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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050899
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】型枠保持具
(51)【国際特許分類】
   E04G 17/14 20060101AFI20230404BHJP
【FI】
E04G17/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161254
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000221580
【氏名又は名称】東都積水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 賢一
【テーマコード(参考)】
2E150
【Fターム(参考)】
2E150AA40
2E150EA04
2E150EA11
2E150HC02
2E150MA01X
2E150MA11X
(57)【要約】
【課題】施工性を高めることができる型枠保持具を提供する。
【解決手段】型枠保持具1は、底板10と、底板から、底板の厚さ方向Zの第1側Z1に向かってそれぞれ延びる第1突起15、第2突起20、軸状部材26と、軸状部材における厚さ方向の第1側の端部に設けられた突部27と、を備え、底板に沿うとともに互いに交差する方向を、第1沿面方向X及び第2沿面方向Yと規定したときに、第1突起及び第2突起は、第1沿面方向に互いに間隔を空けて底板に並べて配置され、第2突起及び軸状部材は、第2沿面方向に互いに間隔を空けて底板に並べて配置され、突部は、軸状部材から、第1沿面方向に沿うとともに第1突起に向かう向きに突出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板と、
前記底板から、前記底板の厚さ方向の第1側に向かってそれぞれ延びる第1突起、第2突起、軸状部材と、
前記軸状部材における前記厚さ方向の前記第1側の端部に設けられた突部と、
を備え、
前記底板に沿うとともに互いに交差する方向を、第1沿面方向及び第2沿面方向と規定したときに、
前記第1突起及び前記第2突起は、前記第1沿面方向に互いに間隔を空けて前記底板に並べて配置され、
前記第2突起及び前記軸状部材は、前記第2沿面方向に互いに間隔を空けて前記底板に並べて配置され、
前記突部は、前記軸状部材から、前記第1沿面方向に沿うとともに前記第1突起に向かう向きに突出する、型枠保持具。
【請求項2】
前記第2突起の前記厚さ方向の長さは、前記第1突起の前記厚さ方向の長さよりも短い、請求項1に記載の型枠保持具。
【請求項3】
前記第2突起の前記厚さ方向の長さは、前記軸状部材の前記厚さ方向の長さよりも短い、請求項1又は2に記載の型枠保持具。
【請求項4】
前記第2突起を2つ備え、
前記2つの第2突起は、前記軸状部材を前記第2沿面方向に挟むように配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の型枠保持具。
【請求項5】
前記軸状部材及び前記突部をそれぞれ2つ備え、
前記2つの軸状部材は、前記第2突起を前記第2沿面方向に挟むように配置されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の型枠保持具。
【請求項6】
前記型枠保持具は合成樹脂製であり、
前記底板における、前記突部を前記厚さ方向に投影した位置には、貫通孔が形成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の型枠保持具。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記底板における前記第2沿面方向の中間部に形成されている、請求項6に記載の型枠保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型枠保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、型枠を保持するために型枠保持具が用いられている(例えば、特許文献1から3参照)。
型枠は、堰板部、延出部、及びリブを有している。型枠保持具は、本体片(底板)と、内側係止片(第1突起)と、外側係止片とを有している。外側係止片は、外側本体部(第2突起)と、案内部(突部)とを有している。
