(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050898
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】杭頭キャップおよび建物基礎
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20230404BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
E02D27/12 A
E02D5/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161252
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000233734
【氏名又は名称】株式会社アステック入江
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】市村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】菅 将憲
(72)【発明者】
【氏名】牧野 暢久
(72)【発明者】
【氏名】安部 雅臣
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 凜太郎
(72)【発明者】
【氏名】大前 泰輔
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA37
2D041CB01
2D041CB06
2D041DB02
2D046CA02
2D046DA18
(57)【要約】
【課題】鋼管杭の杭頭に多少の変形が生じていた場合でも当該杭頭キャップを鋼管杭の杭頭に嵌め込むことが容易になる杭頭キャップおよび建物基礎を提供する。
【解決手段】杭頭キャップ1は、鉄板部11と、鋼管杭5の杭頭51に被せられた状態で上記鉄板部11の下面側から下方に突出し、上記杭頭51の上縁側の内周面に対向する複数の突出部12と、を備えており、上記杭頭51に被せられた状態における上記突出部12の先端箇所12aの水平幅は、当該突出部12の非先端箇所12bの水平幅よりも狭くされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部と、
鋼管杭の杭頭に被せられた状態で上記板状部の下面側から下方に突出し、上記杭頭の上縁側の内周面に対向する突出部と、
を備えており、
上記杭頭に被せられた状態における上記突出部の先端箇所の水平幅は、当該突出部の非先端箇所の水平幅よりも狭くされていることを特徴とする杭頭キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載の杭頭キャップにおいて、当該杭頭キャップが上記杭頭に被せられた状態で、上記突出部の上記先端箇所は、上記内周面に一本の鉛直線で線接触することを特徴とする杭頭キャップ。
【請求項3】
請求項2に記載の杭頭キャップにおいて、当該杭頭キャップが上記杭頭に被せられた状態における上記突出部の上記先端箇所の水平断面形状が、円弧状であることを特徴とする杭頭キャップ。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の杭頭キャップにおいて、上記突出部の上記先端箇所の下側箇所に、当該杭頭キャップが上記杭頭に被せられた状態で上記鋼管杭の中心方向に下り傾斜する傾斜下面を有することを特徴とする杭頭キャップ。
【請求項5】
請求項4に記載の杭頭キャップにおいて、当該杭頭キャップが上記杭頭に被せられた状態における上記傾斜下面の水平幅は、上記非先端箇所の水平幅よりも狭くされたことを特徴とする杭頭キャップ。
【請求項6】
請求項5に記載の杭頭キャップにおいて、当該杭頭キャップが上記杭頭に被せられた状態における上記傾斜下面の水平断面形状が円弧状であることを特徴とする杭頭キャップ。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の杭頭キャップにおいて、
