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特開2023-50906螺子留め止水方法および螺子留め止水構造
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  • 特開-螺子留め止水方法および螺子留め止水構造 図1
  • 特開-螺子留め止水方法および螺子留め止水構造 図2
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  • 特開-螺子留め止水方法および螺子留め止水構造 図4
  • 特開-螺子留め止水方法および螺子留め止水構造 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023050906
(43)【公開日】2023-04-11
(54)【発明の名称】螺子留め止水方法および螺子留め止水構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/682 20060101AFI20230404BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20230404BHJP
【FI】
E04B1/682 A
F16B5/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021161262
(22)【出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000109152
【氏名又は名称】株式会社デザインアーク
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】小川 直生
(72)【発明者】
【氏名】大北 志帆
(72)【発明者】
【氏名】小川 愛司
(72)【発明者】
【氏名】中村 彰太
【テーマコード(参考)】
2E001
3J001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA04
2E001GA82
2E001HF02
2E001LA01
2E001MA06
3J001FA03
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA08
3J001HA09
3J001JA01
3J001KA23
3J001KB04
(57)【要約】
【課題】特殊な螺子を用いることなく、良好な止水性能が得られる螺子留め止水方法および螺子留め止水構造を提供する。
【解決手段】螺子留め止水方法は、取付部材2を螺子3によって被取付部1に留め付ける螺子留め止水方法であり、上記被取付部1に形成された下孔1aの螺子入り口側にシーリング材4を盛り付け、上記取付部材2と上記被取付部1との間に配置した圧縮変形可能で止水性を有する周囲壁形成部材5によって上記シーリング材4を囲う状態で、上記取付部材2の螺子挿通孔2aに挿通した螺子3を、上記被取付部1の上記下孔1aに螺着させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材を螺子によって被取付部に留め付ける方法であって、
上記被取付部に形成された下孔の螺子入り口側にシーリング材を盛り付ける工程と、
上記部材と上記被取付部との間に配置した圧縮変形可能で止水性を有する周囲壁形成部材によって上記シーリング材を囲う状態で、上記部材の螺子挿通孔に挿通した螺子を、上記シーリング材内に通して上記被取付部の上記下孔に螺着させる工程と、を含むことを特徴とする螺子留め止水方法。
【請求項2】
請求項1に記載の螺子留め止水方法において、上記周囲壁形成部材は、連続発泡性の気泡を有することを特徴とする螺子留め止水方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の螺子留め止水方法において、上記螺子の頭部と上記部材との間を止水する工程を含むことを特徴とする螺子留め止水方法。
【請求項4】
部材を螺子によって被取付部に留め付ける構造であって、上記部材の螺子挿通孔に挿通されて上記被取付部の下孔に螺着された螺子と、上記部材と上記被取付部との間に位置して上記螺子の表面に対向する止水性を有する周囲壁形成部材と、上記螺子の表面と上記下孔の周囲壁との間に位置するシーリング材と、を備えることを特徴とする螺子留め止水構造。
【請求項5】
請求項4に記載の螺子留め止水構造において、上記周囲壁形成部材は、連続発泡性の気泡を有することを特徴とする螺子留め止水構造。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の螺子留め止水構造において、上記螺子の頭部と上記部材との間に止水部材を備えることを特徴とする螺子留め止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水が掛かる外壁面等において部材を螺子留めする螺子留め止水方法および螺子留め止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水が掛かる外壁面等に、例えば、ルーバーを支持する支持部材等を、螺子を用いて固定する際に、上記外壁面に形成した下孔にシーリング材を注入し、このシーリング材で止水する施工が行われる。
【0003】
