じ内径を備え、クラッチボール16を回転カム12(クラッチ部12d)の径方向に沿って案内する。一対のクラッチボール16,16は、収容穴12fの両端開口部に配設され、収容穴12fに内設されたクラッチばね15により外向き(ウォームホイール14側)に付勢されている。
【0030】
図2、
図3及び
図4に示すように、ウォームホイール14は、中空穴14bの内周面に、クラッチボール16と係合する係合溝141a,141b,141c,141dが設けられている。係合溝141a,141b,141c,141dは「係合部」の一例である。一対のクラッチボール16,16を介して回転カム12をウォームホイール14に挿通できるように、係合溝141a,141b,141c,141dは、中空穴14bの開口端部からウォームホイール14の軸線方向に沿って長く形成されている。係合溝141a,141b,141c,141dは、中空穴14bの周方向に90°間隔で設けられている。係合溝141a,141b,141c,141dは、クラッチボール16の直径とほぼ同じ直径を有する半球状に設けられ、クラッチボール16と隙間なく係合する。
【0031】
クラッチばね15のばね力(付勢力)は、モータ18が駆動してウォームホイール14を回転させる場合、クラッチボール16,16を収容穴12fから突出させて係合溝141a,141b,141c,141dに係合させる一方、モータ18が駆動せず、ウォームホイール14を回転させない場合、回転カム12の回転に応じてクラッチボール16,16を収容穴12f内へ後退させ、係合溝141a,141b,141c,141dとの係合を解除させるように設定されている。そのため、回転カム12は、モータ18によりサムターン3を回転させる場合にはモータ18の回転に応じて円滑に回転し、サムターン3を手動で回転させる場合にはサムターン3の回転に応じて円滑に回転できる。
【0032】
図3に示すように、WH検出スイッチ19と、解錠検出スイッチ20と、施錠検出スイッチ21は、オンオフスイッチであり、ウォームホイール14の外側に配設されている。WH検出スイッチ19は「第1オンオフスイッチ」の一例である。解錠検出スイッチ20は「第2オンオフスイッチ」の一例である。施錠検出スイッチ21は「第3オンオフスイッチ」の一例である。
【0033】
図3に示すように、WH検出スイッチ19は、検出ローラ191を備えている。
図3及び
図4に示すように、ウォームホイール14の外周面には、検出ローラ191と係合する係合凹部142a,142b,142c,142dが周方向に90°間隔で設けられている。ウォームホイール14の係合凹部142a,142b,142c,142dを備える外周面は「第1操作部」の一例である。
【0034】
図3に示すように、WH検出スイッチ19は、図中実線に示すように、検出ローラ191が係合凹部142a,142b,142c,142dの何れかと係合する場合、OFFになる。一方、WH検出スイッチ19は、図中二点鎖線に示すように、検出ローラ191が係合凹部142a,142b,142c,142dの何れとも係合しない場合に、ONになる。
【0035】
図4に示すように、回転カム12は、解錠検出スイッチ20と施錠検出スイッチ21を操作するカム片12cが設けられている。カム片12cは、カム部12iから径方向外向きに突設されている。カム片12cは「第2操作部」の一例である。
【0036】
図3に示すように、解錠検出スイッチ20と施錠検出スイッチ21は、カム片12cの移動経路上に配設され、カム片12cに押圧された場合にONになり、カム片12cに押圧されない場合にOFFになる。解錠検出スイッチ20は、回転カム12の解錠位置を検出可能な位置に配置されている。施錠検出スイッチ21は、回転カム12の施錠位置を検出可能な位置に配置されている。
【0037】
(サムターン装置の電気的構成)
図5は、電気ブロック図である。制御基板22は、CPU221とメモリ222を備える周知のマイクロコンピュータである。制御基板22は、電池5と、モータ18と、WH検出スイッチ19と、解錠検出スイッチ20と、施錠検出スイッチ21と、施解錠ボタン4に電気的に接続されている。
【0038】