一部の上記突出部の先端箇所が上記杭頭の上縁側の内周面に接した状態から当該杭頭キャップが、上記杭頭の上端面に上記板状部が当たる箇所を支点に、傾斜する場合に、
この傾斜で上昇することになる上記板状部の部分の下方に位置する上記突出部の上記先端箇所についての、上記支点と当該杭頭キャップの中心を通る鉛直面に平行な鉛直面内で上記内周面に最も近い箇所の下端部位が、上記傾斜で上記杭頭の上縁側の最上位置に至る以前に、上記内周面に接触することを特徴とする杭頭キャップ。
【請求項8】
鋼管杭および基礎を備える建物基礎であって、上記杭頭に設けられた請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の杭頭キャップ上に直接に、または捨てコンクリートを介して上記基礎のフーチング部が位置することを特徴とする建物基礎。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地盤に打ち込まれた鋼管杭の杭頭に装着される杭頭キャップおよびこの杭頭キャップを用いた建物基礎に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤における建物の不同沈下を防止するために、円筒状の鋼管杭を地盤に打ち込む杭状地盤補強法が行われている。そして、この杭状地盤補強法では、上記鋼管杭の打ち込みの後、鋼管杭の杭頭に杭頭キャップを溶接により取り付けて一旦埋め戻す作業が行われ、その後に、基礎業者が埋め戻し箇所の土を掘り起こし、基礎工事を実施している。
【0003】
一方、特許文献1には、鋼管杭の杭頭に被せるだけで使用可能であり、現場での杭頭への鉄板溶接といった作業を不要にできる杭頭キャップが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の杭頭キャップは、
図3(B)に示すように、鋼管杭の杭頭501に変形部501aが生じていると、杭頭キャップを杭頭501に被せる作業において、杭頭キャップの突出部120が杭頭501の変形部501aに当たり、杭頭キャップを杭頭501に嵌め込む作業に手間取ることがあった。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、鋼管杭の杭頭に多少の変形が生じていた場合でも当該杭頭キャップを鋼管杭の杭頭に嵌め込むことが容易になる杭頭キャップおよび建物基礎を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の杭頭キャップは、上記の課題を解決するために、板状部と、鋼管杭の杭頭に被せられた状態で上記板状部の下面側から下方に突出し、上記杭頭の上縁側の内周面に対向する突出部と、を備えており、上記杭頭に被せられた状態における上記突出部の先端箇所の水平幅は、当該突出部の非先端箇所の水平幅よりも狭くされていることを特徴とする。
【0008】
上記構成であれば、上記杭頭に被せられた状態における上記突出部の先端箇所の水平幅は、当該突出部の非先端箇所の水平幅よりも狭くされたので、上記杭頭に生じた変形箇所に上記突出部が当たる率が低減される。これにより、鋼管杭の杭頭に多少の変形が生じていた場合でも、当該杭頭キャップを上記杭頭に嵌め込易くなり、杭頭キャップ嵌め込みの作業効率が向上する。
【0009】
当該杭頭キャップが上記杭頭に被せられた状態で、上記突出部の上記先端箇所は、上記内周面に一本の鉛直線で線接触してもよい。これによれば、上記先端箇所が上記内周面に面で対向するのに比べ、上記杭頭に生じた変形箇所に上記突出部が当たる率がより低減される。
【0010】
当該杭頭キャップが上記杭頭に被せられた状態における上記突出部の上記先端箇所の水平断面形状が、円弧状であってもよい。これによれば、上記先端箇所の断面形状が三角形状である場合に比べて、当該先端箇所の欠け等が発生し難くなる。
【0011】
上記突出部の上記先端箇所の下側箇所に、当該杭頭キャップが上記杭頭に被せられた状態で上記鋼管杭の中心方向に下り傾斜する傾斜下面を有してもよい。これによれば、鋼管杭の杭頭に多少の変形が生じていた場合でも、上記傾斜下面が、当該杭頭キャップを上記杭頭に嵌め込む際のきっかけとなり、この杭頭キャップ嵌め込みの作業性が向上する。上記杭頭キャップを叩いて杭頭に嵌め込む場合にも、上記きっかけが在ることで、嵌め込み易くなる。