また、特許文献1には、太陽電池パネルを取り付けるドリルねじであって、野地板に螺合する雄ねじ部と、屋根葺材、および、野地板に孔を開ける切削部と、雄ねじ部の外周に配置され、屋根葺材と上記雄ねじ部との動摩擦により軟化し、上記動摩擦が終了した後に再硬化するシーリング材からなる封止部とを備える特殊なドリルねじが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-48601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の施工方法では、上記下孔に注入された上記シーリング材が、上記下孔にねじ込まれる螺子で外に押し出されることが生じる。このため、螺子の表面と下孔壁面との間に位置するべきシーリング材が減少し、十分な止水性が得られないおそれがあった。また、上記のシーリング材からなる封止部を備える特殊なドリルねじでは、ねじ単価が高くなる欠点がある。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、特殊な螺子を用いることなく、良好な止水性能が得られる螺子留め止水方法および螺子留め止水構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の螺子留め止水方法は、部材を螺子によって被取付部に留め付ける方法であって、上記被取付部に形成された下孔の螺子入り口側にシーリング材を盛り付ける工程と、上記部材と上記被取付部との間に配置した圧縮変形可能で止水性を有する周囲壁形成部材によって上記シーリング材を囲う状態で、上記部材の螺子挿通孔に挿通した螺子を、上記シーリング材内に通して上記被取付部の上記下孔に螺着させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記方法であれば、上記螺子が上記下孔に螺着されるときに、上記の盛り付けられたシーリング材を、上記下孔内に押し込んでいくことができる。そして、この際に、上記周囲壁形成部材によって上記シーリング材の横広がりが抑制されるので、上記シーリング材の上記下孔内への導入が的確に行われる。これにより、螺子の表面と下孔壁面との間にシーリング材を隙間なく充填することが可能になる。また、上記周囲壁形成部材が有する止水性によって、上記部材と上記被取付部との間の隙間から入り込む水に対する止水性能も向上する。
【0009】
上記の螺子留め止水方法において、上記周囲壁形成部材は、連続発泡性の気泡を有してもよい。これによれば、上記周囲壁形成部材は、上記部材による圧縮を受けて極力薄く変形することができる。例えば、凹凸の在る外壁表面の凸所に上記周囲壁形成部材が位置した場合でも、この周囲壁形成部材は極力薄く変形できるので、上記部材を上記被取付部に極力平行な姿勢で取り付けることができる。
【0010】
上記の螺子留め止水方法は、上記螺子の頭部と上記部材との間を止水する工程を含んでもよい。これによれば、さらに止水性能が向上する。
【0011】
また、この発明の螺子留め止水構造は、上記部材の螺子挿通孔に挿通されて上記被取付部の下孔に螺着された螺子と、上記部材と上記被取付部との間に位置して上記螺子の表面に対向する止水性を有する周囲壁形成部材と、上記螺子の表面と上記下孔の周囲壁との間に位置するシーリング材と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上記の構成であれば、上記部材と上記被取付部との間から水が浸入するのを、上記の止水性を有する周囲壁形成部材によって阻止できる。また、仮に、水が上記周囲壁形成部材を透過して螺子側に浸み出してきても、上記螺子の表面と上記下孔の周囲壁との間に位置する上記シーリング材によって止水できる。
【0013】
上記の螺子留め止水構造において、上記周囲壁形成部材は、連続発泡性の気泡を有してもよい。これによれば、例えば、凹凸の在る外壁表面の凸所に上記周囲壁形成部材が位置する場合でも、この周囲壁形成部材が極力薄い状態で存在するので、上記部材は、上記被取付部に極力平行な姿勢で位置することができる。
【0014】
上記の止水構造において、上記螺子の頭部と上記部材との間に止水部材を備えてもよい。これによれば、さらに止水性能が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明であれば、部材を螺子によって被取付部に留め付ける箇所において、特殊な螺子を用いることなく、良好な止水性能が得られるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】同図(A)および同図(B)は、実施形態の螺子留め止水方法が適用される外壁構造部の他の例を示した説明図である。
図2】実施形態の螺子留め止水方法の工程の概略を示した説明図である。
図3】実施形態の螺子留め止水方法で用いる周囲壁形成部材を例示した説明図である。
図4】実施形態の螺子留め止水構造を示した説明図である。
図5】他の実施形態の螺子留め止水構造を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
この実施形態の螺子留め止水方法は、図1(A)および図1(B)に示すように、外壁面材を被取付部1とする箇所に適用できる。被取付部1には、例えば、ブリーズインルーバーL1の取付金具である取付部材2が、螺子(ドリルビス等)3により取り付けられる。上記外壁面材の表面には凹凸の柄が形成されている。
【0018】
取付部材2には、螺子3が挿通できる螺子挿通孔2aが形成されている。作業者は、例えば、キリ状部材を螺子挿通孔2aから通し、このキリ状部材の先端で被取付部1の表面に下孔形成位置を示す印を付ける。作業者は、被取付部1に上記印を付けた後、一旦、取付部材2を被取付部1から離し、図2の(a)に示すように、上記印を付けた位置に、ドリルDを用いて下孔1aを形成する。