型枠は、本体片上であって、内側係止片と外側係止片との間に配置される。案内部の係止端面が型枠のリブの外縁に係合することによって、リブの抜け止めが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-190618号公報
【特許文献2】特開平08-193420号公報
【特許文献3】実開昭54-178923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の型枠保持具では、外側本体部により本体片に沿う方向(第1沿面方向)の位置決めをするとともに、案内部により本体片の厚み方向(厚さ方向)の位置決めをしている。型枠保持具に型枠を着脱する際には、案内部が支持されている部分である外側本体部を比較的柔らかく形成し、リブに対して案内部が本体片に沿う方向に容易に移動できる必要がある。
一方で、外側本体部が比較的柔らかいと、型枠を本体片に沿う方向に位置決めすることが困難になる。
以上のように例示した観点から、従来の型枠保持具には、施工性の点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、施工性が高い型枠保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の型枠保持具は、底板と、前記底板から、前記底板の厚さ方向の第1側に向かってそれぞれ延びる第1突起、第2突起、軸状部材と、前記軸状部材における前記厚さ方向の前記第1側の端部に設けられた突部と、を備え、前記底板に沿うとともに互いに交差する方向を、第1沿面方向及び第2沿面方向と規定したときに、前記第1突起及び前記第2突起は、前記第1沿面方向に互いに間隔を空けて前記底板に並べて配置され、前記第2突起及び前記軸状部材は、前記第2沿面方向に互いに間隔を空けて前記底板に並べて配置され、前記突部は、前記軸状部材から、前記第1沿面方向に沿うとともに前記第1突起に向かう向きに突出することを特徴としている。
【0007】
一般的に、型枠保持具により保持される型枠は、厚さ方向に延びる第1板片と、第1板片における厚さ方向の第2側の端部から、第1沿面方向のうち第1突起から第2突起に向かう第1側に向かって延びる第2板片と、第2板片の先端部から厚さ方向の第1側に向かって延びる第3板片と、を有する。
この発明では、第1突起及び第2突起が型枠の第1板片及び第3板片を第1沿面方向に挟んだときに、第1板片及び第3板片を第1沿面方向に位置決めすることができる。そして、型枠の第2板片を、第2板片に対する厚さ方向の第2側から底板により支持し、型枠の第3板片に、第3板片の厚さ方向の第1側から突部を係止することにより、型枠の第2板片及び第3板片を、厚さ方向に位置決めをすることができる。
また、第2突起及び軸状部材は、第2沿面方向に互いに間隔を空けて並べて配置されているため、軸状部材の変形が第2突起により拘束されるのが抑制される。従って、軸状部材に設けられた突部を、第1沿面方向に容易に移動させることができる。
以上から、この型枠保持具を用いた施工時の施工性を高めることができる。
【0008】
また、前記型枠保持具において、前記第2突起の前記厚さ方向の長さは、前記第1突起の前記厚さ方向の長さよりも短くてもよい。
一般的に、型枠により形成した基礎から型枠を取外す際には、型枠における厚さ方向の第1側の端部を、第1沿面方向において第1突起から離間するように型枠を傾けながら、型枠を取外す。
この発明では、基礎及び型枠保持具から型枠を取外す際に支障となり易い第2突起の厚さ方向の長さが第1突起の厚さ方向の長さよりも短く、型枠の第1板片及び第3板片を、第1突起及び第2突起の中でも厚さ方向に長い主に第1突起により、第1沿面方向に位置決めする。これにより、第1沿面方向への位置決め性能を維持しつつ、基礎及び型枠保持具から型枠を取外し易くすることができる。
【0009】
また、前記型枠保持具において、前記第2突起の前記厚さ方向の長さは、前記軸状部材の前記厚さ方向の長さよりも短くてもよい。
前記のように、基礎から型枠を取外す際には、型枠における厚さ方向の第1側の端部を、第1沿面方向において第1突起から離間するように型枠を傾けながら取外す。
この発明では、基礎及び型枠保持具から型枠を取外す際に支障となり易い第2突起の厚さ方向の長さが軸状部材の厚さ方向の長さよりも短いことにより、軸状部材及び突部は一般的な型枠に対応可能な寸法を維持しつつ、基礎及び型枠保持具から型枠を取外し易くすることができる。
【0010】
また、前記型枠保持具において、前記第2突起を2つ備え、前記2つの第2突起は、前記軸状部材を前記第2沿面方向に挟むように配置されていてもよい。