【0012】
当該杭頭キャップが上記杭頭に被せられた状態における上記傾斜下面の水平幅は、上記非先端箇所の水平幅よりも狭くされていてもよい。これによれば、上記傾斜下面が杭頭キャップ嵌め込みのきっかけを作る際に、当該傾斜下面が上記杭頭に生じた変形箇所に当たる率が低減されるので、杭頭キャップ嵌め込みの作業性が向上する。
【0013】
当該杭頭キャップが上記杭頭に被せられた状態における上記傾斜下面の水平断面形状が円弧状であってもよい。これによれば、例えば、上記傾斜下面の断面形状が三角形状である場合に比べ、当該傾斜下面の欠け等が発生し難くなる。
【0014】
これらの杭頭キャップにおいて、
一部の上記突出部の先端箇所が上記杭頭の上縁側の内周面に接した状態から当該杭頭キャップが、上記杭頭の上端面に上記板状部が当たる箇所を支点に、傾斜する場合に、
この傾斜で上昇することになる上記板状部の部分の下方に位置する上記突出部の上記先端箇所についての、上記支点と当該杭頭キャップの中心を通る鉛直面に平行な鉛直面内で上記内周面に最も近い箇所の下端部位が、上記傾斜で上記杭頭の上縁側の最上位置に至る以前に、上記内周面に接触してもよい。
【0015】
ここで、上記のように、上記杭頭に被せられた状態における上記突出部の先端箇所の水平幅が、当該突出部の非先端箇所の水平幅よりも狭くされた形状であると、一部の上記突出部の先端箇所が上記杭頭の上縁側の内周面に接した状態から当該杭頭キャップが傾斜する場合に、当該杭頭キャップが上記杭頭から抜け易くなる。上記内周面に最も近い箇所の下端部位が、上記傾斜で上記杭頭の上縁側の最上位置に至る以前に、上記内周面に接触すると、上記抜けを阻止することが可能になる。
【0016】
また、この発明の建物基礎は、鋼管杭および基礎を備える建物基礎であって、上記杭頭に設けられた上記いずれかの杭頭キャップ上に直接に、または捨てコンクリートを介して上記基礎のフーチング部が位置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明であれば、鋼管杭の杭頭に多少の変形が生じていた場合でも当該杭頭キャップを鋼管杭の杭頭に嵌め込むことが容易になるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る杭頭キャップおよび鋼管杭を示した透視斜視図である。
【
図2】同図(A)は、
図1の杭頭キャップを上側から見た透視斜視図であり、同図(B)は、
図1の杭頭キャップの下面側から見た斜視図である。
【
図3】同図(A)は、
図1の杭頭キャップの突出部の先端箇所および杭頭の変形箇所を示した平面視の説明図であり、同図(B)は、比較のために先端箇所を有しない突出部と杭頭の変形箇所を示した平面視の説明図である。
【
図4】
図1の杭頭キャップの突出部の先端箇所と傾斜下面および杭頭の上端を示した側面視の説明図である。
【
図5】
図1の杭頭キャップの杭頭上での傾斜時の説明図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る建物基礎を示した説明図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る杭頭キャップおよび鋼管杭を示した透視斜視図である。
【
図9】
図8の杭頭キャップを下側から見た透視斜視図である。
【
図10】同図(A)は、
図8の杭頭キャップが鋼管杭に装着された状態の透視斜視図であり、同図(B)は、同透視側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施形態1)
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1、
図2(A)および
図2(B)に示すように、この実施形態にかかる杭頭キャップ1は、例えば、板状部である上面が平坦な円形の鉄板部11と、上記鉄板部11の下面側から下方に突出する突出部12と、を備えており、地盤に埋め込まれた円筒状の鋼管杭5の上端開口を塞ぐように杭頭51に装着される。この杭頭キャップ1は、例えば、鋳造により製作される。