【0019】
作業者は、図2の(b)に示すように、被取付部1に形成された下孔1aの螺子の入り口側にシーリング材4を半球状に盛り付ける。もちろん、この際に、シーリング材4を下孔1a内に充填しても構わない。
【0020】
例えば、取付部材2が工場生産される段階で、取付部材2の裏面の螺子挿通孔2aの周囲に、周囲壁形成部材5が予め接着剤等によって取り付けられている。作業者は、図2の(c)に示すように、取付部材2の裏面側を被取付部1の表面に当てて、当該被取付部1上に盛られたシーリング材4上に、周囲壁形成部材5を位置させる。周囲壁形成部材5は、図3に示すように、中心部に貫通孔5aを有する。取付部材2を被取付部1の表面に当てる際には、上記被取付部1に形成した下孔1aの位置に貫通孔5aの位置を合わせる。周囲壁形成部材5は、スポンジ状の合成ゴムや樹脂材等からなり、圧縮変形可能で止水性を有する。この実施形態では、上記周囲壁形成部材5は、連続発泡性(半連続発泡性を含む)の気泡を有する。
【0021】
上記のように、被取付部1の下孔1aに螺子挿通孔2aを位置合わせして取付部材2の裏面側を被取付部1側に当てると、被取付部1と取付部材2との間で上記シーリング材4の周囲を囲うように周囲壁形成部材5が存在することになる。
【0022】
作業者は、図2の(d)に示すように、螺子3を螺子挿通孔2aおよび周囲壁形成部材5の貫通孔5aに通し、この螺子3を被取付部1の下孔1aにねじ込む。すなわち、作業者は、取付部材2の螺子挿通孔2aから挿入した螺子3を、周囲壁形成部材5によって囲われる状態のシーリング材4内に通して、被取付部1の下孔1aにねじ込んでいく。
【0023】
以上説明した螺子留め止水方法であれば、螺子3は、被取付部1の下孔1aに螺着されるときに、上記の盛り付けられたシーリング材4を、下孔1a内に押し込んでいくことができる。そして、この際に、周囲壁形成部材5によってシーリング材4の横広がりが抑制されるので、シーリング材4の下孔1a内への導入が的確に行われる。これにより、螺子3の表面と下孔1aの壁面との間にシーリング材4を隙間なく存在させることが可能になり、良好な止水性能が得られる。また、周囲壁形成部材5が有する止水性によって、取付部材2と被取付部1との間の隙間から入り込む水に対する止水性能も良好になる。また、特殊な螺子を不要にできる。
【0024】
また、周囲壁形成部材5が連続発泡性の気泡を有すると、この周囲壁形成部材5は、圧縮を受けて極力薄く変形することができる。このため、凹凸の在る外壁表面の凸所に周囲壁形成部材5が位置した場合でも、この周囲壁形成部材5は極力薄く変形できるので、取付部材2を被取付部1に対して極力平行な姿勢で取り付けることができる。なお、周囲壁形成部材5が連続発泡性の気泡を有していても、圧縮を受けて連続気泡は押し潰されるため、止水性を確保できる。また、周囲壁形成部材5が、一部に独立気泡が存在する半連続発泡性の気泡を有する場合、圧縮による変形性は、連続気泡に比べて劣るが、止水性は向上する。
【0025】
上記実施形態の方法によれば、図4に示すIIおよびIIIのルートからの水の浸入を抑制できることになる。さらなる止水性能の向上のため、Iのルートからの水の浸入を阻止してもよい。このために、図5に示すように、螺子3の頭部3aと取付部材2との間に、例えば、止水部材であるゴムパッキン7を介在させる止水処理を行ってもよい。なお、図4では、Iのルートからの水の浸入を描くために、螺子3の頭部3aと取付部材2との間の隙間を実際よりも大きくして示している。また、図4および図5では、IIのルートからの水の浸入箇所において、取付部材2と被取付部1との間に大きな隙間が存在するように示しているが、このような隙間は、被取付部1の表面凹凸の凹箇所において生じ得る。
【0026】
また、上記方法を実施することにより、実施形態に係る螺子留め止水構造が得られる。この螺子留め止水構造は、図4に示したように、取付部材2の螺子挿通孔2aに挿通されて被取付部1の下孔1aに螺着された螺子3と、取付部材2と被取付部1との間に位置して螺子3の表面に対向する止水性を有する周囲壁形成部材5と、螺子3の表面と下孔1aの周囲壁との間に位置するシーリング材4と、を備える。
【0027】
このような螺子留め止水構造であれば、取付部材2と被取付部1との間からの水の浸入を、上記の止水性を有する周囲壁形成部材5によって阻止できる。また、仮に、水が周囲壁形成部材5を透過して螺子3側に浸み出してきても、螺子3の表面と下孔1aの周囲壁との間に位置するシーリング材4によって止水される。
【0028】
また、上記螺子留め止水構造において、周囲壁形成部材5が連続発泡性の気泡を有すると、凹凸の在る外壁表面の凸所に周囲壁形成部材5が位置する箇所で、取付部材2に対して被取付部1に極力平行な姿勢で取り付けられる。
【0029】
また、上記螺子留め止水構造において、図5に示したように、螺子3の頭部3a側にも止水部材であるゴムパッキン7を備えると、さらに止水能力が向上する。
【0030】
また、上記螺子留め止水方法および螺子留め止水構造においては、取付部材2の縁から周囲壁形成部材5がはみ出さないのが望ましい。よって、この点を考慮して、螺子挿通孔2aの中心から取付部材2の縁までの端あきが設定されるのがよい。
【0031】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 :被取付部
1a :下孔
2 :取付部材(部材)
2a :螺子挿通孔
3 :螺子
3a :頭部
4 :シーリング材
5 :周囲壁形成部材
7 :ゴムパッキン(止水部材)
D :ドリル
図1
図2
図3
図4
図5