この発明では、第2沿面方向に間隔を空けて配置された2つの第2突起により、第2突起が1つの場合に比べて、型枠が厚さ方向に沿う軸線周りに位置ズレするのを抑制することができる。
【0011】
また、前記型枠保持具において、前記軸状部材及び前記突部をそれぞれ2つ備え、前記2つの軸状部材は、前記第2突起を前記第2沿面方向に挟むように配置されていてもよい。
この発明では、第2沿面方向に間隔を空けて配置された2つの突部により、型枠保持具に対して型枠を厚さ方向により確実に位置決めすることができる。
【0012】
また、前記型枠保持具において、前記型枠保持具は合成樹脂製であり、前記底板における、前記突部を前記厚さ方向に投影した位置には、貫通孔が形成されていてもよい。
この発明では、例えば、型枠保持具を射出成形により製造する場合に、金型内で製造された型枠保持具の貫通孔を通して、金型のコア又はキャビティが移動する。従って、コア又はキャビティの移動方向に対してアンダーカットとなる突部を、射出成形により形成することができる。
【0013】
また、前記型枠保持具において、前記貫通孔は、前記底板における前記第2沿面方向の中間部に形成されていてもよい。
この発明では、貫通孔が底板において第2沿面方向に開口する場合に比べて、底板の強度が低下するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の型枠保持具では、施工性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の型枠保持具が施工に用いられる、建築物のベタ基礎の断面図である。
図2】同型枠保持具の側面図である。
図3】同型枠保持具の平面図である。
図4】同型枠保持具の正面図である。
図5】同型枠保持具の底面図である。
図6】同型枠保持具を用いてベタ基礎を施工する工程を説明する断面図である。
図7】本発明の一実施形態の第1変形例における型枠保持具の側面図である。
図8】同型枠保持具の平面図である。
図9】同型枠保持具の正面図である。
図10】本発明の一実施形態の第2変形例における型枠保持具の側面図である。
図11】同型枠保持具の平面図である。
図12】同型枠保持具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る型枠保持具の一実施形態を、図1から図12を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の型枠保持具1は、例えば、建築物100のベタ基礎(基礎)105を施工するのに用いられる。なお、図1では、ベタ基礎105のうち底盤部106を施工した状態を示している。基礎は、布基礎でもよい。
ベタ基礎105は、捨てコンクリート110上に施工される。例えば、捨てコンクリート110では、コンクリート111内に複数の鉄筋112が埋設されている。
なお、捨てコンクリート110内に鉄筋112が埋設されていなくてもよい。
【0017】
以下では、まず、型枠保持具1の構成について説明する。
図2から図5に示すように、型枠保持具1は、底板10と、第1突起15と、第2突起20と、保持爪25とを有する。なお、図2には、後述する型枠115等も併せて示している。
図3に示すように、底板10は、底板10の厚さ方向Zに見たときに、所定の方向に長い矩形状を呈する板状に形成されている。底板10の厚さ(厚さ方向Zの長さ)は、3mm以上5mm以下であることが好ましい。
以下では、底板10に沿うとともに互いに直交(交差)する方向を、第1沿面方向X及び第2沿面方向Yと規定する。第1沿面方向Xは、前記所定の方向であるとする。
図2から図5に示すように、底板10には、第1貫通孔(貫通孔)10a、第2貫通孔10b、及び突条11が形成されている。
【0018】
図2及び図5に示すように、本実施形態では、底板10に1つの第1貫通孔10aが形成されている。第1貫通孔10aは、底板10における第1沿面方向Xの第1側X1(以下では、単に第1側X1とも言う)の端部において、保持爪30の後述する突部27に対応する位置に形成されている。第1貫通孔10aが形成されている位置、及び第1貫通孔10aの形状の詳細については、後述する。
本実施形態では、底板10に2つの第2貫通孔10bが形成されている。各第2貫通孔10bは、厚さ方向Zに見たときに円形状を呈してる。2つの第2貫通孔10bは、底板10のうち、第1沿面方向Xにおける第1側X1とは反対の第2側X2(以下では、単に第2側X2とも言う)の部分に、第1沿面方向Xに互いに間隔を空けて配置されている。