【0020】
上記鉄板部11は、上記鋼管杭5の外形寸法(一例として外径)よりも大きな外形寸法(一例として直径)を有する。また、上記鉄板部11の下面(底面)の荷重の影響を受け難い箇所には、円形の薄肉領域11aが形成されて軽量化が図られている。また、上記鉄板部11の上面(表面)の中心位置には、位置決め用の凹部11bが形成されている。上記凹部11bは、例えば、逆円錐状をなす。
【0021】
また、上記突出部12は、上記鋼管杭5の杭頭51に被せられた状態で、上記杭頭51の管内側に位置し、上記杭頭51の上端側の内周面に対向する。この実施形態では、4個の突出部12が、円形の鉄板部11の中心を中心にして周方向に90度間隔で、上記薄肉領域11aの外側において、点在配置されている。また、上記鉄板部11の下面には、上記突出部12に接続されて上記鉄板部11の剛性や強度を向上させるリブ部13が設けられている。上記リブ部13は、突出部12よりも高さが低く、上記薄肉領域11aを通るように形成されている。なお、杭頭キャップ1を作製する材料の量が増えるが、上記リブ部13の高さを突出部12と同程度の高さにしてもよく、また、上記薄肉領域11aが形成されない形状にしてもよい。
【0022】
また、上記リブ部13は、向かい合う2個の突出部12同士を接続しており、上記鉄板部11の中央側を通って十字状に形成されている。もちろん、上記突出部12の数は、4個に限らず、上記周方向に120度間隔で3個配置して上記リブ部13を三又状に形成してもよいし、或いは、上記周方向に180度間隔で2個配置して上記リブ部13を一文字状に形成してもよい。或いは、上記突出部12の数を5個以上としてもよい。
【0023】
当該杭頭キャップ1が鋼管杭5の杭頭51に被せられた状態における突出部12の先端箇所12aの水平幅W1は、
図3(A)に示すように、突出部12の非先端箇所12bの水平幅W2よりも狭くされている。この水平幅W1が最も狭くされた形態では、突出部12の上記先端箇所12aは、上記内周面に一本の鉛直線で線接触可能である。この線接触する上記先端箇所12aの水平断面形状としては、先鋭の三角形状等がある。この実施形態では、当該杭頭キャップ1が杭頭51に被せられた状態における上記突出部12の上記先端箇所12aの水平断面形状は円弧状とされる。この円弧の曲率は、杭頭51の内周面の曲率半径よりも小さいものとなる。
【0024】
また、杭頭キャップ1は、
図4に示すように、上記突出部12の上記先端箇所12aの下側箇所に、当該杭頭キャップ1が杭頭51に被せられた状態で上記鋼管杭5の中心方向に直線または凹曲線で下り傾斜する傾斜下面12cを有している。この傾斜下面12cの水平幅W3は、非先端箇所12bの水平幅W2よりも狭くされている。水平幅W3は、例えば、水平幅W1と等しくされる。この実施形態では、当該杭頭キャップが杭頭51に被せられた状態で、上記傾斜下面12cの水平断面形状が円弧状となっている。
【0025】
上記構成の杭頭キャップ1であれば、鋼管杭5の杭頭51に上から杭頭キャップ1を被せるだけで装着することができるので、現場での溶接作業が不要になる。そして、上記鉄板部11に上方向への持ち上げ力が作用して杭頭キャップ1が杭頭51から離脱したとしても、溶接ではないので、再度、杭頭キャップ1を杭頭51に上から被せるだけで装着できる。一方、上記鉄板部11に横方向の力が加わるときには、上記突出部12が上記杭頭51の上縁側周面に当たるので、杭頭キャップ1は杭頭51から外れ難いし、また、位置ずれも生じ難い。
【0026】
また、上記内周面に対向する突出部12の先端箇所12aの水平幅W1は、当該突出部12の非先端箇所12bの水平幅W2よりも狭くされているので、
図3(A)に示したように、鋼管杭5の杭頭51に生じた変形箇所51aに上記突出部12が当たる率が低減される。これにより、鋼管杭5の杭頭51に多少の変形が生じていた場合でも、当該杭頭キャップ1を杭頭51に嵌め込み易くなり、杭頭キャップ嵌め込み作業の効率が向上する。
【0027】
当該杭頭キャップ1が杭頭51に被せられた状態で、上記突出部12の上記先端箇所12aが、上記内周面に一本の鉛直線で線接触すると、上記先端箇所12aが上記内周面に面で対向するのに比べ、杭頭51に生じた変形箇所51aに上記突出部12が当たる率がより低減される。