メモリ222は、各種プログラムが格納されている。また、メモリ222は、各種データを記憶しており、制御プログラムを実行する際の一時的な記憶領域としても利用される。CPU221は、例えば、施解錠ボタン4を介して施錠指示または解錠指示を受け付けると、メモリ222からプログラムを読み出して実行し、サムターン装置1を制御する。CPU221は「制御部」の一例である。なお、制御基板22を「制御部」の一例にしてもよい。
【0039】
(動作説明:手動施錠動作)
続いて、サムターン装置1の動作を説明する。まず、サムターン3を回転させて手動で施錠する手動施錠動作について説明する。
図6は、手動施錠動作を説明する図である。
図6は、回転カム12とウォームホイール14との位置関係を明確にするように線種やハッチングを調整している。
【0040】
例えば
図6(a)に示すように、サムターン3が解錠位置にある場合、回転カム12は、カム片12cが解錠検出スイッチ20を押下し、施錠検出スイッチ21を押下しない位置に配置されている。このとき、一対のクラッチボール16,16は、クラッチばね15に付勢されて係合溝141a,141cに係合している。また、検出ローラ191がウォームホイール14の係合凹部142aに係合され、WH検出スイッチ19が押下されていない。
【0041】
図6(b)に示すように、モータ18を駆動せずにサムターン3を手動で施錠方向に回転させる場合、ウォームホイール14はウォームギヤ17と係合して回転を制限されている。そのため、回転カム12がサムターン3から回転トルクを付与されると、一対のクラッチボール16,16がクラッチばね15に抗して収容穴12f内に退避し、係合溝141a,141cとの係合を解除する。これにより、回転カム12は、ウォームホイール14の中空穴14b内で、単独で施錠方向Lに回転する。
【0042】
回転カム12の回転により、カム片12cが解錠検出スイッチ20を押下しなくなり、解錠検出スイッチ20がONからOFFに切り替えられる。一方、ウォームホイール14が回転しないので、検出ローラ191は係合凹部142aに係合し続け、WH検出スイッチ19はOFFを維持する。
【0043】
例えば
図6(c)に示すように、回転カム12が施錠位置まで回転すると、カム片12cが施錠検出スイッチ21を押下し、施錠検出スイッチ21がOFFからONに切り替えられる。このときも、ウォームホイール14が回転しないので、検出ローラ191は係合凹部142aに係合し続け、WH検出スイッチ19はOFFを維持している。
【0044】
なお、施錠位置にあるサムターン3を手動で回転させて解錠する場合には、上記と逆の動作を行えばよい。
【0045】
(電動施錠動作)
次に、モータ18を駆動してサムターン3を解錠位置から施錠位置に回転させる電動施錠動作について説明する。
図7は、電動施錠動作を説明する図である。
図7は、回転カム12とウォームホイール14との位置関係を明確にするように線種やハッチングを調整している。
【0046】
電動施錠動作は、モータ18が駆動してウォームホイールが回転することを除き、手動施錠動作と同様に動作する。そこで、ここでは、手動施錠動作時と相違する動作を中心に説明し、手動解除動作時と同様の動作については説明を適宜割愛する。
【0047】
図7(a)に示す動作前の状態は、
図6(a)に示す動作前の状態と同じなので説明を省略する。施解錠ボタン4を介して施錠指示を受け付けると、モータ18が第1方向Kに回転し、ウォームホイール14が施錠方向Lに回転し始める。一対のクラッチボール16,16がクラッチばね15に付勢されて係合溝141a,141cに係合しているため、回転カム12がウォームホイール14と一体的に施錠方向Lに回転する。
【0048】
回転カム12の回転により、カム片12cが解錠検出スイッチ20を押下しなくなり、解錠検出スイッチ20がONからOFFに切り替えられる。また、ウォームホイール14の回転により、検出ローラ191が係合凹部142aとの係合を解除し、ウォームホイール14の外周面に押圧される。そのため、WH検出スイッチ19はOFFからONに切り替えられる。
【0049】
例えば
図7(c)に示すように、ウォームホイール14と回転カム12が施錠位置まで回転すると、カム片12cが施錠検出スイッチ21を押下し、施錠検出スイッチ21がOFFからONに切り替えられる。また、検出ローラ191が係合凹部142dに係合し、WH検出スイッチ19はONからOFFに切り替えられる。
【0050】