第1貫通孔10a及び2つの第2貫通孔10bは、底板10を厚さ方向Zに貫通している。
【0019】
突条11は、底板10における第1沿面方向Xの所定の部分の位置を表す指標である。図2及び図5に示すように、突条11は、底板10における、底板10の厚さ方向Zの第1側Z1(以下では、単に第1側Z1とも言う)を向く表面10cに形成される。本実施形態では、底板10における2つの第2貫通孔10bよりも第2側X2の部分に、2つの突条11が形成されている。
各突条11は、表面10cから第1側Z1に向かって突出しつつ、第2沿面方向Yに延びている。2つの突条11は、第1沿面方向Xに互いに間隔を空けて配置されている。
以下では、2つの突条11のうち第1側X1の突条11を、突条11Aとも言う。
2つの突条11のうち第2側X2の突条11を、突条11Bとも言う。
【0020】
例えば、突条11Aと、第1突起15の後述する突起本体16における第1側X1を向く表面との距離は、60mmである。突条11Bと、突起本体16における第1側X1を向く表面との距離は、75mmである。例えば、突条11Aは基礎幅150mm用であり、突条11Bは基礎幅180mm用である。
なお、第2貫通孔10bに代えて、底板10の表面10cに窪みを形成してもよい。
【0021】
図2及び図5に示すように、第1突起15及び第2突起20は、底板10から第1側Z1に向かってそれぞれ延びている。本実施形態では、型枠保持具1は、1つの第1突起15を備えている。第1突起15は、底板10における、第1沿面方向Xの中間部であって、2つの第2貫通孔10bよりも第1側X1の部分に配置されている。第1突起15は、底板10における第2沿面方向Yの中心に配置されている。
第1突起15は、突起本体16と、保持部17とを有している。
突起本体16は、自身の厚さ方向が第1沿面方向Xとなる平板状に形成されている。突起本体16は、底板10から第1側Z1に向かって延びている。
保持部17は、図2に示す第2沿面方向Yに見たときに三角形状を呈する板状に形成されている。保持部17は、突起本体16における第2側X2を向く表面と、底板10の表面10cとを連結している。保持部17は、突起本体16が第2側X2に倒れるのを防止する。
【0022】
図3に示すように、本実施形態では、型枠保持具1は、2つの第2突起20を備えている。2つの第2突起20は、底板10における、第1側X1の端部であって、第1突起15よりも第1側X1の部分に配置されている。2つの第2突起20は、第2沿面方向Yに互いに間隔を空けて配置されている。2つの第2突起20は、底板10における第2沿面方向Yの両端部に配置されている。第1突起15及び2つの第2突起20は、第1沿面方向Xに互いに間隔を空けて底板10に並べて配置されている。
図2及び図5に示すように、各第2突起20は、突起本体21と、保持部22とを有している。
突起本体21は、自身の厚さ方向が第1沿面方向Xとなる平板状に形成されている。突起本体16は、底板10から第1側Z1に向かって延びている。
図2に示すように保持部22は、第2沿面方向Yに見たときに三角形状を呈する板状に形成されている。保持部22は、突起本体21における第1側X1を向く表面と、底板10の表面10cとを連結している。保持部22は、突起本体21が第1側X1に倒れるのを防止する。
【0023】
図2及び図5に示すように、保持爪25は、軸状部材26と、突部27とを有している。
軸状部材26は、自身の厚さ方向が第1沿面方向Xとなる平板状に形成されている。軸状部材26は、底板10から第1側Z1に向かって延びている。軸状部材26は、2つの第2突起20の間であって、底板10における第2沿面方向Yの中心に配置されている。すなわち、2つの第2突起20は、軸状部材26を第2沿面方向Yに挟むように配置されている。2つの第2突起20及び軸状部材26は、第2沿面方向Yに互いに間隔を空けて底板10に並べて配置されている。
図3に示すように、軸状部材26における第2側X2を向く表面26a、及び各突起本体21における第2側X2を向く表面21aは、第1沿面方向Xの位置が同等であることが好ましい。
【0024】
図2及び図5に示すように、突部27は、軸状部材26における第1側Z1の端部に設けられている。突部27は、軸状部材26から、第1沿面方向Xに沿うとともに第1突起15に向かう向き(第2側X2)に突出している。
図2に示すように、突部27における第2側X2を向く表面27aは、第1側Z1に向かうに従い漸次、第1側X1に向かうように傾斜している。