【0028】
当該杭頭キャップ1が杭頭51に被せられた状態における上記突出部12の上記先端箇所12aの水平断面形状が円弧状であると、上記先端箇所12aの断面形状が三角形状である場合に比べて、当該先端箇所12aの欠け等が発生し難くなる。
【0029】
杭頭キャップ1が、上記突出部12の上記先端箇所12aの下側箇所に、当該杭頭キャップ1が杭頭51に被せられた状態で上記鋼管杭5の中心方向に下り傾斜する傾斜下面12cを有すると、鋼管杭5の杭頭51に多少の変形が生じていた場合でも、上記傾斜下面12cが、当該杭頭キャップ1を杭頭51に嵌め込む際のきっかけとなり、この杭頭キャップ1の嵌め込みの作業性が向上する。
【0030】
当該杭頭キャップ1が杭頭51に被せられた状態での傾斜下面12cの水平幅W3が当該傾斜下面12cよりも上側の箇所の水平幅W2よりも狭くされていると、上記傾斜下面12cが杭頭キャップ1の嵌め込みのきっかけを作る際に、当該傾斜下面12cが杭頭51に生じた変形箇所51aに当たる率が低減されるので、杭頭キャップ1の嵌め込みの作業性が向上する。
【0031】
当該杭頭キャップ1が杭頭51に被せられた状態における上記傾斜下面12cの水平断面形状が円弧状であると、上記傾斜下面12cの断面形状が三角形状である場合に比べ、当該傾斜下面12cの欠け等が発生し難くなる。
【0032】
ここで、上記鉄板部11の外周縁に斜め上方向の力が加わって上記鉄板部11が斜めになるときに、上記突出部12の下端側が上記杭頭51の上縁側周面に当たるように、上記突出部12の高さ(長さ)および突出部12と上記杭頭51の内周面との隙間を設定しておくと、真上方向以外の方向の力について、杭頭キャップ1を杭頭51から外れ難くできる。
【0033】
ただし、上記のように、上記内周面に対向する突出部12の先端箇所12aの水平幅W1が、当該突出部12の非先端箇所12bの水平幅W2よりも狭くされたことで、傾斜条件によっては、杭頭キャップ1が杭頭51から外れ易くなる。このため、上記突出部12の高さを高くすることで、上記鉄板部11が杭頭51から外れ難くしている。
【0034】
例えば、
図5に示すように、杭頭キャップ1においては、一部(隣り合う2個)の突出部12の先端箇所12aが杭頭51の上縁側の内周面に接触した状態(この接触の位置を接触点Yとする)から、鉄板部11が杭頭51の上端面に当たる箇所を支点に傾斜する場合に、杭頭キャップ1は杭頭51から最も抜け易くなる。
【0035】
そこで、上記傾斜によって上昇することになる鉄板部11の部分の下方に位置する他の突出部12の先端箇所12aについての、上記支点と当該杭頭キャップ1の中心を通る鉛直面Sに平行な鉛直面内で上記内周面に最も近い箇所の下端部位Pが、上記傾斜で杭頭51の上縁側の最上位置に至る以前に、上記内周面に接触させることで、杭頭キャップ1の抜けを防止する。
【0036】
この実施形態では、鉛直面Sに平行で上記下端部位Pを通る鉛直面が杭頭51の内周面に接する位置を鋼管干渉位置Iとし、上記鉛直面Sに平行で上記鋼管干渉位置Iと上記接触点Yを通る鉛直面内のI-Y間の水平距離をCとし、上記下端部位Pと上記接触点Yとの間の距離をBとする場合に、B>Cであることを、上記傾斜による杭頭キャップ1の抜け防止の条件としている。
【0037】
図6および
図7に、上記杭頭キャップ1を用いたこの実施形態の建物基礎100を示す。この建物基礎100においては、グランドレベルGLよりも掘り下げられた箇所に鋼管杭5の杭頭51が位置しており、この杭頭51上に上記杭頭キャップ1が装着されている。そして、上記杭頭キャップ1上によって例えば布基礎6のフーチング部61が捨てコンクリート62を介して支持されている。なお、上記捨てコンクリート62を介さないで、直接に、上記杭頭キャップ1上に布基礎6のフーチング部61が支持される構造としてもよい。なお、布基礎に限らず、べた基礎でもよい。
【0038】
(実施形態2)
次に、この発明の他の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図8、
図9、