なお、モータを駆動して施錠位置にあるサムターン3を回転させて解錠する場合には、上記と逆の動作を行えばよい。
【0051】
(各スイッチのオンオフ状態の切り替え)
図8は、各スイッチのオンオフ状態の切り替えを説明する図である。
図8は、サムターン3(回転カム12)が解錠位置にあるとき(解錠位置)と、サムターン3(回転カム12)が解錠位置から施錠位置へ移動しているとき(中間位置)と、サムターン3(回転カム12)が施錠位置にあるとき(施錠位置)のWH検出スイッチ19と解錠検出スイッチ20と施錠検出スイッチスイッチ21のオンオフ状態を示す。
【0052】
手動施錠(解錠)動作時と電動施錠(解錠)動作時では、ウォームホイール14の回転有無により、WH検出スイッチ19のオンオフ状態の切り替えが異なるが、その他は共通している。そこで、サムターン装置1は、モータ18を用いてサムターン3を回転させる場合に、WH検出スイッチ19と解錠検出スイッチ20と施錠検出スイッチ21のオンオフ状態に基づいてウォームホイール14や回転カム12の動作不良の有無を監視し、動作不良がある場合にはモータ18の回転を制御して動作不良を改善する電動施錠(解錠)処理を行う。
【0053】
(電動施錠(解錠)処理)
図9は、電動施錠(解錠)処理の制御手順の一例を示すフローチャートである。
図10は、異常時の電動施錠動作を説明する図である。サムターン装置1は、施解錠ボタン4を介して施錠指示を受け付けると、制御基板22のCPU221がメモリ222から動作プログラムを読み出し、
図9に示す電動施錠(解錠)処理を実行する。なお、
図9の処理はCPU221が行うが、「サムターン装置1が行う」と記載することがある。
【0054】
図9に示すように、施錠指示を受け付けたサムターン装置1は、まず、回転カム12が解錠位置にあるか否かを判断する(S1)。
図10(a)に示すように、回転カム12がカム片12cにより解錠検出スイッチ20を押下する位置に配置されている場合、解錠検出スイッチ20がONである。この場合、
図9に示すように、サムターン装置1は、回転カム12が解錠位置にあると判断し(S1)、モータ18を第1方向Kに回転させる(S2)。
【0055】
そして、
図10(b)に示すように、モータ18が、第1方向Kに回転し、ウォームホイール14が施錠方向Lに回転し始めると、一対のクラッチボール16,16が係合溝141a,141bに係合する間、回転カム12がウォームホイール14と一体的に施錠方向Lに回転する。すると、検出ローラ191が係合凹部142aとの係合を解除し、ウォームホイール14に押圧されるので、WH検出スイッチ19がOFFからONに切り替えられる。また、解錠検出スイッチ20は、カム片12cに押圧されなくなり、ONからOFFに切り替えられる。
【0056】
この場合、
図9に示すように、サムターン装置1は、WH検出スイッチ19がONからOFFに切り替えられると(S3)、一定時間経過後にモータ18を停止させる(S4)。
【0057】
図10(c)に示すように、モータ18が停止する前に、一対のクラッチボール16,16がクラッチばね15に抗して収容穴12f内に退避すると、ウォームホイール14と回転カム12とが非係合状態になる。この場合、
図10(d)に示すように、ウォームホイール14がモータ18の回転に応じて施錠位置まで回転しても、回転カム12は、ウォームホイール14から回転を伝達されず、施錠位置まで回転できない。そのため、施錠検出スイッチ21はOFFからONに切り替えられない。また、WH検出スイッチ19は、検出ローラ191が係合凹部142dと係合し、ONからOFFに切り替えられる。
【0058】
図9に示すように、サムターン装置1は、施錠検出スイッチ21がONでない場合(S5:NO)、リトライ回数nに1を加算し(S9)、モータ18を第2方向-Kに回転させる(S10)。
【0059】
図10(d)に示すように、モータ18が第2方向-Kに回転すると、ウォームホイール14が解錠方向-Lに回転する。ウォームホイール14の回転により、検出ローラ191は係合凹部142dとの係合を解除し、ウォームホイール14に押圧される。これにより、WH検出スイッチ19はOFFからONに切り替えられる。
【0060】
図9に示すように、サムターン装置1は、WH検出スイッチ19がOFFからONに切り替えられると(S11:YES)、一定時間経過後にモータ18を停止する(S12)。これにより、