図2及び図5に示すように、前記第1貫通孔10aは、底板10における、突部27を厚さ方向Zに投影した位置に形成されている。すなわち、第1貫通孔10aは、突部27を厚さ方向Zに見たときに、底板10における突部27に重なる位置に形成されている。
図2に示すように、第2突起20の厚さ方向Zの長さは、第1突起15の厚さ方向Zの長さよりも短い。第2突起20の厚さ方向Zの長さは、軸状部材26の厚さ方向Zの長さよりも短い。
【0025】
以上のように構成された型枠保持具1は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂製である。型枠保持具1は、ポリプロピレン樹脂で形成されていることが最も好ましい。型枠保持具1は、例えば、使用済みの合成樹脂をマテリアルリサイクルにより再利用した、リサイクル原料で形成されていることが好ましい。
第1突起15及び第2突起20は、軸状部材26よりもかたく形成されている。
例えば、型枠保持具1は、金型を用いた射出成形により製造される。型枠保持具1を射出成形により製造する際に、例えば、図2に示す線L1が、金型のパーティングラインとなる。このため、金型のコア又はキャビティの移動方向(図2において、線L1に直交する方向V)に対して、突部27がアンダーカットとなる。
ただし、コア又はキャビティが第1貫通孔10aを通して移動することにより、射出成形により型枠保持具1を形成することができる。コア又はキャビティの抜き勾配を考慮して、第1貫通孔10aは、突部27を厚さ方向Zに投影した形状を含み、その形状よりも大きい形状であることが好ましい。
【0026】
本実施形態では、型枠保持具1は、第2側Z2が下方になるように配置されている。なお、型枠保持具1が配置される向きは、これに限定されない。
【0027】
次に、型枠保持具1が支持する型枠115の構成について説明する。
図2に示すように、型枠115は、第1板片116と、第2板片117と、第3板片118とを有する。第1板片116、第2板片117、及び第3板片118は、それぞれ平板状に形成される。
第1板片116は、厚さ方向Zに延びている。第2板片117は、第1板片116のうち、厚さ方向Zにおける第1側Z1とは反対の第2側Z2(以下では、単に第2側Z2とも言う)の端部から、第1側X1に向かって延びている。第3板片118は、第2板片117の先端部から第1側Z1に向かって延びている。
【0028】
本実施形態では、第1板片116の厚さ方向Zの長さは、第3板片118の厚さ方向Zの長さよりも長い。例えば、第1板片116、第2板片117、及び第3板片118は、鋼板を折り曲げることにより、一体に形成されている。
図2に示すように、型枠保持具1の底板10は、型枠115の第2板片117を、第2板片117に対する第2側Z2から支持している。
型枠保持具1の第1突起15及び2つの第2突起20は、型枠115の第1板片116及び第3板片118を第1沿面方向Xに挟んでいる。この際に、2つの第2突起20は第3板片118に対向するように配置される。
型枠保持具1の突部27は、型枠115の第3板片118に、第3板片118に対する第1側Z1から係止している。突部27は、型枠115が第1側Z1に浮き上がるのを防止する。
型枠保持具1は、1つの型枠115を支持する、いわゆるハーフセパ(ハーフセパレータ)である。
【0029】
次に、以上のように型枠保持具1を用いて建築物100のベタ基礎105を施工する工程について説明する。
図1に示すように、型枠保持具1は、ベタ基礎105の底盤部106を施工するのにも用いられるし、ベタ基礎105の後述する立上がり部107を施工するのにも用いられる。
例えば、底盤部106を施工する際には、例えば作業者は、図1及び図3に示すように、捨てコンクリート110の上面における、下方に鉄筋112が埋設されている位置に、墨出し等により線L3を引く。図1に示すように、捨てコンクリート110上の所定の範囲に、鉄筋120を配置する。
捨てコンクリート110上に、型枠保持具1を配置する。例えば、底盤部106の仕様等に基づいて、厚さ方向Zに見たときに、型枠保持具1の突条11Bを線L3に重ねる。型枠保持具1の第2貫通孔10bを通して捨てコンクリート110にコンクリート用のコンクリート釘125を打ち込む。
このようにして、コンクリート釘125により、捨てコンクリート110の所定の位置に型枠保持具1を複数固定する。
【0030】
次に、複数の型枠保持具1に、型枠115を複数固定する。具体的には、型枠保持具1の第1突起15及び2つの第2突起20の間に、型枠115の第1板片116及び第3板片118を配置する。型枠保持具1の底板10上に、型枠115の第2板片117を配置する。型枠保持具1の突部27を、型枠115の第3板片118に、第3板片118に対する第1側Z1から係止させる。