図10(A)および
図10(B)に示すように、この実施形態にかかる杭頭キャップ2は、鋼管杭5の外形寸法よりも大きな外形寸法を有する円形の鉄板部(板状部)21と、上記鉄板部21の下面側から下方に突出し、上記鋼管杭5の杭頭51に被せられた状態で上記杭頭51の上縁側の内周面に対向する突出部22、および外周面に対向するリング状部23と、を備えている。また、上記鉄板部21の上面の中心位置には、位置決め用の凹部21aが形成されている。
【0039】
上記突出部22は、4個存在し、円形の鉄板部21の中心を中心にして周方向に90度間隔で点在配置されている。一方、上記リング状部23は、壁状に連続形成されている。上記突出部22と上記リング状部23との間隔は、上記杭頭51の肉厚よりも広くされるが、上記突出部22と上記リング状部23との間隔を極力狭くし、また、上記突出部22および上記リング状部23の突出長さを長くするほど、上記鉄板部21が斜めになるときに、上記突出部22およびリング状部23の下端側が上記杭頭51の上縁側周面に当たるようになるので、杭頭キャップ2を上記杭頭51から外れ難くできる。
【0040】
そして、この実施形態にかかる杭頭キャップ2においても、杭頭キャップ1と同様に、当該杭頭キャップ2が鋼管杭5の杭頭51に被せられた状態における杭頭51の内周面に対向する突出部22の先端箇所22aの水平幅は、当該突出部22の非先端箇所22bの水平幅よりも狭くされている。
【0041】
また、上記リング状部23の外形(一例として外径)は、上下で同じではなく、下側ほど小さくなる斜め形状をなしている。換言すれば、上記リング状部23の外側面23aは鉛直ではなく、下側ほど上記鉄板部21の中心側に近づくように傾斜している。
【0042】
上記の構成であれば、上記リング状部23は、壁状に形成されているので、上記突出部22を接続するリブ部が無くても、杭頭キャップ2の強度が向上し、割れや破損を低減することができ、また、杭頭キャップ2の剛性も向上し、杭頭キャップ2の変形も生じ難くなり、建物荷重を鋼管杭5に略均一に伝えることができる。
【0043】
また、上記リング状部23における外形が下側ほど小さくなる斜め形状をなしていると、当該杭頭キャップ2が上記鋼管杭5の杭頭51に被せられた状態において、上記リング状部23の外側面23aは、下側ほど上記鋼管杭5の外周面に近づくことになる。これにより、当該リング状部23の下端面における上記鋼管杭5の外周面からの水平方向の突出量を極力小さくすることができ、上記鋼管杭5の周囲の土の掘り起こしに際して重機のバケットの爪が杭頭キャップ2に引っ掛かるのを抑制できる。
【0044】
そして、杭頭51の内周面に対向する突出部22の先端箇所22aの水平幅は、当該突出部22の非先端箇所22bの水平幅よりも狭くされているので、鋼管杭5の杭頭51に生じた変形箇所に上記突出部22が当たる率が低減される。これにより、鋼管杭5の杭頭51に多少の変形が生じていた場合でも、杭頭キャップ2を杭頭51に嵌め込易くなり、作業効率が向上する。また、杭頭キャップ2は、リング状部23を有するので、突出部22の高さをあまり高くしなくても、杭頭キャップ2の外れが抑制される。
【0045】
なお、この実施形態の杭頭キャップ2の先端箇所22aは、先の実施形態の杭頭キャップ1が備える傾斜下面12cを有していないが、杭頭キャップ1と同様に傾斜下面を有してもよいものである。
【0046】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 :杭頭キャップ
2 :杭頭キャップ
5 :鋼管杭
6 :布基礎
11 :鉄板部(板状部)
11a :薄肉領域
11b :凹部
12 :突出部
12a :先端箇所
12b :非先端箇所
12c :傾斜下面
13 :リブ部
21 :鉄板部(板状部)
21a :凹部
22 :突出部
22a :先端箇所
22b :非先端箇所
23 :リング状部
23a :外側面
51 :杭頭
51a :変形箇所
61 :フーチング部
62 :捨てコンクリート
100 :建物基礎
GL :グランドレベル
I :鋼管干渉位置
S :鉛直面
P :下端部位
W1 :水平幅
W2 :水平幅
W3 :水平幅
Y :接触点