図10(e)に示すように、ウォームホイール14が電動施錠動作開始前の位置に戻される。すると、検出ローラ191が係合凹部142aに係合し、WH検出スイッチ19がONからOFFに切り替えられる。
【0061】
図9に示すように、サムターン装置1は、WH検出スイッチ19がONからOFFに切り替えられると(S13:YES)、リトライ回数nが規定回数(例えば4回)であるか否かを判断する(S14)。リトライ回数nが規定回数でない場合(S14:NO)、サムターン装置1は、S1の処理に戻る。
【0062】
図10(e)に示すように、モータ18を第2方向-Kに回転させ、ウォームホイール14が解錠位置まで戻っても、クラッチボール16.161が係合溝141a~141dの何れにも係合しなかった場合、回転カム12は解錠位置まで戻らない。この場合、解錠検出スイッチ20も施錠検出スイッチ21も、カム片12cに押圧されず、OFFとなる。
【0063】
図9に示すように、サムターン装置1は、解錠検出スイッチ20も施錠検出スイッチ21もOFFであるとき、回転カム12が解錠位置と施錠位置の何れにもないと判断し(S1:NO、S7:NO)、モータ18を第1方向Kに回転させる(S2)。サムターン装置1は、S2以降の処理を上記と同様に行い、モータ18によりサムターン3の回転を再度試みる。S10~S13、S2の処理は「リトライ処理」の一例である。
【0064】
図10(f)に示すように、モータ18が第1方向Kに再度回転し、ウォームホイール14が施錠方向Lに再度回転した場合に、一対のクラッチボール16,16が係合溝141a,141cに係合すると、回転カム12がウォームホイール14と一体的に施錠方向Lに回転する。ウォームホイール14が回転すると、検出ローラ191が係合凹部142aとの係合を解除し、WH検出スイッチ19がOFFからONに切り替えられる。
図10(g)に示すように、モータ18が第1方向Kに一定時間回転し、回転カム12とウォームホイール14が解錠位置まで回転すると、施錠検出スイッチ21がOFFからONに切り替えられる。
【0065】
図9に示すように、サムターン装置1は、モータ18を第1方向Kに再度回転させた後(S2)、WH検出スイッチ19がOFFからONに切り替えられ(S3:YES)、モータ18を一定時間回転させた後に(S4)、施錠検出スイッチ21がONになったと判断した場合(S5:YES)、モータ18によりサムターン3が施錠位置に配置されている。そのため、サムターン装置1は、リトライ回数nをリセットし(S6)、処理を終了する。
【0066】
なお、モータ18を第1方向Kに回転させても(S2)、WH検出スイッチ19がOFFからONに切り替わらない場合(S3:NO)、ウォームホイール14が回転していない可能性が高い。そこで、サムターン装置1は、モータ18を停止し(S8)、S9以降の処理を行う。
【0067】
モータ18を逆転させても(S10)、WH検出スイッチ19がOFFのままである場合(S11:NO)、駆動系に異常がある可能性が高い。また、モータ18を逆転させ(S10)、ウォームホイール14が解錠方向-Lに回転しても(S11:YES)、ウォームホイール14が電動施錠動作開始前の位置に戻る前に停止してしまった場合も(S12、S13:NO)、駆動系に異常がある可能性が高い。これらの場合、サムターン装置1は、エラー処理を実行し(S15)、S6の処理後、処理を終了する。エラー処理は、例えば、音声や表示によるエラーの通知や、サムターン装置1を管理する管理会社への通知などである。
【0068】
(まとめ)
以上説明したように、本形態のサムターン装置1は、モータ18を駆動してサムターン3を回転させる場合、一対のクラッチボール16,16がクラッチばね15によってウォームホイール14側に付勢されて係合溝141a,141cに係合し、回転カム12とウォームホイール14が一体的に回転する。また、サムターン装置1は、モータ18を駆動せずにサムターン3を手動で回転させる場合、一対のクラッチボール16,16がクラッチばね15に抗して収容穴12f内に移動して係合溝141a,141cとの係合を解除する。これにより、ウォームホイール14に作用する力が回転カム12に作用しなくなり、サムターン3を小さい力で回転させることができる。よって、本形態のサムターン装置1によれば、クラッチばね15のばね力を利用して一対のクラッチボール16,16を進退させる簡単な構造で、サムターンの手動操作性を向上させることができる。