以上の工程を行うことにより、複数の型枠保持具1に、型枠115を複数固定する。
【0031】
このとき、図4に示すように、捨てコンクリート110と型枠115との間には、厚さ方向Zに隙間S1が形成される。隙間S1の厚さ方向Zの長さは、底板10の厚さに対応する。隙間S1を通して型枠115の外部に後述するコンクリート121Aが漏れないようにするためにも、底板10の厚さは、薄い方が好ましい。
【0032】
次に、図1に示すように、複数の型枠115の間に、型枠115を埋設する程度のコンクリート121Aを流し込む。コンクリート121Aが固化してコンクリート121となると、コンクリート121及び鉄筋120により、底盤部106を構成する。
【0033】
同様にして、底盤部106の上面における、下方に鉄筋120が埋設されている位置に線L4を引く。底盤部106上の所定の範囲に、不図示の鉄筋を配置する。
底盤部106上に、別の型枠保持具1である型枠保持具1Aを配置する。例えば、ベタ基礎105の立上がり部の仕様等に基づいて、厚さ方向Zに見たときに、型枠保持具1Aの突条11Aを線L4に重ねる。コンクリート釘125により、底盤部106の所定の位置に型枠保持具1Aを複数固定する。
【0034】
次に、複数の型枠保持具1Aに、型枠115を固定する。型枠保持具1に固定された型枠115と型枠保持具1Aに固定された型枠115との間にコンクリートを流し込む。このコンクリートが固化すると、図6に示すように、立上がり部107を構成する。
以上の工程により、ベタ基礎105が施工される。
ベタ基礎105から型枠115を取外す際には、図1において二点鎖線L6で示すように、型枠115における第1側Z1の端部を、第1沿面方向Xにおいて、型枠115が固定されている型枠保持具1の第1突起15から離間するように型枠115を傾けながら、型枠保持具1から型枠115を取外す。
ベタ基礎105が施工されると、例えば、図6に示すように、型枠保持具1は土126中に埋設される。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の型枠保持具1では、第1突起15及び2つの第2突起20が型枠115の第1板片116及び第3板片118を第1沿面方向Xに挟んだときに、第1板片116及び第3板片118を第1沿面方向Xに位置決めすることができる。そして、型枠115の第2板片117を、第2板片117に対する第2側Z2から底板10により支持し、型枠115の第3板片118に、第3板片118の第1側Z1から突部27を係止することにより、型枠115の第2板片117及び第3板片118を、厚さ方向Zに位置決めをすることができる。
また、第2突起20及び軸状部材26は、第2沿面方向Yに互いに間隔を空けて並べて配置されているため、軸状部材26の変形が第2突起20により拘束されるのが抑制される。従って、軸状部材26に設けられた突部27を、第1沿面方向Xに容易に移動させることができる。
以上から、この型枠保持具1を用いた施工時の、施工性を高めることができる。
【0036】
図1において二点鎖線L6で示すように型枠115を傾けながら、ベタ基礎105及び型枠保持具1から型枠115を取外す。ベタ基礎105及び型枠保持具1から型枠115を取外す際に支障となり易い第2突起20の厚さ方向Zの長さが第1突起15の厚さ方向Zの長さよりも短く、型枠115の第1板片116及び第3板片118を、第1突起15及び第2突起20の中でも厚さ方向Zに長い主に第1突起15により、第1沿面方向Xに位置決めする。これにより、第1沿面方向Xへの位置決め性能を維持しつつ、ベタ基礎105及び型枠保持具1から型枠115を取外し易くすることができる。
また、ベタ基礎105及び型枠保持具1から型枠115を取外す際に支障となり易い第2突起20の厚さ方向Zの長さが軸状部材26の厚さ方向Zの長さよりも短いことにより、軸状部材26及び突部27は一般的な型枠115に対応可能な寸法を維持しつつ、ベタ基礎105及び型枠保持具1から型枠115を取外し易くすることができる。
【0037】
2つの第2突起20は、軸状部材26を第2沿面方向Yに挟むように配置されている。第2沿面方向Yに間隔を空けて配置された2つの第2突起20により、第2突起20が1つの場合に比べて、型枠115が厚さ方向Zに沿う軸線周りに位置ズレするのを抑制することができる。
型枠保持具1は合成樹脂製であり、底板10における、突部27を厚さ方向Zに投影した位置には、第1貫通孔10aが形成されている。型枠保持具1を射出成形により製造する場合に、金型内で製造された型枠保持具1の第1貫通孔10aを通して、金型のコア又はキャビティが移動する。従って、コア又はキャビティの移動方向に対してアンダーカットとなる突部27を、射出成形により形成することができる。
底板10に第1貫通孔10aが1つ形成されているため、底板10に第1貫通孔10aが2つ以上形成されている場合に比べて、底板10の強度が低下するのを抑制することができる。
【0038】
本実施形態の型枠保持具1は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図7から図9に示す第1変形例の型枠保持具1Aのように、本実施形態の型枠保持具1の2つの第2突起20及び1つの保持爪25に代えて、1つの第2突起20及び2つの保持爪25を備えてもよい。すなわち、第1変形例の型枠保持具1Aは、軸状部材26及び突部27をそれぞれ2つ備えている。
【0039】
2つの保持爪25は、底板10における、第1側X1の端部であって、第1突起15よりも第1側X1の部分に配置されている。2つの保持爪25は、第2沿面方向Yに互いに間隔を空けて配置されている。2つの保持爪25は、底板10における第2沿面方向Yの両端部に配置されている。第1突起15及び2つの保持爪25は、第1沿面方向Xに互いに間隔を空けて底板10に並べて配置されている。
底板10には、2つの保持爪25の突部27に対応して、第1貫通孔10aが2つ形成されている。各第1貫通孔10aは、第2沿面方向Yに開口している。
【0040】
第2突起20は、2つの保持爪25の間であって、底板10における第2沿面方向Yの中心に配置されている。すなわち、2つの保持爪25(軸状部材26)は、第2突起20を第2沿面方向Yに挟むように配置されている。2つの保持爪25及び第2突起20は、第2沿面方向Yに互いに間隔を空けて底板10に並べて配置されている。
【0041】
以上のように構成された、第1変形例の型枠保持具1Aでは、この型枠保持具1Aを用いた施工時の、施工性を高めることができる。
さらに、第2沿面方向Yに間隔を空けて配置された2つの突部27により、型枠保持具1Aに対して型枠115を厚さ方向Zにより確実に位置決めすることができる。
【0042】
図10から図12に示す第2変形例の型枠保持具1Bのように、第1変形例の型枠保持具1Aにおいて、2つの第1貫通孔10aは、底板10における第2沿面方向Yの中間部に形成されていてもよい。すなわち、第2沿面方向Yに並べて配置された2つの第1貫通孔10aのうち、第2沿面方向Yの第1側に配置された第1貫通孔10aについて、この第1貫通孔10aは第2沿面方向Yの第1側に開口せず、この第1貫通孔10aよりもさらに第2沿面方向Yの第1側に底板10がある。同様に、第2沿面方向Yに並べて配置された2つの第1貫通孔10aのうち、第2沿面方向Yの第1側とは反対の第2側に配置された第1貫通孔10aについて、この第1貫通孔10aは第2沿面方向Yの第2側に開口せず、この第1貫通孔10aよりもさらに第2沿面方向Yの第2側に底板10がある。
【0043】
以上のように構成された、第2変形例の型枠保持具1Bでは、この型枠保持具1Bを用いた施工時の、施工性を高めることができる。
さらに、第1貫通孔10aが底板10において第2沿面方向Yに開口する場合に比べて、底板10の強度が低下するのを抑制することができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、第2突起20の厚さ方向Zの長さは、第1突起15の厚さ方向Zの長さ以上でもよい。第2突起20の厚さ方向Zの長さは、軸状部材26の厚さ方向Zの長さ以上でもよい。
型枠保持具は、第1突起、第2突起、軸状部材、及び突部を組にしたものを2つ備え、互いに対向する2つの型枠115を支持する、いわゆるセパレータでもよい。
型枠保持具が射出成形により製造されず、例えば削り出し等により製造される場合には、型枠保持具に第1貫通孔10aは形成されなくてもよい。底板10に、第2貫通孔10b及び突条11は形成されなくてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1,1A,1B 型枠保持具
10 底板
10a 第1貫通孔(貫通孔)
15 第1突起
20 第2突起
26 軸状部材
27 突部
X 第1沿面方向
X1 第1側
Y 第2沿面方向
Z 厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12