【0069】
また、本形態のサムターン装置1は、サムターン3を手動で回転させる力で一対のクラッチボール16,16を収容穴12fに後退させるので、電力を用いずに回転カム12とウォームホイール14との係合を簡単に解除できる。
【0070】
また、本形態のサムターン装置1は、モータ18でサムターン3を回転させた後にモータ18を逆回転させなくても、サムターン3を小さい力で回転させることができるので、モータ18の通電頻度を減らし、電池5の消耗を抑制できる。
【0071】
また、本形態のサムターン装置1は、ウォームホイール14の係合凹部142a~142dが設けられた外周面によりウォームホイール14の回転に応じてWH検出スイッチ19をオンオフする。また、回転カム12に設けたカム片12cにより回転カム12の回転に応じて解錠検出スイッチ20と施錠検出スイッチ21をオンオフする。よって、本形態のサムターン装置1によれば、コンパクトな構造でウォームホイール14と回転カム12の位置を検出できる。
【0072】
また、本形態のサムターン装置1は、モータ18を駆動してサムターン3を回転させる場合に、WH検出スイッチ19と解錠検出スイッチ20と施錠検出スイッチ21の何れかがオンオフ状態を切り替えられないとき、モータ18を駆動時と逆方向に回転させた後、モータ18を駆動時と同一方向に回転させる。これにより、一対のクラッチボール16,16の動作不良を自動的に改善し、電動でサムターン3を正常に回転させることができる。
【0073】
尚、本発明は、上記実施の形態に限定されることなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で色々な応用が可能である。
【0074】
上記形態では、回転カム12に収容穴12fを貫通して設け、その収容穴12fに対してクラッチボール16を2個、クラッチばね15を1個配設した。これに対して、収容穴12fを有底穴とし、クラッチボール16とクラッチばね15を1個ずつ配置してもよい。また、中空穴14bの内周面に有底の収容凹部を180°の位相差で設け、各収容凹部にクラッチボール16とクラッチばね15を1個ずつ配置してもよい。ただし、上記形態のように貫通した収容穴12fに一対のクラッチボール16,16とクラッチばね15を配設することで、部品点数を減らすことができる。また、クラッチボール16,16を係合溝141a~141dに係合させる際の係合力が均一になるので、サムターン3を回転させる際に、回転カム12がウォームホイール14内で回転しやすくなる。
【0075】
図9のS11にてモータ18を駆動時と逆方向に回転させたが、モータ18を駆動時と同一方向に回転させ、検出ローラ191を係合凹部142cに係合させてもよい。但し、上記形態のようにモータ18を逆回転させることで、施解錠時のモータ18の回転量を一定にして制御を簡単にすることができる。
【0076】
WH検出スイッチ19と解錠検出スイッチ20と施錠検出スイッチ21は、機械的にオンオフされるオンオフスイッチでなく、光センサ等であってもよい。
【0077】
ウォームホイール14は、係合凹部142a~142dが設けられた別部材を装着し、その別部材により第1操作部が構成されてもよい。また、回転カム12は、解錠検出スイッチ20と施錠検出スイッチ21を操作する操作片を備える部材を装着し、その部材により第2操作部が構成されてもよい。
【0078】
図9に示す制御手順は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、処理順序を変更したり、処理を省略したり、別の処理を付け加えたりしてもよい。例えば、
図9の処理でリセット処理を行わなくてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 サムターン装置
11 サムターン軸
12 回転カム(中間軸の一例)
14 ウォームホイール(サムターン連結体の一例)
15 クラッチばね(付勢部材の一例)
16 クラッチボール
18 モータ
12f 収容穴(収容凹部の一例)
141a~141d 係合溝(係合部の一例)